(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】透明表示装置、透明表示装置付きガラス板、透明表示装置付き合わせガラス、および、移動体
(51)【国際特許分類】
G09F 9/33 20060101AFI20230920BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20230920BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20230920BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230920BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230920BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20230920BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20230920BHJP
【FI】
G09F9/33
B60J1/02 M
B60R11/02 C
G09F9/00 304B
G09F9/30 348A
G09F9/30 349Z
H01L33/00 L
H01L33/64
(21)【出願番号】P 2020541135
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033035
(87)【国際公開番号】W WO2020050062
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018165127
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019054427
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】森 裕行
(72)【発明者】
【氏名】垰 幸宏
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0254518(US,A1)
【文献】特開2011-091129(JP,A)
【文献】国際公開第2009/066561(WO,A1)
【文献】特開2015-162318(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041106(WO,A1)
【文献】特開2006-259307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317132(US,A1)
【文献】国際公開第2017/101783(WO,A1)
【文献】特開2006-323144(JP,A)
【文献】特開2017-033938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0294565(US,A1)
【文献】特開2009-301013(JP,A)
【文献】特開2017-045855(JP,A)
【文献】特表2017-513069(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0080155(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0159078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
13/00-13/46
H01L33/00
33/48-33/64
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明基材と、
前記第1の透明基材上において画素ごとに配置され、表示領域を構成する複数の発光部と、
前記複数の発光部の各々に接続された配線部と、を備えた透明表示装置であって、
前記複数の発光部の各々は、1mm
2以下の面積を有する発光ダイオードを含み、
前記表示領域の放熱を促進する放熱促進部をさらに備え、
前記放熱促進部は、
前記配線部とは構造的に別体で構成された伝熱
線と、
前記伝熱
線に接続され前記伝熱
線の熱を奪う抜熱部と、を含み、
前記伝熱線は、前記表示領域を囲むように枠状に形成されており、
前記
放熱促進部全体は、平面視において、前記表示領域の外側に設けられており、前記表示領域の内側には設けられていない、
透明表示装置。
【請求項2】
前記
伝熱線は、前記配線部における電流が多く流れる領域の放熱能力が、前記電流が少なく流れる領域の放熱能力よりも高い、
請求項1に記載の透明表示装置。
【請求項3】
前記伝熱
線は、金属からな
り、
前記伝熱線と前記配線部との交差部分では、前記伝熱線と前記配線部との間には、絶縁部が設けられている、
請求項1又は2に記載の透明表示装置。
【請求項4】
前記伝熱
線は、前記第1の透明基材における前記配線部側の第1の主面および当該第1の主面とは反対側の第2の主面のうち少なくとも一方の主面に設けられている、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の透明表示装置。
【請求項5】
前記複数の発光部、前記配線部および前記伝熱
線が、前記第1の透明基材と第2の透明基材との間に挟まれている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の透明表示装置。
【請求項6】
前記第1の透明基材は、移動体の本体部に組みつけられるガラス板に配置され、
前記本体部は、前記抜熱部として機能する、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の透明表示装置を備える、
透明表示装置付きガラス板。
【請求項7】
前記第1の透明基材は、移動体の本体部に組みつけられるガラス板に配置され、
前記ガラス板の一部には、隠蔽層が設けられ、
前記抜熱部は、前記隠蔽層で隠されるように前記本体部の室内側に配置されている、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の透明表示装置を備える、
透明表示装置付きガラス板。
【請求項8】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の透明表示装置と、
前記第1の透明基材を配置するガラス板と、当該ガラス板とで前記透明表示装置を挟持する他のガラス板とを備える、
透明表示装置付き合わせガラス。
【請求項9】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の透明表示装置を備えた、
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明表示装置、透明表示装置付きガラス板、透明表示装置付き合わせガラス、および、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードを表示画素として利用した表示装置が知られている。さらに、このような表示装置のうち、装置を通して背面側の像を視認できるものが知られている。
例えば、特許文献1には、背景に重ね合わされた情報をディスプレイするための透明デバイスであって、透明な下層の上に堆積された導電性経路によってアドレス可能な複数のLED光源を備えているものが記載されている。
特許文献2には、特許文献1のような透明表示装置におけるLEDの温度上昇を抑制するために、電気的相互接続の横方向の寸法や平均厚さ、あるいは、熱容量や熱伝導率を所定の値にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-301650号公報
【文献】米国特許第9765934号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2には、LED以外の部材の温度上昇に関する記載や示唆がなく、当該LED以外の部材が発熱した場合、表示領域の温度が高くなる可能性がある。
【0005】
上記の点に鑑みて、本発明の一形態においては、透明表示装置において、表示領域の温度上昇を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一形態は、第1の透明基材と、前記第1の透明基材上に配置された発光部と、前記発光部の各々に接続された配線部とを備えた透明表示装置であって、前記発光部の各々は、1mm2以下の面積を有する発光ダイオードを含み、表示領域には、当該表示領域の放熱を促進する放熱促進部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態によれば、透明表示装置において、表示領域の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の関連技術に係る透明表示装置の基本構成を示す平面視での模式図。
【
図2】前記関連技術における透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図3】前記関連技術における透明表示装置の一部を示す平面視での模式図。
【
図4】前記関連技術における他の例の透明表示装置の一部を示す平面視での模式図。
【
図5】前記関連技術における透明表示装置の発熱状態を示す模式図。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図7】前記第1実施形態に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図8A】前記第1実施形態に係る透明表示装置の一部を示す平面視での模式図。
【
図8B】前記第1実施形態に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図9】前記第1実施形態の変形例に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図10】前記第1実施形態の他の変形例に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図11】前記第1実施形態のさらに他の変形例に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図12A】前記第1実施形態のさらに他の変形例に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図12B】前記第1実施形態のさらに他の変形例に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図12C】前記第1実施形態のさらに他の変形例に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図14】前記第2実施形態に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図15】前記第2実施形態の変形例に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図16】前記第2実施形態の他の変形例に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図17】前記第2実施形態のさらに他の変形例に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図18A】前記第2実施形態のさらに他の変形例に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図18B】前記第2実施形態のさらに他の変形例に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図20】前記第3実施形態に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図21】前記第3実施形態の変形例に係る透明表示装置を示す平面視での模式図。
