(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】流下液膜式熱交換器及び流下液膜式チューブアイス製氷機
(51)【国際特許分類】
F25B 39/02 20060101AFI20230919BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230919BHJP
F25C 1/06 20060101ALI20230919BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20230919BHJP
F28D 5/02 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
F25B39/02 P
F25B1/00 396C
F25B1/00 396A
F25B1/00 396Z
F25C1/06
F28D7/16 A
F28D5/02
(21)【出願番号】P 2019146999
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤田 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】西田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】小畠 憲一
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-071983(JP,A)
【文献】特開平09-061080(JP,A)
【文献】特開2012-167854(JP,A)
【文献】特公昭30-004389(JP,B1)
【文献】特開昭48-034359(JP,A)
【文献】特開平03-247970(JP,A)
【文献】実開平01-053863(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/02
F28F 5/00
F25C 1/06
F28D 3/02
F28D 5/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に鉛直方向に沿って延在する複数の伝熱管と、
前記ケーシングの内部空間のうち前記伝熱管の上端部が配置された領域に設けられ、冷媒を貯留するためのヘッダと、
前記伝熱管の前記上端部の外周側に設けられ、前記ヘッダ内の空間と前記ケーシングの内部空間のうち前記ヘッダの下方の領域とを連通させる環状隙間を前記伝熱管の外表面との間に形成する筒状体と、
前記筒状体の上端部の高さ位置にて前記筒状体又は前記伝熱管の少なくとも一方に形成され、前記筒状体又は前記伝熱管の他方に向かって径方向に突出するフランジと、
を備え
、
前記環状隙間が、少なくとも、前記筒状体の前記上端部の前記高さ位置に位置する前記フランジと、前記筒状体又は前記伝熱管の前記他方との間に形成された
流下液膜式熱交換器。
【請求項2】
前記筒状体は前記ヘッダの下面から上方へ延在する請求項1に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項3】
前記環状隙間は、
前記筒状体又は前記伝熱管の前記他方と前記フランジとの間に形成される第1隙間と、
前記第1隙間の下方に位置し、前記第1隙間よりも大きな第2隙間と、
を含む請求項1又は2に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項4】
前記筒状体は、前記筒状体の内周面と外周面とに開口するように前記筒状体を貫通し周方向に離散して形成された複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項5】
前記環状隙間は、
前記筒状体又は前記伝熱管の前記他方と前記フランジとの間に形成される第1隙間と、
前記第1隙間の下方に位置し、前記第1隙間よりも大きな第2隙間と、
を含み、
前記第1隙間は、前記複数の貫通孔の合計開口面積より大きい流路面積を有する請求項4に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項6】
前記フランジは、前記筒状体又は前記伝熱管の前記他方に対して周方向に離散した複数箇所で接合される請求項1乃至5の何れか一項に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項7】
前記ヘッダに貯留される前記冷媒を生成するための冷凍機を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項8】
運転時前記ケーシングの内部空間の下部に内部空間高さの1/10以下の液位を有する冷媒液が貯留される請求項1乃至7の何れか一項に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項9】
前記冷媒は、自然冷媒、HFC冷媒又はHFO冷媒である請求項1乃至8の何れか一項に記載の流下液膜式熱交換器。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の流下液膜式熱交換器と、
前記伝熱管の上端開口に連通し、前記伝熱管の内部に製氷用水を供給する製氷用水貯留部と、
を備える流下液膜式チューブアイス製氷機。
【請求項11】
前記伝熱管の上端が固定される管板を備え、
