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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20230921BHJP
   H02P 25/08 20160101ALI20230921BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H02P27/06
H02P25/08
H02P25/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022140410
(22)【出願日】2022-09-02
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】521210667
【氏名又は名称】株式会社A.H.MotorLab
(73)【特許権者】
【識別番号】521263537
【氏名又は名称】NASCA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】新口 昇
(72)【発明者】
【氏名】小袖 義貴
(72)【発明者】
【氏名】城ノ口 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】竹村 望
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-64995(JP,A)
【文献】特開2007-195325(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167041(WO,A1)
【文献】特開2018-130030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 25/08
H02P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、
前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、
電源からの電圧を昇圧または降圧して前記スイッチインバータ部に供給する昇降圧回路部と、
前記モータ部の各相の電流値を検出するセンサ部と、
前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部と、
前記昇降圧回路部の動作を制御する昇降圧制御部とを備え、
前記昇降圧制御部は、前記電流値に基づいて、前記昇降圧回路部からの出力電圧を制御することを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置であって、
前記スイッチ制御部は前記スイッチインバータ部をパルス制御し、
前記昇降圧制御部は、前記各相の前記電流値が第1電流値以下の場合に前記各相の調整フラグを真状態に設定し、
前記電流値が前記第1電流値以上の範囲にある相をヒステリシス制御対象相として選定し、
前記ヒステリシス制御対象相について前記電流値が前記第1電流値よりも大きい第2電流値を上回った場合に前記調整フラグを偽状態に設定し、
前記ヒステリシス制御対象相の前記調整フラグが何れか一つでも偽状態の場合に、前記昇降圧回路部からの出力電圧を低下させることを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ装置であって、
前記昇降圧制御部は前記電源からの電圧を降圧率に基づいて低下させる降圧回路であり、
前記出力電圧の低下は前記降圧回路の前記降圧率を増大させるものであり、
前記ヒステリシス制御対象相の前記調整フラグが全て真状態の場合に、前記降圧率を維持することを特徴とするモータ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のモータ装置であって、
前記昇降圧制御部が昇圧回路であり、前記出力電圧の低下は前記昇圧回路の昇圧率を低下させるものであることを特徴とするモータ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のモータ装置であって、
前記スイッチ制御部は前記スイッチインバータ部をベクトル制御し、
前記昇降圧制御部は、前記電流値に基づいて前記各相の電圧デューティ比が所定の比率となるように、前記昇降圧回路部からの出力電圧を制御することを特徴とするモータ装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載のモータ装置であって、
前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、
前記複数のティース部には、A相、B相、C相、D相、E相およびF相の6相巻線が周方向に沿って順に巻回されていることを特徴とするモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関し、特に、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータのモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な技術分野において、交流の周波数を変化させることで回転数を制御でき、安定した回転数を得られる三相モータが動力源として用いられている。また、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータも提案されている。
