(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】1,3,7-オクタトリエン重合体およびその水素化物
(51)【国際特許分類】
C08F 36/22 20060101AFI20230919BHJP
C08F 8/04 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C08F36/22
C08F8/04
(21)【出願番号】P 2022045481
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2018559649の分割
【原出願日】2017-12-28
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2016257105
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須永 修一
(72)【発明者】
【氏名】辻 智啓
(72)【発明者】
【氏名】堀 啓志
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 康貴
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-108208(JP,A)
【文献】特表平11-502541(JP,A)
【文献】特公昭49-016268(JP,B1)
【文献】特公昭49-016269(JP,B1)
【文献】AJELLAL, N. et al.,"Functional Elastomers via Sequential Selective Diene Copolymerization/Hydrophosphorylation Catalysis",Adv. Synth. Catal.,2008年,vol.350,pp.431-438
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体であって、分子量分布(Mw/Mn)が1.80以下であり、且つ重量平均分子量(Mw)が
7,000~200,000であり、前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を95モル%以上含有する、重合体。
【請求項2】
重量平均分子量(Mw)が13,000~200,000である、請求項
1に記載の重合体。
【請求項3】
分子量分布(Mw/Mn)が1.50以下である、請求項1
又は2に記載の重合体。
【請求項4】
前記1,3,7-オクタトリエンの結合様式において、全結合様式に対する1,2-結合の含有割合が35~65モル%である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項5】
分子末端にリビングアニオン活性種を有さない、請求項1~
4のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項6】
分子末端にリビングアニオン活性種を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の重合体の水素化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,7-オクタトリエン重合体およびその水素化物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム、接着剤、弾性体、繊維および発泡体等の製造には、柔軟で弾性があり、且つ強靭な重合体を用いることが好ましく、これらの使用温度(通常は室温であり、約25℃)よりも低いガラス転移温度を有する重合体が適することが知られている。室温よりもガラス転移温度が低い重合体としては熱可塑性樹脂が挙げられ、該熱可塑性樹脂の原料としては、安価で容易に利用できるブタジエンがよく利用されている。しかし、フィルム、接着剤、弾性体、繊維および発泡体等の物性の改善を行なうには、同じ原料を使用しているのでは限界があるため、これまであまり使用されていない共役ジエン化合物に対する興味が集まっている。1,3,7-オクタトリエンは、そのような共役ジエン化合物の1つである。
【0003】
1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体は側鎖に末端二重結合を有するため、例えば、エポキシ化、ハロゲン化、他の低分子化合物とのグラフト重合等の種々の反応により変性することができる。また、重合体中に存在する二重結合の反応性を利用し、無水マレイン酸、アクロレイン等を付加させることもできる。このようにして得られる化学変性した重合体は接着剤や潤滑剤等の機能性材料としての展開が期待されている。
【0004】
しかしながら、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体に関する報告例は極めて少ない。例えば、アニオン重合開始剤を用いた1,3,7-オクタトリエンの重合方法が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、1,3,7-オクタトリエンの純度が、得られる重合体の分子量および分子量分布、さらには重合成績に与える影響については何ら言及されていない。
【0005】
また、カチオン重合開始剤を用いた1,3,7-オクタトリエンの重合方法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、本発明者らが追試したところ、得られた重合体の分子量分布は3.17と広く、重合制御は困難であった(本明細書の比較例4参照)。
【0006】
チタン系チーグラー型触媒を用いた1,3,7-オクタトリエンの重合方法が開示されている(非特許文献1参照)。しかしながら、得られる重合体は架橋構造を有しており、重合制御できていない。
また、ネオジム系チーグラー型触媒を用いた1,3,7-オクタトリエンの重合方法が開示されている(非特許文献2参照)。しかしながら、得られる重合体の分子量分布は2.06と広く、重合制御できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭49-16269号公報
【文献】特公昭49-16268号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】The Journal of Organic Chemistr、第28巻、2699~2703頁(1963年)
【文献】Advanced Synthesis & Catalysis、第350巻、431~438頁(2008年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、重合体の力学物性を高めるためには分子量分布(Mw/Mn)を狭くすることが好適であることが知られている。従って、これまで製造されたことのない、分子量分布の狭い1,3,7-オクタトリエン重合体およびその水素化物を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、重合制御の困難性の原因は1,3,7-オクタトリエン自体にあるのではなく、1,3,7-オクタトリエンに含まれる不純物にあり、純度98.0%超の1,3,7-オクタトリエンを用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は以下の[1]~[9]を提供する。
[1]1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体であって、分子量分布(Mw/Mn)が1.80以下であり、且つ重量平均分子量(Mw)が1,000~1,000,000であり、前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を95モル%以上含有する、重合体。
[2]重量平均分子量(Mw)が4,000~500,000である、上記[1]の重合体。
[3]重量平均分子量(Mw)が7,000~200,000である、上記[1]または[2]の重合体。
[4]重量平均分子量(Mw)が13,000~200,000である、上記[1]~[3]のいずれかの重合体。
[5]分子量分布(Mw/Mn)が1.50以下である、上記[1]~[4]のいずれかの重合体。
[6]前記1,3,7-オクタトリエンの結合様式において、全結合様式に対する1,2-結合の含有割合が35~65モル%である、上記[1]~[5]のいずれかの重合体。
[7]分子末端にリビングアニオン活性種を有さない、上記[1]~[6]のいずれかの重合体。
[8]分子末端にリビングアニオン活性種を有する、上記[1]~[6]のいずれかの重合体。
[9]上記[1]~[7]のいずれかの重合体の水素化物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、1,3,7-オクタトリエンの重合体において、分子量分布(Mw/Mn)が2.05以下であり、且つ重量平均分子量(Mw)が1,000~1,000,000である重合体およびその水素化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も全て本発明に含まれる。また、数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値および上限値と任意に組み合わせられる。
【0014】
[1,3,7-オクタトリエンの重合体]
本発明は、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体であって、分子量分布(Mw/Mn)が2.05以下であり、且つ重量平均分子量(Mw)が1,000~1,000,000である重合体に関する。
本発明において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の分子量であり、より具体的には実施例に記載の測定方法によって測定した値である。また、分子量分布(Mw/Mn)はそれらから算出した値である。
【0015】
本発明の重合体を組成物へ含有させた場合、該重合体がブリードアウトすることを抑制するためには、本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)が高く、且つ分子量分布(Mw/Mn)が狭いことが好ましい。しかし、一般的には、重量平均分子量(Mw)を高くすると、分子量分布(Mw/Mn)が広くなる傾向にある。分子量分布(Mw/Mn)が広いと、低分子量体が混在していることとなり、これがブリードアウトの原因となり得る。一方、本発明では、分子量分布(Mw/Mn)を低く維持した重合体を提供できるため、工業的価値が大きい。
