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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】IABP用バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/095 20060101AFI20230920BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20230920BHJP
【FI】
A61M25/095
A61M25/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019032037
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020130883
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴樹
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-275337(JP,A)
【文献】特開2018-134299(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031071(WO,A1)
【文献】特表2018-519905(JP,A)
【文献】特表2003-509152(JP,A)
【文献】特開2002-052079(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145453(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/036120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/095
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端チップとバルーンとを遠位端側に有するとともに、前記先端チップに連通する第1ルーメンを形成する第1の管と、前記バルーン内部に連通する第2ルーメンを形成する第2の管とを備えたカテーテルチューブを有するIABP用バルーンカテーテルであって、
前記先端チップの表面の少なくとも一部に、超音波検査装置によって取得される超音波画像上で確認可能な粗面が設けられており、
前記粗面が不規則に並ぶ微細な凹凸により構成されており、
前記粗面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmの範囲内で設定されていることを特徴とするIABP用バルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IABP(大動脈内バルーンポンピング:Intra-Aortic Balloon Pumping)法で用いられるIABP用バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心機能低下時の治療方法として、バルーンカテーテルを用いたIABP法が知られている。IABP法では、バルーンカテーテルを大腿動脈や上腕動脈等から動脈内に挿入し、バルーンを胸部下行大動脈に留置させた状態で心臓の拍動に合わせて拡張および収縮させることで、心機能の補助が行われる。
【0003】
通常、IABP法におけるバルーンカテーテルの挿入は、例えば心臓カテーテル検査を安全に実施するための検査室である心臓カテーテル室等で行われる。心臓カテーテル室にはX線透視装置が設置されており、また、通常IABP法に用いられるバルーンカテーテルには遠位端近傍の位置にX線造影性を有するマーカー等が設けられている(例えば、特許文献1参照)ので、心臓カテーテル室においてバルーンカテーテルを挿入する際にはX線透視画像によってバルーンカテーテルの遠位端の位置を確認しながら、バルーンカテーテルの挿入が行われる。
【0004】
心臓カテーテル室等のようなX線透視が可能な環境下であれば、バルーンカテーテルの遠位端の位置を確認しながらバルーンカテーテルを挿入し、バルーンを胸部下行大動脈に留置させることができる。一方、例えば、手術中にIABP法を適用する必要が生じた場合や、IABP法を適用した患者の手術中にバルーンカテーテルの遠位端の位置を再確認したい場合等のように、X線透視装置が設置されていない手術室等のようなX線透視が不可能な環境下で、バルーンカテーテルの遠位端の位置を確認することが望まれる場合もある。X線透視が不可能な環境下では、バルーンカテーテルの遠位端の位置をX線透視によって確認することが困難であるため、超音波エコーによって確認する方法が採用されている。具体的には、経食道超音波検査装置等を使用し、超音波を用いて食道から心臓を観察することで超音波透視画像を得る方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-239034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、超音波透視画像はX線透視画像に比べて画像の鮮明度が劣るため、超音波透視画像からバルーンカテーテルの遠位端の位置を把握しづらいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成によりバルーンカテーテルの遠位端の超音波視認性を向上させるIABP用バルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るIABP用バルーンカテーテルは、先端チップとバルーンとを遠位端側に有するとともに、前記先端チップに連通する第1ルーメンを形成する第1の管と、前記バルーン内部に連通する第2ルーメンを形成する第2の管とを備えたカテーテルチューブを有するIABP用バルーンカテーテルであって、
