IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図1
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図2
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図3
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図4
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図5
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図6
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図7
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図8
  • 特許-パンツ型吸収性物品 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20230919BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20230919BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230919BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20230919BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
A61F13/49 312A
A61F13/496
A61F13/49 413
A61F13/51
A61F13/532 200
A61F13/535 200
A61F13/49 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019100066
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020192123
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】村上 圭
(72)【発明者】
【氏名】永山 唯
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大貴
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104012(WO,A1)
【文献】特開2018-175364(JP,A)
【文献】特開2017-118972(JP,A)
【文献】特開2018-478(JP,A)
【文献】特開2018-38465(JP,A)
【文献】特開平10-99373(JP,A)
【文献】特開2008-148834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/49
A61F 13/496
A61F 13/51
A61F 13/532
A61F 13/535
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向、左右方向、及び前後方向を有し、
前記上下方向に沿って配置された吸収性コアを備え、前記上下方向の下端部にて前後方向に折り曲げられた吸収性本体と、
一対の胴周り部を備え、前記吸収性本体の非肌側に位置する外装部と、
を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記下端部において、前記吸収性本体の前記左右方向の側端は、前記外装部の前記左右方向の側端よりも外側に位置し、
前記一対の胴回り部のうち少なくとも一方の胴回り部において、
非伸縮性シートと、前記左右方向に伸縮する伸縮性シートとを備え、
前記非伸縮性シートと前記伸縮性シートは、複数の溶着部によって前記前後方向に溶着されており、
伸長状態において、
単位面積あたりの前記溶着部の面積の割合が所定の値である低面積率領域と、単位面積あたりの前記溶着部の面積の割合が前記低面積率領域より大きい高面積率領域を有し、
前記一方の胴回り部のうち、
前記低面積率領域において前記吸収性コアと重ならない領域を第1領域とし、
前記低面積率領域と前記吸収性コアとが重なる領域を第2領域とし、
前記高面積率領域と前記吸収性コアとが重なる領域を第3領域とすると、
前記左右方向の中央部において、
前記第2領域が、前記上下方向における前記第1領域と前記第3領域の間に設けられており、
前記高面積率領域と前記吸収性コアとが重ならない領域を第4領域とすると、
前記第4領域は、前記第3領域の前記左右方向の外側から前記第3領域に隣接し、
前記第1領域は、前記第4領域の前記左右方向の外側から前記第4領域に隣接することを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記第2領域に、周囲より平均坪量が低くなっている低坪量領域を有していることを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記第3領域にも、周囲より平均坪量が低くなっている低坪量領域を有していることを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記第3領域に設けられた低坪量領域は、前記左右方向に間隔を空けて複数設けられており、
前記左右方向において、前記第3領域の上端部に設けられた前記低坪量領域の数が、前記第3領域の下端部に設けられた前記低坪量領域の数より多いことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記低坪量領域は、前記上下方向に第1長さを有する上下低坪量領域と、前記左右方向に第2長さを有する左右低坪量領域とを有することを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記一対の胴回り部は、それぞれ前記溶着部、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域を有し、
前記左右方向の中央において、且つ、前記伸長状態において、
