(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ラテックス組成物、成形体およびフォームラバー
(51)【国際特許分類】
C08J 9/30 20060101AFI20230920BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20230920BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C08J9/30 CES
C08K5/098
C08L23/22
(21)【出願番号】P 2020539340
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 JP2019032023
(87)【国際公開番号】W WO2020045103
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018162556
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 友哉
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 隆志
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-219609(JP,A)
【文献】特開2006-206677(JP,A)
【文献】特開2006-137859(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145009(WO,A1)
【文献】特開平06-032942(JP,A)
【文献】特表2017-533196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08J 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスと、硫黄系架橋剤とを含む
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項2】
前記アニオン性乳化剤が、炭素数6~30の脂肪酸塩である請求項1に記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項3】
前記ブチルゴムの含有割合が50重量%以上である請求項1または2に記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項4】
前記ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8、125℃)が20~70である請求項1~3のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項5】
前記硫黄系架橋剤の含有量が、前記ブチルゴム100重量部に対して、0.1~15重量部である請求項1~4のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項6】
架橋促進剤をさらに含有する請求項
1~5
のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項7】
気泡安定剤をさらに含有する請求項
1~6のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項8】
架橋助剤をさらに含有する請求項1~7のいずれか記載のフォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物を用いて得られるフォームラバー。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物の製造方法であって、
ブチルゴムが溶媒に溶解してなるブチルゴム溶液を、アニオン性乳化剤の存在下、水と混合することで、乳化液を得る工程と、
前記乳化液から前記溶媒を除去することで、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスを得る工程と、
前記ラテックスに、
前記硫黄系架橋剤を添加する工程と、を備える
フォームラバー用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項11】
前記溶媒が、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、および、超臨界状態にある二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも一つである請求項10に記載の
フォームラバー用ラテックス組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化性に優れ、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、これを用いてなる成形体、およびフォームラバーに関する。
【背景技術】
【0002】
重合体ゴムラテックスを用いて製造されたフォームラバー(ゴム発泡体)は、マットレス、化粧用スポンジ(パフ)、ロール、衝撃吸収剤等として種々の用途に使用されている。フォームラバーの用途のなかで、特にパフには、化粧料に対する良好な耐油性を有し、かつ、化粧料の取り込みが容易で、化粧料の肌へののり(付着性)が良好なスポンジが求められている。
【0003】
このようなゴム発泡体を得るための重合体ラテックスとして、耐油性が良好であるという観点より、従来から、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)ラテックスが用いられている(たとえば、特許文献1参照)。一方で、化粧料中には種々の成分が含まれているところ、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴムラテックスを用いて得られるゴム発泡体は、化粧料として用いられる成分の種類によっては、耐油性が十分でない場合があり、より具体的には、パラメトキシケイ皮酸オクチル等の紫外線吸収剤等に対して耐油性が十分でなく、そのため、このような成分に対し耐油性を示す重合体ラテックスが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ゲル化性に優れ、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、これを用いてなる成形体、およびフォームラバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスと、硫黄系架橋剤とを含むラテックス組成物によれば、ゲル化性および耐油性に優れたフォームラバーを与えることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスと、硫黄系架橋剤とを含むラテックス組成物が提供される。