前記遠位端側に配置された少なくとも一部の部材の表面に、超音波検査装置によって取得される超音波画像上で確認可能な粗面が設けられていることを特徴とする。
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルによると、遠位端側に配置された少なくとも一部の部材の表面に設けられた粗面は超音波ビームの反射波を拡散する特性を有しており、超音波視認性が向上された部位となる。すなわち、遠位端側に配置された少なくとも一部の部材の表面に設けられた粗面は、超音波透視画像上で確認可能な状態として可視化されるため、IABP用バルーンカテーテルの遠位端側の位置を超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、超音波を用いた観察により胸部下行大動脈にバルーンを適切に留置させることができるようになる。
【0009】
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルにおいて、前記先端チップの表面の少なくとも一部に前記粗面が設けられていてもよい。
【0010】
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルにおいて、前記遠位端側近傍の前記第1の管の表面の少なくとも一部に前記粗面が設けられていてもよい。
【0011】
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルにおいて、前記バルーンの遠位端側近傍の表面の少なくとも一部に前記粗面が設けられていてもよい。
【0012】
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルにおいて、前記粗面が表面に設けられているリング状部材が前記遠位端側に配置されていてもよい。
【0013】
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルにおいて、前記リング状部材が、前記先端チップに外嵌または内嵌されていてもよい。
【0014】
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルにおいて、前記リング状部材が、前記第1の管に外嵌または内嵌されていてもよい。
【0015】
本発明に係るIABP用バルーンカテーテルにおいて、前記粗面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmの範囲内で設定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルのバルーンが胸部下行大動脈に留置された状態を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの遠位端側近傍の構成を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の第2の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの遠位端側近傍の構成を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の第3の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。
図7図7は、本発明の第3の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの遠位端側近傍の構成を示す斜視図である。
図8図8は、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。
図9図9は、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの遠位端側近傍の構成を示す斜視図である。
図10図10は、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの遠位端側近傍の構成の第1派生例を示す斜視図である。
図11図11は、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの遠位端側近傍の構成の第2派生例を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの遠位端側近傍の構成の第3派生例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明する本発明の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10は、例えば図1に示すように、遠位端近傍に設けられたバルーン40が胸部下行大動脈に留置され、心臓の拍動に合わせてバルーン40を拡張および収縮させることで心臓の働きを補助するものである。図1は、大腿動脈から挿入されたIABP用バルーンカテーテル10のバルーン40が胸部下行大動脈に留置された状態を示すものであり、IABP用バルーンカテーテル10を構成する先端チップ20、カテーテルチューブ30、バルーン40が図示されている。
【0018】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。
【0019】
