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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-20
(45)【発行日】2023-09-28
(54)【発明の名称】半導体解析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20230921BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20230921BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
G01N1/28 F
H01J37/20 Z
H01J37/22 501Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502722
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008058
(87)【国際公開番号】W WO2021171492
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間口 恒典
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄大
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛幸
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/075806(WO,A1)
【文献】特開2014-022296(JP,A)
【文献】特開2002-174571(JP,A)
【文献】特開2016-191714(JP,A)
【文献】特開2017-069186(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105510092(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00~ 1/44
H01L 21/64~21/66
H01J 37/20
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを加工して観察用の薄膜試料を作製する加工装置と、
前記薄膜試料の透過型電子顕微鏡像を取得する透過型電子顕微鏡装置と、
前記加工装置および前記透過型電子顕微鏡装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記透過型電子顕微鏡像に基づく前記薄膜試料に対する評価を行い、前記薄膜試料の評価結果に基づいて前記透過型電子顕微鏡像の取得条件を更新し、更新した取得条件を前記透過型電子顕微鏡装置へ出力し、
前記更新した取得条件を前記薄膜試料とは別の薄膜試料の透過型電子顕微鏡像の取得に用いる、
半導体解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記制御装置は、前記透過型電子顕微鏡像から前記薄膜試料における薄膜加工領域の位置を検出し、前記薄膜加工領域の検出位置と前記薄膜加工領域の設定位置とを比較し、前記設定位置に対する前記検出位置の位置ずれ量を前記薄膜試料の前記評価結果として算出する、
半導体解析システム。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体解析システムにおいて、
前記制御装置は、前記位置ずれ量に応じて、前記透過型電子顕微鏡における前記薄膜試料の観察位置のオフセットを行うことによりTEM観察条件の更新を行う、
半導体解析システム。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記制御装置は、前記透過型電子顕微鏡像から前記薄膜試料の膜厚を検出し、前記薄膜試料の検出膜厚と設定膜厚とを比較し、前記設定膜厚に対する前記検出膜厚の厚みずれ量を評価結果として算出する、
半導体解析システム。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記制御装置は、前記透過型電子顕微鏡像から加工よる前記薄膜試料のダメージ量を前記評価結果として算出する、
半導体解析システム。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記制御装置は、前記透過型電子顕微鏡における観察位置の特定に用いるマッチング画像を変更することで、前記透過型電子顕微鏡像の取得条件を更新する、
半導体解析システム。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記透過型電子顕微鏡装置は、走査型透過電子顕微鏡像を前記透過型電子顕微鏡像として取得する、
半導体解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集束イオンビーム(FIB)と走査型電子顕微鏡(SEM)とを備えたFIB-SEM装置を用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料を作製する方法が広く知られている。具体的に述べると、FIB-SEM装置では、半導体ウエハ上の所望の領域からTEM解析用の薄膜試料を観察用試料として切り出し、TEMによる観察用試料の構造解析や不良解析が行われる。また、観察用試料の解析結果を加工条件にフィードバックさせることにより、観察用試料作製の精度向上が図られる。
【0003】
例えば、特許文献1には、透過電子顕微鏡用試料の作製において、荷電粒子ビームによって加工して作製した薄片試料を試料ホルダに固定する際に、デポジションを用いないようにすることにより生産性を向上させる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-115582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子顕微鏡を用いた半導体デバイス観察のニーズは急速に増加している。これに伴い、FIB-SEM装置による半導体ウエハに対する薄膜試料作製の自動化および電子顕微鏡による薄膜試料観察の自動化が求められている。しかしながら、近年の半導体デバイスは、微細化および構造の複雑化が進んでおり、自動化に要求されるレベルは年々高くなっている。
【0006】
そこで、本発明は、自動でのTEM観察の速度および精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0008】
本発明の代表的な実施の形態による半導体解析システムは、半導体ウエハを加工して観察用の薄膜試料を作製する加工装置と、薄膜試料の透過型電子顕微鏡像を取得する透過型電子顕微鏡装置と、加工装置および透過型電子顕微鏡装置を制御する上位制御装置と、を備えている。上位制御装置は、透過型電子顕微鏡像に基づく薄膜試料に対する評価を行い、薄膜試料の評価結果に基づいて透過型電子顕微鏡像の取得条件を更新し、更新した取得条件を前記透過型電子顕微鏡装置へ出力する。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0010】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、自動でのTEM観察の速度および精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る半導体解析システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るFIB-SEM装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るTEM装置の一例を示す概略構成図である。
図4】TEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。
図5】STEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。
図6】半導体ウエハ上に作製された薄膜試料の概念図である。