腹側胴回り部の前記第2領域の前記上下方向の長さより、背側胴回り部の前記第2領域の前記上下方向の長さが長いことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつが知られている。例えば、特許文献1には、外装部30、ウエスト弾性部材33、吸収性コア22備えた吸収性本体20を有するパンツ型のおむつ10が開示されている。吸収性本体20(吸収性コア22)は、腹側部Aから背側部Bにわたるように、おむつ10の長手方向に一致させて外装体30に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-255558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のおむつ10では、ウエスト弾性部材33による幅方向に伸縮する力は、外装部30と吸収性コア22と重ね合わせて接合によって低下する。そのため、吸収性コア22が重ねられた領域と重ねられていない領域には、剛性の差が生じており、吸収性コア22が重ねられた領域と重ねられていない領域との外装部30の弾性係数にも差があるために、着用時には、その吸収性コア22の上端を境として身体の形状や身体の動きに対する追従性が異なってしまい、着用者に違和感を与えてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、胴回り部と吸収性コアが重ねられていない領域と、胴回り部と、吸収性コアとが重ねられた領域との追従性の差によって着用者に与える違和感を軽減させるパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いに交差する上下方向、左右方向、及び前後方向を有し、
前記上下方向に沿って配置された吸収性コアを備え、前記上下方向の下端部にて前後方向に折り曲げられた吸収性本体と、
一対の胴周り部を備え、前記吸収性本体の非肌側に位置する外装部と、
を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記下端部において、前記吸収性本体の前記左右方向の側端は、前記外装部の前記左右方向の側端よりも外側に位置し、
前記一対の胴回り部のうち少なくとも一方の胴回り部において、
非伸縮性シートと、前記左右方向に伸縮する伸縮性シートとを備え、
前記非伸縮性シートと前記伸縮性シートは、複数の溶着部によって前記前後方向に溶着されており、
伸長状態において、
単位面積あたりの前記溶着部の面積の割合が所定の値である低面積率領域と、単位面積あたりの前記溶着部の面積の割合が前記低面積率領域より大きい高面積率領域を有し、
前記一方の胴回り部のうち、
前記低面積率領域において前記吸収性コアと重ならない領域を第1領域とし、
前記低面積率領域と前記吸収性コアとが重なる領域を第2領域とし、
前記高面積率領域と前記吸収性コアとが重なる領域を第3領域とすると、
前記左右方向の中央部において、
前記第2領域が、前記上下方向における前記第1領域と前記第3領域の間に設けられており、
前記高面積率領域と前記吸収性コアとが重ならない領域を第4領域とすると、
前記第4領域は、前記第3領域の前記左右方向の外側から前記第3領域に隣接し、
前記第1領域は、前記第4領域の前記左右方向の外側から前記第4領域に隣接することを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用時における追従性の差が大きい第1領域と第3領域との間に設けられた第2領域が第1領域と第3領域との着用時における追従性の差を緩衝させやすくなり、第1領域と第3領域との着用時における追従性の差によって着用者に違和感を与えてしまう恐れを軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】パンツ型使い捨ておむつ1の斜視図である。
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図である。
図3図2のI-I線での概略断面図である。
図4図4Aは、展開且つ伸長状態の吸収性本体10を肌側から見た概略平面図である。図4Bは、図4AのA-A断面図である。
図5】展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図であり、各種伸縮領域と、吸収性コア11との位置関係を説明する図である。
図6】吸収性コア11を肌側から見た平面図である。
図7】おむつ1着用時における吸収性コア11の変形について説明する概略斜視図である。
図8】展開且つ伸長状態のおむつ1の追従性の大きさが異なる領域を説明する図である。
図9】展開且つ伸長状態のおむつ1の各溶着領域を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに交差する上下方向、左右方向、及び前後方向を有し、一対の胴回り部と、前記上下方向に沿って配置された吸収性コアを備え、前記上下方向の下端部にて前後方向に折り曲げられた吸収性本体と、を有するパンツ型吸収性物品であって、前記一対の胴回り部のうち少なくとも一方の胴回り部において、非伸縮性シートと、前記左右方向に伸縮する伸縮性シートとを備え、前記非伸縮性シートと前記伸縮性シートは、複数の溶着部によって前記前後方向に溶着されており、伸長状態において、単位面積あたりの前記溶着部の面積の割合が所定の値である低面積率領域と、単位面積あたりの前記溶着部の面積の割合が前記低面積率領域より大きい高面積率領域を有し、前記一方の胴回り部のうち、前記低面積率領域と前記吸収性コアとが重ならない領域を第1領域とし、前記低面積率領域と前記吸収性コアとが重なる領域を第2領域とし、前記高面積率領域と前記吸収性コアとが重なる領域を第3領域とすると、前記左右方向の中央部において、前記第2領域が、前記上下方向における前記第1領域と前記第3領域の間に設けられていることを特徴とするパンツ型吸収性物品ことを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0010】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、着用時における追従性の差が大きい第1領域と第3領域との間に設けられた第2領域が第1領域と第3領域との着用時における追従性の差を緩衝させやすくなり、第1領域と第3領域との着用時における追従性の差によって着用者に違和感を与えてしまう恐れを軽減させることができる。
【0011】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性コアは、前記第2領域に、周囲より平均坪量が低くなっている低坪量領域を有していることが望ましい。
【0012】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、第2領域に設けられた低坪量領域によって、第2領域の剛性を低下させることができるため、第2領域の着用時における追従性を第3領域より大きくすることができ、第1領域と第3領域との着用時における追従性の差を緩衝させやすくすることができる。
