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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】冷却システム及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
F25J1/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019197967
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071228
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 信介
(72)【発明者】
【氏名】平井 寛一
(72)【発明者】
【氏名】弘川 昌樹
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215089(JP,A)
【文献】特開2009-204080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00- 5/00
F25D 1/00- 9/00
F28D 1/00-13/00
F25D 17/00-17/02
B63B 25/16
F17C 13/00
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の冷媒ガスを冷却して第1の冷媒液を生成する冷却システムであって、
前記第1の冷媒ガスを熱交換器に循環させる循環ラインと、第2の冷媒液を供給して前記熱交換器にて前記第1の冷媒ガスと熱交換させる循環ラインと、を有し、
第2の冷媒液を冷却する冷凍機と、第2の冷媒液を貯液する貯槽と、第2の冷媒液を前記貯槽から前記冷凍機へ循環させる循環ラインと、を有し、
前記冷凍機で冷却された第2の冷媒液を前記貯槽に返送し、
前記熱交換器が分割されて少なくとも2つの熱交換器を有し、分割された前記熱交換器の間から第2の冷媒液の少なくとも一部を前記冷凍機へと導入する循環ラインを有することを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が並列に接続される請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が直列に接続される請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
第1の冷媒ガスを冷却して第1の冷媒液を生成する冷却システムにおける冷却方法であって、
前記冷却システムが、前記第1の冷媒ガスを熱交換器に循環させる循環ラインと、第2の冷媒液を供給して前記熱交換器にて前記第1の冷媒ガスと熱交換させる循環ラインと、第2の冷媒液を冷却する冷凍機と、第2の冷媒液を貯液する貯槽と、を有し、
前記冷却システムが待機状態のときに、第2の冷媒液を前記貯槽から前記冷凍機へ循環させて前記第2の冷媒液を冷却して前記貯槽に返送することを特徴とする冷却方法。
【請求項5】
前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が並列に接続される請求項に記載の冷却方法。
【請求項6】
第1の冷媒ガスを冷却して第1の冷媒液を生成する冷却システムにおける冷却方法であって、
前記冷却システムが、前記第1の冷媒ガスを熱交換器に循環させる循環ラインと、第2の冷媒液を供給して前記熱交換器にて前記第1の冷媒ガスと熱交換させる循環ラインと、第2の冷媒液を冷却する冷凍機と、第2の冷媒液を貯液する貯槽と、を有し、
前記熱交換器が分割されて少なくとも2つの熱交換器を有し、
前記冷却システムが稼動状態のときに、分割された前記熱交換器の間から第2の冷媒液の少なくとも一部を前記冷凍機に導入して冷却することを特徴とする冷却方法。
【請求項7】
前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が直列に接続される請求項に記載の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却システム及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの液化プラントは、多くのガス田に接近した場所に設置されている。液化方式は主にカスケード方式と混合冷媒方式がある。いずれの冷却方法においても、天然ガスの液化能力は数100万トン/年と大型の冷却システムが採用され大量の天然ガスを液化することができる。液化プラントはスケールメリットが大きいため、新しいプラントほど大型化している。冷却システムの圧縮機は一軸あたりの出力が数10~100MW以上と大型のものが使用される。