図2に示すように、IABP用バルーンカテーテル10aは、先端チップ20a、カテーテルチューブ30、バルーン40、分岐部50を有する。図2ではカテーテルチューブ30の一部を破断して図示省略しているが、実際にはカテーテルチューブ30は繋がっており、IABP用バルーンカテーテル10aは長尺な形状を有している。以下では、IABP用バルーンカテーテル10aの延在方向を軸方向とし、IABP用バルーンカテーテル10aの先端チップ20a側を遠位端側とし、IABP用バルーンカテーテル10aの分岐部50側を近位端側として説明を行う。
【0020】
先端チップ20aは、IABP用バルーンカテーテル10aの最遠位端に位置する部材である。先端チップ20aは筒状の形状を有しており、先端チップ20aの遠位端は、動脈内での良好な挿入性を実現し、また、動脈壁を傷つけないようにするために、丸みを帯びた先細のテーパ状に形成されている。先端チップ20aの内部には、貫通孔21が軸方向に形成されており、貫通孔21には内管31が挿入および固定されている。先端チップ20aの近位端側の外周面には、バルーン40の遠位端部42が接合されている。後で詳細に説明するように、先端チップ20aの外周面には粗面25aが設けられている。
【0021】
先端チップ20aの材質は特に限定されず、例えばポリウレタン、ポリアミド等の樹脂やエラストマー等の高分子材料、ステンレス鋼等の金属材料を用いることができる。X線透視画像における造影性を付与するために、先端チップ20aの素材に造影剤を含有させたり、先端チップ20aに金属を埋設したりする場合もある。
【0022】
先端チップ20aのサイズは特に限定されず、例えば、先端チップ20aの軸方向の寸法は5~25mmであり、外径は1.6~3.4mmであり、内径は0.1~1.5mmである。貫通孔21には内管31が挿入されることから、貫通孔21の近位端側の内径は、内管31の遠位端の外径と同等であることが好ましい。
【0023】
カテーテルチューブ30は、軸方向に延在するチューブ形状の内管(第1の管)31および外管(第2の管)32により構成されている。図1には、IABP用バルーンカテーテル10aの一例としてダブルルーメン構造のバルーンカテーテルが図示されている。
【0024】
外管32の内径は内管31の外径より大きく、内管31が外管32の内腔に挿入された構成となっている。内管31の軸方向の一部または全部において、内管31の外周面の一部は外管32の内周面の一部に固定されている。また、X線透視画像における造影性を付与するために、例えば内管31や外管32の遠位端側近傍に金属製のX線透視用部材を設ける場合もある。このX線透視用部材は造影マーカーと呼ばれることもある。
【0025】
外管32の遠位端はバルーン40の近位端部43近傍で終端してバルーン40内部の空間に開口しており、外管32の近位端は分岐部50の外管固定部51に接合されている。一方、外管32の内腔に挿入されている内管31の両端は外管32から突出しており、内管31の遠位端はバルーン40内部の空間を通って先端チップ20aの貫通孔21に挿入および固定されており、内管31の近位端は分岐部50の側枝部53を通って血圧測定口56に接続されている。
【0026】
内管31の内側には第1ルーメン31Lが形成され、外管32の内側であって内管31の外側には第2ルーメン32Lが形成され、第1ルーメン31Lと第2ルーメン32Lとは相互に隔離されている。
【0027】
第1ルーメン31Lは、内管31の遠位端側では先端チップ20aの貫通孔21に連通しており、内管31の近位端側では、後述するように分岐部50の血圧測定口56に連通している。第1ルーメン31Lは、血圧測定のために血液を取り込む血液流路、およびガイドワイヤが挿通可能な通路として用いられる。
【0028】
第2ルーメン32Lは、外管32の遠位端側でバルーン40内の空間と連通しており、後述するように分岐部50の流体給排口55に連通している。第2ルーメン32Lは、流体給排口55を通じて流体を給排可能な給排路として用いられ、この給排路を通じて流体を給排することによってバルーン40を拡張および収縮させることが可能である。
【0029】
ここでは、内管31の両端が外管32から突出した構成を一例として挙げているが、例えば内管31が外管32の遠位端と同一端面で終端しており、内管31に別の管状部材を接続することで内管31の両端が外管32から突出した構成となるようにしてもよい。
【0030】
カテーテルチューブ30の材質は特に限定されないが可撓性を有するものであることが望ましく、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂材料や、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼等の金属などの金属材料を用いることができる。内管31および外管32の材質は同一であってもよく、異なっていてもよい。一例として、カテーテルチューブ30の内管31はPEEK製チューブによって構成され、また、外管32はポリアミド製チューブによって構成され、外管32の外周面は抗血栓性に優れるポリウレタンによってコーティングされている。
【0031】
内管31のサイズは特に限定されず、例えば、内管31の軸方向の寸法は500~1100mmであり、内径は0.1~2.0mmであり、肉厚は0.05~0.4mmである。外管32のサイズは特に限定されず、外管32の内径は内管31の外径より大きく設定され、例えば、外管32の軸方向の寸法は300~800mmであり、内径は1.0~4.0mmであり、肉厚は0.05~0.4mmである。
【0032】
バルーン40は、内部に流体が給排されることによって拡張および収縮可能な筒状の薄膜であり、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端に配置されている。より具体的には、バルーン40は、流体が給排されることによって拡張および収縮可能な拡張収縮部41、拡張収縮部41の遠位端側に位置する遠位端部42、拡張収縮部41の近位端側に位置する近位端部43によって構成されている。バルーン40の拡張収縮部41は、例えば、遠位端部42および近位端部43に向かって外径が小さくなるテーパ形状を有している。