【0013】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性コアは、前記第3領域にも、周囲より平均坪量が低くなっている低坪量領域を有していることが望ましい。
【0014】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、第2領域及び第3領域に設けられた低坪量領域によって、吸収性コアの一方の胴回り部側の剛性を全体的に低下させることができるため、第1領域と第3領域との間の着用時における追従性の差をより小さくすることができる。
【0015】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記第3領域に設けられた低坪量領域は、前記左右方向に間隔を空けて複数設けられており、前記左右方向において、前記第3領域の上端部に設けられた前記低坪量領域の数が、前記第3領域の下端部に設けられた前記低坪量領域の数より多いことが望ましい。
【0016】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、第3領域内のうち、第2領域に近い上端部の剛性を下端部の剛性より低くすることで、第2領域から第3領域の下端部に向かって段階的に追従性を小さくさせやすくなり、着用時における追従性の差によって与えてしまう着用者への違和感を軽減させやすくなる。
【0017】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記低坪量領域は、前記上下方向に第1長さを有する上下低坪量領域と、前記左右方向に第2長さを有する左右低坪量領域とを有することが望ましい。
【0018】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、上下低坪量領域及び左右低坪量領域が折れ曲がり起点となりやすくなって吸収性コアが上下方向及び左右方向に変形しやすくなり、着用者の身体や動きに応じた形状になりやすくなる。
【0019】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記第3領域に対して前記左右方向から隣接する領域について、前記高面積率領域において前記吸収性コア重ならない領域である第4領域は、前記第3領域の前記左右方向の外側から前記第3領域に隣接し、前記第1領域は、前記第4領域の前記左右方向の外側から前記第4領域に隣接することが望ましい。
【0020】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、第3領域と前記左右方向において重なる領域について、第4領域が第1領域と第3領域との間の着用時における追従性の差を緩衝させやすくなり、第1領域と第3領域との着用時における追従性の差によって生じる左右方向の応力の差で着用者に違和感を与えてしまう恐れを軽減させることができる。
【0021】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記一対の胴回り部は、それぞれ前記溶着部、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域を有し、前記左右方向の中央において、且つ、前記伸長状態において、腹側胴回り部の前記第2領域の前記上下方向の長さより、背側胴回り部の前記第2領域の前記上下方向の長さが長いことが望ましい。
【0022】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、背側は、臀部及び腰部の凹凸に第1領域と第3領域の着用時における追従性の差によって生じる応力が集中しやすいため、第1領域と第3領域との着用時における追従性の差を緩衝する第2領域を広く設けることで、第1領域と第3領域との周主力の差によって生じる応力を軽減させることができる。
【0023】
===実施形態===
以下、本発明の「パンツ型吸収性物品」として、大人用のパンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて実施形態を説明する。但し、本発明のパンツ型吸収性物品は、例えば、子供用の使い捨ておむつや、生理用品(ショーツ型ナプキン)等としても利用可能である。
【0024】
<<おむつ1の全体構成>>
図1は、おむつ1の概略斜視図である。図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図である。図3は、図2のI-I線での概略断面図である。図4Aは、展開且つ伸長状態の吸収性本体10を肌側から見た概略平面図である。図2等におけるC-Cは、左右方向中心を示している。図4Bは、図4AのA-A断面図である。なお、図4Bでは、説明の簡略化のため、吸収性コア11に設けられる低坪量領域30(後述)については非表示としている。また、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1を皺なく伸長させた状態であり、おむつ1を構成する各部材(例えば後述する外装部20等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態である。「自然状態」とは、以下のように定義される。まず、製品として梱包されているおむつ1をパッケージから取り出した後、おむつ1の左右方向の端部を左右方向の両外側に引っ張り、それぞれ各部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長させる。この伸長させた状態を15秒継続させた後、おむつ1の伸長させた状態を解除して机等の平面に置く。そして、この平面に置いた状態で5分間経過させた状態がおむつ1の自然状態である。図4図9において、吸収性コア11、低坪量領域30等は、外観からは視認不能であるが、便宜上、実線で示している。
【0025】
おむつ1は、互いに交差する上下方向、左右方向、及び、前後方向を有するとともに、図3に示すように、各部材が積層された厚さ方向を有する。上下方向において、着用者の胴側となる側を上側とし、着用者の股下となる側を下側とする。前後方向において、着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側とする。厚さ方向において、着用者の身体に接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。また、図2の展開状態において、おむつ1は、互いに交差する長手方向及び幅方向を有している。長手方向は、上下方向に沿った方向であり、幅方向は、左右方向と同じ方向である。