【
図22】本発明の第4実施形態に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図23】本発明の第5実施形態に係る透明表示装置の一部を示す断面図。
【
図24】本発明の第6実施形態に係る合わせガラスの一部を示す断面図。
【
図25】本発明の第7実施形態に係る合わせガラスの一部を示す断面図。
【
図26】本発明の第8実施形態に係る自動車の一部を示す断面図。
【
図27】前記第8実施形態および変形例におけるフロントガラスを車内側から見たときの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一のまたは対応する構成には、同一のまたは対応する符号を付して説明を省略する場合がある。また、本発明は、下記の実施形態に限定されることはない。
【0010】
本発明の一形態は、第1の透明基材と、前記第1の透明基材上に配置された発光部と、前記発光部の各々に接続された配線部とを備えた透明表示装置であって、前記発光部の各々は、1mm2以下の面積を有する発光ダイオードを含み、表示領域には、当該表示領域の放熱を促進する放熱促進部が設けられている。
【0011】
本明細書において「透明表示装置」とは、表示装置の背面側(観察者とは反対側)に位置する人物や背景等の視覚情報を、所望の使用環境下で視認可能な表示装置を指す。なお、視認可能とは、少なくとも表示装置が非表示状態、すなわち通電されていない状態で判定されるものである。
【0012】
また、本明細書において、「透明」である(あるいは透光性を有する)とは、可視光線の透過率が40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であることを指す。また、透過率5%以上であり且つヘイズ(曇値)が10以下のものを指していてもよい。透過率が5%以上あれば、室内から日中の屋外を見た際に、室内と同じ程度、若しくはそれ以上の明るさで屋外を見られるため、十分な視認性を確保できる。また、透過率が40%以上あれば、観察者側と透明表示装置の向こう側(背面側)の明るさが同程度であったとしても、透明表示装置の向こう側を実質的に問題なく視認できる。また、ヘイズが10以下であれば、背景のコントラストを10に確保できるため、実質的に透明表示装置の向こう側を問題なく視認できる。「透明」とは、色が付与されているか否かは問わず、つまり無色透明でもよく、有色透明でもよい。なお、透過率は、ISO9050に準拠する方法により測定された値(%)を指す。ヘイズ(曇り度)は、ISO14782に準拠する方法により測定された値を指す。
【0013】
また、本明細書において、「表示領域」とは、透明表示装置において画像(文字を含む)が表示される領域であって発光部によって輝度が変化し得る最大範囲と、発光部駆動用の配線部が配置された範囲とを含む領域を指す。発光部駆動用のドライバが透明部材で構成され、第1の透明基材上に配置されている場合、本明細書の「表示領域」は、発光部によって輝度が変化し得る最大範囲と、電力線、信号線の配線部およびドライバが配置された領域とを含む範囲を指す。
【0014】
また、本明細書において、「ガラス板」は、無機ガラスと有機ガラスとの両方を含む。例えば、無機ガラスとしては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス等が挙げられ、有機ガラスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の透明樹脂が挙げられる。
【0015】
<関連技術>
まず、本発明の関連技術に係る透明表示装置の概略構成を説明する。
図1に示すように、透明表示装置1は、第1の透明基材10と、発光部20と、ICチップ30と、配線部40と、ドライバ50と、電気回路基板で構成された制御部60とを備えている。本関連技術および後述する各実施形態において、透明表示装置1の表示領域Aは、平面視で見た場合、発光部20およびICチップ30の全体と、配線部40の一部領域とを含む。ドライバ50が透明材料で構成されており、第1の透明基材10上の画像が表示される領域に隣接している場合、ドライバ50も表示領域Aに含まれる場合がある。
【0016】
発光部20は、表示領域A内において、行方向および列方向(それぞれ図面のX方向およびY方向)に、すなわちマトリクス状(格子状)に配置されている。しかし、発光部20の配置形式はマトリクス状に限られず、千鳥格子状(オフセット状)等、同色の発光部が特定の方向に略一定の間隔で配置される別の配置形式でもよい。
【0017】
ICチップ30は、発光部20に接続され、当該発光部20を駆動する。なお、ICチップ30はなくてもよい。
【0018】
配線部40は、それぞれ線状体である、電源線41と、グランド線42と、行データ線43と、列データ線44とを備えている。
電源線41は、制御部60から
図1における上方向(列方向)に延びる第1の電源主線411と、第1の電源主線411の先端から右方向(行方向)に延びる第2の電源主線412と、第2の電源主線412の複数箇所から下方向(列方向)にそれぞれ延びる複数の第1の電源分岐線413と、第1の電源主線411および第1の電源分岐線413のそれぞれの複数箇所から右方向(行方向)に延びて発光部20およびICチップ30にそれぞれ接続された第2の電源分岐線414とを備えている。
グランド線42は、制御部60から
図1における上方向(列方向)に延びる第1のグランド主線421と、第1のグランド主線421の先端から右方向(行方向)に延びる第2のグランド主線422と、第2のグランド主線422の複数箇所から上方向(列方向)にそれぞれ延びる複数の第1のグランド分岐線423と、第1のグランド分岐線423の複数箇所から左方向(行方向)に延びて発光部20およびICチップ30にそれぞれ接続された第2のグランド分岐線424とを備えている。第2のグランド主線422は、第1の電源分岐線413と電気的に、直接接続されていない。第1のグランド分岐線423は、第2の電源主線412と電気的に、直接接続されていない。
このような構成によって、制御部60から供給される電流は、電源線41を介して各発光部20および各ICチップ30に流れ、グランド線42を介して制御部60に戻る。
行データ線43は、行ドライバ51と、行方向に並ぶICチップ30とに電気的に接続されている。列データ線44は、列ドライバ52と、列方向に並ぶICチップ30とに電気的に接続されている。
【0019】
ドライバ50は、制御部60の制御によってICチップ30の駆動を制御する。ドライバ50は、列方向に並ぶICチップ30に接続され、当該ICチップ30の駆動を制御する行ドライバ51と、行方向に並ぶICチップ30に接続され、当該ICチップ30の駆動を制御する列ドライバ52とを備えている。なお、行ドライバ51および列ドライバ52のうち少なくとも一方を透明材料で構成して、第1の透明基材10上に配置してもよい。透明材料で構成されていない場合、第1の透明基材10以外の箇所に配置してもよい。
【0020】
次に、透明表示装置1の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、第1の透明基材10の主面上には、発光部20と、ICチップ30と、配線部40と、これらを絶縁する絶縁層14が配置されている。絶縁層14としては、SiO
x、SiN
x、AlN、SiAlO
x、SiON等の無機層、シクロオレフィン、ポリイミド系、エポキシ系、アクリル系、ノボラック系等の樹脂層、シロキサン系、シラザン系等ケイ素系ポリマー材料の層、上記材料の積層、または、有機および無機のハイブリッド材料の層等が挙げられる。
図3に示すように、発光部20は、行方向および列方向に、すなわちマトリクス状(格子状)に配置されている。しかし、発光部20の配置形式はマトリクス状に限られず、千鳥格子状(オフセット状)等、同色の発光部が特定の方向に一定の間隔で配置される別の配置形式でもよい。
【0021】
複数の発光部20の各々は、透明表示装置1の画素(ピクセル、表示画素ともいう)ごとに設けられている。すなわち、各発光部20は、透明表示装置1の各画素に対応し、1つの発光部20が1つの画素を構成するようになっている。なお、1つの発光部20が複数の画素を構成するようにしてもよい。
【0022】
各発光部20は、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含む。よって、本形態では、少なくとも1つのLEDが透明表示装置1の各画素を構成している。このように、本形態による透明表示装置1は、LEDを画素として用いる表示装置であり、いわゆるLEDディスプレイ(LED表示装置)と呼ばれるものである。
【0023】
各発光部20は2以上のLEDを含んでいてよい。例えば、互いに異なる波長を有する3つのLEDを含んでいてよい。より具体的には、各発光部20が、赤色系LED21R、緑色系LED21G、および青色系LED21B(以下、合わせてLED21とする場合がある)を含んでいてよい。そして、各LEDが、1つの画素を構成する各副画素(サブピクセル)に対応している。このように、各発光部20が、光の三原色(R、G、B)をそれぞれ発光できるLEDを有することにより、3色のLEDが1組となって1つの画素を構成でき、これにより、フルカラーの画像を表示できる。また、各発光部20に同系色のLEDを2つ以上含んでいてもよい。これにより、映像のダイナミクスレンジが大きくなる。
【0024】
本形態で用いられるLEDは、微小サイズの、いわゆるミニLEDと呼ばれるものであることが好ましく、ミニLEDよりもさらに小さいマイクロLEDと呼ばれるものであることがより好ましい。具体的には、ミニLEDの行方向(X方向)の長さは、1mm以下であってよく、列方向(Y方向)の長さは1mm以下であってよい。マイクロLEDの行方向の長さは100μm以下であってよく、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。マイクロLEDの列方向の長さは100μm以下であってよく、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。LEDの行方向および列方向の長さの下限に特に限定はないが、同じ輝度を小さい面積で得ようとした場合、発熱量が面積に反比例して上昇することから、ある一定以上のサイズである方が、熱対策的には好ましい。また、製造上の諸条件等から、特にエッジ効果を低減するためにそれぞれ1μm以上であることが好ましい。
【0025】
また、第1の透明基材10上で1つのLEDが占める面積は、1mm2以下でもよい。この面積は、好ましくは10,000μm2以下であり、より好ましくは1,000μm2以下であり、さらに好ましくは100μm2以下である。なお、第1の透明基材10上での1つのLEDが占める面積の下限は、製造上の諸条件等から10μm2以上にできる。
【0026】
通常、視力1.5の人が1m離れた画像において太さを視認できる限界は50μmであり、15μm以下となると直接視認することが困難であると言われている。よって、上述のような微小サイズのLEDを用いることによって、比較的近接して、例えば数10cm~2m程度の距離を置いて、観察者が表示装置を観察するような場合でも、LEDは視認されないか、または視認されたとしてもその存在が目立たない。そのため、表示装置の背面側の像の視認性が向上する。
【0027】
また、第1の透明基材10として可撓性を有する材料を用いた場合、得られた表示装置が曲げられても、上述のような微小サイズのLEDを用いているため、LEDが損傷することなく、画素として適切に機能できる。そのため、本形態による表示装置を、曲面を有するガラス板、例えば互いに直交する2方向に曲げられたガラス板に装着して使用する場合、またはそのような2つのガラス板間に封入して使用する場合でも、表示装置が損傷し難い。
