(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】システム及び操作方法
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20230920BHJP
G09B 19/24 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G09B19/24 Z
(21)【出願番号】P 2020091522
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2022-11-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(ACCEL,研究課題名「高速画像処理を用いた知能システムの応用展開」平成28年度)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】黄 守仁
(72)【発明者】
【氏名】山川 雄司
(72)【発明者】
【氏名】石川 正俊
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134116(JP,A)
【文献】特開2009-244428(JP,A)
【文献】特開2020-012858(JP,A)
【文献】特開2011-059219(JP,A)
【文献】特開2017-023223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0369637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
第1の接触部と、センサ部と、第2の接触部とを備え、
前記第1の接触部は、
被操作箇所と接続され、
ユーザの第1の手足と接触することで、前記第1の手足の動きに合わせて前記被操作箇所によって規定される目標位置を可変に構成され、
前記センサ部は、前記目標位置の所定軌道からの誤差を計測するように構成され、
前記第2の接触部は、
誤差感覚提示部を備え、且つ
前記ユーザの前記第1の手足とは異なる第2の手足と接触するように構成され、
前記誤差感覚提示部は、前記誤差に基づいた力覚又は触覚を前記第2の手足に付与することで、前記ユーザに前記誤差を提示するように構成される、
もの。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
ガイド光照射部をさらに備え、
前記ガイド光照射部は、前記センサ部と同軸又は相対的位置が固定され、且つ前記目標位置を示すガイド光を照射可能に構成される、
もの。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシステムにおいて、
前記第1及び第2の手足は、前記ユーザの左右の手であり、
前記第1及び第2の接触部は、前記左右の手でそれぞれ把握可能に構成される、
もの。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のシステムにおいて、
前記誤差に基づいた力覚又は触覚は、前記誤差を表す誤差ベクトルに比例して決定される、
もの。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のシステムにおいて、
前記第1及び第2の手足は、前記ユーザの左右の手又は足であり、
前記誤差に基づいた力覚又は触覚は、前記誤差を表す誤差ベクトルを対称面に関して対称移動させた対称ベクトルに比例して決定され、ここで前記対称面は、前記ユーザの体幹中心から前後に延在する面である、
もの。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のシステムにおいて、
前記誤差に基づいた力覚又は触覚は、人間の感覚提示に適した周波数に変換されて提示される、
もの。
【請求項7】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載のシステムにおいて、
前記センサ部は、外界の情報を撮像可能に構成される撮像部である、
もの。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記目標位置は、前記撮像部によって撮像される画像の中心である、
もの。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか1つに記載のシステムにおいて、
位置調整部をさらに備え、
前記位置調整部は、
前記被操作箇所を、前記ユーザが操作可能な第1の範囲よりも小さい第2の範囲で変位可能で、
前記誤差を補正するように、前記被操作箇所の位置を調整可能に構成される、
もの。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記センサ部の取得レート及び前記位置調整部の駆動レートは、100ヘルツ以上である、
もの。
【請求項11】
システムの操作方法であって、
第1~第4のステップを備え、
前記第1のステップでは、ユーザの第1の手足を前記システムの第1の接触部に接触させるとともに、前記ユーザの第2の手足を前記システムの第2の接触部に接触させ、
