(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20230921BHJP
C01B 25/08 20060101ALI20230921BHJP
C01B 19/04 20060101ALI20230921BHJP
C01G 15/00 20060101ALI20230921BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230921BHJP
【FI】
C09K11/08 A ZNM
C09K11/08 G
C09K11/08 J
C01B25/08 A
C01B19/04 C
C01B19/04 A
C01G15/00 B
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2020059887
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】野島 義弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸司
(72)【発明者】
【氏名】鳶島 一也
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139446(WO,A1)
【文献】特開2007-117937(JP,A)
【文献】特開2008-088397(JP,A)
【文献】特開2011-116904(JP,A)
【文献】特開2021-062334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/08-11/89
C01B 19/00,25/00
C01G 15/00
B82Y 40/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ナノ粒子蛍光体である量子ドットの製造方法であって、
互いに異なる元素を含む第一の前駆体溶液及び第二の前駆体溶液を用い、加熱した溶媒
の表面に向けて前記第一の前駆体溶液及び前記第二の前駆体溶液の両方ともをそれぞれエアロゾルとして噴霧して、前記第一の前駆体溶液と前記第二の前駆体溶液とを反応させて前記互いに異なる元素を含むコア粒子を合成することを特徴とする量子ドットの製造方法。
【請求項2】
前記噴霧を、1流体ノズル又は2流体ノズルを用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項3】
前記噴霧を超音波方式で行うことを特徴とする請求項1に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項4】
前記コア粒子を、II-VI族化合物、III-V族化合物、ペロブスカイト型化合物、若しくは、カルコパイライト型化合物とするか、又はこれらの合金を含むものとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の量子ドットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径がナノサイズである半導体結晶粒子は量子ドットと呼ばれる。光吸収によって生じた励起子がナノサイズの領域に閉じ込められることにより、半導体結晶粒子のエネルギー準位は離散的となり、またそのバンドギャップは半導体結晶の粒子径により変化する。これらの効果により、量子ドットの蛍光発光は一般的な蛍光体と比較して、高輝度かつ高効率でシャープである。
【0003】
また、その粒子径によりバンドギャップが変化するという特性から、発光波長を制御できるという特徴を有しており、固体照明やディスプレイの波長変換材料としての応用が期待されている。例えば、ディスプレイに量子ドットを含有する波長変換材料を用いることで、従来の蛍光体材料よりも広色域化、低消費電力が実現できる。
【0004】
量子ドットを波長変換材料として用いる実装方法として、量子ドットを樹脂材料中に分散させ、透明フィルムで量子ドットを含有した樹脂材料をラミネートすることで波長変換フィルムとしてバックライトユニットに組み込む方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of American Chemical Society 1993, Vol.115, p. 8706-8715
【文献】Journal of American Chemical Society 2003, Vol.125, Issue 41, p. 12567-12575
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、量子ドットは半導体結晶の粒子径によるバンドギャップの変化に応じて発光波長がシフトするため、目的の波長を得るためには、粒子径をナノメートルオーダーで制御しなければならない。また、粒子径のばらつきにより発光がブロードになるという問題がある。
【0008】
一般的に量子ドットは溶液中で前駆体を反応させてコロイド粒子として合成されているが、溶液反応において粒子径をナノメートルオーダーで精密に制御することは容易ではない。また、工業化に際しスケールアップした場合は、溶液反応では前駆体の濃度ムラ、温度分布の問題もあり、粒子径の制御がさらに困難となる。