前記ヘッダは、前記管板の下方に形成され、前記製氷用水貯留部は前記管板の上方に形成された請求項10に記載の流下液膜式チューブアイス製氷機。
【請求項12】
前記伝熱管の内面に形成されたチューブアイスを脱氷するためのホットガスを前記伝熱管の外表面側に供給するホットガス供給部を備える請求項10又は11に記載の流下液膜式チューブアイス製氷機。
【請求項13】
前記伝熱管の下方に設けられ、脱氷時に前記伝熱管の内面から脱離したチューブアイスを切断するためのカッタを備える請求項10乃至12の何れか一項に記載の流下液膜式チューブアイス製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱管を鉛直方向に沿って配置した縦型の流下液膜式熱交換器及び該流下液膜式熱交換器を備えた流下液膜式チューブアイス製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブアイス製氷機は、満液式蒸発器や流下液膜式熱交換器を備えたものがある。満液式蒸発器は、シェル内に設けられた伝熱管の外側を冷媒液で満たし、冷媒液を低温で沸騰させることにより、伝熱管の内面に沿って流下する水を冷却し、伝熱管の内面に円筒形の氷を生成させる(特許文献1参照)。流下液膜式熱交換器は、媒体液を伝熱管の外表面に沿って膜状に流下させ、この膜状冷媒液を低温で沸騰させることにより、伝熱管の内面に沿って流下する水を冷却し、伝熱管の内面に円筒形の氷を生成させる(特許文献2参照)。ある程度氷の厚みが増加したところで、シェル内に冷媒のホットガスを注入して伝熱管内面の氷を融解させ、自重により氷を下方へ落とし、これを一定間隔で砕氷し、チューブアイスを製造する。
【0003】
特許文献2に開示された流下液膜式熱交換器は、伝熱管の一部外表面で生じる沸騰が脈動や片寄りを引き起こし、これが液膜の形成を阻害し、その結果、ドライパッチ(伝熱管外表面において冷媒液膜が形成されない乾いた部分)が発生するのを抑制するため、伝熱管の一部の外表面又は内面に気泡抑制部を形成している。気泡抑制部は、例えば、伝熱管素材に比べて熱伝導率の小さい材料からなる筒状のリングで構成され、これを伝熱管の外表面又は内面に装着し、伝熱管外表面での冷媒液の沸騰を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平06-147707号公報
【文献】特開昭64-67573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
満液式蒸発器を備えた製氷機は、ケーシング内に冷媒液を満たすため冷媒量が多く必要になると共に、冷媒液のヘッドにより深さ方向に圧力分布が生じ、深さが2m程度の満液式蒸発器では、底部の蒸発温度は上部より1℃程度高くなるため、氷厚にムラができる問題がある。また、冷媒側の熱伝達は核沸騰熱伝達であるため熱伝達率が低くなり、製氷に時間がかかる。また、脱氷工程においてシェル側にホットガスを注入して冷媒を昇温させる場合、低温の過冷却状態になっている大量の冷媒液を氷の融点以上に昇温するのに多量の熱量を必要とすると共に、ホットガスにより昇温かつ攪拌された冷媒液との対流熱伝達となるため、伝熱管内側にできた氷との熱伝達率が低くなり、脱氷に時間がかかるという問題がある。
【0006】
これに対し、流下液膜式熱交換器を備えた製氷機は、伝熱管の外表面に形成された冷媒液膜と伝熱管の内側を流下する製氷用水とを熱交換させるため、満液式と比べて冷媒量を大幅に低減できると共に、相変化して製氷用水と潜熱熱交換する冷媒の場合、薄膜による蒸発熱伝達であるため、低熱流束で高熱伝達率が得られ、満液式と比べて製氷時間を大幅に短縮できる、等の利点がある。流下液膜式熱交換器においては、現状、伝熱管の熱交換効率を高めることで、伝熱管の表面積を低減可能にし、これによって、装置のコンパクト化を図ることが望まれている。しかし、特許文献2に開示された蒸発器は、伝熱管素材に比べて熱伝導率の小さい材料からなるリングを伝熱管の内面又は外表面に装着するため、伝熱管の熱交換効率を低下させるおそれがあり、かつ伝熱管に筒状のリングを装着するため、構造の複雑化及び高コスト化をまねくため、装置のコンパクト化の傾向に逆行する。
【0007】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、流下液膜式熱交換器において、伝熱管外表面に均一な冷媒液膜を形成し、これによって、装置のコンパクト化を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る流下液膜式熱交換器は、ケーシングと、前記ケーシングの内部に鉛直方向に沿って延在する複数の伝熱管と、前記ケーシングの内部空間のうち前記伝熱管の上端部が配置された領域に設けられ、冷媒を貯留するためのヘッダと、前記伝熱管の前記上端部の外周側に設けられ、前記ヘッダ内の空間と前記ケーシングの内部空間のうち前記ヘッダの下方の領域とを連通させる環状隙間を前記伝熱管の外表面との間に形成する筒状体と、前記筒状体又は前記伝熱管の少なくとも一方に形成され、前記筒状体又は前記伝熱管の他方に向かって径方向に突出するフランジと、を備える。
【0009】