【0003】
一方で、液化天然ガス(以下、「LNG」ともいう)、液体窒素、液体ヘリウム向けの低温機器を使用する設備では、例えば、LNGによる冷却の場合、使用されたLNGは昇温しガス化するが、大気放出することは可燃性ガスであることやエネルギー利用の点から望ましくない。LNGの海上輸送では、ガス化した天然ガスは船舶の動力として利用しているが、一般的に低温機器の使用設備には定常的に天然ガスを利用できる設備がないため、ガスを再冷却し液化して再利用することが好ましい。
【0004】
そこで、天然ガスの液化方法の1つとして、熱交換器を介して液体窒素による液化システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-90138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、6t/hの天然ガスを45℃から-160℃まで冷却して液化する場合を考える。天然ガスは多成分であるが、メタンが組成の大半を占めるため、冷却プロセスの検討では天然ガスをメタン100%と仮定する。冷却に3.0MPaGの液体窒素を使用する場合、液体窒素の温度は飽和温度である124.3Kである。熱交換器の温端ロスを5℃と仮定すれば、天然ガスを液化するために必要となる液体窒素の量は17.9t/hとなる。したがって、液化には、天然ガスの使用量に対して3倍の液体窒素を消費することになる。
消費した液体窒素は、ローリーなどにより補充すればよいが、補充頻度は少ない方が望ましい。液体窒素の貯蔵設備を大型化する方法が考えられるが、製作費用が高くなるという問題もある。また、試験設備の待機中には、貯蔵設備への侵入熱により液体窒素が昇温されガスを大気へ放出する必要も生じるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、ガス化した天然ガスを液化する液化能力を高めることができ、かつ第2の冷媒液の消費量を低減することができる冷却システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の構成によって解決される。
[1]第1の冷媒ガスを冷却して第1の冷媒液を生成する冷却システムであって、
前記第1の冷媒ガスを熱交換器に循環させる循環ラインと、第2の冷媒液を供給して前記熱交換器にて前記第1の冷媒ガスと熱交換させる循環ラインと、を有し、
第2の冷媒液を冷却する冷凍機と、第2の冷媒液を貯液する貯槽と、第2の冷媒液を前記貯槽から前記冷凍機へ循環させる循環ラインと、を有し、
前記冷凍機で冷却された第2の冷媒液を前記貯槽に返送し、
前記熱交換器が分割されて少なくとも2つの熱交換器を有し、分割された前記熱交換器の間から第2の冷媒液の少なくとも一部を前記冷凍機へと導入する循環ラインを有することを特徴とする冷却システムである
[2]前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が並列に接続される[1]に記載の冷却システムである。
] 前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が直列に接続される[1]に記載の冷却システムである。
] 第1の冷媒ガスを冷却して第1の冷媒液を生成する冷却システムにおける冷却方法であって、
前記冷却システムが、前記第1の冷媒ガスを熱交換器に循環させる循環ラインと、第2の冷媒液を供給して前記熱交換器にて前記第1の冷媒ガスと熱交換させる循環ラインと、第2の冷媒液を冷却する冷凍機と、第2の冷媒液を貯液する貯槽と、を有し、
前記冷却システムが待機状態のときに、第2の冷媒液を前記貯槽から前記冷凍機へ循環させて前記第2の冷媒液を冷却して前記貯槽に返送することを特徴とする冷却方法である。
] 前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が並列に接続される[]に記載の冷却方法である。
] 第1の冷媒ガスを冷却して第1の冷媒液を生成する冷却システムにおける冷却方法であって、
前記冷却システムが、前記第1の冷媒ガスを熱交換器に循環させる循環ラインと、第2の冷媒液を供給して前記熱交換器にて前記第1の冷媒ガスと熱交換させる循環ラインと、第2の冷媒液を冷却する冷凍機と、第2の冷媒液を貯液する貯槽と、を有し、