【0009】
一般的な量子ドットの合成方法としてホットインジェクション法が用いられている。ホットインジェクション法とは、不活性雰囲気下において高温で加熱されたCd、Inなどの金属元素の前駆体の溶液に、S、Se、Pなどの前駆体溶液を素早く投入し、均一な核発生により粒子径の揃ったナノメートルオーダーのコロイド粒子を合成する方法である(非特許文献1)。
【0010】
しかし、ホットインジェクション法は、フラスコサイズの小スケールの合成においては均一なナノメートルオーダーのコロイド粒子の合成が可能であるが、数十L、数百Lの大スケールの合成においては前駆体溶液の投入時に局所濃度ムラが発生し、ナノ粒子の粒子径の均一性が悪くなる。また、合成スケールの大きさに合わせて局所濃度ムラは大きくなり、合成スケールが大きくなるほど粒子径の不均一性が問題となる。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、大スケールの合成において量子ドットの粒子径の不均一性およびそれに伴う発光波長の分布の増大を抑制することができる量子ドットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、結晶性ナノ粒子蛍光体である量子ドットの製造方法であって、互いに異なる元素を含む第一の前駆体溶液及び第二の前駆体溶液を用い、加熱した前記第一の前駆体溶液に、前記第二の前駆体溶液をエアロゾルとして噴霧するか、又は、加熱した溶媒に前記第一の前駆体溶液及び前記第二の前駆体溶液の両方ともをそれぞれエアロゾルとして噴霧して、前記第一の前駆体溶液と前記第二の前駆体溶液とを反応させて前記互いに異なる元素を含むコア粒子を合成する量子ドットの製造方法を提供する。
【0013】
このような量子ドットの製造方法によれば、大スケールの合成において量子ドットの粒子径の不均一性およびそれに伴う発光波長の分布の増大を抑制することができる。
【0014】
このとき、前記噴霧を、1流体ノズル又は2流体ノズルを用いて行うことができる。
【0015】
このような噴霧の方法によれば、大スケールの合成において量子ドットの粒子径の不均一性およびそれに伴う発光波長の分布の増大をより抑制することができる。
【0016】
このとき、前記噴霧を超音波方式で行うことができる。
【0017】
このような噴霧の方法によれば、大スケールの合成において量子ドットの粒子径の不均一性およびそれに伴う発光波長の分布の増大をより抑制することができる。
【0018】
このとき、前記コア粒子を、II-VI族化合物、III-V族化合物、ペロブスカイト型化合物、若しくは、カルコパイライト型化合物とするか、又はこれらの合金を含むものとすることができる。
【0019】
本発明の量子ドットの製造方法において、このようなコア粒子を特に好適に選択することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の量子ドットの製造方法によれば、局所濃度ムラを抑制することができる。また、液滴が微細になるため液滴の表面積が増加し、反応性の向上によって粒子径の制御が可能になる。したがって、大スケールの合成においても均一なサイズのナノ粒子を得ることができるので、所望の発光波長を有し、発光波長の分布が狭い量子ドットを得ることができる。また本発明に係る量子ドットを用いた波長変換材料及び画像表示装置を用いることで色再現性の良い波長変換材料並びに画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態の一例(実施例1、実施例2)を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態の一例(実施例3)を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態の一例(実施例4)を示す図である。
【
図4】比較例1と比較例2で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。
【
図5】比較例3で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。
【
図6】比較例4で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
上述のように、大スケールの合成において量子ドットの粒子径の不均一性およびそれに伴う発光波長の分布の増大を抑制することができる量子ドットの製造方法が求められていた。
【0024】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、結晶性ナノ粒子蛍光体である量子ドットの製造方法であって、互いに異なる元素を含む第一の前駆体溶液及び第二の前駆体溶液を用い、加熱した前記第一の前駆体溶液に、前記第二の前駆体溶液をエアロゾルとして噴霧するか、又は、加熱した溶媒に前記第一の前駆体溶液及び前記第二の前駆体溶液の両方ともをそれぞれエアロゾルとして噴霧して、前記第一の前駆体溶液と前記第二の前駆体溶液とを反応させて前記互いに異なる元素を含むコア粒子を合成する量子ドットの製造方法により、大スケールの合成において量子ドットの粒子径の不均一性およびそれに伴う発光波長の分布の増大を抑制することができることを見出し、本発明を完成した。