また、本開示に係る流下液膜式チューブアイス製氷機は、前記記載の流下液膜式熱交換器と、前記伝熱管の上端開口に連通し、前記伝熱管の内部に製氷用水を供給する上部製氷用水貯留部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る流下液膜式熱交換器及び流下液膜式チューブアイス製氷機によれば、伝熱管外表面のドライパッチの形成を抑制でき、熱交換効率を高めることができる。これによって、伝熱管の表面積を低減できるため、蒸発器及び製氷機を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る流下液膜式蒸発器を備えた製氷機の縦断面図である。
【
図2】
図1中の伝熱管上部を拡大して示す拡大縦断面図である。
【
図3】一実施形態に係る筒状体取付部を示す縦断面図である。
【
図4】一実施形態に係る筒状体取付部を示す縦断面図である。
【
図5】一実施形態に係る筒状体取付部を示す縦断面図である。
【
図6】一実施形態に係る冷凍機の製氷時を示す系統図である。
【
図7】筒状体内側の冷媒液の挙動を説明する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
(流下液膜式熱交換器の構成)
図1は、一実施形態に係る流下液膜式熱交換器11を備えた流下液膜式チューブアイス製氷機10の縦断面図であり、
図2は、熱交換器11の伝熱管14の上端部を示す拡大縦断面図である。熱交換器11は、ケーシング12の内部に複数の伝熱管14を備え、伝熱管14は鉛直方向に沿って延在する。ケーシング12の内部空間S
0のうち伝熱管14の上端部が配置された領域に冷媒液rを貯留するための冷媒ヘッダ16が設けられている。伝熱管14の上端部の外周側に筒状体60が設けられ、筒状体60は、ヘッダ内空間S
1とケーシング12の内部空間S
0のうち冷媒ヘッダ16の下方の領域とを連通させる環状隙間Caを伝熱管14の外表面との間に形成する。筒状体60は伝熱管14の周方向に均一な環状隙間Caを形成する。
【0014】
本明細書で、「伝熱管14が鉛直方向に沿って延在する」とは、伝熱管14が鉛直方向に対して30度以内の傾きをもって延在することを含むものとする。
【0015】
図3~
図5は幾つかの実施形態に係る筒状体60(60a、60b、60c)を示す縦断面図である。筒状体60又は伝熱管14の少なくとも一方にフランジ64(64a、64b)が形成され、フランジ64は筒状体60又は伝熱管14の他方に向かって径方向に突出している。
【0016】
上記構成において、冷媒ヘッダ16に貯留された冷媒液が環状隙間Caに流入し、さらに、筒状体下方の伝熱管14の外表面を伝って下方へ流下し、伝熱管14の外表面に冷媒液膜Lfを形成する。一方、伝熱管14の上端開口から伝熱管14の内部に被冷却流体が供給され、この被冷却流体は伝熱管14を介して冷媒液膜Lfによって冷却される。なお、熱交換器11が製氷機10に設けられたとき、後述するように、被冷却流体は製氷用水Wiであり、製氷用水Wiは冷媒液膜Lfによって冷却されて伝熱管14の内面に円筒形状のチューブアイスTiを形成する。
【0017】
図3~
図5に示すように、冷媒ヘッダ16内に貯留された冷媒液rは伝熱管14の外表面とフランジ64との間に形成された狭い隙間C
1から隙間C
1より広い筒状体60内の環状の隙間C
2に流入する際に、冷媒液rに拡散作用が働くため、伝熱管14の外表面において伝熱管14の周方向に均一な冷媒液膜Lfを形成できる。これによって、ドライパッチの形成を抑制でき、熱交換効率を高めることができる。従って、伝熱管14の表面積を低減できるため、熱交換器11を小型化できる。また、熱交換器11は、満液式のように深さ方向に冷媒液のヘッド圧が生じないため、鉛直方向で蒸発温度が一定となり、冷却温度にムラができない利点がある。
【0018】
一実施形態では、
図6に示すように、冷媒ヘッダ16に貯留される冷媒液rを生成するための冷凍機70を備える。冷凍機70によって冷却源としての冷媒液rを生成できる。
【0019】
一実施形態では、
図1に示すように、ケーシング12の上部に管板18が設けられ、管板18に伝熱管14の上端部が固定される。ケーシング12の下部に管板36が設けられ、管板36に伝熱管14の下端部が固定される。内部空間S
0は管板36を底面として冷媒液rを貯留可能になっている。冷媒ヘッダ16に冷媒液入口管30が設けられ、ケーシング12の下部に冷媒入口管22及び冷媒液出口管28が設けられ、さらに、循環ポンプ26を有する冷媒液循環管24が冷媒液入口管30と冷媒液出口管28とに接続されている。冷凍機70から冷媒入口管22に冷媒液rが供給され、一旦内部空間S
0に溜まった冷媒液rは冷媒液出口管28から冷媒液循環管24を介して冷媒ヘッダ16に送られる。
【0020】
一実施形態では、冷媒液rは被冷却流体と熱交換する際に相変化して被冷却流体を蒸発潜熱で冷却する冷媒液が用いられる。ケーシング12の上部で内部空間S0の上部に連通する冷媒ガス出口管32が設けられ、被冷却流体との熱交換により一部気化した冷媒ガスは冷媒ガス出口管32から冷凍機70の冷媒回路に戻され、気化せずに内部空間S0の下部に溜まった冷媒液rは、冷媒液循環管24を介して冷媒ヘッダ16に戻される。
【0021】
図6は、一実施形態に係る冷凍機70の構成を示す系統図である。冷凍機70は、冷媒が循環する冷媒回路72に圧縮機74、凝縮器76、レシーバ78及び膨張弁80を含む冷凍サイクル構成機器を備える。圧縮機74から吐出された冷媒ガスは、凝縮器76で冷却されて冷媒液となり、この冷媒液はレシーバ78に送られて貯留される。レシーバ78内の冷媒液rは冷媒回路72を経て熱交換器11に供給され、その際、膨張弁80を経て減圧されて熱交換器11に供給される。例えば、冷媒液rは
