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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】調理排気排出装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019024440
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020133939
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.掲載年月日 平成30年3月1日 掲載アドレス http://www.kinki-shasej.org/Info/1113 2.開催日 平成30年3月13日 集会名 平成29年度(第47回)空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会(大阪) 3.発行年月日 平成30年5月25日 発行者名 日本建築学会近畿支部 刊行物名 平成30年度日本建築学会近畿支部研究報告集 環境系 4.開催日 平成30年6月23日 集会名 平成30年度(2018年度)日本建築学会近畿支部研究発表会 5.発行年月日 平成30年7月20日 発行者名 一般社団法人日本建築学会 刊行物名 2018年度大会(東北)学術講演梗概集 建築デザイン発表梗集DVD 6.発行年月日 平成30年8月29日 発行者名 公益社団法人空気調和・衛生工学会 刊行物名 平成30年度空気調和・衛生工学会大会 DVD 7.開催日 平成30年9月4日 集会名 2018年度日本建築学会大会[東北] 8.開催日 平成30年9月13日 集会名 平成30年度空気調和・衛生工学会大会(名古屋)
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山中 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】水出 喜太郎
(72)【発明者】
【氏名】小澤 諭
(72)【発明者】
【氏名】河邑 貴広
(72)【発明者】
【氏名】北村 知也
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-021647(JP,A)
【文献】特開2016-161180(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219022(JP,U)
【文献】特開2001-330302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部に排気ダクトが連通する上側開口が形成されるとともに、下部に外方と連通する下側開口が形成された上向き凹状の排気フードと、
前記排気フード内の前記上側開口の下方に、水平に配設された平板状の整流板とを備えた調理排気排出装置であって、
前記整流板は、
周囲が帯状体に囲まれ、調理排気が通流する開口が形成されており、
前記排気フードの側壁部との間に、前記調理排気が通流する環状開口が形成されるように、前記排気フード内、且つ、前記排気フードの下端部を含む平面内に配設されており、
折り畳み自在である調理排気排出装置。
【請求項2】
天井部に排気ダクトが連通する上側開口が形成されるとともに、下部に外方と連通する下側開口が形成された上向き凹状の排気フードと、
前記排気フード内の前記上側開口の下方に、水平に配設された平板状の整流板とを備えた調理排気排出装置であって、
前記整流板は、
周囲が帯状体に囲まれ、調理排気が通流する開口が形成されており、
前記排気フードの側壁部との間に、前記調理排気が通流する環状開口が形成されるように、前記排気フード内、且つ、前記排気フードの下端部を含む平面内に配設されており、
接合分離自在な2以上の板材からなり、当該2以上の板材のうち、少なくとも一つが折り畳み自在である調理排気排出装置。
【請求項3】
前記整流板の開口は、前記上側開口と対向する部分の少なくとも一部に形成されている請求項1又は2に記載の調理排気排出装置。
【請求項4】
前記排気ダクトと連通する状態で前記排気フードに固設された吸気ケースを更に備え、
前記整流板は、前記排気フード内の前記吸気ケースの下方に配設されている請求項1又は2に記載の調理排気排出装置。
【請求項5】
前記整流板の開口は、前記吸気ケースと対向する部分の少なくとも一部に形成されている請求項に記載の調理排気排出装置。
【請求項6】