前記第2のステップでは、前記第1の接触部に接触している前記第1の手足を動かすことで、前記システムの被操作箇所によって規定される目標位置を移動させ、
前記第3のステップでは、前記目標位置の所定軌道からの誤差を計測し、
前記第4のステップでは、前記誤差に基づいた力覚又は触覚を、前記第2の接触部に接触している前記第2の手足に付与することで、前記ユーザに前記誤差を提示する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム及び操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間が手足を使って所定の動作を伴うタスクを実行する場面は多々存在する。特許文献1にはこのような所定の動作を訓練するために使用される技能訓練装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技能訓練装置は、規定とは異なる動作をした際に、それを情報として報知するものであるため、ユーザが意識的にその情報を読み取らなければならない。したがって、ユーザの年代やモチベーションによっては学習効果が低くなる。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、ユーザの年代やモチベーションによらず、ユーザが効果的に所定の動作を学習することを支援する技術を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、システムであって、第1の接触部と、センサ部と、第2の接触部とを備え、前記第1の接触部は、被操作箇所と接続され、ユーザの第1の手足と接触することで、前記第1の手足の動きに合わせて前記被操作箇所によって規定される目標位置を可変に構成され、前記センサ部は、前記目標位置の所定軌道からの誤差を計測するように構成され、前記第2の接触部は、誤差感覚提示部を備え、且つ前記ユーザの前記第1の手足とは異なる第2の手足と接触するように構成され、前記誤差感覚提示部は、前記誤差に基づいた力覚又は触覚を前記第2の手足に付与することで、前記ユーザに前記誤差を提示するように構成される、ものが提供される。
【0007】
これによれば、ユーザの年代やモチベーションによらず、ユーザが効果的に所定の動作を学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】制御装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】メイン装置4のハードウェア構成を示す概要図である。
【
図5】制御装置3(制御部33)の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】システム1の操作方法を示すアクティビティ図である。
【
図7】画像処理部332が画像処理を行う画像IMの一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.ハードウェア構成
本節では、実施形態に係るシステム1のハードウェア構成について説明する。
【0014】
1.1 システム1
図1及び
図2は、システム1の全体構成を示す概要図である。
図1に示されるように、ユーザUは、システム1を用いて所定の動作の訓練を実施することができる。ここでの訓練とは、健康なユーザUが所定の動作を習得するための訓練でもよいし、怪我をしたユーザUがリハビリを目的とする訓練でもよい。また、
図2に示されるように、システム1は、撮像装置2(センサ部の一例)と、制御装置3と、メイン装置4とを備え、これらが電気的に接続されたシステムである。
【0015】
1.2 撮像装置2
撮像装置2は、外界の情報を撮像可能に構成される、いわゆるビジョンセンサ(カメラ)であり、特に高速ビジョンと称するフレームレートが高いものが採用されることが好ましい。
【0016】
撮像装置2(センサ部)は、目標位置TPの所定軌道からの誤差Eを計測するように構成される。これについては、後にさらに詳述する。好ましくは、撮像装置2(センサ部)のフレームレート(取得レート)は、100fps(ヘルツ)以上であり、より具体的には例えば、100,125,150,175,200,225,250,275,300,325,350,375,400,425,450,475,500,525,550,575,600,625,650,675,700,725,750,775,800,825,850,875,900,925,950,975,1000,1025,1050,1075,1100,1125,1150,1175,1200,1225,1250,1275,1300,1325,1350,1375,1400,1425,1450,1475,1500,1525,1550,1575,1600,1625,1650,1675,1700,1725,1750,1775,1800,1825,1850,1875,1900,1925,1950,1975,2000fpsであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