【0026】
おむつ1は、平面視長方形状である吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に位置する外装部20とを有している。外装部20は、図1の前後方向における前側に位置する腹側外装部(「腹側胴回り部」ともいう。)21と、前後方向における後側に位置する背側外装部(「背側胴回り部」ともいう。)22と、それらを繋ぐ股下外装部23とを有している。厚さ方向に隣接する上記部材は接着剤等で接合されている。
【0027】
吸収性本体10の長手方向の一端側に、腹側外装部21が位置し、吸収性本体10の長手方向の他端側に、背側外装部22が位置している。吸収性本体10の長手方向において、腹側外装部21が位置する側を前側とし、背側外装部22が位置する側を後側とする。つまり、腹側外装部21は吸収性本体10の前側上端部に位置し、背側外装部22は吸収性本体10の後側上端部に位置している。また、股下部材23は腹側外装部21及び背側外装部22よりも肌側に位置している。
【0028】
なお、本実施形態のおむつ1では外装部20が3部材から構成されているが、これに限らない。例えば、腹側外装部21、背側外装部22、及び、股下部23が1部材であっても良い。また、股下部23を有さない構成や、外装部20よりも非肌側に外装部20とは異なる部材がさらに積層されている構成であっても良い。
【0029】
図2に示す展開状態のおむつ1は、吸収性本体10が長手方向の所定位置CLで2つ折りされ、腹側外装部21の左右方向の両側部と背側外装部22の左右方向の両側部とが溶着等で接合されることにより、図1に示すパンツ型となる。つまり、吸収性本体10の長手方向がおむつ1の上下方向に沿い、腹側外装部21と背側外装部22とが環状につながって、胴回り開口1a及び一対の脚回り開口1bが形成される。以下、腹側外装部21と背側外装部22とが接合された領域を端部接合領域24という。
【0030】
また、本明細書中では、所定位置CLにて折り曲げられた吸収性本体10(吸収性コア11)のうち、前側に折り曲げられた部分を「腹側部10F」、後側に折り曲げられた部分を「背側部10R」とする。すなわち、図2の長手方向において、吸収性本体10(吸収性コア11)の所定位置CLよりも前側の領域を「腹側部10F」と呼び、所定位置CLよりも後側の領域を「背側部10R」と呼ぶ場合がある。
【0031】
トップシート12は、液透過性のシートであり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が用いられる。バックシート13は、液不透過性シート13a、及び、その非肌側に配された疎水性シート13bの二層構造である。液不透過性シート13aとしては、例えば樹脂フィルム等が用いられ、疎水性シート13bとしては、例えば柔軟性を有する疎水性の不織布等が用いられる。なお、バックシート13は液不透過性シート13aの一層構造であっても良い。
【0032】
バックシート13の左右方向の両側にはサイドシート14が設けられている。このサイドシート14は、吸収性コア11の左右方向の両端11es,11esよりも左右方向の外側に延出し、吸収性本体10の左右方向の両端10es,10esを折り返し位置として左右方向の内側かつ厚さ方向の肌側に折り返されることによって、1対の防漏壁部40形成している。防漏壁部40には糸ゴム等の防漏壁弾性部材41,42が、吸収性本体10の長手方向(上下方向)に沿って伸長された状態で固定されている。この防漏壁弾性部材41,42が長手方向に収縮することにより、吸収性本体10の左右方向の両端部において一対の防漏壁部40が肌側に立ち上がり、おむつ1の防漏壁(レッグサイドギャザー)として機能する。なお、サイドシート14を設けず、バックシート13(液透過性シート13b)を吸収性コア11の左右方向の外側まで延出させることによって、防漏壁部40が形成されるようにしても良い。
【0033】
腹側外装部21、及び、背側外装部22は、それぞれ図3に示すように、肌側に位置する肌側シート213,223と、非肌側に位置する非肌側シート214,224と、それらの間に位置し、少なくともおむつ1の左右方向に伸縮性を備える伸縮性シート215,225とを有している。
【0034】
肌側シート213,223、及び、非肌側シート214,224は、柔軟なシートであることが好ましく、例えばスパンボンド不織布やSMS不織布等が用いられる。肌側シート213,223、及び、非肌側シート214,224は、伸縮性シート215、225より伸縮性が低い非伸縮性シートである。
【0035】
伸縮性シート215,225は、例えば、弾性を有する熱可塑性エラストマー性繊維であるポリウレタン系エラストマーと、非弾性を有する熱可塑性樹脂性繊維であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)とを有しており、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された伸縮性不織布である。この延伸処理により、伸縮性シート215,225は、所定の方向に伸縮性を有しているものとする。なお、延伸処理は、互いに直交する方向に延伸処理を行うものであっても良いし、所定方向にのみ延伸処理を行うものであっても良い。所定方向にのみ延伸処理を行った場合、所定方向における伸縮性が発現されるが、すべての繊維の配向が所定方向に沿っているとは限らないため、所定方向と直交する方向にも伸縮性が発現される。
【0036】
肌側シート213,223、非肌側シート214,224、及び、伸縮性シート215,225は、点在する複数の溶着部25(図9)によって接合されている。溶着部25は、例えば、超音波溶着や熱溶着等の溶着処理が施された領域である。溶着部によって各シート同士が接合されているため、例えば固化する接着剤により接合される場合に比べて、肌触りが柔らかくなっている。また、溶着部25同士の間において、伸縮性シート215,225が収縮することで、肌側シート213,223、及び、非肌側シート214,224が溶着部25同士の間で膨らんで皺が形成されるため、肌触りがより柔らかくなり、視覚的にも柔らかい印象を使用者に付与できる。溶着部25の詳細は、後述する。
【0037】
このような構成により、腹側外装部21、及び、背側外装部22は、全体としておむつ1の左右方向(及び上下方向)に伸縮性を有している。図5は、展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図であり、各種伸縮領域と、吸収性コア11との位置関係を説明する図である。図5に示すように、腹側外装部21において左右方向の伸縮性を発現している領域を前側伸縮領域21sとし、背側外装部22において左右方向の伸縮性を発現している領域を後側伸縮領域22sとする(図5の網掛け部)。