【0025】
以下、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態の一例を示す図である。
図1は、反応容器10に収容されている加熱した第一の前駆体溶液11を撹拌棒13で撹拌しているところに、流体ノズル14を用いて、第一の前駆体溶液11とは異なる元素を含む第二の前駆体溶液12をエアロゾル15として噴霧し、第一の前駆体溶液11と第二の前駆体溶液12とを反応させて互いに異なる元素を含むコア粒子を合成している様子を示している。
図1の下部は、反応容器10内の点線で囲われた部分を拡大した模式図である。流体ノズル14によって霧化した第二の前駆体溶液12は、極微小な液滴16となって第一の前駆体溶液11に滴下される。液滴16のサイズは非常に小さいため、第一の前駆体溶液11の局所濃度分布(濃度ムラ)は小さくなる。また、撹拌棒13による撹拌を続けることで、第一の前駆体溶液11の全体に第二の前駆体溶液12の微小な液滴16が行き渡る。そのため、本発明の量子ドットの製造方法によれば、生成粒子のサイズのばらつきが小さくなり、大スケールの合成においても均一なナノ粒子を得ることができる。
【0027】
図2は、本発明の実施形態の別の一例を示す図である。
図2は、反応容器20に収容されている加熱した溶媒29を撹拌棒23で撹拌しているところに、流体ノズル24を用いて、第一の前駆体溶液21及び第一の前駆体溶液21とは異なる元素を含む第二の前駆体溶液22の両方ともを、それぞれエアロゾル25a、25bとして噴霧し、第一の前駆体溶液21と第二の前駆体溶液22とを反応させて互いに異なる元素を含むコア粒子を合成している様子を示している。
【0028】
本発明のコア粒子合成において、加熱した第一の前駆体溶液に、第二の前駆体溶液をエアロゾルとして噴霧して反応させる方法、又は、加熱した溶媒に前記第一の前駆体溶液及び前記第二の前駆体溶液の両方ともをそれぞれエアロゾルとして噴霧して反応させる方法において、前駆体溶液のエアロゾル状態は800μm以下の液体コロイド状態であることが好ましい。エアロゾルの微粒子のサイズは、噴霧方法、噴霧条件により制御することが可能であり、求める量子ドットの特性に応じて適宜選択することができる。
【0029】
前駆体溶液のエアロゾル状態での噴霧方法は特に制限されず、合成装置のスケールや目的の量子ドットの特性に合わせて適宜選択できる。
【0030】
加熱した第一の前駆体溶液に、第二の前駆体溶液をエアロゾルとして噴霧して反応させる方法において、第一の前駆体溶液として加熱する溶液と、第二の前駆体溶液として噴霧する溶液は入れ替えることができる。合成反応させる2種類の溶液は、どちらが第一の前駆体溶液で、どちらが第二の前駆体溶液でも良い。溶液の性質等により適宜選択すればよい。
【0031】
前駆体溶液の噴霧方法として、1流体ノズルや2流体ノズルを用いて行うことが好ましい。特に不活性ガスキャリアを用いた2流体ノズルを用いることで、微粒化性能が高くなり、比較的低圧で微粒化することができ、また、ノズルの詰まりが起こりにくいため好ましい。1流体ノズルおよび2流体ノズルの構造や噴霧圧力、噴霧流量は特に制限されず、目的の特性や反応条件により適宜選択できる。また、液体の供給方式として液加圧方式やサクション方式などがあるが、前駆体溶液の性質により適宜選択できる。さらに、ノズルの噴霧パターンは扇状や円錐状などがあるが、合成スケールや前駆体溶液の反応性などに応じ適宜変更できる。
【0032】
あるいは、前駆体溶液の噴霧方法として、超音波方式で行うことが好ましい。超音波方式による噴霧方法には、超音波ノズルにより直接前駆体溶液を噴霧する方法と、超音波霧化により前駆体溶液をコロイド化し、キャリアガスを用いてコロイド状の前駆体溶液を噴霧する方法がある。噴霧方法は特に制限されず、合成装置のスケールや目的の量子ドットの特性に合わせて適宜選択できる。
【0033】
一般的に量子ドットの合成は、酸素や湿気を除外するために不活性ガス雰囲気下で行われるため、キャリアガスは不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスの種類は自由に選択でき、窒素やアルゴンなどが例示される。
【0034】
また、上記方式を有するノズルを複数個用いてもよく、前駆体溶液に合わせて異なる方式を組み合わせてもよく、合成装置のスケールや合成条件に応じて適宜変更できる。
【0035】
本発明に係る量子ドットの組成は特に制限されず、目的の波長変換材料、光学素子に応じて適宜選択することが可能である。量子ドットのコア粒子の組成としては、II-VI族半導体、III-V族半導体、ペロブスカイト型半導体、若しくは、カルコパイタライト型半導体とするか、又はこれらの合金を含むものとすることが好ましい。その他にも、コア粒子の組成として、II-IV-VI族半導体、II-IV-V族半導体などが例示される。具体的には、CdSe、 CdS、 CdTe、 InP、 InSb、 AlP、 AlSb、 ZnSe、 ZnS、 ZnTe、 Zn3P2、 GaP、 GaSb、 CuInSe2、 CuInS2、 CuInTe2、 CuGaSe2、 CuGaS2、 CuGaTe2、 CuAlSe2、 CuAlS2、 CuAlTe2、 AgInSe2、 AgInS2、 AgInTe2、 AgGaSe2、 AgGaS2、 AgGaTe2、 CsPbCl3、 CsPbBr3、 CsPbI3、 CH3NH3PbCl3及びこれらの混晶などが例示される。