図1に示す冷媒入口管22から内部空間S
0に供給され、その後、冷媒液循環管24を介して冷媒ヘッダ16に供給され、被冷却流体を冷却するために用いられる。被冷却流体との熱交換により一部気化した冷媒ガスは、冷媒ガス出口管32から排出され、冷媒回路72を経て圧縮機74に送られ再び圧縮される。
【0022】
熱交換器11は、被冷却流体との熱交換時に相変化して潜熱熱交換を行う冷媒だけでなく、相変化しないで顕熱熱交換を行う冷媒も用いることができる。潜熱熱交換の例としては、
図1で示すように、伝熱管14の内面に製氷用水Wiを供給・循環してチューブアイスTiを生成後に、ホットガスで脱氷する流下液膜式チューブアイス製氷機10がある。さらに、また、被冷却流体を凝縮系の冷媒にすれば、カスケード型凝縮器や、蒸留用熱交換器とすることができる。一方、顕熱熱交換の例としては、製氷用水Wiをブラインや冷水に代えて顕熱冷却を行えば、ブラインクーラやチラーの熱交換器に適用できる。
【0023】
(流下液膜式チューブアイス製氷機の構成)
一実施形態では、熱交換器11は流下液膜式チューブアイス製氷機10に適用される。
図1に示すように、製氷機10は、熱交換器11と、伝熱管14の上端開口に連通し、伝熱管14の内部に被冷却流体として製氷用水Wiを供給する上部製氷用水貯留部20と、を備える。製氷工程において、上部製氷用水貯留部20から伝熱管14の内部に供給された製氷用水Wiは、伝熱管14の外表面を流下する冷媒液に冷却され、伝熱管14の内面にチューブアイスTiを形成する。凍結せずに伝熱管14の下方へ流下した製氷用水Wiは、循環して上部製氷用水貯留部20に戻り、伝熱管14の上端から伝熱管14の内部に供給される。チューブアイスTiが所定の厚さになったとき、製氷工程から脱氷工程に切り替わる。脱氷工程では、ケーシング12の下部に設けられ、内部空間S
0の下方領域に連通する
図1に示すホットガス入口管34からホットガスが供給され、伝熱管14を加温する。これによって、チューブアイスTiは伝熱管14の内面から剥離し、自重によって下方へ落下する。
【0024】
製氷工程時に、伝熱管14の周方向に均一な冷媒液膜Lfを形成できるため、ドライパッチの形成を抑制でき、熱交換効率を高めることができる。従って、伝熱管14の表面積を低減でき、熱交換器11を小型化できる。また、満液式のように深さ方向に冷媒液rのヘッド圧が生じないため、鉛直方向で蒸発温度が一定となり、チューブアイスTiの氷厚にムラができない。さらに、内部空間S0に保有する冷媒液が少ないため、冷凍機70を構成する圧縮機74への液バックを抑制できると共に、チューブアイスTiを伝熱管14の内面から剥離させる脱氷工程において、冷媒液rは脱氷用のホットガスの注入により短時間で氷の融点以上の飽和温度に達することができる。さらに、ホットガスが凝縮して伝熱管外表面の鉛直方向に沿って流下するので凝縮液の滞留が無いため、ホットガスの凝縮熱が効率良く氷側に伝わる。以上から、製氷時間及び脱氷時間を短縮でき、製氷能力を向上できる。
【0025】
図6中の矢印は、製氷機10の製氷工程における冷凍機70の冷媒の流れを示す。製氷工程において、上述のように、レシーバ78内の冷媒液rが冷媒回路72を経て膨張弁80によって減圧された冷媒液rが熱交換器11に供給される。脱氷工程では、0℃を超える冷媒ガスがホットガスとして
図1に示すケーシング12の下部に配置されるホットガス入口管34から熱交換器11の内部空間S
0に供給される。供給されたホットガスによって伝熱管14が0℃を超えて加温されることで、チューブアイスTiは伝熱管14の内面から脱離し自重で下方へ落下する。
【0026】
一実施形態では、
図3~
図5に示すように、フランジ64(64a、64b)は、筒状体60の上端側で筒状体60又は伝熱管14の外表面に設けられる。フランジ64が筒状体60の上端側に設けられることで、フランジ64の下側に第2隙間C
2を形成できる。
別な実施形態では、
図3及び
図4に示すように、フランジ64(64a)は筒状体60(60a、60b)に設けられる。これによって、第1隙間C
1は伝熱管14の外表面と段差がない連続した面で形成される。従って、第1隙間C
1を通過する冷媒液膜Lfが伝熱管14の外表面に密着した状態で形成されるので、伝熱管14を介した冷媒液膜と被冷却流体(例えば製氷用水Wi)との熱伝達率を向上できる。
さらに別な実施形態では、
図5に示すように、フランジ64(64b)は、伝熱管14の外表面から外側へ突出するように設けられる。この実施形態では、フランジ64(64b)とその下方の伝熱管外表面との間に段差ができるので、冷媒液rが第1隙間C
1を通過するときの冷媒液rの拡散作用を促進できる。
【0027】
一実施形態では、
図2~
図5に示すように、筒状体60は冷媒ヘッダ16の下面16aから上方へ延在する。これによって、冷媒ヘッダ16内で少なくとも下面16aから筒状体60の上端までの深さを有する冷媒液rの液溜めが形成される。冷媒液rは筒状体60の上端からオーバフローして環状隙間Caに流入する。このように、伝熱管14の周方向に沿って冷媒液の液溜めが形成され、かつオーバフロー液が環状隙間Caに流入するため、環状隙間Caで伝熱管14の周方向に均一な冷媒液膜Lfを形成しやすくなる。また、液溜めに起こる沸騰が冷媒液rを攪拌するため均一な液膜形成に寄与する。
【0028】