【0028】
LED自体の透明性は低く、例えばその透過率は10%以下程度である。その理由は、LEDへ電極や光を片側に効率よく取り出すためのミラー構造をその上面若しくは下面に形成することによる。よって、微小サイズのLEDを用いることにより、LEDが光の透過を妨げる領域を低減でき、表示領域において透過率が低い領域(例えば、透過率が20%以下の領域)を低減できる。また、微小サイズのLEDを用いることにより、画素において透過率が高い領域が増加するので、表示装置の透明性が向上し、背面側の像の視認性が向上する。また、表示装置の高い透明性を確保しつつ、配線等の発光部以外の要素の構成の自由度も大きくできる。
【0029】
用いられるLEDのタイプに限定はないが、チップ型でもよい。LEDは、パッケージングされていない状態のものでもよいし、全体がパッケージ内に封入されたもの、あるいは少なくとも一部が樹脂で覆われたものでもよい。覆った樹脂がレンズ機能を備えることで光の利用率や、外部への取り出し効率を上げる様なものでもよい。また、その場合、1つのLEDが1つのパッケージ内に封入されたものでもよい。あるいは、互いに異なる波長の光を発する3つのLEDが1つのパッケージ内に封入されたもの(3in1チップ)でもよい。さらに、同一の波長で発光するが蛍光体等により異なる種類の光を取り出せるもの等でもよい。なお、LEDがパッケージングされている場合、上述の1つのLEDが占める面積、LEDの寸法(x方向寸法およびy方向寸法)は、パッケージ後の状態での面積および寸法を指す。3つLEDが1つのパッケージ内に封入されている場合、各LEDの面積はパッケージ全体の面積の3分の1以下にできる。
【0030】
また、LEDの形状は特に限定されないが、長方形、正方形、六角形、錐構造、ピラー形状等であってよい。
【0031】
LEDは、液相成長法、HDVPE法、MOCVD法等により成長させ、切断されて得られたものを実装できる。また、LEDは、マイクロトランスファープリンティング等によって、半導体ウェハから剥離し、基材上に転写することもできる。
【0032】
LEDの材料は特に限定されないが、無機材料であると好ましい。例えば、発光層の材料としては、赤色系LEDであれば、AlGaAs、GaAsP、GaP等が好ましい。緑色系LEDでは、InGaN、GaN、AlGaN、GaP、AlGaInP、ZnSe等が好ましい。青色系LEDでは、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe等が好ましい。
【0033】
LEDの発光効率(エネルギー変換効率)は、1%以上であると好ましく、5%以上であるとより好ましく、15%以上であるとさらに好ましい。発光効率が1%以上であるLEDを用いることで、上述のようにLEDのサイズが微小でも十分な輝度が得られ、日中に表示部材としての利用も可能となる。また、LEDの発光効率が15%以上であると、発熱量等を小さくでき、樹脂接着層を用いた合わせガラス内部への封入が容易になる。
【0034】
図3に示すように、各発光部20は所定の間隔を置いて設けられている。発光部20間のピッチは、画素のピッチに相当する。
図2においては、X方向における画素ピッチをP
pxで、Y方向における画素ピッチをP
pyで示す。本明細書において画素ピッチという場合、X方向における画素ピッチP
pxおよびY方向における画素ピッチをP
pyの少なくとも一方を指す。
【0035】
Ppxは、例えば30mm以下であり、好ましくは100μm以上5000μm以下であり、より好ましくは180μm以上3000μm以下であり、さらに好ましくは250μm以上1000μm以下である。Ppyは、例えば30mm以下であり、好ましくは100μm以上5000μm以下であり、より好ましくは180μm以上3000μm以下であり、さらに好ましくは250μm以上1000μm以下である。また、一画素の領域Pの面積はPpx×Ppyで表される。一画素の面積は、例えば900mm2以下であり、好ましくは1×104μm2以上2.5×107μm2以下であり、より好ましくは3×104μm2以上9×106μm2以下であり、さらに好ましくは6×104μm2以上1×106μm2以下である。
【0036】
画素ピッチを上記範囲とすることによって、十分な表示能を確保しつつ、高い透光性を実現できる。また、透明表示装置の背面側からの光によって生じ得る回折現象を低減または防止することもできる。
【0037】
また、本形態による表示装置の表示領域における画素密度は、0.8ppi以上でもよく、好ましくは5ppi以上、より好ましくは10ppi以上、さらに好ましくは25ppi以上である。
【0038】
上記画素ピッチは、各発光部20に含まれる同色のLEDのピッチに相当し得る。例えば、X方向の画素ピッチPpxは、赤色系LED21RのX方向でのピッチに相当し、Y方向の画素ピッチPpyは、赤色系LED21RのY方向でのピッチに相当し得る。
【0039】
一画素の面積は、画面または表示領域のサイズ、用途、視認距離等にもよって適宜選択できる。一画素の面積を1×104μm2以上2.5×107μm2以下とすることで、適切な表示能を確保しつつ、表示装置の透明性を向上させられる。
【0040】
各LEDの面積は、一画素の面積に対して、30%以下であるとよく、10%以下であると好ましく、5%以下であるとより好ましく、1%以下であるとさらに好ましい。一画素の面積に対して1つのLEDの面積を30%以下とすることで、透明性、および表示装置の背面側の像の視認性を向上させられる。
【0041】
また、表示領域においてLEDが占める面積の合計は、30%以下であるとよく、10%以下であると好ましく、5%以下であるとより好ましく、1%以下であるとさらに好ましい。
【0042】
図3では、各画素について、赤色系LED21R、緑色系LED21G、青色系LED21BがX方向に一列に並べて配置されているが、3つのLEDの配置は図示のものに限られない。例えば、3つのLEDの配置順を変更して、緑色系LED21G、青色系LED21B、赤色系LED21Rの順に配置する等してよい。また、3つのLEDの配置方向を変更して、Y方向に並べてもよい。あるいは、3つのLED21R、21G、21Bを一列に配置するのではなく、各LEDを三角形の頂点に位置するように配置してもよい。また、同色のLEDが1画素に複数設置されていてもよく、同色のLED毎に群を形成するように配置していてもよく、また、異なる色のLEDが互い違いに設置されながらも同色系統のLEDが1画素の1色として同時に点灯するような構成としていてもよい。これにより各LEDの発熱量の低減できる。
【0043】
また、各発光部20が複数のLEDを備えている場合、各画素における(各発光部20における)LED同士の間隔は、例えば3mm以下である。1mm以下であると好ましく、100μm以下であるとより好ましく、10μm以下であるとさらに好ましい。また、各発光部20において、複数のLED同士が互いに接して配置されていてもよい。これにより、電源配線を共通化し易くなり、開口率を向上させられる。
【0044】
なお、各発光部20が複数のLEDを含む場合、各画素における複数のLEDの配置順、配置方向等は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。また、各発光部20が波長の異なる光を発する3つのLEDを含む場合、一部の発光部20において、LEDがX方向またはY方向に並んで配置され、別の一部の発光部20において、各色のLEDが三角形の頂点にそれぞれ位置するように配置されていてもよい。
【0045】
各ICチップ30は、各画素に対応して、すなわち画素ごとに(発光部20ごとに)配置されて、各画素を駆動する。また、各ICチップ30は、
図4に示すように、複数の画素に対応して、すなわち複数の画素ごとに配置されて、複数の画素を駆動することもできる。
図4の例では、1つのICチップ30が、4画素の発光部を駆動するように構成されている。
【0046】
なお、ICチップ30は、第1の透明基材10上に配置されていてもよいが、第1の透明基材10上に、銅、銀、金製等の金属のパッドを配置し、その上にICチップを配置してもよい。また、上述のLED21も、同様に、パッド上に配置されていてよい。また、パッドが占める面積は、80μm2以上40000μm2以下であると好ましく、300μm2以上2000μm2以下であるとより好ましい。
【0047】
ICチップ30としては、アナログ部分と論理部分とを備えたハイブリッドIC等を使用できる。また、ICチップ30の面積は、100,000μm2以下であってよく、10,000μm2以下であると好ましく、5,000μm2以下であるとより好ましい。ICチップ30のアナログ部分は、電流量を制御する回路の他に、変圧回路等を含んでいてもよい。ICチップ30自体の透明性は低く、例えばその透過率は20%以下程度である。そのため、上記のサイズのICチップ30を用いることにより、ICチップ30が光の透過を妨げる領域を低減でき、表示領域において透過率の低い領域(例えば、透過率が20%以下の領域)を低減することに寄与できる。また、面積が20,000μm2以下のICチップ30を用いることにより、透過率の高い領域が増加するので、表示装置の透明性が向上し、背面側の像の視認性が向上する。
【0048】
また、
図4に示すように、複数の画素に対して1つのICチップ30が配置されている構成では、表示領域Aにおいて配置されるICチップ30の数が少なく、ICチップ30の占める面積の合計が小さくなる。そのため、透明表示装置1の透過性がより向上する。
【0049】
なお、本形態では、LEDとICチップ30とが共にパッケージングされたICチップ付LEDを用いることもできる。また、ICチップ30を、薄膜トランジスタ(TFT)を含んだ回路に置き換えてもよい。
【0050】
配線部40は、上述のように各発光部20に接続されており、各発光部20は個別に制御できてもよい。
配線部40の材料としては、銅、アルミニウム、銀、金等の金属、カーボンナノチューブ等、ITO(スズドープ酸化インジウム(Indium Tin oxide))、ATO(アンチモンドープ酸化スズ(Antimony Tin oxide))、PTO(リンドープ酸化スズ(Phosphorus Tin oxide))、ZnO2、ZSO((ZnO)X・(SiO2)(1-X))等の透明導電材料が挙げられる。これらの材料のうち、低抵抗率であることから銅が好ましい。また、配線部40は、反射率を低減することを目的として、Ti、Mo、酸化銅、カーボン等の材料で被覆されていてもよい。また、被覆した材料の表面に凹凸が形成されていてもよい。
【0051】
配線部40に含まれる各配線の幅はいずれも、100μm以下であると好ましく、50μm以下であるとより好ましく、15μm以下であるとさらに好ましい。上述のように、視力1.5の人が1m離れた画像において太さを視認できる限界は50μmであり、15μm以下となると直接視認することが困難であると言われている。よって、線の幅を100μm以下、好ましくは50μm以下とすることで、比較的近接して、例えば数10cm以上2m以下程度の距離を置いて、観察者が表示装置を観察するような場合でも、配線部が視認されないか、または視認されても目立たない。そのため、表示装置の背面側の像の視認性が向上する。
【0052】
透明表示装置1に外部から光が照射された場合には乱反射が生じ、場合によっては回折等が生じ得るので、透明表示装置1の向こう側の像の視認性が低下する場合がある。特に、図示の例のように、配線が、主としてX方向およびY方向に延在している場合、X方向およびY方向に延びる十字型の回折像(十字回折像と呼ぶ)が現れやすい傾向がある。これに対し、各配線の幅を小さくすることで、透明表示装置の背面側からの光によって生じ得る回折現象を低減または防止でき、これにより、背面側の像の視認性がさらに向上する。回折を低減するという観点では、各配線の幅を好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とするとよい。なお、上述の透明表示装置の背面側からの光は、透明表示装置に含まれる発光部とは別の光源から発せられる光である。