前記熱交換器が分割されて少なくとも2つの熱交換器を有し、
前記冷却システムが稼動状態のときに、分割された前記熱交換器の間から第2の冷媒液の少なくとも一部を前記冷凍機に導入して冷却することを特徴とする冷却方法である。
] 前記冷凍機が、少なくとも2台であり、
前記冷凍機が直列に接続される[]に記載の冷却方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガス化した天然ガスを液化する液化能力を高めることができ、かつ第2の冷媒液の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の冷却システムの一例を示す概略図である。
図2図2は、従来の冷却システムの一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の冷却システムの他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(冷却システム、及び冷却方法)
本発明の冷却システムは、第1の冷媒ガスを熱交換器に循環させる循環ライン(以下、「第1の循環ライン」とも称することがある)と、第2の冷媒液を供給して熱交換器にて第1の冷媒ガスと熱交換させる循環ライン(以下、「第2の循環ライン」とも称することがある)と、第2の冷媒液を冷却する冷凍機と、第2の冷媒液を貯液する貯槽(以下、「第2の冷媒液貯槽」とも称することがある)と、第2の冷媒液を貯槽から冷凍機へ循環させる循環ライン(以下、「第3の循環ライン」とも称することがある)と、を有し、熱交換器が分割されて少なくとも2つの熱交換器を有する場合、分割された前記熱交換器の間から第2の冷媒液の少なくとも一部を前記冷凍機へと導入する循環ライン(以下、「第4の循環ライン」とも称することがある)、低温機器、第1の冷媒液を貯液する貯槽(以下、「第1の冷媒液貯槽」とも称することがある)を有することが好ましい。
【0012】
<第1の冷媒液、第1の冷媒ガス、第2の冷媒液、及び第2の冷媒ガス>
第1の冷媒液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液体天然ガス(LNG)、液体窒素、液体ヘリウム、液体水素、ネオン、又はこれらの混合液体などが挙げられる。
第1の冷媒ガスとしては、第1の冷媒液が気化したものであり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ガス(NG)、窒素ガス、ヘリウムガス、水素ガス、ネオンガス、又はこれらの混合ガスなどが挙げられる。
第2の冷媒液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液体窒素などが挙げられる。
第2の冷媒ガスとしては、第2の冷媒液が気化したものであり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒素ガスなどが挙げられる。
【0013】
<熱交換器>
熱交換器としては、2流体間において、熱交換することができれは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プレートフィン型熱交換器などが挙げられる。
熱交換器としては、少なくとも1つ有していればよく、分割されて少なくとも2つ有していてもよい。
【0014】
<冷凍機>
冷凍機は、熱交換器と第2の冷媒液を貯液する貯槽との間に配置される。
冷凍機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、機械式冷凍機などが挙げられ、NeoKelvin(登録商標)-Turbo(大陽日酸株式会社製)などを好適に用いることができる。
【0015】
<貯槽>
貯槽としては、第2の冷媒液貯槽を有し、第1の冷媒液貯槽を有することが好ましい。
貯槽の構造としては、外気の環境温度の影響の点から、例えば、真空二重構造や断熱材を用いた断熱構造が好ましい。これにより、第1の冷媒液又は第2の冷媒液の気化を防ぐことができる。なお、貯槽は、気相部分に接続する図示していない排ガス経路を有していてもよい。これにより、貯槽内の圧力に応じて、気相部分の気化した第1の冷媒液、又は第2の冷媒液を系外に排出できる。
【0016】
<低温機器>
低温機器としては、第1の冷媒液貯槽と、第1の熱交換器との間に配置される。
低温機器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低温液ポンプ、超電導ケーブルなどが挙げられる。