撮像装置2は、後述の制御装置3における通信部31と電気通信回線(例えばUSBケーブル等)で接続され、撮像した画像IMを制御装置3に転送可能に構成される。
【0018】
また、撮像装置2において、可視光だけではなく紫外域や赤外域といったヒトが知覚できない帯域を計測可能なカメラを採用してもよい。このようなカメラを採用することによって、暗視野であっても本実施形態に係るシステム1を実施することができる。
【0019】
1.3 制御装置3
図3は、制御装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、制御装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33とを有し、これらの構成要素が制御装置3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0020】
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。これにより制御装置3と通信可能な他の機器との間で情報や命令のやりとりが実行される。
【0021】
記憶部32は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。また、記憶部32は、次に説明する制御部33が読み出し可能な各種のプログラムを記憶している。さらに、記憶部32は、撮像装置2によって撮像され且つ通信部31が受信した時系列の画像IMを記憶する。ここで、画像IMは、例えばRGB各8ビットのピクセル情報を具備する配列情報である。
【0022】
制御部33は、制御装置3に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部33は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、制御装置3に係る種々の機能を実現する。すなわち、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されることで、
図3に示されるように、制御部33における各機能部として実行されうる。なお、
図3においては、単一の制御部33として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0023】
1.4 メイン装置4
図4は、メイン装置4のハードウェア構成を示す概要図である。メイン装置4は、ユーザUが自らの手足を用いて被操作箇所43を操作することができる装置である。また、メイン装置4は、制御装置3から制御信号CSを受信して、これに応じて様々に駆動する装置である。メイン装置4は、第1の接触部41と、第2の接触部42とを備える。
【0024】
図4に示されるように、第1の接触部41は、被操作箇所43と接続される。第1の接触部41は、ユーザUの第1の手足HF1と接触することで、第1の手足HF1の動きに合わせて被操作箇所43によって規定される目標位置TPを可変に構成される。なお、ユーザUが第1の接触部41を用いて移動させることができる目標位置TPの範囲を第1の範囲と呼ぶこととする。
【0025】
図4に示されるように、第2の接触部42は、誤差感覚提示部45を備える。ユーザUの第1の手足HF1とは異なる第2の手足HF2と接触するように構成される。誤差感覚提示部45は、撮像装置2を介して計測された誤差Eに基づいた力覚又は触覚を第2の手足HF2に付与することで、ユーザUに誤差Eを提示するように構成される。
【0026】
なお、第1の接触部41及び第2の接触部42の形態は、特に限定されるものではないが、第1の手足HF1又は第2の手足HF2に接触するというユーザビリティに応じて、適切な形態が選択されるとよい。例えば、第1の手足HF1及び第2の手足HF2が、ユーザUの左右の手(左手LH及び右手RH)であるならば、第1の接触部41及び第2の接触部42は、左手LH及び右手RHでそれぞれ把握可能に構成されるとよい。
【0027】
また、メイン装置4は、位置調整部44をさらに備える。位置調整部44は、例えばXY方向に駆動可能なステージであり、被操作箇所43を、ユーザUが操作可能な第1の範囲よりも小さい第2の範囲で変位可能であるとよい。このような構成により、位置調整部44は、誤差Eを補正するように、被操作箇所43における目標位置TPを調整することができる。
【0028】
システム1全体としては、撮像装置2のフレームレート及び位置調整部44の駆動レートのうちの低い方が、誤差Eの補正に係る制御レートとして機能する。換言すると、フレームレート及び駆動レートを同程度に高くすることで、予測を全く用いずにフィードバック制御だけで目標位置TPの誤差Eを補正することが可能となる。すなわち好ましくは、位置調整部44の駆動レートは、撮像装置2と同様に、100ヘルツ以上である。
【0029】
なお、ユーザUによる所定の動作の訓練するにあたり、位置調整部44による補正を実施しなくてもよい。位置調整部44による補正は、カメラの手ブレ補正のようなもので、適切な所定の動作を補助的に実現するものである。ユーザUは位置調整部44がない場面でも、所定の動作を正しく行えるように訓練をすることがよい。かかる場合、ユーザUにより高度な操作を課すこととなるが、そのような訓練を実施することを妨げない。