【0036】
本発明に係る量子ドットは特に制限されず、コアシェル構造を有してもよく、また複数のシェルを有していてもよい。
【0037】
量子ドットのシェル層の組成として、 ZnSe、 ZnS、 AlP、 AlN、 GaN、 Ga2S3、 MgSe、 MgSなどが例示される。シェル層は1層であっても良く、また2層以上であっても良く、さらに、コア粒子の組成や目的に応じて適宜変更できる。また、シェルの合成方法は特に制限されず、適宜選択できる。シェル合成方法として、異なる元素のシェル前駆体溶液を交互に滴下して反応させる、SILAR(Successive Ion Layer Adsorption and Reaction)法(非特許文献2)などが例示される。
【0038】
コア粒子及びシェル層のサイズ、形状は特に限定されず、目的の発光波長、特性に合わせて適宜選択できる。例えば、コア粒子は2~6nmとすることができ、シェル層の厚さは0.4~3nmとすることができる。
【0039】
本発明の量子ドットの製造時における温度、濃度等の合成条件は特に制限されず、その組成や目的の発光特性に応じて適宜選択できる。例えば、反応容器内で加熱する前駆体溶液や溶媒の温度は50~320℃とすることができ、濃度としては0.01~3.0M(mol/L)とできる。一方、噴霧する前駆体溶液の温度は50~250℃とすることができ、濃度としては0.01~3.0M(mol/L)とできる。
【0040】
さらに、本発明に係る量子ドットの表面に有機分子や無機分子、あるいはポリマーの被覆層を有していても良い。また、それらの構造は制限されず、被覆層の厚みも目的に応じて適宜選択できる。
【0041】
被覆層の厚みは特に制限されないが、量子ドットの粒子径が100nm未満となる程度の厚みであることが望ましい。量子ドットの粒子径が100nm未満であれば分散性が低下することもなく、光透過率の低下や凝集が生じることもない。被覆層として、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ジメルカプトコハク酸、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、1-ドデカンチオールなどの有機分子やポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリシルセスキオキサン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコールなどのポリマー、シリカやアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化ガリウムなどの無機分子が例示される。
【0042】
また、本発明に係る量子ドットを含有した波長変換材料を提供することができる。波長変換材料として、例えば、波長変換フィルムやカラーフィルタ等の用途が挙げられるが、本発明はこれらの用途に限定されない。本発明に係る量子ドットの効果により、目的の発光波長を有する色再現性が良く、発光効率の良い波長変換材料を得ることができる。
【0043】
例えば、本発明に係る量子ドットを樹脂と混合することで、量子ドットを樹脂中に分散させ、さらに、樹脂材料をラミネートすることで、本発明に係る量子ドットを含有した波長変換フィルムを得ることができる。この工程においては量子ドットを溶媒に分散させたものを樹脂に添加、混合して樹脂中に分散させることができる。また、溶媒を除去し、粉体状となった量子ドットを樹脂に添加して混練することで、樹脂中に分散させることもできる。あるいは樹脂の構成要素のモノマーやオリゴマーを量子ドット共存下で重合させることもできる。量子ドットの樹脂中への分散方法は特に制限されず、例示した方法以外にも目的に応じて適宜選択できる。
【0044】
量子ドットを分散させる溶媒は、用いる樹脂との相溶性があれば良く、特に制限されない。また、樹脂材料は特に制限されず、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を所望の特性に応じて適宜選択できる。これらの樹脂は波長変換材料として効率を高めるため透過率が高いことが望ましく、透過率が80%以上であることが特に望ましい。
【0045】
また、波長変換フィルムには量子ドット以外の物質が含まれていても良く、光散乱体として、シリカやジルコニア、アルミナ、チタニアなどの微粒子が含まれていても良く、無機蛍光体や有機蛍光体が含まれていても良い。無機蛍光体としてはYAG、LSN、LYSN、CASN、SCASN、KSF、CSO、β-SIALON、GYAG、LuAG、SBCA等が、有機蛍光体としてペリレン誘導体、アントラキノン誘導体、アントラセン誘導体、フタロシアニン誘導体、シアニン誘導体、ジオキサジン誘導体、ベンゾオキサジノン誘導体、クマリン誘導体、キノフタロン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ピラリゾン誘導体などが例示される。
