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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ブラシ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230922BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20230922BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L21/304 644Z
B08B3/02 A
B08B1/00
H01L21/304 644C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019032075
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020136618
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】宮林 将
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337071(US,A1)
【文献】特開平11-019609(JP,A)
【文献】特開2018-148054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を洗浄し、高さ方向に移動可能な洗浄ブラシと、
前記基板を洗浄する洗浄位置から前記高さ方向に離間した退避位置で回転する前記洗浄ブラシの外周に向けて、前記洗浄ブラシの気孔内の異物に当たって前記異物を除去可能な洗浄ミストを側面方向から見て直線状に噴霧するノズルと、
を備えている、ことを特徴とするブラシ洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルは、平面視扇形に拡げた前記洗浄ミストを噴霧する、ことを特徴とする請求項1に記載のブラシ洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズルは、前記洗浄ミストを側面方向から見て前記洗浄ブラシの外周と接する方向に向けて噴霧する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のブラシ洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記洗浄ミストを側面方向から見て前記洗浄ブラシの外周下部と接する方向に向けて噴霧する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のブラシ洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄ブラシの外周面に付着しているダストを剥ぎ落とすスクレーパを更に備えている、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のブラシ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシ洗浄装置に関するものであり、特に、化学機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)等により処理した後の半導体ウエハ等の基板を洗浄するブラシを洗浄するためのブラシ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学機械的研磨(CMP)等により処理されたウエハ表面には、使用した研磨剤等のパーティクルや、化学薬品に含まれる金属不純物、ウエハ上の金属配線に使用した金属のイオン及び微粒子等が大量に付着している。これらのパーティクル等は製品としての半導体装置等に悪影響を与えることから、研磨後のウエハ表面を洗浄ブラシと洗浄液を用いて洗浄することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の洗浄装置は、回転させたウエハの表面に洗浄液を吹き付けるとともに、回転するブラシでウエハ表面をこすり、ウエハ表面の異物や他工程で生じた突起物を除去する技術が開示されている。
【0004】
回転するブラシでウエハ表面をこすり、異物や突起部を除去する技術では、除去された異物や突起物がブラシの中に残留し、その異物がウエハ表面に悪い影響(二次汚染)を与えることがある。
【0005】
そこで、回転しているブラシの外周面に洗浄液を噴射し、ブラシ表面の異物を除去するブラシ洗浄装置が知られている(特許文献なし)。
【0006】