【0053】
また、配線部40に含まれる各配線の幅は0.5μm以上であると好ましい。線の幅を0.5μm以上にすることで、配線抵抗が過度に上昇することを防止でき、これにより、電源の電圧降下や信号強度の低下を防止できる。また、同時に熱伝導性が向上するため、好ましい。
【0054】
配線部40を構成する線の電気抵抗率は、1.0×10-6Ωm以下が好ましく、2.0×10-8Ωm以下がより好ましい。また、配線部40を構成する線の熱伝導率は、150W/(m・K)以上5500W/(m・K)以下であると好ましく、350W/(m・K)以上450W/(m・K)以下であるとより好ましい。
【0055】
配線部40において、隣り合う配線同士の間隔(異なる機能を有する配線同士の間隔を含む)は、例えば5μm以上50000μm以下であり、好ましくは10μm以上3000μm以下、より好ましくは100μm以上2000μm以下である。また、X方向およびY方向の少なくとも一方で、隣り合う配線同士の間隔を、例えば5μm以上50000μm以下とし、好ましくは10μm以上3000μm以下、より好ましくは100μm以上2000μm以下とする。同じ機能を有する配線同士の間隔(例えば電源線同士の間隔)は、好ましくは150μm以上5000μm以下であり、より好ましくは300μm以上3000μm以下である。
【0056】
線が密になっていると、または線が密になっている領域があると、背面側の像の視認を妨げる場合がある。そのため、隣り合う線同士の間隔を5μm以上とすることで、そのような視認の妨げを低減できる。但し、配線の幅が5μm以下と小さい場合、また、表示装置の透明性を確保できるのであれば、配線間を光の波長以下のサイズになるようにブラックマトリクス等で遮光してもよい。また、隣り合う線同士の間隔を3000μm以下とすることで、十分な表示能を確保するための配線を構成できる。
【0057】
また、配線部40の線同士の間隔を、X方向およびY方向の少なくとも一方において100μm以上とすることによって、乱反射や回折等による視認性の低下を防止できる。
【0058】
なお、上述の隣り合う配線同士の間隔は、配線が湾曲していたり、配線同士が平行に配置されていなかったりする等、配線同士の間隔が一定でない場合、例えば隣り合う配線同士の間隔の最大値とする。この場合、配線としては、複数の画素に跨って延在する配線に着目することが好ましい。
【0059】
図1、
図3および
図4の形態では、配線部40は、正面視(平面視)で、ほぼ等間隔に主としてY方向に延在する配線を含む構成となっているが、配線部40の構成は図示のものに限られない。例えば、配線部40のうち、電源線41やグランド線42を、X方向およびY方向の各方向に、複数の画素に跨って延在するメッシュ状の配線とすることもできる。これにより、電源線が低抵抗化され、作製可能な面積を大面積化できる。また、メッシュを構成する略平行な配線の本数が、3本以上であると低抵抗化と、透過率の向上を両立でき好ましい。
【0060】
また、複数の画素に跨って延在する行データ線43がX方向に配置され、列データ線44がY方向に配置されている。このような構成は、パネルの大面積化の観点から好ましい。行データ線43または列データ線44を配置しなくてもよい。
【0061】
さらに、配線部40においては、電源線41、グランド線42、行データ線43および列データ線44の少なくとも3つを厚さ方向に重ねて配置できる。この場合、電源線41、グランド線42、行データ線43および列データ線44が互いに接触しないよう、一部の配線を第1の透明基材10内に埋め込むようにしてもよいし、配線の間に絶縁層を挟むこともできる。
【0062】
一画素の領域において配線部40が占める面積は、一画素の面積に対して、30%以下であると良く、10%以下であると好ましく、5%以下であるとより好ましく、3%以下であるとさらに好ましい。また、表示領域全体において配線部が占める面積も、表示領域の面積に対して30%以下であると良く、10%以下であると好ましく、5%以下であるとより好ましく、3%以下であるとさらに好ましい。
【0063】
線状体の集合体である配線部40の透光性は比較的低く、その透過率は例えば20%以下、あるいは10%以下となり得る。そのため、一画素の領域において配線部が占める面積を30%以下とすることで、また、表示領域において配線部が占める面積を30%以下とすることで、配線部40が光の透過を妨げる領域を低減できる。従って、表示領域において透過率の低い領域(例えば、透過率が20%以下の領域)を低減できる。また、表示領域において配線部40が占める面積を20%以下とすることで、透過率の高い領域が増加するので、表示装置の透明性が向上し、背面側の像の視認性を向上させられる。
【0064】
さらに、各画素において(一画素の領域において)発光部20、ICチップ30および配線部40が占める面積は、一画素の面積に対して30%以下であると好ましく、20%以下であるとより好ましく、10%以下であるとさらに好ましい。また、発光部20、ICチップ30および配線部40が占める面積は、表示領域Aの面積に対して、30%以下であると好ましく、20%以下であるとより好ましく、10%以下であるとさらに好ましい。透明表示装置1がICチップ30を備えていない場合、一画素あるいは表示領域Aの面積に対する発光部20および配線部40が占める面積は、ICチップ30を備えている場合と同様の値であることが好ましい。
【0065】
さらに本形態では、透過率の低い領域を、一画素の領域において偏在させてもよい。例えば、一画素の領域において、配線部40の配線同士を近接させ、また発光部20およびICチップ30と、配線部40とを近接させてもよい。これにより、X方向およびY方向に一定の拡がりを持った高透過率の領域を形成できる。例えば、一画素の領域内に、低透過率領域、例えば透過率20%以下の領域を含まないようにできる。低透過率の領域を、一画素の領域において偏在させることにより、背面側から光の回折をより一層抑制できる。
【0066】
第1の透明基材10は、絶縁性を有し透明であれば特に限定されないが、樹脂を含むものが好ましく、主として樹脂からなるものが好ましい。透明基材に使用される樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂、セルロース、アセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリイミド(PI)等のイミド系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)等のビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等のアクリル樹脂やその骨格に架橋がされたもの、ウレタン樹脂等が挙げられる。また、第1の透明基材10としては、薄手のガラス、例えば200μm以下、好ましくは100μm以下のガラス等も使用できる。
【0067】
上記の透明基材に用いられる材料のうち、耐熱性向上の観点からはポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)が好ましい。また、複屈折率が低く、透明基材を通して見た像の歪みや滲みを低減できる点では、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリビニルブチラール(PVB)等が好ましい。
【0068】
上記材料は、単独で、または2種以上を組み合わせて、すなわち異なる材料が混合された形態でまたは異なる材料からなる平面状の基材を積層させて使用できる。第1の透明基材10全体の厚さは、3μm以上1000μm以下であると好ましく、5μm以上200μm以下であるとより好ましい。第1の透明基材10の可視光の内部透過率は、50%以上であると好ましく、70%以上であるとより好ましく、90%以上であるとさらに好ましい。
【0069】
また、第1の透明基材10は可撓性を有していると好ましい。これにより、例えば透明表示装置1を湾曲したガラス板に装着したり、湾曲した2つのガラス板で挟んで用いたりした場合、透明表示装置1をガラス板の湾曲に容易に追従させられる。また、100℃以上に加熱時に収縮挙動を示す素材であると、なお好ましい。
また、第1の透明基材10は、パッシベーション層を有することが好ましい。パッシベーション層とは、SiOx、SiNx、AlN、SiAlOx、SiON等の無機層、シクロオレフィン、ポリイミド系、エポキシ系、アクリル系、ノボラック系等の樹脂層、無機層と樹脂層の積層、シロキサン系、シラザン系等ケイ素系ポリマー、または、有機および無機のハイブリッド材料等からなる層である。
【0070】
<第1実施形態>
上記関連技術の透明表示装置1において、各発光部20および各ICチップ30に流す電流量がほぼ同じであると仮定すると、電源線41に流れる電流は、制御部60との接続点から離れるにしたがって少なくなる。具体的には、第1の電源主線411に流れる電流は、当該第1の電源主線411から複数の第2の電源分岐線414が分岐しているため、上方向に向かうほど少なくなる。第2の電源主線412に流れる電流は、当該第2の電源主線412から複数の第1の電源分岐線413が分岐しているため、右方向に向かうほど(第1の電源主線411から離れるほど)少なくなる。第1の電源分岐線413に流れる電流は、当該第1の電源分岐線413から複数の第2の電源分岐線414が分岐しているため、下方向に向かうほど(第2の電源主線412から離れるほど)少なくなる。
【0071】
一方、グランド線42に流れる電流は、制御部60との接続点に近づくにしたがって多くなる。具体的には、第1のグランド分岐線423に流れる電流は、当該第1のグランド分岐線423に複数の第2のグランド分岐線424が接続されているため、下方向に向かうほど多くなる。第2のグランド主線422に流れる電流は、当該第2のグランド主線422に複数の第1のグランド分岐線423が接続されているため、右方向に向かうほど(第1のグランド主線421に近づくほど)多くなる。
【0072】
電源線41およびグランド線42に電流が流れると、当該電源線41およびグランド線42が発熱する。上述のように電源線41およびグランド線42の各領域に流れる電流の大きさが異なる。そのため、
図5に示すように、表示領域Aの左下に位置し、電源線41およびグランド線42における電流が多く最も流れる領域を含む第1の部分領域A1、表示領域Aにおける第1の部分領域A1の対角に位置する第2の部分領域A2、第1の部分領域A1と第2の部分領域A2との間に位置する第3の部分領域A3のそれぞれの発熱量を比較すると、第1の部分領域A1が最も多く、第2の部分領域A2が最も少なく、第3の部分領域A3が第1の部分領域A1と第2の部分領域A2との間の量となる。
【0073】
また、発光部20およびICチップ30にも電流が流れるため、当該発光部20およびICチップ30も発熱する。しかし、各画素の間隔がほぼ同じであれば、当該発光部20およびICチップ30の発熱を考慮に入れても、第1,第2,第3の部分領域A1,A2,A3の発熱量の大小関係は、上述の関係と同じになる。
【0074】
また、行ドライバ51および列ドライバ52にも電流が流れるため、当該行ドライバ51および列ドライバ52も発熱する。行ドライバ51および列ドライバ52が透明材料により構成され、第1の透明基材10上において、例えば第1の電源主線411や第2のグランド主線422に隣接する位置に設けられている場合、各ドライバ51,52も表示領域Aを構成するとみなし、各ドライバ51,52の発熱の影響によって表示領域Aの温度が上昇するおそれがある。
【0075】
図6および
