(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】緯編スペーサーファブリック及びその調製方法、並びにこれを含むポリウレタンフォーム複合材
(51)【国際特許分類】
D04B 1/00 20060101AFI20230915BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20230915BHJP
D04B 1/18 20060101ALI20230915BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20230915BHJP
A43B 13/18 20060101ALI20230915BHJP
D04B 23/06 20060101ALI20230915BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
D04B1/00 B
C08G18/00 F
D04B1/18
A43B13/04 Z
A43B13/18
D04B23/06
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020556264
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2019058772
(87)【国際公開番号】W WO2019197319
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】201810331217.9
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】スン,シヤオ ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シヤオチュン
(72)【発明者】
【氏名】チュー,リー チャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,レン チョン
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ウェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】フー,シュエリー
(72)【発明者】
【氏名】ロン,ハイルー
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-007133(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105442163(CN,A)
【文献】特開昭62-057973(JP,A)
【文献】特開2001-098445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00 - 23/30
A43C 1/00 - 19/00
A43D 1/00 -999/00
B29D 35/00 - 35/14
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
D04B 1/00 - 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部表面層、中間スペーサー糸、及び下部表面層とからなり、前記上部表面層と前記下部表面層との両方が非弾性糸及び弾性糸の2つの糸を使用し、前記上部表面層と前記下部表面層の間に前記スペーサー糸によって形成されたタックが存在し、前記上部表面層と前記下部表面層とが接続されて統合された態様で3次元構造を形成する、緯編スペーサーファブリックであって、
局所領域で他の領域とは接続距離が異なるタックを選択的に使用することにより、及び、前記上部表面層及び下部表面層の弾性糸の作用により、前記局所領域の厚さが変化され
、且つ
局所領域におけるスペーサー糸の配列密度が、前記タックの接続距離を一定に保つことにより、且つ前記局所領域における前記スペーサー糸の数を選択的に変化させることにより、変化される
ことを特徴とする、緯編スペーサーファブリック。
【請求項2】
前記緯編スペーサーファブリックのうね方向の厚さが、異なる編目の横列で前記タックの接続距離を変化させることにより、及び、前記上部表面層及び下部表面層の前記弾性糸の作用により、変化されることを特徴とする、請求項1に記載の緯編スペーサーファブリック。
【請求項3】
前記緯編スペーサーファブリックの編目の横列方向の厚さは、同じ編目の横列内の異なるループのタックの接続距離を変化させることにより、及び、前記上部表面層及び下部表面層の前記弾性糸の作用により、変化されることを特徴とする、請求項1に記載の緯編スペーサーファブリック。
【請求項4】
分散メッシュが、選択的なループの移送により、前記上部表面層及び下部表面層に形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の緯編スペーサーファブリック
。
【請求項5】
前記非弾性糸は、167dtex/96Fの低弾性ポリエステル糸又は110dtex/48Fの低弾性ポリエステル糸から選択され、前記弾性糸は、33dtexナイロン/22dtexのスパンデックス被覆糸、77dtex高弾性ナイロン糸又は高弾性ポリエステル糸から選択されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の緯編スペーサーファブリック。
【請求項6】
前記請求項1~
5のいずれか1項による緯編スペーサーファブリックを調製する方法であって:電子針選択装置を備えたダブル針棒のコンピュータ化された平編機で編むことを含み、そこでは最初に、プレーティング編みの形で非弾性糸と弾性糸とを用いてそれぞれ
前針棒及び後針棒上で前記上部表面層及び下部表面層の単一側織物の2つの編目横列を編み、次に、前記
前針棒及び後針棒の針選択タックを編み込むように、スペーサー糸を用いて前記上部表面層と前記下部表面層とを接続し、前記コンピュータ化された平編機のプログラム設計を変更することにより、前記タックの接続距離を変更することを特徴とする、緯編スペーサーファブリックを調製する方法。
【請求項7】
前記後針棒の空針と前記後針棒の横方向の移動の助けにより、前記前針棒は、選択された針を使用することによって、同じベッド上の隣接する1~5本の
針に、ループを移し、前記前針棒は、
前記ループに移動して、分散メッシュを形成することを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記タックの接続距離は一定に維持され、局所領域におけるスペーサー糸の数が選択的に変更させられる、請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
前記
ファブリックは、前記コンピュータ化された平編機から取り出された後に、ヒートセットされる、請求項
6~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
複合材を調製するための前記請求項1~
5のいずれか1項による緯編スペーサーファブリックの使用。
【請求項11】
前記複合材は靴材料である、請求項
10に記載の使用。
【請求項12】
前記請求項1~
5のいずれか1項による緯編スペーサーファブリックと樹脂を含む複合材。
【請求項13】
前記樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はポリウレタ
ンである、請求項
12に記載の複合材。
【請求項14】
前記ポリウレタンは、次の成分、
(a)ジイソシアネート又はポリイソシアネート、
(b)ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオール、及び
(c)任意の発泡剤、
を反応させることによって調製される、請求項
13に記載の複合材。
【請求項15】
前記ポリエーテルポリオール又は前記ポリエステルポリオールの官能性は、約1.7から約2.