【0016】
本発明の重合体は、純度98.0%超の1,3,7-オクタトリエンを原料として用いることにより製造できる。特に、このような原料を用いて、アニオン重合を行うことによって製造できる。
なお、1,3,7-オクタトリエンの転化率が高い場合には、重合体と原料の分離回収が簡便になる。さらに、未反応1,3,7-オクタトリエンが水素化されて単価の安いオクタンに変換される懸念がないために、分離工程を経ずにそのまま水素化反応等を施すことができる点で工業的に好ましい。そのため、短い重合時間で高い原料転化率を達成することが好ましい。本発明においては、純度98.0%超であり、且つ過酸化物およびその分解物の合計含有量が0.30mmol/kg以下の原料を用いることにより、短い重合時間で高い原料転化率を達成し易い傾向にある。
【0017】
1,3,7-オクタトリエンの純度は、98.5%以上であることが好ましく、98.8%以上であることがより好ましく、99.0%以上であることがさらに好ましい。ここで、本発明において、1,3,7-オクタトリエンの純度は、ガスクロマトグラフィーによる分析によって、全オクタトリエンに帰属できるピーク面積の総和を算出し、これらのピーク面積総和に対する1,3,7-オクタトリエンのピーク面積の百分率であり、より具体的には実施例に記載の方法によって求めたものである。ここで、全オクタトリエンとは、1,3,7-オクタトリエンと、1,3,6-オクタトリエン、2,4,6-オクタトリエンおよび1,4,6-オクタトリエン等の二重結合異性体との全てを意味する。
【0018】
1,3,7-オクタトリエン中に含まれ得る不純物として、過酸化物およびその分解物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。1,3,7-オクタトリエン中の前記過酸化物およびその分解物の合計含有量は、0.30mmol/kg以下であることが好ましく、0.15mmol/kg以下であることがより好ましく、0.10mmol/kg以下であることがさらに好ましい(但し、一方が0mmol/kgでもよい)。ここで、本発明において、1,3,7-オクタトリエン中の過酸化物およびその分解物の合計含有量は、1,3,7-オクタトリエンにヨウ化カリウムを作用させることによって発生するヨウ素(I2)をチオ硫酸ナトリウムで滴定して求めた値であり、より具体的には実施例に記載の方法によって求めたものである。該過酸化物としては5-ヒドロペルオキシ-1,3,7-オクタトリエン、6-ヒドロペルオキシ-1,3,7-オクタトリエン等が挙げられる。また、該過酸化物の分解物としては、5-ヒドロペルオキシ-1,3,7-オクタトリエンまたは6-ヒドロペルオキシ-1,3,7-オクタトリエンが分解して生成し得る化合物であれば特に制限はないが、例えば5-ヒドロキシ-1,3,7-オクタトリエン、6-ヒドロキシ-1,3,7-オクタトリエン等が挙げられる。これらは、1,3,7-オクタトリエンの酸素酸化によって生成し得る不純物である。なお、過酸化物およびその分解物としては、特に、5-ヒドロペルオキシ-1,3,7-オクタトリエン、6-ヒドロペルオキシ-1,3,7-オクタトリエン、5-ヒドロキシ-1,3,7-オクタトリエン、6-ヒドロキシ-1,3,7-オクタトリエンが重要な化合物である。
【0019】
1,3,7-オクタトリエンは、例えば4-ビニルシクロヘキセンおよび1,3,6-オクタトリエン等の副生成物との蒸留分離が極めて困難なため、純度98.0%超の1,3,7-オクタトリエンは一般的には入手することが容易ではなく、通常、純度97%以下となる傾向にある。しかし、特開2016-216385号公報または特開昭47-17703号公報に記載の方法を実施することによって、純度98.0%超の1,3,7-オクタトリエンを製造することが可能であり、本発明では、この1,3,7-オクタトリエンを利用できる。このように、純度98.0%超の1,3,7-オクタトリエンは存在していたものの、当業者は、そもそも1,3,7-オクタトリエンの重合制御は困難であると認識していたため、これまでは、わざわざ純度98.0%超にまで高めた1,3,7-オクタトリエンを原料に用いて重合反応を実施しようとは考えなかった。しかし、本発明者等が1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体の開発中に純度98.0%超の1,3,7-オクタトリエン、特に純度98.0%超であり、且つ過酸化物およびその分解物の合計含有量が0.30mmol/kg以下の1,3,7-オクタトリエンを原料に用いることで、本発明の重合体を短時間および高転化率で製造できることを見出した。
【0020】
本発明の重合体は、重量平均分子量(Mw)が1,000~1,000,000であることが好ましく、4,000~500,000であることがより好ましく、7,000~200,000であることがさらに好ましく、13,000~200,000であることが特に好ましい。また、該Mwは、19,000~1,000,000であってもよく、33,000~500,000であってもよく、71,000~500,000であってもよく、71,000~250,000であってもよい。
【0021】
本発明の重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.05以下であり、2.03以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましく、1.90以下であることがより好ましく、1.80以下であることがより好ましく、1.60以下であることがより好ましく、1.50以下であることがさらに好ましく、1.35以下であることが特に好ましく、1.30以下であることが最も好ましい。該分子量分布(Mw/Mn)の下限に特に制限はないが、通常、1.05以上または1.10以上となり、1.15以上となることが多い。
【0022】
本発明の重合体は、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を主として含有していればよい。その含有量は、重合体の全構造単位(但し、後述の末端停止剤に由来する構造単位を除く。)に対して95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましく、98モル%超であることが特に好ましく、99.0モル%以上であることが最も好ましい。本発明の重合体は、原料モノマーである1,3,7-オクタトリエン中の不純物と後述の変性および後述のカップリング剤を考慮しなければ、1,3,7-オクタトリエンの単独重合体であるといえる。
【0023】
本発明の重合体は、アニオン重合性化合物によって共重合変性されていてもよいし、変性されていなくてもよい。本発明の重合体がアニオン重合性化合物によって変性されている場合、アニオン重合性化合物に由来する構造単位の含有量は、全構成単位中、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
【0024】
アニオン重合性化合物としては、1,3,7-オクタトリエン以外の化合物であって、アニオン重合が可能な化合物であれば特に制限はない。例えばスチレン、2-クロロスチレン、4-クロロスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(4-フェニル-n-ブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、1,2-ジビニル-3,4-ジメチルベンゼン、2,4-ジビニルビフェニル、1,3-ジビニルナフタレン、1,2,4-トリビニルベンゼン、3,5,4’-トリビニルビフェニル、1,3,5-トリビニルナフタレン、1,5,6-トリビニル-3,7-ジエチルナフタレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、3-メチルクロトン酸、3-ブテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-sec-ブチル、アクリル酸-tert-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸-sec-ブチル、メタクリル酸-tert-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等のα,β-不飽和カルボン酸エステル;N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N-グリシジルアクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-エチル-N-メチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジオクチルアクリルアミド、N,N-ジフェニルアクリルアミド、N-エチル-N-グリシジルアクリルアミド、N,N-ジグリシジルアクリルアミド、N-メチル-N-(4-グリシジルオキシブチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(5-グリシジルオキシペンチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(6-グリシジルオキシヘキシル)アクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイル-L-プロリンメチルエステル、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルモルホリン、1-アクリロイルイミダゾール、N,N’-ジエチル-N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N’-ジメチル-N,N’-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジ(N,N’-エチレン)ビスアクリルアミド等のアクリルアミドなどが挙げられる。アニオン重合性化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の重合体は、カップリング剤に由来する構造単位を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。本発明の重合体がカップリング剤に由来する構造単位を含有する場合、カップリング剤に由来する構造単位の含有量は、全構成単位中、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。