前記整流板の開口は、該整流板の中央部に形成されている請求項1~のいずれか一項に記載の調理排気排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井部に排気ダクトが連通する上側開口が形成されるとともに、下部に外方と連通する下側開口が形成された上向き凹状の排気フードと、排気フード内の上側開口の下方に配設された整流板とを備えた調理排気排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる調理排気排出装置は、ガスレンジ等の業務用の厨房機器の上方に配置されて、厨房機器からの調理排気を排出するために使用されるものであり、排気フードにて調理排気を捕集しながら排気ダクトを通して捕集された調理排気を外部に排出する装置である。
【0003】
この種の調理排気排出装置においては、所定の排気流量となるように排気ファンを動作させて調理排気の排出を行った際に、排気流量によっては排気フードに吸い込まれる調理排気の勢いが弱く広がり易い。そのため、調理排気の一部が排気フード外に漏れて吸い込まれなくなって、排気フードの捕集性能が低下する可能性があった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に記載のレンジフードファンが提案されている。当該特許文献1記載のレンジフードファンにおいては、フードの下面開口部の中央部に整流板が設けられて、このフードの開口部周縁との間に吸い込み風速を増速する吸い込み間隙が形成されている。このレンジフードファンによれば、開口部周縁に形成された間隙を通して、増速された吸い込み風速でフード内に調理排気が吸い込まれるようになるため、排気流量が同じであってもフードの捕集性能の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-222249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1記載のレンジフードファンのように、開口部周縁との間に間隙を形成するように整流板を設けたとしても、勢いが強い調理排気が発生するような場合には、フードの捕集性能が低下するおそれがある。即ち、勢いの強い調理排気は、整流板に衝突して勢いよく拡散するため、拡散した調理排気の影響によって間隙から調理排気が吸い込まれ難くなって、フード内に流動する調理排気の量が減少するおそれがある。
【0007】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、排気フード内に流動する調理排気の量を増加させることができ、フードの捕集性能の向上を図ることができる調理排気排出装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る調理排気排出装置の特徴構成は
天井部に排気ダクトが連通する上側開口が形成されるとともに、下部に外方と連通する下側開口が形成された上向き凹状の排気フードと、
前記排気フード内の前記上側開口の下方に、水平に配設された平板状の整流板とを備えた調理排気排出装置であって、
前記整流板は、
周囲が帯状体に囲まれ、調理排気が通流する開口が形成されており、
前記排気フードの側壁部との間に、前記調理排気が通流する環状開口が形成されるように、前記排気フード内、且つ、前記排気フードの下端部を含む平面内に配設されており、
折り畳み自在である点にある。
【0009】
上記特徴構成では、整流板に、周囲が帯状体に囲まれた開口を形成するとともに、当該整流板を環状開口が形成されるように配設するようにしている。これにより、開口及び環状開口から吸い込まれる空気の速度は、整流板を設けていない場合と比較して速くなる。
したがって、上記特徴構成によれば、調理排気が排気フード外に漏れ難くなり、排気フード内に流動する調理排気の量が増え、排気フードの捕集性能が向上する。
また、勢いの強い調理排気が発生するような場合であっても、そのような調理排気の多くを拡散させることなく開口から吸い込むことができ、環状開口から調理排気が吸い込まれ難くなるという事態の発生が抑えられる。したがって、勢いが強い調理排気が発生する場合であっても、排気流量を上げることなく、排気フード内に流動する調理排気の量を増やして、排気フードの捕集性能の向上を図ることができる。
尚、整流板の開口は、勢いの強い調理排気を効率良く吸い込むことができるように、適度な大きさの面積を有していることが好ましい。
また、上記特徴構成によれば、整流板は、前記排気フードの下端部を含む平面内に配設されていることにより、調理排気を効率よく吸い込むことができる。
更に、上記特徴構成によれば、整流板が折り畳み自在であることにより、当該整流板に付着、蓄積した油脂類等の除去作業等を行う際に取り扱いが容易になる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る調理排気排出装置の特徴構成は、