図8及び図9は、従来から知られるブラシ洗浄装置の要部構成を示すものである。図8及び図9に示す従来のブラシ洗浄装置は、パイプ材101に線状に並べて設けられた複数の洗浄口102から、回転している洗浄ブラシ103の外周面に向けて、洗浄液104を直線状に噴射し、洗浄ブラシ103のブラシ表面に残留している異物を洗浄液104で除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭59-193029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8及び図9に示す、パイプ材101に線状に並べて設けられた複数の洗浄口102から、洗浄液104を洗浄ブラシ103のブラシ表面に直線的に当てて異物を除去する従来のブラシ洗浄装置の構造では、使用時間に比例して洗浄ブラシ103の劣化と汚染が進み、洗浄効果が失われて汚染物質である異物の除去作業が十分にできないという問題点があった。
【0009】
そこで、洗浄ブラシの外周面に洗浄液を効果的に噴射し、洗浄ブラシ表面に残留している異物を効率良く除去して、洗浄ブラシの交換周期を長くすることができる構造にするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、基板を洗浄し、高さ方向に移動可能な洗浄ブラシと、前記基板を洗浄する洗浄位置から前記高さ方向に離間して回転する前記洗浄ブラシの外周に向けて、前記洗浄ブラシの気孔内の異物に当たって前記異物を除去可能な洗浄ミストを側面方向から見て直線状に噴霧するノズルと、を備えている、ブラシ洗浄装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、洗浄ブラシの外周面にノズルで洗浄ミストを噴霧するようにしている。したがって、洗浄水を、洗浄ミストにして洗浄ブラシの外周面に噴霧した場合、洗浄水による飛沫の形が非常に小さくなるとともに、飛沫の流速や打力も高くなる。そして、形が小さく、流速や打力が高くなった飛沫を、洗浄ブラシの気孔内の異物に直接当てて洗浄することにより、気孔内の異物を効率良く除去できる。
また、洗浄ミストによる飛沫が洗浄ブラシの気孔内の異物に断続的にぶつかることにより、洗浄ブラシ及び異物が共に振動して結合が緩み、異物が飛沫と共に外部に落ち、異物を効率良く除去できる。
さらに、洗浄水を洗浄ミストに変えて噴霧することにより、洗浄水の被膜が洗浄ブラシの広範囲にぶつかり、異物を更に効率良く除去できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記ノズルは、平面視扇形に拡げた前記洗浄ミストを噴霧する、ブラシ洗浄装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、洗浄ミストを平面視扇形に拡げて噴霧することにより、洗浄ブラシの広範囲に渡って同じ強さで飛沫をぶつけることができ、洗浄ブラシ内に取り込まれた異物をムラ無く除去できる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記ノズルは、前記洗浄ミストを側面方向から見て前記洗浄ブラシの外周と接する方向に向けて噴霧する、ブラシ洗浄装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、洗浄ブラシの外周と接する方向に向けて噴霧するようにしているので、洗浄ブラシの異物に当たった飛沫は、重力に任せて異物と共に落下され、異物と共に効率良く取り除かれる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3に記載の構成において、前記ノズルは、前記洗浄ミストを側面方向から見て前記洗浄ブラシの外周下部と接する方向に向けて噴霧する、ブラシ洗浄装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、ノズルが、洗浄ミストを洗浄ブラシの外周下部と接する方向に向けて噴霧するようにしているので、洗浄ブラシの異物に当たった飛沫は、重力に任せて異物と共に洗浄ブラシ外周下部から直ぐに落下され、異物と共に効率良く取り除かれる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1、2、3又は4に記載の構成において、前記洗浄ブラシの外周面に付着しているダストを剥ぎ落とすスクレーパを更に備えている、ブラシ洗浄装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、洗浄ミストにより電荷を帯びたダストを、スクレーパに電気的に付着させることにより、ダストを効率的に除去できる。
【発明の効果】
【0020】
発明によれば、ノズルが、洗浄ミストを洗浄ブラシの外周面に噴霧するようにしているので、洗浄ブラシの外周面に噴霧された洗浄水は、飛沫の形が小さくなるとともに、飛沫の流速や打力も高くなる。そして、この形が小さく、流速や打力が高くなった飛沫を、洗浄ブラシの気孔内の異物に直接当てて洗浄するようにしているので、気孔内の異物を効率良く除去できる。
また、洗浄ミストによる飛沫が洗浄ブラシの気孔内の異物に断続的にぶつかるので、洗浄ブラシ及び異物が共に振動して結合が緩み、異物が飛沫と共に外部に落ち、異物を効率良く除去できる。