図7】TEM観察用キャリアに搭載された薄膜試料の概略図である。
図8】TEM装置内でのTEM観察用キャリアの保持方法を説明する図である。
図9】本発明の実施の形態1に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。
図11】本発明の実施の形態3に係る半導体解析システムの一例を示す概略構成図である。
図12図11のALTS装置の一例を示す概略構成図である。
図13】本発明の実施の形態3に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。
図14】本発明の実施の形態3に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。
図15】本発明の実施の形態4に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。
図16】本発明の実施の形態4に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する各実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明の技術範囲を限定するものではない。なお、実施例において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、特に必要な場合を除き省略する。
【0013】
(実施の形態1)
<半導体解析システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体解析システムの一例を示す概略構成図である。半導体解析システム100は、FIB-SEM装置(加工装置)101、TEM装置102、および上位制御装置103を含む。なお、図1では、FIB-SEM装置101およびTEM装置102が、それぞれ1台のみの構成となっているが、これらがそれぞれ複数設けられてもよい。ここで、SEMとは走査型電子顕微鏡である。また、TEMとは透過型電子顕微鏡であり、後述するSTEMとは走査型透過電子顕微鏡である。
【0014】
FIB-SEM装置101は、半導体ウエハWAFから観察用の薄膜試料SAMを作製する(切り出す)FIB装置と、半導体ウエハWAFまたは作製された薄膜試料SAMを観察するSEM装置とを有する装置である。なお、本実施の形態では、SEM装置が含まれなくても構わない。
【0015】
TEM装置102は、薄膜試料SAMの構造解析や不良解析を行う装置である。TEM装置102は、回折コントラストや位相コントラストにより薄膜試料SAMのTEM画像(透過型電子顕微鏡像)を取得する。なお、TEM装置102は、STEM装置の構造および機能を有してもよい。この場合、TEM装置102は、薄膜試料SAMのSTEM画像(走査型透過電子顕微鏡像)としてHAADF像を取得してもよい。FIB-SEM装置101およびTEM装置102は、上位制御装置103を介して互いに通信可能である。
【0016】
上位制御装置103は、FIB-SEM装置101およびTEM装置102の制御を行う装置である。上位制御装置103は、FIB-SEM装置101およびTEM装置102に対する動作開始や停止等の基本的な制御、半導体ウエハWAFに対するFIB加工条件の出力、FIB加工により作製される薄膜試料SAMのTEM観察条件(透過型電子顕微鏡像の取得条件)の出力等を行う。また、上位制御装置103は、TEM装置102から出力されるTEM画像(STEM画像)に基づく薄膜試料SAMに対する評価、評価結果に基づくTEM観察条件の更新等を行う。半導体解析システム100に含まれる各装置の構成については、後で詳しく説明する。
【0017】
半導体解析システム100における主要な処理は次の通りである。FIB-SEM装置101では、FIB装置を用いて、装置内に搬送された半導体ウエハWAFから薄膜試料SAMの作製が行われる。作製された薄膜試料SAMは、TEM観察用キャリアCARに載置される。薄膜試料SAMが載置されたTEM観察用キャリアCARは、FIB-SEM装置101からTEM装置102へ搬送され、TEM装置102において薄膜試料SAMの構造解析や不良解析が行われる。
【0018】
なお、本実施の形態では、上位制御装置103を独立した構成要素として記載しているが、上位制御装置103が有する機能の一部または全てをFIB-SEM装置101が担ってもよいし、TEM装置102が担ってもよい。
【0019】
なお、半導体ウエハWAFは、複数のウエハを収容可能な容器を用いて搬送されてもよいし、FIB-SEM装置101に挿入可能なカートリッジに載せて搬送されてもよい。また、TEM観察用キャリアCARは、複数のキャリアを収容可能な容器を用いて搬送されてもよいし、TEM装置102に挿入可能なカートリッジに載せて搬送されてもよい。なお、半導体ウエハWAFやTEM観察用キャリアCARの取り扱いは、一部または全部を人が行ってもよいし、搬送用ロボットが行ってもよい。
【0020】
<FIB-SEM装置の構成>
図2は、本発明の実施の形態1に係るFIB-SEM装置の一例を示す概略構成図である。図2に示すように、FIB-SEM装置101は、イオンビームカラム301a、イオンビームカラム301aを制御するイオンビームカラム制御器331、電子ビームカラム302a、電子ビームカラム302aを制御する電子ビームカラム制御器332、半導体ウエハWAFを載置することが可能なウエハステージ304、ウエハステージ304を制御するウエハステージ制御器334を備えている。
【0021】
また、FIB-SEM装置101は、TEM観察用キャリアCARを載置することが可能なサブステージ306、サブステージ306を制御するサブステージ制御器336、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMをピックアップするプローブユニット312、プローブユニット312を制御するプローブユニット制御器342、試料室307を備えている。
【0022】
また、FIB-SEM装置101は、イオンビーム301bまたは電子ビーム302bを半導体ウエハWAFまたはTEM観察用キャリアCAR上の薄膜試料SAMに照射した際に発生する荷電粒子を検出するための荷電粒子検出器309、310、荷電粒子検出器309を制御する検出器制御器339、荷電粒子検出器310を制御する検出器制御器340、X線検出器311、X線検出器311を制御するX線検出器制御器341、FIB-SEM装置101全体の動作を制御する統合コンピュータ330を備えている。統合コンピュータ330および各制御器は、互いに通信可能である。
【0023】
また、FIB-SEM装置101は、イオンビームや電子ビームの照射条件やウエハステージ304の位置の各種指示等をオペレータが入力するコントローラ(キーボード、マウス等)351、FIB-SEM装置101をコントロールするためのGUI画面353やFIB-SEM装置101の状態、画像を含む取得した各種情報等を表示する1つまたは複数のディスプレイ352等を備えている。なお、FIB-SEM装置101の状態や取得した情報等は、GUI画面353に含まれてもよい。
【0024】
イオンビームカラム301aは、イオンビームを発生させるためのイオン源や、イオンビームを集束させるためのレンズ、イオンビームを走査およびシフトさせるための偏向系、イオンビームをブランキングさせるブランキング偏向系等、FIBに必要な構成要素を全て含んだ系である。
【0025】
電子ビームカラム302aは、電子ビームを発生させる電子源や、電子ビームを集束させるためのレンズ、電子ビームを走査およびシフトさせるための偏向系、電子ビームをブランキングさせるブランキング偏向系等、SEMに必要な構成要素を全て含んだ系である。
【0026】
イオンビームカラム301aおよび電子ビームカラム302aは、試料室307に搭載されている。イオンビームカラム301aを通過したイオンビーム301b、および電子ビームカラム302aを通過した電子ビーム302bは、主にイオンビームカラム301aの光軸301cと電子ビームカラム302aの光軸302cとの交点(クロスポイント371)にフォーカスされる。
【0027】