図7に示す第1実施形態の透明表示装置1Aは、上述のような表示領域Aの温度上昇を抑制する機能を有し、第1の透明基材10と、発光部20と、ICチップ30と、配線部40と、ドライバ50と、制御部60と、放熱促進部70Aとを備えている。なお、第1の透明基材10、発光部20、ICチップ30、ドライバ50は、透明表示装置1と同様の構成を有するため、
図6においては図示を省略する。また、行データ線43および列データ線44も透明表示装置1と同様の構成を有するため、図示を省略する。
【0076】
放熱促進部70Aは、表示領域Aの放熱を促進する機能を有し、伝熱部71Aと、抜熱部72Aとを備えている。
伝熱部71Aは、配線部40とは構造的に別体で構成されている。このように、伝熱部71Aを配線部40とは別体で構成することによって、発光部20、ICチップ30、配線部40等の設計変更を行うことなく、表示領域Aの放熱を促進できる。
伝熱部71Aは、第1の透明基材10における配線部40が設けられた第1の主面に設けられている。伝熱部71Aは、4本の伝熱線710Aによって表示領域Aを囲む四角枠状に形成されている。このように、伝熱部71Aを伝熱線710Aで構成することによって、表示領域Aの透過率の低下を最小限に抑制できる。
伝熱線710Aは、金属、または、グラファイト、グラフェン、カーバイド、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド等のカーボン系材料等で形成されていてもよい。このように、熱伝導性の高い伝熱線710Aを形成することによって、すばやく熱を伝えられる。
金属材料としては、銅、アルミニウム、銀、鉄、炭化タングステン等が挙げられる。また、ダイヤモンド以外のカーボン系の材料を用いる場合は、金属や電解質に加えるとイオン化するような材料と混合することが好ましい。熱伝導率を高めたり、他の材料接続する箇所にて、熱を他の材料に効率的に伝えられたりするためである。伝熱線710Aが導電性を有する場合、
図8A,
図8Bに示すように、伝熱線710Aと配線部40との交差部分では、これらの間に絶縁部715Aを設けることが好ましい。絶縁部715Aの材料としては、酸化シリコンや窒化シリコン等の無機材料、あるいは有機系のフォトレジスト材料等が挙げられる。また、窒化アルミニウムやボロンナイトライドのような、熱伝導率が高い材料で構成されることが好ましい。発熱部からより効率よく伝熱線710Aに熱を伝えられるためである。絶縁部715Aを設けることによって、導電性の伝熱線710Aを用いる場合でも、伝熱線710Aの配置の自由度を高められる。
【0077】
伝熱線710Aは、絶縁性のセラミックスで形成されていてもよい。このようなセラミックス材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、炭化シリコン、窒化シリコン、窒化ホウ素等が挙げられる。セラミックス製の伝熱線710Aは、透明でもよいし、透明でなくてもよい。伝熱線710Aがセラミックス製の場合、伝熱線710Aと配線部40との交差部分では、これらの間に絶縁部715Aを設ける必要がなくなり、伝熱線710Aの配置の自由度を高められる。
【0078】
伝熱線710Aの幅は、1μm以上1000μm以下であると好ましく、2μm以上500μm以下であるとより好ましく、3μm以上200μm以下であるとさらに好ましい。伝熱線710Aの厚さは、0.1μm以上10μm以下であると好ましく、0.2μm以上8μm以下であるとより好ましく、0.5μm以上5μm以下であるとさらに好ましい。
伝熱線710Aの断面積は、全体にわたって同じでもよいし、一部領域で異なっていてもよい。一部領域の断面積を他領域と異ならせる場合、第1の部分領域A1近傍に位置する領域の断面積を、第2の部分領域A2近傍に位置する領域の断面積より大きくして、第1の部分領域A1近傍の放熱能力を第2の部分領域A2近傍よりも高くすることが好ましい。このようにすれば、発熱量が多く高温となりやすい第1の部分領域A1の放熱を第2の部分領域A2よりも促進できる。その結果、表示領域Aの温度分布の均一性が高まり、発光部20の発光ムラを抑制できる。また、伝熱線710Aにおける後述する接続部721Aに近い領域の断面積を、遠い領域の断面積より大きくして、当該近い領域の放熱能力を当該遠い領域よりも高くすることが好ましい。このようにすれば、伝熱線710Aから接続部721Aに単位時間あたりに伝える熱量を多くでき、第1の部分領域A1の放熱をより促進できる。
伝熱線710Aの一部領域の断面積を他領域と異ならせる方法としては、幅および厚さのうち少なくとも一方を異ならせることが挙げられる。幅および厚さのうち少なくとも一方を異ならせる方法としては、直線的に増減させることや、段階的に増減させることが挙げられる。
【0079】
抜熱部72Aは、接続部721Aを介して伝熱線710Aに接続され、伝熱線710Aの熱を奪う。抜熱部72Aとしては、放熱フィン、ヒートパイプ、ペルチェ素子、車両等の移動体のボディ(移動体本体部)等が挙げられる。接続部721Aは、多くの熱を効率的に抜熱部72Aに伝える機能を有することが好ましい。このような観点から、接続部721Aの材料としては、銅、アルミニウム、銀、鉄、酸化タングステン等の金属材料、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、炭化シリコン、窒素シリコン、窒化ホウ素等のセラミック材料、または、これらの材料の分散物、さらには、グラファイト、グラフェン、カーバイド、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド等のカーボン系材料等が挙げられる。ダイヤモンド以外のカーボン系の材料を用いる場合は、伝熱線710Aと同様に、金属や電解質に加えるとイオン化するような材料と混合することもできる。
接続部721Aの幅は、1μm以上10mm以下であると好ましく、10μm以上5mm以下であるとより好ましく、20μm以上3mm以下であるとさらに好ましい。接続部721Aの厚さは、0.5μm以上1mm以下であると好ましく、2μm以上500μm以下であるとより好ましく、5μm以上300μm以下であるとさらに好ましい。
【0080】
透明表示装置1Aの表示領域Aの面積は、例えば1×104mm2以上2×106mm2以下であり、3×104mm2以上1×106mm2以下でもよい。また、透明表示装置1Aの正面の面積に対して1%以上90%以下が表示領域Aでもよく、5%以上75%以下が表示領域Aでもよい。また、表示領域Aの形状は、長方形、正方形、透明表示装置1Aの外形と略相似形、透明表示装置1Aの外形の相似形に対して、縦方向よりも、横方向に長くなったような形状であるとよい。そして、透明表示装置1Aは、視認距離(観察者から表示画面までの距離)が比較的短い用途で、例えば視認距離が0.2m以上3.0m以下となるような用途で好適に使用できる。このように視認距離が比較的短い用途でも、微小サイズのLEDを用い、透過率の低い領域が所定の割合にあることによって、透明性が向上し、また表示装置越しに見える像の視認性が向上する。
【0081】
透明表示装置1Aは、第1の透明基材10を準備し、第1の透明基材10上に配線部40および伝熱線710Aを形成し、発光部20を配置することによって製造できる。ICチップ30を備えた透明表示装置1Aを製造する場合には、発光部20(LED21)を配置する工程において、ICチップ30も同時に配置できる。配線部40の形成、発光部20の配置、ICチップ30の配置は、公知の実装技術を利用できる。例えば、半田ボールを用いる手法、トランスファープリンティング等を利用できる。
【0082】
以上の第1実施形態によれば、画像を表示させるために電源線41およびグランド線42に電流が流れ、この電流によって表示領域Aが発熱すると、この熱が伝熱線710Aに伝わり、表示領域Aの放熱が促進される。したがって、発光部20以外の部材である例えば電源線41およびグランド線42が発熱した場合でも、表示領域Aの温度上昇が抑制される。
表示領域Aの放熱促進効果を得るために、配線部40の設計変更を行う必要がない。
ドライバ50が第1の透明基材10上に配置されている場合には、ドライバ50の駆動により発生する熱も伝熱線710Aに伝わり、発光部20以外の部材であるドライバ50の放熱が促進される。
伝熱線710Aの熱を奪う抜熱部72Aを設けることで、表示領域Aの放熱効率を高められる。
【0083】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例としては、以下の形態が挙げられる。
図9に示すように、
図6の四角枠状の伝熱線710Aに加えて、行方向に延びる複数の伝熱線716Aを列方向に所定間隔で配置してもよい。
【0084】
図10に示すように、
図6の四角枠状の伝熱線710Aに加えて、列方向に延びる複数の伝熱線717Aを行方向に所定間隔で配置してもよい。この場合、伝熱線717Aは、発光部20、ICチップ30および列方向に延びる第1の電源主線411、第1の電源分岐線413、第1のグランド主線421、第1のグランド分岐線423と重なってもよいし、重ならなくてもよい。
【0085】
図11に示すように、
図6の四角枠状の伝熱線710Aに加えて、行方向に延びる複数の伝熱線716Aを列方向に所定間隔で配置するとともに、列方向に延びる複数の伝熱線717Aを行方向に所定間隔で配置してもよい。
【0086】
図9および
図11の構成において、伝熱線716Aは、発光部20およびICチップ30と重なってもよいし、重ならなくてもよい。
【0087】
図10および
図11の構成において、伝熱線717Aは、発光部20、ICチップ30および列方向に延びる第1の電源主線411、第1の電源分岐線413、第1のグランド主線421、第1のグランド分岐線423と重なってもよいし、重ならなくてもよい。伝熱線717Aは、列方向に延びる第1の電源主線411、第1の電源分岐線413、第1のグランド主線421、第1のグランド分岐線423のうち少なくとも一本と、その長さ方向全体にわたって重なっていてもよい。伝熱線716A,717Aが発光部20、ICチップ30および列方向に延びる第1の電源主線411、第1の電源分岐線413、第1のグランド主線421、第1のグランド分岐線423のうち少なくとも1つと重なる場合、伝熱線716A,717Aが金属製のときには、絶縁部を間に挟むことが好ましく、セラミックス製のときには、絶縁部を間に挟まなくてもよい。
【0088】
図6~
図11に示す伝熱線710Aのうち、表示領域Aの下側に設けられた第1の伝熱線711Aと、左側に設けられた第2の伝熱線712Aとのみを設け、上側に設けられた第3の伝熱線713Aと、右側に設けられた第4の伝熱線714Aとを設けなくてもよい。このような構成にすれば、このようにすれば、第1,第2の伝熱線711A,712Aの交差部分に位置する第1の部分領域A1の放熱を促進しつつ、伝熱線710Aの材料の使用量を減らせる。
【0089】
図9~
図11の構成において、伝熱線716A,717Aの両端を伝熱線710Aに接続したが、一端または両端を伝熱線710Aに接続しなくてもよい。
図9~
図11の構成において、伝熱線716A,717Aの本数は、図示した数に限られない。
図9~
図11の構成において、伝熱線716A,717Aにおける第1の部分領域A1近傍に位置する領域の断面積を、第2の部分領域A2近傍に位置する領域の断面積より大きくして、第1の部分領域A1の放熱を第2の部分領域A2よりも促進するようにしてもよい。
図6~
図11の構成において、抜熱部72Aを設けなくてもよい。このようにしても、伝熱線710Aに熱が伝わり表示領域Aの放熱が促進される。また、複数の抜熱部72Aを複数の接続部721Aを介して、伝熱線710Aの複数箇所に接続すれば、表示領域Aの放熱をより促進できる。
【0090】
例えば、
図9の構成において、第1の透明基材10における配線部40と同じ第1の主面に伝熱線716Aを設けたが、