カップリング剤としては、例えばジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼン、安息香酸フェニル等が挙げられる。
【0026】
(結合様式)
本発明の重合体において、1,3,7-オクタトリエンの代表的な結合様式としては、1,2-結合、1,4-結合、3,4-結合および4,1-結合があり、各結合様式の結合順序および含有割合に特に制限はない。なお、本発明において、1,4-結合と4,1-結合は同一とみなす。
【0027】
全結合様式に対する1,2-結合の含有割合は、35~65モル%であることが好ましく、40~60モル%であることがより好ましく、40~50モル%であることがさらに好ましい。全結合様式に対する1,4-結合の含有割合は、20~65モル%であることが好ましく、40~60モル%であることがより好ましく、40~50モル%であることがさらに好ましい。全結合様式に対する3,4-結合の含有割合は、前記1,2-結合の含有割合と前記1,4-結合の含有割合を考慮して、その残部となる。つまり、全結合様式に対する3,4-結合の含有割合は、「100-(1,2-結合の含有割合+1,4-結合の含有割合)」から求められる。
各結合様式の割合は、13C-NMR測定によって求められる。具体的には、実施例に記載の方法に従って求めることができる。
【0028】
本発明の重合体を後述するアニオン重合によって製造する際、重合反応後に末端停止剤を反応させた後の段階では、分子末端にリビングアニオン活性種を有さない重合体であり、本発明は、当該重合体を提供する。
本発明の重合体を後述するアニオン重合によって製造する際、重合反応後に末端停止剤を反応させる前の段階では、分子末端にリビングアニオン活性種を有する重合体(リビングアニオン重合体と称することがある。)であり、本発明は当該重合体も提供する。
【0029】
(水素化物)
本発明の重合体は、耐熱性および耐候性の観点から、前記重合体の水素化物であってもよい。本発明の重合体が水素化物である場合、水素化率に特に制限はないが、重合体において、炭素-炭素二重結合の80モル%以上が水素化(以下、水添とも称される。)されていることが好ましく、85モル%以上が水素化されていることがより好ましく、90モル%以上が水素化されていることがさらに好ましく、93モル%以上が水素化されていることが特に好ましく、95モル%以上が水素化されていることが最も好ましい。なお、該値を水素化率(水添率)と称することがある。水素化率の上限値に特に制限はないが、99モル%以下であってもよい。
水添率は、炭素-炭素二重結合の含有量を水素化後の1H-NMR測定によって求められる。具体的には、実施例に記載の方法に従って求めることができる。
【0030】
[重合体の製造方法]
本発明の重合体の製造方法は、ガスクロマトグラフィーによって求めた純度が98.0%超の1,3,7-オクタトリエンをアニオン重合に付す工程を有する、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体の製造方法であって、重合体の分子量分布(Mw/Mn)が2.05以下であり、且つ重量平均分子量(Mw)が1,000~1,000,000の重合体の製造方法である。
前述の通り、前記過酸化物およびその分解物の合計含有量は0.30mmol/kg以下であることが好ましい。
【0031】
アニオン重合方法に特に制限はなく、公知のアニオン重合方法に準じることができる。
例えば、原料モノマーである1,3,7-オクタトリエンに対して、アニオン重合開始剤を供給することによって重合反応させ、反応系内でリビングアニオン活性種を有する重合体を形成する。次いで、重合停止剤を添加することによって、本発明の重合体を製造できる。
また、必要に応じて、ルイス塩基および溶媒を使用してもよい。
【0032】
重合反応は、重合反応を阻害する水および酸素等が反応系内へ侵入するのを抑制するために、例えば、不活性ガスで加圧した反応器内部で実施することが好ましい。不活性ガス雰囲気下とすることで、アニオン重合開始剤および成長末端アニオンが水または酸素との反応で消費されるのを抑制でき、精度良く重合反応を制御できる。ここで、成長末端アニオンとは、重合反応中に反応系内に存在する重合体が分子末端に有するアニオンのことであり、以下、同様である。
【0033】
重合体の製造に使用する、1,3,7-オクタトリエン、後述のアニオン重合開始剤、後述のルイス塩基および後述の溶媒等は、成長末端アニオンと反応して重合反応を阻害するような物質、例えば、酸素、水、ヒドロキシ化合物、カルボニル化合物およびアルキン化合物等を実質的に含まないことが好ましく、また、遮光下で、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下で保存されていることが好ましい。
1,3,7-オクタトリエン、アニオン重合開始剤およびルイス塩基等は、それぞれ溶媒で希釈して使用してもよいし、溶媒で希釈せずにそのまま使用してもよい。
【0034】
本発明の重合体の製造方法において重要な点は、前述の通り、純度98.0%超の1,3,7-オクタトリエン(より好ましくは前述の通りである。)を使用することであって、好ましくは、純度98.0%超であり、且つ過酸化物およびその分解物の合計含有量が0.30mmol/kg以下の1,3,7-オクタトリエン(より好ましくは前述の通りである。)を使用することである。
【0035】
(アニオン重合開始剤)
本発明の重合体の製造方法はアニオン重合を利用するため、アニオン重合開始剤を使用する。該アニオン重合開始剤は、アニオン重合を開始できる化合物であればその種類に制限はない。
アニオン重合開始剤としては、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物のアニオン重合において一般的に使用される有機アルカリ金属化合物を使用できる。該有機アルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、ブタジエニリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、p-トルイルリチウム、スチリルリチウム、トリメチルシリルリチウム、1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の有機リチウム化合物;メチルナトリウム、エチルナトリウム、n-プロピルナトリウム、イソプロピルナトリウム、n-ブチルナトリウム、sec-ブチルナトリウム、tert-ブチルナトリウム、イソブチルナトリウム、フェニルナトリウム、ナトリウムナフタレン、シクロペンタジエニルナトリウム等の有機ナトリウム化合物などが挙げられ、中でもn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムが好ましい。有機アルカリ金属化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
アニオン重合開始剤の使用量は、所望とする重合体の重量平均分子量または反応液の固形分濃度に応じて適宜設定できるが、例えば、原料モノマーの使用量/アニオン重合開始剤(モル比)が10~3,000となることが好ましく、50~2,500となることがより好ましく、100~2,500となることがさらに好ましく、100~1,500となることが特に好ましく、100~1,000となることが最も好ましい。
【0037】
(ルイス塩基)
本発明の重合体の製造方法では、重合反応を制御する観点、特に、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を得るという観点から、ルイス塩基を使用してもよく、また、使用することが好ましい。該ルイス塩基としては、アニオン重合開始剤および成長末端アニオンと実質的に反応しない有機化合物であれば、その種類に特に制限はない。
【0038】
ルイス塩基を使用する場合、ルイス塩基と、アニオン重合に用いる重合開始剤(アニオン重合開始剤)とのモル比(ルイス塩基/重合開始剤)は、0.01~1,000であることが好ましく、0.01~400であることがより好ましく、0.1~200であることがより好ましく、0.1~50であることがさらに好ましく、0.1~22であることが特に好ましい。この範囲であると、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
【0039】
ルイス塩基としては、(i)分子内にエーテル結合および第三級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物[以下、ルイス塩基(i)と称する。]が挙げられ、ルイス塩基(i)の中でも、(i-1)非共有電子対を有する原子1つを有する化合物[以下、ルイス塩基(i-1)と称する。]および(i-2)非共有電子対を有する原子2つ以上を有する化合物[以下、ルイス塩基(i-2)と称する。]が挙げられる。
ルイス塩基としては、単座配位性を有するものであってもよいし、多座配位性を有するものであってもよい。また、ルイス塩基は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(ルイス塩基(i))
