(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】自己乳化型ポリイソシアネート組成物及び塗料用組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230922BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230922BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20230922BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20230922BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/08 019
C08G18/28 090
C08G18/73
C09D175/00
(21)【出願番号】P 2019132420
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 求
(72)【発明者】
【氏名】堀口 健二
(72)【発明者】
【氏名】井上 宗宣
(72)【発明者】
【氏名】長岡 正宏
(72)【発明者】
【氏名】足立 浩明
(72)【発明者】
【氏名】前田 秋生
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053108(JP,A)
【文献】特開2015-140313(JP,A)
【文献】特表平11-508945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D
C07F 7/00-7/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、
アニオン性化合物(a)が下記式(1)で表され
、
有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の質量分率が、自己乳化型ポリイソシアネート組成物の全質量を基準として、10~35質量%であり、
アミン化合物(c)に含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2:1~2:0.1である自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~4のアルキル基を表す。複数のR
1は同一又は相異なっていてもよい。R
2及びR
3は各々独立に炭素数1~4のアルキレン基を表す。nは0以上2以下の整数を表す。)
【請求項2】
アニオン性化合物(a)が3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸及び/又は3-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸である請求項1に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
有機ポリイソシアネート(b)が、脂肪族ポリイソシアネートを含有することを特徴とする請求項
1または2に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれかに記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる塗料用組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の塗料用組成物から形成された塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己乳化型ポリイソシアネート組成物、それから得られる塗料用組成物及びそれから形成された塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤や塗料等として使用される硬化性組成物としてポリイソシアネートが知られており、イソシアヌレート構造を有する疎水性ポリイソシアネートをアニオン性親水基含有化合物により変性させ、水に乳化、分散して使用している(例えば特許文献1参照)。しかし、このような自己乳化型ポリイソシアネート組成物から得られる塗料用組成物をガラス等の無機基材上に塗布した際、付着性が悪いといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、ガラス等の無機基材への付着性に優れた塗料用組成物を与える自己乳化型ポリイソシアネート組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のアニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)、及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物により、前記課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の[1]~[5]に示す実施形態を含むものである。
【0007】
[1]アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、アニオン性化合物(a)が下記式1で表される自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0008】
【0009】
(式中、R1は炭素数1~4のアルキル基を表す。複数のR1は同一又は相異なっていてもよい。R2及びR3は各々独立に炭素数1~4のアルキレン基を表す。nは0以上2以下の整数を表す。)。
【0010】
[2]アニオン性化合物(a)が3-(3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ)プロパン-1-スルホン酸及び/又は3-(3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ)プロパン-1-スルホン酸である上記[1]に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0011】
[3]有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の含有量が、10~35質量%であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0012】
[4]有機ポリイソシアネート(b)が、脂肪族ポリイソシアネートを含有することを特徴とする上記[1]から[3]のいずれかに記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0013】
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる塗料用組成物。
【0014】
[6]上記[5]に記載の塗料用組成物から形成された塗膜。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス等の無機基材への付着性に優れた塗料用組成物を与える自己乳化型ポリイソシアネート組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0017】
本発明の自己乳化型ポリイソシアネート組成物は、アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる。
【0018】
<アニオン性化合物(a)>
本発明に用いられるアニオン性化合物(a)は、下記式(1)で表される。