【0038】
なお、伸縮性シート215,225として伸縮性不織布の代わりに伸縮性フィルムを用いても良い。但し、伸縮性フィルムの厚みはほぼ均一であるため、溶着部25a,25bの間の肌側シート213,223及び非肌側シート214,224の膨らみが潰れやすい。これに対して、伸縮性不織布による伸縮性シート215,225は溶着部25a,25bの間において厚みが増すため、肌側シート213,223及び非肌側シート214,224の膨らみが潰れ難く、肌触りの柔らかさや美観性を保つことができる。
【0039】
また、腹側外装部21、及び、背側外装部22では、胴回り開口1aに沿う領域に、糸ゴム等の胴回り弾性部材26が複数配されている。同様に、脚回り開口1bに沿う領域に、糸ゴム等の脚回り弾性部材27が複数配されている。つまり、おむつ1の胴回り及び脚回りは、胴回り弾性部材26及び脚回り弾性部材27によって、着用者の身体にしっかりと密着するため、おむつ1のずれ落ちや脚回りからの漏れを防止できる。一方、その他の部位は、伸縮性シート215,225により面全体で緩やかに着用者の身体にフィットするため、締め付け感が軽減される。
【0040】
股下部材23は、長手方向の中央部分において左右方向の内側へ湾曲した平面視略砂時計形状を成している。また、図3に示すように、股下部材23は、肌側に位置する肌側シート231と、非肌側に位置する非肌側シート232と、それらの間に位置し、おむつ1の上下方向(吸収性本体10の長手方向)に伸縮性を付与する伸縮性シート233とを有している。これらのシート231~233は複数の溶着部(不図示)により接合されている。股下部材23において、上下方向に沿った伸縮性が発現している領域を股下伸縮領域23sとする(図5の斜線部参照)。
【0041】
この股下伸縮領域23sが設けられることにより、吸収性コア11は着用者の股下部に密着でき、また、排泄により吸収性コア11の重量が増しても、おむつ1の垂れ下がりを抑制できる。また、股下部材23のうち脚回り開口1bに沿う領域に、複数の股下弾性部材28が配されており、股下部材23が着用者の脚回りに密着するようになっている。
【0042】
吸収性本体10は、図3に示すように、吸収性コア11と、吸収性コア11の肌側に位置するトップシート12と、吸収性コア11の非肌側に位置するバックシート13とを有している。
【0043】
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。本実施形態の吸収性コア11は、長手方向の前側端と後側端との間に、左右方向における幅が狭くなったくびれ部11cを有しており、図4Aに示されるような平面視略砂時計形状を有している。また、吸収性コア11には周囲よりも坪量が低くなった領域である低坪量領域30が形成されている。また、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシートによって、外周面が覆われていても良い。
【0044】
低坪量領域30(31、32)は、おむつ1を着用時に、着用者の身体の動きに合わせて吸収性コア11(吸収性本体10)を変形しやすくさせることができる。図6は、吸収性コア11を肌側から見た平面図である。
【0045】
図6に示すように、吸収性コア11は、着用時に着用者の下腹部に位置する「下腹部位11A」と、着用者の股下部に位置する「股下部位11B」と、着用者の臀部に位置する「臀部位11C」とを有する。図6では、腹側外装部21と重複する部位を下腹部位11Aとし、背側外装部22と重複する部位を臀部位11Cとし、その間を股下部位11Bとしている。すなわち、下腹部位11Aはおむつ1の腹側部10Fに位置する部位であり、臀部位11Cはおむつ1の背側部10Rに位置する部位である。そして、股下部位11Bは、パンツ型形状のおむつ1の上下方向の下端部に位置し、所定位置CLを跨いで腹側部10Fと背側部10Rとに亘って設けられる部位である。
【0046】
低坪量領域31は、下腹部位11A、股下部位11B、臀部位11Cの各部位に、それぞれ左右方向に間隔を空けて複数設けられている。また、低坪量領域31は、上下方向に沿った、上下方向に所定の長さ(第1の長さ)dhを有する上下低坪量領域31hと、左右方向に沿った、左右方向に所定の長さ(第2の長さ)dsを有する左右低坪量領域31sを有する。なお、上下低坪量領域31hの長さdhと左右低坪量領域31sの長さdsは、任意に設定することができ、それぞれ同じ長さである必要はなく、異なる長さであってもよい。また、1つの低坪量領域31が必ずしも上下低坪量領域31hと左右低坪量領域31sの両方を備える必要はなく、いずれか一方を備えたものであってもよい。さらに、下腹部位11Aに設けられたような傾斜した形状の低坪量領域31を備えていてもよい。
【0047】
吸収性コア11の「坪量」とは、単位面積あたりの吸収性コア11(例えばSAPが混入した液体吸収性繊維)の質量(g/m)である。低坪量領域30と周囲との吸収性コア11の坪量の比較は、周知の方法で行うと良い。例えば、目視で比較する方法がある。その他、対象部位を吸収性コア11からサンプルとして切り出し、各サンプルの質量、及び、各サンプルの面積を測定し、単位面積あたりの質量を算出して比較する方法がある。
【0048】
吸収性コア11は、低坪量領域30とその周囲との剛性差により、低坪量領域30を起点に折れ曲がりやすい。したがって、おむつ1の着用時において、低坪量領域31を起点として吸収性コア11が折れ曲がることによって着用者の身体の凹凸に合わせて容易に変形し、着用者の身体にフィットしやすくなる。つまり、上下低坪量領域31hに沿って上下に折れ曲がりやすくなり、左右低坪量領域31sに沿って上下に折れ曲がりやすくなる。
【0049】
また、図6に示すように、吸収性コア11は、おむつ1の上下方向の下端(図1参照)よりも上側、かつ、前後方向の前側(腹側部10F)に、周囲に比べて吸収性コア11の坪量が低くなった領域である中央低坪量領域32を有している。中央低坪量領域32は、吸収性コア11の左右方向の中央部において、上下方向(長手方向)に沿って配置され、周囲に比べて吸収性コア11の坪量が低く、おむつ1の左右方向よりも上下方向に長い略長方形状の領域である。同様に、おむつ1の上下方向の下端よりも上側、かつ、前後方向の後側(背側部10R)にも、中央低坪量領域32が設けられている。本実施形態では、中央低坪量領域32には吸収性コア11が存在しないものとする。すなわち、中央低坪量領域32は吸収性コア11が厚さ方向に貫通した孔である。