本発明のラテックス組成物において、前記アニオン性乳化剤が、炭素数6~30の脂肪酸塩であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、前記ブチルゴムの含有割合が50重量%以上であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8、125℃)が20~70であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記硫黄系架橋剤の含有量が、前記ブチルゴム100重量部に対して、0.1~15重量部であることが好ましい。
【0008】
本発明のフォームラバー用ラテックス組成物は、架橋促進剤をさらに含有することが好ましい。
本発明のフォームラバー用ラテックス組成物は、気泡安定剤をさらに含有することが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物を用いて得られる成形体が提供される。
あるいは、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーが提供される。
さらに、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物の製造方法であって、ブチルゴムが溶媒に溶解してなるブチルゴム溶液を、アニオン性乳化剤の存在下、水と混合することで、乳化液を得る工程と、前記乳化液から前記溶媒を除去することで、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスを得る工程と、前記ラテックスに、記硫黄系架橋剤を添加する工程と、を備えるラテックス組成物の製造方法が提供される。
本発明のラテックス組成物の製造方法において、前記溶媒が、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、および、超臨界状態にある二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲル化性に優れ、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、これを用いてなる成形体、およびフォームラバーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ラテックス組成物>
本発明のラテックス組成物は、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスと、硫黄系架橋剤とを含有する。
まず、本発明のラテックス組成物を構成するラテックスについて、説明する。
【0012】
本発明で用いられるブチルゴムは、イソブチレン(イソブテン)由来の繰り返し単位を有する重合体からなるゴムであり、より具体的には、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体からなるゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)である。また、ブチルゴムとしては、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体の一部をハロゲン化してなるハロゲン化ブチルゴムであってもよい。
【0013】
ブチルゴム中における、イソブチレン単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは95モル%以上、100モル%未満であり、より好ましくは97~99.9モル%である。また、ブチルゴム中における、イソプレン単位の含有割合(不飽和度)は、特に限定されないが、好ましくは0モル%超、5モル%以下、より好ましくは0.1~3モル%である。イソブチレン単位およびイソプレン単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られる成形体の耐油性をより適切に高めることができる。
【0014】
ブチルゴムとしては、ムーニー粘度(ML1+8、125℃)が20~70の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは20~65、さらに好ましくは25~60である。ブチルゴムとして、ムーニー粘度が上記範囲にあるものを使用することにより、ラテックス組成物のゲル化性をより適切に高めることができる。
【0015】
ブチルゴムの製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、触媒として塩化アルミニウムを使用し、塩化メチレン中で、-100~-90℃にて、イソブチレンおよびイソプレンをスラリー重合する方法などが挙げられる。また、ブチルゴムが、ハロゲン化ブチルゴムである場合には、ハロゲン化剤として臭素(Br2)または塩素(Cl2)を使用して、ヘキサン中で、4~60℃にて、スラリー重合により得られたブチルゴムをハロゲン化する方法等により製造することができる。
【0016】
本発明で用いるラテックスは、たとえば、ブチルゴムが溶媒に溶解してなるブチルゴム溶液を、アニオン性乳化剤の存在下、水と混合することで、乳化液を得る工程と、得られた乳化液から溶媒を除去する工程とを経て製造することができる。
【0017】
ブチルゴム溶液としては、スラリー重合により得られた重合溶液をそのまま用いてもよいし、あるいは、スラリー重合により得られた重合溶液から固形のブチルゴムを取り出した後、再度、溶媒に溶解させることにより得られたものを用いてもよい。この際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、超臨界状態にある二酸化炭素が好適に挙げられ、これらの中でも、本発明で用いる、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスをより適切に得ることができるという観点より、シクロヘキサンが好ましい。
