(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】機能性部材付きガラス窓
(51)【国際特許分類】
E06B 7/28 20060101AFI20230919BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
E06B7/28 Z
H01Q1/22 Z
(21)【出願番号】P 2020522134
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2019020409
(87)【国際公開番号】W WO2019230546
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2018104613
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019018856
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(73)【特許権者】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】516170945
【氏名又は名称】エージーシー ヴィドロ ド ブラジル リミターダ
【氏名又は名称原語表記】AGC Vidros do Brasil Ltda.
【住所又は居所原語表記】Estrada Municipal Doutor Jaime Eduardo Ribeiro Pereira, n 500, Jardim Vista Alegre, Guaratingueta, Sao Paulo, CEP 12523-671, Brasil
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 まゆ
(72)【発明者】
【氏名】福田 光夫
(72)【発明者】
【氏名】松村 正広
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 晃
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-44216(JP,U)
【文献】特開2013-88634(JP,A)
【文献】特開2016-42119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/28
H01Q 1/00-1/52
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対して立設されるとともにガラス板を有するガラス窓と、前記ガラス板より小さい面積を有し、且つ前記床面に対して上方に離間した位置に配置される機能性部材と、を含む機能性部材付きガラス窓であって、
前記機能性部材は、スペーサを介して前記ガラス板に貼着されるとともに留め具を介して前記スペーサに接合され
、
前記機能性部材は、主面と端面とを有する平面視矩形状の板状体であり、前記機能性部材の左右両側の縦縁部および上下両側の横縁部の少なくとも一方が前記スペーサを介して前記ガラス板に貼着される、機能性部材付きガラス窓。
【請求項2】
前記留め具は、前記機能性部材の四隅部のうち少なくとも2つの隅部に配置される、
請求項
1に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項3】
前記留め具は、前記機能性部材の四隅部に配置される、
請求項
1に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項4】
前記留め具は、
前記機能性部材の隅部において、互いに直交する方向に形成された前記機能性部材の2つの端面に当接される第1当接部と、前記機能性部材の主面に当接され、前記スペーサとの間で前記機能性部材が挟持される第2当接部、とを有する、
請求項
2又は3に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項5】
前記留め具は、前記機能性部材の左上隅部と右上隅部に配置され、
前記機能性部材の左上隅部に配置された前記留め具と右上隅部に配置された前記留め具は、前記機能性部材の上縁部に沿って配置された第1連結部材を介して連結される、
請求項
2から4のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項6】
前記留め具は、前記機能性部材の左下隅部と右下隅部に配置され、
前記機能性部材の左下隅部に配置された前記留め具と右下隅部に配置された前記留め具は、前記機能性部材の下縁部に沿って配置された第2連結部材を介して連結される、
請求項
2から5のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項7】
前記留め具は、締結具を介して前記スペーサに接合される、
請求項
1から6のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項8】
前記留め具に線状部材の一端が固定され、前記線状部材の他端は、前記ガラス窓が取り付けられるサッシ又は建物に固定される、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項9】
床面に対して立設されるとともにガラス板を有するガラス窓と、前記ガラス板より小さい面積を有し、且つ前記床面に対して上方に離間した位置に配置される機能性部材と、を含む機能性部材付きガラス窓であって、
前記機能性部材は、スペーサを介して前記ガラス板に貼着され、
前記機能性部材又は前記スペーサに、線状部材の一端が固定され、前記線状部材の他端が、前記ガラス窓が取り付けられるサッシ又は建物に固定され
、
前記機能性部材は、主面と端面とを有する平面視矩形状の板状体であり、前記機能性部材の左右両側の縦縁部および上下両側の横縁部の少なくとも一方が前記スペーサを介して前記ガラス板に貼着される、機能性部材付きガラス窓。
【請求項10】
前記機能性部材は、留め具を介して前記スペーサに接合され、前記線状部材の一端が前記留め具を介して前記スペーサに固定される、
請求項
9に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項11】
前記線状部材が鉛直方向に沿って配置され、前記ガラス板の主面が鉛直方向と平行になるように前記ガラス板が配置されている、
請求項
9又は10に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項12】
前記ガラス板の主面が鉛直方向と平行になるように前記ガラス板が配置され、鉛直軸と前記線状部材とのなす角度が0°を超え、且つ90°未満である、