さらに、洗浄水を洗浄ミストに変えて噴霧することにより、洗浄ブラシの広範囲に飛沫がぶつかり、異物を更に効率良く除去できる。
このように、洗浄ブラシ表面の異物を効率良く除去することができるので、ブラシの交換周期を長くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用した半導体製造装置における基板洗浄装置の全体構造を概略的に示す斜視図である。
図2】同上基板洗浄装置におけるブラシ洗浄装置の主要部材の配置構成を示す平面斜視図である。
図3図2に示すブラシ洗浄装置の主要部材配置構成の側面図である。
図4】本発明のブラシ洗浄装置における上ブラシユニットの要部構成を示す斜視図である。
図5】同上上ブラシユニットの要部構成を図4とは異なる背面側から見て示す斜視図である。
図6】同上ブラシ洗浄装置におけるノズルから噴射される洗浄ミストの一例を示す図で、(a)は洗浄ミストを側面方向から見た図、(b)は洗浄ミストを上方向から見た図である。
図7】本発明のブラシ洗浄装置の構造(a)の場合におけるブラシ性能と、本発明のブラシ洗浄装置の構造(b)の場合におけるブラシ性能と、従来のブラシ洗浄装置(c)の場合におけるブラシ性能との確認結果を示した図である。
図8】従来のブラシ洗浄装置における要部構成の一例を示す斜視図である。
図9】従来のブラシ洗浄装置における要部構成を、図7とは異なる背面側から見て示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、洗浄ブラシの外周面に洗浄液を効果的に噴射し、洗浄ブラシ表面に残留している異物を効率良く除去して洗浄ブラシの交換周期を長くすることができるブラシ洗浄装置を提供するという目的を達成するために、基板を洗浄する洗浄ブラシを洗浄するブラシ洗浄装置であって、前記洗浄ブラシの外周に向けて洗浄ミストを噴霧するノズルを備えている、構成としたことにより実現した。
【実施例
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0024】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0025】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0026】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明のウエハ研磨装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0027】
図1は本発明を適用した基板洗浄装置10の全体構造を概略的に示す斜視図である。図1に示すように基板洗浄装置10は、半導体製造装置の図示しない洗浄槽内に設けられる。洗浄槽内に設けられた基板洗浄装置10は、ウエハ(基板)Wを保持して、このウエハWを水平回転させる複数の回転駆動ローラ11と、回転されるウエハWの上側に配設される上ブラシユニット12Aと、ウエハWの下側に配設される下ブラシユニット12Bと、回転駆動ローラ11及び上ブラシユニット12A、下ブラシユニット12Bにそれぞれ回転駆動力を付与する駆動源としてのモータ14A、14B等を備えている。
【0028】
上ブラシユニット12Aは、その両端部が上ユニットフレーム13Aに保持され、下ブラシユニット12Bは、その両端部が下ユニットフレーム13Bに保持されている。
【0029】
上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bは、図1図3に示すように、ウエハWが配置される位置に対して上下の位置に対向配置されている。また、上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bは、ウエハWと接触する洗浄位置と、ウエハWの搬入・搬出を可能とするために、ウエハWと上下方向に大きく離れる搬入・搬出位置とに移動可能になっている。そして、ウエハWの搬入・搬出を行うときには、上ユニットフレーム13Aと下ユニットフレーム13Bはそれぞれ上下方向に互いに離れた搬入・搬出位置に配置させて、ウエハWの搬入・搬出を可能にする。一方、ウエハWを洗浄するときには、上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bが互いに近接し、ウエハWの上下の表面と当接した洗浄位置に配置させることができる。
【0030】
上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bは略上下対称形にして形成されている。図1図2図3図4及び図5を加えて、上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bの構成を、上ブラシユニット12Aを代表して説明する。したがって、下ブラシユニット12Bの構成は、上ブラシユニット12Aに対して上下の位置を反対にして読み替えることにより、理解できる。