【0018】
ブチルゴム溶液を、アニオン性乳化剤の存在下、水と混合することにより乳化させ、乳化液を得る方法としては、特に限定されないが、ブチルゴム溶液と、アニオン性乳化剤を含有する水溶液とを混合する方法や、ブチルゴム溶液にアニオン性乳化剤を含有させ、これを水と混合する方法や、ブチルゴム溶液にアニオン性乳化剤を含有させたものと、アニオン性乳化剤を含有する水溶液とを混合する方法などが挙げられる。これらを混合し、乳化する際には、乳化装置を用いることができ、乳化装置としては、乳化機または分散機として一般に市販されているものを制限なく用いることができる。
【0019】
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等が挙げられる。なお、乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
【0020】
アニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;等が挙げられる。これらの中でも、得られるラテックスの保存安定性をより高めることができるという点より、炭素数6~30の脂肪酸塩(すなわち、環構造を有さない鎖状炭化水素のカルボン酸塩)が好ましく、炭素数10~24の脂肪酸塩が好ましく、炭素数13~21の脂肪酸塩がより好ましく、オレイン酸カリウムが特に好ましい。なお、アニオン性乳化剤は、本発明のラテックス組成物中において、ブチルゴムを乳化分散させる作用に加えて、フォームラバーなどの成形体を製造する際に、起泡剤としても作用する。本発明においては、乳化剤として、アニオン性乳化剤を使用することにより、ラテックス組成物をゲル化性に優れたものとすることができる。また、乳化剤として、アニオン性乳化剤を使用することにより、ラテックス組成物を、優れたゲル化性に加え、高い発泡力をも有するものとすることができ、これにより、フォームラバー用途として好適なものとすることができる。
【0021】
また、本発明においては、乳化剤として、アニオン性乳化剤を用いるものであればよいが、アニオン性乳化剤以外の乳化剤、たとえば、カチオン性乳化剤やノニオン性乳化剤を併用してもよい。この場合においては、得られるラテックス組成物の発泡力およびゲル化性の観点より、用いる乳化剤中における、アニオン性乳化剤の含有割合を5重量%以上とすることが好ましく、7重量%以上とすることがより好ましく、10重量%以上とすることが特に好ましく、乳化剤として、実質的にアニオン性乳化剤のみからなるものを用いることが好ましい。
【0022】
次いで、得られた乳化液について、溶媒を除去する操作を行うことにより、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスを得ることができる。乳化液から溶媒を除去する方法としては、得られるラテックス中における、溶媒の含有量を500重量ppm以下とすることができるような方法であれば、特に限定されないが、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
【0023】
減圧蒸留は、乳化液を、好ましくは500~900hPaの減圧下にて、加温することにより行うことができる。減圧蒸留における温度は、用いる溶媒の種類に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは50~90℃である。
【0024】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機などの遠心分離装置を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000Gの範囲内、より好ましくは2,000~8,000Gの範囲内として行うことができる。また、連続遠心分離機を用いる場合には、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましい。遠心分離操作により、遠心分離後の軽液として、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスを得ることができる。
【0025】
また、溶媒を除去することにより得られたラテックスについて、必要に応じて、濃縮処理を行い、固形分濃度を調整してもよい。濃縮処理は、たとえば、減圧により、水を一部蒸発させる方法や、遠心分離による方法などが挙げられる。
【0026】
本発明で用いるラテックス中における、ブチルゴムの含有割合(固形分濃度)は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは55~70重量%、さらに好ましくは60~70重量%である。ブチルゴムの含有割合を上記範囲とすることにより、発泡力およびゲル化性をより適切に向上させることができる。なお、ブチルゴムの含有割合は、たとえば、溶媒を除去する操作および濃縮処理により調整することができる。
【0027】
本発明で用いるラテックス中における、アニオン性乳化剤の含有量は、ブチルゴム100重量部に対して、好ましくは2~10重量部である。アニオン性乳化剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるラテックス組成物を発泡力およびゲル化性により優れたものとすることができる。
【0028】
また、本発明で用いるラテックス中に含有される、ブチルゴムからなるゴム粒子の体積累積粒径d50(体積基準の粒子径分布において累積体積が50%となる粒子径)は、好ましくは100~5,000nm、より好ましくは150~4,000nm、さらに好ましくは250~3,000nm、特に好ましくは500~2,000nmである。ブチルゴムからなるゴム粒子の体積累積粒径d50を、上記範囲とすることにより、ラテックスの保存安定性をより適切に高めることができる。なお、ブチルゴムからなるゴム粒子の体積累積粒径d50は、たとえば、使用するアニオン性乳化剤の種類や使用量、乳化時における乳化条件等により制御することができる。
【0029】
また、本発明のラテックス組成物は、上述したブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスに加えて、硫黄系架橋剤を含有する。