【0019】
【0020】
(式中、R1は炭素数1~4のアルキル基を表す。複数のR1は同一又は相異なっていてもよい。R2及びR3は各々独立に炭素数1~4のアルキレン基を表す。nは0以上2以下の整数を表す。)。
【0021】
R1で表される炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等を例示することができる。原料の入手容易性の観点から、R1はメチル基又はエチル基が好ましい。
【0022】
R2及びR3で表される炭素数1~4のアルキレン基としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等を例示することができる。得られる塗料用組成物の付着性が高い点で、R2及びR3はいずれもトリメチレン基が好ましい。
【0023】
本発明に用いられる式(1)で表されるアニオン性化合物(a)としては、3-[3-(トリメトキシシリル)メチルアミノ]メタン-1-スルホン酸、3-[3-(トリメトキシシリル)エチルアミノ]メタン-1-スルホン酸、3-[3-(トリメトキシシリル)エチルアミノ]エタン-1-スルホン酸、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]メタン-1-スルホン酸、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エタン-1-スルホン酸、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(ジメトキシメチルシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(メトキシジメチルシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(ジエトキシメチルシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(エトキシジメチルシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(トリメトキシシリル)ブチルアミノ]プロパン-1-スルホン酸、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]ブタン-1-スルホン酸等を例示することができる。
【0024】
得られる塗料用組成物の付着性が高い点で、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸及び/又は3-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸であることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる式(1)で表されるアニオン性化合物(a)は、分子内のスルホ基の活性水素が分子内のアミノ基上に転位し、式(1a)で表される内部塩を形成しうるが、本発明のアニオン性化合物(a)は、式(1a)で表される内部塩を含むものである。便宜上、本明細書においては本発明のアニオン性化合物(a)を式(1)として表記する。
【0026】
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3及びnは前記と同じ意味を表す。)。
【0027】
本発明に用いられる式1で表されるアニオン性化合物(a)は、市販あるいは文献記載の方法(Journal of the American Chemical Society,2012年,134巻,13950ページ)を参考に調製できる一般式(R1O)3-nMenSi-R2-NH2(2)(式中、R1、R2及びnは前記と同じ意味を表す。)で表されるアミンを原料として用いて、文献記載の方法(例えば、Russian Journal of General Chemistry,2015年,85巻,2282ページ;Journal of the American Chemical Society,2000年,122巻,3375ページ;国際公開第2007/048691号公報;Applied Catalysis, A: General,2013年,450巻,34ページ)を参考に調製することができる。
【0028】
<有機ポリイソシアネート(b)>
本発明に用いられる有機ポリイソシアネート(b)としては、例えば芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環族ポリイソシアネートから選択される有機ポリイソシアネートを挙げることができる。また、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、アロファネート変性ポリイソシアネート、ウレトジオン変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、ウレトイミン変性ポリイソシアネート、アシルウレア変性ポリイソシアネート等を単独、又は二種以上で適宜併用することができる。また、耐候性を考慮した場合、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及びこれらの変性ポリイソシアネートが好ましく、被覆膜の耐久性や基材に対する付着性の観点から脂肪族ポリイソシアネート、又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、及びアロファネート変性ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。光沢性を考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、及びアロファネート変性ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0029】
<芳香族ポリイソシアネート>
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
<芳香脂肪族ポリイソシアネート>
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、又はそれらの混合物;1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、又はそれらの混合物;ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0031】
<脂肪族ポリイソシアネート>
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-(イソシアネートメチル)オクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-(イソシアネートメチル)オクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2-イソシアネートエチル=2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル=2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等が挙げられる。
【0032】
<脂環族ポリイソシアネート>
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水素化された水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタン、水素化された水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化された水添トリレンジイソシアネート、水素化された水添キシレンジイソシアネート、水素化された水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