【0017】
<第1の実施形態>
第1の実施形態である冷却システム、及び冷却方法について説明する。
図1は、本発明の冷却システムの一例を示す概略図である。
第1の実施形態の冷却システム1は、冷凍機7により、第2の冷媒液を冷却する構成である。
【0018】
図1の冷却システム1は、第1の循環ラインL1と、第2の冷媒液を供給して熱交換器5、6にて第1の冷媒ガスと熱交換させる第2の循環ラインL2とを有し、第2の冷媒液を冷却する冷凍機7、第2の冷媒液貯槽4、第2の冷媒液を第2の冷媒液貯槽4から冷凍機7へ循環させる第3の循環ラインL3、熱交換器の間から第2の冷媒液の少なくとも一部を前記冷凍機へと導入する第4の循環ラインL4、第1の冷媒液貯槽3、第1の冷媒液貯槽3と熱交換器5の間に、低温機器2を有する。
【0019】
以下に、設備の待機時、及び設備の稼動時における冷却システム1の操作について説明する。
なお、設備の待機時とは、冷却システムを有する設備が稼動しておらず、低温機器が待機状態となっており、第1の冷媒液が循環していない状態を意味し、設備の稼動時とは、冷却システムを有する設備が稼動しており、第1の冷媒液が循環している状態を意味する。
設備としては、特に制限はないが、例えば、液化天然ガス貯蔵設備、実験施設などが挙げられる。
【0020】
<設備の待機時>
設備の待機時においては、第1の冷媒液が循環していないため、第2の冷媒液は熱交換器に供給されない。そのため、第2の冷媒液貯槽4において、第2の冷媒液が貯液されることになるが、第2の冷媒液は侵入熱によって昇温され貯槽内の圧力が上昇する。そこで、昇温された第2の冷媒液を第3の循環ラインL3を通して、冷凍機に導入して冷却する。なお、第3の循環ラインL3と第2の循環ラインL2とは第2の冷媒液貯槽4の二次側から冷凍機7の一次側までのラインの一部を共有している。
【0021】
具体的には、熱交換器6を経由せずに第2の冷媒液貯槽4と冷凍機7とを結ぶ第3の循環ラインL3を設け、バルブV1、バルブV2、及びバルブV5を閉じ、バルブV3、及びバルブV4を開き、第2の冷媒液を第2の冷媒液貯槽4と冷凍機7との間を、バルブV3を経由して冷凍機7、バルブV4の流れ方向に循環させる。これにより、貯槽内の第2の冷媒液の温度が低温にて保持されるため、設備が稼動して、第2の冷媒液を第2の循環ラインL2を通して熱交換器に導入し、第1の冷媒ガスと熱交換させる際の寒冷量が大きくなり、より少ない第2の冷媒液の量での冷却が可能である。また、第2の冷媒液貯槽4内の第2の冷媒液の温度を低下させて貯槽内の圧力を下げることができ、貯槽の耐圧上限に達することがないため、第2の冷媒ガスを大気放出する必要がなく、第2の冷媒ガスの浪費を抑制することができる。
【0022】
<設備の稼動時>
設備の稼動時においては、第2の冷媒液を供給して第1の冷媒ガスと熱交換することにより、第1の冷媒液を生成する。
第1の冷媒液は、第1の循環ラインL1において第1の冷媒液貯槽3から低温機器2に供給される。供給された第1の冷媒液は、低温機器2で昇温されて第1の冷媒ガスが生成される。生成された第1の冷媒ガスは、熱交換器5、6に供給される。熱交換器5、6においては、第1の冷媒ガスは、第2の冷媒液を貯蔵する第2の冷媒液貯槽4から供給される低温の第2の冷媒液と熱交換することにより液化して第1の冷媒液となり、第1の冷媒液貯槽3に戻る。
【0023】
第2の冷媒液は、第2の冷媒液貯槽4からバルブV1を有する第2の循環ラインL2を通って分割された熱交換器6に供給される。熱交換器6を通った第2の冷媒液(一部は気化して第2の冷媒ガスとなっていてもよい)は、一部は、熱交換器5に供給され、第1の冷媒ガスと熱交換し、気化して第2の冷媒ガスとなってバルブV2を介して大気に放出される。その他の一部は、熱交換器5、及び熱交換器6の間から導出される。導出された第2の冷媒液は、バルブV5を有する第4の循環ラインL4を通って、冷凍機7に供給され、冷却されてバルブV4を介して液体窒素貯槽4に戻る。
具体的には、バルブV3を閉じ、バルブV1、バルブV2、バルブV5、及びバルブV4を開き、第2の冷媒液を循環させる。
なお、冷凍機7に導入される第2の冷媒液は、熱交換器5を通った第2の冷媒液を戻す構成としてもよい。また、熱交換器を3つ以上有する場合は、第2の冷媒液の抜き出し位置は、分割されたいずれの熱交換器の間でもよく、熱交換効率に併せて適宜選択することができる。
