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特許7351315金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体
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  • 特許-金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体 図1
  • 特許-金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体 図2
  • 特許-金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体 図3
  • 特許-金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体 図4
  • 特許-金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体 図5
  • 特許-金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体 図6
  • 特許-金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20230920BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230920BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20230920BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B32B15/08 105A
B32B5/28 Z
B32B38/18 D
H05K3/00 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020565556
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2019000741
(87)【国際公開番号】W WO2020144861
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 貴代
(72)【発明者】
【氏名】尾瀬 昌久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 広明
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭63-034019(JP,B2)
【文献】特開2019-089978(JP,A)
【文献】特開平11-034221(JP,A)
【文献】特開平04-279081(JP,A)
【文献】特開平05-320382(JP,A)
【文献】特開2020-070386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
H05K 3/00
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程、
(2-1)前記工程(1)で研磨された面に金属箔を積層して金属張り積層板を形成する工程、
を有する、金属張り積層板の製造方法であって、
前記プリプレグの硬化物が、内部の硬化物の表面が研磨されていない金属張り積層板の金属箔をエッチング除去して得られたものである、金属張り積層板の製造方法
【請求項2】
(1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程、
(2-2)前記工程(1)で研磨された面に、金属箔及び熱硬化性樹脂フィルムを又は金属箔付き熱硬化性樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂フィルムが前記研磨された面側となるように積層して金属張り積層板を形成する工程、
を有する、金属張り積層板の製造方法であって、
前記プリプレグの硬化物が、内部の硬化物の表面が研磨されていない金属張り積層板の金属箔をエッチング除去して得られたものである、金属張り積層板の製造方法
【請求項3】
(1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程、
(2-1)前記工程(1)で研磨された面に金属箔を積層して金属張り積層板を形成する工程、
を有する、金属張り積層板の製造方法であって、
前記プリプレグの硬化物の最も面積の大きい面のサイズが、縦200mm~1,300mm×横200mm~1,300mmであり、且つ、前記プリプレグの硬化物の端部から70mm以内の範囲における少なくとも一部の厚みが硬化物の中央部の厚みに比べて薄い、金属張り積層板の製造方法。
【請求項4】
(1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程、
(2-2)前記工程(1)で研磨された面に、金属箔及び熱硬化性樹脂フィルムを又は金属箔付き熱硬化性樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂フィルムが前記研磨された面側となるように積層して金属張り積層板を形成する工程、
を有する、金属張り積層板の製造方法であって、
前記プリプレグの硬化物の最も面積の大きい面のサイズが、縦200mm~1,300mm×横200mm~1,300mmであり、且つ、前記プリプレグの硬化物の端部から70mm以内の範囲における少なくとも一部の厚みが硬化物の中央部の厚みに比べて薄い、金属張り積層板の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、前記プリプレグの硬化物の両面を研磨する、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属張り積層板の製造方法。
【請求項6】
