(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】自立型包装袋、スパウト付自立型包装袋、内容物入り自立型包装袋及び内容物入りスパウト付自立型包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 77/00 20060101AFI20230922BHJP
B65D 30/16 20060101ALI20230922BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B65D77/00 A
B65D30/16 C
B65D33/38
(21)【出願番号】P 2018169050
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000143880
【氏名又は名称】株式会社細川洋行
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】釼持 俊和
(72)【発明者】
【氏名】北原 正明
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141039(JP,A)
【文献】特開2018-047954(JP,A)
【文献】特開2005-145482(JP,A)
【文献】特開2011-025944(JP,A)
【文献】特開2018-083635(JP,A)
【文献】特開2005-119729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/00
B65D 30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層を有する積層体により形成され、底面部を有するホット飲食料品用の自立型包装袋であって、
一対の平面部と、一対の側面部と、底面部とを備え、
前記一対の側面部がそれぞれ内部側に折り込まれるようにして成り、前記平面部と前記側面部の側端同士を接続する側端シール部を有し、
前記底面部は前記一対の平面部と前記一対の側面部とで形成された筒状の胴部の下方の開口端を塞ぐ下端シール部を有し、
前記側面部の下方の下端シール部における前記側面部の折り線に対応する部分、及びこの部分と前記平面部の下方の下端シール部における自立型包装袋を折り畳んだ際に重なる部分にポイントシールがなされ、
自立状態で前記下端シール部が足となり、前記底面部が前記自立型包装袋を載置する面から離間しており、
前記シーラント層の融点が120℃以上である、自立型包装袋。
【請求項2】
請求項
1に記載の自立型包装袋にスパウトが取り付けられたスパウト付自立型包装袋。
【請求項3】
請求項
1に記載の自立型包装袋に内容物が収納された内容物入り自立型包装袋。
【請求項4】
請求項
2に記載のスパウト付自立型包装袋に内容物が収納された内容物入りスパウト付自立型包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立型包装袋、スパウト付自立型包装袋、内容物入り自立型包装袋及び内容物入りスパウト付自立型包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
店頭で販売されている飲食料品には、内容物がペットボトルや、プラスチックフィルム等の軟包材からなる包装袋にスパウトが付いたスパウト付包装袋等の容器に入れられているものがある。内容物がゼリー飲料の場合、ペットボトルの口部の口径は広く設計されているものが多い。また、ペットボトルは、外部から内容物を手で揉むには硬く、揉むことができず、ゼリー飲料を砕くことができずに塊のまま口の中へ入ってくるため、飲みにくい場合がある。一方、スパウト付包装袋は、内容物がゼリー飲料であった場合、外部から手で揉むことができる軟らかさであり、ゼリー飲料を揉んで、塊を細かくすることができ、容易に飲むことができる。
【0003】
このようなスパウト付包装袋としては、一対の平面部と一対の側面部とからなるサイドガゼット形状で、下方で平面部及び側面部が折られ、内容物の自重がかかることで面状の底部が形成され、該底部が載置面となって自立する包装袋を採用するものが多い(例えば、特許文献1)。
【0004】
店頭では、内容物が温かいホット飲食料品も販売されており、この場合は容器を加温器に載置して、飲食料品入りの容器を下方から加温している場合がある。仮に、サイドガゼット形状のスパウト付包装袋を加温器に載置すると、直接加温器に面状の底部が接するため、包装袋の底部は局部的に加熱される。この状態で、加温器に長時間載置され続けると、底部には熱が加わり続け、耐熱性のある軟包材により形成されていたものであっても、軟包材は劣化してしまい、デラミネーション等の問題が起きてしまうおそれがある。また、サイドガゼット形状のスパウト付包装袋に収納された内容物にも下方から熱が加わり続ける。内容物がゼリー飲料の場合、半固形状であるため包装袋内で内容物が流動しにくく、加温器からの熱が伝わり易い下方の内容物と、熱が伝わりにくい上方の内容物との対流も起こりにくいために、上方の内容物まで温めようとして高温としたり、長時間の加温を施したりすれば、下方の内容物のみに高すぎる温度の熱や、長時間の熱が加わり続けることで品質が低下してしまうおそれがある。このような理由のため、ホット飲食料品用の軟包材からなる包装袋は今までになかった。
【0005】
一方、包装袋に用いる軟包材としては、一般に、熱融着により密封性を確保するために、最内層にシーラント層を有する積層体が用いられる。シーラント層に用いられる合成樹脂には、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられる。しかし、ポリエチレン系樹脂はポリプロピレン系樹脂に比べて耐熱性が劣る。そのため、レトルト用などの熱を加える包装袋では、シーラント層の合成樹脂としてポリエチレン系樹脂は不適切であると考えられ、ポリプロピレンが用いられている(特許文献1)。
【0006】