【0033】
バルーン40の遠位端部42は先端チップ20aの近位端側の外周面に接合されている。バルーン40の遠位端部42近傍では、バルーン40内部の空間は閉塞した状態となっている。一方、バルーン40の近位端部43は外管32の遠位端側の外周面に接合されている。バルーン40の近位端部43近傍では、外管32の遠位端の開口を介してバルーン40内部の空間が第2ルーメン32Lに連通しており、第2ルーメン32Lおよび流体給排口55を通じてバルーン40内部の空間に流体が給排され、流体の給排量に応じてバルーン40が拡張および収縮できるようになっている。なお、バルーン40の遠位端部42および近位端部43を先端チップ20aおよび外管32に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0034】
IABP用バルーンカテーテル10aは、その遠位端が大腿動脈や上腕動脈から動脈内に挿入され、バルーン40を胸部下行大動脈に留置した状態で使用される。バルーン40は、動脈への挿入時には内管31に巻き付けられた状態で挿入され、胸部下行大動脈に留置した後に流体によって拡張および収縮される。
【0035】
バルーン40の材質は特に限定されず、耐屈曲疲労特性に優れた材質であることが好ましく、例えば、ポリウレタン等の樹脂材料を用いることができる。バルーン40のサイズは特に限定されず、心機能の補助効果に大きく影響するバルーン40の内容積と、動脈血管の内径などに応じて決定される。例えば、バルーン40の内容積は20~50mlであり、膜厚は20~200μmであり、外径(拡張時)は10~25mmであり、軸方向の寸法は110~300mmである。
【0036】
分岐部50は、外管挿入口54、流体給排口55、血圧測定口56の3箇所に開口部を有する内腔を備えた成形体であり、外管固定部51、主幹部52、側枝部53によって構成されている。
【0037】
外管固定部51は、分岐部50の遠位端側の部位であり、その遠位端側に外管挿入口54を有している。外管32の近位端は外管挿入口54に挿入され、外管32は外管固定部51によって固定されている。外管32は、外管固定部51において分岐部50の内腔に開口している。
【0038】
主幹部52は外管固定部51の外管挿入口54から二股に分岐した一方の部位であり、その近位端側に流体給排口55を有している。流体給排口55は、外管32が開口している外管挿入口54と連通しており、すなわち、流体給排口55は第2ルーメン32Lと連通している。
【0039】
流体給排口55は、不図示のポンプ装置に接続され、第2ルーメン32Lを通じてバルーン40内部の空間へ流体を供給し、該空間から流体を排出できるようになっている。胸部下行大動脈にバルーン40を留置した状態で、流体の給排量や給排タイミングを制御しながら心臓の拍動に合わせてバルーン40の拡張および収縮を行うことで、心機能の補助を行うことが可能となる。バルーン40を拡張および収縮させるために用いられる流体は特に限定されないが、ポンプ装置の駆動に対する応答性や安全性等を考慮して、例えば、粘性および質量の小さい不活性ガスであるヘリウムガスが用いられる。
【0040】
側枝部53は、外管固定部51の開口部から二股に分岐した他方の部位であり、その近位端側に血圧測定口56を有している。血圧測定口56は内管31と接続されており、すなわち、血圧測定口56は第1ルーメン31Lと連通している。
【0041】
血圧測定口56は、不図示の血圧測定装置に接続され、先端チップ20aの貫通孔21および第1ルーメン31Lを通じて動脈内の血圧の変動を測定できるようになっている。この血圧測定装置で測定した血圧の変動に基づいてポンプ装置を制御することで、心臓の拍動に合わせてバルーン40の拡張および収縮を行うことが可能となる。
【0042】
血圧測定口56は、IABP用バルーンカテーテル10aを挿入する際に用いられるガイドワイヤ挿入口としての機能も有している。バルーン40を胸部下行大動脈に留置する際には、血圧測定口56から第1ルーメン31Lを通じて先端チップ20aの貫通孔21に向けてガイドワイヤを挿通させたIABP用バルーンカテーテル10aの遠位端を大腿動脈や上腕動脈から挿入し、ガイドワイヤを先行させながらIABP用バルーンカテーテル10aの遠位端をガイドワイヤに沿って押し進めることで、バルーン40を胸部下行大動脈に案内および留置させることが可能である。ガイドワイヤは、その外径が内管31の内径より小さく、内管31に挿通可能であるものが採用される。
【0043】
分岐部50の材質は特に限定されず、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の熱可塑性の樹脂材料を用いることができ、成形型を用いて分岐部50を成形してもよい。分岐部50のサイズ(軸方向の寸法)は特に限定されず、例えば10~150mmである。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側近傍の構成を模式的に示す斜視図である。図3は、図2のIABP用バルーンカテーテル10aを遠位端側斜め上方から見たときの斜視図である。図3では、先端チップ20aおよび内管31の途中まで図示されており、先端チップ20aは実線で描かれ、内管31は先端チップ20aに挿入されている部分も含めて点線で描かれている。また、図3ではバルーン40は図示省略されている。
【0045】