5である、請求項
14に記載の複合材。
【請求項16】
前記ポリエーテルポリオール又は前記ポリエステルポリオールのヒドロキシル価は、約50から約270mgKOH/
gである、請求項
14又は
15に記載の複合材。
【請求項17】
前記ポリエーテルポリオール又は前記ポリエステルポリオールの分子量は、約500から約600
0である、請求項
14~
16のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項18】
前記ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールの多分散指数は、約0.8から約1.3ま
でである、請求項
14~
17のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項19】
緯編スペーサーファブリックに樹脂を注入することを含む、前記請求項
12~
18のいずれか1項による複合材を調製する方法。
【請求項20】
前記樹脂はポリウレタンであり、前記緯編スペーサーファブリックとポリウレタンフォームを調製するための出発材料を型に加え、次いで発泡させることを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリウレタンフォームを調製するための反応混合物を混合し、次いで前記混合物を、既に型に入れられている前記緯編スペーサーファブリックに注入する、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記注入は、真空補助樹脂注入成形(VARTM)、又は、直接鋳造によって行われる、請求項
20又は
21に記載の方法。
【請求項23】
前記注入は、前記ポリウレタンフォームを調製するための反応混合物が、前記スペーサー糸の方向に前記緯編スペーサーファブリックを通って流れるように、行われる、請求項
20~
22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記請求項
12~
18のいずれか1項による複合材を含む靴材料。
【請求項25】
靴材料が靴ソールである、請求項
24に記載の靴材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緯編スペーサーファブリック及びその調製方法、該ファブリックを含むポリウレタン(PU)フォーム複合材、該複合材の調製方法及び靴の素材でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ソールは圧縮荷重に耐えるためのあらゆる種類の靴の重要な部分である。特にスポーツシューズやフィットネスシューズにおいて、ソールは、着用者に快適なサポートを提供し、歩行時の足の疲れを軽減するために、優れた圧縮弾性、衝撃吸収性、耐久性、軽量性を有するべきである。編み(横編み、縦編みを含む)スペーサーファブリック(3次元生地、3D生地とも呼ばれる)は、上部表面層と下部表面層をスペーサー糸で連結して形成された3次元構造である。この3次元構造の特徴は、編物スペーサーファブリックが、優れた耐圧縮性、通気性、透湿性、保温性、遮音性、反発性、衝撃吸収性を有し、ソールを製作する材料の1つであることを決定している。しかし、編物スペーサーファブリックが圧縮荷重に晒されるとき、上部表面層と下部表面層の間にせん断力が生じ、繰り返し圧縮はスペーサー糸が「不安定化」することをとどまらせ、編物スペーサーファブリックのクッション効果が失わせる結果となる。
【0003】
先行技術は、様々なスペーサーファブリック及びその製造方法を開示している。
【0004】
CN102108601Aは、異なる厚さを有する3次元生地の製織方法及び3次元生地の構造を開示している。この製織方法は、主に糸を編機で3層構造に編むことを有し、該生地は頂部表面層、中間厚層、及び底部表面層を含み、該中間厚層の両端がそれぞれ頂部表面層及び底部表面層に接続されている。3次元生地の厚さは、中間厚層の糸の長さと角度の両方の変化によって決定される。この出願は、3次元生地が中敷きとして使用可能であることを開示している。該出願では、編機における中間糸の長さの変化をどのようにして実現するかについては言及していない。この出願に記載されている3次元生地は、長手方向の厚さ変化しか有することができず、かつ、編目の横列とうねの部分的な厚さ変化を同時に達成することはできず;さらに、該3次元生地は、中間層の糸密度の変化を実現することができない。
【0005】
CN102443936Aは、2次元織機装置を使用すること、ステッチ法によって基本構造の3次元生地の複数層を製織及びステッチすること、変化する厚さを有する3次元織地を得るように生地の厚さを徐々に変化させることを含む、変化する厚さを有する3次元織地を形成する方法を開示している。前記出願では、3次元生地の表面層と中間層の両方が布であり、それらはステッチ法によって織られて最終的な布が得られ;生地の厚さが中間層の緯糸の太さを変化させることによって実現されている。したがって、該発明の生地構造及び製織方法及び装置は非常に複雑である。
【0006】
CN102517759Aは、通常のシャトルレス織機で同じ布地で異なる厚さを有する織地を製造する方法を開示しており、該方法は、シャットダウンなしで、同じ布地で生地の厚さを変える問題を解決している。技術的解決法は、まず、それぞれ必要な生地厚さを有するいくつかの織り方図を設計し、次いで、織り方図を順番に配置し、間隔をおいて織り方図を変更し、次いで、布の厚さが1層薄くなるごとに、追加のヘルドフレーム上の経糸と隣接システムの経糸とを、同時に持ち上げることである。同様の方法で、通常のシャトルレス織機で変化する厚さの生地を織ることができる。この出願における生地の厚さの変化は、生地の中間層の層数を変化させることによって達成される。
【0007】
CN105442163Aは、レリーフ効果がある異なる厚さを有するスペーサーファブリックを織る方法を開示している。これは、供給されるスペーサー糸のループ長を変化させることによって、横方向及び長手方向に異なる厚さのスペーサーファブリックを形成するように、コンピュータ化された平編機で織ることによって達成される。この発明の不利な点は、コンピュータ化された平編機のゲージが決定されるときに、前針棒と後針棒の距離も決定されるため、前針棒と後針棒とを接続するスペーサー糸のループ長の変化の範囲(すなわち、調整されるスペーサーファブリックの厚さ)が非常に制限されてしまうことである。スペーサー糸のループ長が長すぎると、スペーサー糸は緩みすぎて針フックから抜け落ちて縫い目の脱落を生じ;スペーサー糸のループ長が短すぎると、スペーサー糸はきつすぎてスペーサー糸を破断させる原因となる。また、ループ長の変更は、プログラム制御されたステップモータによって駆動されるステッチカムによって行われ、同じ編目の横列を織る場合には、複数の隣接する又は近接するステッチの範囲内で大幅なループ長の変更を実現することが困難である。また、この発明では、スペーサー糸の配列密度を変更することができない。
【0008】
US20150376823A1は:第1カバー層;第2カバー層;及び第1カバー層と第2カバー層の間にスペーサー糸として形成されたパイル糸の構成を有する編物生地を開示し、そこでは、各カバー層は、次々に配置された複数のステッチ列を有し、スペーサー糸が異なる長さを有し、各ステッチ列に織り込まれたスペーサー糸が等しい長さを有し、第1の幅領域のスペーサー糸は、第2の幅領域のスペーサー糸とは異なる長さを有し、少なくとも2つの隣接するステッチ列に対して、1つのステッチ列は、第1幅領域で第1長さのスペーサー糸に接続され、1つのステッチ列は、第2幅領域で第2長さのスペーサー糸に接続されている。
【0009】