【0003】
また本願出願人らは、9つのスイッチでスイッチインバータ(9スイッチインバータ)を構成し、6相の巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータを駆動するモータ装置を提案している(特許文献1を参照)。さらに、スイッチインバータを6つのスイッチと3つのダイオードで構成して、6相の巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータを駆動するモータ装置を提案している(特許文献2を参照)。
【0004】
図8は、従来のスイッチトリラクタンスモータを用いたモータ装置の構成を示す模式図であり、図8(a)は9スイッチインバータを用いた例であり、図8(b)は改良型9スイッチインバータを用いた例である。図8(a)(b)に示したように、従来のモータ装置は、モータ部10とスイッチインバータ部20を備えている。また、モータ部10はA相からF相までの6相の巻線が含まれており、スイッチインバータ部20の各相に対応するスイッチ間が各相の巻線に接続されている。スイッチインバータ部20は、A相スイッチとD相スイッチ、E相スイッチとB相スイッチ、C相スイッチとF相スイッチが同列に接続され、3列が並列接続されている。図8(a)に示した9スイッチインバータでは、各相のスイッチ間に中間スイッチが接続されており、図8(b)に示した改良型9スイッチインバータでは、各相のスイッチ間に中間ダイオードが逆接続されている。
【0005】
図8(a)(b)に示した従来のモータ装置では、特許文献1,2に示したように、スイッチインバータ部20の各相スイッチをベクトル駆動またはパルス制御で制御することで、スイッチトリラクタンスモータを継続的に駆動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第7010405号公報
【文献】特許第7076688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来のモータ装置をパルス制御した場合には、各相の巻線に流れる電流値を制限するために、電流値が上限値を超えた相のスイッチをオフするヒステリシス制御を併用すると、循環電流が発生するという問題があった。
【0008】
図9は、従来のモータ装置で発生する循環電流を説明する模式図であり、図9(a)はA相スイッチがオン状態を示し、図9(b)はA相スイッチをオフに切り替えた直後の状態を示している。A相スイッチがオン状態では、電源からA相スイッチを経てモータ部10のA相巻線に電流が流れているが、A相スイッチがオフに切り替わった直後には、D相巻線から中間ダイオードを介してA相巻線に循環電流が流れてしまう。ヒステリシス制御では、各相の巻線に流れる相電流を検出して、相電流が上限値を超えた場合には対応する相のスイッチをオフにし、相電流が下限値を下回った場合には対応する相のスイッチをオンにする。このようにヒステリシス制御では各相のスイッチが頻繁にオン状態とオフ状態で切り替えられるため、循環電流が発生しやすい。
【0009】
ヒステリシス制御を用いずにパルス制御するために、スイッチインバータ部20に供給される電圧を小さくして、各相に流れる最大電流値を抑制することも可能である。しかし最大電流値が抑制されるため、モータ装置の出力の最大値が抑制されてしまう。
【0010】
また、従来のモータ装置をベクトル制御した場合には、スイッチに印加される電圧のデューティ比が低いと、相電流に含まれる高調波成分が多くなり、モータ部10での鉄損が増加してモータ部10の出力効率が低下するという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、駆動時における循環電流や鉄損の発生を抑制し、出力を最大化することが可能なモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のモータ装置は、回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、電源からの電圧を昇圧または降圧して前記スイッチインバータ部に供給する昇降圧回路部と、前記モータ部の各相の電流値を検出するセンサ部と、前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部と、前記昇降圧回路部の動作を制御する昇降圧制御部とを備え、前記昇降圧制御部は、前記電流値に基づいて、前記昇降圧回路部からの出力電圧を制御することを特徴とする。
【0013】