天井部に排気ダクトが連通する上側開口が形成されるとともに、下部に外方と連通する下側開口が形成された上向き凹状の排気フードと、
前記排気フード内の前記上側開口の下方に、水平に配設された平板状の整流板とを備えた調理排気排出装置であって、
前記整流板は、
周囲が帯状体に囲まれ、調理排気が通流する開口が形成されており、
前記排気フードの側壁部との間に、前記調理排気が通流する環状開口が形成されるように、前記排気フード内、且つ、前記排気フードの下端部を含む平面内に配設されており、
接合分離自在な2以上の板材からなり、当該2以上の板材のうち、少なくとも一つが折り畳み自在である点にある。
【0011】
上記特徴構成では、整流板に、周囲が帯状体に囲まれた開口を形成するとともに、当該整流板を環状開口が形成されるように配設するようにしている。これにより、開口及び環状開口から吸い込まれる空気の速度は、整流板を設けていない場合と比較して速くなる。
したがって、上記特徴構成によれば、調理排気が排気フード外に漏れ難くなり、排気フード内に流動する調理排気の量が増え、排気フードの捕集性能が向上する。
また、勢いの強い調理排気が発生するような場合であっても、そのような調理排気の多くを拡散させることなく開口から吸い込むことができ、環状開口から調理排気が吸い込まれ難くなるという事態の発生が抑えられる。したがって、勢いが強い調理排気が発生する場合であっても、排気流量を上げることなく、排気フード内に流動する調理排気の量を増やして、排気フードの捕集性能の向上を図ることができる。
尚、整流板の開口は、勢いの強い調理排気を効率良く吸い込むことができるように、適度な大きさの面積を有していることが好ましい。
また、上記特徴構成によれば、整流板は、前記排気フードの下端部を含む平面内に配設されていることにより、調理排気を効率よく吸い込むことができる。
ところで、整流板を一の部材で構成すると、整流板の寸法が大きくなるため、当該整流板に付着、蓄積した油脂類等の除去作業を行う際に取り扱い難さが問題となる場合がある。しかしながら、上記特徴構成によれば、整流板が接合分離自在な2以上の板材で構成されていることにより、除去作業などを行う際に、整流板をこれよりも寸法の小さい2以上の板材に分離することができるようになり、取り扱いが容易になる。
更に、上記特徴構成によれば、板材が折り畳み自在であることにより、上記除去作業等を行う際に取り扱いが容易になる。
【0012】
ここで、排気フードは、勢いの強い調理排気が発生し易い調理機器の上方に上側開口が位置するように配設されることが多い。したがって、整流板の開口は、当該整流板における排気フードの上側開口と対向する部分の少なくとも一部に形成されていることにより、勢いの強い調理排気を効率良く吸い込むことができる場合が多い。
【0013】
即ち、本発明に係る調理排気排出装置の更なる特徴構成は、前記整流板の開口は、前記上側開口と対向する部分の少なくとも一部に形成されている点にある。
【0014】
尚、排気ダクトと連通する状態で排気フードに固設された吸気ケースを調理排気排出装置が備えている場合には、整流板は、吸気ケースの下方に配設されていることが好ましい。
【0015】
即ち、本発明に係る調理排気排出装置の更なる特徴構成は、前記排気ダクトと連通する状態で前記排気フードに固設された吸気ケースを更に備え、
前記整流板は、前記排気フード内の前記吸気ケースの下方に配設されている点にある。
【0016】
ここで、上述したように、排気フードは、勢いの強い調理排気が発生し易い調理機器の上方に上側開口が位置するように配設されることが多く、調理排気排出装置が吸気ケースを備えている場合、当該吸気ケースも、勢いの強い調理排気が発生し易い調理機器の上方に配設されることが多い。したがって、整流板の開口は、当該整流板における吸気ケースと対向する部分の少なくとも一部に形成されていることにより、勢いの強い調理排気を効率良く吸い込むことができる場合が多い。
【0017】
即ち、本発明に係る調理排気排出装置の更なる特徴構成は、前記整流板の開口は、前記吸気ケースと対向する部分の少なくとも一部に形成されている点にある。
【0018】
また、気流性状を考慮した場合、整流板は、その中央部分が排気フードの上側開口又は吸気ケースの下方に位置していることが好ましい。この場合、整流板の開口が、整流板の中央部に形成されていることにより、勢いの強い調理排気を効率良く吸い込むことができる場合が多い。
【0019】