図2および図3に示すように、先端チップ20aの外周面には、微細な凹凸が形成されることにより粗面25aが設けられている。先端チップ20aに設けられた粗面25aを構成する微細な凹凸は、例えば成形型などを用いて先端チップ20aを製造した後に、先端チップ20aに対して加工処理を施すことによって形成することができ、例えば、バレル研磨法を用いて形成することができる。バレル研磨法とは、バレル容器に、加工対象物および研磨材を入れ、さらに必要に応じて、コンパウンドや水等を加えて、バレル容器に回転運動や振動を与えることにより、加工対象物の表面に微細な凹凸を形成する加工法である。
【0046】
粗面25aを構成する微細な凹凸の形成方法としては、上記のバレル研磨法に限られず、ブラスト加工法を採用してもよい。ブラスト加工法とは、砂のように小さい粒(例えば、鉄系、ガラス系、アルミナ系等からなる粒状の研磨材)を圧搾空気等の圧力によって加工対象物に打ち付けて、その表面に微細な凹凸を形成する加工法である。粗面25aを構成する微細な凹凸は、エッチング等の化学的表面処理法により形成されてもよく、サンドペーパーや金属ブラシ等を用いてその表面を不規則に削り取ること等により形成されてもよい。また、先端チップ20aを高分子材料によって構成する場合においては、先端チップ20aの粗面25aを構成する微細な凹凸は、先端チップ20aを製造するための成形型の内表面に、前述したような加工法によって微細な凹凸を設け、その成形型を用いて先端チップ20aを成形することによって、成形型の内表面に設けられた微細な凹凸を先端チップ20aに転写させて形成したものであってもよい。
【0047】
先端チップ20aに設けられた粗面25aの表面粗さは、超音波画像上における視認性を向上できる粗さであることが好ましく、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmの範囲内で設定することができる。
【0048】
粗面25aは、先端チップ20aの外周面または内周面を含む表面の一部もしくは全部に設けられてよい。図2および図3には、一例として、外周面全体に粗面25aが設けられている先端チップ20aが図示されているが、粗面25aは先端チップ20aの外周面の一部のみに設けられてもよく、先端チップ20aの内周面、すなわち貫通孔21の内周面の一部または全部に設けられてもよい。さらに、粗面25aは、任意の形状および任意の大きさに設定されてよい。
【0049】
次に、本発明の第1の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10aを用いた場合の作用効果について説明する。
【0050】
IABP法では、IABP用バルーンカテーテル10aを大腿動脈や上腕動脈から動脈内に挿入し、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側に設けられているバルーン40を胸部下行大動脈に留置させる。
【0051】
X線透視装置が設置されたX線透視が可能な環境では、X線透視における造影性が付与された先端チップ20aや、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側近傍に設けられた造影マーカーがX線透視画像上で確認できるため、バルーン40の位置を確認しながら胸部下行大動脈にバルーン40を留置させることができる。
【0052】
一方、手術室等のようにX線透視装置が設置されておらずX線透視が不可能な環境下においては、具体的には、手術室において手術をしている最中に、IABP用バルーンカテーテル10aのバルーン40を胸部下行大動脈に留置させる場合や手術前から予め胸部下行大動脈に留置されたバルーン40の位置を確認する場合には、超音波透視によりバルーン40の位置を確認することができる。このとき、例えば経食道超音波検査装置を用いて、食道から超音波を用いて心臓を観察して超音波透視画像を得る方法が採用される。
【0053】
超音波透視画像は、超音波ビームを対象物に当てることによって検出された反響波を画像化したものである。ただし、生体内における組織とIABP用バルーンカテーテル10aとの音響特性の関係から、超音波透視画像では、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側の状態が十分に確認できない場合がある。
【0054】
これに対して、本発明の第1の実施の形態では、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側に配置された部材である先端チップ20aの表面の一部または全部に粗面25aが設けられている。この粗面25aは超音波視認性を有しており、超音波の音響特性上、超音波透視画像上で確認可能な状態として可視化されるものである。その結果、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側近傍の位置、すなわち先端チップ20aの位置を超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、胸部下行大動脈にバルーン40を適切に留置させることが可能となる。
【0055】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10aでは、先端チップ20aの表面の一部または全部に粗面25aが設けられており、先端チップ20aの超音波視認性を向上させることができる。これにより、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側近傍に配置されている先端チップ20aの位置を超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、X線透視が不可能な環境下であっても、胸部下行大動脈にバルーン40を適切に留置させることができるようになる。