このような本発明のモータ装置では、センサ部で検出した各相の電流値に基づいて、昇降圧回路部からの出力電圧を制御するため、スイッチインバータ部のスイッチ切替を変更せずに電流値や電圧デューティ比を調整することができ、駆動時における循環電流や鉄損の発生を抑制し、出力を最大化することが可能となる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記スイッチ制御部は前記スイッチインバータ部をパルス制御し、前記昇降圧制御部は、前記各相の前記電流値が第1電流値以下の場合に前記各相の調整フラグを真状態に設定し、前記電流値が前記第1電流値以上の範囲にある相をヒステリシス制御対象相として選定し、前記ヒステリシス制御対象相について前記電流値が前記第1電流値よりも大きい第2電流値を上回った場合に前記調整フラグを偽状態に設定し、前記ヒステリシス制御対象相の前記調整フラグが何れか一つでも偽状態の場合に、前記昇降圧回路部からの出力電圧を低下させる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記昇降圧制御部は前記電源からの電圧を降圧率に基づいて低下させる降圧回路であり、前記出力電圧の低下は前記降圧回路の前記降圧率を増大させるものであり、前記ヒステリシス制御対象相の前記調整フラグが全て真状態の場合に、前記降圧率を維持する。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記昇降圧制御部が昇圧回路であり、前記出力電圧の低下は前記昇圧回路の昇圧率を低下させるものである。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記スイッチ制御部は前記スイッチインバータ部をベクトル制御し、前記昇降圧制御部は、前記電流値に基づいて前記各相の電圧デューティ比が所定の比率となるように、前記昇降圧回路部からの出力電圧を制御する。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、前記複数のティース部には、A相、B相、C相、D相、E相およびF相の6相巻線が周方向に沿って順に巻回されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、駆動時における循環電流や鉄損の発生を抑制し、出力を最大化することが可能なモータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るモータ装置100の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るモータ装置100の一例を示す模式図であり、図2(a)は回路図であり、図2(b)はモータ部10の構造例を示す模式図である。
図3】第1実施形態における昇降圧制御部50の動作を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態におけるヒステリシス制御の動作を模式的に説明するグラフである。
図5】A相巻線からF相巻線に流れる相電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6】第2実施形態に係るモータ装置100の一例を示す回路図である。
図7】第3実施形態に係るモータ装置100におけるモータ部10に入力される電圧の高速フーリエ変換解析結果を示すグラフである。
図8】従来のスイッチトリラクタンスモータを用いたモータ装置の構成を示す模式図であり、図8(a)は9スイッチインバータを用いた例であり、図8(b)は改良型9スイッチインバータを用いた例である。
図9】従来のモータ装置で発生する循環電流を説明する模式図であり、図9(a)はA相スイッチがオン状態を示し、図9(b)はA相スイッチをオフに切り替えた直後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本実施形態に係るモータ装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、モータ装置100は、モータ部10と、スイッチインバータ部20と、昇降圧回路部30と、スイッチ制御部40と、昇降圧制御部50と、センサ部60を備えている。
【0022】
モータ部10は、スイッチインバータ部20から供給される電力により磁界を発生させ、電気エネルギーを回転動作による運動エネルギーに変換する部分である。スイッチインバータ部20は、昇降圧回路部30から供給された電力を所定のタイミングで所定の相に流すことでモータ部10を駆動する部分である。昇降圧回路部30は、電源から供給された電圧を昇圧または降圧してスイッチインバータ部20に供給する部分である。スイッチ制御部40は、予め定められたプログラムに従って情報処理を行い、スイッチインバータ部20に含まれる各スイッチのオン/オフを制御する部分である。昇降圧制御部50は、センサ部60が検出した相電流の電流値に基づいて、昇降圧回路部30からの出力電圧を制御する部分である。センサ部60は、モータ部10の各相を流れる相電流や回転子の位置を検出する部分である。
【0023】
スイッチ制御部40および昇降圧制御部50は、予め定められたプログラムに従って情報処理を行うCPU(中央演算処理装置:Central Processing Unit)等で実現される。また、スイッチ制御部40および昇降圧制御部50はモータ装置100の各部から情報を取得してプログラムに従って演算処理を行う。スイッチ制御部40および昇降圧制御部50には、メモリー装置や入出力装置、表示装置などが接続され、プログラムやデータの記録、演算結果の出力や表示等を行うこととしてもよい。またスイッチ制御部40および昇降圧制御部50は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、当該プログラムを実行することで本発明におけるモータ装置100の制御方法を実行する。