【0031】
すなわち、図4及び図5は、上ブラシユニット12Aの要部構成を示すものであり、図4は上ブラシユニット12Aを前方斜め上方から見た斜視図、図5は上ブラシユニット12Aを後方斜め上方から見た斜視図である。図4及び図5に示すように、上ブラシユニット12Aには、洗浄ブラシ15と、洗浄水供給部16と、スクレーパ17等が設けられている。なお、洗浄水供給部16とスクレーパ17は、上ブラシユニット12A内において、洗浄ブラシ15の外周面を洗浄するための、本発明に係るブラシ洗浄装置20を構成している。
【0032】
洗浄ブラシ15は、図1に示すように、左右両端部側が上ユニットフレーム13A(下ブラシユニット12Bの洗浄ブラシ15は下ユニットフレーム13B)に枢軸18を介して回転可能に支持されている。洗浄ブラシ15は、同じく図1に示すモータ14Aの駆動力を受けて回転し、その回転時でウエハWの表面を洗浄可能になっている。洗浄ブラシ15は、その外周面の略全体がPVA(ポリビニールアルコール)を原料とした多孔質のスポンジで覆われ、表面部に多数の孔が形成されている。
【0033】
洗浄水供給部16は、両端部が上ユニットフレーム13A(下ブラシユニット12Bの洗浄水供給部16は下ユニットフレーム13B)に支持され、かつ、洗浄ブラシ15と平行に配置されている枢軸18と、上ユニットフレーム13A(又は下ユニットフレーム13B)に取り付けられた洗浄水供給パイプ19と、洗浄水供給パイプ19に連結取り付けされて、洗浄ブラシ15と平行に離間配置されている2つのノズル21が設けられている。
【0034】
洗浄水供給パイプ19には洗浄水が供給され、ノズル21は洗浄水供給パイプ19内に供給されて来る洗浄水を、霧状をした洗浄ミスト22に変えて、洗浄ブラシ15の周面に向けて噴霧するようになっている。
【0035】
なお、ノズル21の洗浄ミスト22の噴霧は、図6に示すように、側面視では(a)のように直線形に見え、平面視では(b)のように扇形で、かつ、略水平方向(洗浄ブラシ15の長手方向)に拡げられて見えるように噴霧される。また、その噴霧の向きは、洗浄ミスト22を側面方向(洗浄ブラシ15の一端側)から見て、洗浄ブラシ15の外周の接線方向で、かつ、外周下部の接線方向に向けて噴霧するように設定してある。
【0036】
スクレーパ17は、洗浄ブラシ15の外周面に残留している異物を掻き出すブラシ又はヘラであり、弾性部材で形成されている。スクレーパ17は、左右の両端部が上ユニットフレーム13A(下ブラシユニット12Bのスクレーパ17は下ユニットフレーム13B)に固定されて、洗浄ブラシ15と平行で、かつ、舌状をした先端部を回転する洗浄ブラシ15の外周面に対して弾性変形しつつ摺接して掻き出す。
【0037】
次に、このように構成された基板洗浄装置10の作用の一例を説明する。まず、上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bが退避位置にあって、それぞれが上下方向に互いに離れ、また回転駆動ローラ11の回転が停止している状態において、複数の回転駆動ローラ11で囲まれた洗浄位置に、ウエハWが図示しない搬送手段により搬送されて来てセットされる。
【0038】
次いで、モータ14A、14Bが駆動され、モータ14A、14Bの駆動力により、回転駆動ローラ11と上ブラシユニット12Aの洗浄ブラシ15及び下ブラシユニット12Bの洗浄ブラシ15をそれぞれ回転させる。なお、ここでの上ブラシユニット12Aの洗浄ブラシ15の回転方向と下ブラシユニット12Bの洗浄ブラシ15の回転方向は逆向きに回転される。また、ウエハWの上下面に対して図示しない洗浄ノズルすらウエハWの表裏両面に洗浄液が各々供給される。
【0039】
さらに、上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bが洗浄位置に配置され、上ブラシユニット12Aの洗浄ブラシ15と下ブラシユニット12Bの洗浄ブラシ15が、対向しているウエハWの表裏両面にそれぞれ回転しながら所要の圧力で押し付けられる。
【0040】
このように、互いに逆向きに回転している上ブラシユニット12Aの洗浄ブラシ15と下ブラシユニット12Bの洗浄ブラシ15が、それぞれ所要の圧力でウエハWの表面及び裏面に押し付けられることにより、ウエハWの表裏両面が洗浄される。
【0041】
ウエハWに対する所要の洗浄処理が終了すると、上ブラシユニット12Aと下ブラシユニット12Bの回転が停止されるとともに、洗浄位置から搬入・搬出位置に移動される。また、回転駆動ローラ11が停止し、ウエハWは搬送手段によって排出され、次の工程に向けて搬送される。
【0042】
以上は、ウエハWを洗浄する作用である。ウエハWを洗浄処理して行く間には、洗浄ブラシ15の表面に異物や他工程で生じた突起物が残留する場合があり、洗浄ブラシ15の表面を洗浄して除去処理する必要がある。この除去処理はウエハWを一枚洗浄処理する毎、又は、複数枚のウエハWを洗浄処理し終えた毎に行ってもよいものである。