【0046】
本発明に係る量子ドットを含有した波長変換材料の作製方法は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。例えば、量子ドットを樹脂に分散させた樹脂組成物を、PETやポリイミドなどの透明フィルムに塗布して硬化させ、ラミネート加工することで波長変換材料を得ることができる。
【0047】
透明フィルムへの塗布はスプレーやインクジェットなどの噴霧法、スピンコートやバーコーター、ドクターブレード法やグラビア印刷法やオフセット印刷法を用いることができ、塗布により樹脂層を形成する。また、樹脂層及び透明フィルムの厚みは特に制限されず、用途に応じて適宜選択することができる。
【0048】
本発明に係る量子ドットの実施形態の1つとして、例えば、本発明に係る量子ドットを含有した波長変換フィルムが、青色LEDに結合された導光パネル面に設置されるバックライトユニットを提供することができる。また、本発明に係る量子ドットを含有した波長変換フィルムが、青色LEDに結合された導光パネル面と液晶ディスプレイパネルとの間に配置される画像表示装置を提供することもできる。
【0049】
これらの実施形態において、本発明に係る量子ドットを含有した波長変換フィルムは光源である1次光の青色光の少なくとも一部を吸収し、1次光よりも波長の長い2次光を放出する。それによって、量子ドットの発光波長に依存した、任意の波長分布を持った光に変換することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0051】
量子ドットの蛍光発光特性評価は量子効率測定システム(大塚電子製QE-2100)を用い、励起波長を450nmとして発光特性を測定した。また、噴霧時の液滴の粒子径はレーザードップラー法による測定値の平均で示した。
【0052】
(実施例1)
図1は、実施例1で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。50Lの反応容器10に、溶媒として10Lの1-オクタデセン、酢酸インジウム200g、ミリスチン酸450gを投入し、脱気処理を120℃で3h行った。脱気後、反応容器10内を窒素ガスで封入し、酸素を遮断した状態で反応を行った。この溶液を第一の前駆体溶液11とする。
【0053】
この第一の前駆体溶液11を280℃まで加熱し、撹拌棒13で撹拌中の第一の前駆体溶液11に、第二の前駆体溶液12として1-オクタデセンで10倍に希釈したトリス(トリメチルシリル)ホスフィン 1.5Lを扇型1流体ノズル14により噴霧し、エアロゾル15状態にして滴下した。噴霧条件は窒素ガス圧力0.05MPa、噴量約1L/minとした。このとき液滴16の平均粒子径は約230μmであった。その後280℃で20min反応させ、InPコア粒子を合成した。
【0054】
無水酢酸亜鉛270gとオレイン酸2L、オレイルアミン1Lを1-オクタデセン5Lに加え、同様に150℃で脱気処理を行い、無水酢酸亜鉛を溶解させることで、亜鉛溶液を調整した。上記で得られたInPコア粒子の溶液を240℃に保持しつつ、亜鉛溶液をチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を240℃に保持したまま30min撹拌した。さらに、溶液の温度を260℃とし、1-ドデカンチオール溶液2.7Lをチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を260℃に保持し60min反応させた。
【0055】
上記の製造方法により、InP/ZnSコアシェル量子ドットが得られた。反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加して量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散された量子ドットを精製した。
【0056】
上記工程により得られたInP/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が532nm、発光の半値幅が40nm、内部量子効率が76%であった。
【0057】
(比較例1)
図4は、比較例1で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。50Lの反応容器10に、溶媒として15Lの1-オクタデセン、酢酸インジウム300g、ミリスチン酸675gを投入し、脱気処理を120℃で3h行った。脱気後、容器内を窒素ガスで封入し酸素を遮断した状態で反応を行った。この溶液を第一の前駆体溶液11とする。
【0058】
この第一の前駆体溶液11を280℃まで加熱し、撹拌棒13で撹拌中の第一の前駆体溶液11に、第二の前駆体溶液12として、1-オクタデセンで10倍に希釈したトリス(トリメチルシリル)ホスフィン 2.2Lを滴下漏斗17により第一の前駆体溶液11中に投入した。この時の滴下時間はおよそ1minであった。その後280℃で20min反応させInPコア粒子を合成した。