一実施形態では、筒状体60の下端において筒状体60間に冷媒ヘッダ16と冷媒ヘッダ16内のヘッダ内空間S1とその下方の内部空間S0とを仕切る仕切板62が設けられる。伝熱管14及び筒状体60は例えば円形の横断面を有し、環状隙間Caは例えば1mm前後の円筒形状の隙間を形成する。一実施形態では、筒状体60は水平方向に拡径して仕切板62に支持される止め用フランジ61を有する。止め用フランジ61より上方の筒状体60の高さは、環状隙間Caの冷媒液rがその表面張力により伝熱管14の周方向全域に回り込むことを可能にする寸法を有する。
【0029】
なお、本発明者等が行った要素試験により、次の事がわかった。即ち、冷媒ヘッダ16に貯留された冷媒液の過冷却度が大きい場合、沸騰が少なく液面の揺れが少ないため、筒状体60を支持する仕切板62の傾きや製造時の環状隙間Caの公差等により流れやすくなった箇所から伝熱管14の外表面に冷媒液が流下する偏流が起きやすい。過冷却度が小さい場合、伝熱管14からの熱影響で伝熱管群間の冷媒液が沸騰し気泡Abが発生しやすい。気泡Abが発生することで冷媒液面Lsが乱され、これによって、伝熱管外表面での給液の偏流が抑制されることが判明した。
【0030】
一実施形態では、
図3~
図5に示すように、環状隙間Caは、筒状体60又は伝熱管14とフランジ64との間に形成される第1隙間C
1と、第1隙間C
1の下方に位置し、第1隙間C
1よりも大きな第2隙間C
2と、を含む(C
1<C
2)。冷媒ヘッダ16内に貯留された冷媒液rが第1隙間C
1から第2隙間C
2に流入する際に、流入空間が急に拡大するために冷媒液rに大きな拡散作用が働く。この拡散作用によって冷媒液rが伝熱管14の外表面周方向へ拡散するため、伝熱管14の周方向に均一な冷媒液膜Lfを形成できる。これによって、ドライパッチの形成を抑制でき、熱交換効率を高めることができる。
【0031】
図7は、第1隙間C
1から第2隙間C
2に流入した冷媒液rの挙動を示す横断面図である。環状隙間Caは、熱交換器11の製造時の交差によって伝熱管14の周方向で異なる場合がある。この場合、隙間が大きい領域に多くの冷媒液rが流入する。他方、第1隙間C
1<第2隙間C
2であるために、冷媒液rが第2隙間C
2に流入したとき、流入した冷媒液量と比べて隙間容積が大きくなるので、冷媒液rにより大きな拡散作用が働く。また、第2隙間C
2において、冷媒液rは表面張力によって隙間が狭い領域C
2Nの方向へ流れる。これらの作用によって、伝熱管周方向の偏流が緩和させ、伝熱管周方向に均一な冷媒液膜を形成できる。
【0032】
一実施形態では、
図4及び
図5に示すように、筒状体60(60b、60c)は、これら筒状体60の内周面と外周面とに開口するように筒状体60を貫通し周方向に離散して形成された複数の貫通孔66を有する。貫通孔66を有するため、冷媒ヘッダ16内のヘッド圧が付加された冷媒液rが貫通孔66から環状隙間Caに噴射される。これによって、冷媒液rを拡散する作用が働き、伝熱管14の周方向で均一な冷媒液膜Lfが形成される。また貫通孔66は第2隙間C
2に対して冷媒液rを供給する作用があり、第1隙間C
1から流入する冷媒液rが不足した際に、伝熱管周方向の液膜形成に必要な冷媒量を補うことができる。複数の貫通孔66は、例えば、伝熱管14の周方向に等間隔で配置され、1mm前後の直径を有する。
【0033】
一実施形態では、第1隙間C1は複数の貫通孔66の合計開口面積より大きい流路面積を有する。第1隙間C1から流入する冷媒液rは、冷媒液面Lsが乱れているため、細かく脈動している可能性があるが、貫通孔66から流入する冷媒液rによって適度な拡散力と脈動の抑制力を付与されるので,伝熱管周方向で均一な冷媒液膜を形成することが可能となる。なお、複数の貫通孔66の合計開口面積が第1隙間C1以上になると、適度な拡散力と脈動の抑制力が得られなくなる。こうして、第1隙間C1から流入した冷媒液rは脈動を生じることなく、貫通孔66から環状隙間Caに流入する冷媒液rによって伝熱管周方向への適度な拡散力を付与される。これによって、伝熱管周方向で均一な冷媒液膜を形成できる。
【0034】
一実施形態では、
図2に示すように、フランジ64(64a)は、筒状体60又は伝熱管14の他方に対して周方向に離散した複数箇所に配置された接合部68で、例えば、スポット溶接などで接合される。これによって、冷媒液の流通を妨げることなく第1隙間C
1を伝熱管周方向で均一に形成できる。なお、
図3及び
図4においても、図示されていないが、フランジ64(64a)は、伝熱管14の外表面に対して周方向に離散した複数箇所で接合され、また、
図6においても、フランジ64(64b)と筒状体60とは、周方向に離散した複数箇所で接合されている。
【0035】
一実施形態では、運転中、ケーシング12の内部空間S0の下部に内部空間高さの1/10以下の液位を有する冷媒液rが貯留される。これによって、少ない冷媒量で被冷却流体との熱交換が可能になる。また、内部空間S0の上部にある冷媒ガス出口管32から冷媒液面を下方へ遠ざけることができるため、冷媒液面から冷媒ガス出口管32に至る冷媒ガスに冷媒液が混入しない。従って、圧縮機74への液バックを防止できると共に、冷媒ガス出口管32から圧縮機74に至る間の冷媒回路72に気液を分離するアキュームレータや冷媒液rをガス化するための液ガス熱交換器を設置する必要がない。また、脱氷工程において、冷媒液rの液面より下方にあるホットガス入口管34からホットガスを注入することで、冷媒液rは激しく攪拌されるため、高い熱伝達率で伝熱管内側への伝熱が可能になる。さらに、冷媒液rが相変化する潜熱熱交換を行う冷媒である場合、冷媒液rの液面上方の内部空間S0は飽和蒸気に晒されるため、伝熱管外表面に冷媒液が凝縮しながら流下する凝縮熱伝達となり、伝熱管壁内外の熱通過率が向上する。これによって、製氷機10の場合、製氷時間及び脱氷時間を短縮でき、1サイクルの製氷間隔を短縮でき、製氷能力を向上できる。