前記工程(1)における研磨により、前記プリプレグの硬化物の厚みを略均一化する、請求項1~のいずれか1項に記載の金属張り積層板の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)において、前記プリプレグの硬化物の最も薄い部分の厚みに揃うまで面全体を研磨する、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属張り積層板の製造方法。
【請求項8】
前記工程(1)において、(i)CMP(Chemical mechanical polishing)法、(ii)フライカット、グラインド、サンドブラスト、ベルト研磨、スクラブ研磨等の機械研磨、(iii)過硫酸塩、過酸化水素-硫酸混合物、無機酸、有機酸等を使用する化学研磨、からなる群から選択される方法によって研磨する、請求項1~7のいずれか1項に記載の金属張り積層板の製造方法。
【請求項9】
得られる金属張り積層板の厚みの最大値と最小値の差が20μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の金属張り積層板の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法により得られる金属張り積層板。
【請求項11】
(a)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物であって、該硬化物の少なくとも一方の面が研磨された硬化物、(b)基材を含まない熱硬化性樹脂組成物層、及び(c)金属箔、を含有する金属張り積層板。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の金属張り積層板を含有してなるプリント配線板。
【請求項13】
請求項12に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【請求項14】
請求項10又は11に記載の金属張り積層板を含有してなる、コアレス基板形成用支持体。
【請求項15】
請求項10又は11に記載の金属張り積層板を含有してなる、半導体再配線層形成用支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張り積層板の製造方法、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度化に伴い、小型化、軽量化及び多機能化が一段と進み、これに伴い、プリント配線板、及びLSI(Large Scale Integration)を実装する半導体パッケージにおいても高密度化及び高い信頼性が要求されている。それに起因して、金属張り積層板の板厚精度の向上の要求が厳しくなりつつある。
複数枚のプリプレグを金属箔で挟み込んでプレス成形等によって積層成形して得られる金属張り積層板はプリント配線板のコア基板として用いられる(例えば特許文献1の段落[0057]参照)が、プリプレグ内に存在するガラスクロス等の基材の影響等によって、プレス成型後に表面うねりが発生する。従来はこの程度の表面うねりは許容範囲であったが、さらなる高密度化及び高信頼性確保のため、金属張り積層板の板厚精度をより高い水準で達成することが求められる傾向にあり、当該表面うねりによる板厚精度の低下の問題を解消する必要性が出てきた。
また、板厚精度は樹脂組成物の流動性にも依存する傾向にあり、図7に示すように、プレス成形等の積層成形をして得られる金属張り積層板(所定サイズにカットされる前の、いわゆるプレスパネル)の端部における樹脂組成物層は薄くなるのが通常であり、板厚精度の観点からは、樹脂組成物層が薄くなった部位は破棄せざるを得なかった。一方で、樹脂組成物の流動性を低減するために無機充填材を高充填する方法等が知られているが、板厚精度の改善効果には限界があり、且つ、無機充填材の高充填が必須の場合にはドリル加工性等の加工性の大幅な低下を免れないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-056371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の課題は、板厚精度に優れた金属張り積層板及びその製造方法を提供することにある。さらに本発明の課題は、前記金属張り積層板に回路形成してなるプリント配線板及び該プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ、並びに前記金属張り積層板を含有してなるコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、プレス成型して得られた金属張り積層板の金属箔をエッチング除去する等の方法によって得られるプリプレグの硬化物について、少なくとも一方の面を研磨することによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
【0006】
本発明は、下記[1]~[15]に関する。
[1](1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程、
(2-1)前記工程(1)で研磨された面に金属箔を積層して金属張り積層板を形成する工程、
を有する、金属張り積層板の製造方法。
[2](1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程、
(2-2)前記工程(1)で研磨された面に、金属箔及び熱硬化性樹脂フィルムを又は金属箔付き熱硬化性樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂フィルムが前記研磨された面側となるように積層して金属張り積層板を形成する工程、
を有する、金属張り積層板の製造方法。
[3]前記工程(1)において、前記プリプレグの硬化物の両面を研磨する、上記[1]又は[2]に記載の金属張り積層板の製造方法。