【0056】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態について説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。以下、本発明の第2の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10bについて、本発明の第1の実施の形態と異なる部材についてのみ説明し、共通する部材については説明を省略する。
【0057】
上述した本発明の第1の実施の形態では、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側に配置された部材のうちの先端チップ20aに粗面25aが設けられている。一方、図4に示すように、本発明の第2の実施の形態では先端チップ20に粗面は設けられておらず、IABP用バルーンカテーテル10bの遠位端側に配置された部材のうちの内管31bの遠位端側近傍に粗面35bが設けられている。
【0058】
図5は、本発明の第2の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10bの遠位端側近傍の構成を模式的に示す斜視図である。図5は、図4のIABP用バルーンカテーテル10bを遠位端側斜め上方から見たときの斜視図である。図5では、先端チップ20および内管31bの途中まで図示されており、先端チップ20は点線で描かれ、内管31bは実線で描かれている。また、図5ではバルーン40は図示省略されている。
【0059】
図4および図5に示すように、カテーテルチューブ30bの内管31bの遠位端側近傍の外周面には、微細な凹凸が形成されることにより粗面35bが設けられている。一例として、図4および図5に示す内管31bでは、内管31bの最遠位端から、当該最遠位端から所定の寸法L1だけ離れた位置に至るまでの軸方向の範囲において、内管31bの外周面全体に粗面35bが設けられている。
【0060】
内管31bに設けられた粗面35bを構成する微細な凹凸は、本発明の第1の実施の形態で先端チップ20aに粗面25aを設けた場合と同様に、バレル研磨法、ブラスト加工法、化学的表面処理法等により形成されてもよく、サンドペーパーや金属ブラシ等を用いてその表面を不規則に削り取ること等により形成されてもよい。
【0061】
内管31bに設けられた粗面35bの表面粗さは、超音波画像上における視認性を向上できる粗さであることが好ましく、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmの範囲内で設定することができる。
【0062】
粗面35bは、内管31bの遠位端側近傍の外周面または内周面を含む表面に設けられてよい。図4および図5には、一例として、最遠位端から所定の寸法L1の範囲の外周面全体に粗面35bが設けられている内管31bが図示されているが、粗面35bは内管31bの内周面、すなわち内管31bの内腔表面の一部に設けられてもよい。
【0063】
粗面35bは、任意の形状および任意の大きさに設定されてよく、例えば、図4および図5における所定の寸法L1は任意の寸法に設定されてよい。好適な一例としては、先端チップ20の貫通孔21に挿入される内管31bの軸方向の寸法が約5mmであるとすると、所定の寸法L1は約15mmに設定されればよい。この場合、粗面35bは、先端チップ20の近位端から軸方向に約10mm程度の範囲で露出されるようになる。
【0064】
所定の寸法L1はバルーン40の長さに応じて設定されてもよく、例えば、バルーン40の長さが約210mmであるとすると、所定の寸法L1も同程度の約210mmに設定されてもよい。この場合、粗面35bは、バルーン40内部の空間に含まれる部分の内管31b全体にわたって設けられる。
【0065】
所定の寸法L1は、先端チップ20の貫通孔21に挿入される内管31bの軸方向の寸法よりも小さく設定されてもよい。例えば、粗面35bは、先端チップ20の貫通孔21に挿入される部分の内管31bの外周面または内周面にのみ設けられるようにしてもよい。
【0066】
ここでは、内管31bの最遠位端から所定の寸法L1の範囲に粗面35bが設けた場合について説明しているが、内管31bの最遠位端から離れた位置に粗面35bを設ける範囲が設定されてもよい。
【0067】
本発明の第2の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10bを用いた場合も、上述した本発明の第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、X線透視を行うことが不可能な環境であっても、IABP用バルーンカテーテル10bの遠位端側近傍の位置、すなわち、内管31bの遠位端側近傍の位置を超音波透視装置を用いて取得した超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、胸部下行大動脈にバルーン40を適切に留置させることが可能となる。
【0068】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10bでは、IABP用バルーンカテーテル10bの遠位端側近傍の内管31bの表面の一部または全部に粗面35bが設けられており、当該遠位端近傍の内管31bの超音波視認性を向上させることができる。これにより、IABP用バルーンカテーテル10bの遠位端側近傍に配置されている内管31bの位置を超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、X線透視が不可能な環境下であっても、胸部下行大動脈にバルーン40を適切に留置させることができるようになる。