WO02/064870A1は、間隔をあけて、バインダー糸(F)によって互いに接続された2つの外層(A,B)からなる3次元両面生地を開示し、該バインダー糸(F)は2つの層(A,B)に対向する表面に実質的に垂直に延びている。該発明は、生地のいくつかの領域において、バインダー糸が異なる収縮及び萎縮特性を有する少なくとも2つの異なる種類からなり、前記2種類のバインダー糸が相補的に作用して厚さの異なる領域を形成し、生地に3次元効果を与えることを特徴としている。
【0010】
DE2981623U1は、高くて深い構造化された表面(2)と、非パターン化の表面(3)と45°から90°の角度で交差するパイル糸システム(5及び6)からなる中間の不規則に変化するスペーサー(4)とからなることを特徴とする、3次元構造化織物を開示している。
【0011】
CN103025191Aは、編物スペーサーファブリックを含む中敷きを開示している。該編物スペーサーファブリックは、頂部層、底部層、及び頂部層と底部層との間に延びる複数の間隔線とを含む。該中敷きは、追加の緩衝及び滑り止め挿入物として、底部層の下部表面上に積層され、中敷きの足中央領域からボルスターの踵領域まで延びる支持要素を含む。該編物スペーサーファブリックを含む中敷きの欠点は、支持要素が追加の挿入物であり、編物スペーサーファブリックと一体的な部分を形成することができず、そのことは2つの部分の分離と破壊を容易に生じさせ;さらに、支持要素以外の中敷きの他の部分では、圧縮荷重は編物スペーサーファブリックのみによって支承され、支承性能が劣るということである。この発明のスペーサーファブリックの厚さは変化しない。また、スペーサーファブリックを樹脂で充填することも開示していない。
【0012】
上記から分かるように、上記の先行技術のスペーサーファブリックには、依然として欠点がある。したがって、当技術分野では、ソールの異なる部分の支承状態に応じてスペーサー糸の配列密度を変化さることができ、負荷が大きい箇所ではスペーサー糸の密度を高くでき、逆にスペーサー糸の配列密度を低くでき、それによって靴ソールの異なる部分での緯編スペーサーファブリックの異なる補強効果を十分に活用できるスペーサーファブリックが、必要とされている。また、スペーサーファブリックの厚さの変化はソールの厚さの変化と一致しており、厚さの異なる部分で補強の役割を果たしており;さらに、緯編スペーサーファブリックとPUフォームとを複合することにより、緯編スペーサーファブリックの繰り返し圧縮に起因するスペーサー糸の倒伏現象を解消することができるだけでなく、PUフォームの強度を向上させることができ、それによってソール材全体の耐圧縮性と耐久性を大幅に向上させることが可能となる。
【0013】
また、本出願人により2016年10月17日に出願されたPCT/CN2016/000574の出願は、均一な厚さと均一な密度を有する3Dスペーサー強化ポリウレタン複合材を調製する方法、及び靴材料における複合材の使用を開示している。3Dスペーサーは、PU複合材の性能を向上させる。
【0014】
したがって、本発明の他の目的は、PU複合材、その調製方法、及び靴材料における複合材の使用を提供することであって、そこでは本発明のスペーサーファブリックが使用される。スペーサーファブリックの厚さ変化は、ソールの厚さの変化と一致しており、スペーサーファブリックは厚さの異なる部分で補強の役割を果たしている。さらに、ソールの異なる部分の支承状態に応じてスペーサー糸の配列密度を変化させることができ、負荷が大きい箇所ではスペーサー糸の配列密度を高くし、逆にスペーサー糸の配列密度を低くし、それによって靴ソールの異なる部分における緯編スペーサーファブリックの異なる補強効果が十分に活用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】CN102108601A
【文献】CN102443936A
【文献】CN102517759A
【文献】CN105442163A
【文献】US20150376823A1
【文献】WO02/064870A1
【文献】DE2981623U1
【文献】CN103025191A
【文献】PCT/CN2016/000574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の第1の態様では、緯編スペーサーファブリックが提供される。緯編スペーサーファブリックは、上部表面層、中間スペーサー糸、及び下部表面層とからなり、上部表面層と下部表面層の両方が非弾性糸及び弾性糸を使用し、上部表面層と下部表面層の間にスペーサー糸によって形成されたタックがあり、上部表面層と下部表面層とが接続されて統合された態様で3次元構造を形成し、該緯編スペーサーファブリックは、局所領域で他の領域とは異なる接続距離のタックを選択的に使用することにより、及び、上部表面層及び下部表面層の弾性糸の作用により、局所領域の厚さを変化させることを特徴とする。
【0017】
具体的には、一実施形態では、緯編スペーサーファブリックのうね方向の厚さは、異なる編目の横列でタックの接続距離を変化させことにより、及び、上下部の表面層の弾性糸の作用により、変化させることができる。
【0018】
他の実施形態では、緯編スペーサーファブリックの編目の横列方向の厚さは、同じ編目の横列内の異なるループのタックの接続距離を変化させることにより、及び、上下部の表面層の弾性糸の作用により、変化させることができる。
【0019】
さらに、本発明のスペーサーファブリックでは、分散メッシュが、選択的なループの移送により、上下部の表面層に形成され、それにより、スペーサー糸間の空間を埋めるためのPU原料の注入を容易にする空隙が形成される。
【0020】
他の実施形態では、本発明のスペーサーファブリックにおけるスペーサー糸の配列密度は、所望のように変化させることができる。したがって、スペーサー糸の配列密度が、ソールの異なる部分の支承状態に応じて変化させられ、スペーサー糸の配列密度が、負荷が大きい箇所(例えば、踵)では増加させられ、逆にスペーサー糸の配列密度が減少させられ、それによって、靴ソールの異なる部分での緯編スペーサーファブリックの異なる補強効果が十分に活用される。
【0021】
本発明のスペーサーファブリックにおいては、タックの接続距離と局所領域におけるスペーサー糸の配列密度を同時に変更してもよいし、別々に変更してもよい。
【0022】
さらに、スペーサー糸の傾斜角度が、得られる緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の機械的特性に影響を与えることが判明した。本発明の関連において、「スペーサー糸の傾斜角度」は、生地の頂部層又は底部層に対するスペーサー糸の角度として定義される。この角度は異方性効果に影響を与え、この角度がなければ異方性効果はない。スペーサー糸の傾斜角度は、約40°から約85°、好ましくは約50°から約80°、より好ましくは約60°から約80°、よりさらに好ましくは約65°から約80°、最も好ましくは約65°から約75°であってよい。
【0023】
本発明のスペーサーファブリックでは、上部表面層と下部表面層の両方が、非弾性糸と弾性糸の2本の糸を使用している。本出願人は、予期せずに、非弾性糸のみが使用されている場合には、スペーサーファブリックはほとんど収縮せず、生地の厚さを増加させるように、スペーサー糸を生地の平面に垂直な方向に偏向させることがないことを見出した。弾性糸のみが使用されている場合には、スペーサーファブリックは大きく収縮し、その結果、生地の表面層の密度が過度に高くなり、PUの含浸が困難となる。2つの糸、すなわち、非弾性糸と弾性糸の組み合わせは、生地の厚さを増加させることができ、また、PUの含浸を容易にすることができる。好ましくは、ループは、非弾性ループ(添え糸)が弾性ループ(地糸)をカバーすることを確かにするように、プレーティング関係を示す。一例として、非弾性の167dtex/96Fの低弾性ポリエステル糸を添え糸として使用し、弾性の44dtexナイロン/33dtexのスパンデックス被覆糸を地糸として使用することを挙げることができる。さらに、スペーサー糸は、例えば直径0.12mmのポリエステルモノフィラメントであってよい。糸の具体的な仕様は、使用されるコンピュータ化された平編機及びスペーサーファブリックの仕様によって異なることがあり得る。また、弾性糸は、例えば、33dtexナイロン/22dtexのスパンデックス被覆糸、77dtex高弾性ナイロン糸、高弾性ポリエステル糸などであってもよい。非弾性糸は、例えば、110dtex/48Fの低弾性ポリエステル糸などであってもよい。