【0024】
図2は、本実施形態に係るモータ装置100の一例を示す模式図であり、図2(a)は回路図であり、図2(b)はモータ部10の構造例を示す模式図である。図2(a)に示すように、本実施形態のスイッチインバータ部20は、昇降圧回路部30の高電位と接地電位(0V)の間に3つのスイッチ群が並列に接続されている。各スイッチ群には、3つのスイッチが含まれて直列接続されており、合計9個のスイッチでスイッチインバータ部20が構成されている(以下9スイッチインバータという)。各スイッチは、それぞれドレインが電源電圧側(上流側)に接続され、ソースが接地電圧側(下流側)に接続されている。また、各スイッチとしてMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いる場合には、ソースとドレインの間に寄生ダイオードが並列に逆接続された等価回路となる。
【0025】
また、モータ部10は、A相巻線、E相巻線、C相巻線の3つの巻線(コイル)で構成される第1系統の三相巻線と、D相巻線、B相巻線、F相巻線の3つの巻線で構成される第2系統の三相巻線を備えている。1列目のスイッチ群には、電源電位側から順にA相スイッチと、中間スイッチADと、D相スイッチが直列接続されている。また、A相スイッチと中間スイッチADの間がA相巻線の一端に接続されている。また、中間スイッチADとD相スイッチの間がD相巻線の一端に接続されている。2列目のスイッチ群には、電源電圧側から順にE相スイッチと、中間スイッチEBと、B相スイッチとが直列接続されている。また、E相スイッチと中間スイッチEBの間がE相巻線の一端に接続されている。また、中間スイッチEBとB相スイッチの間がB相巻線の一端に接続されている。3列目のスイッチ群には,電源電圧側から順にC相スイッチと、中間スイッチCFと、F相スイッチとが直列接続されている。また、C相スイッチと中間スイッチCFの間がC相巻線の一端に接続されている。また、中間スイッチCFとF相スイッチの間がF相巻線の一端に接続されている。
【0026】
図2(a)では、スイッチインバータ部20としてA相スイッチ~F相スイッチと、3つの中間スイッチを用いた9スイッチインバータを用いた例を示しているが、中間スイッチに代えてダイオードを逆接続した改良型9スイッチインバータを用いるとしてもよい。
【0027】
また、図2(a)に示した例では、A相巻線、B相巻線、C相巻線、D相巻線、E相巻線、F相巻線は、この順に円環状に直列に接続されたヘキサゴン結線とされている。モータ部10の巻線としては、ヘキサゴン結線に限定されず、A相巻線、E相巻線、C相巻線、D相巻線、B相巻線、F相巻線の他端が共通の中性点に接続されたスター結線であってもよい。
【0028】
図2(a)に示したように本実施形態では、昇降圧回路部30は電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間にスイッチSW1とスイッチSW2が直列接続されている。また、スイッチSW1とスイッチSW2の間がコイルLの一端に接続され、コイルLの他端がスイッチインバータ部20の高電位側に接続されている。したがって、図2(a)に示した例では、昇降圧回路部30は降圧回路を構成している。
【0029】
図2(b)に示すように、本実施形態のモータ部10は、回転軸を中心に可能に配置された回転子(ロータ)11と、回転子11の周囲に配置された固定子(ステータ)12を備えている。
【0030】
回転子11には、外周に沿って強磁性体からなるロータティースが配置されている。固定子12は、コアバック部とその内周に突出して形成された複数のティース部13を備えている。また、各ティース部13には円周方向に順番にA相、B相、C相、D相、E相およびF相の巻線(コイル)14が2周期巻回されている。ここで、A相巻線、E相巻線、C相巻線によって第1系統の三相巻線が構成され、D相巻線、B相巻線、F相巻線によって第2系統の三相巻線が構成されている。
【0031】
コアバック部は、回転子11の外側に回転子11の外周を円周状に取り囲むように配置された部分であり、内周に複数のティース部13が等間隔に突出して形成されている。コアバック部には公知のものを用いることができ、構成する材料や構造は限定されない。また、コアバック部よりも外周には別途モータハウジング等の部材が設けられている。
【0032】
ティース部13は、コアバック部の内周面から回転子11に向かって突出して形成された突起状部分であり、各ティース部13は同じ長さと形状で形成されるとともに等間隔に配置されており、各ティース部13の間には間隔が設けられてスロットを構成している。各ティース部13およびスロットには、巻線14が巻回されており、巻線14に電流が流れることでティース部13に磁界が発生する。
【0033】