請求項
9又は10に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項13】
床面に対して立設されるとともにガラス板を有するガラス窓と、前記ガラス板より小さい面積を有し、且つ前記床面に対して上方に離間した位置に配置される機能性部材と、を含む機能性部材付きガラス窓であって、
前記機能性部材は、スペーサを介して前記ガラス板に貼着され、
前記機能性部材又は前記スペーサに、線状部材の一端が固定され、前記線状部材の他端が、前記ガラス窓が取り付けられるサッシ又は建物に固定され
、
前記機能性部材は、留め具を介して前記スペーサに接合され、前記線状部材の一端が前記留め具を介して前記スペーサに固定され、
前記留め具は、前記機能性部材の四隅部に配置され、
前記留め具は、
前記機能性部材の隅部において、互いに直交する方向に形成された前記機能性部材の2つの端面に当接される第1当接部と、前記機能性部材の主面に当接され、前記スペーサとの間で前記機能性部材が挟持される第2当接部、とを有する、機能性部材付きガラス窓。
【請求項14】
前記留め具は、前記機能性部材の左上隅部と右上隅部に配置され、
前記機能性部材の左上隅部に配置された前記留め具と右上隅部に配置された前記留め具は、前記機能性部材の上縁部に沿って配置された第1連結部材を介して連結される、
請求項
13に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項15】
前記留め具は、前記機能性部材の左下隅部と右下隅部に配置され、
前記機能性部材の左下隅部に配置された前記留め具と右下隅部に配置された前記留め具は、前記機能性部材の下縁部に沿って配置された第2連結部材を介して連結される、
請求項
14に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項16】
前記留め具は、締結具を介して前記スペーサに接合される、
請求項
10、13から15のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項17】
前記機能性部材は、アンテナユニット又はディスプレイ装置である、請求項1から
16のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項18】
前記機能性部材の主面は、前記ガラス板に対して傾斜する、請求項1から
17のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項19】
前記機能性部材の主面は、前記ガラス板に対して平行である、請求項1から
17のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項20】
前記ガラス板と前記機能性部材との間に空間が形成される、請求項1から19のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項21】
前記スペーサは、板状体である、請求項1から20のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【請求項22】
前記スペーサは、貼着材により前記ガラス板及び前記機能性部材に貼着される、請求項1から21のいずれか1項に記載の機能性部材付きガラス窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性部材付きガラス窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複層ガラス窓が既存のガラス窓から構成されてきた。例えば、特許文献1および特許文献2は、既存のガラス窓のガラス板にスペーサ付きガラス板がブチルゴムによって接着(貼着)された複層ガラス窓を開示する。
【0003】
このようなスペーサ付きガラス板は、主面が略垂直になるようにセッティングブロック上に載置され、ブチルゴムを介してスペーサがガラス窓のガラス板に圧着され、それによりスペーサ付きガラス板がガラス窓のガラス板に貼着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-140766号公報
【文献】特開2012-148966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に開示された複層ガラス窓は、ガラス窓のガラス板の面積(ガラス板の主面の面積。以下同様)と略等しい面積を有するスペーサ付きガラス板により構成される。このため、主面を略垂直にした状態のスペーサ付きガラス板の底部をセッティングブロック上に載置すると、スペーサ付きガラス板がガラス窓のガラス板に精度よく貼着される。
【0006】
しかしながら、ガラス窓のガラス板よりも小さい面積を有する部材(以下、小型部材と称する)をガラス板に貼着する場合、特に、小型部材をガラス板の上部に単独で貼着する場合は、既述のセッティングブロックを用いた小型部材の貼着が困難である。このような場合、小型部材はブチルゴム等の接着剤のみでガラス窓に固定される。
【0007】
近年、ガラス窓のガラス板に、アンテナ機能(電磁波の送受信の機能)を備えた小型のアンテナユニット、又は画像を表示する小型のディスプレイ装置などの機能性部材を貼着することによる、既存のガラス窓のガラス板のアンテナ用又はディスプレイ装置用の支持部材としての利用が提案されている。
【0008】
このような機能性部材は、アンテナユニットの場合は電磁波の送受信の効率を向上させるため、又はディスプレイ装置の場合は表示画像の視認性を向上させるため、ガラス窓のガラス板の上部に配置されることが多い。このような場合、機能性部材は、平面視で三角形状又は台形状のスペーサを介してガラス板に貼着される。
【0009】
しかしながら、上記の場合、例えば地震によりスペーサに大きな応力が発生すると、スペーサに貼着された機能性部材がスペーサから剥離する虞があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ガラス窓のガラス板より小さい面積を有する機能性部材が、ガラス板の上部に安定して配置される機能性部材付きガラス窓を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態によれば、本発明の目的を達成するために、床面に対して立設されるとともにガラス板を有するガラス窓と、ガラス板より小さい面積を有し、且つ床面に対して上方に離間した位置に配置される機能性部材と、を含む機能性部材付きガラス窓であって、機能性部材は、スペーサを介してガラス板に貼着されるとともに留め具を介してスペーサに接合される、機能性部材付きガラス窓が提供される。