【0024】
本発明の第2の態様において、本発明は、緯編スペーサーファブリックを調製するための方法を提供し:該方法は、電子針選択装置を備えたダブル針棒のコンピュータ化された平編機で編むことを含み、そこでは、最初に、プレーティング編みの形で非弾性糸と弾性糸を用いてそれぞれ前後の針棒上で上部表面層と下部表面層の単一側織物を編み、次に、前後の針棒の選択されたタック針を通って編むように、スペーサー糸を用いて上部表面層と下部表面層を接続し、コンピュータ化された平編機のプログラム設計を変更することにより、前記タックの接続距離を変更することを特徴とする。具体的に、コンピュータ化された平編機に適応したCADのプログラム設計を変更することにより、タックの接続距離を変更するように、針セレクターが電子信号により制御される。
【0025】
さらに、上記の調製方法において、後針棒の空針と後針棒の横方向の移動の助けにより、前針棒は、選択された針を使用することによって、同じ棒上の隣接する1~5本の針、好ましくは1本の針又は2本の針に、ループを移すことができ、前針棒は、ループに(すなわち、上下部の表面層の対応する位置に)移動して、分散メッシュを形成する。
【0026】
一実施形態において、スペーサー糸の配列密度は、タックの接続距離を一定に保ち、局所領域のスペーサー糸の数を選択的に変化させることにより、変化させられる。
【0027】
また、コンピュータ化された平編機から取り出された後、生地はヒートセットされる。ヒートセット処理は、所定の温度、例えば140~180℃、好ましくは150~170℃、特に好ましくは155~165℃で、1~10分間、好ましくは1.5~6分間、特に好ましくは2~3分間、所定の張力(例えば0.1~10N/cm、好ましくは1~8N/cm、特に好ましくは2~3N/cm)をかけることによって実施され、これにより、生地の所定の収縮と表面層のメッシュサイズの増加が生じ、寸法安定性を維持する。
【0028】
使用するコンピュータ化された平編機は、E12、E14ゲージなどであってもよい。
【0029】
本発明の第3の態様において、本発明は、複合材、特にソール材を調製するための、本発明の緯編スペーサーファブリックの使用を提供する。
【0030】
複合材は、本発明の緯編スペーサーファブリックに樹脂を注入することによって調製される。樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、PUなどであってもよく、好ましくはPUである。PUは、好ましくは、PUフォームである。
【0031】
特に、本PUフォーム複合体は、PUフォームを調製するために反応混合物を混合し、続いてこの混合物をスペーサーファブリックに注入することにより形成される。より具体的には、最初の工程は、PUフォームを調製するためのすべての成分を均一に混合することである。その後、混合物は、緯編スペーサーファブリックが既に入れられている型に注入される。注入は、真空補助樹脂注入成形(VARTM)を使用するか、又は直接鋳造によって実施されてよい。PUフォーム複合体を調製する方法及びPUフォーム複合体を調製するための原料については、PCT/CN2016/000574に詳細に記載されている。
【0032】
本発明で使用されるPUフォームは、以下の成分、
(a)ジイソシアネート又はポリイソシアネート
(b)ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオール、及び
(c)任意の発泡剤
を反応させることにより調製される。
【0033】
使用されるジイソシアネート又はポリイソシアネートは、PUを製造するために知られている脂肪族、脂環式、又は芳香族イソシアネートのいずれであってもよい。例としては、ジフェニルメタン2,2’-、2,4-、及び4,4’-ジイソシアネート、モノマーのジフェニルメタンジイソシアネートとより多数の環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体の混合物(ポリマーMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はそのオリゴマー、トリレンジイソシアネート(TDI)、例えばトリレン2,4-又は2,6-ジイソシアネートなどのトリレンジイソシアネート異性体又はこれらの混合物、テトラメチレンジイソシアネート又はそのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又はそのオリゴマー、ナフチレンジイソシアネート(NDI)又はそれら混合物がある。
【0034】
使用されるジイソシアネート又はポリイソシアネートは、好ましくはジフェニルメタンジイソシアネートに基づくイソシアネートを含み、特にポリマーMDIを含む。ジイソシアネート又はポリイソシアネートの官能性は、好ましくは2.0から2.9、特に好ましくは2.1から2.8である。DIN53019-1から3による25℃におけるジイソシアネート又はポリイソシアネートの粘度は、好ましくは約5から約600mPas、特に好ましくは約10から約300mPasである。
【0035】
ジイソシアネート及びポリイソシアネートは、ポリイソシアネートプレポリマーの形態で使用されることもできる。これらのポリイソシアネートプレポリマーは、上記のポリイソシアネートの過剰量を、イソシアネートに対して反応性のある少なくとも2つの基を有する化合物と、例えば約30℃から約100℃、好ましくは約80℃の温度で反応させて、プレポリマーを得ることができる。本発明のポリイソシアネートプレポリマーのNCO含有量は、好ましくは10から33質量%、特に好ましくは15から25質量%のNCOである。
【0036】
PUフォームを調製するために用いられるポリエーテルポリオールは、既知の方法、例えば、触媒の存在下で、2から8つ、好ましくは2から6つの結合状態の反応性水素原子を含む少なくとも1つの開始分子を添加したアルキレンオキシドのアニオン重合により得られる。触媒としては、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、若しくはナトリウムメトキシド、ナトリウム又はカリウムエトキシド又はカリウムイソプロポキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、若しくはカチオン重合の場合、ルイス酸、例えば五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素エーテラート若しくは漂白土を触媒として使用することが可能である。さらに、DMC触媒として知られる二重金属シアン化合物も触媒として用いることもできる。
【0037】
アルキレンオキシドとしては、アルキレンラジカルに2から4つの炭素原子を有する1つ以上の化合物、例えば、エチレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、1,2-又は2,3-ブチレンオキシドを、いずれの場合も単独で又は混合物の形態で用いることが好ましく、好ましくはエチレンオキシド及び/又は1,2-プロピレンオキシドである。
【0038】