ルイス塩基(i)の中でも、ルイス塩基(i-1)の具体例としては、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオクチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル等の非環状モノエーテル;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の、好ましくは合計炭素数2~40(より好ましくは合計炭素数2~20)の環状モノエーテル;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリsec-ブチルアミン、トリtert-ブチルアミン、トリtert-ヘキシルアミン、トリtert-オクチルアミン、トリtert-デシルアミン、トリtert-ドデシルアミン、トリtert-テトラデシルアミン、トリtert-ヘキサデシルアミン、トリtert-オクタデシルアミン、トリtert-テトラコサニルアミン、トリtert-オクタコサニルアミン、1-メチル-1-アミノ-シクロヘキサン、トリペンチルアミン、トリイソペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルイソブチルアミン、N,N-ジメチルsec-ブチルアミン、N,N-ジメチルtert-ブチルアミン、N,N-ジメチルペンチルアミン、N,N-ジメチルイソペンチルアミン、N,N-ジメチルネオペンチルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルヘプチルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルノニルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルウンデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルモノメチルアミン、N,N-ジプロピルモノメチルアミン、N,N-ジイソプロピルモノメチルアミン、N,N-ジブチルモノメチルアミン、N,N-ジイソブチルモノメチルアミン、N,N-ジsec-ブチルモノメチルアミン、N,N-ジtert-ブチルモノメチルアミン、N,N-ジペンチルモノメチルアミン、N,N-ジイソペンチルモノメチルアミン、N,N-ジネオペンチルモノメチルアミン、N,N-ジヘキシルモノメチルアミン、N,N-ジヘプチルモノメチルアミン、N,N-ジオクチルモノメチルアミン、N,N-ジノニルモノメチルアミン、N,N-ジデシルモノメチルアミン、N,N-ジウンデシルモノメチルアミン、N,N-ジドデシルモノメチルアミン、N,N-ジフェニルモノメチルアミン、N,N-ジベンジルモノメチルアミン、N,N-ジプロピルモノメチルアミン、N,N-ジイソプロピルモノエチルアミン、N,N-ジブチルモノエチルアミン、N,N-ジイソブチルモノエチルアミン、N,N-ジsec-ブチルモノエチルアミン、N,N-ジtert-ブチルモノエチルアミン、N,N-ジペンチルモノエチルアミン、N,N-ジイソペンチルモノエチルアミン、N,N-ジネオペンチルモノエチルアミン、N,N-ジヘキシルモノエチルアミン、N,N-ジヘプチルモノエチルアミン、N,N-ジオクチルモノエチルアミン、N,N-ジノニルモノエチルアミン、N,N-ジデシルモノエチルアミン、N,N-ジウンデシルモノエチルアミン、N,N-ジドデシルモノエチルアミン、N,N-ジフェニルモノエチルアミン、N,N-ジベンジルモノエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N-エチルピペラジン、N-メチル-N-エチルアニリン、N-メチルモルホリン等の、好ましくは合計炭素数3~60(より好ましくは合計炭素数3~15)の第三級モノアミンなどが挙げられる。
【0041】
ルイス塩基(i-1)は、アニオン重合開始剤の金属原子に対して単座配位性を有するルイス塩基である。
ルイス塩基(i-1)としては、重合反応を制御する観点、特に、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を得るという観点から、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミンが好ましい。
ルイス塩基(i-1)を使用する場合、ルイス塩基(i-1)中の非共有電子対を有する原子と、前記アニオン重合に用いる重合開始剤の金属原子とのモル比(非共有電子対を有する原子/重合開始剤の金属原子)が0.01~1,000であることが好ましく、0.1~500であることがより好ましく、2~300であることがさらに好ましく、2~100であることが特に好ましく、2~50であることが最も好ましい。この範囲であると、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
【0042】
ルイス塩基(i)の中でも、ルイス塩基(i-2)の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジイソプロポキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ジメトキシプロパン、1,2-ジエトキシプロパン、1,2-ジフェノキシプロパン、1,3-ジメトキシプロパン、1,3-ジエトキシプロパン、1,3-ジイソプロポキシプロパン、1,3-ジブトキシプロパン、1,3-ジフェノキシプロパン等の、好ましくは合計炭素数4~80(より好ましくは合計炭素数4~40)の非環状ジエーテル;1,4-ジオキサン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン等の、好ましくは合計炭素数4~80(より好ましくは合計炭素数4~40)の環状ジエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジブチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリブチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリブチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラブチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラブチレングリコールジエチルエーテル等の、好ましくは合計炭素数6~40(より好ましくは合計炭素数6~20)の非環状ポリエーテル;N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン等の、好ましくは合計炭素数6~122(より好ましくは合計炭素数6~32、さらに好ましくは合計炭素数6~15)のポリアミンなどが挙げられる。
【0043】
ルイス塩基(i-2)の中には、アニオン重合開始剤の金属原子に対して単座配位性を有するルイス塩基と、アニオン重合開始剤の金属原子に対して多座配位性を有するルイス塩基とがある。
ルイス塩基(i-2)としては、重合反応を制御する観点、特に、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を得るという観点から、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジイソプロポキシエタン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミンが好ましい。
【0044】
ルイス塩基(i-2)を使用する場合は、アニオン重合開始剤の金属原子に対して単座配位性を有するルイス塩基と、アニオン重合開始剤の金属原子に対して多座配位性(例えば2座配位性)を有するルイス塩基とで、好ましい使用量に違いがある。ルイス塩基(i-2)は非共有電子対を有する原子2つ以上有するが、このうちの非共有電子対を有する原子2つに着目したとき、それらを連結している最短架橋炭素数が1つである(例えば、-O-CH2-O-、>N-CH2-N<など)か、または3つ以上である(例えば、-O-C3H6-O-、>N-C4H8-N<、-O-C3H6-N<など)場合には、各々の原子が単座配位性を有する傾向にある。一方、同じく非共有電子対を有する原子2つに着目したとき、それらを連結している最短架橋炭素数が2つである(例えば、-O-C2H4-O-、>N-C2H4-N<など)とき、それらの非共有電子対を有する原子2つがアニオン重合開始剤の金属原子1つに対して多座配位(2座配位)する傾向にある。
【0045】
ルイス塩基(i-2)が単座配位性を有するルイス塩基の場合、ルイス塩基(i-2)中の非共有電子対を有する原子と、前記アニオン重合に用いる重合開始剤の金属原子とのモル比(非共有電子対を有する原子/重合開始剤の金属原子)が0.01~1,000であることが好ましく、0.1~500であることがより好ましく、2~300であることがさらに好ましく、2~100であることが特に好ましく、2~50であることが最も好ましい。この範囲であると、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
一方、ルイス塩基(i-2)が多座配位性(2座配位性)を有するルイス塩基の場合、ルイス塩基(i-2)中の非共有電子対を有する原子と、前記アニオン重合に用いる重合開始剤の金属原子とのモル比(非共有電子対を有する原子/重合開始剤の金属原子)が0.01~50であることが好ましく、0.1~10であることがより好ましく、0.1~5であることがさらに好ましく、0.3~4であることが特に好ましい。この範囲であると、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
なお、単座配位性と多座配位性(2座配位性)を併せ持つルイス塩基の場合、単座配位性の非共有電子対を有する原子と、多座配位性(2座配位性)を有する非共有電子対を有する2つ以上の原子の組み合わせそれぞれに着目し、上記記載を参照してルイス塩基の使用量を決定することが好ましい。
【0046】
(溶媒)
本発明の重合体の製造方法は、溶媒の不存在下でも実施できるが、効率的に重合熱を除去する目的で、溶媒の存在下で実施することが好ましい。
溶媒としては、アニオン重合開始剤および成長末端アニオンと実質的に反応しない溶媒であれば特にその種類に制限はないが、重合時間および転化率を前記ルイス塩基によって精度良く制御する観点からは、炭化水素系溶媒が好ましい。
炭化水素系溶媒としては、例えばイソペンタン(27.9℃;1atmでの沸点であり、以下、同様である。)、ペンタン(36.1℃)、シクロペンタン(49.3℃)、ヘキサン(68.7℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、イソヘプタン(90℃)、イソオクタン(99℃)、2,2,4-トリメチルペンタン(99℃)、メチルシクロヘキサン(101.1℃)、シクロヘプタン(118.1℃)、オクタン(125.7℃)、エチルシクロヘキサン(132℃)、メチルシクロヘプタン(135.8℃)、ノナン(150.8℃)、デカン(174.1℃)等の飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン(80.1℃)、トルエン(110.6℃)、エチルベンゼン(136.2℃)、p-キシレン(138.4℃)、m-キシレン(139.1℃)、o-キシレン(144.4℃)、プロピルベンゼン(159.2℃)、ブチルベンゼン(183.4℃)等の芳香族炭化水素が挙げられる。
原料モノマーの1つである1,3,7-オクタトリエン(沸点125.5℃)よりも低い沸点の溶媒を使用すると、溶媒の還流凝縮冷却によって効率的に重合熱を除去でき、好ましい。この観点から、溶媒としては、イソペンタン(27.9℃)、ペンタン(36.1℃)、シクロペンタン(49.3℃)、ヘキサン(68.7℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、イソヘプタン(90℃)、イソオクタン(99℃)、2,2,4-トリメチルペンタン(99℃)、メチルシクロヘキサン(101.1℃)、シクロヘプタン(118.1℃)、ベンゼン(80.1℃)、トルエン(110.6℃)が好ましい。同様の観点から、中でも、シクロヘキサン、n-ヘキサンがより好ましい。
溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
溶媒の使用量に特に制限はないが、アニオン重合終了後の反応液の固形分濃度が好ましくは10~80質量%、より好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは15~65質量%、特に好ましくは15~55質量%、最も好ましくは25~55質量%となるように調整する。また、反応系内におけるリビングアニオン重合体の濃度が5質量%以上となるように調整することが好ましく、リビングアニオン重合体の濃度が10~80質量%となるように調整することがより好ましい。このような量で溶媒を使用すれば、工業生産に適した水準で重合熱の除去を達成でき、そのため、重合時間の短縮をし易く、且つ1,3,7-オクタトリエンの高転化率を達成し易い。さらに、このような量で溶媒を使用すれば、分子量分布を狭くし易い。
なお、溶媒の除去工程を簡潔にするという観点から、アニオン重合終了後の反応液の固形分濃度が35~80質量%となるように調整することも可能であり、50~70質量%となるように調整することも可能である。
【0048】
(反応器)
反応器の形式に特段の制限はなく、完全混合型反応器、管型反応器、およびこれらを2基以上直列または並列に接続した反応装置を使用できる。高い溶液粘度で狭い分子量分布(Mw/Mn)の重合体を製造する観点から、完全混合型反応器を用いることが好適である。反応器の攪拌翼に特に制限はないが、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、パドル翼、プロペラ翼、タービン翼、ファンタービン翼、ファウドラー翼、ブルーマージン翼等が挙げられ、これらのいずれかを2つ以上組み合わせたものでもよい。得られる重合体溶液の粘度が高い場合は、分子量分布(Mw/Mn)を狭くすることおよびジャケット除熱を促進する観点から、マックスブレンド翼、フルゾーン翼を用いることが好ましい。
攪拌方法としては、上部攪拌であってもよいし、下部攪拌であってもよい。
【0049】
重合方法に特に制限はなく、回分式、半回分式、連続式のいずれで実施してもよい。完全混合型反応器は、反応器内部の溶液の加熱冷却を目的として外部にジャケットを有していてもよく、その構造には特に制限なく、公知の方式のものが使用できる。また、所望に応じて冷却伝熱を増加させる目的で、反応器内部に冷却バッフルまたは冷却コイル等を付設してもよい。さらに、気相部分に直接式または間接式に還流凝縮器を付設してもよい。重合熱の除去量を制御する観点から、不活性ガスを用いて反応器を加圧してもよいし、大気圧以下になるように減圧してもよい。反応器の内圧を大気圧以下にする場合には、不活性ガスを排気するためのポンプを、還流凝縮器を介して設置していてもよい。還流凝縮器の構造に特に制限はないが、多管式還流凝縮器を使用することが好ましい。還流凝縮器は直列または並列で複数の還流凝縮器を連結していてもよく、各々の還流凝縮器に異なる冷媒を通じてもよい。還流凝縮器に通じる冷媒の温度は、還流する溶媒が凍結しない温度から反応液温度までの範囲であれば特に制限はないが、好ましくは-20~50℃、より好ましくは5~30℃であれば、大型冷凍機を必要とせず、経済的である。
【0050】
(重合温度)
重合温度に特に制限はないが、薬品の凝固点を超える温度以上、且つ薬品が熱分解しない温度以下の範囲で実施することが好ましい。好ましくは-50~200℃、より好ましくは-20~120℃、さらに好ましくは15~100℃であれば、重合時間の短縮と1,3,7-オクタトリエンの高転化率を維持したままで、成長末端アニオンの部分的熱劣化に起因する低分子量重合体の生成を抑制してなる力学物性に優れた重合体を製造できる。
【0051】
(重合圧力)
成長末端アニオンと反応して重合反応を阻害するような物質、例えば酸素と水を含有する大気の混入が抑制される限りにおいて、本発明の重合は好適に実施できる。
重合温度以下の沸点を有する溶媒を使用する場合には、不活性ガスによって圧力を制御して溶媒蒸気の発生量を制御することで温度を制御してもよく、重合温度を超える沸点を有する溶媒を使用する場合には排気ポンプを用いて反応系内を減圧し、溶媒の蒸気の発生量を制御することで温度を制御してもよい。
重合圧力に特に制限はないが、0.01~10MPaG、より好ましくは0.1~1MPaGであれば、不活性ガスの使用量低減のみならず、高い耐圧の反応器および不活性ガスを系外に排気するポンプが不要となることから経済的有利に重合できる。
【0052】
(重合時間)
重合時間に特に制限はないが、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.5~12時間であれば、成長末端アニオンの部分的熱劣化に起因する低分子量重合体の生成を抑制し、力学物性に優れた重合体を製造し易い。
【0053】
(重合停止剤およびカップリング剤)
本発明の重合体の製造方法では、反応系へ重合停止剤を添加することによって重合反応を停止することが好ましい。重合停止剤としては、例えば、水素分子;酸素分子;水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、カテコール等のアルコール;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化ブチル、臭化ブチル、ヨウ化ブチル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、弗化トリメチルシリル、塩化トリメチルシリル、臭化トリメチルシリル、ヨウ化トリメチルシリル、弗化トリエチルシリル、塩化トリエチルシリル、臭化トリエチルシリル、ヨウ化トリエチルシリル、弗化トリブチルシリル、塩化トリブチルシリル、臭化トリブチルシリル、ヨウ化トリブチルシリル、弗化トリフェニルシリル、塩化トリフェニルシリル、臭化トリフェニルシリル、ヨウ化トリフェニルシリル等のハロゲン化合物;2-ヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン、2-ヘキサノン、2-ペンタノン、シクロヘキサノン、3-ペンタノン、アセトフェノン、2-ブタノン、アセトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等のエポキシ化合物;メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、プロピルジクロロシラン、ブチルジクロロシラン、ペンチルジクロロシラン、ヘキシルジクロロシラン、ヘプチルジクロロシラン、オクチルジクロロシラン、ノニルジクロロシラン、デシルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジエチルクロロシラン、ジプロピルクロロシラン、ジブチルクロロシラン、ジペンチルクロロシラン、ジヘキシルクロロシラン、ジヘプチルクロロシラン、ジオクチルクロロシラン、ジノニルクロロシラン、ジデシルクロロシラン、メチルプロピルクロロシラン、メチルヘキシルクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、ジメチルフェノキシシラン、ジメチルベンジルオキシシラン、ジエチルメトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、ジエチルプロポキシシラン、ジエチルブトキシシラン、ジエチルフェノキシシラン、ジエチルベンジルオキシシラン、ジプロピルメトキシシラン、ジプロピルエトキシシラン、ジプロピルプロポキシシラン、ジプロピルブトキシシラン、ジプロピルフェノキシシラン、ジプロピルベンジルオキシシラン、ジブチルメトキシシラン、ジブチルエトキシシラン、ジブチルプロポキシシラン、ジブチルブトキシシラン、ジブチルフェノキシシラン、ジブチルベンジルオキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、ジフェニルプロポキシシラン、ジフェニルブトキシシラン、ジフェニルフェノキシシラン、ジフェニルベンジルオキシシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジプロピルシラン、ジブチルシラン、ジフェニルシラン、ジフェニルメチルシラン、ジフェニルエチルシラン、ジフェニルプロピルシラン、ジフェニルブチルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリフェニルシラン、メチルシラン、エチルシラン、プロピルシラン、ブチルシラン、フェニルシラン、メチルジアセトキシシラン、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリエチルヒドロシロキサン、ポリプロピルヒドロシロキサン、ポリブチルヒドロシロキサン、ポリペンチルヒドロシロキサン、ポリヘキシルヒドロシロキサン、ポリヘプチルヒドロシロキサン、ポリオクチルヒドロシロキサン、ポリノニルヒドロシロキサン、ポリデシルヒドロシロキサン、ポリフェニルヒドロシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、メチルヒドロシクロシロキサン、エチルヒドロシクロシロキサン、プロピルヒドロシクロシロキサン、ブチルヒドロシクロシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラエチルジシラザン、1,1,3,3-テトラプロピルジシラザン、1,1,3,3-テトラブチルジシラザン、1,1,3,3-テトラフェニルジシラザン等のシリルヒドリド化合物などが挙げられる。
重合停止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合停止剤は、重合反応に使用できる溶媒で希釈して用いてもよい。重合停止剤の使用量に特に制限はないが、成長末端アニオンに対して重合停止剤が余剰量とならないようにすることが溶媒回収再使用の観点から好ましく、且つ、重合体を水素化する場合には水素化触媒の使用量を低減できる点でも好ましい。
【0054】
アニオン重合終了後のガスクロマトグラフィーによって求めた1,3,7-オクタトリエンの転化率は80.0%以上であることが好ましく、90.0%以上であることがより好ましく、95.0%以上であることがさらに好ましく、97.0%以上であることが特に好ましく、98.0%以上となることが最も好ましい。