【0012】
本発明の一形態によれば、留め具は、締結具を介してスペーサに接合されることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態によれば、機能性部材は、主面と端面とを有する平面視矩形状の板状体であり、左右両側の縦縁部および上下両側の横縁部の少なくとも一方がスペーサを介してガラス板に貼着されることが好ましい。
【0014】
本発明の一形態によれば、留め具は、機能性部材の四隅部のうち少なくとも2つの隅部に配置されることが好ましい。
【0015】
本発明の一形態によれば、留め具は、機能性部材の四隅部に配置されることが好ましい。
【0016】
本発明の一形態によれば、留め具は、機能性部材の隅部において、互いに直交する方向に形成された機能性部材の2つの端面に当接される第1当接部と、機能性部材の主面に当接され、スペーサとの間で機能性部材が挟持される第2当接部、とを有することが好ましい。
【0017】
本発明の一形態によれば、留め具は、機能性部材の左上隅部と右上隅部に配置され、機能性部材の左上隅部に配置された留め具と右上隅部に配置された留め具は、機能性部材の上縁部に沿って配置された第1連結部材を介して連結されることが好ましい。
【0018】
本発明の一形態によれば、留め具は、機能性部材の左下隅部と右下隅部に配置され、機能性部材の左下隅部に配置された留め具と右下隅部に配置された留め具は、機能性部材の下縁部に沿って配置された第2連結部材を介して連結されることが好ましい。
【0019】
本発明の一形態によれば、留め具に線状部材の一端が固定され、線状部材の他端は、ガラス窓が取り付けられるサッシ又は建物に固定されることが好ましい。
【0020】
本発明の一形態によれば、機能性部材は、アンテナユニット又はディスプレイ装置であることが好ましい。
【0021】
本発明の一形態によれば、機能性部材の主面は、ガラス板に対して傾斜することが好ましい。
【0022】
本発明の一形態によれば、本発明の目的を達成するために、床面に対して立設されるとともにガラス板を有するガラス窓と、ガラス板より小さい面積を有し、且つ床面に対して上方に離間した位置に配置される機能性部材と、を含む機能性部材付きガラス窓であって、機能性部材は、スペーサを介してガラス板に貼着され、機能性部材又はスペーサに、線状部材の一端が固定され、線状部材の他端が、ガラス窓が取り付けられるサッシ又は建物に固定される、機能性部材付きガラス窓が提供される。
【0023】
本発明の一形態によれば、機能性部材は、留め具を介してスペーサに接合され、線状部材の一端が留め具を介してスペーサに固定されることが好ましい。
【0024】
本発明の一形態によれば、線状部材が鉛直方向に沿って配置され、ガラス板の主面が鉛直方向と平行になるようにガラス板が配置されていることが好ましい。
【0025】
本発明の一形態によれば、ガラス板の主面が鉛直方向と平行になるようにガラス板が配置され、鉛直軸と線状部材とのなす角度が0°を超え、且つ90°未満であることが好ましい。
【0026】
本発明の一形態によれば、機能性部材の主面は、ガラス板に対して平行であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ガラス窓のガラス板より小さい面積を有する機能性部材が、ガラス板の上部に安定して配置される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、建物の室内側から見た実施形態に係る機能性部材付きガラス窓の斜視図である。
【
図2】
図2は、アンテナユニット単体を正面から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、アンテナユニットを正面から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、アンテナユニットを背面から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、ガラス板に配置されるアンテナユニットの分解図である。
【
図6】
図6は、ガラス板にアンテナユニットが貼着された状態の、機能性部材付きガラス窓の側面図である。
【
図7】
図7は、アンテナユニットの主面の方向から見た留め具の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7においてアンテナユニットが留め具によってスペーサに接合された状態の留め具の斜視図である。
【
図9】
図9は、アンテナユニットの下端面の方向から見た留め具の斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9においてアンテナユニットが留め具によってスペーサに接合された状態の留め具の斜視図である。
【
図11】
図11は、シリコーンシーラントを備えたアンテナユニットを概略的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る機能性部材付きガラス窓を説明する図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る機能性部材付きガラス窓を説明する図である。
【
図15】
図15は、第1の固定治具を利用してサッシに固定されたワイヤの上端の固定部分の要部の断面図である。
【
図17】
図17は、第2の固定治具を利用してサッシに固定されたワイヤの上端の固定部分の要部の断面図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態に係る機能性部材付きガラス窓を説明する図である。
【
図20】
図20は、部分的に断面を含むスペーサの側面図である。
【
図21】
図21は、部分的に断面を含むスペーサの側面図である。
【
図22】
図22は、ワイヤの傾斜角度を示す機能性部材付きガラス窓のワイヤ接続部の要部の側面図である。
【
図23】
図23は、機能性部材がディスプレイ装置である場合の機能性部材付きガラス窓を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明に係る機能性部材付きガラス窓の好ましい実施形態を説明する。
[第1実施形態]
【0030】
図1は、建物20の室内側から見た第1実施形態に係る機能性部材付きガラス窓10の斜視図である。
【0031】