ここで、A相巻線、E相巻線およびC相巻線は、それぞれ1/3周期の差で配置されており第1系統の三相巻線を構成している。同様に、D相巻線、B相巻線およびF相巻線も、それぞれ1/3周期の差で配置されており第2系統の三相巻線を構成している。図2(b)では、回転子11が10個のロータティースを備え、固定子12が12個のティース部13を備えた10極12スロットのスイッチトリラクタンスモータの例を示している。モータ部10の極数Pとスロット数Sは、10極12スロットには限定されないが、P:S=5:6の比率となっている。また、ティース部13への各相の巻回方法も集中巻きに限定されず分布巻きであってもよい。
【0034】
図1および図2に示したモータ装置100では、昇降圧制御部50が降圧率を設定し、昇降圧回路部30のスイッチSW1,SW2のオン/オフを制御する。昇降圧回路部30から出力される電圧が電源電位+Vから低下した割合が降圧率であり、電源電位+Vと同じ出力の場合には降圧率が0%である。昇降圧回路部30の動作期間において、スイッチSW1にオン信号が印加されている時間の割合(デューティ比)が大きいほど降圧率が小さく、小さいほど降圧率が大きくなる。降圧率0%ではデューティ比は100%であり、常にスイッチSW1にオン信号が印加される。降圧率が0%より大きくなると、デューティ比が小さくなるようにスイッチSW1にパルス幅を変えた電圧が印加される。具体的には、スイッチSW1とスイッチSW2には相補的な信号が入力され、スイッチSW1がオンの場合にはスイッチSW2がオフとされ、スイッチSW1がオフの場合にはスイッチSW2がオンとされる。スイッチSW1とスイッチSW2のオン/オフを切り替える際に両者が瞬間的にオフとなるような期間を設けてもよい。
【0035】
モータ部10をパルス制御で駆動する場合には、スイッチ制御部40は、A相スイッチからF相スイッチの各スイッチに対して、オン信号とオフ信号を180度(π)ずつ交互に印加する。また、A相スイッチ~F相スイッチのオン信号とオフ信号は、それぞれ60度(π/6)ずつ位相がずれている。また、A相スイッチとD相スイッチ、B相スイッチとE相スイッチ、C相スイッチとF相スイッチには、位相が180度(π)異なって互いに反転した信号が印加される。換言すると、A相スイッチからF相スイッチには、A相、C相、E相と、B相、D相、F相の2つの三相交流信号が印加されている。したがって、各相のスイッチにオン信号が印加されると各相の巻線に相電流が流れ、モータ部10の回転子11が回転動作される。
【0036】
次に、スイッチ制御部40がパルス制御でスイッチインバータ部20を制御すると同時に、各相の相電流をヒステリシス制御する場合について図3および図4を用いて説明する。上述したようにパルス制御では各相の位相が60度ずつ異なっており、同時にヒステリシス制御の対象となる相の数は最大で3であるため、以下ではB相、C相、D相の連続した3相がヒステリシス制御の対象とされた場合を一例として説明する。しかし、ヒステリシス制御の対象は、回転子11の角度に応じて逐次変化しており、1相または連続した2相が制御対象となる場合もある。
【0037】
図3は、本実施形態における昇降圧制御部50の動作を示すフローチャートである。このフローチャートでは、昇降圧回路部30の昇圧率が0%で、電源電位+Vがそのまま出力電圧とされている場合を想定している。はじめにステップS1では、センサ部60がモータ部10のA相巻線~F相巻線に流れる相電流を検出する。各相電流の検出が終了するとステップS2に移行する。
【0038】
次にステップS2では、検出した相電流が予め設定された下限値(第1電流値)以下であるか否かを判定する。相電流が下限値以下の場合にはステップS3に移行し、その他の場合にはステップS4に移行する。
【0039】
ステップS3では、下限値以下の電流値であった相電流の各相に関して、相に対応して記憶されている調整フラグを1(真状態)に設定する。具体的には、相電流の値が下限値以下の範囲で増大または減少している場合には調整フラグは1に設定される。また、相電流の値が下限値よりも大きい値から下限値を下回った場合にも調整フラグは1に設定される。モータ部10の回転開始時には全ての相で電流値が下限値以下であるため、A相からF相の全てに対応する調整フラグが1に設定される。調整フラグの設定が完了するとステップS4に移行する。
【0040】
ステップS4では、相電流の値が下限値以上の相をヒステリシス制御の対象とする。この制御対象の選定は、対応する調整フラグが1(真状態)に設定されているか、0(偽状態)に設定されているかとは無関係である。一例としては、A相からF相の全ての相で調整フラグが1に設定されており、B相、C相、D相の3相において相電流が下限値以上の場合には、B相、C相、D相の3相がヒステリシス制御の対象に選定される。他の例としては、D相とE相の2相において相電流が下限値以上の場合には、D相とE相の2相がヒステリシス制御の対象に選定される。ヒステリシス制御の対象選定が終了するとステップS5に移行する。
【0041】
ステップS5では、ヒステリシス制御の対象とされた各相について、相電流が上限値(第2電流値)以上であるか否かを判定する。相電流が上限値以上の場合にはステップS6に移行し、その他の場合にはステップS7に移行する。
【0042】