【0030】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。
図5は、制御装置3(制御部33)の機能構成を示すブロック図である。前述の制御部33に関して、制御装置3は、受付部331と、画像処理部332と、演算部333と、制御信号生成部334とを備える。以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0031】
(受付部331)
受付部331は、通信部31又は記憶部32を介して情報を受け付け、これを作業メモリに読出可能に構成される。特に、受付部331は、撮像装置2及び/又はメイン装置4から通信部31を介して種々の情報(画像IM、位置調整部44の変位情報等)を受け付けるように構成される。制御装置3が他の機器と接続されている場合は、受付部331がそれらの機器から送信された情報を受信するように実施してもよい。本実施形態では、受付部331が受け付けた種々の情報は、記憶部32に記憶されるものとして説明する。
【0032】
なお、受付部331が受け付けて作業メモリに一時的に読み出した以降は、少なくとも一部の情報を記憶部32に記憶させなくてもよい。さらに、少なくとも一部の情報を記憶部32以外の外部サーバに記憶させてもよい。
【0033】
(画像処理部332)
画像処理部332は、画像IMに記憶部32に記憶されたプログラムを読み出して、所定の画像処理を実行するように構成される。例えば、画像処理部332は、画像IMから所定軌道であるラインLを特定するための画像処理を実行する。詳細は後述する。
【0034】
(演算部333)
演算部333は、画像処理部332によって画像処理が実行された画像IMを用いて、所定の演算を実行するように構成される。例えば、演算部333は、画像IMから誤差ベクトルv1又は対称ベクトルv2を演算する。詳細は後述する。
【0035】
(制御信号生成部334)
制御信号生成部334は、メイン装置4を制御するための制御信号CSを生成するように構成される。具体的には、制御信号生成部334は、位置調整部44を駆動させる制御信号CS1を生成する。また、制御信号生成部334は、誤差感覚提示部45を作動させる制御信号CS2を生成する。制御信号CSの値は、例えば電圧で規定されるとよい。
【0036】
3.制御処理
本節では、システム1の制御処理の流れについて説明する。
【0037】
3.1 操作方法
図6は、システム1の操作方法を示すアクティビティ図である。ここでは簡単のため、ユーザUが右利きで、第1の手足HF1を右手RHとし、第2の手足HF2を左手LH2として説明する。すなわちユーザUが右手RHで第1の接触部41を把握し、左手LHで第2の接触部42を把握する(アクティビティA101)。把握は接触の一例である。そして、ユーザUが右手RHで第1の接触部41を操作することで、被操作箇所43における目標位置TPを所定の軌道であるラインLに沿って移動させる(アクティビティA102)。このような動作は、例えば、切削作業、塗布作業、医療行為等において含まれるものである。
【0038】
ユーザUが第1の接触部41を変位させると、これに応じて目標位置TPも変位する。このとき、撮像装置2によって、目標位置TPとラインLとが撮像され、画像IMが制御装置3に送信される(アクティビティA103)。換言すると、受付部331が画像IMを受け付けて、これが記憶部32に記憶される。
【0039】
図7は、画像処理部332が画像処理を行う画像IMの一例を示す概要図である。画像処理部332は、受付部331が受け付けた画像IMを画像処理によって解析し、画像IM中におけるラインLの位置を特定する(アクティビティA104)。これは例えば、撮像された画像IMを、画像に関する所定のパラメータ(明度等)にしきい値を決めてバイナリ化することで実施される。そして、画像IMからラインLの重心位置を算出することでラインLの位置を特定することができる。
【0040】
そして、目標位置TPが撮像装置2の視線と規定面Pとの交点として実施されるとよい。
図4においては不図示であるが、位置調整部44に撮像装置2が取り付けられていることとなる。つまり、目標位置TPは、撮像装置2によって撮像される画像IMの中心(画像中心CT)である。
【0041】
なお、
図7に示されるように、画像IMの一部の所定領域ROIに対して画像処理を行うように実施してもよい。特に、誤差Eの補正を高い制御レートにて行うため、ラインLは、画像IMの決まった位置(例えば画像中心CT)の近傍にあることとなり、この決まった位置の近傍領域を所定領域ROIとすることで、画像処理をするピクセル数を削減することができる。これにより、制御装置3の計算負荷を小さくして高い制御レートを維持することができる。
【0042】
続いて、演算部333が目標位置TP(画像中心CT)と、ラインLとの誤差Eを表す誤差ベクトルv1を演算する(アクティビティA105)。