可能な開始分子は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、スクロースなどの糖誘導体、ソルビトールなどの糖アルコール、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、トルイジン、トルエンジアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’-メチレンジアニリン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び他の二価又は多価アルコール若しくは単官能又は多官能アミンである。
【0039】
ポリエステルポリオールは、通常、2から12個までの炭素原子を有する多官能アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール又はペンタエリスリトールと、2から12個までの炭素原子を有する多官能カルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の異性体又はこれらの酸の無水物、の縮合によって調製される。多官能カルボン酸には、ジメチルテレフタレート(DMT)、ポリエチレングリコール-テレフタレートなどのような他のジカルボン酸源も含まれる。
【0040】
本明細書で使用されるポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールは、約1.7から約2.5、好ましくは約1.8から約2.4、より好ましくは約1.8から約2.3の官能性を有する。さらに、本明細書で使用されるポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールは、約50から約270mgKOH/g、好ましくは約55から約200mgKOH/g、より好ましくは約55から約150mgKOH/g、さらに好ましくは約55から約100mgKOH/g、最も好ましくは約55から約80mgKOH/gのヒドロキシル価を有している。ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールの官能性及びヒドロキシル価が上記の範囲に入ると、高い機械的特性及び独特の異方性効果を有する緯編スペーサーファブリック強化PU複合体が得られ、この複合体が履物、特に靴ソールに使用するのに適したものとなるということが分かったのは驚くべきことであった。
【0041】
また、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールの分子量は、約500から約6000、好ましくは約600から約4000、より好ましくは約1000から約2500である。さらに、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールの多分散指数は、例えば、約0.8から約1.3まで、好ましくは約0.9から約1.2まで、より好ましくは約0.95から約1.1までの特定の範囲内にある。上記の多分散指数の範囲内において、得られた複合体は、硬度と柔軟性との間で最良のバランスを有する。
【0042】
PUフォームを調製するために使用される反応混合物は、架橋剤及び/又は鎖延長剤をさらに含んでいてもよい。
【0043】
鎖延長剤及び/又は架橋剤としては、特に、二官能性又は三官能性のアミン及びアルコール、特にジオール、トリオール又はその両方が使用され、それぞれの場合、分子量が350以下、好ましくは60から300、特に好ましくは60から250の範囲内である。ここで、二官能性化合物は鎖延長剤と呼ばれ、三官能性又はより高官能性の化合物は架橋剤と呼ばれる。例えば、2から14個、好ましくは2から10個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ジオール、例えばエチレングリコール、1,2-、1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-ペンタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-、1,3-、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、1,2,4-,1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール及びトリメチロールプロパンなどのトリオール、並びに、エチレンオキシド及び/又は1,2-プロピレンオキシド及び上記のジオール及び/又はトリオールに基づく低分子量ヒドロキシル含有ポリアルキレンオキシドを、開始分子として使用することが可能である。
【0044】
鎖延長剤は、個々の化合物であってもよいし、混合物であってもよい。鎖延長剤は、好ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及び/又は2,3-ブタンジオールを、単独で又は任意に互いに又はさらなる鎖延長剤との混合物として含む。したがって、特に好ましい実施形態では、ジプロピレングリコールは、第2の鎖延長剤、例えば2,3-ブタンジオール、モノプロピレングリコール又はジエチレングリコールとともに、鎖延長剤として使用される。
【0045】
架橋剤は、好ましくは、1,2,4-、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール及び/又はトリメチロールプロパンである。架橋剤としてグリセロールを使用するのが好ましい。
【0046】
PUフォームを調製するために使用される反応混合物は、発泡剤をさらに含んでもよい。発泡剤は、物理的な発泡剤であってもよいし、化学的な発泡剤であってもよい。
【0047】
物理的な発泡剤は、出発成分に対して不活性な化合物であり、通常は室温で液体であり、ウレタン反応の条件下で気化する。これらの化合物の沸点は、好ましくは50℃以下である。また、物理的な発泡剤は、室温で気体であり、圧力下で出発成分に導入又は溶解される化合物、例えば、二酸化炭素、低沸点アルカン、フルオロアルカン及びフルオロオレフィンである化合物も含む。
【0048】
物理的な発泡剤は、通常、少なくとも4つの炭素原子を有するアルカン及びシクロアルカン、ジアルキルエーテル、エステル、ケトン、アセタール、フルオロアルカン、1から8つの炭素原子を有するフルオロオレフィン、及びアルキル鎖に1から3つの炭素原子を有するテトラアルキルシラン、特にテトラメチルシランからなる群から選択される。
【0049】
挙げられ得る例として、プロパン、n-ブタン、イソブタン及びシクロブタン、n-ペンタン、イソペンタン及びシクロペンタン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、ギ酸メチル、アセトン及び対流圏で分解され得るため、オゾン層に損傷を与えないフルオロアルカン、例えばトリフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン及びヘプタフルオロプロパンがある。フルオロオレフィンの例としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテンがある。述べられた物理的な発泡剤は、単独で又は互いの任意の組み合わせで使用することができる。Honeywell International Inc.のHFC-245faとしての1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、Honeywell International Inc.のHCFO-LBA2又はArkema SAのAFA-L1としての1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、DupontのHFO FEA1100としての1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテンを使用することが好ましい。