耐熱性に劣るとされているポリエチレン系樹脂の中でも耐熱性のある樹脂として、高密度ポリエチレンが知られている。しかし、高密度ポリエチレンやポリプロピレン単体からなるフィルムや樹脂をシーラント層として用いた包装袋は、落下した際等の衝撃に弱く、落下した際にはシール部等から破袋が生じやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、自立性を有し、下方から加温を施しても、底部や下方の内容物にのみ熱が加わり続けることを抑制でき、加温器における加温に耐え得る耐熱性、及び落下等に耐え得る耐衝撃性を有する自立型包装袋、スパウト付自立型包装袋、内容物入り自立型包装袋及び内容物入りスパウト付自立型包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]シーラント層を有する積層体により形成され、底面部を有するホット飲食料品用の自立型包装袋であって、
前記底面部の周縁から下方に延びる下端シール部を有し、
自立状態で前記下端シール部が足となり、前記底面部が前記自立型包装袋を載置する面から離間した、自立型包装袋。
[2]前記シーラント層の融点が120℃以上である、[1]に記載の自立型包装袋。
[3]前記底面部が矩形状であり、前記下端シール部が前記底面部の各辺から4つ形成されている、[1]又は[2]に記載の自立型包装袋。
[4]さらに横ガゼット部を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の自立型包装袋。
[5]前記シーラント層の総厚みは、70μm~100μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の自立型包装袋。
[6]前記積層体は、金属箔層を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の自立型包装袋。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の自立型包装袋にスパウトが取り付けられたスパウト付自立型包装袋。
[8][1]~[6]のいずれかに記載の自立型包装袋に内容物が収納された内容物入り自立型包装袋。
[9][7]に記載のスパウト付自立型包装袋に内容物が収納された内容物入りスパウト付自立型包装袋。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自立型包装袋、スパウト付自立型包装袋、内容物入り自立型包装袋及び内容物入りスパウト付自立型包装袋は、自立性を有し、下方から加温を施しても、底部や下方の内容物のみに熱が加わり続けることを抑制でき、加温器における加温に耐え得る耐熱性、及び落下等に耐え得る耐衝撃性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のスパウト付自立型包装袋の一例を示した正面図である。
【
図2】
図1のスパウト付自立型包装袋に内容物を収納した様子を示した斜視図である。
【
図3】
図1のスパウト付自立型包装袋に内容物を収納した様子を示した側面図である。
【
図4】
図2のスパウト付自立型包装袋のI-I断面図である。
【
図5】
図1のスパウト付自立型包装袋に内容物を収納した様子を示した底面図である。
【
図6】
図1のスパウト付自立型包装袋に内容物を収納して平面に載置した様子を示した側面図である。
【
図7】
図2のスパウト付自立型包装袋の底部近傍を拡大して示した斜視図である。
【
図8】
図1のスパウト付自立型包装袋の底部側の製造の一工程を示した斜視図である。
【
図9】本発明の自立型包装袋の一例を示した斜視図である。
【
図10】従来のスパウト付ガゼット袋の一例を示した正面図である。
【
図11】
図10のスパウト付ガゼット袋に内容物を収納した様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における以下の用語の意味は、以下の通りである。
合成樹脂の密度は、JIS K7112 Dに準拠して測定された値である。
メルトフローレート(MFR)はJIS-K7210に準拠して、ポリエチレン系樹脂の場合には温度が190℃、荷重が21.18Nの条件の下において測定された値である。
【0013】
本発明の自立型包装袋及びスパウト付自立型包装袋は、スパウトの有無以外は、同様の形態の自立型包装袋である。また、本発明の内容物入り自立型包装袋及び内容物入りスパウト付自立型包装袋は、内容物が収納されている以外は、本発明の自立型包装袋及びスパウト付自立型包装袋と同様である。以下、本発明の自立型包装袋及びスパウト付自立型包装袋の実施形態として、スパウトを備えるスパウト付ガゼット袋の一例を示して詳細に説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
本実施形態のスパウト付自立型包装袋1は、
図1~3に示すように、内容物を収納する自立型包装袋10と、自立型包装袋10の上部に液密に取り付けられたスパウト12と、スパウト12に装着されるキャップ13とを備えている。
【0015】
自立型包装袋10は、
図1~6に示すように、一対の平面部14,14と、一対の側面部16,16と、底面部18とを備えている。自立型包装袋10では、一対の平面部14,14と一対の側面部16,16がそれぞれ対向しており、一対の側面部16,16がそれぞれ内部側に折り込まれるようにして、平面部14,14の側端同士を接続するように設けられている。底面部18は、一対の平面部14,14と一対の側面部16,16とで形成された筒状の胴部の下方の開口端を塞ぐように設けられている。
【0016】
一対の平面部14,14の正面視形状は、矩形状の各角部が円弧状に切り欠かれた略矩形状である。一対の平面部14,14の正面視形状は、このような略矩形状には限定されない。
一対の側面部16,16の正面視形状は、平面部14,14と同様に、矩形状の各角部が円弧状に切り欠かれた略矩形状である。一対の側面部16,16の正面視形状は、このような略矩形状には限定されない。
【0017】
自立型包装袋10には、隣り合う平面部14と側面部16を形成しているそれぞれ平面部材141と側面部材161の側端同士がヒートシールされることで高さ方向に延びる4つの側端シール部20が形成されている。一対の平面部14,14と一対の側面部16,16とは4つの側端シール部20により接合されて筒状を形成している。
【0018】
自立型包装袋10の上端には平面部14の上端と側面部16の上端とがヒートシールされた上端シール部22が形成されている。自立型包装袋10の下端には、矩形状の底面部材181の4辺がそれぞれ下方に折られた状態で平面部材141の下端及び側面部材161の下端とヒートシールされた下端シール部24が形成されている。一対の平面部14,14と一対の側面部16,16とで形成される筒状体の上端開口部と下端開口部がそれぞれ上端シール部22と下端シール部24で閉じられることで自立型包装袋10が形成されている。これにより、自立型包装袋10内に内容物を収納できるようになっている。