【0050】
おむつ1着用時における吸収性コア11の変形について具体的に説明する。図7は、おむつ1着用時における吸収性コア11の変形について説明する概略斜視図である。
【0051】
おむつ1において、中央低坪量領域32は、吸収性コア11が厚さ方向に貫通し、剛性が最も低いため、吸収性コア11は、中央低坪量領域32において最も折れ曲がり変形を生じやすい。そのため、おむつ1の着用時に、吸収性コア11が着用者の股間部で両脚に挟み込まれると、吸収性コア11が中央低坪量領域32の部分で上下方向(吸収性コア11の長手方向)に沿って左右に折れ曲がる。これにより、長手方向における中央低坪量領域32の間の股下部位11Bにおいて、図7のように、吸収性コア11が長手方向に沿って着用者の肌側に凸形状に変形し、凸部11tが形成される。吸収性コア11が股下部位11Bにおいて肌側に凸変形することにより、凸部11tが着用者の排泄口や臀部の割れ目に沿ってフィットしやすく、股下部において排泄物の吸収性を向上させることができる。そして、腹側部10Fでは、股下部位11Bから下腹部位11Aにかけて、吸収性コア11が着用者の腹部の曲面形状に沿って立ち上がる。一方、背側部10Rでは、股下部位11Bから臀部位11Cにかけて、吸収性コア11が着用者の臀部の曲面形状に沿って立ち上がる。これにより、おむつ1の着用時において、吸収性コア11は図7のような形状に変形する。
【0052】
<<おむつ1の伸縮率について>>
おむつ1の腹側における追従性の大きさは、腹側第1領域F1、腹側第2領域F2、腹側第3領域F3、腹側第4領域F4とでそれぞれ異なる。また、おむつ1の背側における追従性の大きさは、背側第1領域R1、背側第2領域R2、背側第3領域R3、背側第4領域R4とでそれぞれ異なる。図8は、展開且つ伸長状態のおむつ1の追従性の大きさが異なる領域を説明する図である。図9は、展開且つ伸長状態のおむつ1の各溶着領域を説明する図である。図8及び図9において、便宜上、各領域の境界を実線で示している。
【0053】
おむつ1において、各領域の追従性の大きさは、外装部20の弾性係数や吸収性コア11の有無に起因する。外装部20の弾性係数とは、外装部20の単位面積領域を所定長さだけ伸長させるための力をいう。おむつ1の腹側と背側には、それぞれ略全域に亘って伸縮性シート215、225が配置されている。
【0054】
従来のパンツ型使い捨ておむつにおいて、吸収性コアは剛性が高いため、外装部と吸収性コアが厚さ方向(前後方向)に重なっている部分と、外装部と吸収性コアが厚さ方向に重なっていない部分とで剛性に差が生じてしまう。そして、吸収性コアと重なっている部分の外装部の弾性係数が、吸収性コアと重なっていない部分の弾性係数より小さい場合は、着用時における追従性が、吸収性コアの上端を境として、外装部と吸収性コアが重なっている部分と、外装部と吸収性コアが重なっていない部分とで大きく差が生じてしまい、身体の形状や身体の動きに対して追従する度合いが異なってしまい、着用者に違和感を与えてしまう恐れがあった。
【0055】
この点、おむつ1の腹側について、図8における腹側第1領域F1と腹側第3領域F3との追従性の差を緩衝させるための緩衝領域として腹側第2領域F2を設けている。腹側第2領域F2は、腹側第1領域F1より追従性が小さく、腹側第3領域F3より追従性が大きい領域である。同様に、おむつ1の背側について、背側第1領域R1と背側第3領域R3との追従性の差を緩衝させるための緩衝領域として背側第2領域R2を設けている。背側第2領域R2は、背側第1領域R1より追従性が小さく、背側第3領域R3より追従性が大きい領域である。各領域について、以下説明する。
【0056】
おむつ1の腹側及び背側における、それぞれ単位面積あたりの溶着部25の面積の割合が、外装部20の左右方向に伸縮する弾性係数の大きさに寄与している。具体的には、単位面積あたりの溶着部25の面積の割合が大きいほど、伸縮性シート215、225の伸縮性が低下し、伸縮性シート215を備えた腹側外装部21、伸縮性シート225を備えた背側外装部22の各弾性係数が小さくなる。図9に示すように、おむつ1の腹側には、溶着領域(低面積率領域)X、溶着領域(高面積率領域)Y、溶着領域Pが設けられ、おむつ1の背側には、溶着領域(低面積率領域)X、溶着領域(高面積率領域)Y、溶着領域P、溶着領域Qが設けられている。なお、以下の説明において、単位面積あたりの溶着部25の面積の割合は、伸長状態のおむつ1について検討するものとする。
【0057】
溶着領域X(図9の右下がりの斜線部)には、単位面積あたりの溶着部25の面積の割合が所定の割合(例えば、2.22%)で溶着部25aが設けられている。溶着部25aは、円形状の溶着部25であり、千鳥状に複数配置されている。溶着領域Y(図9の網掛け部)には、単位面積あたりの溶着部25の面積の割合が、溶着領域Xより高い割合(例えば、4.44%)で溶着部25bが設けられている。つまり、溶着領域Yの外装部20の弾性係数は、溶着領域Xの弾性係数より小さい。溶着部25bは、左右方向に対して45度又は-45度傾いた略長方形状の溶着部25が千鳥状に複数配置されている。溶着領域P(図9の砂地状部)及び溶着領域Q(図9の左下がりの斜線部)は、それぞれ溶着部25c、溶着部25dが設けられている。溶着部25cは円形状、溶着部25dは長方形状の溶着部25であり、それぞれ単位面積あたりの溶着部25の面積の割合が、1,42%、7.77%である。溶着領域P及び溶着領域Qの単位面積あたりの溶着部25の面積の割合は、それぞれ各部位における外装部20の弾性係数や素材に応じて適宜変更可能である。
【0058】
溶着領域Pは、脚回り弾性部材27が配置された領域である。溶着領域Qは、おむつ1の背側のうち、背側外装部材22と吸収性本体10とが厚さ方向に重なる領域のうち下端部の領域である。おむつ1の腹側の溶着領域Yは、腹側外装部21と吸収性本体10とが厚さ方向に重なる領域のうち、上端部を除いた領域である。おむつ1の背側の溶着領域Yは、背側外装部22と吸収性本体とが厚さ方向に重なる領域のうち、上端部の領域及び溶着領域Qを除いた領域である。溶着領域Xは、溶着領域Y、溶着領域P、溶着領域Q、及び胴回り弾性部材26が配置された領域を除く外装部材20の略全域である。なお、おむつ1は、胴回り弾性部材26が配置された領域には、溶着部25は配置していないが、当該領域に溶着部25を設けてもよい。胴回り弾性部材26が配置された領域に溶着部25を設ける場合には、溶着部25が胴回り弾性部材26を切断しないように配置することがより好ましい。
【0059】