ステップS6では、上限値以上の電流値であった相電流の各相に関して、相に対応して記憶されている調整フラグを0(偽状態)に設定する。具体的には、相電流の値が下限値以下の範囲から増大して上限値に到達した場合には調整フラグは0に設定される。一例としては、D相において相電流が上限値以上の場合には、D相に対応した調整フラグが0に設定される。調整フラグの設定が完了するとステップS7に移行する。
【0043】
ステップS7では、ヒステリシス制御の対象に選定された全ての相の調整フラグが1に設定されているか否かを判定する。換言すると、ヒステリシス制御の対象に選定された各相の調整フラグを乗算した結果が1であるか否かを判定する。全てのヒステリシス制御の対象で調整フラグが1の場合にはステップS1に移行し、何れか一つでも調整フラグが0の場合にはステップS8に移行する。一例としては、ヒステリシス制御の対象にB相、C相、D相が選定され、この3相の調整フラグが1の場合にはステップS1に移行し、例えばD相の調整フラグが0の場合にはステップS8に移行する。他の例としては、ヒステリシス制御の対象にD相とE相が選定され、この2相の調整フラグが1の場合にはステップS1に移行し、例えばD相の調整フラグが0の場合にはステップS8に移行する。
【0044】
ステップS8では、昇降圧制御部50は昇降圧回路部30からの出力電圧が低下するような制御を行う。図2(a)に示した例では、昇降圧回路部30として降圧回路を用いているため、降圧率を高めるような制御を行う。具体的には、昇降圧回路部30のスイッチSW1に対してオフ信号を印加し、スイッチSW2に対してオン信号を印加する。これにより、電源電位+VはスイッチSW1のオフにより切り離され、コイルLとスイッチSW2を介した電圧が出力され、経時的に出力電位が低下していく。出力電圧を低下させる制御を行った後に、ステップS9に移行する。
【0045】
ステップS9では、制御を終了するか否かを判定する。モータ装置100に対して停止指示が送出された場合等には制御を終了し、制御終了の指示が無い場合にはステップS1に移行して制御が継続される。
【0046】
図4は、本実施形態におけるヒステリシス制御の動作を模式的に説明するグラフである。図中の縦軸は相電流の大きさを模式的に示しており、上限値と下限値とその中間の閾値が設定されている。また、図中の横軸は時間経過を示している。
【0047】
図4(a)に示した例では、相電流が下限値以下から増大している際には調整フラグは1であり、下限値以上で上限値未満の範囲では調整フラグは1を維持している。いずれかの相電流が上限値に到達すると、該当する相に対応する調整フラグは0に設定され、昇降圧回路部30の出力電圧低下とともに相電流が低下する。相電流が上限値から下限値の範囲で減少している間は、調整フラグは0が維持されている。その後に相電流が下限値にまで到達すると、調整フラグは1に設定される。その後も、相電流の増減によって上限値以上となった場合には調整フラグは0に設定され、下限値以下になった場合には調整フラグは1に設定される。ヒステリシス制御である全ての相の調整フラグが1の場合には、出力電圧は当初の設定値に戻される。
【0048】
図4(b)に示した例では、相電流が下限値以下から増大している際には調整フラグは1であり、下限値以上で上限値未満の範囲では調整フラグは1を維持している。このとき、相電流が上限値に到達する前に減少した場合にも、調整フラグは1を維持する。さらに時間が経過していずれかの相電流が上限値に到達すると、該当する相に対応する調整フラグは0に設定され、昇降圧回路部30の出力電圧低下とともに相電流が低下する。相電流が上限値から下限値の範囲で減少または増加している間は、調整フラグは0が維持されている。このとき、相電流が下限値に到達する前に増加した場合にも、調整フラグは0を維持する。その後に相電流が下限値にまで到達すると、調整フラグは1に設定される。ヒステリシス制御である全ての相の調整フラグが1の場合には、出力電圧は当初の設定値に戻される。
【0049】
図5は、A相巻線からF相巻線に流れる相電流のシミュレーション結果を示すグラフである。図中の縦軸は相電流(A)の値を示し、横軸は時間経過(秒)を示している。また、グラフ中において実線はA相、太い破線はB相、一点鎖線はC相、二点鎖線はD相、細い破線はE相、ドット線はF相の相電流波形をそれぞれ示している。図5に示したようにA相からF相のそれぞれが位相の異なる波形を示しており、循環電流が発生していないことが確認できる。
【0050】
図3および図4で説明したように、本実施形態のモータ装置100では、相電流が下限値以上の相をヒステリシス制御の対象とし、相電流が上限値に到達した場合に調整フラグを0とし、下限値以下になった場合に調整フラグを1とする。また、ヒステリシス制御対象のうち1つでも調整フラグが0である場合には昇降圧回路部30の出力電圧を低下させる。これにより、何れか一つの相電流が上限値に達すると出力電圧が低下されて、相電流値も減少していく。この出力電圧の低下と相電流の減少は、上限値に達した相の相電流が下限値に到達するまで継続される。また、ヒステリシス制御である全ての相の調整フラグが1になった場合には、出力電圧は当初の設定値に戻される。
【0051】