【0055】
(水素化反応)
重合体の耐熱性、耐酸化性、耐候性、耐オゾン性等の観点から、重合体が有する炭素-炭素二重結合を水素化してもよい。通常、前記重合体の製造方法において重合停止することによって得られる重合体溶液または必要に応じて前記溶媒で希釈した重合体溶液に、水素化触媒を添加して水素と作用させることで重合体の水素化物を製造できる。
水素化触媒としては、例えば、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の担体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー型触媒;メタロセン系触媒等が挙げられる。
【0056】
水素化反応の温度は、溶媒の凝固点以上から重合体の熱分解温度以下である-20~250℃であることが好ましく、重合体の水素化物を工業的有利に生産する観点から、30~150℃であることがより好ましい。30℃以上であれば水素化反応が進行し、150℃以下であれば水素化触媒の熱分解が併発しても、少ない水素化触媒の使用量で水素化反応を実施できる。水素化触媒の使用量を低減する観点からは、60~100℃がさらに好ましい。
【0057】
水素はガス状で使用でき、その圧力は常圧以上であれば特に制限はないが、重合体の水素化物を工業的有利に生産する観点から、0.1~20MPaGであることが好ましい。20MPaG以下であれば、水素化触媒の水素分解が併発しても、少ない水素化触媒の使用量で水素化反応を実施できる。水素化触媒の使用量を低減する観点からは、0.5~10MPaGがより好ましい。
水素化反応に要する時間は条件によって適宜選択できるが、重合体の水素化物を工業的有利に生産する観点から、触媒との共存開始から10分~24時間の範囲であることが好ましい。
水素化反応を終了した後の反応混合液は、必要に応じて前記溶媒で希釈するかまたは濃縮してから、塩基性水溶液または酸性水溶液で洗浄し、水素化触媒を除去することができる。
【0058】
重合反応後に得られる重合体溶液または水素化反応後に得られる重合体溶液は、濃縮操作を施した後に押出機に供給して重合体を単離してもよいし、スチームと接触させて溶媒等を除去することによって重合体を単離してもよいし、加熱状態の不活性ガスと接触させて溶媒等を除去することによって重合体を単離してもよい。
【0059】
(高純度1,3,7-オクタトリエンの製造方法)
1,3,7-オクタトリエンの製造方法としては、ガスクロマトグラフィーによって求めた1,3,7-オクタトリエンの純度が98.0%を超える製造方法を選択するか、または純度98.0%以下の1,3,7-オクタトリエンであれば、精製することによって、98.0%を超える純度の1,3,7-オクタトリエンを取得する必要がある。
例えば、特公昭46-24003号公報に記載の、パラジウム触媒によってブタジエンを二量化する方法、および特開昭47-17703号公報に記載の、1-アセトキシ-2,7-オクタジエンの脱アセチル化反応等が利用できる。
なお、1,3,7-オクタトリエンの製造に際して、二重結合の位置の異なる1,3,6-オクタトリエンまたは2,4,6-オクタトリエン等が副生することが知られている。これらの副生成物の沸点が1,3,7-オクタトリエンの沸点と近いことに起因して、副生成物の1,3,7-オクタトリエンからの蒸留分離が困難であるため、副生成物の少ない1,3,7-オクタトリエンの製造方法を採用することが好ましい。
また、1,3,7-オクタトリエン中の過酸化物およびその分解物の合計含有量が0.30mmol/kgを超えた場合は、過酸化物およびその分解物の含有量を低減してから1,3,7-オクタトリエンを使用することが好ましい。過酸化物およびその分解物の含有量を低減する方法に特に制限はないが、例えば、アルミナ処理;酸化防止剤としての機能を有する、1,3,7-オクタトリエンよりも沸点の高い化合物(例えば、4-tert-ブチルカテコール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、トリフェニルホスフィン等)を1,3,7-オクタトリエンと混合してから蒸留処理する方法などが挙げられる。中でも、アルミナ処理を利用するのが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されるものではない。
なお、1,3,7-オクタトリエンの製造は、特に断りがなくとも、窒素およびアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施した。
薬液はいずれも、特に断りの無い限りは、溶存ガスを不活性ガス置換し、且つ酸化防止剤および水を除去したものを使用した。
1,3,7-オクタトリエンの製造原料である2,7-オクタジエン-1-オールは、株式会社クラレ製の純度99.54%の2,7-オクタジエン-1-オールを使用した。該純度は、下記測定方法に従って求めた。
【0061】
(2,7-オクタジエン-1-オールの純度の測定方法)
2,7-オクタジエン-1-オールの純度を下記測定条件のガスクロマトグラフィーによる分析によって求めた。具体的には、「保持時間5~20分に検出されるピーク面積の総和」に対する「保持時間約17.6分の観測できる1本の2,7-オクタジエン-1-オールに帰属できるピーク面積」の百分率を求め、これを2,7-オクタジエン-1-オールの純度とした。2,7-オクタジエン-1-オールの純度は99.54%であった。
<ガスクロマトグラフィー測定条件>
装置:株式会社島津製作所製「GC-2010Plus」
カラム:Restek Corporation製「Rxi-5ms」(内径0.25mm、長さ30m、膜厚1μm)
キャリアガス:ヘリウム(113.7kPaG)を流量1.37mL/分で流通させた。
サンプル注入量:薬液0.1μLをスプリット比100/1で注入した。
検出器:FID
検出器温度:280℃
気化室温度:280℃
昇温条件:70℃で12分保持した後、20℃/分で280℃まで昇温した後、5分保時した。
【0062】
[製造例1]1,3,7-オクタトリエンの製造
(2,7-オクタジエン-1-オールのアセチル化反応)
温度計、窒素導入口、容量2Lの滴下ロートおよび攪拌機を備えた容量10Lのフラスコを準備した。内部を窒素で置換し、2,7-オクタジエン-1-オール1500.8g(11.892mol)、トリエチルアミン1806.3g(17.851mol)、4-ジメチルアミノピリジン72.60g(0.594mol)を順次仕込んだ後に、140rpmで撹拌しながらドライアイスアセトン浴を用いて液温が-40℃になるまで冷却して混合液を得た。一方で、滴下ロートに無水酢酸1821.5g(17.842mol)を仕込み、前記混合液の液温が-50~-30℃を維持するように1時間かけて無水酢酸を滴下した。
滴下終了後、1時間反応を続け、蒸留水700.0gを加えて反応を停止した。有機相を回収して5%塩酸1Lで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1Lで2回、蒸留水1Lで1回、飽和塩化ナトリウム水溶液1Lで1回、順次洗浄した。こうして得られた有機相に無水硫酸ナトリウム170gを加えて脱水した後、無水硫酸ナトリウムを濾去して有機相を回収した。
回収した有機相について、前記2,7-オクタジエン-1-オールの純度分析と同じ条件でガスクロマトグラフィーによって分析し、1-アセトキシ-2,7-オクタジエンの純度を算出した。「保持時間5~20分に検出されるピーク面積の総和」に対する「保持時間約19.2分と約19.3分の観測できる2本のピーク面積の総和」の百分率、つまり1-アセトキシ-2,7-オクタジエンの純度は99.51%であった。当該純度の1-アセトキシ-2,7-オクタジエンを1851.1g(収率92.5%)取得した。
【0063】
(1-アセトキシ-2,7-オクタジエンの脱アセチル化反応)
リービッヒ冷却器を介して受器と接続したクライゼン管蒸留ヘッド、攪拌機および温度計を備えた3L減圧蒸留装置の内部を窒素で置換し、上記方法で得た1-アセトキシ-2,7-オクタジエン1205.7g(7.167mol)、酢酸パラジウム26.7g(0.119mol)、トリフェニルホスフィン124.8g(0.4758mol)を仕込んだ。200rpmで攪拌しながら減圧一定装置を用いて内圧を1.52~1.35kPaAに制御し、液温が90℃になるように加熱しながら8.0g/分で留出させた。留出初期の41.4gを除去した後、その後留出した799.7gを回収した。
回収留分を0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液500mLで3回、蒸留水500mLで1回、飽和塩化ナトリウム水溶液500mLで1回、順次洗浄した。有機相に無水硫酸ナトリウム50gを加えて乾燥した後、無水硫酸ナトリウムを濾去して有機相を回収した。
回収した有機相について、前記2,7-オクタジエン-1-オールの純度分析と同じ条件でガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,3,7-オクタトリエン46.9%と1-アセトキシ-2,7-オクタジエン23.7%と3-アセトキシ-1,7-オクタジエン29.4%からなる混合物であった。有機相637.0gをマクマホンパッキンで充填してなる内径25.4mmで高さ240mmの蒸留装置に仕込んだ。22.1~13.0kPaAの条件下、79.1~60.3℃において還流比が2となるように留分を回収した。
回収した有機相について、前記2,7-オクタジエン-1-オールの純度分析と同じ条件でガスクロマトグラフィーにより分析し、1,3,7-オクタトリエンの純度を算出した。「全オクタトリエンに帰属できる、保持時間5~20分に検出されるピーク面積の総和」に対する「1,3,7-オクタトリエンに帰属できる、保持時間8.7分と9.0分の付近に観測できる2本のピーク面積の和」の百分率を下記数式1に従って計算したところ、99.3%であった。ここで、全オクタトリエンとは、1,3,7-オクタトリエンと、1,3,6-オクタトリエン、2,4,6-オクタトリエンおよび1,4,6-オクタトリエン等の二重結合異性体との全てを意味する。
【0064】
【0065】
上記方法で得た1,3,7-オクタトリエン中の過酸化物およびその分解物の合計含有量を下記測定方法に従って測定した。
(過酸化物およびその分解物の合計含有量の測定方法)
ガス供給口および凝縮器を備えた100mLの三つ口フラスコを窒素置換した後に、上記方法で得た1,3,7-オクタトリエン5.00gを精秤し、イソプロピルアルコール20.0g、蒸留水5.0gおよび酢酸2.0gと、さらに蒸留水1.5gに溶解したヨウ化カリウム1.6gとを添加した後、95℃のオイルバスを用いて5分間加熱攪拌した。