即ち、本発明に係る調理排気排出装置の更なる特徴構成は、前記整流板の開口は、該整流板の中央部に形成されている点にある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る調理排気排出装置の側面図である。
図2】第1実施形態に係る調理排気排出装置の縦断側面図である。
図3】第1実施形態に係る調理排気排出装置の横断平面図である。
図4】整流板を設けていない場合の調理排気の気流を示した図である。
図5】開口が形成されていない整流板を設けた場合の調理排気の気流を示した図である。
図6】第1実施形態に係る調理排気排出装置を使用した場合の調理排気の気流を示した図である。
図7】排気流量に対する燃焼排ガスの捕集率の変化を示したグラフである。
図8】排気流量に対する調理汚染物質の捕集率の変化を示したグラフである。
図9】第2実施形態に係る調理排気排出装置の縦断側面図である。
図10】第2実施形態に係る調理排気排出装置の横断平面図である。
図11】第2実施形態に係る調理排気排出装置の縦断正面図である。
図12】別実施形態に係る調理排気排出装置の縦断側面図である。
図13】別実施形態に係る調理排気排出装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下、図1図3を参照して本発明の第1実施形態に係る調理排気排出装置Bについて説明する。図1に示すように、第1実施形態に係る調理排気排出装置Bは、ガスレンジ等の厨房機器Aが設置された厨房室の天井側箇所に設置されており、厨房機器Aからの調理排気Hを外部に排出するための装置である。この調理排気排出装置Bは、排気フード1と、この排気フード1内に配設された吸気ケース2と、排気フード1内における吸気ケース2の下方に配設された整流板10とを備えている。
【0026】
また、図2及び図3に示すように、排気フード1は、厨房室の天井部Dに設置される上向き凹状の構造を有しており、具体的に、矩形板状の天板部1a、天板部1aの前後の縁部から下方に垂下する状態に設けられる前後板部1b、及び天板部1aの左右の縁部から下方に垂下する状態に設けられる側板部1cを備える形態に構成されている。また、前後板部1b及び側板部1cは、その下端側に、それぞれ排気フード1の内側空間に向けて折り曲げられて形成された水平部1dと、水平部1dの延出端が上方に向けて折り曲げられて形成された鉛直部1eとを有している。尚、前後板部1b及び側板部1cが「側壁部」に相当する。また、図2では側板部1cの図示を省略した。
【0027】
天井部Dには排気ダクト3が開口しており、排気フード1の天板部1aには排気ダクト3と連通する上側開口Saが形成されている。また、本実施形態に係る調理排気排出装置Bにおいては、前後板部1b及び側板部1cの各鉛直部1eで区画された下側開口Sbが形成されている。更に、排気フード1の天板部1aには、平面視で矩形の四隅に位置する箇所に、下方に向けて伸びた吊架具8が固設されている。
【0028】
尚、排気フード1において、排気ダクト3と連通する部分(連通部)には、調理排気Hの流動状態を調整するルーバー装置4が設置されている。また、図示は省略するが、排気ダクト3には排気ファン(図示せず)が接続されており、当該排気ファンの動作によって、排気フード1内の空気が連通部を通して排気ダクト3に吸引するように構成されている。
【0029】
吸気ケース2は、横断面形状が逆台形状に形成されており、台形状に配置される側壁部に、左右一対のグリスフィルタ5が配置されている。尚、吸気ケース2は、その底壁部2aが着脱自在に構成され、底壁部2aの清掃を良好に行うことができるようになっている。例えば、調理排気排出装置Bを使用するにつれて、吸気ケース2の底壁部2aに調理排気Hに含まれた油脂類が徐々に蓄積するが、底壁部2aが着脱自在であることによって、底壁部2aを吸気ケース2から外した状態で油脂類の除去作業等を良好に行うことができる。
【0030】
また、吸気ケース2は、その内部を排気フード1の上側開口Saに臨ませる状態で、天井部Dの下方に配置されている。したがって、厨房機器Aからの調理排気Hが、排気フード1の内部に流動し、グリスフィルタ5を通過して吸気ケース2の内部に流動することになる。そして、吸気ケース2の内部に流動した調理排気Hが、吸気ケース2の内部において、排気ダクト3に向けて流動するように構成されている。
【0031】
整流板10は、矩形状に形成された平板状の部材であり、その中央部に、周囲が帯状体に囲まれた一辺の長さがL1である略正方形状の開口(中央開口)S1が形成されている。尚、上記中央部とは、整流板10の前後方向における中央に位置する部分であるか、或いは、左右方向における中央に位置する部分であれば良く、当然、前後方向における中央に位置し、且つ、左右方向における中央に位置する部分も含む概念である。本実施形態では、前後方向における中央、且つ、左右方向における中央に位置する部分に中央開口S1が形成されている。