[4]前記工程(1)における研磨により、前記プリプレグの硬化物の厚みを略均一化する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[5]前記プリプレグの硬化物が、内部の硬化物の表面が研磨されていない金属張り積層板の金属箔をエッチング除去して得られたものである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[6]前記プリプレグの硬化物の最も面積の大きい面のサイズが、縦200mm~1,300mm×横200mm~1,300mmであり、且つ、前記プリプレグの硬化物の端部から70mm以内の範囲における少なくとも一部の厚みが硬化物の中央部の厚みに比べて薄い、上記[1]~[5]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[7]前記工程(1)において、前記プリプレグの硬化物の最も薄い部分の厚みに揃うまで面全体を研磨する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[8]前記工程(1)において、(i)CMP(Chemical mechanical polishing)法、(ii)フライカット、グラインド、サンドブラスト、ベルト研磨、スクラブ研磨等の機械研磨、(iii)過硫酸塩、過酸化水素-硫酸混合物、無機酸、有機酸等を使用する化学研磨、からなる群から選択される方法によって研磨する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[9]得られる金属張り積層板の厚みの最大値と最小値の差が20μm以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法により得られる金属張り積層板。
[11](a)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物であって、該硬化物の少なくとも一方の面が研磨された硬化物、(b)基材を含まない熱硬化性樹脂組成物層、及び(c)金属箔、を含有する金属張り積層板。
[12]上記[10]又は[11]に記載の金属張り積層板を含有してなるプリント配線板。
[13]上記[12]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
[14]上記[10]又は[11]に記載の金属張り積層板を含有してなる、コアレス基板形成用支持体。
[15]上記[10]又は[11]に記載の金属張り積層板を含有してなる、半導体再配線層形成用支持体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、板厚精度に優れた金属張り積層板及びその製造方法を提供することができる。また、前記金属張り積層板に回路形成してなるプリント配線板及び該プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ、並びに前記金属張り積層板を含有してなるコアレス基板形成用支持体及び半導体再配線層形成用支持体を提供することができる。
本発明の方法によれば、無機充填材を高充填せずとも板厚精度に優れた金属張り積層板が得られるため、加工性が良好な金属張り積層板とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の製造方法の実施態様の一例を示す概念図である。
図2】本発明の製造方法の実施態様の一例を示す概念図である。
図3】本発明のコアレス基板形成用支持体を用いたコアレス基板の製造工程の一例を示す概念図である。
図4】実施例1で使用した研磨前の積層体の表面について、高精度3次元表面形状粗さ測定システム(Veeco Instruments社製、Wyko NT9100)を用いて表面粗さ(Ra)を測定した結果を示す図である。
図5】実施例1で得た研磨後のプリプレグの硬化物の表面について、高精度3次元表面形状粗さ測定システム(Veeco Instruments社製、Wyko NT9100)を用いて表面粗さ(Ra)を測定した結果を示す図である。
図6】実施例1で得た銅張積層板Aの断面のデジタルマイクロスコープ画像である。
図7】プレス成形して金属張り積層板(プレスパネル)を製造する際に、樹脂組成物層の端部の厚みが薄くなる様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0010】
[金属張り積層板の製造方法]
本発明の金属張り積層板の製造方法の一態様は、
(1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程[以下、工程(1)と称することがある]、
(2-1)前記工程(1)で研磨された面に金属箔を積層して金属張り積層板を形成する工程[以下、工程(2-1)と称することがある]、
を有する、金属張り積層板の製造方法である。
【0011】
また、本発明の金属張り積層板の製造方法の別の一態様は、
(1)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物の少なくとも一方の面を研磨する工程、
(2-2)前記工程(1)で研磨された面に、金属箔及び熱硬化性樹脂フィルムを又は金属箔付き熱硬化性樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂フィルムが前記研磨された面側となるように積層して金属張り積層板を形成する工程[以下、工程(2-2)と称することがある]、
を有する、金属張り積層板の製造方法である。
以下、必要に応じて図1又は図2を参照しながら、前記工程(1)から順に詳述する。
【0012】
<工程(1)>
工程(1)は、熱硬化性樹脂組成物6及び基材7を含有してなるプリプレグの硬化物1の少なくとも一方の面を研磨する工程である。ここで本発明において、プリプレグの硬化物とは、プリプレグが含有する熱硬化性樹脂組成物がC-ステージ化された状態のものを言い、熱硬化性樹脂組成物がB-ステージ化された状態のものは含まれない。また、「プリプレグの硬化物1の少なくとも一方の面」とは、プリプレグの硬化物1において、最も面積の大きい2面のうちの少なくとも一方の面を意味し、厚み方向の面(横の面)は含まれない。但し、「プリプレグの硬化物1の少なくとも一方の面」に加えて、厚み方向の面(横の面)を研磨することを否定するものではない。