【0036】
一実施形態では、冷媒は、自然冷媒(例えば、NH3、CO2、プロパン、イソブタン等)、HFC冷媒(例えば、R134a、R32、R404A、R410A等)、又はHFO冷媒(例えば、R1234yfなど)が用いられる。これら冷媒のうち例えばNH3は大きな表面張力を有している。この表面張力は、筒状体60の内部で冷媒液膜Lfが伝熱管14の周方向へ回り込むように作用するので、伝熱管14の周方向に均一な冷媒液膜Lfを形成できる。従って、伝熱管周方向で上記以外の冷媒を用いた場合より均一な冷媒液膜Lfを形成できる。
【0037】
一実施形態では、
図1に示すように、製氷機10は伝熱管14の上端が固定される管板18を備えている。そして、冷媒ヘッダ16は管板18の下方に形成されると共に、上部製氷用水貯留部20は管板18の上方に形成される。このように、上部製氷用水貯留部20と冷媒ヘッダ16とは管板18によって仕切られているため、製氷用水Wiと冷媒液rとが伝熱管14の上流側で交じり合うことはない。また、冷媒ヘッダ16を管板18の下方に配置したので、冷媒ヘッダ16に貯留される冷媒液rを伝熱管14の外表面まで導く導入路の形成が容易になる。
【0038】
一実施形態では、上部製氷用水貯留部20は内部に製氷用水Wiを貯留可能な中空容器で構成される。あるいは上部製氷用水貯留部20の底面は管板18によって構成されるようにしてもよく、該底面に伝熱管14の上端が開口している。また、冷媒ヘッダ16の上面は管板18で構成される。
【0039】
一実施形態では、
図1に示すように、ケーシング12の下部に下部製氷用水貯留部42が設けられる。上部製氷用水貯留部20から伝熱管14の内部に供給された製氷用水Wiのうち、氷にならない製氷用水Wiは、下部製氷用水貯留部42に貯留される。上部製氷用水貯留部20と下部製氷用水貯留部42との間には、循環ポンプ46を有する製氷用水循環管44が設けられている。下部製氷用水貯留部42に流下した冷媒液rは、製氷用水循環管44から上部製氷用水貯留部20に戻され、その後伝熱管14の内部に供給される。また、下部製氷用水貯留部42に溜まった製氷用水Wiの液面レベルを検出するレベルセンサ48が設けられ、制御部50は、レベルセンサ48の検出値に基づいて循環ポンプ46の作動を制御する。
【0040】
この実施形態によれば、製氷工程において、伝熱管14の内部に供給される製氷用水Wiを製氷用水循環管44を介して伝熱管14に循環させることで、チューブアイスTiを所定の厚さに形成できる。また、下部製氷用水貯留部42に溜まった製氷用水Wiの液面レベルを所望のレベルに制御できるので、製氷工程の運転を円滑に行うことができる。
【0041】
一実施形態では、上部製氷用水貯留部20及び下部製氷用水貯留部42の製氷用水Wiが不足してきたら、上部製氷用水貯留部20又は下部製氷用水貯留部42に補給水を注入可能な構成とする。製氷工程でチューブアイスTi製造が完了した後に、製氷用水Wiの循環を停止する。
【0042】
一実施形態では、伝熱管14の内面に形成されたチューブアイスTiを脱離するためのホットガスを伝熱管14の外表面側に供給するホットガス供給部(
図1に示すホットガス入口管34、
図6に示す冷凍機70のホットガス供給路等)を備える。脱氷工程において、伝熱管14の内面に形成されたチューブアイスTiを脱氷するためのホットガスがホットガス入口管34に供給される。即ち、ホットガスは内部空間S
0でかつ伝熱管14の外側空間に供給される。
【0043】
一実施形態では、脱氷工程において、伝熱管14の内面から脱離し自重で滑り落ちるチューブアイスTiを切断するためのカッタ38を伝熱管14の下方に備えている。カッタ38を備えているため、伝熱管14の内面から脱離して自重で滑り落ちるチューブアイスTiを適宜長さに裁断して利用先に供給できる。
一実施形態では、カッタ38は伝熱管14の下方に設けられた下部製氷用水貯留部42の内部に設けられる。下部製氷用水貯留部42は中空容器で構成され、製氷用水Wiを貯留可能になっている。
【0044】
一実施形態では、カッタ38は回転軸38aを中心に回転可能に構成され、駆動部(例えばモータ)40によって回転される。脱氷時に伝熱管14から落下するチューブアイスTiの落下速度に合わせて、駆動部40によるカッタ38の回転速度を適宜制御することで、裁断されるチューブアイスTiの長さを調整できる。
【0045】
一実施形態では、下部製氷用水貯留部42の内部にメッシュ状の開口を有する底板52を備える。下部製氷用水貯留部42の内部空間は、底板52によって、チューブアイスTiの出口開口54を含む上部領域と、製氷用水循環管44の出口開口を含む下部領域とに仕切られる。これによって、カッタ38で切断されたチューブアイスTiと、氷にならない製氷用水Wiとは底板52で分離され、チューブアイスTiのみ出口開口54から下部製氷用水貯留部42の外側へ排出できる。上記下部領域に流下した製氷用水Wiは、製氷用水循環管44を介して上部製氷用水貯留部20に戻される。