三つ口フラスコをオイルバスから取り出した後、イソプロピルアルコール6.0gおよび蒸留水1.5gの混合溶媒で凝縮器内部を洗浄し、洗浄液を三つ口フラスコ内の溶液と混合した。室温まで放冷後、三つ口フラスコへ0.005mmol/mLのチオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下して、黄色から無色に退色する容量から下記数式2を用いて過酸化物およびその分解物の合計含有量を算出した。1,3,7-オクタトリエン中の過酸化物およびその分解物の合計含有量は、0.015mmol/kg未満であった。
【0066】
【0067】
以上より、純度99.3%、並びに過酸化物およびその分解物の合計含有量0.015mmol/kg未満の1,3,7-オクタトリエンを得た。結果を表1に示す。
【0068】
[製造例2]1,3,7-オクタトリエンの製造
製造例1で取得した1,3,7-オクタトリエンをガラスフラスコに移送し、空気雰囲気下、室温(20~25℃)で100時間、遮光せずに静置した。得られた1,3,7-オクタトリエンの純度並びに過酸化物およびその分解物の合計含有量について表1に示す。
【0069】
[製造例3]1,3,7-オクタトリエンの製造
製造例1で取得した1,3,7-オクタトリエンをガラスフラスコに移送し、空気雰囲気下、室温(20~25℃)で150時間、遮光せずに静置した。得られた1,3,7-オクタトリエンの純度並びに過酸化物およびその分解物の合計含有量について表1に示す。
【0070】
[製造例4]1,3,7-オクタトリエンの製造(比較例1用)
製造例1において、1,3,7-オクタトリエンの純度が表1に記載の通りとなるように反応系からの1,3,7-オクタトリエンの留出速度を5.0g/分としたこと以外は同様にして操作を行った。但し、蒸留精製してなる1,3,7-オクタトリエンに10質量%のアルミナを加えて窒素雰囲気下で20時間保存した。得られた1,3,7-オクタトリエンの純度並びに過酸化物およびその分解物の合計含有量について表1に示す。
【0071】
[製造例5]1,3,7-オクタトリエンの製造(比較例2用)
製造例1において、1,3,7-オクタトリエンの純度が表1に記載の通りとなるように反応系からの1,3,7-オクタトリエンの留出速度を4.0g/分としたこと以外は同様にして操作を行った。但し、蒸留精製してなる1,3,7-オクタトリエンに10質量%のアルミナを加えて窒素雰囲気下で20時間保存した。得られた1,3,7-オクタトリエンの純度並びに過酸化物およびその分解物の合計含有量について表1に示す。
【0072】
[製造例6]1,3,7-オクタトリエンの製造
製造例1で取得した1,3,7-オクタトリエンをガラスフラスコに移送し、空気雰囲気下、2,000時間冷蔵保存した。得られた1,3,7-オクタトリエンの純度並びに過酸化物およびその分解物の合計含有量について表1に示す。
【0073】
【0074】
以下、重合体の製造は、特に断りがなくとも、アルゴンガス雰囲気下で実施した。
また、実施例および比較例において使用する試薬は、以下のものを用いた。
シクロヘキサンは、和光純薬工業株式会社製のシクロヘキサン(安定剤不含)からモレキュラーシーブス3Aを用いて水分を除去し、さらにアルゴンガスでバブリングして溶存ガスを置換してから使用した。
sec-ブチルリチウムは、アジアリチウム株式会社製のsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液に、上記シクロヘキサンを用いて1.26mmol/gの濃度に調製したものを使用した。
テトラヒドロフラン(安定剤不含)、ジエチルエーテル(安定剤含有)、トリエチルアミン、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)は和光純薬工業株式会社製のものを、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)は東京化成工業株式会社製のものを、いずれも中性活性アルミナを用いて水分および安定剤を除去し、さらにアルゴンガスでバブリングして溶存ガスを置換してから使用した。
ポリスチレンは、和光純薬工業株式会社製の標準ポリスチレン(重量平均分子量(Mw)=1,300、分子量分布(Mw/Mn)=1.06)を使用した。
【0075】
また、以下の各例において、1,3,7-オクタトリエンの転化率、並びに重合体の収率、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)、並びに結合様式については、以下の測定方法に従って求めた。
【0076】
(1,3,7-オクタトリエンの転化率の測定方法)
重合反応終了後に得た重合停止液5.00gに対してエチレングリコールジメチルエーテル1.00gを加え、この混合液を以下の測定条件でガスクロマトグラフィーにより分析した。
なお、「重合反応の開始0時間における1,3,7-オクタトリエンとエチレングリコールジメチルエーテルの相対面積比」と「重合反応終了後の未反応1,3,7-オクタトリエンとエチレングリコールジメチルエーテルの相対面積比」から、下記数式3に基づいて1,3,7-オクタトリエンの転化率(%)を算出した。
<ガスクロマトグラフィー測定条件>
装置:株式会社島津製作所製「GC-14B」
カラム:Restek Corporation製「Rxi-5ms」(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
キャリアガス:ヘリウム(140.0kPaG)を流量1.50mL/分で流通させた。
サンプル注入量:薬液0.1μLをスプリット比50/1で注入した。
検出器:FID
検出器温度:280℃
気化室温度:280℃
昇温条件:40℃で10分保持した後、20℃/分で250℃まで昇温した後、5分保持した。
【数3】
【0077】
(重合体の収率の測定方法)
1,3,7-オクタトリエンの仕込み量を基準とし、下記数式4に基づいて、得られた重合体の収率を求めた。
【数4】
【0078】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)の測定方法)
得られた重合体0.10gにテトラヒドロフラン60.0gを加えて均一な溶液を調製し、この溶液を以下の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析し、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求め、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定条件>
装置:東ソー株式会社製「HLC-8320GPC EcoSEC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZ-M」(内径4.6mm、長さ150mm)を2本直列に接続して使用した。
溶離液:テトラヒドロフランを流量0.35mL/分で流通させた。
サンプル注入量:10μL
検出器:RI
検出器温度:40℃
【0079】
(結合様式)
得られた重合体150mgに重クロロホルム1.00gを加えて均一な溶液を調製し、この溶液を以下の測定条件で13C-NMR測定に供した。
<13C-NMR測定条件>
装置:日本電子株式会社製「JNM-LA500」
基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:25℃
積算回数:15,000回
【0080】
上記13C-NMR測定の結果、1,3,7-オクタトリエンの「1,2-結合の炭素原子1つに帰属できるピーク」をδ138.1~138.6ppmに、「1,4-結合の炭素原子1つおよび3,4-結合の炭素原子1つに帰属できるピーク」をδ138.8~139.4ppmに、「3,4-結合の炭素原子1つに帰属できるピーク」をδ140.9~141.6ppmに観測した。なお、δ138.8~139.4ppmのピーク面積からδ140.9~141.6ppmのピーク面積を差し引いた値を1,4-結合の炭素原子1つ相当のピーク面積とした。
重合体に含まれる1,3,7-オクタトリエンに由来する1,2-結合、1,4-結合および3,4-結合の割合は、それぞれ下記数式5~7から求めた。
【0081】
【0082】
[実施例1]重合体の製造
温度計、電気ヒーター、電磁誘導攪拌装置、薬液仕込み口、およびサンプリング口を備えた容量1LのSUS316(登録商標)製オートクレーブの内部をアルゴンで置換した後にシクロヘキサン232.0gを仕込んだ。続いて、製造例1で得た1,3,7-オクタトリエン154.5g(1.43mol)を仕込んだ。その後、アルゴンで内圧を0.1MPaGにした後、250rpmで攪拌しながら30分かけて50℃に昇温した。アルゴン気流下でテトラヒドロフラン(THF)1.118g(15.50mmol)を仕込み、続いてsec-ブチルリチウムを1.260mmol/g含有するシクロヘキサン溶液2.457g(sec-ブチルリチウムとして3.10mmol)を仕込んだ後に、アルゴンで内圧を0.3MPaGにした。この時点を重合反応の開始0時間として、液温が50℃となるように制御しながら2時間反応させた。
その後、エタノールを2.50mmol/g含有するシクロヘキサン溶液を1.50g(エタノールとして3.75mmol)を加えて重合反応を停止した。
次いで、得られた重合停止液全量を1Lのナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて100kPaA下で40℃に加熱しながら溶媒の殆どを留去した。さらに、減圧乾燥器に前記ナスフラスコを移し、0.1kPaA下で25℃に加熱しながら12時間乾燥させ、液状の重合体153.1gを取得した。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表2に示す。
【0083】
[実施例2~14]
実施例1において、各試薬およびその使用量並びに反応条件を表2に記載の通りに変更したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は表2に記載の通りであった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表2に示す。
【0084】
[実施例15]