【0030】
硫黄系架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。硫黄系架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
硫黄系架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ラテックス中のブチルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.2~8重量部である。硫黄系架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーなどの成形体の強度をより高めることができる。
【0032】
また、本発明のラテックス組成物は、架橋促進剤を含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、フォームラバーなどの、ラテックス組成物を用いて得られる成形体の製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4′-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系架橋促進剤;TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド等のチラウム系化合物;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;などが挙げられる。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
架橋促進剤の含有量は、ラテックス中のブチルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部であり、より好ましくは0.2~10重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーなどの成形体の強度をより高めることができる。
【0034】
また、本発明のラテックス組成物は、架橋助剤を含有することが好ましい。
架橋助剤としては、フォームラバーなどの、ラテックス組成物を用いて得られる成形体の製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、酸化亜鉛、ステアリン酸およびその亜鉛塩等が挙げられる。
【0035】
架橋促進剤の含有量は、ラテックス中のブチルゴム100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、乳化安定性を良好なものとしながら、得られるフォームラバーなどの成形体の強度をより高めることができる。
【0036】
さらに、本発明のラテックス組成物は、気泡安定剤をさらに含有することが好ましい。気泡安定剤を含有させることにより、本発明のラテックス組成物を、フォームラバー用途に用いた場合に、得られるフォームラバーに含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、これにより、柔軟性および強度の向上が可能となる。
【0037】
気泡安定剤としては、たとえば、塩化エチルなどの塩化アルキルを、ホルムアルデヒドおよびアンモニアと反応させて得られる、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物としては、アルキルの炭素数が4以下であるものが好ましく、その具体例としては、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。また、アルキル第四級アンモニウムクロリド、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキル第四級アンモニウムクロリド;アルキルアリールスルホン酸塩、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキルアリールスルホン酸塩;および高級脂肪酸アンモニウム、好ましくはアルキルの炭素数が4以下の高級脂肪酸アンモニウム;ヘキサフルオロケイ酸塩;なども、気泡安定剤として使用できる。これらのなかでも、その添加効果が高いという観点より、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が好ましく、アルキルの炭素数が4以下の塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物がより好ましく、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が特に好ましい。エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物としては、商品名「トリメンベース」(Crompton Corp社製)などの市販品を用いることができる。
【0038】
気泡安定剤の含有量は、ラテックス中のブチルゴム100重量部に対して、好ましくは0.4~10重量部、より好ましくは0.4~6重量部である。気泡安定剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーなどの成形体に含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、柔軟性および強度をより向上させることができる。
【0039】
また、本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤、着色剤等、あるいは、上記の各種配合剤をラテックス中に安定して分散させるための分散剤(たとえば、NASF(ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)等)、増粘剤(たとえば、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール等)を、必要に応じて配合することができる。
【0040】