図1に示す機能性部材付きガラス窓10は、ガラス板12を有するガラス窓14と、アンテナユニット16と、を含み、アンテナユニット16が一対のスペーサ18、18を介してガラス板12に貼着されることにより構成されている。なお、以下に説明するX方向とはガラス板12の厚さ方向を指し、Y方向とはX方向に直交する方向であってガラス板12の幅方向(水平方向)を指す。また、Z方向とはX方向及びY方向にそれぞれ直交する方向であってガラス板12の高さ方向を指す。実施形態では、Z方向の一例として鉛直方向を示すが、Z方向とは厳密な鉛直方向のみを指すものではなく、厳密な鉛直方向に対して微小量傾斜した方向でもよい。
【0032】
実施形態のガラス窓14は、建物20の床面22に対してZ方向に立設されるとともに建物20の開口部24に設置された既存のものである。このガラス窓14は、矩形状のガラス板12と、ガラス板12の縦縁部及び横縁部に取り付けられた金属製のサッシ26と、を有する。ガラス板12としては、単板のガラス板であってもよく、複層ガラス又は合わせガラスであってもよい。また、サッシ26は、Y方向に沿った上横枠26A及び下横枠26Bと、Z方向に沿った左縦枠26C及び右縦枠26Dと、によって枠状に構成された既知のものである。
【0033】
実施形態のアンテナユニット16は、本発明の構成要素である機能性部材の一例である。このアンテナユニット16は、
図2の正面斜視図で示すように、平面視で矩形状のガラス製の板状体から主として構成され、表裏の主面16A、16Bと、上端面16C、下端面16D、左端面16E、右端面16Fと、を有している。また、アンテナユニット16は、
図1に示されるように、ガラス板12よりも面積が小さく構成されており、その配置位置は、電磁波の送受信の感度の関係でガラス板12の高所に設定されている。
【0034】
アンテナユニット16の配置位置である、ガラス板12の高所とは、特にその位置を厳密に規定するものではない。例えば、ガラス板12のZ方向の中間位置を境にして、その中間位置よりも上側を高所と規定してもよい。また、特許文献1、2に開示されたセッティングブロックを使用した場合の貼着可能な限界位置を境にして、その限界位置よりも上側を高所と規定してもよい。つまり、ガラス板12の高所とは、建物20の床面22に対して上方に離間した位置であって、セッティングブロックを使用した場合の貼着可能な限界位置よりも上側の位置を指す。なお、実施形態では、矩形状のアンテナユニット16を例示するが、その形状は、例えば楕円又は真円等の円形状であってもよく、四角形状を除く多角形状であってもよい。
【0035】
図3は、
図1の室内側から見たアンテナユニット16の正面斜視図であり、
図4は、
図1の室外側から見たアンテナユニット16の背面斜視図である。アンテナユニット16は、
図4の主面16Aをガラス板12(
図1参照)に対向させた姿勢でガラス板12にスペーサ18、18を介して貼着される。
【0036】
図4に示すように、アンテナユニット16は、その主面16Aにアンテナ28が備えられている。アンテナ28は、アンテナユニット16の主面16Aに金属材料を印刷することにより備えられる。アンテナ28を構成する金属材料としては、金、銀又は銅などの導電性材料を用いることができる。また、アンテナ28は、光透過性を有することが好ましい。光透過性を有するアンテナ28であれば、意匠性がよく、また、平均日射吸収率を低下させることができるので好ましい。このアンテナ28には、不図示の導線が接続されている。
【0037】
アンテナユニット16は、主面16Aの左右両側の縦縁部16G、16Hが、前述した一対のスペーサ18、18を介してガラス板12に貼着される。
【0038】
図5は、ガラス板12に対するアンテナユニット16の組み立て図であって、Y方向からアンテナユニット16を見た側面図である。
図6は、ガラス板12にアンテナユニット16が貼着された機能性部材付きガラス窓10をY方向から見た側面図である。
【0039】
図5に示すように、スペーサ18は、平面視において略台形状に構成された板状体であり、樹脂製であってもよく、金属製であってもよい。樹脂製のスペーサ18としては、AES(acrylonitrile ethylene-propylene-diene styrene)製、アクリル製又はポリカーボネイト製のものを例示することができる。このスペーサ18は、ガラス板12に対向する第1端面18Aと、アンテナユニット16に対向する第2端面18Bと、上端面である第3端面18Cと、下端面である第4端面18Dとを有している。スペーサ18は、第1端面18Aが、ブチルテープ30によってガラス板12にZ方向に沿って貼着され、第2端面18Bに、アンテナユニット16の縦縁部16G、16Hがブチルテープ32によって貼着される。この第2端面18Bは、そのZ方向の長さL1が縦縁部16G、16HのZ方向の長さL2と略等しく構成されている。なお、ブチルテープ30、32は貼着材の一例であるが、ブチルテープ30、32に代えて他の貼着材を使用してもよい。他の貼着材としては、種々の両面粘着テープが使用でき、例えばアクリルフォーム基材強接着両面テープ(住友スリーエム社製VHBテープ(登録商標)、日東電工社製HYPERJOINT(登録商標))が挙げられる。
【0040】
図5及び
図6に示すように、アンテナユニット16の縦縁部16G、16Hがスペーサ18、18にブチルテープ32、32よって貼着され、そして、スペーサ18、18がブチルテープ30、30によってガラス板12に貼着されると、アンテナユニット16の主面16Aは、ガラス板12に対してX方向に離間し、且つZ方向に対して傾斜した第2端面18Bに沿った姿勢で配置される。なお、本実施形態においては、アンテナユニット16の主面16Aがガラス板12に対して傾斜するように配置されるが、スペーサ18、18を矩形状に構成し、第1端面18A及び第2端面18Bを互いに平行にすることにより、アンテナユニット16の主面16Aがガラス板12に対して平行になるように配置してもよい。アンテナユニット16の電磁波の送受信の感度を向上するためには、アンテナユニット16の主面16Aがガラス板12に対して傾斜するように配置されることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、アンテナユニット16は、主面16Aの左右両側の縦縁部16G、16Hが、一対のスペーサ18、18を介してガラス板12に貼着されるが、アンテナユニット16は、主面16Aの上下両側の横縁部16I、16J(
図4参照)が、一対のスペーサ18、18を介してガラス板12に貼着されてもよく、主面16Aの左右両側の縦縁部16G、16Hおよび上下両側の横縁部16I、16Jのいずれもがスペーサを介してガラス板12に貼着されてもよい。
【0042】
従来技術では、このようにアンテナユニット16がスペーサ18、18を介してガラス板12に貼着されるのみであった。このような従来の機能性部材付きガラス窓10では、例えば地震が発生してスペーサ18、18に大きな応力が発生すると、スペーサ18、18からアンテナユニット16が剥離する虞があった。