【0032】
また、この整流板10の四隅には、排気フード1の天板部1aに固設された4つの吊架具8の各下端部が挿通される貫通孔が形成されている。整流板10は、その外周面が排気フード1の前後板部1b及び側板部1cの鉛直部1eとの間に幅がL2である隙間を空けた状態で、貫通孔に通された吊架具8の先端にナットが取り付けられ、前後板部1b及び側板部1cの下端部と略同一平面上の位置に水平に吊り下げられており、これにより、整流板10と排気フード1との間に環状開口S2が形成された状態となる。
【0033】
以上の構成を備えた調理排気排出装置Bにおいては、排気ファンを所定の排気流量となるように動作させることにより、厨房機器Aで発生した調理排気Hが排気フード1内に流動し、排気フード1内に流動した調理排気Hが吸気ケース2内において、天井部Dの連通部に向けて流動し、当該流通部を通して排気ダクト3に向けて流動して外部に排出される。
【0034】
ここで、排気フード1内に流動する調理排気Hの量は、整流板の有無や形状等によって変化する。例えば、図4に示すように、整流板を設けていない場合には、所定の排気流量となるように排気ファンを動作させて調理排気Hの排出を行った際に、排気流量によっては調理排気Hの一部(図4の点線矢印)が排気フード1の下側開口Sb外に漏れて吸い込まれなくなり、排気フード1内に流動する調理排気Hの量が少なくなることがある。
【0035】
これに対して、図5に示すように、中央部に開口のない整流板50をその外周面が排気フード1の前後板部1b及び側板部1cの鉛直部1eとの間に隙間を空けた状態で設けた場合、排気流量が同じであっても整流板50と排気フード1との間の隙間(環状開口S2)を通して吸い込まれる空気の速度は整流板を設けていない場合と比較して速くなり、調理排気Hが排気フード1の下側開口Sb外に漏れ難くなる。したがって、整流板を設けていない場合と比較し、排気フード1内に流動する調理排気Hの量が多くなり、排気フード1の捕集性能が向上する。
【0036】
しかしながら、中央部に開口のない整流板50を設けた場合であっても、速度が速い或いは流量が大きい(言い換えれば、勢いが強い)調理排気Hが発生するような場合、発生した調理排気Hが整流板50に衝突して、当該整流板50に沿って勢いよく拡散する。そのため、拡散した調理排気Hの影響によって環状開口S2から調理排気Hが吸い込まれ難くなって、調理排気Hの一部(図5の点線矢印)が排気フード1内に流動せず、排気フード1内に流動する調理排気Hの量が減少し、排気フード1の捕集性能が低下するおそれがある。
【0037】
ところが、本実施形態に係る調理排気排出装置Bにおいては、整流板10の中央部に開口S1を形成するようにしている。そのため、図6に示すように、勢いが強い調理排気Hが発生するような場合であっても、そのような調理排気Hの多くを拡散させることなく中央開口S1から吸い込むことができ、環状開口S2から調理排気Hが吸い込まれ難くなるという事態の発生を抑えることができる。
【0038】
したがって、本実施形態に係る調理排気排出装置Bによれば、勢いが強い調理排気Hが発生する場合であっても、排気流量を上げることなく、排気フード1内に流動する調理排気Hの量を増やして、排気フード1の捕集性能の向上を図ることができる。
【0039】
〔捕集率測定実験〕
本願発明者らは、下側開口が平面視正方形状である排気フードに、平面視正方形状の中央開口を形成した整流板を環状開口が形成するように設置したもの(実施例1~3)、中央開口を形成していない整流板を環状開口が形成するように設置したもの(比較例1)及び整流板を設置していないもの(比較例2)について、排気流量を変化させた際の燃焼排ガスの捕集率及び調理汚染物質の捕集率をそれぞれ測定した。
【0040】
整流板形状の検討においては、測定は吸気ケースを外した状態で行った。尚、グリスフィルタを設置した場合の捕集率と設置しない場合の捕集率との関係について、グリスフィルタを設置した場合は、設置しない場合と比較して捕集率が若干小さくなるが、その差は2~4%であると報告(千原、相良、山中、甲谷:業務用厨房における高効率排気システムに関する研究(その3)実験による整流板を有する高捕集率排気フードの検討,空気調和・衛生工学会近畿支部研究発表論文集,pp.193-196,2007年3月)されていることから、吸気ケースの有無による影響は軽微である。
【0041】