おむつ1の腹側部において、腹側第1領域F1は、溶着領域Xと吸収性コア11とが重ならない領域(図8の右下がりの斜線部)であり、腹側第2領域F2は、溶着領域Xと吸収性コア11とが重なる領域(図8の左下がりの斜線部)であり、腹側第3領域F3は、溶着領域Yと吸収性コア11とが重なる領域(図8の細かい網掛け部)であり、腹側第4領域F4は、溶着領域Yと吸収性コア11とが重ならない領域(図8の粗い網掛け部)である。
【0060】
腹側第1領域F1、腹側第2領域F2、腹側第3領域F3の各領域の左右方向への追従性を比較する。腹側第1領域F1は、吸収性コア11と厚さ方向に重なっておらず、溶着領域Xの外装部20の弾性係数が大きいことから、着用時において追従性が高い。一方、腹側第2領域F2及び腹側第3領域F3は、吸収性コア11と厚さ方向に重なっていることから、腹側第1領域F1より着用時において追従性が低い。
【0061】
仮に、溶着領域Xと溶着領域Yにおける単位面積あたりの溶着部の面積の割合を同じにすると、腹側第2領域F2及び腹側第3領域F3にそれぞれ対応する腹側外装部21の弾性係数が同じとなるため、腹側第2領域F2及び腹側第3領域F3の着用時における追従性は、おおよそ同じぐらいの大きさとなる。そうすると、腹側第2領域F2及び腹側第3領域F3は、腹側第1領域F1との着用時における追従性の差が大きくなってしまう。
【0062】
そこで、腹側第2領域F2の単位面積あたりの溶着部25の面積の割合を腹側第1領域F1の単位面積あたりの溶着部25の面積の割合と同じとし、腹側第3領域F3の単位面積あたりの溶着部25の面積の割合を腹側第1領F1の単位面積あたりの溶着部25の面積の割合より大きくしている。これによって、腹側外装部21の腹側第2領域F2における外装部20の弾性係数が腹側第3領域F3における外装部20の弾性係数より大きくなる。弾性係数がより大きい腹側外装部21を備える腹側第2領域F2の着用時における追従性が、腹側第3領域F3の着用時における追従性より大きくなる。そして、上下方向において、腹側第2領域F2を腹側第1領域F1と腹側第2領域F2との間に配置することで、着用時における追従性を腹側第1領域F1から腹側第3領域F3に向かって段階的に小さくすることができる。つまり、おむつ1の腹側において、腹側第2領域F2が腹側第1領域F1と腹側第3領域F3との間の緩衝領域となり、腹側第1領域F1と腹側第3領域F3との着用時における追従性の差を段階的に小さくして、着用者が感じる密着性等の違和感を軽減させやすくすることができる。
【0063】
同様に、おむつ1の背側について、背側第1領域R1は、溶着領域Xと吸収性コア11とが重ならない領域(図8の右下がりの斜線部)であり、背側第2領域R2は、溶着領域Xと吸収性コア11とが重なる領域(図8の左下がりの斜線部)であり、背側第3領域R3は、溶着領域Yと吸収性コア11とが重なる領域(図8の細かい網掛け部)であり、背側第4領域R4は、溶着領域Yと吸収性コア11とが重ならない領域(図8の粗い網掛け部)である。
【0064】
おむつ1の背側部については、背側第2領域R2の単位面積あたりの溶着部25の面積の割合を背側第1領域R1と同じとし、背側第3領域R3の単位面積あたりの溶着部25の面積の割合を背側第1領域R1より大きくしている。これによって、背側外装部22の背側第2領域R2における弾性係数が背側第3領域R3における弾性係数より大きくなるため、弾性係数がより大きい背側外装部22を備える背側第2領域R2の着用時における追従性が、背側第3領域R3の着用時における追従性より大きくなる。そして、上下方向において、背側第2領域R2を背側第1領域R1と背側第2領域R2との間に配置することで、着用時における追従性を背側第1領域R1から背側第3領域R3に向かって段階的に小さくすることができる。つまり、おむつ1の背側において、背側第2領域R2が背側第1領域R1と背側第3領域R3との間の緩衝領域となり、着用時における追従性の差を背側第2領域R2が緩衝させやすくなる。そして、背側第1領域R1と背側第3領域R3との着用時における追従性の差によって着用者に違和感を与えてしまう恐れを軽減させやすくなる。
【0065】
図8等に示す伸長状態のおむつ1の左右方向の中心線C-Cにおいて、腹側第2領域F2の上下方向の長さdf2より、背側第2領域R2の上下方向の長さdr2が長いことが好ましい(df2<dr2)。おむつ1の背側は、着用者の臀部及び腰部に当接する部分であるため、身体の形状に応じた形状に変形する必要がある。しかし、背側第1領域R1と背側第3領域R3との着用時における追従性の差が大きくなると、着用者に違和感を与えやすくなってしまう恐れがある。これに対して、背側第2領域F2の上下方向の長さdr2をより長くすることで、腹側第2領域F2の上下方向の長さdf2以下とする場合より、着用時における追従性を背側第1領域R1から背側第3領域R3に向かって段階的に小さくさせやすくなり、背側第2領域F2が背側第1領域R1と背側第3領域R3の着用時における追従性の差をより緩衝させやすくなる。なお、おむつ1は、左右方向の中心線において、腹側第3領域F3の上下方向の長さdf3より、背側第3領域R3の上下方向の長さdr3が長い。
【0066】
また、吸収性コア11が、腹側第2領域F2に低坪量領域30を有することが好ましい。同様に、背側第2領域R2に低坪量領域30を有することが好ましい。上述のとおり、低坪量領域30を設けることで、吸収性コア11の折れ起点となり、吸収性コア11を変形させやすくなる。つまり、低坪量領域30を着用者の身体に合わせた形状とするために設けたが、低坪量領域30は吸収性コア11のフィット性を向上させるためにも有効である。図8等に示すように、腹側第2領域F2に低坪量領域31が左右方向に間隔を空けて複数設けられている。つまり、低坪量領域31は、周囲よりも坪量が低くなった領域であるため、周囲よりも剛性が低くなっている。そのため、腹側第2領域F2(背側第2領域R2)に低坪量領域31を設けることで、腹側第2領域F2(背側第2領域R2)の着用時における追従性を大きくして、腹側第3領域F3(背側第3領域R3)の着用時における追従性との差を大きくしやすくし、腹側第1領域F1の着用時における追従性との差を小さくさせやすくして、着用時における追従性を腹側第1領域F1(背側第1領域R1)から腹側第3領域F3(背側第3領域R3)に向かってより緩やかに小さくさせやすくなる。
【0067】