本発明のラテックス組成物を調製する方法としては、特に限定されないが、たとえば、上述したようにして、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスを得た後、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、得られたラテックスに、硫黄系架橋剤および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、硫黄系架橋剤などの、ラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を、ラテックスに混合する方法などが挙げられる。
【0041】
<成形体>
本発明の成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を用いて得られる。
本発明の成形体としては、特に限定されないが、ラテックス組成物を基材上に塗布する方法などにより膜状に成形することにより得られる膜状成形体や、ラテックス組成物をディップ成形することにより得られるディップ成形体、あるいは、ラテックス組成物を凝固させ、得られた凝固後のゴムを所望の形状に成形してなる各種成形体などが挙げられるが、本発明においては、フォームラバーであることが好ましい。以下、本発明の成形体が、フォームラバーである場合を例示して説明を行うが、本発明の成形体は、フォームラバーに特に限定されるものではない。
【0042】
本発明のフォームラバーは、上述したラテックス組成物を用いて得られる。具体的には、本発明のフォームラバーは、上述したラテックス組成物を、所望の発泡倍率で発泡および凝固させることにより得ることができる。
【0043】
発泡には通常空気が用いられるが、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド等のガス発生物質を使用することもできる。空気を用いる場合には、ラテックス組成物を攪拌し、空気を巻き込むことで泡立てることができる。この際、たとえば、オークス発泡機、超音波発泡機等を用いることができる。
【0044】
ラテックス組成物を発泡させた後、発泡状態を固定化するために、発泡させたラテックス組成物を、凝固させる。凝固方法は、ラテックスをゲル化し、固化させることができる方法であればよく、従来公知の方法を用いることができるが、たとえば、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム(珪フッ化ナトリウム)、ヘキサフルオロ珪酸カリウム(珪フッ化カリウム)、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物などの常温凝固剤を、発泡させたラテックス組成物に添加するダンロップ法(常温凝固法);オルガノポリシロキサン、ポリビニルメチルエーテル、硫酸亜鉛アンモニウム錯塩などの感熱凝固剤を、発泡させたラテックス組成物に添加する感熱凝固法;冷凍凝固法等が使用される。常温凝固剤、感熱凝固剤などの凝固剤の使用量は、特に限定されないが、ラテックス組成物を構成するラテックス中のブチルゴム100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8である。
【0045】
そして、発泡させたラテックス組成物について、凝固剤を添加した後、所望の形状の型に移し、凝固を行うことで、フォームラバーを得ることができる。また、凝固を行った後に、ラテックス組成物を架橋させるために、加熱してもよい。架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【0046】
得られたフォームラバーについては、型から取り出した後、洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、洗濯機等を用い、20~70℃程度の水で、5~15分程度攪拌して洗浄する方法が挙げられる。洗浄後、水切りをし、フォームラバーの風合いを損なわないように30~90℃程度の温度で乾燥することが好ましい。このようにして得られたフォームラバーは、たとえば、所定の厚さにスライスし、所定形状に切断した後、側面を回転砥石等で研磨することによって、パフ(化粧用スポンジ)等として用いることができる。
【0047】
本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーは、マットレス、パフ(化粧用スポンジ)、ロール、衝撃吸収剤等の各種用途に好適に用いることができる。特に、本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーは、化粧料として用いられる複数の成分に対する耐油性、特に、化粧料の成分として用いられる、パラフィン、および外線吸収剤(たとえば、パラメトキシケイ皮酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)等)に対する耐油性に優れることから、液体化粧料などを含浸させるパフ(化粧用スポンジ)として好適に用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性および特性については、以下の方法に従って評価した。
【0049】
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3-X1)×100/X2
【0050】
<流動パラフィンに対する膨潤率>
フォームラバー用ラテックスを基材上に塗布し、23℃で5日間乾燥することで、厚さ0.4mmのラテックスのフィルムを得た。そして、得られたフィルムを、直径33mm、厚さ0.4mmの円柱状に打ち抜き、これを流動パラフィンに、23℃で24時間浸漬させ、浸漬前のフィルムに対する、浸漬後のフィルムの直径の比率(膨潤率(%)=(浸漬後のフィルムの直径)/(浸漬前のフィルムの直径)×100)を算出した。なお、膨潤率が低いほど、フォームラバー用ラテックスを含有するラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーなどの成形体は、流動パラフィンに対する耐油性に優れると判断できる。
【0051】
<紫外線吸収剤に対する膨潤率>