【0019】
自立型包装袋10において、一対の平面部14,14は、スパウト付自立型包装袋1の前面と背面をそれぞれ構成している。
自立型包装袋10は、一対の側面部16,16がそれぞれの幅方向の中央部に高さ方向に最下端まで延びる折り線16a,16aにてそれぞれ自立型包装袋10の内部側に向けられて半折されることで形成される横ガゼット部26,26を有している。
【0020】
上端シール部22では、半折された一対の側面部16,16が一対の平面部14,14で挟持され、かつ、スパウト12が一対の平面部14,14で挟持されて液密に固定されている。
【0021】
自立型包装袋10では、一対の平面部材141,141の下端と、底面部材181の下方に折られた下端のうち一対の平面部14,14に対応する下端とがヒートシールされて形成された2つの下端シール部24a、及び、一対の側面部材161,161の下端と、底面部材181の下方に折られた下端のうち一対の側面部16,16に対応する下端とがヒートシールされて形成された2つの下端シール部24bの計4つの下端シール部24が形成されている。4つの下端シール部24は、矩形状の底面部18の4辺からそれぞれ下方に延びている。
【0022】
また、それぞれ下端シール部24aと下端シール部24bとは、矩形状の底面部材181の4つの角部において、接している。詳細には、
図2及び
図7に示すように、下端シール部24aは、下端シール部24aの上端の辺24auより下端シール部24aの下端の辺24adが長く、底面部材181の角部に位置する下端シール部24aの両端において、上端の辺の端部から下端の辺の端部に斜め線24cが形成された台形状である。同様に、
図2、
図3、
図6及び
図7に示すように、下端シール部24bは、下端シール部24bの上端の辺24buより下端シール部24bの下端の辺24bdが長く、底面部材181の角部に位置する下端シール部24bの両端において、上端の辺の端部から下端の辺の端部に斜め線24dが形成された台形状である。この斜め線24cと斜め線24dが一致することで、下端シール部24aと下端シール部24bとが接している。またこの斜め線24c,24dは、側端シール部20の下端とも一致している。このように、下端シール部24は自立型包装袋10の下端を一周するように形成されている。さらに、
図2、
図5に示すように、下端シール部24bは、側面部16の折り線16aにより、自立型包装袋10の内部側に向けられてV字形状となっている。
【0023】
自立型包装袋10が自立した状態では、
図2~6に示すように、自立型包装袋10の下方において4つの下端シール部24a,24bが下方に延び、すなわち、載置する平面200に対して垂直な方向に延びて筒状を形成して足となる。詳細には、
図2、
図5及び
図7に示すように、底面部材181の角部に位置する下端シール部24aの両端は、平面部14の両端に広がる向きに延び、底面部材181の角に位置する下端シール部24bの両端は、下端シール部24aの両端に重なるように折られており、4つ下端シール部24a,24bが全て載置する平面200に対して垂直な方向に延びた筒状を形成している。そのため、底面部18が自立型包装袋10を載置する平面200から離間する。これにより、加温器にスパウト付自立型包装袋1を自立させて載置したときには、矩形状に広がった底面部18が加温面(平面200)から離れ、底面部18と加温面(平面200)との間に隙間ができ離間する。このように、矩形状に広がった底面部18が加温面(平面200)に接しないため、底面部18や、自立型包装袋10内で下方の内容物のみに高すぎる温度の熱や、長時間の熱が加わり続けることによる底面部材181を形成する積層体の劣化や、内容物の品質低下が抑制される。例えば内容物がゼリー状飲料等の自立型包装袋10内で対流しづらいものである場合に、上方の内容物を十分に温める温度に加温するとしても、底面部材181を形成する積層体の劣化や、底面部18付近の下方の内容物が品質低下するほど高温になりすぎることを抑制できる。
【0024】
自立状態における自立型包装袋10の広がった底面部18と自立型包装袋10を載置する平面200との距離は、下端シール部24の幅d(
図3)によって調節できる。なお、底面部18は、積層体の劣化及び内容物の品質低下が起こらない程度に、載置する平面200と離間していればよい。
下端シール部24の幅dは、3.0mm以上が好ましく、4.0mm以上がより好ましい。下端シール部24の幅dが前記下限値以上であれば、底面部18や、自立型包装袋10内で下方の内容物のみに高すぎる温度の熱や、長時間の熱が加わり続けることによる底面部材181を形成する積層体の劣化や、内容物の品質低下を抑制しやすい。
下端シール部24の幅dは、10.0mm以下が好ましく、8.0mm以下がより好ましい。下端シール部24の幅dが前記上限値以下であれば、必要以上にシール幅が大きくなることを抑制でき、自立型包装袋10の大きさにもよるが必要以上に内容積が減少することを抑制できる。また、単位面積当たりに加わるヒートシールの圧力を上げることができ、自立に必要な十分なシール強度を得やすい。
なお、ここで下端シール部24の幅dとは、ヒートシールを行う際の設定の寸法であり、ヒートシールの余熱により設定寸法よりわずかに大きくなることもある。
【0025】
自立型包装袋10においては、下端シール部24bが側面部16の折り線16aにより、自立型包装袋10の内部側に向けられてV字形状となっているため、自立性に優れている。
また、自立型包装袋10においては、下端シール部24上にポイントシールがなされていてもよい。これにより、下端シール部24が強化される。ここで、ポイントシールとは、部分的に強化するために、ヒートシールされているところに、重ねてされた部分的なヒートシールのことを言う。
具体的には、側面部16の下方の下端シール部24bにおける側面部16の折り線16aに対応する部分a(
図3、
図5)にポイントシールがなされていることが好ましい。また、平面部14の下方の下端シール部24aにおける、自立型包装袋10を折り畳んだ際に部分aと重なる部分b(
図1、
図5)においても、ポイントシールがなされていることが好ましい。
【0026】
自立型包装袋10では、部分aと部分bのいずれかのみにポイントシールがなされていてもよいが、部分aと部分bの両方にポイントシールがなされていることが特に好ましい。