工程(1)で使用するプリプレグの硬化物1は、内部の硬化物の表面が研磨されていない金属張り積層板の金属箔をエッチング除去することによって得ることができる。換言すると、1枚又は複数枚のプリプレグの片面又は両面に金属箔を配置し、プレス成形等の積層成形をして得られる金属張り積層板は表面うねりが生じており、板厚精度が十分ではないため、当該金属張り積層板から金属箔をエッチング除去し、当該工程(1)を経ることによって、表面うねりを解消し、ひいては高い板厚精度を有する金属張り積層板を形成することに繋がる。
ここで、表面うねりとは、表面粗さより大きい間隔で繰り返される起伏のことである。本発明では、高精度3次元表面形状粗さ測定システムを用いて実施例に記載の条件にて表面観察した図4が示すように、X軸:95μm及びY軸:95μmという広い範囲(但し、場所は任意である。)において表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が1.0μm以下となる箇所と1.0μm超となる箇所とを有するとき、表面うねりが大きいと称し、この場合、板厚精度が低いこととなる。該表面粗さ(Ra)が1.0μm超となる箇所の表面粗さが大きい程(例えば、1.5μm以上、2.0μm以上等)、表面うねりが大きいと言える。本発明では表面うねりが解消されているため、前記高精度3次元表面形状粗さ測定システムを用いて表面粗さを観察すると、プリプレグの硬化物の表面全範囲において表面粗さが1.0μm以下となり、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.8μm以下となる。
【0013】
内部の硬化物の表面が研磨されていない金属張り積層板の金属箔をエッチング除去する方法に特に制限はなく、プリント配線板の製造に用いられる金属張り積層板の金属箔の通常のエッチング除去方法を採用することができる。例えば、塩化第二鉄液、過硫酸アンモニウム等を用いて金属箔をエッチング除去できる。
なお、内部の硬化物の表面が研磨されていない金属張り積層板としては、市販されている金属張り積層板を用いることもできる、公知の方法で製造することもできる。製造する方法としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグ1枚の又は複数枚(例えば2~20枚)を重ねたものの片面又は両面に金属箔を配置し、積層成形して得られる硬化物を使用することもできる。前記熱硬化性樹脂組成物及び前記基材については後述する。前記積層成形条件としては、特に制限されるものではないが、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用して、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間の条件が挙げられる。
【0014】
内部の硬化物の表面が研磨されていない金属張り積層板の金属箔としては、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔等が挙げられ、これらの中でも銅箔が好ましい。金属箔の厚みに特に制限はないが、例えば、0.5~150μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましく、5~30μmが特に好ましく、7~18μmが最も好ましい。
【0015】
研磨する面2は、硬化物の少なくとも一方の面であればよいが、十分に表面うねりを解消し、板厚精度を高いものとする観点からは、硬化物の両面を研磨することが好ましい。ここで、「硬化物の少なくとも一方の面」とは、硬化物において、最も面積の大きい2面のうちの少なくとも一方の面を意味し、厚み方向の面(横の面)は含まれない。また、「硬化物の両面」とは、硬化物において、最も面積の大きい2面を意味し、厚み方向の面(横の面)は含まれない。但し、「硬化物の両面」に加えて、厚み方向の面(横の面)を研磨することを否定するものではない。
なお、十分に表面うねりを解消し、板厚精度を高いものとする観点から、研磨対象の面全体を研磨することが好ましい。
前記プリプレグの硬化物1のサイズに特に制限はないが、プレス成形して得られる金属張り積層板(つまり、所定サイズにカットされる前の、いわゆるプレスパネル)サイズとして、最も面積の大きい面のサイズが、縦200mm~1,300mm×横200mm~1,300mmであることがより好ましい。さらに、前記プリプレグの硬化物は、例えば、前記プリプレグの硬化物の端部から70mm以内の範囲(又は前記端部から50mm以内の範囲)における少なくとも一部の厚みが硬化物の中央部3の厚みに比べて薄い部位4があっても使用することができる。ここで、前記「プリプレグの硬化物の端部から70mm以内の範囲」とは、プリプレグの硬化物の任意の端部から硬化物の内側に向かって、端部に対して垂直に測定したときに70mm以内の範囲であることを意味する。
【0016】
硬化物の面を研磨する方法に特に制限はないが、(i)CMP(Chemical mechanical polishing)法、(ii)フライカット、グラインド、サンドブラスト、ベルト研磨、スクラブ研磨等の機械研磨、(iii)過硫酸塩、過酸化水素-硫酸混合物、無機酸、有機酸等を使用する化学研磨、からなる群から選択される方法によって研磨することが好ましい。これらの中でも、CMP法、フライカット、グラインドによる研磨がより好ましい。研磨する方法は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
研磨により、研磨された硬化物の面の表面うねりは低減され、前記面の表面粗さ(Ra)は好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.9μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下となる。なお、本発明において、表面粗さ(Ra)は、触針式表面形状測定器(Bruker Corporation社製、商品名「DektakXT」)を用いて測定することができる。