実験条件は表1にまとめた。表1においては、中央開口の一辺の長さL1、並びに整流板の外周面と前後板部及び側板部の鉛直部との間の幅L2を、それぞれ下側開口の左右方向の長さに対する割合で表している。また、開口率とは、下側開口の面積に対する整流板以外の面積(即ち、開口及び環状開口の面積)の割合であり、実施例1~3では中央開口の面積と環状開口の面積とを合わせた面積の割合に相当し、比較例1では環状開口の面積の割合に相当する。
【表1】
【0042】
図7は排気流量に対する燃焼排ガスの捕集率の変化を示したグラフであり、図8は排気流量に対する調理汚染物質の捕集率の変化を示したグラフである。同図から分かるように、実施例1~3は、排気流量によって多少にバラつきはあるものの、全体的に比較例1及び比較例2に比べて、燃焼排ガスの捕集率及び調理汚染物質の捕集率ともに高くなる傾向にある。ここで、これらの捕集率と排気フード内に流動する調理排気の量との間には相関関係があり、捕集率が高い方が排気フード内に流動する調理排気の量も多くなると考えられる。したがって、本測定実験の結果によれば、中央開口を形成した整流板を環状開口が形成するように排気フード内に設置することによって、排気フード内に流動する調理排気の量を多くすることができ、排気フードの調理排気捕集性能を向上できることが確認できる。
【0043】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る調理排気排出装置Bは、整流板20が接合分離自在な4枚の板材21,22からなる点が上記第1実施形態と異なっている。以下、第2実施形態の調理排気排出装置Bについて、図9図11を参照しつつ説明するが、上記第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。尚、図9では側板部1cの図示を省略し、図11では前後板部1bの図示を省略した。
【0044】
第2実施形態に係る調理排気排出装置Bの整流板20は、折り曲げ部(図10中の破線部分)21aを有する平面視長方形状の2枚の第1板材21と、第1板材21よりも小さい平面視長方形状の2枚の第2板材22とからなる。第1板材21は、折り曲げ部21aを除く周縁部が上方に向けて折り曲げられて形成された鉛直部21bを有しており、折り曲げ部21aで折り曲げることができるようになっている。第2板材22は、周縁部が上方に向けて折り曲げられて形成された鉛直部22aを有している。更に、第2板材22は、平面視で四隅の位置に、長辺側に形成された鉛直部22aから外方に向けて水平に延出した水平部22bと、水平部22bの延出端が更に下方に向けて折り曲げられて形成された鉛直部22cとを有しており、鉛直部22a,22c及び水平部22bが接合部23として機能する。尚、折り曲げた状態における第1板材21の寸法及び第2板材22の寸法は、例えば、業務用食器洗浄機内などに収容可能な寸法(一例として、35cm×50cm)となるようにする。
【0045】
2枚の第1板材21は、その長手方向が排気フード1の前後方向に沿い、且つ、それぞれ前後板部1b及び側板部1cの鉛直部1eとの間に幅がL2である隙間が形成されるように、排気フード1の左右方向に沿って相互に間隔を空けて配置されている。また、2枚の第2板材22は、その長手方向が排気フード1の前後方向に沿うように、排気フード1の前後方向に相互に間隔を空けて第1板材21間に配置されており、整流板20においては、第1板材21及び第2板材22に囲まれた部分が中央開口S1となっている。尚、第1板材21と第2板材22とは、第2板材22の接合部23が第1板材21の鉛直部21bに係合した状態で、前後板部1b及び側板部1cの下端と略同一の平面内に位置し、且つ、水平となるように、前後板部1bの鉛直部1eに係合した複数(図10では前後それぞれ4つずつの計8つ)の支持具25によって下面が支持されている。
【0046】
第2実施形態に係る調理排気排出装置Bによれば、中央開口S1及び環状開口S2が形成されているため、上記と同様に、勢いが強い調理排気Hが発生した場合であっても、そのような調理排気Hの多くを拡散させることなく中央開口S1から吸い込むことができ、環状開口S2から調理排気Hが吸い込まれ難くなるという事態の発生を抑えることができる。したがって、勢いが強い調理排気Hが発生する場合であっても、排気流量を挙げることなく、排気フード1内に流動する調理排気Hの量を増やして、排気フード1の捕集性能の向上を図ることができる。
【0047】