自立状態では、自立型包装袋10の底面視で、
図5に示すように、矩形状に広がった底面部18の4つの角部分のそれぞれにおいて、角c、部分a、及び部分bが三角形を形成する。このように配される下端シール部24の部分aと部分bの両方がポイントシールされることで、底面部18の4つの角部分が強化され、より安定した自立性が確保される。
【0027】
(積層体)
自立型包装袋10の一対の平面部14,14、一対の側面部16,16、及び底面部18を形成する平面部材141、側面部材161及び底面部材181はそれぞれ、シーラント層を有する積層体で形成されている。シーラント層は、積層体の最内層として設けられる。積層体としては、例えば、外側から基材層、中間フィルム層、シーラント層をこの順に有する積層体が挙げられる。
【0028】
シーラント層は、融点が120℃以上であることが好ましい。ここで、シーラント層の融点とは、JIS K 7121に準拠し、シーラント層や後述するシーラントフィルムを切り出し、示差走査型熱量測定(DSC)により測定した融解ピーク温度である。シーラント層の融点が120℃以上であるとは、シーラント層が複数の合成樹脂を混合したものや、複数の層を有しているときなど、多数の融解ピーク温度がある場合には、最も低い融解ピーク温度も120℃以上である。シーラント層の融点が120℃以上であれば、加温器における加温に耐え得る耐熱性が得られる。加温器の加温に耐えられる耐熱性とは、加温器の加温によりシーラント層を形成する合成樹脂が軟化や劣化することがない程度の耐熱性のことをいい、自立型包装袋が自立状態を維持できることをいう。また、シーラント層の融点は、150℃以下が好ましい。150℃以下であれば、自立型包装袋10を製造する際のヒートシールにて、ヒートシール温度を高くしすぎる必要がなく、短時間でのヒートシールが可能であるため、生産効率が向上する。
【0029】
シーラント層の融点が120℃では、120℃以上の熱を加えるレトルト用途の包装袋としては使用不可能であるが、100℃程度の加熱を行う、ホット飲食料品用包装袋としての耐熱性は十分である。
【0030】
シーラント層としては、合成樹脂の未延伸フィルムや、合成樹脂を層状に押し出した層が好ましい。シーラント層を形成する合成樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合、2種以上の合成樹脂の混合物の単層でもよく、2種以上の合成樹脂の複層でもよく、混合物の層を含む複層であってもよい。
シーラント層が複層の場合、共押出し法、ラミネート法等の公知の方法により製造できる。共押出し法の場合、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法、Tダイ成形法等が採用できる。特に、薄肉フィルム及び広幅原反の成形が可能である空冷インフレーション法が有利である。
【0031】
合成樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、耐熱性に優れるHDPEと柔軟性があり耐衝撃性に優れるLLDPEを組み合わせることが好ましい。この場合、シーラント層は、HDPEとLLDPEの混合物の単層でもよく、HDPEの層とLLDPEの層を含む複層であってもよく、HDPEとLLDPEの混合物の層を含む複層であってもよい。
【0032】
HDPEは、エチレンの重合体である。HDPEは、チーグラー系触媒又はフィリップス系触媒を用いて製造される。HDPEは、密度が0.940~0.970g/cm3、MFRが0.1~20g/10分である。
【0033】
LLDPEは、エチレンと炭素数3~20個のα-オレフィンから選択された1種以上のα-オレフィンとの共重合体である。炭素数3~20個のα-オレフィンのうち、好ましくは炭素数3~12個のα-オレフィンである。具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。共重合体に占めるα-オレフィン単位の含有量は、全単位に対して、通常1~30モル%であり、好ましくは3~20モル%である。
LLDPEは、チーグラー系触媒又はメタロセン系触媒を用いて製造される。耐衝撃性に優れることから、メタロセン系触媒を用いて製造されたLLDPEが好ましい。
LLDPEは、密度が0.900~0.920g/cm3、MFRが0.1~20g/10分、又は密度が0.920g/cm3以上、MFRが0.1~20g/10分である。
【0034】
ポリエチレン系樹脂のシーラント層の具体例としては、以下の外層、中間層及び内層を有する3層共押出フィルムが挙げられる。
外層:密度が0.940~0.970g/cm3、MFRが0.1~20g/10分のHDPEと、密度が0.900~0.920g/cm3、MFRが0.1~20g/10分のLLDPEの混合物からなる層。
中間層:密度が0.940~0.970g/cm3、MFRが0.1~20g/10分のHDPEと、密度が0.900~0.920g/cm3、MFRが0.1~20g/10分のLLDPEの混合物からなる層。
内層:密度が0.920g/cm3以上、MFRが0.1~20g/10分のLLDPEからなる層、又は、密度が0.940~0.970g/cm3、MFRが0.1~20g/10分のHDPEと密度が0.900~0.920g/cm3、MFRが0.1~20g/10のLLDPEの混合物からなる層。
【0035】
外層中のHDPEとLLDPEの合計に対するHDPEの割合は、30~60質量%が好ましく、40~50質量%がより好ましい。HDPEの割合が前記下限値以上であれば、シーラント層のフィルム(シーラントフィルム)の表面のべたつきを低減でき、ロール状に巻いたシーラントフィルムからの繰り出しが良好となり、ホット飲食料品用に適した耐熱性が得られやすく、高温に加熱した際の熱変形を抑制しやすい。
【0036】
中間層中のHDPEとLLDPEの合計に対するHDPEの割合は、10~50質量%が好ましく、30~40質量%がより好ましい。HDPEの割合が前記下限値以上であれば、ホット飲食料品用に適した耐熱性が得られやすく、高温に加熱した際の熱変形を抑制しやすい。中間層の配合割合は、製膜適性も含めて決定される。
【0037】