前記CMP法は、アルカリ性の研磨溶液による化学的エッチング作用を伴う機械的研磨である。CMP法を利用する場合、特に制限されるものではないが、例えば、「太田真朗、外2名、''酸化膜CMP用光学式終点検出モニタ''、[online]、エバラ時報、No.207(2005-4)、[平成30年6月12日検索]、インターネット、<URL:https://www.ebara.co.jp/about/technologies/abstract/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/04/25/207_P25.pdf>」に記載されたCMP装置等を利用することができる。また、前記機械研磨として、例えばフライカットは、特に制限されるものではないが、ダイヤモンドバイトによる研削装置、例えば、300mmウェハ対応のオートマチックサーフェースプレーナ(株式会社ディスコ製、商品名「DAS8930」)、グラインダ(株式会社ディスコ製、商品名「DFG8540」「DFG8560」)等を使用して、物理的に研削(研磨)する方法である。
【0017】
当該工程(1)によって、プリプレグの硬化物の表面うねりを解消し、且つ板厚精度を高めることができる。該硬化物は厚みが略均一化されているといえる。ここで、略均一化とは、完全に厚みが均一化されている態様と共に、完全ではなくても、表面うねりが前述の範囲となる程度に厚みが均一化されている態様も含まれる。
また、図1及び図2に示すように、前記研磨は、前記プリプレグの硬化物中の最も薄い部位5の厚みに揃うまで面全体を研磨することが好ましい。ここで、「前記プリプレグの硬化物中の最も薄い部位5の厚みに揃う」とは、プリプレグ全体の厚みが略均一化される程度に揃っていることを意味する。このように研磨することによって硬化物全体の厚みが略均一化されるため、硬化物の厚みが薄くなっていた部位を破棄する必要がなくなる。研磨の際、プリプレグ中の基材まで研磨しても特に問題はないが、基材を研磨しない程度に調整しながら研磨してもよい。
【0018】
(熱硬化性樹脂組成物)
前記プリプレグが含有する熱硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂を含有していれば特に制限されるものではない。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。また、特にこれらに制限されず、公知の熱硬化性樹脂を使用できる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、エポキシ樹脂、不飽和イミド樹脂、変性シリコーン樹脂が好ましい。
【0019】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中から、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂を選択してもよく、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂を選択してもよい。
【0020】
前記不飽和イミド樹脂としては、例えば、マレイミド樹脂、マレイミド樹脂とモノアミン化合物との付加反応物、マレイミド樹脂とモノアミン化合物とジアミン化合物との反応物等が挙げられる。前記マレイミド化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。これらの中から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンを選択してもよい。
上記モノアミン化合物としては、酸性置換基(例えば、水酸基、カルボキシ基等)を有するモノアミン化合物が好ましく、具体的には、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等が挙げられる。
上記ジアミン化合物としては、少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物が好ましく、2つのアミノ基の間に少なくとも2個のベンゼン環を直鎖状に有するジアミン化合物がより好ましく、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン等が挙げられる。
前記不飽和イミド樹脂としては、例えば、特開2018-165340号公報等に記載のマレイミド化合物を使用することもできる。
【0021】
熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂の他に、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、有機充填材、カップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、揺変性付与剤、増粘剤、チキソ性付与剤、可撓性材料、界面活性剤及び光重合開始材等から選択される少なくとも1つを含有する態様が好ましい。特に、無機充填材については、本発明ではこれを高充填しなくとも板厚精度を高めることができるため、該無機充填材の含有量を例えば10~60体積%にすることができ、20~60体積%にしてもよく、30~60体積%にしてもよく、当該数値範囲においてさらに上限値を57体積%とすることもでき、55体積%とすることもできる。但し、無機充填材を高充填する必要がある場合には、本発明においては、無機充填材の含有量が60体積%を超えることを必ずしも否定はせず、例えば前記含有量の数値範囲の上限値を70体積%としてもよいし、80体積%としてもよい。
【0022】
また、例えば国際公開第2012/099133号に記載されている、変性シリコーン化合物(変性シリコーン樹脂)、必要に応じてさらに、他の熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填材、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等からなる群から選択される少なくとも1種を含有する熱硬化性樹脂組成物等も用いることができる。