【0069】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態について説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。以下、本発明の第3の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10cについて、本発明の第1の実施の形態と異なる部材についてのみ説明し、共通する部材については説明を省略する。
【0070】
上述した本発明の第1の実施の形態では、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側に配置された部材のうちの先端チップ20aに粗面25aが設けられているが、一方、本発明の第3の実施の形態では先端チップ20に粗面は設けられておらず、IABP用バルーンカテーテル10cの遠位端側に配置された部材のうちのバルーン40cの遠位端側近傍に粗面45cが設けられている。
【0071】
図7は、本発明の第3の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10cの遠位端側近傍を模式的に示す斜視図である。図7は、図6のIABP用バルーンカテーテル10cを遠位端側斜め上方から見たときの斜視図である。図7では、先端チップ20、内管31およびバルーン40cの途中まで図示されており、先端チップ20および内管31は点線で描かれ、バルーン40cの拡張収縮部41cおよび遠位端部42cは実線で描かれている。
【0072】
図6および図7に示すように、バルーン40cの外表面には、微細な凹凸が形成されることにより粗面45cが設けられている。一例として、図6および図7では、バルーン40cの遠位端部42cおよび拡張収縮部41cの外表面の一部に粗面45cが設けられている。
【0073】
バルーン40cに設けられた粗面45cを構成する微細な凹凸は、本発明の第1の実施の形態で先端チップ20aに粗面25aを設けた場合と同様に、バレル研磨法、ブラスト加工法、化学的表面処理法等により形成されてもよく、サンドペーパーや金属ブラシ等を用いてその表面を不規則に削り取ること等により形成されてもよい。ただし、バルーン40cは薄膜であり、バルーン40cが破れたり穴が開いたりしないように粗面45cを設けることが好ましい。
【0074】
バルーン40cに設けられた粗面45cの表面粗さは、超音波画像上における視認性を向上できる粗さであることが好ましく、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmの範囲内で設定することができる。上述したようにバルーン40cの膜厚は30~150μmであり、0.5~5.0μmの範囲内の算術平均粗さ(Ra)の粗面45cを設けることが可能であるが、例えば、バルーン40cの粗面45cを設ける部位の膜厚をより厚くして、粗面45cを設けた場合であってもバルーン40cの強度が確保できるようにしてもよい。
【0075】
粗面45cは任意の形状および任意の大きさに設定されてよい。図6および図7では、バルーン40cの遠位端部42cおよび拡張収縮部41cの遠位端側の一部に粗面45cが設けられているが、遠位端部42cおよび拡張収縮部41cの一部のいずれか一方に設けられてもよい。例えば、拡張収縮部41cに粗面45cを設けることなく拡張収縮部41cの強度を維持したまま、遠位端部42cにのみ粗面45cを設けるようにしてもよい。さらに、粗面45cは、バルーン40cが拡張した際に外側を向くバルーン40cの外表面に設けられてもよく、バルーン40cが拡張した際に内側を向くバルーン40cの内表面に設けられてもよい。
【0076】
本発明の第3の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10cを用いた場合も、上述した本発明の第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、X線透視を行うことが不可能な環境であっても、IABP用バルーンカテーテル10cの遠位端側近傍の位置、すなわちIABP用バルーンカテーテル10cのバルーン40cの遠位端側近傍の位置を超音波透視装置を用いて取得した超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、胸部下行大動脈にバルーン40cを適切に留置させることが可能となる。
【0077】
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10cでは、IABP用バルーンカテーテル10cのバルーン40cに粗面45cが設けられており、当該遠位端近傍のバルーン40cの超音波視認性を向上させることができる。これにより、IABP用バルーンカテーテル10cの遠位端側近傍に配置されているバルーン40cの位置を超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、X線透視が不可能な環境下であっても、胸部下行大動脈にバルーン40cを適切に留置させることができるようになる。
【0078】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態について説明する。図8は、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。以下、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10dについて、本発明の第1の実施の形態と異なる部材についてのみ説明し、共通する部材については説明を省略する。
【0079】