【0043】
そこで、第1実施形態の機能性部材付きガラス窓10は、上記の不具合を解消するために、
図1及び
図3の如く、留め具34を有している。以下、留め具34について説明する。
【0044】
図1及び
図3に示すように、留め具34は、アンテナユニット16の四隅部にそれぞれ配置されている。なお、留め具34については略同一構成であるので、ここでは
図1のアンテナユニット16の右下隅部に配置された留め具34の構成について説明し、その他の3つの留め具34の構成については説明を省略する。
【0045】
図7は、アンテナユニット16とスペーサ18に対する留め具34の組み立て斜視図であって、アンテナユニット16の主面16Aの側から留め具34を見た斜視図である。また、
図8は、
図7の組み立て斜視図において、アンテナユニット16が留め具34によってスペーサ18に接合された状態を示す斜視図である。更に、
図9は、アンテナユニット16とスペーサ18に対する留め具34の組み立て斜視図であって、アンテナユニット16の下端面16Dの側から留め具34を見た斜視図である。また、
図10は、
図9の組み立て斜視図において、アンテナユニット16が留め具34によってスペーサ18に接合された状態を示す斜視図である。
【0046】
実施形態の留め具34は、アンテナユニット16の互いに直交するX-Y方向及びX-Z方向(
図7及び
図9参照)に形成された2つの端面である下端面16D及び右端面16Fに当接されるL字状の第1当接部34Aと、アンテナユニット16の主面16Bに当接されてスペーサ18との間でアンテナユニット16を挟持する平板状の第2当接部34Bと、を有する。また、留め具34は、ネジ36がねじ込まれる接合部34Cを有している。この接合部34Cは、第1当接部34Aを下端面16D及び右端面16Fに当接し、且つ第2当接部34Bを主面16Bに当接した際に、スペーサ18の第4端面18Dに当接可能な位置に備えられる(
図8及び
図10参照)。なお、ネジ36は、本発明の構成要素である締結具の一例である。ネジ36としては、例えば小ネジ、タッピングネジ、が挙げられる。
【0047】
上記の如く構成された留め具34によれば、第1当接部34Aを下端面16D及び右端面16Fに当接するとともに、第2当接部34Bを主面16Bに当接した後、接合部34Cを介してネジ36を第4端面18Dに螺入する。これにより、留め具34がネジ36を介してスペーサ18の第4端面18Dに接合されるので、アンテナユニット16の右下隅部が、留め具34を介してスペーサ18に位置ずれすることなく接合される。そして、アンテナユニット16の左上隅部、右上隅部及び左下隅部に配置される他の3つの留め具34、34、34についても同様の手順でスペーサ18、18に接合する。これにより、アンテナユニット16の四隅部がそれぞれスペーサ18、18に位置ずれすることなく接合される。なお、実施形態の留め具34は、樹脂製であっても金属製であってもよい。また、上記の留め具34の形状は一例であり、上記の形状に限定されるものではない。留め具34による接合は、嵌め合い方式であってもよく、スライド方式であってもよい。
【0048】
一方、アンテナユニット16には、
図3の如く、その上縁部に沿って長尺の連結部材38が配置される。この連結部材38は、アンテナユニット16の上端面16Cに当接されている。また、同様に、アンテナユニット16には、その下縁部に沿って長尺の連結部材40が配置される。この連結部材40は、アンテナユニット16の下端面16Dに当接されている。
【0049】
図7及び
図9に示すように、連結部材40のL字状の右端部40Aは、右下隅部の留め具34の接合部34Cと右側のスペーサ18の第4端面18Dとの間に挿入され、ネジ36により接合部34Cと共にその第4端面18Dに接合される。また、図示は省略しているが、連結部材40のL字状の左端部は、左下隅部の留め具34の接合部34Cと左側のスペーサ18の第4端面18Dとの間に挿入され、ネジ36により接合部34Cと共にその第4端面18Dに接合される。これにより、アンテナユニット16の左右両側の下隅部に配置された一対の留め具34、34が、連結部材40を介して連結される。なお、連結部材38も連結部材40と同様の構成であり、連結部材40と同様の連結方法によってネジ36により接合部34Cと共に、左右のスペーサ18、18の第3端面18C、18Cに接合される。よって、アンテナユニット16の左右両側の上隅部に配置された一対の留め具34、34が、連結部材38を介して連結される。この連結部材38、40は、本発明の構成要素である第1連結部材、第2連結部材の一例である。この連結部材38、40は、樹脂製であってもよく、金属製であってもよい。
【0050】
また、機能性部材付きガラス窓10においては、
図11に示す室外側から見たアンテナユニット16の概略平面図の如く、ガラス板12対するアンテナユニット16とスペーサ18、18との貼着力を補強するシリコーンシーラント42が備えられていることが好ましい。このシリコーンシーラント42は、スペーサ18、18のY方向における互いの対向面18E、18Eとは反対側の外側面18F、18Fと、ガラス板12と、アンテナユニット16の主面16Aとで囲まれる隙間44(
図8参照)を封止するように打設されている。
図12は、前述の隙間44に打設されたシリコーンシーラント42を示す斜視図である。このシリコーンシーラント42によって、ガラス板12対するアンテナユニット16とスペーサ18、18との貼着力が補強されている。
【0051】
シリコーンシーラント42としては、黒色の2液型や黒色又は白色の1液型の構造用シーリング材、乳白色でペースト状のシーリング材、又は透明(ハイクリアタイプ)のシーリング材を適用することができる。そして、この中でも、上記の構造用シーリング材は、接着強度、耐久性及び耐候性が他のシーリング材よりも優れているので、シリコーンシーラント42として好適である。一方で、上記の乳白色でペースト状のシーリング材と透明のシーリング材は、少なくとも上記の構造用シーリング材よりも透明感があるので、機能性部材付きガラス窓10の意匠性を高めることができる利点がある。黒色の2液型の構造用シーリング材としては、ダウコーニング社製DC121が挙げられる。黒色又は白色の1液型の構造用シーリング材およびとしては、アルコールタイプのシリコーンシーラント(東レ・ダウコーニング社製SE960)が挙げられる。乳白色でペースト状のシーリング材としては、東レ・ダウコーニング社製SE9185、信越シリコーン社製KE-4898が挙げられる。透明のシーリング材としては、一成分系オキシムタイプのシリコーンシーラント(信越シリコーン社製KE-450)、付加硬化型シリコーン(ダウコーニング社製DOWSIL(登録商標)TSSA)が挙げられる。
