(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】石炭火力発電システム
(51)【国際特許分類】
F22B 1/18 20060101AFI20230920BHJP
F22B 1/28 20060101ALI20230920BHJP
F22B 33/18 20060101ALI20230920BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20230920BHJP
F23K 3/02 20060101ALI20230920BHJP
F22D 1/00 20060101ALI20230920BHJP
F23J 15/08 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
F22B1/18 D
F22B1/28 Z
F22B33/18
F23L15/00 Z
F23K3/02 301
F22D1/00
F23J15/08
(21)【出願番号】P 2020082473
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-04-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人エネルギー・資源学会、第36回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス 講演論文集、令和2年1月20日 〔刊行物等〕 第36回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス、令和2年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉葉 史彦
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530235(JP,A)
【文献】特開2019-193358(JP,A)
【文献】特表2016-533467(JP,A)
【文献】特開2019-082118(JP,A)
【文献】特開昭62-052303(JP,A)
【文献】特開平06-284797(JP,A)
【文献】特表2017-534798(JP,A)
【文献】特開平06-039244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00 - 37/78
F23L 15/00
F23K 3/02
F22D 1/00 - 11/06
F23J 15/08
F01K 1/00 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続され、蒸気タービンの駆動により電力を得る石炭火力発電設備と、
前記電力系統に接続され、再生可能エネルギーにより電力を得る再生可能エネルギー発電設備と、
前記再生可能エネルギー発電設備で得られた電力のうちの余剰となった余剰電力により動作され、前記石炭火力発電設備の最低負荷運転を維持する最低負荷運転維持手段とを備えた
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の石炭火力発電システムにおいて、
前記石炭火力発電設備は、
石炭が投入されて着火されることで蒸気を発生させるボイラを有し、
前記最低負荷運転維持手段は、
前記石炭を着火させる電気バーナーである
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の石炭火力発電システムにおいて、
前記ボイラは、流体が流通する機器を有し、
前記最低負荷運転維持手段は、
前記機器を流通する流体を加熱する電気ヒーターである
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項4】
請求項2もしくは請求項3に記載の石炭火力発電システムにおいて、
前記石炭火力発電設備は、
石炭を粉砕するミルを有し、
前記最低負荷運転維持手段は、
前記ミルで粉砕された微粉炭を前記ボイラに搬送する一次空気を加熱するエアヒーターである
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の石炭火力発電システムにおいて、
前記石炭火力発電設備は、
前記蒸気タービンの排気蒸気が冷却されて凝縮水を得る復水手段と、
前記復水手段で得られた凝縮水を前記ボイラに給水する給水経路とを有し、
前記最低負荷運転維持手段は、
前記給水経路を流通する給水を加熱する給水ヒーターである
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項6】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の石炭火力発電システムにおいて、
前記石炭火力発電設備は、
前記ボイラの排気ガスを排出する排気系統と、