また、有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の質量分率が、自己乳化型ポリイソシアネート組成物の全質量を基準として、10~35質量%であることが好ましく、15~24質量%であることが更に好ましい。
【0034】
<アミン化合物(c)>
本発明に用いられるアミン化合物(c)としては、第三級アミンを用いることが好ましい。第三級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の第三級モノアミン、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、1,4-ビス(ジメチルアミノ)ブタン、N,N’-ジメチルピペラジン等の第三級ジアミンを挙げることができる。特にイソシアネートに対する反応性が低い点で、第三級モノアミンが好ましく、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリンが更に好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられるアミン化合物(c)は、アミン化合物(c)に含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2:1~2:0.1となるように用いることが好ましく、0.5:1~1.5:1であることが更に好ましい。
【0036】
<自己乳化型ポリイソシアネート組成物の製造>
自己乳化型ポリイソシアネート組成物を製造するにあたり、前記アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)、アミン化合物(c)の配合順序に特に制限はなく、通常のウレタン化反応の条件を適用することができる。
【0037】
<塗料用組成物>
次に、本発明における塗料用組成物について説明する。
【0038】
本発明の塗料用組成物は、本発明の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる。
【0039】
本発明の塗料用組成物の製造における主剤としては、常温液状で水に不溶、或いは親和性を有しない高分子化合物を好ましく使用できる。なお、水に対して溶解性或いはある程度の親和性を有する水溶性樹脂、又は水系エマルジョンを使用することも可能である。これらの高分子化合物は分子内にイソシアネート基と反応する水酸基、カルボキシル基又はアミノ基(以下、「求核基」という。)を含有するものが好ましく、特に一分子あたり2個以上の求核基を含有するものが好ましい。また、これらの高分子化合物が、イソシアネート基と反応しうる求核基を含有していない場合、又はわずかしか含有していない場合でも、最終的には自己乳化型ポリイソシアネート組成物が水と反応してポリウレア化合物となり、硬くて強靭な塗膜を得ることができる。また、イソシアネート基が被着材表面に存在する求核基と反応するため、被着剤との付着性も向上する。なお、常温にてイソシアネート基と反応しうる求核基を含有する高分子化合物を使用した場合は、高分子化合物中の求核基と自己乳化型ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基が反応し架橋構造を形成するため、耐候性、耐溶剤性等が更に向上する。なお、本発明における常温とは5℃~40℃である。
【0040】
このような主剤としては、例えば飽和或いは不飽和ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、飽和或いは不飽和の脂肪酸変性アルキッドポリオール、アミノアルキッドポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、含フッ素ポリオール、更には飽和或いは不飽和ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、脂肪酸変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースアセテートブチラート樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられる。
【0041】
また、水溶性樹脂、水系エマルジョンも主剤として好適に使用することができ、水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、水溶性エチレン-酢酸ビニル共重合体、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、水溶性リグニン誘導体、水溶性フッ素樹脂、水溶性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0042】
水系エマルジョンとしては、いわゆるラテックス、エマルジョンと表現されるもの全てを包含し、例えば、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリルブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレートブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックス等のゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリブタジエンラテックス、或いはこれらのラテックスをカルボキシル変性したもの、また、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、シリコーンアクリルエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン等が挙げられる。
【0043】
これらのうち、光沢、耐候性等の塗膜性能や接着強度の点で、アクリルポリオール、アクリル樹脂、水溶性アクリル樹脂、アクリルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョンを用いることが好ましい。
【0044】
これら主剤としての高分子化合物の数平均分子量は、好ましくは1000~100万であり、更に好ましくは1万~10万である。
【0045】
<配合比>
本発明の塗料用組成物の製造における自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤との配合比は、本発明の主剤として分子中に求核基を含有するものを使用する場合、自己乳化型ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基と、主剤中の求核基とのモル比は、9:1~1:9が好ましく、6:4~4:6が更に好ましい。この範囲内とすることで、より優れた性能を持つ塗膜を得ることができる。
【0046】
また、主剤として分子中に求核基を含まない、もしくは、わずかしか含まないものを使用する場合、自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤の質量比は、1:9~5:5が好ましく、1:9~3:7が更に好ましい。この範囲内とすることで、より優れた性能を持つ塗膜を得ることができる。
【0047】
<配合方法>