【0052】
以上の如く構成された第1実施形態の機能性部材付きガラス窓10によれば、アンテナユニット16を、スペーサ18、18を介してガラス板12に貼着するとともに留め具34を介してスペーサ18、18に接合したので、ガラス窓14のガラス板12よりも面積の小さいアンテナユニット16を、ガラス板12の高所の位置に安定して配置することができる。つまり、地震が発生してスペーサ18、18に大きな応力が発生し、これに起因してスペーサ18、18からアンテナユニット16が剥離した場合でも、アンテナユニット16は、留め具34を介してスペーサ18、18に接合されているので、スペーサ18、18からの脱落を防止することができる。このような構成によって、実施形態の機能性部材付きガラス窓10によれば、ガラス板12の高所の位置に安定して配置することができる。
【0053】
また、第1実施形態の機能性部材付きガラス窓10によれば、ネジ36を介して留め具34をスペーサ18に接合したので、留め具34とスペーサ18、18とを強固に固定することができる。これにより、スペーサ18、18からのアンテナユニット16の脱落を確実に防止することができる。
【0054】
また、第1実施形態の機能性部材付きガラス窓10によれば、留め具34は、アンテナユニット16の互いに直交する方向に形成された2つの端面に当接される第1当接部34Aと、アンテナユニット16の主面16Bに当接されてスペーサ18との間でアンテナユニット16を挟持する第2当接部34Bと、を有しているので、スペーサ18、18に対してアンテナユニット16が相対的に位置ずれすることなく、つまり、がたつくことなくアンテナユニット16をスペーサ18、18に接合することができる。
【0055】
また、第1実施形態の機能性部材付きガラス窓10によれば、アンテナユニット16の左右両側の上隅部に配置された一対の留め具34、34を、連結部材38を介して連結したので、アンテナユニット16の上部とスペーサ18、18との接合力を高めることができる。また、アンテナユニット16の左右両側の下隅部に配置された一対の留め具34、34を、連結部材40を介して連結したので、アンテナユニット16の下部とスペーサ18、18との接合力を高めることができる。これにより、アンテナユニット16をスペーサ18に安定して接合することができる。
【0056】
なお、第1実施形態の機能性部材付きガラス窓10では留め具34がアンテナユニット16の四隅部にそれぞれ配置されている場合を説明したが、留め具34は四隅部のうち少なくとも2つ以上の隅部に配置されていればよい。
[第2実施形態]
【0057】
図13は、第2実施形態の機能性部材付きガラス窓50の説明図である。
【0058】
図13に示す機能性部材付きガラス窓50と、
図1に示した機能性部材付きガラス窓10との相違点は、機能性部材付きガラス窓50がワイヤ52を備えた点にあり、その他の構成は同一であるので、ここでは相違点についてのみ説明する。このワイヤ52の一端は留め具34に固定され、ワイヤ52の他端はガラス窓14が取り付けられる既存のサッシ26(
図1の建物20でもよい。)に固定されている。
【0059】
ワイヤ52の一端が固定される留め具34としては、アンテナユニット16の四隅部に配置された全ての留め具34を対象としてもよいが、
図13の如く、左右両側の上隅部に配置された2つの留め具34、34にワイヤ52、52の一端を固定することが好ましい。また、これらの2つの留め具34、34のうち少なくとも1つの留め具34にワイヤ52の一端を固定してもよい。なお、ワイヤ52の一端を留め具34に固定する固定形態の一例として、ワイヤ52の一端をネジ36に固定し、ネジ36を介して留め具34に固定する形態を例示することができる。
【0060】
ワイヤ52の他端の固定形態としては、ワイヤ52の他端にネジ(不図示)を固定して、このネジをサッシ26(又は建物20)に固定する形態を例示することができる。
【0061】
このようにワイヤ52を有する機能性部材付きガラス窓50によれば、万が一スペーサ18、18がガラス板12から剥離した場合でも、スペーサ18付きのアンテナユニット16は、サッシ26(又は建物20)にワイヤ52を介して吊り下げられるので、スペーサ18付きのアンテナユニット16の落下を阻止することができる。なお、ワイヤ52は、本発明の構成要素である線状部材の一例である。
[第3実施形態]
【0062】
図14は、第3実施形態の機能性部材付きガラス窓60の説明図である。
【0063】
図14に示す機能性部材付きガラス窓60と、
図1に示した機能性部材付きガラス窓10との相違点は、機能性部材付きガラス窓60がワイヤ62、62を備えた点にあり、その他の構成は同一であるので、ここでは相違点についてのみ説明する。このワイヤ62の下端はアンテナユニット16の上端面16Cに吊り金具64を介して固定され、ワイヤ62の上端はサッシ26の上横枠26Aに固定されている。ワイヤ62の上端は
図1の建物20に固定されてもよい。
【0064】
具体的に説明すると、吊り金具64としては、例えば荒川技研工業株式会社製の吊り金具(ワイヤーシステムBSU-1S)が適用され、この吊り金具64をアンテナユニット16の上端面16Cに固定することにより、ワイヤ62の下端がアンテナユニット16に固定される。なお、例示した吊り金具64は、一対の金具によってアンテナユニット16を厚さ方向に挟持する形態であるが、これに代えて、アンテナユニット16に貫通孔を形成し、この貫通孔にネジを挿通してネジの両端部を二股形状の金具に固定して、この金具にワイヤ62の下端を固定する形態であってもよい。このような上記の金具として、荒川技研工業株式会社製の金具(ワイヤーシステムS-01)を例示することができる。
【0065】
このように構成された機能性部材付きガラス窓60によれば、アンテナユニット16がワイヤ62を介してサッシ26の上横枠26A(又は
図1の建物20)に固定されているので、万が一スペーサ18、18がガラス板12から剥離した場合でも、スペーサ18付きのアンテナユニット16は、サッシ26の上横枠26A(又は建物20)にワイヤ62を介して吊り下げられる。これにより、スペーサ18付きのアンテナユニット16の落下を阻止することができる。
【0066】
また、上記のワイヤ62を採用することにより、スペーサ18付きのアンテナユニット16の落下阻止機能の一部をワイヤ62に負担させることが可能となるので、例えば、落下防止機能を備えるシリコーンシーラント42(