なお、イオンビーム301bにはガリウムイオンが一般に使用されるが、加工する目的においてイオン種は問わない。また、イオンビーム301bは、集束イオンビームに限られず、ブロードなイオンビームにマスクを備えたものでもよい。
【0028】
なお、本実施の形態では、イオンビームカラム301aが垂直に配置され、電子ビームカラム302aが傾斜して配置されているが、このような配置に限定されるものではない。例えば、イオンビームカラム301aが傾斜して配置され、電子ビームカラム302aが垂直に配置されてもよい。また、イオンビームカラム301aおよび電子ビームカラム302aが傾斜して配置されてもよい。
【0029】
なお、本実施の形態に係るFIB-SEM装置101は、ガリウム集束イオンビームカラム、アルゴン集束イオンビームカラム、および電子ビームカラムを備えた、トリプルカラム構成でもよい。
【0030】
また、電子ビームカラムに代えて光学顕微鏡やAFMのような観察システムをFIB装置と組み合わせたものが、FIB-SEM装置101に代えて用いられてもよい。また、イオンビームカラムのみで加工および観察を行うようにしてもよい。この場合、ビームを生成するカラムを削減することができ、装置コストを低減させることが可能となる。
【0031】
ウエハステージ304およびサブステージ306は、対応するウエハステージ制御器334およびサブステージ制御器336の制御により平面移動や回転移動が可能である。また、ウエハステージ304およびサブステージ306は、半導体ウエハWAFまたは薄膜試料SAMにおけるイオンビームの加工や観察に必要な所定箇所をイオンビーム照射位置や、電子ビームによる観察位置へ移動させる。
【0032】
プローブユニット312は、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMのピックアップを行う。なお、薄膜試料SAMをピックアップする際、プローブユニット312は、プローブに代えて、図示しないピンセットが用いられてもよい。また、プローブユニット312は、半導体ウエハWAFの表面に接触して半導体ウエハへの電位供給を行ってもよい。
【0033】
検出器制御器339、340は、対応する荷電粒子検出器309、310から出力される検出信号を演算処理し画像化する機能ブロックであり、所定の回路またはプログラムを実行することでプロセッサに実現される演算処理部を備える。
【0034】
なお、荷電粒子検出器309、310は、電子やイオンの検出が可能な複合荷電粒子検出器で構成されてもよい。
【0035】
試料室307には、前述した各要素の他に、図示しないガスインジェクションユニット等が搭載される。また、FIB-SEM装置101は、ガスインジェクションユニット等を制御する図示しない各制御器を有する。ガスインジェクションションユニットは、荷電粒子ビームの照射により半導体ウエハWAFまたは薄膜試料SAMに堆積膜を形成するためのデポガスを貯蔵し、必要に応じて図示しないノズル先端から試料室307内に供給される。これにより、半導体ウエハWAF、薄膜試料SAM、TEM観察用キャリアCARの任意の場所に、保護膜やマーキングを作製することができる。
【0036】
また、試料室307には、荷電粒子ビームの照射により化学腐食や蝕刻加工するエッチングガスが貯蔵されてもよい。このエッチングガスは、半導体ウエハWAFの加工に利用されてもよい。
【0037】
さらに、試料室307には、コールドトラップや光学顕微鏡などが搭載されてもよい。また、試料室307には、荷電粒子検出器309とは別に、三次電子検出器、STEM検出器、後方散乱電子検出器、低エネルギー損失電子検出器等の検出器がされてもよい。さらに、試料室307には、X線検出器311の他に質量分析器等が搭載されてもよい。
【0038】
<TEM装置の構成>
図3は、本発明の実施の形態1に係るTEM装置の一例を示す概略構成図である。図3のTEM装置102は、TEMモードで使用することが可能であるし、モードを切り替えることによりSTEMモードで使用することも可能である。
【0039】
図3に示すように、TEM装置102は、電子ビームカラム501、電子ビームカラム501を制御する電子ビームカラム制御器521、TEM観察用キャリアCARが載置される試料ホルダ503、試料ホルダ503を駆動する試料ホルダステージ504、試料ホルダステージ504を制御するホルダステージ制御器524を備えている。
【0040】
また、TEM装置102は、薄膜試料SAMから放出される電子を検出する二次電子検出器505、二次電子検出器505を制御する検出器制御器525、透過型電子顕微鏡像を投影する蛍光板506、蛍光板506を撮像するカメラ507、カメラ507を制御するカメラ制御器527、薄膜試料SAMから放出されたX線を検出するX線検出器508、X線検出器508を制御するX線検出器制御器528、TEM装置102全体の動作を制御する統合コンピュータ530を備えている。統合コンピュータ530および各制御器は、互いに通信可能である。
【0041】
また、TEM装置102は、照射条件やホルダステージ504の位置等の各種指示を入力するコントローラ(キーボード、マウス等)531、TEM装置102をコントロールするためのGUI画面533やTEM装置102の状態、画像を含む取得した取得した各種情報等を表示する1つまたは複数のディスプレイ532を備えている。なお、TEM装置102の状態や取得した情報等は、GUI画面533に含まれてもよい。
【0042】
図4は、TEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。電子ビームカラム501は、図4に示すように、電子ビームを発生するための電子源601、電子ビームを薄膜試料SAMに照射するための照射レンズ群602、対物レンズ603、薄膜試料SAMを通過後の電子ビームを投影する投影レンズ群604等を備えている。また、電子ビームカラム501の下方には、電子エネルギー損失分光器(EELS)609、EELS用検出器610等が配置されている。
【0043】
このように、電子ビームカラム501およびその周辺にはTEM装置102を用いた解析に必要な要素が全て搭載されている。TEMモードの場合には、図4に示すように、電子ビームが薄膜試料SAM上の観察領域全面に広がって照射され、投影像や干渉像、回折パターン等により試料情報が取得される。
【0044】
図5は、STEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。STEMモードの電子ビームカラム501は、図5に示すように、図4の主要な各要素に、電子ビームを走査およびシフトするための偏向系605、電子ビームの開き角を制御するための絞り611が追加された構成となっている。また、図4の蛍光板506に代えて、広角に散乱された透過電子を検出するための円環状検出器606、薄膜試料SAMを透過した電子を検出する透過電子検出器607が設けられている。STEMモードの場合、図7に示すように、電子ビームが薄膜試料SAM上にフォーカスされ、観察領域を走査することで試料情報が取得される。
【0045】
なお、TEMモードおよびSTEMモードにおいて、薄膜試料SAMの近傍には、コールドトラップが配置されてもよいし、試料ホルダ503には、冷却機構や加熱機構、ガス導入機構などが設けられてもよい。
【0046】
<上位制御装置の構成>
上位制御装置103は、図1に示すように、メモリ103a、薄膜試料SAMを作製された薄膜加工領域の位置を検出する位置検出部103b、薄膜試料SAMの厚みを検出する厚み検出部103c、薄膜試料SAM作製によるダメージ量を検出するダメージ量検出部103d、加工終了判定部103f、観察結果判定部103fを備えている。
【0047】
メモリ103aは、不揮発性メモリやハードディスク等で構成される記憶装置である。メモリ103aには、半導体ウエハWAFや後述するTEM観察用キャリアCARに付与れる各IDに対応するFIB加工条件が保存されている。FIB加工条件には、例えば、イオンビームの加速電圧、ビーム電流、半導体ウエハWAF上の加工領域、加工順序等が含まれる。
【0048】