前記排気系統を流通する排気ガスの浄化処理を行う排煙処理手段とを有し、
前記最低負荷運転維持手段は、
前記排煙処理手段を加熱して活性状態を維持する活性ヒーターである
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石燃料を使用することなく最低負荷での運転を行うことができる石炭火力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は世界の広い地域に存在し、可採埋蔵量が多く、価格が安定しているため、供給安定性が高く発熱量あたりの価格が低廉である。このような背景から、電力需要に安定して対応できる発電設備として、石炭を燃料とする石炭火力発電設備が広く普及している(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、昨今地球温暖化対策の一つとして、発電所等から発生する二酸化炭素を低減することが検討されている。このような背景から、二酸化炭素を排出する石炭や天然ガスを使用せずに再生可能エネルギーを用いた再生エネルギー発電設備が導入されつつある(例えば、特許文献2)。
【0004】
電力系統を安定して運用するには、電力の需要と供給を調整して周波数を一定とすることに加え、周波数の急激な変動を抑制するための慣性力の維持や、送配電網の電圧調整で必要となる無効電力の供給等を行う必要がある。これらの電力系統の安定運用の役割は現時点では火力発電が担っており、火力発電には発電状態を継続して、出力の上げ・下げにより電力需給を調整することに加え、発電機やタービンの有する慣性力を電力系統内で維持することや、発電機により無効電力を電力系統に供給すること等が求められる。
【0005】
一方、再生可能エネルギーの出力が大きくなる時間帯では、電力の需要と供給のバランスを取るため、火力発電は燃料費の高い順に発電を停止していく。石炭火力は燃料費が低廉なため、再生可能エネルギーの出力が大きくなる時間帯でも、他の火力発電より長い時間にわたり発電を継続する。そのため、電力の需給調整役の最後の砦として、石炭火力発電はより低い出力にて発電し、電力系統の安定化に貢献することが求められる。
【0006】
石炭火力発電設備は、ミルにより石炭を粉砕した微粉炭を燃料として高温・高圧の蒸気を得て、蒸気により蒸気タービンを作動させて発電機を駆動させている。再生可能エネルギーの出力が大きくなる時間帯では、石炭火力発電設備は低い発電出力で電力需要の変動に短時間で追従するため、最低限の動力でミルにより微粉炭を得て、ボイラで最低限の蒸気を発生させている。即ち、石炭火力発電設備では、電力系統を安定させるために、最低限の負荷で出力を維持する運転を継続することにより、出力の上げ・下げ、電力系統で必要な慣性力の維持、および無効電力の供給等を行っているのが現状である。
【0007】
再生可能エネルギー発電設備は、自然環境により出力が大きく変化するため、時間帯によっては、余剰の電力が発生することが避けられない。余剰の電力を有効に利用するため、大容量で廉価な電力貯蔵が必要となっているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-174182号公報
【文献】特開2016-226238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、石炭の使用を抑制した状態で(二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で)、電力系統を安定させるための最低負荷運転を維持することができる石炭火力発電システムを提供することを目的とする。
【0010】
特に、現存する石炭火力発電設備を適用して、石炭の使用を抑制した状態で(二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で)、且つ、電力系統を安定させるための最低負荷を更に低下させた状態で、最低負荷運転を維持することができる石炭火力発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の石炭火力発電システムは、電力系統に接続され、蒸気タービンの駆動により電力を得る石炭火力発電設備と、前記電力系統に接続され、再生可能エネルギーにより電力を得る再生可能エネルギー発電設備と、前記再生可能エネルギー発電設備で得られた電力のうちの余剰となった余剰電力により動作され、前記石炭火力発電設備の最低負荷運転を維持する最低負荷運転維持手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る本発明では、最低負荷運転維持手段により、再生可能エネルギー発電設備で得られた電力の余剰分により石炭火力発電設備の最低負荷運転を維持するので、石炭を使用せず現状の石炭火力発電設備における最低負荷運転(系統の安定のための慣性力維持や無効電力を供給する運転等)を実施することができる。
【0013】