【0046】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)一実施形態に係る流下液膜式熱交換器は、ケーシングと、前記ケーシングの内部に鉛直方向に沿って延在する複数の伝熱管と、前記ケーシングの内部空間のうち前記伝熱管の上端部が配置された領域に設けられ、冷媒を貯留するためのヘッダと、前記伝熱管の前記上端部の外周側に設けられ、前記ヘッダ内の空間と前記ケーシングの内部空間のうち前記ヘッダの下方の領域とを連通させる環状隙間(例えば、
図3~
図5に図示される環状隙間Ca)を前記伝熱管の外表面との間に形成する筒状体(例えば、
図3~
図5に図示される筒状体60(60a、60b、60c))と、前記筒状体又は前記伝熱管の少なくとも一方に形成され、前記筒状体又は前記伝熱管の他方に向かって径方向に突出するフランジ(例えば、
図3~
図5に図示されるフランジ64(64a、64b))と、を備える。
【0048】
このような構成によれば、ヘッダ内に貯留された冷媒液は伝熱管の外表面と上記フランジとの間に形成された狭い隙間から該隙間より広い上記環状隙間に流入する際に、冷媒に拡散作用が働くため、環状隙間において伝熱管の周方向に拡散して伝熱管の外表面に均一な冷媒液膜を形成できる。これによって、ドライパッチの形成を抑制でき、熱交換効率を高めることができるため、伝熱管の表面積を低減でき、その結果熱交換器を小型化できる。また、満液式のように深さ方向に冷媒液のヘッド圧が生じないため、鉛直方向で蒸発温度が一定となり、冷却温度にムラができない利点がある。
【0049】
(2)別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(1)に記載の流下液膜式熱交換器であって、前記筒状体は前記ヘッダの下面から上方へ延在する。
【0050】
このような構成によれば、ヘッダ内に貯留された冷媒液は筒状体の上端からオーバフローして環状隙間に筒状体の上端からオーバフローして上記環状隙間に流入するため、環状隙間への流入する際に拡散作用が働く。これによって、伝熱管の周方向で均一な冷媒液膜を形成できる。
【0051】
(3)さらに別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(1)又は(2)に記載の流下液膜式熱交換器であって、前記環状隙間は、前記筒状体又は前記伝熱管の前記他方と前記フランジとの間に形成される第1隙間(例えば、
図3~
図5に図示される第1隙間C
1)と、前記第1隙間の下方に位置し、前記第1隙間よりも大きな第2隙間(例えば、
図3~
図5に図示される第2隙間C
2)と、を含む。
【0052】
このような構成によれば、第2隙間は第1隙間より大きいために、ヘッダ内に貯留された冷媒が第1隙間から第2隙間に流入する際に冷媒を伝熱管の周方向へ拡散させる拡散作用が働く。これによって、伝熱管の周方向に均一な液膜を形成できるため、ドライパッチの形成を抑制でき、熱交換効率を高めることができる。
【0053】
(4)さらに別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(1)乃至(3)の何れかに記載の流下液膜式熱交換器であって、前記筒状体は、前記筒状体の内周面と外周面とに開口するように前記筒状体を貫通し周方向に離散して形成された複数の貫通孔(例えば、
図4及び
図5に図示される貫通孔66)を有する。
【0054】
このような構成によれば、ヘッダ内に貯留しヘッド圧が付加された冷媒液が上記貫通孔から環状隙間に噴射される。貫通孔から噴射される冷媒液によって、環状隙間において冷媒を拡散する力が発生する。これによって、伝熱管周方向で均一な冷媒液膜を形成できる。
【0055】
(5)さらに別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(4)に記載の流下液膜式熱交換器であって、前記環状隙間は、前記筒状体又は前記伝熱管の前記他方と前記フランジとの間に形成される第1隙間と、前記第1隙間の下方に位置し、前記第1隙間よりも大きな第2隙間と、を含み、前記第1隙間は、前記複数の貫通孔の合計開口面積より大きい流路面積を有する。
【0056】
このような構成によれば、第1隙間は複数の貫通孔の合計開口面積より大きい流路面積を有するため、第1隙間から流入した冷媒液は脈動を生じることなく、貫通孔から環状隙間に流入する冷媒液によって伝熱管周方向への適度な拡散力を付与される。これによって、伝熱管周方向で均一な冷媒液膜を形成できる。
【0057】
(6)さらに別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(1)乃至(5)の何れかに記載の流下液膜式熱交換器であって、前記フランジは、前記筒状体又は前記伝熱管の前記他方に対して周方向に離散した複数箇所で接合される。
【0058】
このような構成によれば、上記フランジは、周方向に離散した複数箇所で接合されるため、冷媒液の流通を妨げることなく第1隙間を伝熱管周方向で均一に形成できる。
【0059】
(7)さらに別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(1)乃至(6)の何れかに記載の流下液膜式熱交換器であって、前記ヘッダに貯留される前記冷媒を生成するための冷凍機(例えば、
図6に図示される冷凍機70)を備える。