図4の下部は、反応容器10内の点線で囲われた部分を拡大した模式図である。第二の前駆体溶液12は、滴下漏斗17によって液滴16として第一の前駆体溶液11に滴下される。
【0059】
無水酢酸亜鉛270g、オレイン酸2L、オレイルアミン1Lを1-オクタデセン5Lに加え、同様に150℃で脱気処理を行い、無水酢酸亜鉛を溶解させることで、亜鉛溶液を調整した。上記で得られたInPコア粒子の溶液を240℃に保持しつつ亜鉛溶液をチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後液温を240℃に保持したまま30min撹拌した。ここにさらに溶液温度を260℃とし、1-ドデカンチオール溶液2.7Lをチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を260℃に保持し60min反応させた。
【0060】
上記の製造方法によりInP/ZnSコアシェル量子ドットが得られた。反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加し量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散された量子ドットを精製した。
【0061】
上記工程により得られたInP/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が539nm、発光の半値幅が52nm、内部量子効率が70%であった。
【0062】
(実施例2)
図1の量子ドットを製造する装置を用いた。50Lの反応容器10に酸化カドミウム123g、ヘキサデシルアミン5.6kg、トリオクチルホスフィンオキシド2.4kg、トリフェニルホスフィン900gを投入し、140℃で脱気処理を3h行った。脱気後、容器内を窒素ガスで封入し、酸素を遮断した状態で反応を行った。この溶液を第一の前駆体溶液11とする。
【0063】
窒素雰囲気下でセレン粉末96gをトリオクチルホスフィン9Lに加え、150℃に加熱撹拌し、セレン粉末を溶解させ、セレン溶液を調整した。この溶液を第二の前駆体溶液12とする。
【0064】
脱気後、反応容器10内の第一の前駆体溶液11を280℃まで加熱した状態でセレン溶液(第二の前駆体溶液12)を円錐形2流体ノズル14により噴霧し、エアロゾル15状態にして滴下した。噴霧条件は窒素ガス圧力0.2MPa、液圧0.2MPa、噴量約3L/minとし、このとき液滴16の平均粒子径は約70μmであった。その後280℃で20min反応させてCdSeコア粒子を合成した。
【0065】
さらステアリン酸亜鉛1.5kgを1-オクタデセン9mLに投入し、150℃に加熱し溶解させ均一溶液とした。
【0066】
窒素雰囲気下で硫黄粉末114gをトリオクチルホスフィン9Lに加え、150℃に加熱撹拌し硫黄粉末を溶解させ、硫黄溶液を調整した。
【0067】
上記CdSeコア溶液を260℃に保持しつつステアリン酸亜鉛溶液をチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を260℃に保持したまま30min撹拌した。ここにさらに溶液温度を280℃とし、硫黄溶液をチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を280℃に保持し60min反応させた。
【0068】
反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加し量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散された量子ドットを精製した。
【0069】
上記工程により得られたCdSe/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が570nm、発光の半値幅が33nm、内部量子効率が82%であった。
【0070】
(比較例2)
図4の量子ドットを製造する装置を用いた。50Lの反応容器10に酸化カドミウム123g、ヘキサデシルアミン5.6kg、トリオクチルホスフィンオキシド2.4kg、トリフェニルホスフィン900gを投入し、140℃で脱気処理を1h行った。脱気後、反応容器10内を窒素ガスで封入し酸素を遮断した状態で反応を行った。この溶液を第一の前駆体溶液11とする。
【0071】
窒素雰囲気下でセレン粉末96gをトリオクチルホスフィン9Lに加え、150℃に加熱撹拌し、セレン粉末を溶解させ、セレン溶液を調整した。この溶液を第二の前駆体溶液12とする。
【0072】
脱気後、反応容器10内の第一の前駆体溶液11を280℃まで加熱した状態でセレン溶液(第二の前駆体溶液12)を滴下漏斗17により溶液中に投入した。この時の滴下時間はおよそ8minであった。その後280℃で20min反応させCdSeコア粒子を合成した。
【0073】
さらステアリン酸亜鉛1.5kgを1-オクタデセン9mLに投入し、150℃に加熱し溶解させ均一溶液とした。
【0074】
硫黄粉末114gをトリオクチルホスフィン9Lに加え、150℃に加熱撹拌し硫黄粉末を溶解させ、硫黄溶液を調整した。