上述した本発明の第1の実施の形態では、IABP用バルーンカテーテル10aの遠位端側近傍に配置された部材のうちの先端チップ20aに粗面25aが設けられているが、一方、本発明の第4の実施の形態では先端チップ20に粗面は設けられておらず、IABP用バルーンカテーテル10dの遠位端側に粗面65dが設けられたリング状部材60dが内管31に外嵌および固定されている。
【0080】
図9は、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10dの遠位端側近傍を模式的に示す平面図である。図9は、図8のIABP用バルーンカテーテル10dを遠位端側斜め上方から見たときの斜視図である。図9では、先端チップ20および内管31の途中まで図示されており、先端チップ20および内管31は実線で描かれ、リング状部材60dが実線で描かれている。また、図9ではバルーン40は図示省略されている。
【0081】
図8および図9に示すように、リング状部材60dが内管31に外嵌および固定されており、リング状部材60dの外周面には、微細な凹凸が形成されることにより粗面65dが設けられている。
【0082】
リング状部材60dに設けられた粗面65dを構成する微細な凹凸は、本発明の第1の実施の形態で先端チップ20aに粗面25aを設けた場合と同様に、バレル研磨法、ブラスト加工法、化学的表面処理法等により形成されてもよく、サンドペーパーや金属ブラシ等を用いてその表面を不規則に削り取ること等により形成されてもよい。
【0083】
リング状部材60dに設けられた粗面65dの表面粗さは、超音波画像上における視認性を向上できる粗さであることが好ましく、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmの範囲内で設定することができる。
【0084】
リング状部材60dは任意の形状および任意の大きさに設定されてよく、粗面65dは任意の形状および任意の大きさに設定されてよい。図8および図9では、リング状部材60dの外周面全体に粗面65dが設けられているが、リング状部材60dの外周面の一部に設けられてもよい。さらに、粗面65dは、リング状部材60dの内周面の一部または全部に設けられてもよい。
【0085】
さらに、リング状部材60dを設ける位置も任意に設定可能である。図8および図9では、粗面65dが設けられたリング状部材60dが内管31に外嵌および固定されているが、粗面65dが設けられたリング状部材60dは、図10の第1派生例に示すように先端チップ20に外嵌および固定されてもよい。このとき、先端チップ20に外嵌されるリング状部材60dは、先端チップ20に接合されているバルーン40の遠位端部42よりも遠位端側に配置されてもよく、バルーン40の遠位端部42を覆うように配置されてもよい。
【0086】
粗面65dが設けられたリング状部材60dは、図11の第2派生例に示すように先端チップ20の貫通孔21に内嵌および固定されてもよく、図12の第3派生例に示すように内管31の内腔に内嵌および固定されてもよい。先端チップ20の貫通孔21や内管31の内腔にリング状部材60dが内嵌された場合にはガイドワイヤがリング状部材60dに挿通されることから、リング状部材60dの内径はガイドワイヤの外径よりも大きく設定される。
【0087】
本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10dを用いた場合も、上述した本発明の第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、X線透視を行うことが不可能な環境であっても、IABP用バルーンカテーテル10dの遠位端側近傍の位置、すなわち、IABP用バルーンカテーテル10dの遠位端側近傍に配置されたリング状部材60dの位置を超音波透視装置を用いて取得した超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、胸部下行大動脈にバルーン40を適切に留置させることが可能となる。
【0088】
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態におけるIABP用バルーンカテーテル10dでは、IABP用バルーンカテーテル10dの遠位端側近傍に配置されたリング状部材60dに粗面65dが設けられており、当該遠位端近傍に配置されたリング状部材60dの超音波視認性を向上させることができる。これにより、IABP用バルーンカテーテル10dの遠位端側近傍に配置されているリング状部材60dの位置を超音波透視画像上で正確に確認できるようになり、X線透視が不可能な環境下であっても、胸部下行大動脈にバルーン40を適切に留置させることができるようになる。
【0089】
以上説明した実施の形態は、本発明に係るIABP用バルーンカテーテルの一例に過ぎず、各種変形を行ってもよい。例えば、上述の説明では第1~第4の実施の形態を個別に説明したが、各実施の形態のうちの2つ以上を任意に組み合わせることが可能である。
【0090】
また、以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0091】
10、10a、10b、10c、10d IABP用バルーンカテーテル
20、20a 先端チップ
21 貫通孔
25a、35b、45c、65d 粗面
30、30b カテーテルチューブ
31、31b 内管(第1の管)
31L 第1ルーメン
32 外管(第2の管)
32L 第2ルーメン
40、40c バルーン
41、41c 拡張収縮部
42、42c 遠位端部
43 近位端部
50 分岐部
51 外管固定部
52 主幹部
53 側枝部
54 外管挿入口
55 流体給排口
56 血圧測定口
60d リング状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12