前記変性シリコーン化合物としては、両末端アミノ変性シリコーン化合物が好ましく、具体的には、(A)下記一般式(1)に示すシロキサンジアミン、(B)分子構中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物、(C)下記一般式(2)に示す酸性置換基を有するアミン化合物を反応させてなる両末端アミノ変性シリコーン化合物であり、詳細は国際公開第2012/099133号に記載の通りである。
【化1】

[式(1)中、複数のRは、それぞれ独立にアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、互いに同じでも異なっていてもよく、複数のRは、それぞれ独立にアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、互いに同じでも異なっていてもよく、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示す。nは2~50の整数を示す。]
【化2】

[式(2)中、Rは複数ある場合は各々独立に、水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を示し、Rは複数ある場合は各々独立に水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子を示す。xは1~5の整数、yは0~4の整数であり、x+y=5である。]
【0023】
(基材)
前記プリプレグが含有する基材としては、シート状補強基材が用いられ、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。基材の材質としては、紙、コットンリンター等の天然繊維;ガラス繊維及びアスベスト等の無機繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、テトラフルオロエチレン及びアクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、難燃性の観点から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いた織布又は短繊維を有機バインダーで接着したガラス織布;ガラス繊維とセルロース繊維とを混抄したもの等が挙げられる。より好ましくは、Eガラスを使用したガラス織布である。
これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせることもできる。
基材の厚さは、例えば、0.01~0.5mmであってもよく、成形性及び高密度配線を可能にする観点から、0.015~0.2mmが好ましく、0.02~0.15mmがより好ましい。これらの基材は、耐熱性、耐湿性、加工性等の観点から、シランカップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したものなどであることが好ましい。
【0024】
(プリプレグ)
前記熱硬化性樹脂組成物を前記基材に含浸した後、加熱処理を施すことによって、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化させたプリプレグが得られる。プリプレグは、プリプレグの取扱い性及びタック性の観点から、これを冷却する冷却工程に供することが好ましい。プリプレグの冷却は、自然放冷によって行ってもよく、送風装置、冷却ロール等の冷却装置を用いて行ってもよい。冷却後のプリプレグの温度は、通常、5~80℃であり、8~50℃が好ましく、10~30℃がより好ましく、室温がさらに好ましい。また、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の固形分換算の含有量は、特に制限されるものではないが、20~90質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましく、50~80質量%がさらに好ましい。プリプレグの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、20~150μmが好ましく、60~120μmがより好ましい。
【0025】
<工程(2-1)及び工程(2-2)>
工程(2-1)は、前記工程(1)で研磨された面に金属箔9を積層して金属張り積層板を形成する工程である。一方、工程(2-2)は、前記工程(1)で研磨された面8に、金属箔9及び熱硬化性樹脂フィルム10を又は金属箔付き熱硬化性樹脂フィルム11を、熱硬化性樹脂フィルム10が研磨された面8側となるように積層して金属張り積層板12を形成する工程である。なお、前記金属箔付き熱硬化性樹脂フィルム11は、金属箔9上に熱硬化性樹脂フィルム10が配置されてなるものである。
工程(1)の後は、工程(2-1)及び工程(2-2)のいずれを選択してもよいが、プリプレグの硬化物を研磨した深さ分の熱硬化性樹脂層を設けることが可能である工程(2-2)を選択することが好ましい。該工程(2-2)を選択することにより、前記工程(1)における研磨の量によらず、プリプレグの厚みを研磨前の厚みに戻すことも可能であり、また、任意の厚みに調整することも可能である。
【0026】
前記金属箔9(金属箔付き熱硬化性樹脂フィルム11の金属箔を含む。)の金属としては、電気絶縁材料用途で用いられるものであれば特に制限されず、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金が好ましく、銅、アルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。
また、前記工程(2-2)で使用する熱硬化性樹脂フィルムの素材としては、前記工程(1)で使用するプリプレグが含有する熱硬化性樹脂組成物と同じであることが好ましい。
【0027】
[金属張り積層板]
本発明は、上記製造方法により得られる金属張り積層板も提供する。
内部の硬化物の厚みが略均一化されているため、本発明の金属張り積層板も厚みが略均一化されており、具体的には、厚みの最大値と最小値の差が20μm以下となり得るものであり、板厚精度に優れている。厚みの最大値と最小値の差は、より優れたものでは10μm以下、さらに優れたものでは5μm以下となる。