【0043】
そして、洗浄ブラシ15の洗浄処理を行う場合は、ウエハWが搬送されて取り除かれた後で、かつ、退避位置においてモータ14Aの駆動力で、上ブラシユニット12Aの洗浄ブラシ15と下ブラシユニット12Bの洗浄ブラシ15をそれぞれ回転させるとともに、洗浄水供給パイプ19に洗浄水を供給して、各ノズル21から洗浄ミスト22を、対応している洗浄ブラシ15の周面に向けて噴霧し、噴霧した洗浄ミスト22で洗浄ブラシ15の周面を洗浄する。
【0044】
したがって、本実施例のブラシ洗浄装置20では、ノズル21で洗浄水を霧状にした洗浄ミスト22に変え、この洗浄ミスト22を洗浄ブラシ15の外周面に噴霧するようにしている。このように、洗浄水を霧状にした洗浄ミスト22として、洗浄ブラシ15の外周面に噴霧した場合、洗浄水による飛沫の形が小さくなるとともに、飛沫の流速や打力も高くなる。そして、形が小さく、流速や打力が高くなった飛沫(洗浄ミスト22)を、洗浄ブラシ15の気孔内の異物に直接当てて洗浄するので、気孔内の異物を効率良く除去できる。
【0045】
また、洗浄ミスト22による飛沫が洗浄ブラシ15の気孔内の異物に断続的にぶつかることにより、洗浄ブラシ15及び異物が共に振動して結合が緩み、異物が飛沫と共に外部に落ちるので、異物を効率良く除去できる。
【0046】
さらに、洗浄水を洗浄ミスト22に変えて噴霧することにより、洗浄水の飛沫が洗浄ブラシ15の広範囲にぶつかるので、異物を更に効率良く除去できる。
【0047】
また、ノズル21で洗浄水を、平面視扇形に拡げた洗浄ミスト22として噴霧することにより、洗浄ブラシ15の広範囲に渡って同じ強さで飛沫をぶつけることができ、洗浄ブラシ内に取り込まれた異物をムラ無く除去できる。
【0048】
また、ノズル21で洗浄ミスト22を、側面方向から見て洗浄ブラシ15の外周と接する方向に向けて噴霧しているので、洗浄ブラシ15の異物に当たった飛沫は重力に任せて異物と共に落下し、異物が効率よく取り除かれる。しかも、洗浄ミスト22を側面方向から見て洗浄ブラシ15の外周下部と接する方向に向けて噴霧しているので、洗浄ブラシ15の異物に当たった飛沫は、重力に任せて異物と共に洗浄ブラシ15の外周下端から直ぐに落下し、異物と共に更に効率よく取り除かれる。
【0049】
また、洗浄ブラシ15の外周面に付着しているダストを剥ぎ落とすスクレーパ17を設けているので、洗浄ミスト22により電荷を帯びたダストを、スクレーパ17に電気的に付着させてダストを効率よく取り除くことができる。
【0050】
図7に、本発明に係るブラシ洗浄装置20の効果を検証した実験結果を示す。この検証では、ワークを1枚洗浄する間だけ、洗浄水(洗浄液)を洗浄ブラシに噴射させた場合と、ワークを10枚洗浄する間、洗浄水(洗浄液)を洗浄ブラシに噴射させた場合と、ワークを20枚洗浄する間、洗浄水(洗浄液)を洗浄ブラシに噴射させた場合と、について比較を行った。
【0051】
図7における(a)の本発明のように、洗浄水を洗浄ミストに変えて噴霧するとともに、スクレーパを使用した構造の場合では、1回目でのダスト残留量は732個、10回目でのダスト残留量は26個、20回目でのダスト残留量は7個であった。
【0052】
図7における(b)の本発明のように、洗浄水を洗浄ミストに変えて噴霧させた場合では、1回目でのダスト残留量は15557個、10回目でのダスト残留量は39個、20回目でのダスト残留量は32個であった。
【0053】
これに対し、図7における(c)の従来構造のように、洗浄水を真っ直ぐに洗浄ブラシに噴射させるとともにスクレーパを使用した構造の場合では、1回目でのダスト残留量は2896個、10回目でのダスト残留量は286個、20回目でのダスト残留量は106個であった。
【0054】
したがって、本発明の(a)の構造では、(c)の従来構造の場合と比べて、1枚、10枚及び20枚洗浄するいずれの場合においてもダスト残留量の数が激減し、ブラシ洗浄性能が向上していることが分かった。
【0055】
また、洗浄水をミスト噴霧にした本発明の(b)の構造では、1枚洗浄では有意な効果が見られないものの、10枚及び20枚洗浄では(c)の従来構造に比べてダスト残留量が激減している。ミスト噴霧が洗浄を繰り返す際に顕著な効果を奏することが確認できた。
【0056】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0057】
10 :基板洗浄装置
11 :回転駆動ローラ
12A :上ブラシユニット
12B :下ブラシユニット
13A :上ユニットフレーム
13B :下ユニットフレーム
14A :モータ
14B :モータ
15 :洗浄ブラシ
16 :洗浄水供給部
17 :スクレーパ
18 :枢軸
19 :洗浄水供給パイプ
20 :ブラシ洗浄装置
21 :ノズル
22 :洗浄ミスト
W :ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9