フォームラバー用ラテックスを基材上に塗布し、23℃で5日間乾燥することで、厚さ0.4mmのフォームラバー用ラテックスのフィルムを得た。そして、得られたフィルムを、直径33mm、厚さ0.4mmの円柱状に打ち抜き、これを紫外線吸収剤(製品名「エスカロール557」、ISPジャパン社製、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)に、23℃で24時間浸漬させ、浸漬前のフィルムに対する、浸漬後のフィルムの直径の比率(膨潤率(%)=(浸漬後のフィルムの直径)/(浸漬前のフィルムの直径)×100)を算出した。なお、膨潤率が低いほど、フォームラバー用ラテックスを含有するラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーなどの成形体は、紫外線吸収剤に対する耐油性に優れると判断できる。
【0052】
<発泡力>
フォームラバー用ラテックス組成物を、スタンドミキサー(エレクトロラックス社製、ESM945)を用いて攪拌することで発泡させた。攪拌開始から5分以内に発泡倍率が5倍以上(すなわち、攪拌後の体積が、攪拌前の体積に対し、5倍以上)となった場合に「可」と評価し、5分間攪拌を行っても発泡倍率が5倍まで到達しなかった場合に「不可」として評価した。発泡力が高いほど、柔軟性に優れたフォームラバーなどの成形体を、高い生産性にて得ることができると判断できる。
【0053】
<ゲル化性>
フォームラバー用ラテックス組成物のゴム分100部に対して珪フッ化ナトリウム水分散体(固形分濃度20重量%)を6部(水分散体として、30部)添加し、1分間撹拌した。その後10分間静置し、固化しているか否かを調べた。10分後に固化していた(組成物が完全に流動性を失っていた)場合には「可」と評価し、10分経過後も固化していない場合や、固化が不十分であった場合には「不可」と評価した。ゲル化性に優れているほど、短時間での成形が可能であり、これにより短時間で所望の成形体を得ることができると判断でき、さらには、フォームラバーを得るという観点からは、ゲル化性に優れているほど、高い発泡倍率でのゲル化が可能であることから、柔軟性に優れたフォームラバーを、高い生産性にて得ることができると判断できる。
【0054】
<実施例1>
(フォームラバー用ラテックス(A-1)の調製)
ブチルゴム(製品名「JSR BUTYL365」、JSR社製、ムーニー粘度(ML1+8、125℃):33、不飽和度2.3モル%)100部を、シクロヘキサン550部と混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温させることで、ブチルゴムを溶解させて、ブチルゴムの溶液を得た。
これとは別に、オレイン酸カリウムと水とを混合することで、1.0重量%のオレイン酸カリウム水溶液を得た。
【0055】
そして、上記にて得られたブチルゴムの溶液と、上記にて調製したオレイン酸カリウム水溶液とを、重量比で1:1となるように、マルチラインミキサー(製品名「マルチラインミキサーMS26-MMR-5.5L」、佐竹化学機械工業社製)を用いて混合し、これに続いて、乳化装置(製品名「マイルダーMDN310」、太平洋機工社製)を用い、15,000rpmにて混合および乳化させることで、乳化液を得た。
【0056】
次いで、得られた乳化液を700~800hPaの減圧下で75℃に加温することで、シクロヘキサンを留去し、次いで、800hPaの減圧条件下で、80℃にて濃縮処理を行うことで、固形分濃度60重量%のフォームラバー用ラテックス(A-1)を得た。得られたフォームラバー用ラテックス(A-1)を用いて、上記した方法にしたがって、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0057】
なお、実施例1で得られたフォームラバー用ラテックス(A-1)について、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD-7100」)を用いて、体積基準の粒子径分布を測定したところ、体積累積粒径d50は1,650nmであった。また、実施例1で得られたフォームラバー用ラテックス(A-1)を、20℃の条件下、10日間保管しところ、浮上分離等が発生せず、保存安定性に優れたものであった。
【0058】
(フォームラバー用ラテックス組成物(B-1)の調製)
上記にて得られたフォームラバー用ラテックス(A-1)中のブチルゴム100部に対して、架橋系水分散液(コロイド硫黄/ジチオカルバミン酸系架橋促進剤(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(製品名「ノクセラーEZ」、大内新興化学工業社製))/チアゾール系架橋促進剤(2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(製品名「ノクセラーMZ」、大内新興化学工業社製)=2/1/1(重量比)、固形分濃度50重量%)4部、酸化亜鉛水分散液(固形分濃度50重量%)3部、気泡安定剤(製品名「トリメンベース」、CromptonCorp社製、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物)1部を添加し、十分に分散させることで、フォームラバー用ラテックス組成物(B-1)を得た。そして、得られたフォームラバー用ラテックス組成物(B-1)を用いて、上記した方法にしたがって、発泡力およびゲル化性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
<実施例2>
(フォームラバー用ラテックス(A-2)の調製)
実施例1と同様にして、ブチルゴムの溶液および1.0重量%のオレイン酸カリウム水溶液を得て、同様にして、これらを混合および乳化させることで、乳化液を得た。次いで、得られた乳化液を700~800hPaの減圧下で75℃に加温することで、シクロヘキサンを留去し、次いで、遠心分離機を用いて、4,000~6,000Gで遠心分離することで濃縮操作を行うことで、軽液として固形分濃度65重量%のフォームラバー用ラテックス(A-2)を得た。得られたフォームラバー用ラテックス(A-2)を用いて、上記した方法にしたがって、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0060】
なお、実施例2で得られたフォームラバー用ラテックス(A-2)について、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD-7100」)を用いて、体積基準の粒子径分布を測定したところ、体積累積粒径d50は1,580nmであった。また、実施例2で得られたフォームラバー用ラテックス(A-2)を、20℃の条件下、10日間保管しところ、浮上分離等が発生せず、保存安定性に優れたものであった。