内層は、包装袋の最も内側に位置し、シールされる層であり、3層中最も密度が低く低温シール性のものを用いる。内層を密度が0.920g/cm3以上のLLDPEからなる層とすることで、落下等の衝撃に耐え得る耐衝撃性、強度に優れた包装袋が得られやすく、ヒートシールの熱によるべたつきを防止してブロッキングを抑制しやすい。また、シーラント層を形成する合成樹脂は複数の樹脂を用いているため、シーラント層の融点を測定すると複数の融点ピークを有するが、その全ての融点が120℃以上で、かつより低い温度でのヒートシールが可能なシーラント層を形成しやすい。そのため、より短時間でのヒートシールが可能となり、生産効率が向上する。また、ヒートシールによる積層体の基材層に及ぼすダメージも低減でき、基材層の皺を抑制しやすく、外観が向上する。さらに、融点が120℃以上であるため、ホット飲食料品用に適した耐熱性が得られる。
【0038】
内層に密度が0.920g/cm3未満のLLDPEを用いると、耐衝撃性は向上するが、耐熱性が低下し、フィルムのべたつきが生じやすくなるため、この場合はHDPEを併用することが好ましい。
【0039】
内層をHDPEとLLDPEの混合物の層とする場合、内層中のHDPEとLLDPEの合計に対するHDPEの割合は、40~70質量%が好ましく、50~60質量%がより好ましい。HDPEの割合を前記下限値以上とすることで、フィルムのべたつきを防止してブロッキングを抑制しやすい。この場合、シーラント層のDSC測定による全ての融解ピーク温度、すなわち融点を120℃以上とすることができる。そのため、ホット飲食料品用に適した耐熱性が得られる。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンと、エチレンその他のオレフィンとの共重合体であるブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンは、ホモポリプロピレンと比較し融点が低く、135~150℃程度であり、ホモポリプロピレンと比較すると耐衝撃強度が向上するため、ポリプロピレン系樹脂の中ではブロックポリプロピレンやランダムポリプロピレンが好ましい。
【0040】
シーラント層の総厚みは、30μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましい。シーラント層の総厚みが前記下限値以上あれば、包装袋を下端シール部24が足となって自立させるのに十分な強度が得られやすい。また、シーラント層が70μm以上であれば、製造時に底面部材181、平面部材141、側面部材161のそれぞれが所定の位置に対してわずかにずれていたとしても、シーラント層を形成している樹脂量が多いため、自立型包装袋を製造する段階でのヒートシールにおいて、溶融した樹脂が各部材を隙間なく接合し、内容物が漏れることがない自立型包装袋を製造することができるため、好ましい。また、本発明の自立型包装袋と同形状の包装袋は、底面部18の半折線18aと下端シール部24bの内端との交点18b、及び側端シール部20と2辺の下端シール部24a,24bが交わる、底面部18の4つの角cの部分(
図5)にて、底面部材181を形成する積層体のデラミネーション、ピンホール、破袋、積層体に金属箔を用いた場合には金属箔の破れ等の問題が生じる恐れがある。これらの問題は、交点18bについては、(i)内容物充填前は、後述するように自立型包装袋の外方向に向かって山折りされている半折線18a上に交点18bが位置しているが、内容物が充填された後は半折線18aが広がり、底面部18と下端シール部24bとの谷折に折れる線上に交点18bが位置するため、交点18bは内容物充填前後で折り返しが逆になる点であること、(ii)内容物充填前には底面部18の三角翼にて側面部16を挟んだ状態であることで、交点18bは積層体がたるみやすいこと、(iii)内容物の荷重がかかりやすいこと、(iv)下端シール部24を形成する際のシール不良などが起因すると考えられる。角cについては、内容物の荷重がかかりやすいこと、下端シール部24を形成する際のシール不良などが起因すると考えられる。さらには、スパウト付自立型包装袋となった場合には、上端シール部22の内端と側面部16の折り線16aとの交点16b(
図4)においても、側面部材161を形成する積層体のデラミネーション、ピンホール、破袋、積層体に金属箔を用いた場合には金属箔の破れ等の問題が生じる恐れがある。交点16bについては、スパウト付自立型包装袋1が落下してしまった場合に、内容物の荷重がかかりやすいことが起因すると考えられる。それらの問題に対し、本発明の自立型包装袋において、耐衝撃性を有するシーラント層を70μm以上とすることで、これらの問題が解決される。
シーラント層の総厚みに特に上限はないが、厚くしすぎてもコストが嵩むだけであり、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
シーラント層の総厚みは、70μm~100μmがより好ましい。
シーラント層を前記3層共押出フィルムとする場合、シーラント層の総厚みに対する中間層の割合は、耐衝撃性に優れる点から、33~80%が好ましい。
ここでシーラント層の総厚みとは、自立型包装袋を形成する前の厚みである。自立型包装袋を形成後も平面部、側面部、底面部においてはこの厚みをほぼ維持しているが、各シール部においては、各部材を2枚ずつ、シーラント層を対向させてヒートシールにより溶融して接合されているため、総厚みの2倍の厚みよりは薄くなっている。
【0041】
基材層としては、印刷適性に優れ、さらに耐熱性、突き刺し強度、引っ張り強度、耐衝撃性等を備えたフィルムが好ましい。基材層の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられ、これらの二軸延伸フィルム又は一軸延伸フィルムが好ましい。また、これらのフィルムに、酸素や水蒸気に対するバリア性を付与するために、アルミニウム、マグネシウム等の金属、又は酸化珪素等の酸化物を蒸着させた蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン等のバリア性コート剤等をコートしたコートフィルム等を用いてもよい。基材層は、前記したフィルムの単体であってもよく、積層フィルムであってもよい。
【0042】
中間フィルム層としては、例えば、酸素バリア性、水蒸気バリア性、引裂き性、耐衝撃性等の機能性を備えたフィルムが挙げられる。中間フィルム層の具体例としては、基材層に挙げたフィルムの他、酸素バリア性、水蒸気バリア性に優れるアルミニウム等の金属箔等が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を用いてもよい。