また、設備の稼動時において、冷凍機7を停止した状態で運転することも可能である。この場合、第4の循環ラインL4を通って液体窒素貯槽4に戻る第2の冷媒液は冷却されないため、液体窒素貯槽4内の第2の冷媒液は徐々に温度が上がっていくことになるが、第1の冷媒ガスと熱交換できない温度に昇温するまでは冷凍機7を停止した状態で運転することができる。これにより、冷凍機7の消費電力の低減でき、冷凍機7の故障により冷凍機7が運転できない場合でも、一定期間第1の冷媒ガスを冷却することができる。
【0024】
設備の稼動時において、熱交換器にて冷却する第1の冷媒ガスの温度が低い場合は、第2の冷媒液の必要な寒冷が小さくなる。この場合は、熱交換した第2の冷媒液を大気放出することなく、第4の循環ラインから全量回収することが有効であり、第2の冷却液の消費量を減少することができる。なお、熱交換器にて冷却する第1の冷媒ガスの温度が高い場合においても、熱交換した第2の冷媒液を大気放出することなく、第4の循環ラインから全量回収することも可能であるが、寒冷利用の効率の点から、熱交換器にて冷却する第1の冷媒ガスの温度が低い場合に全量回収することがより好ましい。
【0025】
これにより、第2の冷媒液は熱交換器6で熱交換後、第2の冷媒ガスとしてすべてを大気放出することなく、第4の循環ラインL4より回収して冷却することによって、再利用することができ、ガス化した第1の冷媒ガスを液化するとともに、第2の冷媒液の消費量を低減することができる。
すなわち、第2の冷媒液を機械式冷凍機でサブクール状態まで冷却することにより、第1の冷媒ガスの冷却に利用できる第2の冷媒ガスの寒冷が増加し、より少ない第2の冷媒液の量で冷却ができる。
【0026】
図2は、従来の冷却システムの一例を示す概略図である。従来の冷却システム100の構成については、第1の実施形態の冷却システム1と同一の構成部分について同じ符号を付すると共に説明を省略する。
図2に示すように、従来の冷却システムは、第1の実施形態における、冷凍機7、及び貯槽4から冷凍機7に第2の冷媒液を循環させる循環ラインL3を有していない。
そのため、設備の待機時において、侵入熱による貯槽内の第2の冷媒液が昇温して貯槽の耐圧上限に達した場合、第2の冷媒ガスを大気放出して内圧を低下させる必要があり、第2の冷媒液の浪費が多くなる。また、設備の稼動時において、侵入熱による貯槽内の第2の冷媒液の昇温しているため、寒冷が少なく、第1の冷媒ガスと熱交換して第1の冷媒液を生成するために必要となる第2の冷媒液の消費量が増加する。
【0027】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態である冷却システム、及び冷却方法について説明する。
図3は、本発明の冷却システムの第2の実施形態を示す概略図である。
図3に示すように、第2の実施形態の冷却システム10は、第1の実施形態の冷却システム1に、冷凍機8をさらに有する構成である。第2の実施形態の冷却システム10の構成については、第1の実施形態の冷却システム1と同一の構成部分について同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0028】
第2の実施形態の冷却システム10は、図3においては冷凍機を2つ記載しているが、特に制限はなく、3つ以上有していてもよい。
冷凍機8は、冷凍機7と同様に、熱交換器6と第2の冷媒液貯槽4との間に配置される。
【0029】
<設備の待機時>
設備の待機時においては、第1の実施形態における冷却システム1と同様に、低温機器が待機状態にあり、第1の冷媒液が循環していないため、第2の冷媒液を熱交換手段に供給しない。
そこで、設備の待機時においては、第1の実施形態と同様に、熱交換器6を経由せずに第2の冷媒液貯槽4と冷凍機7、8とを結ぶ第3の循環ラインL3を通って、第2の冷媒液を第2の冷媒液貯槽4と冷凍機7、8との間を循環させる。
【0030】
ここで、第2の冷媒液を第2の冷媒液貯槽4と冷凍機7、8との間を循環させる場合、冷凍機7及び冷凍機8に、直列にて循環させてもよく、並列にて循環させてもよいが、第2の冷媒液は、第2の冷媒液貯槽4における侵入熱による温度上昇分だけ冷却すればよいため、多くの冷凍能力は必要ではなく、熱効率の点から、並列にて循環させることが好ましい。
具体的には、バルブV1、バルブV2、バルブV5、及びバルブV6を閉じ、バルブV3、バルブV4、バルブ7、及びバルブ8を開き、熱交換器6を経由せずに第2の冷媒貯槽4と冷凍機7とを結ぶ第3の循環ラインL3、及び第2の冷媒貯槽4と冷凍機8とを結ぶ第5の循環ラインL5を通り、第2の冷媒液貯槽4と冷凍機7、8との間を循環させる。なお、第3の循環ラインL3と第5の循環ラインL5とは第2の冷媒液貯槽4の二次側から冷凍機7の一次側までのラインの一部を共有している。