ここで、厚みの最大値と最小値の差及びそれらの差は以下の方法に従って測定した値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
<厚みの最大値と最小値の差及びそれらの差の算出方法>
550mm角の金属張り積層板を、50mm角のサイズにカットし、計81個に小片化する。端部及びセンター部を含む17か所のサンプルを選択し、任意4点の厚みをマイクロメータにより計測する。計68点のデータから、板厚の最大値、最小値、及びそれらの差を算出する。
【0028】
また、本発明の製造方法により得られる金属張り積層板は、厚みの標準偏差(σ)が10μm以下となり得るものであり、板厚精度に優れている。該標準偏差(σ)は、より優れたものでは5μm以下、さらに優れたものでは3μm以下となる。なお、厚みの標準偏差(σ)は、例えば、金属張り積層板の任意のn箇所の厚みを測定したときのそれらの厚みをそれぞれT、T、・・・、Tとし、金属張り積層板の平均厚みをTとするとき、下記式からn箇所での標準偏差を求めることができる。
【0029】
【数1】
【0030】
また、本発明の製造方法により得られる金属張り積層板の一態様として、(a)熱硬化性樹脂組成物及び基材を含有してなるプリプレグの硬化物であって、該硬化物の少なくとも一方の面が研磨された硬化物、(b)基材を含まない熱硬化性樹脂組成物層、及び(c)金属箔、を含有する金属張り積層板が挙げられる。特に、前記製造方法における工程(1)及び工程(2-2)を経ることにより当該金属張り積層板を製造することができる。
前記(a)については、特に制限されるものではないが、硬化物の両面が研磨されている態様が好ましい。研磨する方法の好ましい態様としては、前述の通りである。
【0031】
[プリント配線板]
本発明は、前記金属張り積層板を含有してなるプリント配線板も提供する。
より詳細には、本発明のプリント配線板は、金属張り積層板の金属箔に対して回路加工を施すことにより製造することができる。回路加工は、例えば、金属箔表面にレジストパターンを形成後、エッチングにより不要部分の金属箔を除去し、レジストパターンを剥離後、ドリルにより必要なスルーホールを形成し、再度レジストパターンを形成後、スルーホールに導通させるためのメッキを施し、最後にレジストパターンを剥離することにより行うことができる。このようにして得られたプリント配線板の表面にさらに上記の金属張り積層板を前記したのと同様の条件で積層し、さらに、上記と同様にして回路加工して多層プリント配線板とすることができる。この場合、必ずしもスルーホールを形成する必要はなく、ビアホールを形成してもよく、両方を形成することができる。このような多層化は必要枚数行われる。
こうして得られる本発明のプリント配線板も、板厚精度に優れている。
【0032】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板に半導体を搭載してなるものである。本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。本発明のプリント配線板が板厚精度に優れているため、本発明の半導体パッケージは、(1)半導体チップ実装時の歩留まりが向上し、(2)ビルドアップフィルム上又は再配線層上にてL/S=2μm/2μm以下の微細配線形成性が向上し、(3)反り量が低減し、且つ反り量のばらつきが生じ難い、という傾向にある。
【0033】
[コアレス基板形成用支持体]
本発明は、本発明の金属張り積層板を含有してなる、コアレス基板形成用支持体も提供する。該コアレス基板形成用支持体(コア基板)上に、回路パターンを有する絶縁樹脂組成物層を順次積層してビルドアップ層を形成した後、前記支持体を分離することにより、コアレス基板の作製が可能である。本発明のコアレス基板形成用支持体は板厚精度が良好であるため、こうして得られるコアレス基板の反り及び表面うねりを低減することができるため、該コアレス基板の板厚精度向上に適している。
なお、前記ビルドアップ層の形成方法に特に制限はなく、公知の方法を採用できる。図3を参照しながら説明すると、例えば、ビルドアップ層は次の方法によって形成できる。
まず、本発明のコアレス基板形成用支持体(コア基板)13上にプリプレグ14を配置する。なお、前記コアレス基板形成用支持体(コア基板)13上には接着層を配置した上で、プリプレグ14を配置してもよい。その後、プリプレグ14を加熱硬化して絶縁層とする。次いで、ドリル切削方法、又はYAGレーザー、COレーザー等を用いるレーザー加工方法などによってビアホール15を形成した後、必要に応じて表面粗化処理及びデスミア処理を行なう。続いて、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)、モディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等によって回路パターン16を形成する。以上の過程を繰り返すことによって、ビルドアップ層17が形成される。形成したビルドアップ層17を、コアレス基板形成用支持体(コア基板)13から分離することによって、コアレス基板18が得られる。なお、ビルドアップ層17は、支持体(コア基板)13の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0034】
[半導体再配線層形成用支持体]
本発明は、本発明の金属張り積層板を含有してなる、半導体再配線層形成用支持体も提供する。前記半導体再配線層とは、はんだボールに繋げる銅配線が設けられる絶縁層のことであり、通常、半導体チップとはんだボールとの間に設けられる絶縁層である。当該半導体再配線層を形成するために、好ましくは半導体再配線層形成用樹脂フィルムが使用されるが、本発明の半導体再配線層形成用支持体は板厚精度が良好であるため、当該半導体再配線層形成用樹脂フィルムの支持体として有効に機能する。
【実施例
【0035】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0036】
[実施例1]
まず、下記の手順に従いプリプレグを作製した。