【0061】
(フォームラバー用ラテックス組成物(B-2)の調製)
上記にて得られたフォームラバー用ラテックス(A-2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックス組成物(B-2)を調製し、同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0062】
<比較例1>
(フォームラバー用ラテックス(A-3)の調製)
合成ポリイソプレン(製品名「NIPOL IR2200L」、日本ゼオン社製)100部を、シクロヘキサン1200部と混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温させることで、合成ポリイソプレンを溶解させて、合成ポリイソプレンの溶液を得た。
これとは別に、ロジン酸ナトリウム10部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部とを水と混合し、重量比で、ロジン酸ナトリウム/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム=2/1の混合物を含有してなる、温度60℃で濃度1.5重量%の界面活性剤水溶液を調製した。
【0063】
そして、上記にて得られた合成ポリイソプレンの溶液と、上記にて調製した界面活性剤水溶液とを、重量比で1:1.5となるように、マルチラインミキサー(製品名「マルチラインミキサーMS26-MMR-5.5L」、佐竹化学機械工業社製)を用いて混合し、これに続いて、乳化装置(製品名「マイルダーMDN310」、太平洋機工社製)を用い、15,000rpmにて混合および乳化させることで、乳化液を得た。
【0064】
次いで、得られた乳化液を700~800hPaの減圧下で75℃に加温することで、シクロヘキサンを留去し、次いで、遠心分離機を用いて、4,000~6,000Gで遠心分離することで濃縮操作を行うことで、軽液として固形分濃度62重量%のフォームラバー用ラテックス(A-3)を得た。得られたフォームラバー用ラテックス(A-3)を用いて、上記した方法にしたがって、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(フォームラバー用ラテックス組成物(B-3)の調製)
上記にて得られたフォームラバー用ラテックス(A-3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックス組成物(B-3)を調製し、同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例2>
(フォームラバー用ラテックス(A-4)の調製)
アニオン性乳化剤としてのオレイン酸カリウムに代えて、同量のノニオン性乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(製品名「エマルゲン120」、花王社製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、固形分濃度63重量%のフォームラバー用ラテックス(A-4)を得た。得られたフォームラバー用ラテックス(A-4)を用いて、上記した方法にしたがって、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(フォームラバー用ラテックス組成物(B-4)の調製)
上記にて得られたフォームラバー用ラテックス(A-4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックス組成物(B-4)を調製し、同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
<比較例3>
(フォームラバー用ラテックス(A-5))
スチレン-ブタジエン共重合体のラテックス(製品名「Nipol LX4850A」、日本ゼオン社製)を、固形分濃度66重量%に調整し、これをフォームラバー用ラテックス(A-5)とした。そして、フォームラバー用ラテックス(A-5)を用いて、上記した方法にしたがって、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(フォームラバー用ラテックス組成物(B-5)の調製)
フォームラバー用ラテックス(A-5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックス組成物(B-5)を調製し、同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0070】
<比較例4>
(フォームラバー用ラテックス(A-6))
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックス(製品名「Nipol LX531B」、日本ゼオン社製、固形分濃度66重量%)を、そのまま用い、これをフォームラバー用ラテックス(A-6)とした。そして、フォームラバー用ラテックス(A-6)を用いて、上記した方法にしたがって、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(フォームラバー用ラテックス組成物(B-6)の調製)
フォームラバー用ラテックス(A-6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックス組成物(B-6)を調製し、同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0072】
【0073】
表1に示すように、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むフォームラバー用ラテックスによれば、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率のいずれも低く、耐油性に優れるものであり、また、発泡力が高く、ゲル化性に優れるものであった(実施例1,2)。
一方、ブチルゴム以外のゴムを用いた場合には、紫外線吸収剤に対する膨潤率が高く、耐油性に劣るものであった(比較例1、3,4)。
また、ブチルゴムを含有するフォームラバー用ラテックスであっても、アニオン性乳化剤ではなく、ノニオン性乳化剤を使用した場合には、発泡力およびゲル化性に劣るものであった(比較例2)。