また、メモリ103aには、各IDに対応するTEM観察条件が保存されている。TEM観察条件には、複数の項目が含まれる。TEMモードの場合、TEM観察条件には、例えば、観察モード(TEM画像観察、回折パターン観察、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)、電子エネルギー損失分光分析(EELS分析)等)、TEM倍率、カメラ長、プローブ電流量(照射系の絞り径の大きさ)等が含まれる。また、STEMモードの場合、STEM観察条件には、例えば、観察倍率、プローブ径(光学系の縮小率)、試料への照射角、検出器の選択(透過電子検出器、円環状検出器、二次電子検出器等)、検出器の取り込み角等が含まれる。
【0049】
位置検出部103b、厚み検出部103c、ダメージ量検出部103d、加工終了判定部103f、および観察結果判定部103gは、ハードウェアにより構成されてもよいし、ソフトウェアの実行によりプロセッサ上に実現されるものでもよいし、ハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせて構成されたものでもよい。位置検出部103b、厚み検出部103c、ダメージ量検出部103d、加工終了判定部103f、および観察結果判定部103gについては、後で説明する。
【0050】
<薄膜試料およびTEM観察用キャリアの構成>
図6は、半導体ウエハ上に作製された薄膜試料の概念図である。FIB-SEM装置101内において、半導体ウエハWAF上には1つ又は複数の薄膜試料SAMが作製される。本実施の形態では、薄膜試料SAMは、半導体ウエハWAFと1つの支持部803とで連結されているが、支持部803の個数は2つ以上でも構わない。
【0051】
いずれの場合においても、薄膜試料SAMをピックアップする際、支持部803は半導体ウエハWAFから切断される。支持部803の切断は、FIBにより行われてもよいし、ピンセットなどを用いた割断により行われてもよい。また、TEM観察領域804は周囲よりもさらに薄片化されているが、TEM観察が可能な厚さであれば、必ずしも周囲より薄くなくても構わない。
【0052】
半導体ウエハWAFのサイズは一般に100mm~300mm、薄膜試料SAMのサイズは数μm~数10μm、薄膜試料SAMの厚みは数μm、TEM観察領域804の厚みは数nm~数10nmである。
【0053】
図7は、TEM観察用キャリアに搭載された薄膜試料の概略図である。図7(a)は、ピラー911を有するTEM観察用キャリアCARa(CAR)に薄膜試料SAMが支持されたときの例を示している。薄膜試料SAMとピラー911の固定は、例えばデポジションガスなどを用いて行われる。図7(a)では、1つのピラー911に1つの薄膜試料SAMが支持された場合が示されているが、1つのピラー911に、複数の薄膜試料SAMが支持されてもよい。
【0054】
図7(b)は、クリップ形状を有するTEM観察用キャリアCARb(CAR)に、薄膜試料SAMが把持されたときの例を示している。図7(b)では、複数のピラーで構成されるクリップ912により薄膜試料SAMの両端が把持されているが、薄膜試料SAMは、一方の端部のみで把持されても構わない。また、クリップ912は、縦方向に積み上げられた複数の薄膜試料SAMを把持しても構わない。
【0055】
図7(c)は、格子状に構成されたTEM観察用キャリアCARcに薄膜試料SAMが支持されたときの例を示している。具体的に述べると、TEM観察用キャリアCARcに、例えばラメラ構造を有するカーボン膜や高分子膜等の膜が張られ、この膜上に1つまたは複数の薄膜試料SAMが支持される。この膜は、均一な膜ではなくてもよいし、多数の孔が空いた膜でも構わない。また、一つの格子に複数の薄膜試料が支持されてもよい。
【0056】
図8は、TEM装置内でのTEM観察用キャリアの保持方法を説明する図である。TEM装置102において、TEM観察用キャリアCARはカートリッジ510に保持される。カートリッジ510には凸部510aが設けられており、凸部510aを試料ホルダ503の孔部503aに挿入することによりカートリッジ510は、試料ホルダ503に固定される。そして、カートリッジ510が取り付けられた試料ホルダ503を電子ビームカラム501に設置した状態で薄膜試料SAMのTEM観察が行われる。
【0057】
<半導体解析方法>
次に半導体解析システム100を用いた半導体解析方法について説明する。図9は、本発明の実施の形態1に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。図9では、各工程がFIB-SEM装置101、上位制御装置103、TEM装置102と対応して示されている。
【0058】
上位制御装置103からFIB-SEM装置101およびTEM装置102へ指示を送ることで、半導体解析処理が開始される。半導体解析処理が開始されると、まず、半導体ウエハWAFおよびTEM観察キャリアCARがFIB-SEM装置101内に搬送される(ステップS1001)。
【0059】
そして、FIB-SEM装置101は、搬送された半導体ウエハWAFのIDおよびTEM観察キャリアCARのIDを読み取る(ステップS1002)。これらのIDは、例えばバーコードや二次元コード等で構成される。これらのIDは、半導体ウエハWAFやTEM観察キャリアCARの一部分にレーザ加工等で形成される。そして、FIB-SEM装置101は、読み取ったIDを出力することで、対応するFIB加工条件を上位制御装置103へ問い合わせる(ステップS1003)。
【0060】
上位制御装置103は、FIB-SEM装置101から出力されるIDに基づいてメモリ103aからFIB加工条件を読み出し(ステップS1004)、読み出したFIB加工条件をFIB-SEM装置101へ出力する(ステップS1005)。
【0061】
FIB-SEM装置101は、上位制御装置から出力されるFIB加工条件に基づき、薄膜試料作製条件を設定し(ステップS1006)、設定した薄膜試料作製条件に従い薄膜試料SAMを作製する(ステップS1007)。
【0062】
FIB-SEM装置101は、薄膜試料SAMの作製後、薄膜試料SAMをピックアップし、TEM観察用キャリアCARへ搬送する(ステップS1008)。薄膜試料SAMのピックアップには、例えばプローブユニット312が用いられてもよいし、ピンセットが用いられてもよい。
【0063】
その後、FIB-SEM装置101から、TEM観察用キャリアCARが取り出される(ステップS1009)。TEM観察用キャリアCARは、FIB-SEM装置101内で専用のケースに格納された状態で取り出されてもよいし、TEM装置102に取り付け可能なカートリッジに載置された状態で取り出されてもよい。
【0064】
FIB-SEM装置101から取り出されたTEM観察用キャリアCARは、TEM装置102に搬送される(ステップS1010)。なお、TEM観察用キャリアCARの搬送、一部または全部を人が行ってもよいし、ロボットが行ってもよい。
【0065】
次に、TEM装置102は、搬送されたTEM観察キャリアCARのIDを読み取る(ステップS1011)。そして、TEM装置102は、読み取ったIDを出力することで、対応するTEM観察条件を上位制御装置103へ問い合わせる(ステップS1012)。
【0066】
上位制御装置103は、TEM装置102から出力されるIDに基づいてメモリ103aからTEM観察条件を読み出し(ステップS1013)、読み出したTEM観察条件をTEM装置102へ出力する(ステップS1014)。
【0067】
TEM装置102は、上位制御装置103から出力されるTEM観察条件に基づき、薄膜試料SAMの観察条件を設定し(ステップS1015)、TEM観察用キャリアCARを所定の観察位置まで移動させる(ステップS1016)。そして、TEM装置102は、設定された観察条件で薄膜試料SAMの観察を行う(ステップS1017)。なお、ステップS1015およびステップS1016は、処理を行う順序が入れ換わってもよいし、並行して実行されてもよい。TEM装置102は、薄膜試料SAMの観察結果を上位制御装置103へ出力する(ステップS1018)。観察結果には、TEM画像や各検出器における検出データ等が含まれる。
【0068】
≪薄膜試料に対する評価≫