【0060】
このような構成によれば、上記冷凍機によって冷却源としての冷媒を生成できる。
【0061】
(8)さらに別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(1)乃至(7)の何れかに記載の流下液膜式熱交換器であって、前記ケーシングの内部空間の下部に内部空間高さの1/10以下の液位を有する冷媒液が貯留される。
【0062】
このような構成によれば、ケーシングの内部空間に内部空間高さの1/10以下の液位を有する冷媒液が貯留されるように運転されるため、少ない冷媒量で被冷却流体との熱交換が可能になる。また、冷媒液の液位を内部空間高さの1/10以下とすることで、該内部空間の上部にある冷媒出口から冷媒液面を遠ざけることができるため、冷媒出口から排出される冷媒に冷媒液が混入するのを抑制できる。従って、圧縮機への液バックを防止できると共に、冷媒を供給する冷凍機において、冷媒出口から圧縮機に至る間の冷媒回路に気液を分離するアキュームレータや冷媒液をガス化するための液ガス熱交換器の設置が不要となる。
【0063】
(9)さらに別の態様に係る流下液膜式熱交換器は、(1)乃至(8)の何れかに記載の流下液膜式熱交換器であって、前記冷媒は、自然冷媒、HFC冷媒又はHFO冷媒である。
【0064】
このような構成によれば、上記冷媒のうち例えばNH3は大きな表面張力を有している。この表面張力により伝熱管周方向で均一な冷媒液膜を形成できる。これによって、製氷用水との熱伝達量を向上できる。
【0065】
(10)一実施形態に係る流下液膜式チューブアイス製氷機は、(1)乃至(9)の何れかに記載の流下液膜式熱交換器と、前記伝熱管の上端開口に連通し、前記伝熱管の内部に製氷用水を供給する上部製氷用水貯留部と、を備える。
【0066】
このような構成によれば、上部製氷用水貯留部から伝熱管の内部に供給される製氷用水は、流下液膜式熱交換器によって冷却され、チューブアイスを形成する。その際、伝熱管の周方向に均一な冷媒液膜を形成できるため、ドライパッチの形成を抑制でき、熱交換効率を高めることができる。これによって、伝熱管の表面積を低減でき、熱交換器を小型化できる。また、満液式のように深さ方向に冷媒液のヘッド圧が生じないため、鉛直方向で蒸発温度が一定となり、氷厚にムラができない。また、ケーシング内に保有する冷媒液が少ないため、圧縮機への液バックを抑制できると共に、チューブアイスを伝熱管の内面から剥離させる脱氷工程において、冷媒液は脱氷用のホットガスの注入により短時間で氷の融点以上の飽和温度に達することができる。以上から、製氷時間及び脱氷時間を短縮でき、製氷能力を向上できる。
【0067】
(11)別の態様に係る流下液膜式チューブアイス製氷機は、(10)に記載の流下液膜式チューブアイス製氷機であって、前記伝熱管の上端が固定される管板を備え、前記ヘッダは、前記管板の下方に形成され、前記上部製氷用水貯留部は前記管板の上方に形成される。
【0068】
このような構成によれば、上記管板を境に管板の上方に上部製氷用水貯留部を配置し、管板の下方に冷媒を貯留するためのヘッダを配置したので、製氷用水と冷媒とが伝熱管の上流側で交じり合わない。また、ヘッダを管板の下方に配置したので、該ヘッダに貯留される冷媒を伝熱管の外表面まで導く導入路の形成が容易になる。
【0069】
(12)さらに、別の態様に係る流下液膜式チューブアイス製氷機は、(10)又は(11)に記載の流下液膜式チューブアイス製氷機であって、前記伝熱管の内面に形成されたチューブアイスを脱氷するためのホットガスを前記伝熱管の外表面側に供給するホットガス供給部(例えば、ホットガス入口管34、冷凍機70を構成するホットガス供給路等)を備える。
【0070】
このような構成によれば、上記ホットガス供給部を備えることで、脱氷時に伝熱管の内面に形成された氷を脱氷するためのホットガスをケーシング内の伝熱管の外側空間に供給できる。
【0071】
(13)さらに、別の態様に係る流下液膜式チューブアイス製氷機は、(10)乃至(12)の何れかに記載の流下液膜式チューブアイス製氷機であって、前記伝熱管の下方に設けられ、脱氷時に前記伝熱管の内面から脱離したチューブアイスを切断するためのカッタを備える。
【0072】
このような構成によれば、上記カッタを備えるために、脱氷工程において、伝熱管の内面から脱離して自重で滑り落ちるチューブアイスを適宜長さに裁断して利用先に供給できる。
【符号の説明】
【0073】
10 流下液膜式チューブアイス製氷機
11 流下液膜式熱交換器
12 ケーシング
14 伝熱管
16 冷媒ヘッダ
16a 下面
18、36 管板
20 上部製氷用水貯留部
22 冷媒入口管
24 冷媒液循環管
26、46 循環ポンプ
28 冷媒液出口管
30 冷媒液入口管
32 冷媒ガス出口管
34 ホットガス入口管
38 カッタ
38a 回転軸
40 駆動部
42 下部製氷用水貯留部
44 製氷用水循環管
48 レベルセンサ
50 制御部
52 底板
54 出口開口
60(60a、60b、60c) 筒状体
61 止め用フランジ
62 仕切板
64(64a、64b) フランジ
66 貫通孔
68 接合部
70 冷凍機
72 冷媒回路
74 圧縮機
76 凝縮器
78 レシーバ
80 膨張弁
Ca 環状隙間
C1 第1隙間
C2 第2隙間
Lf 冷媒液膜
Ls 冷媒液面
S0 内部空間
S1 ヘッダ内空間
Ti チューブアイス
Wi 製氷用水
r 冷媒液