【0050】
物理的な発泡剤(c)は、PUフォームの密度が、補強材を考慮せずに、好ましくは約75から約150kg/m3、より好ましくは約90から約130kg/m3、最も好ましくは約100から約110kg/m3の範囲となるような量で使用される。
【0051】
化学的な発泡剤としては、水及び/又はギ酸を使用することができる。これらはイソシアネート基と反応し、二酸化炭素、又は、それぞれ二酸化炭素及び一酸化炭素を除去する。一実施形態では、好ましくは、水は発泡剤として使用される。水の量は、反応混合物の質量に基づいて、0.1から2.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0052】
本発明によれば、PUフォームを形成する反応は、触媒(d)の存在下で行われる。
【0053】
触媒(d)としては、イソシアネート-ポリオール反応を促進するすべての化合物を使用することができる。このような化合物は公知であり、例えば、Carl Hanser Verlagによる「Kunststoffhandbuch,第7巻,PU」第3版、1993年、第3.4.1章に記載されている。これらは、アミン系の触媒及び有機金属化合物に基づく触媒を含む。
【0054】
有機金属化合物に基づく触媒として、例えば、有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)及びラウリン酸スズ(II)、及び有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩及びジオクチルスズジアセテートなどの有機スズ化合物、及びまた、カルボン酸ビスマス、例えばネオデカン酸ビスマス(III)、2エチルヘキサン酸ビスマス及びオクタン酸ビスマス、又はカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、酢酸カリウム又はギ酸カリウム、を使用することができる。
【0055】
触媒(d)として、第三級アミン又は少なくとも1つの第三級アミンを含む混合物を使用することが好ましい。これらの第三級アミンは、通常、イソシアネートに対して反応性を有する基、例えばOH基、NH基又はNH2基を有することができる化合物である。最も頻繁に使用される触媒として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N,N,N-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N-トリエチルアミノエトキシエタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、ジメチルアミノプロピルアミン、N-エチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン及びジアザビシクロノネンが挙げられる。
【0056】
本発明によれば、PUフォームを形成する反応は、1つ以上の泡安定剤(e)の存在下で行われる。
【0057】
泡安定剤という用語は、発泡体形成中に規則的セル構造の形成を促進する材料を指す。挙げられ得る例として、シロキサン-オキシアルキレンコポリマー及び他の有機ポリシロキサンのようなケイ素含有泡安定剤がある。脂肪アルコール、オキソアルコール、脂肪アミン、アルキルフェノール、ジアルキルフェノール、アルキルクレゾール、アルキルレゾルシノール、ナフトール、アルキルナフトール、ナフチルアミン、アニリン、アルキルアニリン、トルイジン、ビスフェノールA、アルキル化ビスフェノールA、ポリビニルアルコールのアルコキシル化生成物、さらに、ホルムアルデヒド及びアルキルフェノール、ホルムアルデヒド及びジアルキルフェノール、ホルムアルデヒド及びアルキルクレゾール、ホルムアルデヒド及びアルキルレゾルシノール、ホルムアルデヒド及びアニリン、ホルムアルデヒド及びトルイジン、ホルムアルデヒド及びナフトール、ホルムアルデヒド及びアルキルナフトール及びまた、ホルムアルデヒドとビスフェノールAの縮合生成物のアルコキシル化生成物、又はこれらの泡安定剤の2つ以上の混合物を使用できる。
【0058】
泡安定剤は、好ましくは、PUフォームの全質量に基づいて、約0.5質量%から約4質量%、特に好ましくは約1質量%から約3質量%の量で使用される。
【0059】
一実施形態では、PUフォームを形成する反応は、さらなる添加剤及び/又は助剤(f)の存在下で行われる。
【0060】
使用できる助剤及び/又は添加剤は、この目的のためにそれ自体公知の物質、例えば、界面活性剤、泡安定剤、セル調整剤、充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、真菌静菌剤、及び静菌剤である。
【0061】
本発明の方法を実施するために使用される出発材料、発泡剤、触媒、さらにまた助剤及び/又は添加剤に関するさらなる詳細は、例えば、Kunststofthandbuch[プラスチックハンドブック]第7巻「PU」、Carl-Hanser-Verlag Munichn、第1版、1966年、第2版、1983年、及び第3版、1993年に記載されている。
【0062】
PUフォームは、補強材の調製中にその場で形成される。
【0063】
本発明の緯編スペーサーファブリック強化PU複合体は、非強化のPUフォームよりも改善された機械的特性を有する。より具体的には、本発明の緯編スペーサーファブリック強化PU複合体は、改善された引張強度、及び、特に大幅に改善された引裂強度を有する。
【0064】
より重要なことに、本発明の緯編スペーサーファブリック強化PU複合体は、独特の異方性を有する。本発明の関連において、「異方性」とは、緯編スペーサーファブリック強化PU複合体が異なる方向に異なる特性を有することを意味することを意図している。例えば、スペーサー糸に垂直な方向の機械的特性は、それに垂直な他の2方向の機械的特性よりも優れている。
【0065】
上記の改善された機械的特性と異方性は、本発明の緯編スペーサーファブリック強化PU複合体を、履物、特に靴ソールで有用であるようにしている。改善された機械的特性は、ソールの寿命を延ばし、異方性は、歩行中又はランニング中に足首を安定かつ快適にすることに役立っている。また、この複合体の外観は、靴の自由な設計をも可能にする。
【0066】
別の態様において、本発明は、本発明の緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の調製方法に関し、この方法は、緯編スペーサーファブリック及びPU複合体の出発材料を型に加え、次いで発泡させることを含む。
【0067】
型に加える前に、PUフォームの出発材料は、まず、ヴォルラースミキサーのような混合装置で混合される。
【0068】
緯編スペーサーファブリックとPUフォームの混合出発材料の投与の順序は重要ではない。実際には、最初に生地を型に加え、次にPUフォームの出発材料を加えることが可能であり、又は最初にPUフォームの出発材料を型に加え、次に生地を加えることが可能であり、又は生地を型の内面(上面及び底面)に貼り付け、次にPUフォームの出発材料を加えることが可能である。
【0069】
具体的には、緯編スペーサーファブリック強化PU複合体は、PUフォームを調製するための反応混合物を混合し、次いでその混合物を緯編スペーサーファブリックに注入することにより形成される。より具体的には、最初の工程は、PUフォームを調製するための全成分を均一に混合することである。その後、混合物は、緯編スペーサーファブリックが既に入れられている型に注入される。
【0070】