上位制御装置103の観察結果判定部103gは、TEM装置102から出力された観察結果に基づき薄膜試料SAMに対する評価を行う(ステップS1019)。以下、薄膜試料SAMに対する測定方法について詳しく説明する。薄膜試料SAMに対する評価項目には、例えば薄膜加工領域の位置ずれ量、膜厚の厚みずれ量、FIB加工によるダメージ量等が含まれる。
【0069】
まず、薄膜加工領域の位置ずれ量の評価について説明する。薄膜加工領域の位置の測定を行うため、観察領域のCADデータまたは三次元再構成データを作製し、CADデータまたは三次元再構成データに基づいて観察領域の複数箇所における薄膜試料SAMの形状を参照像として予め作製しておく。なお、三次元再構成データは、TEM画像の電子線トモグラフィー法を用いて作製されたものでもよいし、FIB加工とSEM観察とを繰り返し行ながら作製されたものでもよい。
【0070】
上位制御装置103の位置検出部103bは、TEM装置102から出力されるTEM画像またはSTEM画像(観察結果)と複数の参照像のそれぞれとのマッチングを行い、最も相関値が高い参照像を特定することで薄膜加工領域の位置(薄膜試料SAMが作製された位置)を検出する。なお、画像マッチングのアルゴリズムは、エッジを強調する方法でもよいし、特徴点を抽出する方法でもよいし、形状情報を用いる方法でもよい。そして、位置検出部103bは、薄膜加工領域の検出位置と薄膜加工領域の設定位置とを比較し、薄膜加工領域の位置ずれ量を評価結果として算出する。
【0071】
次に、薄膜試料SAMの膜厚の厚みずれ量の評価について説明する。薄膜試料SAMの膜厚が厚い場合、観察対象の構造物より奥側に存在する構造物も同時にTEM画像またはSTEM画像に現れるため、上位制御装置103の厚み検出部103cは、TEM装置102から出力されるTEM画像またはSTEM画像内の構造物の個数を数えることで薄膜試料SAMの膜厚を算出することができる。なお、構造物が重なる場合も想定されるが、薄膜試料SAMを傾斜させることでこのような重なりが解消され、薄膜試料SAMの膜厚を検出することが可能となる。
【0072】
また、HAADF-STEM画像を用いる場合、HAADF-STEM画像のコントラストは、薄膜試料SAMの膜厚、および薄膜試料SAMの構成原子に依存するが、観察対象の構成原子は薄膜試料SAM内で概ね同様である。このため、厚み検出部103cは、HAADF-STEM画像の信号強度を算出することで薄膜試料SAMの膜厚を検出することが可能である。
【0073】
例えば、膜厚と信号強度との関係を予め測定または算出しておき、膜厚と信号強度とを関係付ける膜厚-信号強度情報を、テーブルや関数等にしてメモリ103aに格納しておく。そして、厚み検出部103cは、膜厚-信号強度情報に基づき、算出した信号強度に対応する薄膜試料SAMの膜厚を検出する。そして、厚み検出部103cは、薄膜試料SAMの検出膜厚と設定膜厚とを比較し、膜厚の厚みずれ量を評価結果として算出する。
【0074】
次に、FIB加工によるダメージ量の評価について説明する。FIB加工が行われると、薄膜試料SAMの端部にダメージ層が形成され、結晶部分が非晶質(アモルファス)化してしまう。TEM画像またはSTEM画像のFFT(高速フーリエ変換)パターンを観察すると、一般的に、結晶部分がスポットとなり、アモルファス部分が円形状のパターンとなる。このため、円形状のパターンの強度が弱いほどダメージ層が少なく、円形状のパターンの強度が強いほどダメージ層が多いと評価することができる。
【0075】
そこで、例えば、TEM画像またはSTEM画像のFFTパターンにおける円形状のパターンの強度と、ダメージ層の厚みとの関係を予め測定または算出しておき、円形状のパターンの強度とダメージ層の厚みとを関係付ける円形状パターン強度-ダメージ層情報を、テーブルや関数等にしてメモリ103aに格納しておく。また、メモリ103aには、ダメージ層の厚みとダメージ量とを関係付けるダメージ層厚み-ダメージ量情報が格納される。
【0076】
ダメージ量検出部103dは、円形状パターン強度-ダメージ層情報に基づき、算出した円形状パターン強度からダメージ層の厚みを算出する。そして、ダメージ量検出部103dは、ダメージ層厚み-ダメージ量情報に基づき、算出したダメージ層の厚みからダメージ量を算出する。
【0077】
なお、メモリ103aには、円形状のパターンの強度とダメージ量とを関係付けるパターン強度-ダメージ量情報が格納されてもよい。この場合、ダメージ量検出部103dは、パターン強度-ダメージ量情報に基づき、円形状のパターンの強度からダメージ量を直接算出することができる。
【0078】
《TEM観察条件の更新》
次に、ステップS1020について説明する。ステップS1020では、ステップS1019における評価結果に基づき、後続の薄膜試料SAMに対するTEM観察条件の更新が行われる。
【0079】
例えば、薄膜加工領域がずれているという評価結果が得られた場合、半導体ウエハWAFにおける薄膜試料SAMの作製位置ずれが発生していると考えられる。また、同一の加工条件で作製された他の薄膜試料SAMにも、同様の位置ずれがあると想定される。この場合、上位制御装置103は、TEM観察位置の特定に用いるマッチング画像の変更、位置ずれ量に応じた観察位置のオフセットを行うこと等により、TEM観察条件の更新を行う。
【0080】
また、上位制御装置103は、薄膜試料SAMの厚みずれ量、およびダメージ量についても同様に、評価結果に基づきマッチング画像の変更等によりTEM観察条件の更新を行う。
【0081】
<その他の構成>
上位制御装置103は、薄膜試料SAMのTEM画像と、TEM画像を用いたTEM観察結果とを対応させることで、TEM観察用の学習モデルを生成してもよい。この学習モデルには、TEM観察が成功した場合およびTEM観察が失敗した場合と、それぞれのTEM画像とを対比した結果が反映される。上位制御装置103は、取得したTEM画像から、学習モデルを用いてTEM観察条件を更新するか否かを判断することができる。また、上位制御装置103は、学習モデルを用いて更新するTEM観察条件の具体的な値を算出することも可能である。これにより、後続の薄膜試料SAMに対するTEM観察の成功率を向上させることが可能である。
【0082】
また、オートフォーカス調整によって更新されたフォーカス値等は、同じTEM観察用キャリアCARに載置されている他の薄膜試料SAMに対して、共通に利用することができる。この場合、後続の薄膜試料SAMに対するTEM観察の成功率を短時間で向上させることが可能である。
【0083】
なお、上位制御装置103は、TEM観察条件を更新する必要がないと判断した場合でも、TEM観察条件を更新していないことをメモリ103aに記録しておくことが望ましい。この記録は、登録されているTEM観察条件の信頼性を示す情報として利用することができる。
【0084】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像に基づく薄膜試料SAMに対する評価を行い、薄膜試料SAMの評価結果に基づいて加工条件を更新する。この構成によれば、TEM装置102による薄膜試料SAMの観察結果をTEM装置102へフィードバックしてTEM観察条件を変更することができるので、FIB加工条件を変更することができるので、後続の薄膜試料SAMに対する自動でのTEM観察の速度および精度を向上させることが可能となる。
【0085】
薄膜試料SAMの作製位置にずれが生じていた場合、観察領域を探索するのに時間を要する。また、同一の半導体ウエハWAF上に作製された他の薄膜試料SAMにも、同様のズレが生じていると想定される。この場合、先行の薄膜試料SAMにおいて検出された位置ずれ量を、後続の薄膜試料SAMのTEM観察にフィードバックさせることで、観察領域の探索時間を短縮することが可能となる。
【0086】
また、薄膜試料SAMの作製位置が、設定位置から大きく外れている場合には、TEM観察が正常に終了しない場合(自動観察が成功しない場合)も考えられる。この場合においても、TEM画像に観察したい領域が含まれている場合には、ユーザの判断により所望のデータを取得することができる。また、ユーザが判断した結果を学習データとして、上位制御装置103に学習させることで、後続の薄膜試料SAMにおけるTEM観察を正常に終了させることができ、ユーザの労力を軽減させることができる。