中間フィルム層として、金属箔を用いるのが好ましい。本実施形態における自立型包装袋10を製造するには、底面部材181は
図8(A)のように、両方の側面部16側が内側に入り込むように折られて扁平状となっている。底面部材181がこのように折られて形成される底面部18を有する自立型包装袋10に内容物を充填すると、底面部18は自立型包装袋10の自立方向に対して水平方向に広がるが、下端シール部24は、シールがなされていることで強固となり、製造時の形状を維持して自立型包装袋10の自立方向に対して垂直に延び、下端シール部24a,24bが底面部18の下方において足となる。また、中間フィルム層に金属箔を有していると、金属箔の腰の強さとデッドホールド性により、内容物の重量が大きくとも、下端シール部24a,24bは、自立方向に対する垂直方向への延びを維持し、底面部18の下方において足として働き、底面部18と加温面(平面200)との間に隙間ができる。このように、中間フィルム層に金属箔を有する態様は、内容物が液体などの重量が大きい場合でも、底面部18が加温面(平面200)に着地して、下端シール部24a,24bが底面部18の広がる方向と同じ方向に広がるのを防止できるため好ましい。
【0043】
積層体は、基材層を形成するフィルム、シーラントフィルム、及び必要に応じて使用する中間フィルム層を形成するフィルムを、ドライラミネート法、押出しラミネート法等の公知の方法によって貼り合せることで製造できる。なかでも、接着剤の選定によって耐熱性に優れた積層体を形成できる点から、ドライラミネート法が好ましい。積層体の総厚みは特に制限はないが、50μm以上200μm以下が好ましい。積層体の総厚みのうちシーラント層の厚みの割合が高く、積層体の総厚みはシーラント層の厚みに影響する。
【0044】
ドライラミネート法に用いる接着剤としては、1液又は2液硬化型のドライラミネート用接着剤が挙げられ、ホット飲食料品に適した十分な耐熱性が得られやすい点から、耐熱性の高いドライラミネート用接着剤が好ましい。特に、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを主成分とするポリウレタン系2液硬化型接着剤が好ましい。具体的には、ロックペイント社製RU-40、東洋モートン社製TM250が挙げられる。
【0045】
自立型包装袋10では、積層体のシーラント層の融点が120℃以上であるため、100℃程度の加温器における加温に耐え得る耐熱性が得られる。
自立型包装袋10のような形態の包装袋では、側端シール部20と2辺の下端シール部24a,24bが交わる、底面部18の4つの角cの部分(
図5)においてシール不良が生じやすく、また内容物の荷重が角cの部分にかかりやすいため、角cの部分から破袋が生じやすくなる傾向がある。また、前述した底面部18の半折線18aと下端シール部24bの内端との交点18bにおいては、内容物充填前と内容物充填後では折り方が逆方向であり、積層体がたるみやすく、内容物の荷重がかかりやすく、シール不良が生じやすいため、交点18bから破袋が生じやすくなる傾向がある。さらにはスパウト付自立型包装袋1とした場合には上端シール部22の内端と側面部16の折り線16aとの交点16bにおいては、スパウト付自立型包装袋1が落下してしまった際に内容物の荷重がかかりやすく、交点16bから破袋が生じやすくなる傾向がある。これに対して、自立型包装袋10を前記積層体で形成することで、優れた耐衝撃性が得られる。そのため、自立型包装袋10が落下した際等に、角cの部分及び交点18b、スパウト付自立型包装袋1の交点16bから破袋が生じることを抑制できる。
このように、自立型包装袋10では、破袋を抑制できる優れた耐衝撃性と、ホット飲食料品用としての優れた耐熱性が得られる。
【0046】
スパウト付自立型包装袋1においては、自立型包装袋10の上端シール部22に、自立型包装袋10の内部に収納された内容物を注出するため、又は内容物を飲むためのスパウト12が設けられている。スパウト12の上端部には、スパウト12に螺合せしめてスパウト12の開口を閉鎖するキャップ13が設けられている。
【0047】
スパウト12のうち、少なくとも自立型包装袋10の平面部14の内面と接合される部分は合成樹脂製である。
スパウト12を形成する合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエーテルサルホン、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。なかでも、加工性に優れ、低コストである点から、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0048】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体等のオレフィン系エラストマー、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、α-オレフィン-プロピレンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、性能向上のためにブレンドされていてもよく、耐熱性向上等を目的として一部架橋されていてもよい。
【0049】
スパウト12は単一の材料から形成されていてもよく、あるいは種々の樹脂層からなる多層構造が形成されていてもよい。
スパウト12のうち、少なくとも自立型包装袋10の平面部14と接合される部分を形成する樹脂は、ヒートシールによる接合が可能である点から、平面部14の最内層を形成する樹脂と同種の樹脂で形成されていることが好ましい。
【0050】
キャップ13の材質としては、特に限定されず、例えば、スパウト12の材質として挙げた合成樹脂が挙げられる。
【0051】
スパウト付自立型包装袋1の製造方法は、特に限定されない。一対の平面部14,14、一対の側面部16,16、及び底面部18を形成する平面部材141、側面部材161、底面部材181として前記積層体を用い、ヒートシールによって側端シール部20、上端シール部22及び下端シール部24を形成することで自立型包装袋10を形成できる。また、上端シール部22を形成する際に一対の平面部14,14でスパウト12を挟持することで、スパウト12を自立型包装袋10に液密に固定し、スパウト付自立型包装袋1を形成できる。
【0052】
スパウト付自立型包装袋1の製造方法としては、例えば、一対の側面部材161、161の積層体をそれぞれ折り線16aにて半折して、折り線16aが向き合うように配置する。そこに、