注入は、真空補助樹脂注入成形(VARTM)を使用するか、又は直接鋳造によって行われてよい。この点に関して、本発明のPUフォームの特定の配合を用いることにより、PUフォームを形成するための原料が直接、すなわち、真空補助型注入装置などの補助装置を使用することなく、緯編スペーサーファブリックが既に投入されている型に注入され得ることは驚くべきことである。これは、注入を容易にし、製造コストを低減する。
【0071】
注入は、PUフォームを調製するための反応混合物が、緯編スペーサーファブリックをスペーサー糸方向に通って流れるように、実施されることができる。注入の間、上下部の表面層にメッシュが存在するため、反応混合物は、メッシュを通ってスペーサー糸間の空隙を埋めるように、容易に注入されることができる。調製中、型の頂部及び底部表面は、例えば電気又は水浴の加熱システムにより加熱され得る。注入中の温度は、約20℃から約50℃である。複合体の形成と同時に、PUが発泡する。注入後、発泡を継続するために、温度が所定時間、例えば約5分から約30分維持される。発泡後、複合体は型から取り出され、複合体が安定するまで、一定時間、例えば約8時間から約32時間、好ましくは約10時間から約24時間の間、静置される。
【0072】
本発明の複合体は、改善された機械的性能及び独特の異方性効果のような独特の特性を有することが見出された。履物、特に靴ソールのためには、一般に、土踏まずに対応する部分で上下に容易に曲がり、一方で、水平面では容易に変形しないことが要求される。したがって、本発明の複合体の独特な異方性効果は、履物、特に靴ソールにおける使用に非常に適合させる。さらに、本発明の複合体の改善された機械的性能は、得られた履物、特に靴ソールが高い機械的性能を有するようにさせる。
【0073】
したがって、さらなる態様において、本発明は、履物、特に靴ソールにおける本発明の緯編スペーサーファブリック強化PU複合材の使用に関する。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、履物、特に本発明による緯編スペーサーファブリック強化PU複合材を有する靴ソールに関する。
【0075】
靴ソールを調製する際に、緯編スペーサーファブリックは、スペーサー糸の方向が結果として得られる靴ソールの厚さ方向を構成し、一方で、生地の頂部及び底部の層が結果として得られる靴ソールの頂部及び底部と平行になるように、型のPUフォームの原料に入れられる。この場合、歩行時やランニング時に、ソールが上下、すなわちスペーサー糸と直交する方向に撓み、一方、別の2方向では、ソールは簡単には変形しない。
【0076】
本発明では、緯編スペーサーファブリックを用いて、PUフォームと複合してソール材を製造する。一方では、緯編スペーサーファブリックの繰り返し圧縮に起因するスペーサー糸の倒伏現象を解消することができ、他方では、PUフォームの強度を向上させることができ、それによって、ソール材全体の耐圧縮性と耐久性を大幅に向上させることができる。また、スペーサーファブリックの厚さ変化は、ソールの厚さ変化と一致させることができ、厚さの異なる部分において補強の役割を果たしている。ソールの異なる部分の支承状態に応じて、スペーサー糸の配列密度は負荷が大きい箇所では高くでき、逆にスペーサー糸の配列密度は低くでき、それによって、靴ソールの異なる部分での緯編スペーサーファブリックの異なる補強効果を十分に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】
図1は、本発明の靴ソール用の可変厚さ及び可変密度緯編スペーサーファブリック強化PUフォーム複合材の概略構造図である。
【
図2】
図2は、本発明の緯編スペーサーファブリックの表面層と可変厚さの織り方原理図である。
【
図3】
図3は、本発明の緯編スペーサーファブリックのうね方向の厚さ変化の効果を示す図である。
【
図4】
図4は、局所領域で厚さ可変の本発明による緯編スペーサーファブリックの織り方原理図である。
【
図5】
図5は、本発明の緯編スペーサーファブリックの厚さを局所領域で変化させた効果を示す図である。
【
図6】
図6は、スペーサー糸の配列密度が局所的に変化させられた本発明の緯編スペーサーファブリックの織り方原理図である。
【
図7】
図7は、本発明の緯編スペーサーファブリックのスペーサー糸の配列密度を局所領域で変化させた効果を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の緯編スペーサーファブリックの表面層に分散メッシュを形成する織り方原理図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例に従って得られた緯編スペーサーファブリック強化PU複合材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1を参照し、本発明の緯編スペーサーファブリックは、上部表面層1、下部表面層2及び中間スペーサー糸3とからなり、上部表面層1と下部表面層2は、スペーサー糸3のタックで接続され、一体化された態様で三次元構造を形成し、PU発泡体4がスペーサー糸の間に充填されている。X、Y、及びZ座標は、それぞれ、緯編スペーサーファブリックの編目の横列、うね、及び厚さ方向を表している。緯編スペーサーファブリックの局所領域(例えば領域A、領域C)の厚さは、上部表面層と下部表面層とのタックの接続距離の変化によって、及び、両表面層の弾性糸の作用によって変化させることができる。また、緯編スペーサーファブリックの局所領域(例えば領域A、領域B)のスペーサー糸の配列密度を変更することもできる。
【0079】
図2を参照し、本発明の緯編スペーサーファブリックは、電子針選択装置を備えたE12のゲージを有するダブル針棒のコンピュータ化された平編機で編まれる。ヘッドの往復運動(左右の矢印で示す)により、まず、添え糸として167dtex/96Fの低弾性ポリエステル糸、地糸として44dtexのナイロン/33dtexのスパンデックス被覆糸を用いて、前針棒Fの1列目と3列目、後針棒Bの第2列目と第4列目をそれぞれ編む、すなわち、上部表面層と下部表面層の各2つの編目の横列をそれぞれ形成する。次に、スペーサー糸として0.12mmのポリエステルモノフィラメントを使用し、2本の針にかけわたってタックで第5列目と第6列目を編むことにより、第1~4列目の上部表面層と下部表面層を接続する。第1~6列目を周期的に編むことにより、緯編スペーサーファブリックの編目の横列数を増やすことができる。生地を機械から取り出した後は、スパンデックス被覆糸の弾性の作用で横方向に収縮し、スペーサー糸を上部表面層と下部表面層に直交する方向に偏向させ、それによって生地の厚さを増加させる。ヒートセット処理の後、張力が加わるため生地の厚さは若干減少するが、表面のメッシュが大きくなり、そのことはPUフォームの注入と充填にとって好ましい。第1~4列目を編んだ後に、スペーサー糸として0.12mmのポリエステルモノフィラメントがなおも使用され、4本の針にかけわたるタックで第7~10列目を編むことによって、第1~4列目の上下部の表面層が接続されると、1~6列目で織られた生地よりも厚さが増し、これにより、緯編スペーサーファブリックのうね方向の厚さの変化が得られる。第1~4列目を編んだ後に、スペーサー糸として0.12mmのポリエステルモノフィラメントがなおも使用され、4本の針にかけわたるタックで第11~14列目を編むことによって、第1~4列目の上下部の表面層が接続されると、緯編スペーサーファブリックの編目の横列方向の厚さ変化が達成される、すなわち、2本の針にかけわたるタックの左側の生地は薄く、4本の針にかけわたるタックの右側の生地は厚くなる。
図3は、緯編スペーサーファブリックのうね方向の厚さを変えることの効果を示す。生地全体に使用される原料は同じであり、領域A、領域B、領域Cの上下部の表面層の製織方法は、スペーサー糸のタックの接続距離が異なること、つまり、それぞれ2本の針、4本の針、6本の針にかけわたることを除いては同じである。その結果、A領域が薄く(厚さ3.67mm)、B領域が中程度(厚さ5.46mm)、C領域が厚い(厚さ7.27mm)という構造が形成される。