【0031】
<設備の稼動時>
設備の稼動時においては、第1の実施形態における冷却システム1と同様に、第1の冷媒ガスを冷却した第2の冷媒液の少なくとも一部は、熱交換器5、及び熱交換器6の間から導出され、バルブV5を有する第4の循環ラインL4を通って、冷凍機に循環され、第2の冷媒液貯槽4に戻る。この場合、第2の冷媒液の冷凍機7及び冷凍機8への循環は、直列にて循環させてもよく、並列にて循環させてもよいが、第2の冷媒液は、熱交換器にて第1の冷媒ガスとの熱交換により温度が高くなっていることから、この第2の冷媒液を冷却するのに多くの冷凍能力が必要であるため、熱効率の点から、冷凍機7及び冷凍機8への第2の冷媒液の循環は直列にて循環させることが好ましい。
具体的には、バルブV4、バルブV3、及びバルブV7を閉じ、バルブV1、バルブV2、バルブV5、バルブV6、及びバルブV8を開き、第2の冷媒液を循環させる。
【実施例
【0032】
以下、第2の実施形態を用いて具体的に、本発明の実施例を説明するが、得られる効果は第1の実施形態においても同様であり、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
図3における冷却システム10を用いて、設備の待機時及び稼動時における第2の冷媒液の消費量を計算した。第1の冷媒液として液化天然ガスを、第2の冷媒液として液体窒素を用いた。また、冷凍機7、8として公称冷凍能力10kWのNeoKelvin(登録商標)-Turbo(大陽日酸株式会社製)をそれぞれ用いた。
【0034】
<設備の待機時>
容量100トン、内圧が3MPaGの第2の冷媒液貯槽4にある飽和の液体窒素(124K)を65Kまで冷却することを考える。この際、冷却システム10において、バルブV1、バルブV2、バルブV5、及びバルブV6を閉め、バルブV3、バルブV4、バルブV7、及びバルブV8を開け、液体窒素貯槽4から液体窒素を冷凍機7、8に並列に供給し、65Kまで液体窒素を冷却した。冷凍機1台あたりの冷凍能力は10kWであるから、液体窒素を冷却するために要する時間は8.5日である。
【0035】
<設備の稼動時>
次に、設備を稼動し、液化天然ガスを液体窒素にて冷却した。具体的には、容量40トン、内圧が0.4MPaGの第一の冷媒液貯槽3から、第1の循環ラインL1を通って、液化天然ガスを流量6t/hで冷温機器に供給した。供給された液化天然ガスは、低温機器で昇温してガス化し、318Kの天然ガスとなり、熱交換器に供給された。熱交換器において、第1の冷媒ガスは、冷凍機7、8により冷却された65Kの液体窒素と熱交換して、113Kに冷却されて液化して液化天然ガスを生成した。液体窒素の供給は、具体的に、バルブV3、バルブV4、バルブV5、バルブV6、バルブV7、及びバルブV8を閉め、バルブV1、及びバルブV2を開け、液体窒素貯槽4から液体窒素を熱交換器に供給して、熱交換によって気化して窒素ガスとなった。熱交換器へ供給する液体窒素の温度は、65Kであり、熱交換器5の出口側の温度は、313Kであった。熱交換器5、6において、天然ガスと熱交換した液体窒素は、バルブV2を介して全量大気放出した。この大気放出によって消費した窒素量(窒素消費量)は、12.2t/hであった。
ここで、318Kの天然ガスの冷却に、65Kの液体窒素を利用する場合、利用可能な寒冷(エンタルピー差)は、463.6kJ/kgとなる。天然ガスを113K(-160℃)まで冷却するために必要な熱量は1,576kWであるので、必要な液体窒素の流量は12.2t/hとなった。結果を下記表1に示す。
【0036】
(実施例2)
実施例2では、設備の稼動時に、熱交換器に供給した液体窒素の一部である0.7t/hを熱交換器5及び熱交換器6の間から、第4の循環ラインL4を通って冷凍機へ循環させた以外は実施例1と同様にして液化天然ガスを液体窒素にて冷却した。具体的に、バルブV3、バルブV4、及びバルブV7を閉め、バルブV1、バルブV2、バルブV5、バルブV6、及びバルブV8を開け、液体窒素貯槽4から液体窒素を供給して、冷凍機を直列に配列して運転した。このときの液体窒素の熱交換器6の出口温度は、120Kとなり、熱交換器5を通り、大気放出された窒素ガスは、313.15K、12.1t/hとなった。熱交換器5及び熱交換器6の間から、液体窒素の一部を冷凍機に循環させることにより、液体窒素の消費量を減少させることができた。結果を下記表1に示す。
【0037】
(比較例1)