また、第2実施形態に係る調理排気排出装置Bは、整流板20が接合分離自在な第1板材21及び第2板材22で構成されるとともに、第1板材21が折り曲げ部21aで折り曲げられるように構成されているため、以下に述べる利点を有する。即ち、第1実施形態に係る調理排気排出装置Bのように、整流板10を一枚の板状の部材で構成すると整流板10の寸法が大きくなるため、整流板10に付着、蓄積した油脂類の除去作業などを行う際に取り扱い難いという問題がある。これに対して、第2実施形態に係る調理排気排出装置Bにおいては、上記除去作業などを行う際に、整流板20をこれよりも寸法の小さい第1板材21及び第2板材22に分離することができ、また、第1板材21を更に折り曲げることができるため、取り扱いが容易となり、例えば、各々の板材21,22を業務用食器洗浄機などを使用して洗浄することが可能となる。
【0048】
以上のように、第2実施形態に係る調理排気排出装置Bによれば、勢いの強い調理排気Hが発生する場合であっても、排気流量を大きくすることなく、排気フード1内に流動する調理排気Hの量を増やすことができ、排気フード1の調理排気捕集性能を向上させることができる。更に、上記除去作業などを行う際の取り扱い難さを改善することができる。
【0049】
〔別実施形態〕
〔1〕上記各実施形態では、調理排気排出装置Bの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。上記第1実施形態では、排気フード1の天板部1aに下方に向けて伸びた吊架具8を固設するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、図12に示すように、吸気ケース2の底壁部2aに、下方に向けて伸びた吊架具8を固設するようにしても良い。この場合、整流板10が前後板部1b及び側板部1cの下端と略同一の平面内に位置するように、当該整流板10の下面を、中央開口S1から通された吊架具8によって支持すれば良い。
【0050】
また、上記第1実施形態では、吊架具8を用いて整流板10を所定の位置に配置するようにしているが、吊架具8に代えて第2実施形態における支持具25を用いるようにしても良い。即ち、図13に示すように、前後板部1bの鉛直部1eに係合した4つの支持具25によって、整流板10が前後板部1b及び側板部1cの下端と略同一の平面内に位置するように、当該整流板10の四隅の下面を支持するようにしても良い。
【0051】
〔2〕上記各実施形態では、開口S1を整流板10,20の中央部に形成したがこれに限られるものではなく、開口S1の位置は、勢いの強い調理排気Hが発生し易い調理機器(ガスコンロなど)との位置関係や調理排気Hの気流性状に合わせて適宜変更することができる。尚、吸気ケース2は、勢いの強い調理排気Hが発生し易い調理機器の上方に配設されるのが一般的であるため、整流板10,20における吸気ケース2と対向する部分の少なくとも一部に開口S1を形成しておくことで、勢いの強い調理排気Hを効率良く吸い込むことができる。
【0052】
〔3〕上記各実施形態では、開口S1の形状を正方形状としたが、これに限られるものではなく、例えば、円形状や楕円形状であっても良いし、吸気ケース2の底壁部2aの形状に合わせて長方形状にしても良い。
【0053】
〔4〕上記各実施形態では、整流板10,20を、前後板部1b及び側板部1cの下端部と略同一平面上の位置に水平に吊り下げるようにしているが、これに限られるものではなく、整流板10,20の上下方向における位置は、適宜変更することができる。
【0054】
〔5〕上記第1実施形態では、整流板10を一枚の板状の部材で構成したが、この整流板に適宜折り曲げ部を一又は複数形成して折り畳み自在に構成し、折り曲げ部で折り曲げることで、サイズを小さくして取り扱い難さを改善するようにしても良い。
【0055】
〔6〕上記各実施形態では、吸気ケース2を設けた構成としたが、これに限られるものではなく、調理排気排出装置は、吸気ケースを備えていなくても良い。この場合、整流板は、排気フード内の上側開口の下方に、水平に配設されていることが好ましく、整流板の開口は、上側開口と対向する部分の少なくとも一部に形成されていることが好ましい。
【0056】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、排気フード内に流動する調理排気の量を増加させることができ、フードの捕集性能の向上を図ることができる調理排気排出装置に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 排気フード
1b 前後板部(側壁部)
1c 側板部(側壁部)
2 吸気ケース
3 排気ダクト
10,20 整流板
21 第1板材
22 第2板材
B 調理排気排出装置
Sa 上側開口
Sb 下側開口
S1 中央開口(開口)
S2 環状開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13