石炭を燃料として粉砕する手段を使用しないため(余剰の電力を動力としているため)、最低負荷運転の維持のために、例えば、ミルを使用して石炭を粉砕する必要がなく、また、電力で得られる中圧・低圧の蒸気により、極めて低い負荷の出力値とすることができる(最低負荷の出力値を下げることができる)。
【0014】
このため、二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で、電力系統を安定させるための最低負荷運転を維持することが可能になる。
【0015】
特に、現存する石炭火力発電設備を適用して、二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で、且つ、電力系統を安定させるための最低負荷を更に低下させた状態で(石炭を使用しないので最低負荷を低下させることができる)、最低負荷運転を維持することが可能になる。
【0016】
そして、請求項2に係る本発明の石炭火力発電システムは、請求項1に記載の石炭火力発電システムにおいて、前記石炭火力発電設備は、石炭が投入されて着火されることで蒸気を発生させるボイラを有し、前記最低負荷運転維持手段は、前記石炭を着火させる電気バーナーであることを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る本発明では、電気バーナーにより燃料として準備された石炭を着火させることで、ボイラで蒸気を発生させ、発生させた蒸気により最低負荷運転を維持することができるため、通常運転への移行を可能とする。また、石炭を着火させるための炭素系燃料を用いるバーナーを必要としない。
【0018】
また、請求項3に係る本発明の石炭火力発電システムは、請求項2に記載の石炭火力発電システムにおいて、前記ボイラは、流体が流通する機器を有し、前記最低負荷運転維持手段は、前記機器を流通する流体を加熱する電気ヒーターであることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る本発明では、電気ヒーターにより機器を流通する流体を加熱して最低限の量の蒸気を発生させ、発生させた蒸気により最低負荷運転を維持することができる。
【0020】
また、請求項4に係る本発明の石炭火力発電システムは、請求項2もしくは請求項3に記載の石炭火力発電システムにおいて、前記石炭火力発電設備は、石炭を粉砕するミルを有し、前記最低負荷運転維持手段は、前記ミルで粉砕された微粉炭を前記ボイラに搬送する一次空気を加熱するエアヒーターであることを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る本発明では、ミルで粉砕された微粉炭を搬送する一次空気をエアヒーターで加熱することができ、微粉炭が予熱されてボイラに搬送される微粉炭の着火を助けることができる。
【0022】
また、請求項5に係る本発明の石炭火力発電システムは、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の石炭火力発電システムにおいて、前記石炭火力発電設備は、前記蒸気タービンの排気蒸気が冷却されて凝縮水を得る復水手段と、前記復水手段で得られた凝縮水を前記ボイラに給水する給水経路とを有し、前記最低負荷運転維持手段は、前記給水経路を流通する給水を加熱する給水ヒーターであることを特徴とする。
【0023】
請求項5に係る本発明では、蒸気を発生させるための給水を給水ヒーターで加熱することができ、蒸気の発生を助けることができる。
【0024】
また、請求項6に係る本発明の石炭火力発電システムは、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の石炭火力発電システムにおいて、前記石炭火力発電設備は、前記ボイラの排気ガスを排出する排気系統と、前記排気系統を流通する排気ガスの浄化処理を行う排煙処理手段とを有し、前記最低負荷運転維持手段は、前記排煙処理手段を加熱して活性状態を維持する活性ヒーターであることを特徴とする。
【0025】
請求項6に係る本発明では、活性ヒーターにより排煙処理手段の活性状態を維持することができるので、排気を用いて排煙処理手段の暖気運転を行う必要がなく、排気の流通による機器の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の石炭火力発電システムは、二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で、電力系統を安定させるための最低負荷運転を維持することが可能になる。
【0027】
特に、現存する石炭火力発電設備を適用して、二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で、且つ、電力系統を安定させるための最低負荷を更に低下させた状態で、最低負荷運転を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施例に係る石炭火力発電システムの概略系統図である。