図8は、誤差ベクトルv1を表す概要図である。ここで誤差Eが位置調整部44の可動範囲である第2の範囲に収まる場合は、制御信号生成部334が誤差Eを補正する制御信号CS1を生成し位置調整部44に送信する(アクティビティA106)。さらに、制御信号生成部334が誤差EをユーザUに提示する制御信号CS2を生成し誤差感覚提示部45に送信する(アクティビティA107)。
【0043】
換言すると、通信部31を介して制御信号CS1がメイン装置4における位置調整部44に送信されることで、位置調整部44が駆動し、これにより誤差Eを補正することができる。この場合の制御手法は特に限定されないが、例えば、P制御、PD制御、PID制御等が適宜採用されうる。制御に係る各係数は、必要に応じて好ましい値を設定すればよい。また、通信部31を介して制御信号CS2がメイン装置4における誤差感覚提示部45に送信されることで、誤差感覚提示部45が作動し、これによりユーザUに誤差Eを提示することができる。
【0044】
一方、誤差Eが位置調整部44の可動範囲である第2の範囲に収まらない場合は、制御信号生成部334が誤差Eを補正する制御信号CS1を生成せずに、誤差EをユーザUに提示する制御信号CS2を生成し誤差感覚提示部45に送信するとよい(アクティビティA107)。
【0045】
誤差Eに基づいた力覚又は触覚は、誤差Eを表す誤差ベクトルv1に比例して決定される。つまり、誤差Eの大きさ(度合い)と向きとをユーザUに提示するために、誤差ベクトルv1に比例したベクトル(比例定数は正負の数であり1も含む)として、力覚又は触覚がユーザUに付与されるとよい。特に、操作している右手RHとは異なる左手LHに力覚又は触覚が付与されることで、操作感を損なうことなく、誤差EをユーザUに提示することができる。また、特に好ましくは、誤差Eに基づいた力覚又は触覚は、人間の感覚提示に適した周波数に変換されて提示される。人間が知覚可能な周波数で力覚又は触覚を提示することで、ユーザUが誤差Eの状態を把握することができる。
【0046】
以上に説明した制御処理が制御レート単位で繰り返されることで、ユーザUが所定の動作を訓練し、学習することができる。まとめると、このシステム1の操作方法は、第1~第4のステップを備える。第1のステップでは、ユーザUの第1の手足HF1をシステム1の第1の接触部41に接触させるとともに、ユーザUの第2の手足HF2をシステム1の第2の接触部42に接触させる。第2のステップでは、第1の接触部41に接触している第1の手足HF1を動かすことで、システム1の被操作箇所43によって規定される目標位置TPを移動させる。第3のステップでは、目標位置TPの所定軌道からの誤差Eを計測する。第4のステップでは、誤差Eに基づいた力覚又は触覚を、第2の接触部42に接触している第2の手足HF2に付与することで、ユーザUに誤差Eを提示する。
【0047】
3.2 同期運動
前述の仮定について補足すると、好ましくは、第1の手足HF1及び第2の手足HF2は、ユーザUの左右の手(左手LH及び右手RH)又は足(左足LF及び右足RF)である。人間は両腕協調運動を利用して様々かつ複雑な作業を実現している。人間の両腕を協調させて動かすために、邪魔をしながらも協調しあうことが可能になるといった脳のメカニズムが存在すると考えられる。特に、両腕の同期運動(例えば、右手RH及び左手LHで異なった運動を同時に行おうとしても、両手が同じような動きになる傾向)は日常生活中にも良く見られて、両腕の同期制御は脳にとって最も基本的な仕組みとも考えられる。
【0048】
つまり、左手LHに力覚又は触覚を付与すると、左右の同期運動によって、速やかに右手RHに誤差Eを補正する方向への調整がユーザU自身によって行われることとなる。このような制御処理によれば、ユーザUの年代やモチベーションによらず、ユーザUがより直感的に効果的に所定の動作を訓練し、学習することができる。
【0049】
なお、誤差Eに基づいた力覚又は触覚は、誤差ベクトルv1に代えて、誤差Eを表す誤差ベクトルv1を対称面に関して対称移動させた対称ベクトルv2に比例して決定されてもよい(
図8参照)。ここでの対称面とは、ユーザUの体幹中心から前後に延在する面である。ストレッチ体操等を鑑みても、人間は体幹中心から前後に延在する面を対称面として、左右対称の動作を自然に行うことができる。このため、誤差ベクトルv1ではなく対称ベクトルv2に比例する力覚又は触覚によって、誤差EをユーザUが提示してもよい。さらに、ユーザUの好みに応じて誤差ベクトルv1又は対称ベクトルv2を選択できるように実施してもよい。
【0050】
4.その他
次のような態様によって、システム1をさらに創意工夫してもよい。
【0051】
(1)システム1は、不図示のガイド光照射部をさらに備えてもよい。このガイド光照射部は、撮像装置2(センサ部)と同軸又は相対的位置が固定され、且つ目標位置TPを示すガイド光を照射可能に構成されるとよい。ガイド光照射部と撮像装置2との相対的位置は、設計の際に既知であるからガイド光照射部から目標位置TPを投影光として照射することができる。好ましくは、ビームスプリッタ等を用いて撮像装置2とガイド光照射部とを同軸光学系として実施するとよい。これによりユーザUは、目標位置TPを所定軌道に沿って変位させるために第1の接触部41をどのように動かすべきかを、より直感的に把握することができる。