主剤と自己乳化型ポリイソシアネート組成物の配合方法は、主剤にそのまま添加する、一旦自己乳化型ポリイソシアネート組成物を水分散させてから添加する、又はウレタン分野で常用の溶剤に溶解させてから添加する等の方法が挙げられる。本発明においては、自己乳化型ポリイソシアネート組成物を水に分散させてから、主剤と配合する方法が好ましい。
【0048】
<その他添加剤>
本発明における自己乳化型ポリイソシアネート組成物及び塗料用組成物には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤や、紫外線吸収剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解防止剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤、貯蔵安定剤、造膜助剤といった添加剤を適宜配合することができる。
【0049】
<塗装方法>
本発明の塗料用組成物は、従来行なわれている通常の塗装方法によって塗装することで塗膜を得ることができる。塗装にはエアレススプレー機、エアスプレー機、静電塗装機、浸漬、ロールコーター、ナイフコーター、ハケ等を用いることができる。
【0050】
以上述べた、本発明の自己乳化型ポリイソシアネート組成物及び塗料用組成物を用いることにより、ガラス、鋼板等の無機基材への付着性に優れた塗膜を得ることができる。また、上記無機基材同士、あるいは上記無機基材とポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレン、ナイロン等の有機材料等とを接着するための接着剤としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、合成例により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものではない。
【0052】
[アニオン性化合物の製造]
<合成例1>
300mLフラスコに1,3-プロパンスルトン(10.0g,82mmol)を量り取り、アセトニトリル(150mL)に溶解させた後、氷冷下で3-(トリメトキシシリル)プロピルアミン(14.9g,83mmol)を加えた。反応溶液を徐々に室温まで昇温させた後、50℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷ました後、析出した白色沈殿をろ取し、アセトニトリル次いでジエチルエーテルで洗浄後、減圧下で乾燥させることで、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸(A-1)を得た(8.96g,30mmol,36%)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.42(brs,2H),3.47(s,9H),3.01(t,J=6.7Hz,2H),2.84(t,J=7.6Hz,2H),2.60(t,J=6.6Hz,2H),1.95-1.85(m,2H),1.64-1.54(m,2H),0.66-0.58(m,2H)。
【0053】
<合成例2>
300mLフラスコに1,3-プロパンスルトン(9.91g,81mmol)を量り取り、アセトニトリル(160mL)に溶解させた後、氷冷下で3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン(18.1g,82mmol)を加えた。反応溶液を徐々に室温まで昇温させた後、50℃で4時間撹拌した。減圧下で揮発性成分を除去することで、白色固体を得た。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄後、減圧下で乾燥させることで、3-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]プロパン-1-スルホン酸(A-2)を得た(13.0g,38mmol,46%)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.41(brs,2H),3.75(q,J=7.0Hz,6H),3.01(t,J=6.8Hz,2H),2.85(t,J=7.6Hz,2H),2.60(t,J=6.6Hz,2H),1.96-1.86(m,2H),1.65-1.55(m,2H),1.15(t,J=7.0Hz,9H),0.62-0.54(m,2H)。
【0054】
[自己乳化型ポリイソシアネートの製造]
<実施例1>
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:0.1Lの反応器に、有機ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体含有ポリイソシアネート、商品名:コロネートHXLV、イソシアネート含量23.2質量%、東ソー社製)を18.7g、合成例1で得られたA-1を0.90g、ジメチルシクロヘキシルアミンを0.38g仕込み、80℃で5時間撹拌し、自己乳化型ポリイソシアネートP-1を得た。イソシアネート基質量分率は自己乳化型ポリイソシアネート組成物P-1の全質量を基準として21.1質量%であった。
【0055】
<実施例2>
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:0.1Lの反応器に、コロネートHXLVを18.6g、合成例2で得られたA-2を1.03g、ジメチルシクロヘキシルアミンを0.38g仕込み、80℃で5時間撹拌し、自己乳化型ポリイソシアネートP-2を得た。イソシアネート基質量分率は自己乳化型ポリイソシアネート組成物の全質量P-2の全質量を基準として21.0質量%であった。
【0056】
<比較例1>
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:0.1Lの反応器に、コロネートHXLVを19.0g、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(東京化成工業製)を0.66g、ジメチルシクロヘキシルアミンを0.38g仕込み、80℃で5時間撹拌し、自己乳化型ポリイソシアネートP-3を得た。イソシアネート基質量分率は自己乳化型ポリイソシアネート組成物P-3の全質量を基準として21.4質量%であった。
・ジメチルシクロヘキシルアミン:試薬特級、東京化成工業社製。
【0057】
<塗料用組成物の調製>
主剤(アクリルエマルジョン、DIC社製、WE-303、固形分45質量%、水酸基価は固形分換算で84(mg-KOH/g))と、得られた自己乳化型ポリイソシアネート組成物(P-1~3)とを、イソシアネート基/水酸基=1.5(モル比)になるように配合した。この配合液を全体の固形分が40質量%になるように水を加え、ホモミキサーを用いて2000rpmで30秒間高速撹拌することにより、塗料用組成物を得た。
【0058】
<付着性評価用塗膜の作製>
各塗料用組成物をアプリケーターにてガラス板に塗布し、温度25℃雰囲気下で1週間養生を行い、乾燥膜厚40μmの塗膜を形成させた。
【0059】
<付着性評価>
JIS K5621 7.11の付着安定性の試験法に準拠して、上記で作製した試験板上の各水性樹脂組成物によって得られた塗膜にカッターで内角30°、50mmとなるようにX字に切り傷を入れ、カット面にセロハン粘着テープを貼り付け、消しゴムで均等に擦って塗膜にテープを完全に密着させた。その後、テープの一端をもって、塗面に垂直に瞬間的に引きはがし、その後のカット面を目視で判定した。結果を表1に示す。
(判定基準)
A:剥がれが全く見られない。
C:セロハン粘着テープ接着部の全面剥離が見られる。
評価Aであれば良好と言える。
【0060】