図12Aに示すように、第1の透明基材10の第2の主面に伝熱線716Aを設けてもよい。このような構成にすれば、第1の透明基材10上の発光部20、ICチップ30、配線部40等の配置を変更することなく、電源線41やグランド線42の熱が第1の透明基材10を介して伝熱線716Aに伝わり表示領域Aの放熱が促進される。
なお、電源線41等の熱を伝熱線716Aに伝わり易くするためには、平面視で電源線41と伝熱線716Aとが重なることが好ましいが、全く重ならない場合でも、電源線41等の熱が第1の透明基材10を介して伝熱線716Aに伝わる効果が得られる。
【0091】
図12Bに示すように、
図12Aの構成において、第1の透明基材10の厚さ方向に貫通する平面視で円形の貫通孔11Aを設けるとともに、それぞれの開口を塞ぐように配線部40および伝熱線716Aを配置してもよい。貫通孔11Aの直径は、5μm以上100μm以下であると好ましく、10μm以上80μm以下であるとより好ましく、20μm以上50μm以下であるとさらに好ましい。このような構成にすれば、電源線41等の熱が貫通孔11Aを介して第1の透明基材10の厚さ方向に進み、伝熱線716Aに伝わり易くなる。
なお、貫通孔11Aの平面視の形状は、三角形や四角形等の多角形でもよいし、楕円でもよい。
【0092】
図12Cに示すように、
図12Bの構成において、貫通孔11Aに、配線部40の熱を伝熱線716Aに伝える伝熱材73Aを充填してもよい。伝熱材73Aは、熱伝導率が高い材料で構成されていることが好ましく、このような材料としては、銅やアルミニウム等の金属材料、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、炭化シリコン、窒化シリコン、窒化ホウ素等のセラミックス材料、さらには、グラファイト、グラフェン、カーバイド、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド等のカーボン系材料等が挙げられる。ダイヤモンド以外のカーボン系の材料を用いる場合は、伝熱線710Aと同様に、金属や電解質に加えるとイオン化するような材料と混合することもできる。このような構成にすれば、電源線41等の熱が伝熱材73Aを介して伝熱線716Aに伝わり易くなる。
【0093】
図6、
図10、
図11の構成においても、
図12A,
図12B,
図12Cの構成を適用してもよい。
伝熱線の本数や形状あるいは配置位置は、上述した態様に限られず、表示領域Aの放熱を促進できれば、いずれの態様でもよい。
伝熱線710A,716A,717Aを第1の透明基材10の両主面に設けてもよく、この場合、両主面で同じ伝熱線を設けてもよいし、異なる伝熱線を設けてもよい。
【0094】
<第2実施形態>
図13および
図14に示す第2実施形態の透明表示装置1Bは、表示領域Aの温度上昇を抑制する機能を有している。第2実施形態の透明表示装置1Bと第1実施形態の透明表示装置1Aとの相違点は、放熱促進部70Aの代わりに放熱促進部70Bを設けたことである。
【0095】
放熱促進部70Bは、伝熱部71Bと、抜熱部72Aとを備えている。
伝熱部71Bは、配線部40とは構造的に別体で構成されている。このように、伝熱部71Bを配線部40とは別体で構成することによって、発光部20、ICチップ30、配線部40等の設計変更を行うことなく、表示領域Aの放熱を促進できる。伝熱部71Bは、四角形状の透明な伝熱層710Bを備えている。伝熱層710Bは、絶縁層14の上から表示領域Aの全体を覆うように、第1の透明基材10における配線部40と同じ第1の主面に設けられている。伝熱層710Bの厚さは、全体にわたって同じでもよいし、一部領域で異なっていてもよい。一部領域の厚さを他領域と異ならせる場合、第1の部分領域A1近傍に位置する領域の厚さを、第2の部分領域A2近傍に位置する領域よりも厚くすることが好ましい。このようにすれば、発熱量が多く高温となりやすい第1の部分領域A1の放熱を第2の部分領域A2よりも促進できる。伝熱層710Bは、接続部721Aを介して抜熱部72Aに接続されている。
【0096】
伝熱層710Bとしては、透明導電酸化物(TCO)からなる層であることが好ましく、ITO(スズドープ酸化インジウム(Indium Tin oxide))、ATO(アンチモンドープ酸化スズ(Antimony Tin oxide))、PTO(リンドープ酸化スズ(Phosphorus Tin oxide))、ZnO2、ZSO((ZnO)X・(SiO2)(1-X))等の透明導電膜や、カーボン、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーバイド、ダイヤモンド等の炭素材料の分散物からなる層、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、炭化シリコン、窒化シリコン、窒化ホウ素等のセラミックス粒子の分散物からなる層、銀等の金属ナノワイヤからなる層等が挙げられる。ダイヤモンド以外のカーボン系の材料を用いる場合は、伝熱線710Aと同様に、金属や電解質に加えるとイオン化するような材料と混合することもできる。伝熱層710Bが導電性を有する場合、伝熱層710Bと、発光部20、ICチップ30および配線部40との間に、絶縁層を設けることが好ましい。
伝熱層710Bの全光線透過率は、40%以上であると好ましく、50%以上であるとより好ましく、60%以上であるとさらに好ましい。伝熱層710Bの厚さとしては、0.1μm以上1000μm以下であると好ましく、0.5μm以上500μm以下であるとより好ましく、1μm以上100μm以下であるとさらに好ましい。
【0097】
以上の第2実施形態によれば、画像表示に伴い電源線41およびグランド線42に流れる電流によって表示領域Aが発熱すると、この熱が伝熱層710Bによって表示領域Aの面方向に伝わり放熱が促進される。したがって、発光部20以外の部材が発熱した場合でも、表示領域Aの温度上昇が抑制される。
【0098】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態の変形例としては、以下の形態が挙げられる。
図15に示すように、四角枠状の透明な伝熱層711Bを、第1の透明基材10の第1の主面に設けてもよい。伝熱層711Bは、全ての発光部20およびICチップ30を覆わないように設けてもよいし、一部の発光部20およびICチップ30を覆うように設けてもよい。
【0099】
図16に示すように、第1の電源主線411と重なってまたは近接した位置において第1の電源主線411と同じ方向に延びる第1の帯状部713Bと、第2のグランド主線422と重なってまたは近接した位置において第2のグランド主線422と同じ方向に延びる第2の帯状部714Bとを有する伝熱層712Bを、第1の透明基材10の第1の主面に設けてもよい。第1の帯状部713Bと第2の帯状部714Bとの接続部分は、最も発熱量が多い第1の部分領域A1の放熱を促進するという観点から、第1の部分領域A1の近傍に位置することが好ましい。このようにすれば、第1,第2の帯状部713B,714Bの交差部分に位置する第1の部分領域A1の放熱を促進しつつ、伝熱層712Bの材料の使用量を減らせる。
【0100】
第1の帯状部713Bおよび第2の帯状部714Bの幅は、
図16に示すように、長さ方向で一定でもよいし、抜熱部72Aに近づくにしたがって連続的にあるいは段階的に広くなってもよいし狭くなってもよい。第1の帯状部713Bおよび第2の帯状部714Bの厚さは、長さ方向で一定でもよいし、抜熱部72Aに近づくにしたがって連続的にあるいは段階的に厚くなってもよいし薄くなってもよい。抜熱部72Aへの熱の伝達効率を上げるという観点から、第1の帯状部713Bおよび第2の帯状部714Bの幅は、
図17に示すように、抜熱部72Aに近づくにしたがって広くなることが好ましく、厚さは、抜熱部72Aに近づくにしたがって厚くなることが好ましい。
【0101】
【0102】
上述の伝熱層710B,711B,712Bの代わりに、
図18Aに示すような伝熱層715Bを設けてもよい。
【0103】
伝熱層715Bのバインダーとしては、絶縁性フィラー716B間の熱伝導性を高くすることが好ましい。バインダーの熱伝導性を高くするには、バインダーの曲げ弾性率が高いことが好ましく、材料として異方性ポリマーを用いることが好ましい。曲げ弾性率としては、0.5GPa以上10GPa以下であることが好ましい。
曲げ弾性率が高いバインダー用のポリマーは、ポリイミドや、シクロオレフィンやトリシクロデカン、アダマンチル骨格等の嵩高い構造を備えたエポキシ樹脂やアクリル樹脂、また、異方性ポリマーとしては、液晶性ポリマーや延伸されたポリマー等が挙げられる。
絶縁性フィラー716B同士を結合するためのバインダーとしては、伝熱層715Bに分散されている絶縁性フィラー716B表面と化学吸着(結合)できる官能基である、カルボニル基、水酸基、イソシアネート基、シラノール基、スルホ基、それらの水素部分が金属イオンに置換されたもの、アミノ基等や、加水分解や水の吸収により、上記の官能基となる構造を有することが好ましい。
【0104】
絶縁性フィラー716Bとしては、透明性および伝熱性を高めるという観点から、絶縁性の酸化物や窒化物、あるいは鉄よりも軽い元素であることが好ましい。絶縁性の酸化物や窒化物としては、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶シリカ等が挙げられる。また、それらを核とし、樹脂との混合性や化学結合性を高めるためのシェル構造を備えていてもよい。絶縁性フィラー716Bの伝熱層715Bにおける濃度としては、伝熱性を高めるという観点から、パーコレーション濃度以上であることが好ましい。パーコレーション濃度以上にすると、絶縁性フィラー716Bが互いに接触して、伝熱層715B内に絶縁性フィラー716Bのネットワークが形成される。その結果、熱が絶縁性フィラー716Bのネットワークを介して表示領域Aの面方向に伝わり、放熱が促進される。なお、絶縁性フィラー716Bがパーコレーション濃度以上含まれていなくても、絶縁性フィラー716Bが全く含まれてない場合と比べて、放熱が促進される。絶縁性フィラー716Bの濃度は、伝熱層715B全体にわたって同じでもよいし、一部領域で異なっていてもよい。一部領域の濃度を他領域と異ならせる場合、第1の部分領域A1の放熱を促進するという観点から、第1の部分領域A1近傍に位置する領域の濃度を、第2の部分領域A2近傍に位置する領域よりも高くすることが好ましい。
また、絶縁性フィラー716Bをフィラー表面へ修飾処理し、フィラーを含んだバインダーを延伸し、また、電場や磁場を印加することによって、熱を伝導したい方向に、配列、配向、結合させることは、熱の伝導率を上げ易くなるので、好ましい。
【0105】
絶縁性フィラー716Bの形状としては、互いの接触面積を確保するという観点から、異方性を有する形状が好ましい。異方性を有する形状としては、繊維状やワイヤー状等の一次元構造や、板状の二次元構造が挙げられる。絶縁性フィラー716Bは、特定の方向に配向していること、特に、構造の長軸方向が熱を伝導する方向に近い方に配向していることが好ましい。
一方、絶縁性の酸化物等で構成された絶縁性フィラー716Bは変形しにくいため、絶縁性フィラー716B同士の接触面積を確保しにくい場合がある。この場合、
図18Bに示すように、展性を有する金属フィラー717Bを絶縁性フィラー716B間に挟むようにすれば、金属フィラー717Bと絶縁性フィラー716Bとの接触面積を確保し易くなる。その結果、熱が絶縁性フィラー716Bおよび金属フィラー717Bのネットワークを介して表示領域Aの面方向に伝わり易くなる。
なお、金属フィラー717Bの材料としては、当該金属フィラー717Bの表面劣化を抑制して発色を抑制する観点から、イオン化傾向が小さい金属が好ましく、銀、アルミニウム、銅、金が好ましい。金属フィラー717Bの大きさとしては、伝熱層715Bの透明性および絶縁性の観点から、小さい方が好ましく、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であるとより好ましく、10nm以下であるとさらに好ましい。