図12参照)として、接着強度の高い構造用シーリング材に代えて、乳白色でペースト状のシーリング材又は透明のシーリング材を採用することが可能となる。乳白色や透明のシーリング材を用いることによりシーリング材が目立ちにくくなるため、機能性部材付きガラス窓60の意匠性を高めることができる。乳白色や透明のシーリング材を用いる場合、ブチルテープ30、32に代えて透明な貼着材、例えばアクリルフォーム基材強接着両面テープ(住友スリーエム社製VHBテープ(登録商標))を用いることが好ましい。透明な貼着材を用いることにより、機能性部材付きガラス窓60の意匠性をさらに高めることができる。
【0067】
なお、第3実施形態の機能性部材付きガラス窓60では、2本のワイヤ62、62を使用してアンテナユニット16をサッシ26側に固定したが、ワイヤ62の本数は1本でもよく、3本以上であってもよい。また、アンテナユニット16の下端面16Dにも同様の吊り金具64又は上記の金具を配置して、アンテナユニット16の下端面16Dを他のワイヤを利用してサッシ26の下横枠26Bに固定してもよい。
【0068】
更に、1本もしくは2本以上のワイヤ62をサッシ26の上横枠26Aから下横枠26Bにかけて配設し、そのワイヤに取り付けた吊り金具64によってアンテナユニット16の上端面16Cと下端面16Dとを固定した形態でもよい。この形態では、ワイヤ62がZ方向に沿って配設されるため、スペーサ18は側面視で長方形状に構成し、アンテナユニット16の主面16A、16Bをガラス板12と平行に配設することが好ましい。
【0069】
次に、ワイヤ62の上端の固定方法と固定治具とを例示する。
【0070】
図15は、第1の固定治具70を利用してワイヤ62の上端をサッシ26の上横枠26Aに固定した要部断面図である。また、
図16は、固定治具70の構造を示した斜視図である。
【0071】
図16に示すように、固定治具70は、全体として直方体形状に構成されており、その上下方向において、ワイヤ62を貫通配置するワイヤ貫通孔72と、ネジ74(
図15参照)を貫通配置するスリット76とが備えられている。
【0072】
ワイヤ貫通孔72には、例えば、上端にボール78(
図15参照)が固着されたワイヤ(例えば、荒川技研工業株式会社製の片ボールワイヤ)62がワイヤ貫通孔72の上方から挿入される。このワイヤ貫通孔72は、ワイヤ62よりも大径であるが、ボール78よりも小径である。また、ワイヤ貫通孔72の上部には、ボール78よりも大径なボール係合用の貫通孔80がワイヤ貫通孔72と同軸上に備えられている。したがって、ワイヤ貫通孔72の上方から挿入されたワイヤ62は、ボール78が貫通孔80の底部に当接することにより、ワイヤ62の上端が固定治具70に取り付けられる。
【0073】
一方、固定治具70のスリット76は、
図15においてガラス板12の厚さ方向(X方向)に沿って備えられている。このスリット76には、ネジ74がスリット76の下方から挿入される。スリット76は、上下に連通して備えられたネジ部82(
図15参照)用のガイド溝84とネジ頭部86(
図15参照)用のガイド溝88とからなる。ガイド溝88は、ネジ頭部86を挿入可能な大きさに構成され、また、ガイド溝84は、ネジ部82は挿通可能であるが、ネジ頭部86は貫通不能な大きさに形成されている。
【0074】
このように構成された固定治具70によれば、ワイヤ62の上端のボール78を固定治具70の貫通孔80に取り付けた後、スリット76にネジ74(
図15参照)を挿入してネジ部82を上横枠26Aのネジ孔27(
図15参照)に螺入する。これにより、ワイヤ62の上端を上横枠26Aに固定治具70を介して固定することができる。そして、この固定治具70を使用することにより、ワイヤ62をZ方向に沿って配設することが困難な場合でも、ワイヤ62をZ方向に沿って配設することが可能となる。
【0075】
具体的に説明すると、
図15の上横枠26Aにワイヤ62をZ方向に沿って配設しようとすると、ワイヤ62の上端を固定する固定部(例えば、ネジ孔)を上横枠26Aのエッジ部26Eに形成しなければならず、その形成は困難である。そこで、固定治具70を使用すれば、上横枠26Aに対するワイヤ62の上端の実際の固定位置は、上記のエッジ部26EからX方向に離間したネジ孔27の位置となるので、ワイヤ62をZ方向に沿って配設することが可能となる。また、ネジ74を緩めれば、スリット76をガイドとして固定治具70をX方向に移動させることができるので、ワイヤ62をZ方向に沿わせる微調整が可能となる。更に、Z方向に対するワイヤ62の傾斜角度を調整することもできる。
【0076】
図17は、第2の固定治具90を利用してワイヤ62の上端をサッシ26の上横枠26Aに固定した要部断面図である。また、
図18は、固定治具90の構造を示した斜視図である。
【0077】
図18に示すように、固定治具90は、全体として直方体形状に構成されており、その上下方向において、ワイヤ62を貫通配置するスリット92と、皿ネジ94(
図17参照)を貫通配置するネジ貫通孔96とが備えられている。
【0078】
スリット92は、
図17においてガラス板12の厚さ方向(X方向)に沿って備えられている。このスリット92には、上端にボール78が固着されたワイヤ62がスリット92の上方から挿入される。スリット92は、上下に連通して備えられたボール78(
図17参照)用のガイド溝98とワイヤ62のガイド溝100とからなる。ガイド溝98は、ボール78を挿入可能な大きさに構成され、また、ガイド溝100は、ワイヤ62は挿通可能であるが、ボール78は貫通不能な大きさに形成されている。したがって、スリット92の上方から挿入されたワイヤ62は、ボール78がガイド溝98の底部に当接することにより、ワイヤ62の上端が固定治具90に取り付けられる。
【0079】
一方、ネジ貫通孔96には、皿ネジ94(
図17参照)がネジ貫通孔96の下方から挿入される。この皿ネジ94は、上横枠26Aのネジ孔27(
図17参照)に螺入される。
【0080】
このように構成された固定治具90によれば、ワイヤ62の上端のボール78を固定治具90のガイド溝98に取り付けた後、ネジ貫通孔96に皿ネジ94を挿入して皿ネジ94を上横枠26Aのネジ孔27に螺入する。これにより、ワイヤ62の上端を上横枠26Aに固定治具90を介して固定することができる。そして、この固定治具90を使用することにより、ワイヤ62をZ方向に沿って配設することが困難な場合でも、ワイヤ62をZ方向に沿って配設することが可能となる。
【0081】
具体的に説明すると、
図17の上横枠26Aにワイヤ62をZ方向に沿って配設しようとすると、ワイヤ62の上端を固定する固定部(例えば、ネジ孔)を上横枠26Aのエッジ部26Eに形成しなければならず、その形成は困難である。そこで、固定治具90を使用すれば、上横枠26Aに対するワイヤ62の上端の実際の固定位置は、上記のエッジ部26EからX方向に離間したネジ孔27の位置となるので、ワイヤ62をZ方向に沿って配設することが可能となる。また、ボール78をガイド溝98に沿ってX方向に移動させることができるので、ワイヤ62をZ方向に沿わせる微調整が可能となる。また、