【0075】
上記CdSeコア溶液を260℃に保持しつつステアリン酸亜鉛溶液をチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後液温を260℃に保持したまま30min撹拌した。ここにさらに溶液温度を280℃とし、硫黄溶液をチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を280℃に保持し60min反応させた。
【0076】
反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加し量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散された量子ドットを精製した。
【0077】
上記工程により得られたCdSe/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が575nm、発光の半値幅が38nm、内部量子効率が82%であった。
【0078】
(実施例3)
図2は、実施例3で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。
【0079】
50Lの反応容器20に1-オクタデセン7Lとオレイン酸3Lを投入し、反応容器20内を窒素置換した後、溶液温度を200℃まで加熱した。
【0080】
窒素雰囲気下で1-オクタデセン5Lにジエチル亜鉛55mLを加え混合した。テルル粉末48gとセレン粉末39.5gを、トリオクチルホスフィン5Lにそれぞれ加え、窒素雰囲気下で溶液を150℃に加熱して溶解させた。この溶液をそれぞれ第一の前駆体溶液21及び第二の前駆体溶液22とする。
【0081】
ジエチル亜鉛溶液、テルルとセレンの混合溶液21、22を、それぞれ異なる扇型1流体ノズル24により、反応容器20内の200℃で撹拌されている溶媒29に同時に噴霧し、エアロゾル25a、25b状態にして滴下した。噴霧条件はいずれも窒素ガス圧力0.05MPa、噴量約1L/minとし、このとき液滴の平均粒子径は約230μmであった。噴霧完了後、250℃で30min反応させZnTeSeコア粒子を合成した。
【0082】
ジエチル亜鉛35mLと1-ドデカンチオール80mLと1-オクタデセン5Lを混合し、この混合溶液を250℃に加熱したZnTeSeコア粒子溶液にチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を250℃に保持し60minで反応させた。
【0083】
反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加し量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散されたZnTeSe/ZnS量子ドットを精製した。
【0084】
上記工程により得られたZnTeSe/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が536nm、発光の半値幅が35nm、内部量子効率が23%であった。
【0085】
(比較例3)
図5は、比較例3で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。
【0086】
50Lの反応容器20に1-オクタデセン7Lとオレイン酸3Lを投入し、反応容器20内を窒素置換した後、溶液温度を200℃まで加熱し、撹拌棒23で撹拌した。
【0087】
窒素雰囲気下で1-オクタデセン5Lにジエチル亜鉛55mLを加え混合した。テルル粉末48gとセレン粉末39.5gを、トリオクチルホスフィン5Lにそれぞれ加え、窒素雰囲気下で溶液を150℃に加熱して溶解させた。この溶液をそれぞれ第一の前駆体溶液21及び第二の前駆体溶液22とする。
【0088】
ジエチル亜鉛溶液、テルルとセレンの混合溶液21、22を、200℃で撹拌されている反応容器20内の溶媒29に、それぞれ異なるダイアフラム式送液ポンプ28を用いて、滴下ノズル27まで送液し、それぞれ液滴26a、26bとして同時に滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、250℃で30min反応させZnTeSeコア粒子を合成した。
【0089】
ジエチル亜鉛35mLと1-ドデカンチオール80mLと1-オクタデセン5Lを混合し、この混合溶液を250℃に加熱したZnTeSeコア粒子溶液にチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は1.0L/minであった。滴下完了後、液温を250℃に保持し、60min反応させた。
【0090】
反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加し量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散されたZnTeSe/ZnS量子ドットを精製した。
【0091】
上記工程により得られたZnTeSe/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が538nm、発光の半値幅が39nm、内部量子効率が18%であった。