【0052】
(2)前述の実施形態では、目標位置TPを撮像装置2の視線と規定面Pとの交点(画像中心CT)として実施しているがあくまでも一例でありこの限りではない。例えば、被操作箇所43における位置調整部44に切削具(例えばエンドミルや医療用メス)を取り付けて、かかる切削具の先端位置を目標位置TPに設定することができる。この際、撮像装置2及び切削具の相対的位置は設計の際に既知である。このような変形例によれば、ユーザUが切削加工や医療施術の訓練を実施することができる。
【0053】
(3)さらに、被操作箇所43における位置調整部44にレーザ射出部(加工用)を取り付けて、かかるレーザ射出部から射出されたレーザの照射位置(規定面P上)を目標位置TPに設定することができる。この際、撮像装置2及びレーザ射出部の相対的位置は設計の際に既知である。このような変形例によれば、ユーザUが所望の物体が規定された形状となるようにレーザ加工の訓練を施すことができる。
【0054】
(4)さらに、被操作箇所43における位置調整部44に塗料等を塗布可能に構成される塗布部を取り付けて、かかる塗布部の先端位置を目標位置TPに設定することができる。この際、撮像装置2及び塗布具の相対的位置は設計の際に既知である。このような変形例によれば、ユーザが塗布工程の訓練を実施することができる。
【0055】
(5)既述の切削具、レーザ射出部、塗布具等も含めて、目標位置TPを決定する対象として様々なものが考えられ、これらを自由に取り付け取り外しができるように実施することができる。
【0056】
(6)撮像装置2に代えて、又はこれとともに他のセンサを用いてもよい。例えば、レーザ変位センサ、赤外線センサ等が適宜採用されうる。
【0057】
(7)システム1としてではなく、その一部である制御装置3を単体で実施してもよい。
【0058】
(8)コンピュータを制御装置3として機能させるプログラムを実施してもよい。
【0059】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記システムにおいて、ガイド光照射部をさらに備え、前記ガイド光照射部は、前記センサ部と同軸又は相対的位置が固定され、且つ前記目標位置を示すガイド光を照射可能に構成される、もの。
前記システムにおいて、前記第1及び第2の手足は、前記ユーザの左右の手であり、前記第1及び第2の接触部は、前記左右の手でそれぞれ把握可能に構成される、もの。
前記システムにおいて、前記誤差に基づいた力覚又は触覚は、前記誤差を表す誤差ベクトルに比例して決定される、もの。
前記システムにおいて、前記第1及び第2の手足は、前記ユーザの左右の手又は足であり、前記誤差に基づいた力覚又は触覚は、前記誤差を表す誤差ベクトルを対称面に関して対称移動させた対称ベクトルに比例して決定され、ここで前記対称面は、前記ユーザの体幹中心から前後に延在する面である、もの。
前記システムにおいて、前記誤差に基づいた力覚又は触覚は、人間の感覚提示に適した周波数に変換されて提示される、もの。
前記システムにおいて、前記センサ部は、外界の情報を撮像可能に構成される撮像部である、もの。
前記システムにおいて、前記目標位置は、前記撮像部によって撮像される画像の中心である、もの。
前記システムにおいて、位置調整部をさらに備え、前記位置調整部は、前記被操作箇所を、前記ユーザが操作可能な第1の範囲よりも小さい第2の範囲で変位可能で、前記誤差を補正するように、前記被操作箇所の位置を調整可能に構成される、もの。
前記システムにおいて、前記センサ部の取得レート及び前記位置調整部の駆動レートは、100ヘルツ以上である、もの。
システムの操作方法であって、第1~第4のステップを備え、前記第1のステップでは、ユーザの第1の手足を前記システムの第1の接触部に接触させるとともに、前記ユーザの第2の手足を前記システムの第2の接触部に接触させ、前記第2のステップでは、前記第1の接触部に接触している前記第1の手足を動かすことで、前記システムの被操作箇所によって規定される目標位置を移動させ、前記第3のステップでは、前記目標位置の所定軌道からの誤差を計測し、前記第4のステップでは、前記誤差に基づいた力覚又は触覚を、前記第2の接触部に接触している前記第2の手足に付与することで、前記ユーザに前記誤差を提示する、方法。
もちろん、この限りではない。
【0060】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 :システム
2 :撮像装置
3 :制御装置
30 :通信バス
31 :通信部
32 :記憶部
33 :制御部
331 :受付部
332 :画像処理部
333 :演算部
334 :制御信号生成部
4 :メイン装置
41 :第1の接触部
42 :第2の接触部
43 :被操作箇所
44 :位置調整部
45 :誤差感覚提示部
CS :制御信号
CS1 :制御信号
CS2 :制御信号
CT :画像中心
E :誤差
HF1 :第1の手足
HF2 :第2の手足
IM :画像
L :ライン
LF :左足
LH :左手
P :規定面
RF :右足
RH :右手
ROI :所定領域
TP :目標位置
U :ユーザ
v1 :誤差ベクトル
v2 :対称ベクトル