実施例1において、製造例1で得た1,3,7-オクタトリエンの代わりに製造例2で得た1,3,7-オクタトリエンを使用し、さらに各試薬およびその使用量並びに反応条件を表3に記載の通りに変更したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は8時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0085】
[実施例16]
実施例1において、製造例1で得た1,3,7-オクタトリエンの代わりに製造例3で得た1,3,7-オクタトリエンを使用し、さらに各試薬およびその使用量並びに反応条件を表3に記載の通りに変更したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は4時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0086】
[実施例17]
実施例1において、重合温度を表3に記載の通りに変更したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は6時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0087】
[実施例18]
実施例17において、ルイス塩基の種類および使用量を表3に記載の通りに変更したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は8時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0088】
[実施例19および20]
実施例10において、各試薬の使用量を表3に記載の通りに変更することによってアニオン重合終了後の反応液の固形分濃度をそれぞれ20質量%、64質量%としたこと以外は同様にして重合反応を行い、重合体を得た。重合時間はそれぞれ9時間、2時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0089】
[実施例21(1)]
実施例1において、各試薬の使用量を表3に記載の通りに変更することによってアニオン重合終了後の反応液の固形分濃度が25質量%としたこと以外は同様にして3時間反応させ、分子末端にリビングアニオン活性種を有する重合体を得た。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0090】
[実施例21(2)]
実施例21(1)で得たリビングアニオン活性種を有する重合体を含むオートクレーブに製造例1で得た1,3,7-オクタトリエン38.7g(0.358mol)を加え、4時間反応させて重合体を得た。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0091】
[実施例22]
実施例15において、製造例1で得た1,3,7-オクタトリエンの代わりに製造例6で得た1,3,7-オクタトリエンを使用したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は3時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0092】
[比較例1]
実施例15において、製造例1で得た1,3,7-オクタトリエンの代わりに製造例4で得た1,3,7-オクタトリエンを使用したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は10時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0093】
[比較例2]
実施例15において、製造例1で得た1,3,7-オクタトリエンの代わりに製造例5で得た1,3,7-オクタトリエンを使用したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体を得た。重合時間は10時間であった。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0094】
[比較例3]カチオン重合
製造例1で得た1,3,7-オクタトリエンを用い、特許文献2の実施例1に記載の方法に準拠して、重合反応を行った。
温度計、攪拌機、薬液仕込み口および滴下漏斗を備えた容量200mLのガラス製三つ口フラスコの内部をアルゴンで置換した後にモノクロルベンゼン33.1gを仕込んだ。続いて、アルゴン気流下、エチルアルミニウムジクロリドを1.339mmol/g含有するヘキサン溶液1.053g(エチルアルミニウムジクロリドとして1.41mmol)を25℃で仕込み、溶液を攪拌して触媒溶液を得た。
滴下ロートに製造例1で得た1,3,7-オクタトリエン7.5g(0.069mol)、およびモノクロルベンゼン22.1gを入れ、この溶液を25℃でゆっくり前記触媒溶液に添加した。10分間かけて添加した後、25℃で6時間反応させて反応混合液を得た。反応混合液をメタノール500mLに滴下して重合体を析出させた。
得られた重合体を、0.1kPaA下で25℃に加熱しながら12時間乾燥させ、液状の重合体7.1gを取得した。各試薬の使用量、反応条件および反応成績を表3に示す。
【0095】
【0096】
【0097】
表2および表3中に記載のルイス塩基は、以下のとおりである。
THF:テトラヒドロフラン
Et2O:ジエチルエーテル
NEt3:トリエチルアミン
TMEDA:N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン
DEE:1,2-ジエトキシエタン
DTHFP:2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン
【0098】
表2および表3より、純度が98.0%超である1,3,7-オクタトリエンをアニオン重合させて得られた重合体(実施例参照)は、純度が98.0%以下である1,3,7-オクタトリエンをアニオン重合させて得られた重合体(比較例1~2参照)よりも、分子量分布(Mw/Mn)が狭く、2.05以下であり、特に本実施例では多くの場合に2.00以下、さらには1.80以下を達成できた。このように、純度の差は大きくないにも関わらず、実施例で得た重合体は分子量分布(Mw/Mn)を狭くすることができた。また、実施例22以外の実施例では、短時間で高転化率を達成できている。実施例22とその他の実施例との対比によると、過酸化物およびその分解物の合計含有量が0.30mmol/kg以下であると、短時間で高転化率を達成し易いことがわかる。
特に実施例2では、重量平均分子量(Mw)が大きい重合体を得ることができている。
また、ルイス塩基を使用した実施例1~14および16~22の結果と、ルイス塩基を使用しなかった実施例15の結果から、ルイス塩基を使用した場合に高転化率を達成できる傾向にあり、特に、短時間で高転化率を達成し易いことがわかる。
アニオン重合終了後の固形分濃度が20質量%または64質量%となるように調整して重合反応を行なっても、分子量分布(Mw/Mn)が2.05以下の1,3,7-オクタトリエンの重合体を得ることができた。
なお、特許文献2を参照してカチオン重合を行なった場合、たとえ純度が98.0%超であり、且つ過酸化物およびその分解物の合計含有量が0.30mmol/kg以下である1,3,7-オクタトリエンを使用したとしても、分子量分布は広くなった(比較例3参照)。
【0099】
[実施例23]水素化物の製造
実施例1と同様の操作によって1,3,7-オクタトリエンからなる重合体を含むシクロヘキサン溶液を取得した。
【0100】
(水素化触媒の調製)
窒素置換してなる1Lの三ツ口フラスコにビス(2-エチルヘキサン酸)ニッケル(II)の2-エチルヘキサン酸溶液(和光純薬工業株式会社製)25.1g(ニッケル原子を53.5mmol含有する)をシクロヘキサン284.4gに溶解した後、トリイソブチルアルミニウム(日本アルキルアルミニウム株式会社製)31.8g(160.3mmol)を10分かけて加え、30分攪拌することによって、水素化触媒を調製し、下記水素化反応に用いた。
【0101】
(水素化反応)
前記重合体を製造したオートクレーブを25℃に冷却したのちに重合体溶液290gを抜き取り、続いて、シクロヘキサンを290g導入した。オートクレーブ内部を水素ガスによって置換し、さらに水素ガスで0.2MPaGまで加圧し、次いで液温が75℃になるように加温した。その後、前記水素化触媒0.48g(重合体に対するニッケル金属として114.55質量ppm相当)を加え、続いて水素ガスを用いて内圧を0.98MPaGにして2時間反応させた。
その後、2時間ごとに前記水素化触媒0.48g(重合体に対するニッケル金属として114.55質量ppm相当)を3回加えた。水素化触媒の使用量は、ニッケル金属換算で、重合体に対して合計458.2質量ppmであり、水素化反応の時間は、最初の水素化触媒を導入してから8時間であった。
【0102】
まず、水素化前の重合体150mgに標準ポリスチレン10mgを加えたのちに重クロロホルム1.00gを加えて均一な溶液を調製し、この溶液を以下の測定条件で1H-NMR測定に供した。また、重合体の水素化物150mgに標準ポリスチレン10mgを加えたのちに重クロロホルム1.00gを加えて均一な溶液を調製し、この溶液も以下の測定条件で1H-NMR測定に供した。
下記条件における1H-NMR測定の結果、オクタトリエンを構成単位とする結合様式として、「1,2-結合の水素原子4つと1,4-結合の水素原子4つと3,4-結合の水素原子4つに帰属できるピーク」をδ4.8~5.5ppmに、「3,4-結合の水素原子1つに帰属できるピーク」をδ5.5~5.7ppmに、「1,2-結合の水素原子1つと1,4-結合の水素原子1つと3,4-結合の水素原子1つに帰属できるピーク」をδ5.7~5.9ppmに観測した。また、「ポリスチレンの芳香環の水素原子5つに帰属できるピーク」をδ6.2~7.5ppmに観測した。
水素化前の重合体における、スチレン総モル数に対する水素化されていない1,3,7-オクタトリエンの二重結合モル数と、水素化処理後の重合体におけるスチレン総モル数に対する水素化されていない1,3,7-オクタトリエンの二重結合モル数から、1,3,7-オクタトリエンに由来する二重結合で水素化されたものの割合としての水素化率を97.7%と算出した。
<1H-NMR測定条件>
装置:日本電子株式会社製「JNM-LA500」
基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:25℃
積算回数:254回
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の重合体は、接着剤および潤滑剤の原料として、並びに、各種ゴム用の滑剤および改質剤等の機能性材料として有用である。