【0087】
また、先行の薄膜試料SAMにおけるフォーカス値等の条件を、後続の薄膜試料SAMのTEM観察にフィードバックさせることで、TEM観察の速度を向上させることが可能となる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像から薄膜試料SAMにおける薄膜加工領域の位置を検出し、薄膜加工領域の検出位置と薄膜加工領域の設定位置とを比較し、設定位置に対する検出位置の位置ずれ量を薄膜試料の評価結果として算出する。この構成によれば、評価結果に基づきTEM観察条件の更新を適切に行うことが可能となる。
【0089】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、薄膜加工領域の位置ずれ量に応じて、TEM装置102における薄膜試料SAMの観察位置のオフセットを行う。この構成によれば、薄膜試料SAMの観察位置を適切な位置に修正することが可能となる。
【0090】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像から薄膜試料SAMの膜厚を検出し、薄膜試料SAMの検出膜厚と設定膜厚とを比較し、設定膜厚に対する検出膜厚の厚みずれ量を評価結果として算出する。この構成によれば、評価結果に基づきTEM観察条件の更新を適切に行うことが可能となる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像から加工よる薄膜試料SAMのダメージ量を評価結果として算出する。この構成によれば、評価結果に基づきTEM観察条件の更新を適切に行うことが可能となる。
【0092】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM装置102における観察位置の特定に用いるマッチング画像を変更することで、透過型電子顕微鏡像の取得条件を更新する。この構成によれば、評価結果に基づきTEM観察条件の更新を適切に行うことが可能となる。
【0093】
また、本実施の形態によれば、TEM装置102は、STEM画像を取得する。この構成によれば、TEM画像では取得できない画像を取得することができ、薄膜試料SAMに対するより正確な評価が可能となる。
【0094】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。なお、以下では、前述の実施の形態と重複する箇所については原則として説明を省略する。本実施の形態では、FIB-SEM装置101に搬送される半導体ウエハWAFが、上位制御装置103において特定されていることを前提としている。このため、本実施の形態では、半導体解析方法の一部のフローが実施の形態1と異なっている。
【0095】
図10は、本発明の実施の形態2に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。半導体解析処理が開始されると、ステップS1001およびステップS1101が並行して実行される。
【0096】
ステップS1002では、FIB-SEM装置101は、半導体ウエハWAFのIDおよびTEM観察用キャリアCARのIDを読み取る。ただし、本実施の形態では、FIB-SEM装置101に搬送される半導体ウエハWAFが、上位制御装置103において特定されていることを想定している。このため、半導体ウエハWAFのIDの読み取りは必須ではない。また、TEM観察用キャリアCARのIDに関しても、上位制御装置103がTEM観察キャリアCARを管理可能である場合には、TEM観察用キャリアCARのIDの読み取りも必須ではない。この場合、IDを持たないTEM観察用キャリアCARも使用可能である。
【0097】
ステップS1101では、上位制御装置103は、メモリ103aに格納されたFIB加工条件のうち、FIB-SEM装置101に搬送された半導体ウエハWAFに適したFIB加工条件を読み出す。すでに述べたように、FIB-SEM装置101に搬送される半導体ウエハWAFが上位制御装置103において特定されているので、上位制御装置103は、加工対象の半導体ウエハWAFのIDに対応するFIB加工条件をメモリ103aから読み出す。そして、上位制御装置103は、読み出したFIB加工条件をFIB-SEM装置101へ出力する(ステップS1005)。このとき、上位制御装置103は、FIB加工条件とともに、対応する半導体ウエハWAFのIDを出力してもよい。
【0098】
ステップS1102では、FIB-SEM装置101は、上位制御装置103から出力されたFIB加工条件と半導体ウエハのIDとを照合する。ただし、上位制御装置103が、FIB-SEM装置101に搬送された半導体ウエハWAFを特定していることから、本工程は適宜省略することが可能である。
【0099】
ステップS1006~S1007は、実施の形態1と同様である。ステップS1007の後は、ステップS1103が実行される。
【0100】
ステップS1103では、FIB-SEM装置101は、半導体ウエハWAFに対する薄膜試料作製結果を上位制御装置103へ出力する。薄膜試料作製結果は、例えばSEM画像でもよいし、特定箇所における電気信号の強度変化等でもよい。なお、電気信号の強度変化は、薄膜試料SAMの膜厚に依存する信号でもよいし、薄膜試料SAMを構成する構造物が露出と消失を繰り返すことによる強度変化でもよい。
【0101】
ステップS1104では、上位制御装置103の加工終了判定部103fは、FIB-SEM装置101から出力される薄膜試料作製結果に基づき、薄膜試料作製を継続させるか、あるいは薄膜試料作製を終了させるかの加工継続要否判定を行う。
【0102】
この加工継続要否判定は、例えば画像マッチング法等が用いられる。画像マッチング法では、例えば薄膜試料SAMのFIB加工断面が、予め準備された参照画像と一致するか否かで加工継続の要否が判定される。この参照画像は、例えばFIB加工が終了したときの薄膜試料SAMの断面形状を示す画像である。
【0103】
FIB加工断面のSEM画像と参照画像とが一致しない場合(NO)、FIB加工が終了していないと判断される。そして、ステップS1007に戻りFIB加工が継続される。一方、FIB加工断面のSEM画像と参照画像とが一致した場合(YES)、FIB加工が終了したと判断され、ステップS1008が実行される。
【0104】
なお、上位制御装置103は、FIB加工が終了するまでのFIB加工断面の一連の画像群を格納しておき、一連の画像群を参照画像として加工継続要否判定を行ってもよい。これにより、加工継続要否判定の精度を向上させることが可能となる。
【0105】
また、加工継続要否判定に用いた参照画像は、上位制御装置103に記憶され、この参照画像がTEM観察時における各種処理に利用されても構わない。
【0106】
ステップS1105では、FIB-SEM装置101は、TEM観察用キャリアCARへの薄膜試料SAMの搬送結果が上位制御装置103へ出力される。そして、薄膜試料SAMが載置されたTEM観察用キャリアCARが、FIB-SEM装置101から取り出される。なお、薄膜試料SAMの搬送結果の出力と、TEM観察用キャリアCARの搬送は、同時に行われなくてもよい。
【0107】
薄膜試料SAMの搬送結果には、薄膜試料SAMが載せられたTEM観察用キャリアCARのIDが含まれてもよいし、薄膜試料搬送後のSEM像が含まれてもよい。また、TEM観察用キャリアCARが、所定のケースやTEM装置102に取り付け可能なカートリッジ510に載せられた後にTEM装置102へ搬送される場合には、ケースやカートリッジ510に載せた後の光学顕微鏡像が薄膜試料SAMの搬送結果に含まれてもよい。また、FIB-SEM装置101と上位制御装置103との間における各種情報の伝達は、ネットワークを用いて自動または手動で行われてもよいし、記憶媒体を介して行われてもよい。
【0108】
ステップS1105の後は、ステップS1106、S1010が並行して実行される。ステップS1106では、上位制御装置103は、FIB-SEM装置101からTEM観察用キャリアCARの搬送情報を取得する。搬送情報は、例えばTEM観察用キャリアCARのIDでもよいし、TEM観察用キャリアCARに載置された薄膜試料SAMに対応する半導体ウエハWAFのID等でもよい。