両末端アミノ変性シリコーン化合物100質量部、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン222質量部及びp-アミノフェノール8.5質量部を反応させて、変性シリコーン化合物含有溶液を得た。次に、該変性シリコーン化合物含有溶液を固形分換算で16質量部、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂16質量部、溶融シリカ〔平均粒子径:0.5μm〕69質量部、イソシアネートマスクイミダゾール0.15質量部を混合し、樹脂分65質量%のワニスを得た。得られたワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、加熱乾燥してプリプレグ(溶融シリカの充填率:50体積%)を得た。
こうして得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その両面に、ロープロタイプ銅箔(厚み12μm、最大高さ粗さ(Rz)約4.0μm、三井金属鉱業株式会社製)を重ね、圧力0.5MPa、温度200~230℃で約2時間加熱加圧成型することによって、両面に銅箔を有する積層板(以下、銅張積層板aと称する。)を得た。
次に、得られた銅張積層板aを用い、銅箔をエッチングで除去して積層体を得た。該積層体の表面について、高精度3次元表面形状粗さ測定システム(Veeco Instruments社製、Wyko NT9100)を用いて下記測定条件にて表面粗さ(Ra)を測定した。その結果を図4に示す。
次に、この積層体の表裏両面(つまり最も面積の大きい2面)をダイヤモンドバイトによる研削装置(300mmウェハ対応のオートマチックサーフェースプレーナ、株式会社ディスコ製、商品名「DAS8930」)を使用して、両面に研磨加工を施し、平坦化処理した。研磨加工後の表面について、高精度3次元表面形状粗さ測定システム(Veeco Instruments社製、Wyko NT9100)を用いて下記測定条件にて表面粗さ(Ra)を測定した。その結果を図5に示す。図4に比べて、図5の方が表面うねりが小さいことを確認できた。
さらに、この平坦化処理した積層体の両面に、前記プリプレグ「GEA-705G」と同一成分の熱硬化性樹脂フィルム(厚み10μm)を配し、さらにその外側に銅箔(厚み12μm)を配し、熱プレスで加熱及び加圧することにより、最外層に回路形成可能な550mm角の銅張り積層板Aを得た。こうして得られた銅張積層板Aの断面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス製、商品名「VHX-5000」)を用いて観察した。その画像を図6に示す。
<高精度3次元表面形状粗さ測定システムの測定条件>
内部レンズ:1倍
外部レンズ:50倍
測定範囲:95μm(Y軸)×95μm(X軸)の範囲で任意の位置
測定深度:10μm
測定方式:垂直走査型干渉方式(VSI方式)
【0037】
上記方法によって得られた銅張積層板について、下記評価方法に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
<評価方法>
(1.銅張積層板の板厚の最大値、最小値及びそれらの差)
各例にて得た銅張り積層板は、湿式ダイヤモンドカッターによって50mm角のサイズにカットし、計81個に小片化した。端部及びセンター部を含む17か所のサンプルを選択し、任意4点の厚みをマイクロメータにより計測した。計68点のデータから、板厚の最大値、最小値、及びそれらの差を算出した。
【0039】
(2.ドリル加工性-折損寿命)
ドリルとしてULFコートドリル「MCW Z699MWU」(φ0.15mm(小径)×φ3.5mm(大径)、ユニオンツール株式会社製、商品名)を用い、回転数:200,000rpm、送り速度:2.0m/分、チップロード:10.0μm/rev、の条件でドリル加工を行った。10,000ヒットさせて評価を行い、折損が生じるまでのヒット数(折損寿命)を求め、これをドリル加工性の指標とした。
【0040】
[比較例1]
実施例1において、銅張積層板a中の積層体の表面を研磨せず、銅張積層板aをそのまま用い、前記方法に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
[参考例1]
実施例1の銅張積層板aの製造において、プリプレグ中の無機充填材の充填率を58体積%へ増加したこと以外は同様にして、銅張積層板bを製造した。無機充填材の充填率を高めたときのドリル加工性を確認するため、該銅張積層板bについて、前記方法に従ってドリル加工性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1より、実施例1で得た銅張積層板Aは、板厚精度が極めて高く、且つ、加工性(ドリル加工性)が良好である。一方、比較例の銅張積層板aは、実施例1で得た銅張積層板Aと比べて、板厚精度が劣る結果となった。
なお、熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の充填率を高くした参考例1の銅張積層板bでは、加工性(ドリル加工性)が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の製造方法により得られる金属張り積層板は板厚精度に優れているため、電子機器用のプリント配線板及び半導体パッケージに有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 プリプレグの硬化物
2 研磨する面
3 硬化物の中央部
4 硬化物の中央部の厚みに比べて薄い部位
5 硬化物中の最も薄い部位
6 熱硬化性樹脂組成物
7 基材
8 工程(1)で研磨された面
9 金属箔
10 熱硬化性樹脂フィルム
11 金属箔付き熱硬化性樹脂フィルム
12 金属張り積層板
13 コアレス基板形成用支持体(コア基板)
14 プリプレグ
15 ビアホール
16 回路パターン
17 ビルドアップ層
18 コアレス基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7