図2に示す従来の冷却システムを用いて、設備の稼動時及び待機時における第2の冷媒液の消費量を測定した。第1の冷媒液として液化天然ガスを、第2の冷媒液として液体窒素を用いて、容量40トンの液化天然ガス貯槽3の内圧を0.4MPaG、液化天然ガスの流量を6t/hとした。容量100トンの液体窒素貯槽4に貯蔵された液体窒素は、65Kであった。
【0038】
<設備の待機時>
液体窒素貯槽4中の液体窒素は外部からの侵入熱により温度が上昇して124.3Kとなる。
【0039】
<設備の稼動時>
次に、実施例1と同様の条件にて、第1の冷却液を第1の循環ラインを通って循環させた。第2の冷媒液貯槽4から液体窒素を熱交換器5に供給し、天然ガスと熱交換した後の窒素ガスはすべて大気放出した。放出された窒素ガスは、313K、17.9t/hであった。
ここで、318Kの天然ガスの冷却に、124.3Kの液体窒素を利用する場合、利用可能な寒冷(エンタルピー差)は、317.4kJ/kgとなる。流量6t/hの天然ガスを113K(-160℃)まで冷却して液化するために必要な熱量は1,576kWであるので、必要な液体窒素の流量は17.9t/hとなった。結果を下記表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から、実施例1及び2は、比較例1と比較して、第2の冷媒液である液体窒素の消費量を32%低減することができた。
実施例2では、熱交換器に供給した液体窒素の一部を冷凍機に導入して冷却することにより、効率的に液体窒素を冷却することができ、これにより、第1の冷媒液の冷却効率も向上し、実施例1よりも少ない液体窒素で冷却することが可能となることが分かった。
このことから、小型の冷却システムにて液化能力を高めることができ、かつ液体窒素の消費量を低減することができた。
【0042】
(実施例3)
実施例3では、実施例1の低温機器の作動条件を変更して、低温機器の天然ガスの出口温度(第1の循環ラインL1における熱交換器入口温度)を150Kとしたこと以外は、実施例1と同様にして、液体窒素で天然ガスを冷却した。
その結果、冷却対象である天然ガスの入口温度が低いことから、天然ガスを冷却する65Kの液体窒素の出口温度も低くなり利用できる寒冷が少なくなった。その結果、天然ガスを液化して113K(-160℃)まで冷却するための液体窒素の流量は、13.1t/hであった。結果を下記表2に示す。
【0043】
(実施例4)
実施例4では、実施例3での液体窒素を大気放出することなく、熱交換器5及び6の間から第4の循環ラインを通して液体窒素を導出し、全量回収した。ここで、冷凍機7は運転を停止した状態とした。天然ガスの液化に必要となる交換熱量は956kWであるため、100トンある65Kの液体窒素が124.3Kに昇温するまでの4.1時間液体窒素を全量回収した運転ができた。この際、冷凍機を運転すれば全量回収できる時間はさらに長くなる。なお、冷凍機7の運転を停止しているため、第2の冷却液貯槽内の冷却窒素温度、第1の循環ラインL1の熱交換器入口温度及び出口温度、並びに第4の循環ラインL4の導出量及び温度は徐々に上昇し、熱交換に利用可能な寒冷は徐々に減少した。結果を下記表2に示す。
【0044】
(比較例2)
比較例2では、低温機器の作動条件を変更して、冷温機器の天然ガスの出口温度(第1の循環ラインL1における熱交換器入口温度)を150Kとしたこと以外は、比較例1と同様にして、天然ガスを冷却した。
天然ガスを冷却する124.3Kの液体窒素の場合、熱交換後は昇温するため液体窒素容器へ回収することができない(耐圧を超えるため)、熱交換に利用した液体窒素のすべてを大気放出した。その結果、熱交換に必要な液体窒素の浪費量は29.5t/hとなった。結果を下記表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例1及び比較例1と比較して、入口温度の低い第1の冷媒を冷却する実施例3及び比較例2の場合、より多くの第2の冷媒が必要になるが、実施例4のように第4の循環ラインを利用することにより、一時的に第2の冷媒の消費を抑えることができた。また、冷凍機を併用すればさらに消費量を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1、10、100 冷却システム
2 低温機器
3 液化天然ガス貯槽
4 液体窒素貯槽
5 第1の熱交換手段
6 第2の熱交換手段
7、8 冷凍機
L1、L2、L3、L4 循環ライン
V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8 バルブ
図1
図2
図3