【0080】
図4を参照し、第1~4列目の上部表面層と下部表面層の製織方法は、
図2と同じである。第5~10列目では、スペーサー糸は左右側部の2本の針にかけわたるタックで接続され、中間で6本の針にかけわたるタックで接続されているため、生地が機械から取り出された後は、スパンデックス被覆糸の弾性の作用により、生地の中間部が左右側部に比べて厚くなる。また、左右側部は2本のスペーサー糸のタックによって接続され、中間部は6本のスペーサー糸のタックによって接続されている。これは主に、中間部のスペーサー糸の配列密度が左右側部のそれと同じになることを確かにし、つまり、前針棒Fにあっても後針棒Bにあっても、2本の針ごとにタック接続があるようにするためである。第1~10列目の周期的な編みは、生地の編目の横列数を増やすことができる。
図5は、局所領域で緯編スペーサーファブリックの厚さを変化させた効果を示しており、そこでは黒い長方形領域の厚さ(7.16mm)が他の領域の厚さ(3.56mm)よりも大きくなっている。
【0081】
図6を参照し、第1~4列目の上部表面層と下部表面層の製織方法は、
図2と同じである。第5~10列目では、全てのスペーサー糸が6本の針にかけわたるタックで接続されているため、生地が機械から取り出された後は、スパンデックス被覆糸の弾性の作用により、左右側部の厚さが中間部のそれと同じになる。しかし、前針棒F上にあっても後針棒B上にあっても、左右側部の6本の針ごとに1本のタック接続があり、中間部の2本の針ごとに1本のタック接続がある、すなわち、中間部のスペーサー糸の配列密度は左右側部のそれよりも大きくなっている。
図7は、局所領域で緯編スペーサーファブリックのスペーサー糸の配列密度を変化させた効果を示しており、そこでは黒いスペーサー糸が、左側で最も密度が高く、次いで中間領域、右側では最も疎になるように配置されている。
【0082】
図8を参照し、第1~2列目の上部表面層と下部表面層の製織方法は、
図2と同じである。第3列目では、後針棒の空針に対応する前針棒の針が選択されてループを空針に移し、第4列目では、後針棒が1針分右に移動し、後針棒に移動されたループが前針棒に戻され、このようにして、分散メッシュが、前針棒で織られる上部表面層のループが除かれた部位(点線楕円)に形成される。第5列目では、前針棒の空針に対応する後針棒の針が選択されてループを空針に移し、第6列目では、後針棒が2針分左に移動し、前針棒に移動されたループが後針棒に戻され、このようにして、分散メッシュが、後針俸で織られる下部表面層のループが除かれた部位(点線楕円)に形成される。第6列目以降の列では、後針棒が1針分右に移動して初期位置に戻る。最後に、第7列目と第8列目では、両表面層のそれぞれの一列が、スペーサー糸のタック接続を編む次の工程の準備のために、編まれる。
図3、
図5及び
図7から、緯編スペーサーファブリックの表面層に分散メッシュを形成する効果が示されている。
【0083】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、明細書及び実施例に記載されている。上記の特徴及び以下でさらに説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、それぞれの場合で示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも使用することができることは言うまでもない。
【0084】
本発明の利点は、以下の実施例によって説明される。
【実施例】
【0085】
1.測定方法
実験中に、緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の柔軟性、密度、硬度及び機械的特性を測定した。
【0086】
DPX300LTE密度計を用いて、緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の密度を、頂部層から底部層まで測定した。試験基準によれば、5cm(長さ)×5cm(幅)×1cm(厚さ)の大きさのサンプルを用意し、チャンバーに入れてX線でスキャンする必要がある。これにより、密度分布図が得られる。
【0087】
緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の硬度を、KOBUNSHI KEIKI Co,Ltd.から入手可能なアスカ―Cデュロメータを使用して、ASTMD2240の試験規格に従って、スペーサー糸方向で測定した。
【0088】
緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の引張強度を、Zwick Roell Instrument&Technology Co,Ltd.から入手可能なZwick/Roell試験機を使用して、DIN 53504の試験規格に従って、スペーサー糸方向で測定した。
【0089】
緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の引裂強度を、Zwick Roell Instrument&Technology Co,Ltd.から入手可能なZwick/Roell試験機を使用して、DIN 34-1法Aの試験規格に従って、スペーサー糸の方向で測定した。
【0090】
緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の伸びを、Zwick Roell Instrument&Technology Co,Ltd.から入手可能なZwick/Roell試験機を使用して、DIN 53504の試験規格に従って、スペーサー糸と直交する方向で測定した。
【0091】
柔軟性は、緯編スペーサーファブリック強化PU複合体を手で曲げて測定する。テストプレートをスペーサー糸に垂直な方向に30°以上曲げることができれば、柔軟性は良好であり、テストプレートを30°以上曲げることができなければ、柔軟性は不良である。
【0092】
ポリエステルレシピについては、加水分解試験も実施される。緯編スペーサーファブリック強化PU複合体の加水分解試験は、DIN EN ISO 20344の試験規格に従って測定した。
2.複合体を調製するための手順
表1に示すA成分(スポーツシステム用、A成分を35℃に維持)とB成分を、それぞれ対応する成分を混合して調製した。同時に、型の温度を23℃に維持した。次いで、A成分65gとB成分45gを1つのプラスチックカップに入れ、混合機(EWTHV0,5,タイプ、ヴォルラースミキサー)を用いて7から8秒間混合した。A成分とB成分の混合物62gを型に入れた。次いで、
図3の緯編スペーサーファブリックを、生地の頂部層と底部層が型の底面と平行になるように上記混合物内に入れ、生地が型の中間に位置するようにした。その後、型を閉じた。15分後に型を開き、サンプルを取り出し、室温で24時間保持して硬化させ、このように緯編スペーサーファブリック強化PU複合体を得た(
図9)。
【0093】
表1 基本レシピ(スポーツレシピ)
【0094】
【0095】
【表2】
得られたプレート上で上記の基準に従って試験を実施し、密度、硬度、及び反発を決定した。
【0096】
表2 スポーツレシピ(ポリエーテル系)に基づくプレートの特性
【0097】
【表3】
表2からわかるように、緯編スペーサーファブリックを介在させることで、PU複合体はゾーン性能を示し、3つの領域は3つの異なる硬度を示している。
【0098】
レシピから得られたテストプレート(
図9)は、スペーサー糸に垂直な方向に30°以上曲がることができたが、それに垂直な他の2つの方向にはほとんど曲げることができなかった。