図8(A)のように、両方の側面部16側が内側に入り込むように折った底面部材181の積層体を、
図8(B)のように、その内側に折り込んだ両側の三角翼182,183にて、半折した一対の側面部材161、161を挟むように配置する。このときに、底面部材181と一対の側面部材161、161とを仮止めしてもよい。その後、一対の平面部材141,141で、一対の側面部材161,161と底面部材181を挟み、側端シール部20,20、下端シール部24を形成する。その後、上端の開口にてスパウト12を狭持し、上端シール部22を形成する方法を用いることができる。
【0053】
下端シール部のヒートシール温度は、200℃以上250℃以下が好ましい。ヒートシール温度が200℃以上であれば、十分なヒートシール強度及び密封性が得られやすい。ヒートシール温度が250℃以下であれば、ヒートシールの余熱によりシール部が広がり、予定していたヒートシール幅よりも広い幅の下端シール部となってしまうことを抑制しやすい。これにより、底面部の開きが阻害されることを抑制しやすくなり、十分な自立性が得られやすい。
側端シール部及び上端シール部のヒートシール温度の好ましい範囲は、下端シール部のヒートシール温度の好ましい範囲と同様である。
【0054】
内容物として収納する飲食料品としては、特に限定されず、液体飲料、ゼリー、スープ等が挙げられる。ホット飲食料品の温度は、例えば、60~70℃程度とすることができる。
加温器による自立型包装袋の加温温度は、レトルト殺菌に必要な温度(110℃以上)よりは低く、おおよそ100℃程度である。
【0055】
以上説明したように、本発明の自立型包装袋は、自立性を有しており、自立状態で下端シール部が足となり、底面部が自立型包装袋を載置する平面から離間する。このように、自立状態において底面部と自立型包装袋を載置する平面との間に隙間が生じるため、底面部や、底面部付近の内容物のみに高すぎる温度の熱や、長時間の熱が加わり続けることを抑制でき、底面部材を形成する積層体の劣化や、内容物の品質低下を抑制できる。また、本発明の自立型包装袋は、融点が120℃以上のシーラント層を有する積層体で形成されている。そのため、本発明の自立型包装袋は、加温器における加温に耐え得る耐熱性が得られる。また、シーラント層に用いる樹脂の組成や厚みを適宜選択することで、落下等に耐え得るさらに優れた耐衝撃性が得られる。
【0056】
なお、本発明の自立型包装袋は、スパウトの位置は上端シール部に限定されない。また、スパウトを備えないものであってもよい。また、本発明の自立型包装袋は、平面部、側面部及び底面部がそれぞれ平面部材、側面部材及び底面部材から形成されるものに限定されず、平面部と側面部が一枚の矩形状の部材から筒状に形成されたものや、平面部と底面部または側面部と底面部が一枚の矩形状の部材から形成されたもの、全ての面部が一枚の部材から形成されたものであってもよい。
本発明の自立型包装袋は、矩形状の底面部18の各辺から下方に延びる4つの下端シール部24を有するものには限定されない。本発明の自立型包装袋は、一対の平面部及び底面部からなり、2つの下端シール部より自立する自立型包装袋(スタンディングパウチ)であってもよい。例えば、本発明の自立型包装袋は、
図9に例示した自立型包装袋10Aであってもよい。
【0057】
自立型包装袋10Aは、一対の平面部14A,14Aと、底面部18Aとからなる。一対の平面部14A,14A及び底面部18Aは、前記積層体で形成されている。
自立型包装袋10Aにおいては、一対の平面部14A,14Aのそれぞれの側端同士がヒートシールされることで高さ方向に延びる2つの側端シール部20Aが形成されている。
【0058】
自立型包装袋10Aの下端には、V字状に半折された底面部18Aが、折り線を上にして一対の平面部14A,14Aの下方の間に配置され、逆V字状のそれぞれの下端と、一対の平面部14A,14Aのそれぞれの下端とがヒートシールされて2つの下端シール部24Aが形成されている。この実施形態における下端シール部24Aは、舟形形状であり、平面部14Aの幅方向中央部が低く、両端が高い位置までシールされている。底面部18Aは、一対の平面部14A,14Aで形成された胴部の下方の開口端を塞ぐように設けられている。
自立型包装袋10Aの上端には、一対の平面部14A,14Aの上端同士がヒートシールされた上端シール部が形成されている。
【0059】
一対の平面部14A,14Aで形成される筒状体の下端開口部に底面部18Aが配置され、下端シール部24Aで閉じられることで自立型包装袋10Aが形成されている。これにより、自立型包装袋10と同様に、自立型包装袋10A内に内容物を収納できるようになっている。
【0060】
自立型包装袋10Aにおいても、自立状態では2つの下端シール部24Aが足となって底面部18Aが自立型包装袋10Aを載置する平面と直接接しないため、底面部18Aや、底面部18A付近の内容物のみに高すぎる温度の熱や、長時間の熱が加わり続けることを抑制でき、底面部材を形成する積層体の劣化や、内容物の品質低下を抑制できる。また、自立型包装袋10Aは、融点が120℃以上であるシーラント層を有する積層体で形成されていることで、加温器における加温に耐え得る耐熱性が得られる。また、シーラント層に用いる樹脂の組成や厚みを適宜選択することで、破袋を抑制できる優れた耐衝撃性が得られる。
【0061】
自立型包装袋10Aの下端シール部24Aは舟形形状であり、底面部18Aは両端が高くなっているため、自立状態において広がった底面部18Aは自立型包装袋10Aを載置する平面に対して平行方向へ広がっていない。そのため、底面部18Aにおける高い位置の両端と、低い位置の中央部とでは、加温器から底面部18Aへの熱の伝わり方に違いが出るおそれがある。これに対して、自立型包装袋10では、広がった底面部18が自立型包装袋10を載置する平面に対してほぼ平行な方向へ広がるため、加温器から底面部18への熱の伝わり方は一定である。これらのことから、本発明では、自立型包装袋10Aのような2つの下端シール部24Aを備える態様に比べて、自立型包装袋10のような4つの下端シール部24を備える態様の方が好ましい。
【0062】
また、自立型包装袋が加温器の上で倒れて長時間が経過すると平面部のうち広範囲の部分が加温器に直接触れ、平面部の積層体や平面部付近の内容物に高すぎる温度の熱や、長時間の熱が加わり続けることで、劣化するおそれがある。底面部18が矩形状で4本の下端シール部24が足となる自立型包装袋10は、2本の下端シール部24Aが足となる自立型包装袋10Aに比べて自立性に優れるため、転倒後の加温による積層体の劣化や内容物の品質低下を抑制しやすい点で有利である。