【0106】
伝熱層715Bの透明性を確保するという別の観点から、バインダーの屈折率と絶縁性フィラー716Bの屈折率との差が小さい方が好ましい。このような観点から、バインダーの中でも、屈折率が高いフェニル、フルオレンといったフェニル基を多く含む構造を持つポリマーや、ポリイミド、液晶性ポリマー、フェニルポリシロキサン、ナノコンポジット系であること好ましく、この中でも耐熱性が高いフェニルシラン系、フルオレン系がより好ましい。一方、絶縁性フィラー716Bは、一次元構造の材料として、アルミナ、シリカ等のファイバー材料や、チタニア等の楕円体粒子が挙げられ、二次元構造の材料として、六方晶の窒化ホウ素、酸化亜鉛等が挙げられる。
伝熱層715Bの透明性を確保するというさらに別の観点から、絶縁性フィラー716Bは小さい方が好ましく、具体的には100nm以下であると好ましく、50nm以下であるとより好ましい。
【0107】
伝熱層の数や形状あるいは配置位置は、上述した態様に限られず、表示領域Aの放熱を促進できれば、いずれの態様でもよい。
伝熱層は透明性が高い方が好ましいが、発光部20やICチップ30等の透明でない部材上の領域においては、透明でなくてもよい。発光部20やICチップ30等の透明でない部材上に設けられる非透明な伝熱層は、Siよりも熱伝導性が高いと好ましく、また、絶縁材料であると好ましい。非透明な伝熱層は、着色、白濁した材料によって形成されていてもよい。このような材料は、絶縁材料である場合は、窒化物、酸化物等が好ましい。ICチップ30上のみに非透明な伝熱層を設け、他の領域に透明な伝熱層を設けなくてもよい。非透明な伝熱層に、パーコレーション濃度以上またはそれ未満の絶縁性フィラーを含めてもよい。ICチップ30上に透明なあるいは非透明な伝熱層を設けることによって、熱歪によるICチップ30の破壊を抑制できる。
図13~
図18A,
図18Bの構成において、抜熱部72Aを設けなくてもよい。
伝熱層710B,711B,712B,715Bを第1の透明基材10の両主面に設けてもよく、この場合、両主面で同じ伝熱層を設けてもよいし、異なる伝熱層を設けてもよい。
【0108】
<第3実施形態>
図19および
図20に示す第3実施形態の透明表示装置1Cは、表示領域Aの温度上昇を抑制する機能を有している。第3実施形態の透明表示装置1Cと第1実施形態の透明表示装置1Aとの相違点は、放熱促進部70Aの代わりに放熱促進部70Cを設けたことである。
【0109】
放熱促進部70Cは、伝熱配線71Cと、抜熱部72Aとを備えている。
伝熱配線71Cは、電源線41およびグランド線42のそれぞれの一部で構成されている。電源線41を構成する線のうち、第1の電源主線411および第2の電源主線412は、伝熱配線71Cとして機能する。グランド線42を構成する線のうち、第1のグランド主線421、第2のグランド主線422、および、第2のグランド主線422の端部から第2の電源主線412に向かって延びる第1のグランド分岐線423(
図19における最も右側の第1のグランド分岐線423)は、伝熱配線71Cとして機能する。伝熱配線71Cの断面積は、電源線41およびグランド線42における伝熱配線71Cとして機能しない線よりも大きくなっている。断面積を異ならせる方法としては、幅および厚さのうち少なくとも一方を異ならせることが挙げられる。伝熱配線71Cの幅は、1μm以上1000μm以下であると好ましく、2μm以上500μm以下であるとより好ましく、3μm以上200μm以下であるとさらに好ましい。71Cの厚さは、0.1μm以上10μm以下であると好ましく、0.2μm以上8μm以下であるとより好ましく、0.5μm以上5μm以下であるとさらに好ましい。少なくとも1本の伝熱配線71Cの幅および厚さのうち少なくとも一方は、他の伝熱配線71Cと異なっていてもよい。
【0110】
伝熱配線71Cの材料は、電源線41およびグランド線42における伝熱配線71Cとして機能しない線と同じでもよいし、異なっていてもよい。伝熱配線71Cの材料としては、銅、アルミニウム、銀、鉄、炭化タングステン等が挙げられる。
抜熱部72Aは、接続部721Aを介して、伝熱配線71Cとして機能する第1の電源主線411および第1のグランド主線421に接続されている。
【0111】
以上の第3実施形態によれば、画像表示に伴い電源線41およびグランド線42に流れる電流によって当該電源線41およびグランド線42が発熱すると、この熱は、伝熱配線71Cにおける断面積が狭い方から広い方に向かって流れ、抜熱部72Aに導かれる。したがって、発光部20以外の部材である電源線41およびグランド線42が発熱した場合でも、抜熱部72Aの作用によって表示領域Aの放熱が促進され、表示領域Aの温度上昇が抑制される。
【0112】
<第3実施形態の変形例>
第3実施形態の変形例としては、以下の形態が挙げられる。
伝熱配線71Cの幅は、
図19に示すように、長さ方向で一定でもよいし、抜熱部72Aに近づくにしたがって連続的にあるいは段階的に広くなってもよいし狭くなってもよい。伝熱配線71Cの厚さは、長さ方向で一定でもよいし、抜熱部72Aに近づくにしたがって連続的にあるいは段階的に厚くなってもよいし薄くなってもよい。抜熱部72Aへの熱の伝達効率を上げるという観点から、伝熱配線71Cの幅は、
図21に示すように、抜熱部72Aに近づくにしたがって広くなることが好ましく、厚さは、抜熱部72Aに近づくにしたがって厚くなることが好ましい。また、第1の部分領域A1の放熱を促進するという観点から、伝熱配線71Cの幅は、第1の部分領域A1に近づくにしたがって広くなることが好ましく、厚さは、第1の部分領域A1に近づくにしたがって厚くなることが好ましい。
図19~
図21の構成において、5本の伝熱配線71Cのうち少なくとも1本以上4本以下だけ設けてもよい。また、電源線41、グランド線42を構成する線のうち、
図19~
図21の構成において伝熱配線71Cとして機能していなかった線を伝熱配線71Cとして機能させてもよい。電源線41やグランド線42が行方向に延びる線を有する場合、この行方向に延びる線を伝熱配線71Cとして機能させてもよい。
電源線41のみを伝熱配線71Cとして機能させてもよいし、グランド線42のみを伝熱配線71Cとして機能させてもよい。
【0113】
<第4実施形態>
図22に示す第4実施形態の透明表示装置1Dは、表示領域Aの温度上昇を抑制する機能を有している。第4実施形態の透明表示装置1Dと第1実施形態の透明表示装置1Aとの相違点は、放熱促進部70Aの代わりに放熱促進部70Dを設けたことである。
【0114】
放熱促進部70Dは、伝熱部71Dと、抜熱部72Aとを備えている。
伝熱部71Dは、絶縁層14の代わりに第1の透明基材10の全面に設けられた伝熱絶縁層710Dを備えている。伝熱絶縁層710Dは、発光部20、ICチップ30および配線部40を絶縁するとともに、温度上昇を抑制する機能を有する。伝熱絶縁層710Dの材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、炭化シリコン、窒化シリコン、窒化ホウ素等、または、これらの材料の分散物が挙げられる。伝熱絶縁層710Dの厚さは、全体にわたって同じでもよいし、一部領域で異なっていてもよい。一部領域の厚さを他領域と異ならせる場合、第1の部分領域A1の放熱を促進するという観点から、第1の部分領域A1近傍に位置する領域の厚さを、第2の部分領域A2近傍に位置する領域よりも厚くすることが好ましい。
抜熱部72Aは、接続部721Aを介して、伝熱絶縁層710Dに接続されている。
【0115】
以上の第4実施形態によれば、画像表示に伴い電源線41およびグランド線42に流れる電流によって表示領域Aが発熱すると、この熱が伝熱絶縁層710Dによって表示領域Aの面方向に伝わり放熱が促進される。したがって、発光部20以外の部材が発熱した場合でも、発光部20、ICチップ30、配線部40等の設計変更を行うことなく、表示領域Aの温度上昇が抑制される。
【0116】
<第4実施形態の変形例>
第4実施形態の変形例としては、以下の形態が挙げられる。
伝熱絶縁層710Dを第1の透明基材10の全面に設けたが、第1の透明基材10上の発熱量が多い領域のみを覆うように設け、それ以外の領域に絶縁層14を設けてもよい。発熱量が多い領域としては、電源線41およびグランド線42や、発光部20とICチップ30とを接続する線が挙げられる。
伝熱絶縁層710Dは透明性が高い方が好ましいが、発光部20やICチップ30等の透明でない部材上の領域においては、透明でなくてもよい。
抜熱部72Aを設けなくてもよい。
【0117】
<第5実施形態>
第1実施形態の透明表示装置1Aでは、第1の透明基材10上に、発光部20、ICチップ30、配線部40および伝熱部71A等の構成要素を配置した。これに対し、
図23に示す第5実施形態の透明表示装置1Eは、これらの構成要素を第1の透明基材10および第2の透明基材10Eで挟んでいる。これにより、発光部20、ICチップ30、配線部40および伝熱部71Aといった構成要素を、第1,第2の透明基材10,10E間に封入して保護できる。
【0118】
第2の透明基材10Eの材質および厚み等は、第1の透明基材10について上述したものと同様である。また、第1の透明基材10と第2の透明基材10Eとでは、材質、厚み等に関して同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0119】
<第5実施形態の変形例>
第2~第4実施形態の透明表示装置1B,1C,1Dや、第1~第4実施形態の変形例の構成においても、発光部20等の構成要素を第1の透明基材10および第2の透明基材10Eで挟んでもよい。
【0120】
<第6実施形態>
第1~第5実施形態の透明表示装置1A,1B,1C,1D,1Eや、第1~第5実施形態の変形例の構成は、接着シート等の取付部材によってガラス板や移動体等に装着して使用できる。また、2つのガラス板間に封入して透明表示装置付き合わせガラスとして使用することもできる。そのようなガラス板は透明のものが好ましい。
【0121】
図24に示す第6実施形態の透明表示装置付き合わせガラス100Fは、第5実施形態の透明表示装置1Eと、透明表示装置1Eを挟持する第1のガラス板101Fおよび第2のガラス板102Fとを備えている。透明表示装置付き合わせガラス100Fは、透明表示装置1Eを第1のガラス板101F上に載置し、さらに第2のガラス板102Fを重ね、接着させることによって製造できる。
【0122】
第1,第2のガラス板101F,102Fとしては、無機ガラスおよび有機ガラスのいずれでもよい。無機ガラスとしては、例えばソーダライムガラス等が挙げられる。また、無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスのいずれでもよい。一方、有機ガラスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の透明樹脂が挙げられる。また、第1,第2のガラス板101F,102Fの少なくとも一方を、2枚以上のガラスを使用して得られた合わせガラスまたは複層ガラスとすることもできる。第1,第2のガラス板101F,102Fのいずれについても、厚さは0.5mm以上5mm以下であると好ましく、1.5mm以上2.5mm以下であるとより好ましい。なお、第1,第2のガラス板101F,102Fの材質、構成、および厚さはそれぞれ、同じでもよく異なっていてもよい。
【0123】
透明表示装置付き合わせガラス100Fの製造においては、透明表示装置1Eと第1のガラス板101Fとの間に第1の接着層103Fを配置し、透明表示装置1Eと第2のガラス板102Fとの間に第2の接着層104Fを配置できる。これにより、透明表示装置付き合わせガラス100F内で透明表示装置1Eを安定させられる。第1,第2の接着層103F,104Fの材料は、シクロオレフィンコポリマー(COP)、酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)等を主成分とする中間膜が挙げられる。第1,第2の接着層103F,104Fは、透明表示装置1Eの全面または一部に設けられる。