したがって、センサ部60が検出した相電流の値に基づいて、A相からF相の相電流が上限値を超えないように、昇降圧回路部30からの出力電圧が制御される。換言すると、各相の相電流が上限値を超えない範囲で、最も大きな出力電圧が昇降圧回路部30から出力される。これにより、循環電流の発生を抑制しながら各相の相電流が上限値を超えないようにヒステリシス制御を行い、かつ昇降圧回路部30からの出力電圧を不必要に低減せず、モータ装置100の出力を最大化することが可能となる。
【0052】
(第1実施形態の変形例)
図3では、昇降圧回路部30から電源電位+Vが出力されている場合の例を示したが、本変形例では、昇降圧回路部30が所定の降圧率で動作されている最中のヒステリシス制御について説明する。図2(a)に示したように、昇降圧回路部30が降圧回路の場合には、スイッチSW1にオン信号が印加されているデューティ比によって降圧率が決定され、電源電位+Vから降圧率に相当する電位だけ低下された出力電圧が出力される。このように降圧回路が動作中には、スイッチSW1にオン信号が印加されているタイミングと、オフ信号が印加されているタイミングが混在している。
【0053】
表1は、スイッチSW1に印加されている信号がオンの場合を「1」とし、オフ信号の場合を「0」とした場合の指令パターンを示している。表中の降圧回路の欄は、スイッチSW1に印加されている信号を示している。表中のヒステリシス制御対象の欄は、下限値以上の相電流でヒステリシス制御対象とされた相の調整フラグを示している。表中のスイッチのON/OFFは、スイッチSW1に対する新たな信号を示している。表1では、B相、C相、D相の3相がヒステリシス制御の対象に選定された例を示しているが、対象相は任意であり、相数も1相または連続する2相の場合も有り得る。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示したように、指令パターン1から4は、設定された降圧率に基づいてスイッチSW1にオン信号が印加されているタイミングの場合である。指令パターン5から8は、設定された降圧率に基づいてスイッチSW1にオフ信号が印加されているタイミングの場合である。第1実施形態で図3に示した降圧回路からの出力が電源電位+Vそのままの場合は、降圧率が0%でありスイッチSW1のデューティ比が100%の場合であり、指令パターン1から4のみでの駆動に相当している。
【0056】
表1に指令パターン1として示したように、設定された降圧率での動作においてスイッチSW1にオン信号が印加されており、かつ全てのヒステリシス制御対象相の調整フラグが1(真状態)である場合にのみ、降圧回路のスイッチSW1に対してオン信号が印加される。スイッチSW2に対しては、スイッチSW1と相補的にオフ信号が印加される。その他の指令パターン2~8では、設定された降圧率での動作においてスイッチSW1に印加される信号と、ヒステリシス制御対象相の調整フラグの何れかが0となっており、降圧回路のスイッチSW1に対してオフ信号が印加される。
【0057】
表1で示した指令パターン1~8で昇降圧回路部30のスイッチSW1を制御することで、ヒステリシス制御対象相の調整フラグの何れか一つに偽状態が含まれると、設定された降圧率よりもスイッチSW1に印加されるオン信号のデューティ比が低下する。これは昇降圧回路部30からの降圧率を低下させることを意味している。
【0058】
表2は、昇降圧回路部30の降圧回路として、図2(a)に示した以外の構成を用いた場合の制御を示している。表2に示すように、ヒステリシス制御対象相の調整フラグが全て1(真状態)の場合にのみ、昇降圧制御部50は設定された降圧率を維持する。また、ヒステリシス制御対象相の調整フラグの何れか一つに偽状態が含まれる場合には、昇降圧制御部50は設定された降圧率を上昇させ、出力電圧を低下させる。
【0059】
一例としては、電源電位が+Vであり、昇降圧制御部50が設定された降圧率20%で昇降圧回路部30を動作させている場合には、出力電圧が+0.8Vである。ヒステリシス制御対象相の調整フラグの何れかに0が含まれている場合には、昇降圧制御部50は降圧率を25%に上昇させて昇降圧回路部30からの出力電圧を+0.75Vに制御する。
【0060】
【表2】
【0061】
本変形例においても、循環電流の発生を抑制しながら各相の相電流が上限値を超えないようにヒステリシス制御を行い、かつ昇降圧回路部30からの出力電圧を不必要に低減せず、モータ装置100の出力を最大化することが可能となる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。図6は、本実施形態に係るモータ装置100の一例を示す回路図である。図6に示したように、本実施形態のモータ装置100はモータ部10と、スイッチインバータ部20と、昇降圧回路部30を備えている。本実施形態では昇降圧回路部30として昇圧回路を用いる点が第1実施形態と異なっている。
【0063】
図6に示したように本実施形態では、昇降圧回路部30はスイッチSW1とスイッチSW2が直列接続されており、スイッチSW1とスイッチSW2の間がコイルLの一端に接続され、コイルLの他端が電源電圧(+V)に接続されている。したがって、図6に示した例では、昇降圧回路部30は降圧回路を構成している。
【0064】