【0063】
本発明の自立型包装袋においては、自立型包装袋10や自立型包装袋10Aのように側端シール部を有する場合、側端シール部を折り返して平面部や側面部に接着してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[略号]
以下の略号は、以下の意味を示す。
PET:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
AL:アルミニウム箔
ONY:二軸延伸ポリアミドフィルム
【0065】
[実施例1]
表1に示す組成の内層、中間層及び外層の3層構成のシーラントフィルム(総厚み80μm、最低融点:123.7℃)を用い、各フィルム間にドライラミネート用接着剤を用いて、厚み12μmのPET、厚み7μmのAL、厚み15μmのONY及びシーラントフィルムをこの順に貼り合わされた積層体を、ドライラミネート加工により得た。この際のドライラミネート用接着剤は、ポリウレタン系2液硬化型接着剤を用いた。なお、融点は、JIS K 7121に準拠し、シーラントフィルムを切り出して示差走査型熱量測定(DSC)により窒素雰囲気下で、毎分10℃の速度で昇温して測定した融解ピーク温度である。
一対の平面部、一対の側面部、及び底面部を形成する部材として前記積層体を用い、
図1~3に例示したスパウト付自立型包装袋1と同じ態様で、矩形状の底面部の周縁から下方に延びる4つの下端シール部を有するスパウト付自立型包装袋を作製した。下端シール部の形成時のヒートシール温度は230℃とした。下端シール部の幅は5mmとした。
【0066】
【0067】
[実施例2]
シーラントフィルムとして、表2に示す組成の内層、中間層及び外層の3層構成のシーラントフィルム(総厚み80μm、最低融点:135℃)を用いる以外は、実施例1と同様にして積層体を得て、スパウト付自立型包装袋を作製した。
【0068】
【0069】
[実施例3]
シーラントフィルムを各層の厚み比を変更せずに70μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得て、スパウト付自立型包装袋を作製した。
【0070】
[実施例4]
シーラントフィルムを各層の厚み比を変更せずに65μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得て、スパウト付自立型包装袋を作製した。
【0071】
[比較例1]
図10及び
図11に例示したスパウト付ガゼット袋100を作製した。スパウト付ガゼット袋100は、ガゼット袋110と、ガゼット袋110に液密に取り付けられたスパウト112と、スパウト112に装着されるキャップ113とを備えている。ガゼット袋110は、対向する一対の平面部114,114と、平面部114,114の側端同士を接続するように設けられ、内部側に折り込まれた対向する一対の側面部116,116とを備えている。ガゼット袋110は、隣り合う平面部114と側面部116の側端同士がヒートシールされた4つの側端シール部120と、平面部114と側面部116の上端同士がヒートシールされた上端シール部122と、平面部114と側面部116の下端同士がヒートシールされた下端シール部124を有している。スパウト付ガゼット袋100の自立状態では、
図11に示すように、平面部114,114が折れ曲がって形成される下端シール部124も含めた底面が載置面となる。
【0072】
一対の平面部114,114及び一対の側面部116,116を形成する部材として実施例1と同じ積層体を用いた。下端シール部124の形成時のヒートシール温度は230℃とした。下端シール部124の幅は5mmとした。
【0073】
[比較例2]
シーラントフィルムとして、LLDPEフィルム(厚み80μm、融点:110℃)を用いる以外は、実施例1と同様にして積層体を得て、自立型包装袋を作製した。
【0074】
[評価]
各例の包装袋に内容物として180mLの水を充填し、100℃のオーブン内で包装袋を自立させて、24時間、加温した。
(外観)
加温後の包装袋の外観を確認した。
(衝撃強度)
加温後の包装袋を1.5mの高さから落下させ、破袋の有無を確認した。各例において10個の包装袋について試験を行い、破袋が生じた袋の数を計測した。
結果を表3に示す。
【0075】
【0076】
表3に示すように、実施例1~3の自立型包装袋は、加温後において自立性及び外観が良好で耐熱性に優れており、また落下させても破袋が生じることがなく、耐衝撃性にも優れていた。実施例4の自立型包装袋は、加温後において自立性及び外観が良好で耐熱性に優れていた。また、落下させた際に破袋してしまうものが少数あり、実施例1~3と比べると耐衝撃性に劣るものの、充分な耐衝撃性を有していた。実施例4の自立型包装袋において破袋が生じた箇所は、上端シール部の内端と交わる側面部の折り線上であった。
一方、足となる下端シール部を有しない比較例1のガゼット袋は、加温により、熱がかかり続けていたことにより、加温後に底部で、シーラントフィルムが劣化してデラミネーションが生じ、耐熱性が劣っていた。また落下により破袋が生じた数が多く耐衝撃性も劣っていた。破袋が生じた箇所は、上端シール部の内端と交わる側面部の折り線上であった。比較例1に用いた積層体は、実施例1と同様であるが、比較例1のガゼット袋の底面部は熱がかかり続けて積層体のシーラントフィルムが劣化してしまったため、ガゼット袋全体のシーラントフィルムも少なからず劣化してしまったことが原因と考えられる。また、シーラントフィルムを形成する合成樹脂の融点が120℃未満である比較例2の自立型包装袋は、シーラントフィルムが軟化することにより加温後に足となる4つの下端シール部が折れて転倒し、転倒した際に、加温器に直接触れてしまう平面部においてデラミネーションが発生しており、耐熱性に劣っていた。また試験した全ての比較例2の自立型包装袋が、上端シール部の内端と交わる側面部の折り線上で破袋しており、耐衝撃性が劣っていた。
【符号の説明】
【0077】
1…スパウト付自立型包装袋、10,10A…自立型包装袋、12…スパウト、13…キャップ、14,14A…平面部、16…側面部、18,18A…底面部、20,20A…側端シール部、22…上端シール部、24,24A…下端シール部、26…横ガゼット部、200…平面。