なお、第1,第2の接着層103F,104Fのうち少なくとも一方を設けなくてもよい。
【0124】
透明表示装置付き合わせガラス100Fは、平面状のものに限られず、曲面を有していてもよい。すなわち、透明表示装置付き合わせガラス100Fは湾曲していてもよい。この湾曲は一方向でもよいし、第1の方向とそれに直交する第2の方向との2方向で湾曲されていてもよい。
【0125】
湾曲した透明表示装置付き合わせガラス100Fを得る場合、湾曲処理された第1のガラス板101F上に透明表示装置1Eを載置し、湾曲処理された第2のガラス板102Fを重ねた後、あるいは、
図24に示す位置に第1,第2の接着層103F,104Fをさらに配置した後、加熱、加圧処理する。これにより、湾曲した透明表示装置付き合わせガラス100Fを得られる。なお、第2のガラス板102Fが第1のガラス板101Fに対し、板厚が十分に薄い場合、第2のガラス板102Fを予め湾曲処理しなくてもよい。
【0126】
透明表示装置付き合わせガラス100Fは、視認距離(観察者から表示画面までの距離)が、例えば0.25m以上4.0m以下となるような用途で好適に使用できる。具体的な用途としては、移動体としての自動車、鉄道車両等の車両、飛行機、建物、透明な筐体等における使用が挙げられる。より具体的には、透明表示装置付き合わせガラス100Fは、自動車におけるフロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラス、電車等のその他の交通機関における窓ガラス、中刷り広告等、店舗のショーウィンドウ、ショーケース、扉付の陳列棚の窓等の少なくとも一部に組み込んで使用できる。
【0127】
このように、透明表示装置付き合わせガラス100Fは、視認距離が比較的近い用途で用いても、上述のように微小サイズのLEDを用い、透過率の低い領域を所定の割合としているため、表示能を維持しつつ、背面側の像を視認できる透明性を確保できる。
【0128】
<第7実施形態>
図25に示す第7実施形態の透明表示装置付き合わせガラス100Gは、上記関連技術の透明表示装置1の第1の透明基材10の一面に後述する第1の伝熱接着層74Gが設けられた透明表示装置1Gと、透明表示装置1Gの発光部20等の構成要素を第1の透明基材10とで挟む第2の透明基材10Eと、透明表示装置1Gおよび第2の透明基材10Eを挟持する第1のガラス板101Fおよび第2のガラス板102Fと、放熱促進部70Gとを備えている。
【0129】
放熱促進部70Gは、第1の透明基材10と第1のガラス板101Fとを接着する第1の伝熱接着層74Gと、第2の透明基材10Eと第2のガラス板102Fとを接着する第2の伝熱接着層75Gと、抜熱部72Aとを備えている。第1,第2の伝熱接着層74G,75Gは、第6実施形態の第1、第2の接着層103F,104Fを製造する際に、
図25の部分拡大図に示すように、伝熱性のフィラー740G,750Gを分散させることにより得られる。このような伝熱性のフィラー740G,750Gとしては、銅、アルミニウム、銀、鉄、炭化タングステン等の金属粒子、カーボン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーバイド、ダイヤモンド等の炭素材料、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、アルミナシリケート、ガラスフィラー、炭化シリコン、窒化シリコン、窒化ホウ素、酸化亜鉛(ZnO)等の絶縁性のセラミックス材料が挙げられる。フィラー740G,750Gの第1,第2の伝熱接着層74G,75Gにおける濃度としては、互いを接触させて伝熱性を高めるという観点から、パーコレーション濃度以上であることが好ましい。フィラー740G,750Gの形状としては、互いの接触面積を確保するという観点から、繊維状やワイヤー状等の異方性を有する形状が好ましい。フィラー740G,750Gの濃度は、全体にわたって同じでもよいし、一部領域で異なっていてもよい。一部領域の濃度を他領域と異ならせる場合、第1の部分領域A1の放熱を促進するという観点から、第1の部分領域A1近傍に位置する領域の濃度を、第2の部分領域A2近傍に位置する領域よりも高くすることが好ましい。
また、フィラー740G,750Gにダイヤモンド以外のカーボン系の材料を用いる場合、伝熱線710Aと同様に、金属や電解質に加えるとイオン化するような材料と混合することもできる。
また、フィラー740G,750Gは、第1、第2の伝熱接着層74G,75Gの中に利用される樹脂材料と屈折率差が0.1以内であると好ましく、0.05以内であるとより好ましく、0.01以内であるとさらに好ましい。
第1,第2の伝熱接着層74G,75Gの全光線透過率は、40%以上であると好ましく、50%以上であるとより好ましく、60%以上であるとさらに好ましい。
抜熱部72Aは、接続部721Aを介して、第1,第2の伝熱接着層74G,75Gに接続されている。
【0130】
以上の第7実施形態によれば、関連技術の透明表示装置1の設計変更を行うことなく、表示領域Aの放熱を促進できる。
【0131】
<第7実施形態の変形例>
フィラー740Gとフィラー750Gとを異なる材料で構成してもよい。
例えばフィラー740Gを酸化物で構成した場合、展性を有する金属製のフィラーをフィラー740G間に挟んで、フィラー740Gと金属製のフィラーとの接触面積を確保するようにしてもよい。
【0132】
例えば、第1の伝熱接着層74Gに分散させるフィラーとして、表示領域Aの熱によって第1の伝熱接着層74Gが温められたときに、当該第1の伝熱接着層74Gの形状を維持するようなフィラーを、上述の伝熱性のフィラー740Gとともに、または、その代わりに採用してもよい。このような形状を維持するフィラーとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等が挙げられる。
第1の伝熱接着層74Gまたは第2の伝熱接着層75Gとして、イオノマーや主成分とした中間膜や、EVAに熱架橋剤を添加した中間膜に、上述のフィラーを分散させたものを採用してもよい。このような構成にすれば、第1の伝熱接着層74Gまたは第2の伝熱接着層75Gの耐熱性を向上できる。
第1の伝熱接着層74Gまたは第2の伝熱接着層75Gの代わりに、伝熱性のフィラーを含まない第6実施形態の第1の接着層103Fと同様の接着層を用いてもよい。
第1の伝熱接着層74Gまたは第2の伝熱接着層75Gを抜熱部72Aに接続しなくてもよいし、抜熱部72Aを設けなくてもよい。
透明表示装置付き合わせガラス100Gを、第6実施形態で言及したような湾曲した形状にしてもよい。
第1,第2,第4実施形態の伝熱部71A,71B,71D、第3実施形態の伝熱配線71Cを有する透明表示装置1A,1B,1C,1Dと、第1の伝熱接着層74Gとを用いて、透明表示装置1Gと同様の透明表示装置を形成してもよい。
上記透明表示装置1Gと同様の透明表示装置と、第2の透明基材10Eと、第1,第2のガラス板101F,102Fと、第2の伝熱接着層75Gとを用いて、透明表示装置付き合わせガラス100Gと同様の透明表示装置付き合わせガラスを形成してもよい。
【0133】
<第8実施形態>
図26に示す第8実施形態の移動体としての自動車110Hは、湾曲した透明表示装置付き合わせガラスをフロントガラス100Hとして備えている。フロントガラス100Hの構成要素は、
図24に示す透明表示装置付き合わせガラス100Fと同じである。フロントガラス100Hは、
図27に示すように、当該フロントガラス100Hの外周部に設けられた隠蔽層101Hを備えている。隠蔽層101Hは、車内側に設けられ、車外から車内を隠す機能を有している。また、透明表示装置1Eは、フロントガラス100Hよりも小さく形成されており、車内側から見て左下側の一部の範囲に封入されている。透明表示装置1Eが設けられる範囲は、フロントガラス100Hの面積の50%以下、30%以下でもあってよい。透明表示装置1Eの第2の透明基材10E以外の構成と、第1のガラス板101Fと、第1の接着層103Fとは、透明表示装置付きガラス板を構成する。
このような自動車110Hにおいて、透明表示装置1Eの伝熱部71Aに接続された抜熱部72Aは、隠蔽層101Hに隠れるように車内側に配置されることが好ましい。このような構成にすれば、抜熱部72Aが車外から見えることによる自動車110Hの意匠性の低下を抑制できる。
【0134】
以上の第8実施形態によれば、表示領域Aの温度上昇を抑制でき、この温度上昇に伴う第1,第2の接着層103F,104Fの劣化を抑制できる。
【0135】
<第8実施形態の変形例>
透明表示装置1Eの大きさは、フロントガラス100Hとほぼ同じ大きさでもよい。
抜熱部72Aを隠蔽層101Hで隠すように配置したが、放熱フィン等の抜熱部72Aを設けずに、自動車110Hにおける透明表示装置1Eが組みつけられるボディ(移動体の本体部)111Hを抜熱部として機能させ、
図26の部分拡大図に二点鎖線で示すように、ボディ111Hと伝熱線710Aとを接続部721Aを介して接続してもよい。この場合、透明表示装置1Eの第2の透明基材10E以外の構成と、第1のガラス板101Fと、第1の接着層103Fとは、透明表示装置付きガラス板を構成する。
第5,第7実施形態の透明表示装置付き合わせガラス100F,100Gを自動車110Hのフロントガラス100Hとして採用してもよい。
第7実施形態の透明表示装置付き合わせガラス100Gを自動車110Hのフロントガラス100Hとして採用する場合であって、透明表示装置1が
図27に示すようにフロントガラス100Hの一部の範囲に封入されている場合、第1,第2の伝熱接着層74G,75Gの両方がフロントガラス100Hとほぼ同じ大きさでもよい。あるいは、二点鎖線で示すように、例えば第1の伝熱接着層74Gがフロントガラス100Hとほぼ同じ大きさであり、第2の伝熱接着層75Gが透明表示装置1よりも若干大きく大きさでもよい。
自動車110Hのサイドガラス等の1枚のガラス板で構成される部材に、透明表示装置1Eを設けて透明表示装置付きガラス板を構成してもよい。この場合、抜熱部として機能するボディ111Hと伝熱線710Aとを接続部721Aを介して接続してもよい。また、ガラス板に隠蔽層が設けられている場合、抜熱部72Aを隠蔽層に隠れるように車内側に配置してもよい。
【0136】
<その他の変形例>
上述の第1~第8の実施形態および変形例を、可能な範囲で必要に応じて組み合わせてもよい。
【0137】
この出願は、2018年9月4日に出願された日本出願特願2018-165127及び2019年3月22日に出願された日本出願特願2019-054427を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0138】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1G…透明表示装置
10…第1の透明基材
10E…第2の透明基材
11A…貫通孔
20…発光部
30…ICチップ
40…配線部
41…電源線
42…グランド線
70A,70B,70C,70D,70G…放熱促進部
71A,71B,71D…伝熱部
71C…伝熱配線
72A…抜熱部
73A…伝熱材
74G…第1の伝熱接着層
75G…第2の伝熱接着層
100F,100G…透明表示装置付き合わせガラス
101F…第1のガラス板
101H…隠蔽層
102F…第2のガラス板
110H…自動車(移動体)
111H…ボディ(移動体の本体部)
710A,716A,717A…伝熱線
710B,711B,712B,715B…伝熱層
710D…伝熱絶縁層
715A…絶縁部
716B…絶縁性フィラー
740G,750G…フィラー
A…表示領域。