図15の固定治具70と同様に、Z方向に対するワイヤ62の傾斜角度を調整することもできる。
[第4実施形態]
【0082】
図19は、第4実施形態の機能性部材付きガラス窓110の説明図である。
【0083】
図19に示す機能性部材付きガラス窓110と、
図14に示した機能性部材付きガラス窓60との相違点について説明すると、ワイヤ62、62の下端がスペーサ18、18に固定された点にある。
【0084】
具体的に説明すると、
図20に示すスペーサ18の一部断面を含む側面図に示すように、下端にボール102が固着されたワイヤ(例えば、荒川技研工業株式会社製の片ボールワイヤ)104を使用し、このボール102をスペーサ18の第3端面18Cからスペーサ18の内部に埋設することで、ワイヤ104の下端をスペーサ18に固定する。
【0085】
このように構成された機能性部材付きガラス窓110によれば、スペーサ18、18がワイヤ104、104を介してサッシ26(又は
図1の建物20)に固定されているので、万が一スペーサ18、18がガラス板12から剥離した場合でも、スペーサ18付きのアンテナユニット16は、サッシ26(又は建物20)にワイヤ104、104を介して吊り下げられる。これにより、スペーサ18付きのアンテナユニット16の落下を阻止することができる。
【0086】
なお、第4実施形態では、下端にボール102が固着された104を使用したが、このワイヤ104に代えて、下端にネジ部が固着されたワイヤを使用し、このネジ部をスペーサ18の第3端面18Cからスペーサ18の内部に螺入させることで、ワイヤの下端をスペーサ18に固定してもよい。また、留め具34(
図13参照)にワイヤ貫通孔を形成し、このワイヤ貫通孔を介してワイヤの下端をスペーサ18に固定するものであってもよい。更に、
図21に示すスペーサ18の一部断面を含む側面図に示すように、スペーサ18の第3端面18Cから第4端面18Dにかけてワイヤ104の下方部分105をスペーサ18に埋設する形態であってもよい。
【0087】
以下、ワイヤとガラス板との好ましい配置位置について説明する。
【0088】
第1例として、例えば
図15、17に示す機能性部材付きガラス窓60の側面図に示すように、ワイヤ62とガラス板12とがZ方向(鉛直方向)に沿って配置されていることが好ましい。このような方向にワイヤ62とガラス板12とを配置することにより、ワイヤ62によるスペーサ18付きのアンテナユニット16の保持力を高めることが可能となる。これにより、スペーサ18付きのアンテナユニット16の落下を効果的に阻止することができる。
【0089】
第2例として、例えば
図22に示す機能性部材付きガラス窓120の側面図に示すように、ガラス板12がZ方向(鉛直方向)に沿って配置され、Z軸(鉛直軸)とワイヤ122とのなす角度θが0°を超え、且つ90°未満であることが好ましい。このような方向にワイヤ122とガラス板12とを配置することにより、アンテナユニット16の直上からX方向(水平方向)にずれた建物20の天井からスペーサ18付きのアンテナユニット16をワイヤ122によって保持することができる。また、
図4に示したアンテナ28には配線(不図示)が接続され、この配線はアンテナユニット16から外部に延設されて天井の開口から天井裏のスペースに配設される。この場合、その配線の配設角度(Z軸に対して0°を超え、且つ90°未満の角度)にワイヤ122の配設角度を合わせることが可能となるので、機能性部材付きガラス窓120をY方向から見た場合、配線とワイヤ122とが重なり煩雑感を与えない。これにより、機能性部材付きガラス窓120の意匠性を高めることができる。
【0090】
以上説明した第1から第4実施形態では、ガラス製のアンテナユニット16について説明したが、アンテナユニット16を形成する材料は、アンテナ28に求められるパワー又は指向性などのアンテナ性能に応じて選択され、例えば、樹脂又は金属を用いることもできる。アンテナユニット16として、ガラス又は樹脂などの光透過性を有するものであれば、アンテナユニット16を通してガラス板12を室内側から見ることができるので、ガラス板12から見える視界がアンテナユニット16で遮られることを低減することができる。なお、アンテナユニット16の厚さは、アンテナ28の配置される場所に応じて任意に設定されるものである。また、アンテナユニット16は導波部材を設けることが好ましい。導波部材はガラス板12とアンテナ28との間に位置するように設けられ、アンテナ28から放射された電波を特定の方向に導く機能を有する。
【0091】
また、ガラス板12は単板のガラス板に限られず、2枚以上のガラス板を、中間膜を介して接合した合わせガラスによって構成されてもよく、複層ガラスによって構成されてもよい。
【0092】
また、第1乃至第4実施形態では、機能性部材としてアンテナユニット16を例示したが、アンテナユニット16に代えて、
図23に示される別実施形態の如く、ディスプレイ54を採用してもよい。
【0093】
また、実施形態の留め具34の代わりに、例えば、ネジなどの留め具を使用して機能性部材をスペーサに接合してもよい。ネジを使用した接合形態の一例としては、機能性部材に貫通孔を形成し、この貫通孔を介してネジをスペーサに螺入することにより、機能性部材を、ネジを介してスペーサに接合する形態を例示することができる。
【0094】
本国際特許出願は、2018年5月31日に出願した日本国特許出願第2018-104613号及び2019年2月5日に出願した日本国特許出願第2019-18856号に基づきその優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-104613号及び第2019-18856号の全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0095】
10、50、60、110、120 機能性部材付きガラス窓
12 ガラス板
14 ガラス窓
16 アンテナユニット
18 スペーサ
20 建物
22 床面
24 開口部
26 サッシ
28 アンテナ
30、32 ブチルテープ
34 留め具
36、74 ネジ
38、40 連結部材
42 シリコーンシーラント
44 隙間
52、62、104、122 ワイヤ
54 ディスプレイ
64 吊り金具
70、90 固定治具
72 ワイヤ貫通孔
76、92 スリット
78、102 ボール
80 貫通孔
82 ネジ部
84、88、98、100 ガイド溝
86 ネジ頭部
94 皿ネジ
96 ネジ貫通孔
105 下方部分