【0109】
そして、上位制御装置103は、観察用キャリアCARの搬送情報に基づいて薄膜試料SAMのTEM観察に適したTEM観察条件を読み出し(ステップS1107)、読み出したTEM観察条件をTEM装置102へ出力する(ステップS1108)。TEM観察条件には、上位制御装置103から読み出された観察条件だけでなく、FIB-SEM装置101から出力されたTEM観察用キャリアCARの搬送情報に基づいて生成された情報が含まれてもよい。この情報には、例えばTEM観察用キャリアCARにおける薄膜試料SAMが載せられた位置等が含まれる。
【0110】
ステップS1011、S1108の後は、ステップS1109が実行される。ステップS1109では、TEM装置102は、TEM観察条件とTEM観察用キャリアCARのIDとの照合を行う。ただし、上位制御装置103が、TEM装置102に搬送されたTEM観察用キャリアを特定している場合、本工程は必須ではない。ステップS1109の後は、ステップS1015~S1020が実行される。
【0111】
本実施の形態においても、前述の実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0112】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。図11は、本発明の実施の形態3に係る半導体解析システムの一例を示す概略構成図である。図11の半導体解析システム200は、図1の半導体解析システム100にALTS(Auto Lamella Transfer System:自動薄膜試料搬送装置)装置201が追加された構成となっている。ALTS装置201は、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMをTEM観察用キャリアCARに自動で移し替える装置である。FIB-SEM装置101、ALTS装置201、およびTEM装置102は、上位制御装置103を介して互いに通信可能である。図11では、FIB-SEM装置101、ALTS装置201、およびTEM装置102が、それぞれ1台のみの構成となっているが、これらがそれぞれ複数設けられてもよい。
【0113】
薄膜試料SAMが作製された半導体ウエハWAFは、ALTS装置201へ搬送される。ALTS装置201は、装置内で薄膜試料SAMをTEM観察用キャリアCARに移し替える。その際、ALTS装置201は、半導体ウエハWAF上の薄膜試料SAMの位置情報を参照しつつ移し替えを行う。
【0114】
なお、ALTS装置201への半導体ウエハWAFの搬送は、前述した容器やカートリッジごとに行ってもよい。また、半導体ウエハWAFやTEM観察用キャリアCARの取り扱いは、前述したように、一部または全部を人が行ってもよいし、搬送用ロボットが行ってもよい。
【0115】
図11では、上位制御装置103を独立した構成要素として記載しているが、上位制御装置103が有する機能の一部または全てをFIB-SEM装置101、TEM装置102、ALTS装置201が担ってもよい。
【0116】
<ALTS装置の構成>
図12は、図11のALTS装置の一例を示す概略構成図である。図12に示すように、ALTS装置201は、第1光学顕微鏡401a、第1光学顕微鏡401aを制御するための第1光学顕微鏡制御器431、第2光学顕微鏡402a、第2光学顕微鏡402aを制御するための第2光学顕微鏡制御器432、半導体ウエハWAFを載置することが可能なウエハステージ404、ウエハステージ404を制御するウエハステージ制御器434を備えている。
【0117】
また、ALTS装置201は、TEM観察用キャリアCARを載置することが可能なサブステージ406、サブステージ406を制御するサブステージ制御器436、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMをピックアップするプローブユニット412、プローブユニット412を制御するプローブユニット制御器442、試料室407を備えている。
【0118】
また、ALTS装置201は、光学顕微鏡像を取得するための第1カメラ410、第2カメラ411、第1カメラ410を制御する第1カメラ制御器440、第2カメラ411を制御する第2カメラ制御器441、薄膜試料SAMに光を照射するための光源409、光源409を制御する光源制御器439、ALTS装置201全体の動作を制御する統合コンピュータ430を備えている。統合コンピュータ430および各制御器は、互いに通信可能である。
【0119】
また、ALTS装置201は、照射条件やウエハステージ404の位置等の各種指示をオペレータが入力するコントローラ(キーボード、マウス等)451、ALTS装置201をコントロールするためのGUI画面453、ALTS装置201の状態、画像を含む取得した各種情報等を表示する1つまたは複数のディスプレイ452を備えている。なお、ALTS装置201の状態や取得した情報等は、GUI画面453に含まれてもよい。
【0120】
第1光学顕微鏡401a、第2光学顕微鏡402aは、結像するためのレンズや開口を制限するための絞りなど光学顕微鏡に必要な構成要素を全て含んだ系である。図12では、光源409が試料室407に設けられているが、このような構成に限定されるものではない。光源409は、例えば、光学顕微鏡の内部に設けられ、薄膜試料SAMが上方から照射されるようにしてもよい。
【0121】
また、ALTS装置201は、薄膜試料SAM上にフォーカスされた光を走査する機構を備え、走査像を取得することができるように構成されてもよい。また、観察対象である薄膜試料SAMは、主に、第1光学顕微鏡401aの光軸401cと、第2光学顕微鏡402aの光軸402cとが交差する位置(クロスポイント471)にて観察される。これにより、観察対象の3次元的な位置関係を把握することが可能となる。例えば、半導体ウエハWAF上の薄膜試料SAMと、プローブユニット412やピンセット(図示は省略)との位置関係を正確に把握することが可能となる。また、図12では、試料室407が設けられているが、大気中で観察する場合には密閉された空間は必要ではないので、試料室407を省略することが可能である。
【0122】
ウエハステージ404およびサブステージ406は、対応するウエハステージ制御器434およびサブステージ制御器436の制御により平面移動や回転移動が可能である。また、プローブユニット412は、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMをピックアップするだけでなく、ウエハ表面の接触検知センサーや応力センサー等の機能を備えていてもよい。また、薄膜試料SAMをピックアップするため、プローブの代わりにピンセットが用いられてもよい。
【0123】
なお、図12では、第1光学顕微鏡401a、第2光学顕微鏡402aを試料室407に配置したが、薄膜試料SAMを観察する目的において顕微鏡の種類は特に限定されない。例えば、一部またはすべての顕微鏡にSEM装置が用いられてもよい。この場合には、図2と類似の構成が考えられる。例えば、図2のイオンビームカラム301aの代わりに第2電子ビームカラムが試料室307に搭載されるような構成が考えられる。また、この場合、ALTS装置201で用いられる電子ビームカラムの電子源は電界放出型、ショットキー型、熱電子型のいずれが用いられてもよい。
【0124】
<半導体解析方法>
次に半導体解析システム200を用いた半導体解析方法について説明する。図13および図14は、本発明の実施の形態3に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。なお、図13では、左側の欄に、FIB-SEM装置101およびALTS装置201の工程が示されている。図13図14は、実施の形態1の図9のフローと類似している。
【0125】
半導体解析処理が開始されると、半導体ウエハWAFがFIB-SEM装置101内に搬送され(ステップS1301)、FIB-SEM装置101により、半導体ウエハWAFのIDの読み取りが行われる(ステップS1302)。
【0126】