【0092】
(実施例4)
図3は、実施例4で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。
図3では、まず、窒素ガス雰囲気下において超音波霧化ユニット48で第二の前駆体溶液42を霧化し、エアロゾル45とする。次に、反応容器40に収容されている第一の前駆体溶液41を撹拌棒43で撹拌しているところに、流体ノズル44で超音波によりコロイド化した第二の前駆体溶液42をエアロゾル45状態にして噴霧している様子を示している。以下では、具体的に実施例4を述べる。
【0093】
塩化銅(I)50mg、酢酸インジウム15mg、ミリスチン酸100mgを、50Lの反応容器40内の1-オクタデセン5Lに投入し、120℃で脱気処理を1h行った。この溶液を第一の前駆体溶液41とする。脱気後、反応容器40内を窒素ガスで封入し、酸素を遮断した状態で反応を行った。
【0094】
2.4MHzの超音波霧化ユニット48を取り付けた密封容器を窒素置換し、第二の前駆体溶液42として、1-ドデカンチオール5Lを投入した。窒素ガスをキャリアとして超音波により第二の前駆体溶液42を霧化し、エアロゾル45状態にして反応容器40内の200℃に加熱した第一の前駆体溶液41に噴霧した。第二の前駆体溶液42が入った容器の重量変化により、噴霧が3L完了したところで停止し、200℃を30min保持してCuInS2コア粒子を合成した。噴霧速度は約0.2L/min、液滴の粒子径4μmであった。
【0095】
亜鉛(II)アセチルアセトナト150gと1-ドデカンチオール125mLと1-オクタデセン5Lを混合し、この混合溶液を250℃に加熱したCuInS2コア粒子溶液にチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を250℃に保持し60min反応させた。
【0096】
反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加し量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散された量子ドットを精製した。
【0097】
上記工程により得られたCuInS2/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が641nm、発光の半値幅が68nm、内部量子効率が71%であった。
【0098】
(比較例4)
図6は、比較例4で用いた量子ドットを製造する装置を示す図である。
【0099】
塩化銅(I)50mg、酢酸インジウム15mg、ミリスチン酸100mgを、50Lの反応容器40内の1-オクタデセン5Lに投入し、120℃で脱気処理を1h行った。この溶液を第一の前駆体溶液41とする。脱気後、反応容器40内を窒素ガスで封入し、酸素を遮断した状態で反応を行った。
【0100】
反応容器40内で200℃に加熱し、第一の前駆体溶液41を撹拌棒43で撹拌しているところに、第二の前駆体溶液42として1-ドデカンチオール3Lを、チュービングポンプ49で送液し、滴下ノズル47で第二の前駆体溶液42の液滴46を滴下した。この時の滴下速度は0.2L/minであった。滴下完了後、200℃を30min保持し、CuInS2コア粒子を合成した。
【0101】
亜鉛(II)アセチルアセトナト150gと1-ドデカンチオール125mLと1-オクタデセン5Lを混合し、この混合溶液を250℃に加熱したCuInS2コア粒子溶液にチュービングポンプにより滴下した。この時滴下流量は0.5L/minであった。滴下完了後、液温を250℃に保持し60min反応させた。
【0102】
反応後の量子ドット溶液に対し、体積比で5倍のアセトンを添加し量子ドットを沈殿させ、遠心分離機により10000rpm(min-1)で遠心分離処理を10min行い、回収した沈殿物からトルエンにより再分散された量子ドットを精製した。
【0103】
上記工程により得られたCuInS2/ZnS量子ドットの発光特性を測定した結果、発光波長が650nm、発光の半値幅が75nm、内部量子効率が72%であった。
【0104】
実施例、比較例の結果より、量子ドットのコア粒子の合成時に前駆体溶液をエアロゾルの状態で噴霧して反応させることで、粒子径を制御し、スケールアップをしても半値幅の増加を抑制することができた。すなわち、大スケールの合成において量子ドットの粒子径の不均一性およびそれに伴う発光波長の分布の増大を抑制することができた。一方、比較例では滴下する液滴が大きく、溶液中の局所濃度分布が大きく、生成粒子の粒子径のばらつきが大きかった。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0106】
10、20、40…反応容器、
11、21、41…第一の前駆体溶液、
12、22、42…第二の前駆体溶液、
13、23、43…撹拌棒、
14、24、44…流体ノズル、
15、25a、25b、45…エアロゾル、
16、26a、26b、46…液滴、
17、27、47…滴下漏斗(滴下ノズル)、
28…ダイアフラム式送液ポンプ、
29…溶媒、
48…超音波霧化ユニット、
49…チュービングポンプ。