【
図2】貫流式のボイラの一例を説明する概略系統図である。
【
図3】ドラム式のボイラの一例を説明する概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には本発明の一実施例に係る石炭火力発電システムの全体の構成を説明するための概略の系統を示してある。
【0030】
電力系統1には、蒸気タービン2の駆動により発電機3が運転されて電力を得る石炭火力発電設備4が接続されている。石炭火力発電設備4は、石炭(微粉炭)が燃焼室5に投入されて蒸気を発生させるボイラ6を有している。
【0031】
石炭火力発電設備4は、石炭を粉砕してボイラ6の燃料となる微粉炭を得るミル設備7を備えている。ミル設備7は複数台(必要台数)のミルにより石炭が粉砕され、必要な量の微粉炭が得られる。ミル設備7には一次空気路8から微粉炭搬送用の一次空気が供給され、一次空気により燃焼室5のバーナー9に微粉炭が供給される。
【0032】
尚、図中の符号で10は、一次空気路8からミル設備7に送られる一次空気の量を調整するダンパである。
【0033】
ボイラ6で発生した高温・高圧の蒸気は、蒸気導入路11から蒸気タービン2に送られて膨張され(蒸気タービン2が駆動され)、発電機3が運転される。尚、図中の符号で12は、蒸気導入路11から蒸気タービン2に送られる蒸気の量を調整するための調整弁である。
【0034】
蒸気タービン2で仕事を終えた排気蒸気は、復水器13で凝縮されて復水され、給水ポンプ14の駆動により給水経路15からボイラ6の機器(低温側の熱交換器)に給水される。
【0035】
ボイラ6の排気ガスは、排気系統16から放出される。排気系統16には、排気ガスの浄化処理を行う排煙処理手段としての脱硝装置17、脱硫装置18が備えられている。また、排気系統16には電気集塵機19が備えられている。尚、図中の符号で20は、後述する一次空気との間で熱交換(一次空気を温める)を行う熱交換手段である。
【0036】
具体的には後述するが、石炭火力発電設備4には、石炭火力発電設備4の最低負荷運転(系統の安定のための慣性力の維持や無効電力を供給する運転等)を維持する最低負荷運転維持手段が備えられている。一方、電力系統1には、再生可能エネルギー(風力、太陽光等)により電力を得る再生可能エネルギー発電設備21が接続されている。最低負荷運転維持手段は、再生可能エネルギー発電設備21で得られ電力系統1に供給された電力のうちの余剰となった余剰電力により動作される。
【0037】
石炭火力発電設備4の系統の安定のために最低負荷運転を行う際に、石炭を燃焼させて最低限の蒸気(熱)を得る運転を行う必要がないため、石炭を微粉として粉砕するミル設備7を使用する必要がない。
【0038】
ミル設備7により微粉炭を得て最低限の蒸気(熱)を得る場合、最低台数のミルの運転が必要となり、ある程度の負荷の出力値が必要で最低負荷を低下させるには限度があった。石炭を用いずに余剰電力により最低負荷運転維持手段を動作させることで、ミル設備7のミルの運転を抑制することができ、電力で得られる中圧・低圧の蒸気(熱)により、極めて低い負荷の出力値とすることができる(最低負荷の出力値を下げることができる)。
【0039】
このため、石炭の使用を抑制した(なくした)状態で(二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で)、石炭火力発電設備4の電力系統を安定させるための最低負荷運転を維持することが可能になる。
【0040】
電力系統1に供給された電力のうちの余剰となった余剰電力により動作される最低負荷運転維持手段を具体的に説明する。
【0041】
ボイラ6の燃焼室5には、予め得られた微粉炭を着火させる電気バーナー23が備えられている。電気バーナー23により燃料として準備された微粉炭を着火させることで、ボイラ6で蒸気を発生させ、発生させた蒸気により最低負荷運転の状態から通常運転への移行を可能とする。そして、微粉炭を着火させるために天然ガス等の炭素系燃料を用いたバーナーを必要としない。
【0042】
また、具体的には後述するが、ボイラ6には、給水が流通する熱交換器が備えられ、最低負荷運転維持手段として、熱交換器を流通する給水を加熱する電気ヒーター24が備えられている。電気ヒーター24により熱交換器を流通する給水を加熱して最低限の量の蒸気を発生させ、発生させた蒸気により最低負荷運転を維持することができる。
【0043】
また、一次空気路8のダンパ10の上流側にはエアヒーター25が備えられている。微粉炭を搬送する一次空気をエアヒーター25で加熱することができる。これにより、微粉炭が予熱され、電気バーナー23で微粉炭を着火する際、また、通常運転に移行してバーナー9で着火する際に、微粉炭の着火を助けることができる。
【0044】