ステップS1302の後、ステップS1003~S1007が実行される。ステップS1007の後、ステップS1007の後、ステップS1303が実行される。
【0127】
半導体ウエハWAFは、FIB-SEM装置101から取り出され(ステップS1303)、ALTS装置201へ搬送される(ステップS1304)。半導体ウエハWAFの搬送は、半導体ウエハWAF単体で行われてもよいし、複数枚の半導体ウエハWAFを収容可能なケースを用いて、纏めて搬送されてもよい。また、半導体ウエハWAFの搬送は、人が行ってもよいし、ロボットが行ってもよい。
【0128】
ステップS1305では、ALTS装置201に、TEM観察用キャリアCARが搬送される。そして、ALTS装置201は、TEM観察用キャリアCARのIDを読み取る(ステップS1306)。ただし、TEM観察用キャリアCARに、IDが付与されていない場合もあるので、本工程は必須ではない。
【0129】
ステップS1307では、ALTS装置201は、半導体ウエハWAFからTEM観察用キャリアCARへ薄膜試料SAMを搬送するための条件を規定する薄膜試料搬送条件を上位制御装置103へ問い合わせる。
【0130】
薄膜試料搬送条件には、FIB-SEM装置101での加工形状やFIB-SEM装置101での加工終了後のSEM画像等が含まれてもよいし、半導体ウエハWAF上の薄膜加工された位置情報のみが含まれてもよい。
【0131】
また、薄膜試料搬送条件には、プローブユニット412やピンセットの駆動条件のみが含まれてもよい。また、ALTS装置201に、薄膜試料搬送条件が記憶されている場合、薄膜試料搬送条件には、適切な薄膜試料搬送条件を特定するIDのみが含まれてもよい。
【0132】
上位制御装置103は、ALTS201からの問い合わせに応じて、薄膜試料搬送条件を読み出し(ステップS1308)、読み出した薄膜試料搬送条件をALTS装置201へ出力する(ステップS1309)。
【0133】
ALTS装置201は、上位制御装置103からの出力された薄膜試料搬送条件を設定し(ステップS1310)、薄膜試料搬送条件に基づき各構成要素の駆動条件を設定する。そして、ALTS装置201は、設定された薄膜試料搬送条件(駆動条件)に従い、半導体ウエハWAF上の薄膜試料SAMをTEM観察用キャリアCARへ搬送する(ステップS1311)。
【0134】
このとき、ALTS装置201は、薄膜試料搬送前のSEM画像や薄膜試料搬送後のSEM画像を取得し、これらの画像を搬送情報として記録してもよい。また、ALTS装置201は、記録した搬送情報や、ステップS1306で読み取ったTEM観察用キャリアCARのIDを上位制御装置103へ出力してもよい。この場合、上位制御装置103は、得られた情報を、後続の工程で利用することができる。
【0135】
TEM観察用キャリアCARへの薄膜試料SAMの搬送が終了すると、ALTS装置201からTEM観察用キャリアCARが取り出される(ステップS1312)。ステップS1312の後は、図14に示すステップS1010およびそれ以降の各工程が実行される。
【0136】
本実施の形態においても、前述の実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0137】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。本実施の形態も、実施の形態3と同様、半導体解析システムにALTS装置201が追加されている。図15および図16は、本発明の実施の形態4に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。なお、図15では、左側の欄に、FIB-SEM装置101およびALTS装置201の工程が示されている。図15図16は、実施の形態2の図10のフローと類似している。
【0138】
半導体解析処理が開始されると、ステップS1101、S1301が並行して実行される。ステップS1005、S1302が終了すると、ステップS1102が実行される。
【0139】
ステップS1104において、FIB加工断面のSEM画像と参照画像とが一致した場合(YES)、ステップS1401へ移行する。
【0140】
ステップS1401では、FIB-SEM装置101から、薄膜試料SAMが作製された半導体ウエハWAFが取り出される。また、FIB-SEM装置101は、半導体ウエハWAFのウエハ情報を上位制御装置103へ出力する。なお、ウエハ情報の出力と半導体ウエハWAFの取り出しは、同時に行われなくてもよい。
【0141】
ウエハ情報には、例えばFIB加工が完了したこと、半導体ウエハWAFがFIB-SEM装置101から取り出されたこと、各処理が行われた時刻等の各種情報が含まれてもよい。また、ウエハ情報には、FIB加工後のSEM画像やSIM画像が含まれてもよい。また、ウエハ情報の出力は、ネットワークを用いて自動または手動で行ってもよいし、記憶媒体を介して行ってもよい。
【0142】
ステップS1401の後は、ステップS1402、S1403が並行して実行される。ステップS1402では、半導体ウエハWAFがALTS装置201へ搬送される。ステップS1402の後は、ステップS1305が実行される。
【0143】
ステップS1403では、上位制御装置103は、FIB-SEM装置101から出力されたウエハ情報を取得する。半導体ウエハWAFが、FIB-SEM装置101からALTS装置201へ自動で搬送される場合、ウエハ情報には、半導体ウエハWAFの所在地も含まれる。特にFIB-SEM装置101やALTS装置201が、複数台存在する場合、半導体ウエハWAFの所在地の情報が必要となる。
【0144】
ステップS1404では、上位制御装置103は、薄膜試料搬送条件を読み出す。読み出される薄膜試料搬送条件は、全ての内容が予めメモリ103aの格納されたものである場合もあれば、FIB-SEM装置101から受け取った情報に基づき、生成される情報を含む場合もありうる。また、ALTS装置201が薄膜試料搬送条件を記憶している場合には、上位制御装置101に格納される薄膜試料搬送条件は、ALTS装置201が格納する薄膜試料搬送条件を特定するIDでもよい。
【0145】
ステップS1404の後は、ステップS1309が実行される。そして、ステップS1306、S1309の後は、ステップS1310~S1311が実行される。ステップS1311の後は、ステップS1405が実行される。
【0146】
ステップS1405では、ALTS装置201は、薄膜試料搬送結果を上位制御装置103へ出力する。また、薄膜試料SAMが載せられたTEM観察用キャリアCARが、TEM装置201へ搬送される。薄膜試料搬送結果の出力とTEM観察用キャリアCARの搬送は、同時に行われなくてもよい。薄膜試料搬送結果には、薄膜試料SAMが載せられたTEM観察用キャリアCATのIDが含まれてもよいし、薄膜試料搬送後のSEM像が含まれてもよい。また、TEM観察用キャリアCARがTEM観察用キャリアを格納するケースまたはTEM装置102に取り付け可能なカートリッジ500に載せられた後TEM装置201に搬送される場合には、薄膜試料搬送結果に、ケースやカートリッジ500に載せられた後のTEM観察用キャリアCAR等の光学顕微鏡像が含まれてもよい。
【0147】
ステップS1405の後は、図16に示すステップS1010、S1106およびそれ以降の各工程が実行される。
【0148】
本実施の形態においても、前述の実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0149】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。
【0150】
また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる場合がある。
【符号の説明】
【0151】
100、200…半導体解析システム、101…FIB-SEM装置、102…TEM装置、103…上位制御装置、201…ALTS装置、CAR…TEM観察用キャリア、SAM…薄膜試料、WAF…半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16