表3に示すように、第2実施形態と同様に昇降圧制御部50は、A相からF相の巻線に流れる相電流に基づいて調整フラグを1(真状態)または0(偽状態)に設定し、相電流が下限値以上の相をヒステリシス制御対象として選定する。また昇降圧制御部50は、ヒステリシス制御対象相の調整フラグが全て1(真状態)の場合には、設定された昇圧率を維持して昇降圧回路部30からの出力電圧を維持する。また昇降圧制御部50は、ヒステリシス制御対象相の調整フラグの何れかが0(偽状態)の場合には、設定された昇圧率を低下させて昇降圧回路部30からの出力電圧を低下させる。
【0065】
一例としては、電源電位が+Vであり、昇降圧制御部50が設定された昇圧率100%で昇降圧回路部30を動作させている場合には、出力電圧が+2Vである。ヒステリシス制御対象相の調整フラグの何れかに0が含まれている場合には、昇降圧制御部50は昇圧率を75%に上昇させて昇降圧回路部30からの出力電圧を+1.75Vに制御する。
【0066】
【表3】
【0067】
本実施形態においても、循環電流の発生を抑制しながら各相の相電流が上限値を超えないようにヒステリシス制御を行い、かつ昇降圧回路部30からの出力電圧を不必要に低減せず、モータ装置100の出力を最大化することが可能となる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、スイッチ制御部40がスイッチインバータ部20をベクトル制御し、昇降圧制御部50は各相の電圧デューティ比が所定の比率となるように昇降圧回路部30からの出力電圧を制御する。
【0069】
モータ部10のベクトル制御では、センサ部60が各相の相電流と回転子11の角度を検出して信号波を算出し、搬送波と信号波の比較によってスイッチインバータ部20の各スイッチに印加する信号のパルスを決定している。このような9スイッチインバータを用いたモータ装置100のベクトル制御は、本願出願人によって特許第7086357号公報、特許第7086358号公報等に開示されている。したがってモータ部10のベクトル制御では、信号波と搬送波の比較でスイッチインバータ部20に印加される信号におけるオン期間の割合(電圧デューティ比)が決まる。
【0070】
図7は、本実施形態に係るモータ装置100におけるモータ部10に入力される電圧の高速フーリエ変換解析結果を示すグラフである。図中の横軸は高速フーリエ変換の次数を示し、縦軸は各次数における係数を示している。図中の黒塗りの棒グラフは、スイッチインバータ部20に入力される電圧が12Vで電圧デューティ比が50%の解析結果を示している。図中の白抜きの棒グラフは、スイッチインバータ部20に入力される電圧が6Vで電圧デューティ比が100%の解析結果を示している。
【0071】
図7に示したように、スイッチインバータ部20の各スイッチに印加される信号の電圧デューティ比が低い場合には、モータ部10に入力される電圧に高調波成分が多く含まれることが確認できる。この入力電圧に含まれる高調波成分によって、モータ部10の各巻線には高調波電流が発生するため、回転子11の回転時に高調波鉄損が増加してモータ部10の出力効率が低下してしまう。
【0072】
そこで本実施形態のモータ装置100では、モータ部10の各相に流れる相電流が大きい場合に、スイッチインバータ部20の各スイッチに印加される信号の電圧デューティ比が所定の値となるように、昇降圧制御部50が昇降圧回路部30からの出力電圧を低下させる。
【0073】
具体的には、昇降圧回路部30として降圧回路を用いる場合には降圧率を上昇させ、昇圧回路を用いる場合には昇圧率を低下させる。昇降圧回路部30からの出力電圧が低下すると、モータ部10の各相を流れる相電流の振幅が小さくても、信号波と搬送波の比較で得られる電圧デューティ比が増大する。これにより、モータ部10への入力電圧に含まれる高調波成分を抑制し、回転子11の回転時における高調波鉄損の発生を抑制し、モータ装置100の出力を最大化することが可能となる。
【0074】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
100…モータ装置
10…モータ部
11…回転子
12…固定子
13…ティース部
14…巻線
20…スイッチインバータ部
30…昇降圧回路部
40…スイッチ制御部
50…昇降圧制御部
60…センサ部
【要約】
【課題】駆動時における循環電流や鉄損の発生を抑制し、出力を最大化することが可能なモータ装置を提供する。
【解決手段】回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部(10)と、モータ部(10)に電力を供給するスイッチインバータ部(20)と、電源からの電圧を昇圧または降圧してスイッチインバータ部(20)に供給する昇降圧回路部(30)と、モータ部(10)の各相の電流値を検出するセンサ部(60)と、スイッチインバータ部(20)に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部(40)と、昇降圧回路部(30)の動作を制御する昇降圧制御部(50)とを備え、昇降圧制御部(50)は電流値に基づいて昇降圧回路部(30)からの出力電圧を制御するモータ装置(100)。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9