また、具体的には後述するが、給水経路15の給水ポンプ14を挟んで上流側、下流側には、給水を加熱する給水ヒーター26が備えられている。ボイラ6で蒸気を発生させるための給水を給水ヒーター26で加熱することができ、蒸気の発生を助けることができる。
【0045】
また、排気系統16に設けられた脱硝装置17、脱硫装置18には、活性ヒーター27が備えられている。活性ヒーター27により、脱硝装置17、脱硫装置18の触媒を活性温度に維持することができるので、不純物を有する排気ガスを用いて脱硝装置17、脱硫装置18の暖気運転(活性運転)を行う必要がなく、排気ガスの不純物の流通による機器の損傷を抑制することができる。
【0046】
図2、
図3に基づいて、電気ヒーター24が備えられたボイラ6の具体例を説明する。
図2には貫流式のボイラの一例を説明する概略系統、
図3にはドラム式のボイラの一例を説明する概略系を示してある。
【0047】
図2に示すように、貫流式のボイラ6は、給水ポンプ14により給水が送られる炉壁管節炭器(低温側熱交換器)31と、炉壁管節炭器31で加熱された給水が送られて給水を過熱する過熱器32を備えている。過熱器32で過熱された蒸気は蒸気タービン2に送られる。
【0048】
炉壁管節炭器31の下流側から分岐した還流路33には汽水分離器34が備えられ、汽水分離器34で分離された液体が循環ポンプ35により炉壁管節炭器31に送られる。汽水分離器34に流す流体を制御することで、過熱域の蒸発点を可変にすることができる。
【0049】
そして、汽水分離器34に前述した電気ヒーター24が備えられ、汽水分離された液体が電気ヒーター24により加熱される。
【0050】
図3に示すように、ドラム式のボイラ6は、給水ポンプ14により給水が送られる炉壁管節炭器(低温側熱交換器)41と、炉壁管節炭器41で加熱された給水を加熱する蒸発器42を備えている。蒸発器42で蒸発された流体が送られる蒸気ドラム43が備えられ、蒸気ドラム43で分離された蒸気が送られて過熱する過熱器44を備えている。
【0051】
過熱器44で過熱された蒸気は蒸気タービン2に送られる。蒸気ドラム43の流体は循環ポンプ45により蒸発器42に送られる。ドラム式のボイラ6では、過熱域が固定される。
【0052】
そして、蒸気ドラム43に前述した電気ヒーター24が備えられ、蒸発器42に送られる流体が電気ヒーター24により加熱される。
【0053】
図4に基づいて、給水ヒーター26が備えられた給水経路15の具体例を説明する。
図4には給水経路の概略系統を示してある。
【0054】
図4に示すように、復水器13からの復水は上流側給水ポンプ51により低圧給水加熱器52に送られ、加熱された後に脱気器53で脱気される。脱気された給水は給水ポンプ14により高圧給水加熱器54に送られ、加熱された後にボイラ6に送られる。
【0055】
そして、低圧給水加熱器52、及び、高圧給水加熱器54に前述した給水ヒーター26が備えられ、ボイラ6に送られる給水が給水ヒーター26により加熱される。
【0056】
上述した石炭火力発電設備4は、再生可能エネルギー発電設備21で得られた電力のうちの余剰となった余剰電力により、石炭火力発電設備4の最低負荷運転を維持する最低負荷運転維持手段が動作される。即ち、再生可能エネルギー発電設備21の余剰電力により、電気バーナー23、電気ヒーター24、エアヒーター25、給水ヒーター26が動作される。
【0057】
このため、石炭を用いずに、電力系統1に供給された電力のうちの余剰となった余剰電力(再生可能エネルギー発電設備21の余剰電力)により、最低限の蒸気(熱)を得ることができ、石炭を用いずに電力で得られる低圧の蒸気(熱)により、低い負荷の出力値で、石炭火力発電設備4の最低負荷運転を維持することが可能になる。
【0058】
従って、現存する石炭火力発電設備を適用して、石炭の使用を抑制して(無くして)二酸化炭素を排出せずに環境条件が守られた状態で、且つ、電力系統を安定させるための最低負荷を更に低下させた状態で、石炭火力発電設備4の最低負荷運転を維持することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、化石燃料を使用することなく最低負荷での運転を行うことができる石炭火力発電システムの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 電力系統
2 蒸気タービン
3 発電機
4 石炭火力発電設備
5 燃焼室
6 ボイラ
7 ミル設備
8 一次空気路
9 バーナー
10 ダンパ
11 蒸気導入路
12 調整弁
13 復水器
14 給水ポンプ
15 給水経路
16 排気系統
17 脱硝装置
18 脱硫装置
19 電気集塵機
20 熱交換手段
21 再生可能エネルギー発電設備
23 電気バーナー
24 電気ヒーター
25 エアヒーター
26 給水ヒーター
31、41 炉壁管節炭器
32、44 過熱器
33 還流路
34 汽水分離器
35、45 循環ポンプ
42 蒸発器
43 蒸気ドラム
51 上流側給水ポンプ
52 低圧給水加熱器
53 脱気器
54 高圧給水加熱器