さらに、吸収性コア11が腹側第3領域F3に低坪量領域30を有することが好ましい。図8等に示すように、低坪量領域31は、腹側第3領域F3に左右方向に間隔を空けて複数設けられている。吸収性コア11が、腹側第2領域F2だけでなく、腹側第3領域F3にも低坪量領域31を有することで、腹側外装部21と重なる吸収性コア11自体の剛性をより低くすることができる。これによって、腹側第1領域F1と腹側第3領域F3との着用時における追従性の差をより小さくすることができるため、着用者に与える違和感を軽減させやすくなる。同様に、吸収性コア11が、背側第3領域R3に低坪量領域31を有することが好ましい。
【0068】
この腹側第3領域F3又は背側第3領域R3に設けられた低坪量領域31の左右方向における低坪量領域30の数が、上端部の方が下端部より多いことがより好ましい。具体的には、図8等に示すおむつ1では、腹側第3領域F3の上端部に設けられた低坪量領域31の数が6、下端部に設けられた低坪量領域31の数が2と低坪量領域32が1の合計3である。背側第3領域R3の上端部に設けられた低坪量領域31の数が6、下端部に設けられた低坪量領域30の数が5である。これによって、腹側第3領域F3のうち、腹側第2領域F2により近い上端部の追従性を、腹側第3領域F3により近い下端部の追従性より大きくすることができる。つまり、着用時における追従性を腹側第3領域F3内の上端部から下端部にかけて段階的に小さくすることができるため、腹側第2領域F2と腹側第3領域F3との着用時における追従性の差を小さくすることができ、腹側第1領域F1から腹側第3領域F3に向かって着用時における追従性を段階的に小さくしやすくなる。これによって、腹側第1領域F1と腹側第3領域F3との着用時における追従性の差によって着用者が感じる違和感を軽減させることができる。背側第3領域R3における低坪量領域30の数についても、腹側第3領域F3における低坪量領域30の数と同様に、上端部の方が下端部より多いことがより好ましい。
【0069】
腹側第4領域F4については、溶着領域Yと吸収性コア11とが重ならない領域であることから、腹側第4領域F4の左右方向の収縮力は、溶着領域Yと吸収コア11とが重なる領域である腹側第3領域F3の左右方向の収縮力より大きい。また、腹側第4領域F4は、溶着領域Yであり、且つ、吸収性本体10と重なっているため、腹側第4領域F4の着用時における追従性は、腹側第1領域F1の着用時における追従性より小さい。おむつ1の腹側において、腹側第3領域F3と左右方向に重なる領域について、腹側第4領域F4は、腹側第3領域F3の左右方向の外側から腹側第3領域F3に隣接し、腹側第1領域F1は、腹側第4領域F4の左右方向の外側から腹側第4領域F4に隣接する。このことから、腹側第3領域F3と左右方向に重なる領域について、腹側第1領域F1より小さい収縮力を有し、左右方向において腹側第1領域F1から腹側第3領域F3に向かって段階的に小さくさせて、腹側第3領域F3より大きい着用時における追従性を有する腹側第4領域F4が緩衝させやすくなるため、腹側第1領域F1と腹側第3領域F3との間の着用時における追従性の差による着用者に与える違和感を軽減させることができる。
【0070】
同様に、背側第4領域R4については、溶着領域Yと吸収性コア11とが重ならない領域であることから、背側第4領域R4の着用時における追従性は、溶着領域Yと吸収コア11とが重なる領域である背側第3領域R3の着用時における追従性より大きい。また、背側第4領域R4は、溶着領域Yであり、且つ、吸収性本体10と重なっているため、背側第4領域R4の左右方向への収縮力は、背側第1領域R1の着用時における追従性より小さい。背側部10Rにおいて、背側第3領域R3と左右方向に重なる領域について、背側第4領域R4は、背側第3領域R3の左右方向の外側から背側第3領域R3に隣接し、背側第1領域R1は、背側第4領域R4の左右方向の外側から背側第4領域R4に隣接する。このことから、背側第3領域R3と左右方向に重なる領域について、背側第1領域R1より小さい追従性を有し、左右方向において背側第1領域R1から背側第3領域R3に向かって段階的に小さくさせて、背側第3領域R3より大きい追従性を有する背側第4領域R4が緩衝させやすくなるため、背側第1領域R1と背側第3領域R3との間の着用時における追従性の差による着用者に与える違和感を軽減させることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0072】
上述の実施形態においては、腹側部10Fと背側部10Rにそれぞれ第1領域(F1、R1)、第2領域(F2、R2)、第3領域(F3、R3)を設けたが、これに限られない。腹側部10F、背側部10Rのいずれか一方に各領域を設けるものであってもよい。外装部20(21、22)及び吸収性コア11に対して作用する伸縮性シート215、225の弾性係数の大きさによって作用する応力に応じて適宜決定してもよい。
【0073】
また、上述の実施形態においては、溶着部25を円形状(25a、25d)又は長方形状(25b、25c)としたが、これに限られない。各溶着部25の形状は、楕円形や多角形等の任意の形状とすることができる。また、同じ領域内においても異なる形状の溶着部25を設けていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 パンツ型使い捨ておむつ(おむつ、パンツ型吸収性物品)、1a 胴回り開口、1b 脚回り開口、10 吸収性本体、10F 腹側部、10R 背側部、11 吸収性コア、11A 下腹部位、11B 股下部位、11C 臀部位、11c くびれ部、11t 凸部、12 トップシート、13 バックシート、14 サイドシート、20 外装部、21 腹側外装部(胴回り部、腹側胴回り部)、21s 前側伸縮領域、213 肌側シート(非伸縮性シート)、214 非肌側シート(非伸縮性シート)、215 伸縮性シート、22 背側外装部(胴回り部、背側胴回り部)、22s 後側伸縮領域、223 肌側シート(非伸縮性シート)、224 非肌側シート(非伸縮性シート)、225 伸縮性シート、23 股下外装部、23s 股下伸縮領域、231 肌側シート、232 非肌側シート、233 伸縮性シート、24 端部接合領域、25 溶着部、25a、25b、25c、25d 溶着部、26 胴回り弾性部材、27 脚回り弾性部材、28 股下弾性部材、30 低坪量領域、31 低坪量領域、31h 上下低坪量領域、31s 左右低坪量領域、32 中央低坪量領域、40 防漏壁部、41 防漏壁弾性部材、42 防漏壁弾性部材、CL 所定位置、F1 腹側第1領域、F2 腹側第2領域、F3 腹側第3領域、R1 背側第1領域、R2 背側第2領域、R3 背側第3領域、P 溶着領域、Q 溶着領域、X 溶着領域(低面積率領域)、Y 溶着領域(高面積率領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9