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特許7353236シリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】シリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 10/00 20060101AFI20230922BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230922BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230922BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230922BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20230922BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20230922BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20230922BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230922BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20230922BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20230922BHJP
   D06M 13/203 20060101ALI20230922BHJP
   D06M 13/51 20060101ALI20230922BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
D06M10/00 J
C08L83/04
C08K3/36
C08K5/10
C08K5/29
C08K5/541
C09D183/04
C09D7/61
D06M15/643
D06M11/79
D06M13/203
D06M13/51
B60R21/235
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020087022
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181641
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】前川 珠里
(72)【発明者】
【氏名】芦田 諒
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-085271(JP,A)
【文献】特公昭48-042840(JP,B1)
【文献】特開2002-012638(JP,A)
【文献】特表2019-520438(JP,A)
【文献】特開2011-148981(JP,A)
【文献】特開2006-249327(JP,A)
【文献】特表2007-500266(JP,A)
【文献】特開2011-080037(JP,A)
【文献】特開2021-181522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00 -15/715
B60R 21/235
C08K 3/36 - 5/59
C08L 83/04
C09D 7/61
C09D 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布の少なくとも一方の表面に、
(A)粘度が1,000~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)補強性シリカ微粉末:1~100質量部
(C)硬化性向上剤として1分子中にアクリル基を2つ以上有する有機化合物:0.1~10質量部
(D)イソシアネート基、アクリル基、メタクリル基、アルコキシ基、アルケニル基、エステル基の群から選ばれる1つ以上の官能基を1分子中に2つ以上有する接着性向上剤:0.1~10質量部
を含む液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を塗布し、照射線量30~300kGyの電子線を照射することにより、前記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を架橋させて硬化することを特徴とするシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法。
【請求項2】
前記(B)成分を、BET法における比表面積が50m/g以上のヒュームドシリカとすることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法。
【請求項3】
前記電子線の照射は、電子線成形装置によって照射することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法により製造されたシリコーンコーティングエアーバッグ基布を用いることを特徴とするエアーバッグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維等からなる基布に対する接着性、難燃性等に優れた液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を電子線で架橋、硬化して得られるゴムコーティング層を有するシリコーンエアーバッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維表面にゴム被膜を形成させることを目的としたエアーバッグ用シリコーンゴム組成物が提案されている。シリコーンゴム被膜を有するエアーバッグは気密性及び低燃焼速度性に優れるため、自動車等のエアーバッグとして好適に用いられている。
【0003】
このようなエアーバッグ用シリコーンコーティング組成物としては、分子鎖両末端にヒドロシリル基を持つ架橋剤と、側鎖にヒドロシリル基を持つ架橋剤とを組み合わせることで内圧保持性に優れる付加硬化型液状シリコーンゴム組成物(特許文献1)や、特定構造のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを架橋剤とし、接着性付与成分として、1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、並びにチタニウム化合物及びジルコニウム化合物のいずれか一方又は両方を含有することで、基布への接着性に優れる付加硬化型液状シリコーンゴム組成物(特許文献2)や、Q単位を含有する分岐鎖オルガノポリシロキサンをベースポリマーとする付加硬化型シリコーンゴム組成物を基布にコーティングすることにより内圧保持性に優れたエアーバッグを製造する方法(特許文献3)などが開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングし、硬化することで製造するエアーバッグ用コーティング基布は乾燥炉で高温に加熱する工程が必要であるため、生産性が低い。
【0005】
また、液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングし、電子線で架橋、硬化して得られる接着性や耐ブロッキング性に優れるシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法が開示されている(特許文献4)。しかし、難燃性に関する結果の記述はなく、エアーバッグ用基布として必要とされる難燃性を満足するものではないと推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2013-531695号公報
【文献】特開2011-080037号公報
【文献】特表2013-516521号公報
【文献】特開2015-085271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、繊維等からなる基布に対する接着性及び難燃性に優れたゴムコーティング層を有するエアーバッグ基布の簡便な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために、ゴムコーティング層の硬化方法に関して種々検討した結果、後述する(A)~(D)成分を必須成分とする液状シリコーンゴムコーティング剤組成物をエアーバッグ用基布にコーティングし、架橋させる際に、照射線量30~300kGyの電子線を照射させることにより、短時間に架橋させることが可能であり、また前記方法により製造されたシリコーンゴムコーティングエアーバッグ用基布は、接着性及び難燃性にも優れることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、基布の少なくとも一方の表面に、
(A)粘度が1,000~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)補強性シリカ微粉末:1~100質量部
(C)硬化性向上剤:0.1~10質量部
(D)接着性向上剤:0.1~10質量部
を含む液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を塗布し、照射線量30~300kGyの電子線を照射することにより、前記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を架橋させて硬化することを特徴とするシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法を提供する。
【0010】
このようなシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法であれば、繊維等からなる基布に対する接着性及び難燃性に優れたゴムコーティング層を有するエアーバッグ基布の簡便な製造方法となり、その難燃性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明では、前記(B)成分を、BET法における比表面積が50m/g以上のヒュームドシリカとすることが好ましい。
【0012】
このような(B)成分を用いると、補強性を十分とすることができる。
【0013】
また、本発明では、前記(C)成分を、1分子中にアクリル基を2つ以上有する有機化合物とすることが好ましい。
【0014】
このような(C)成分を用いると、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化性を向上できる。
【0015】
また、本発明では、前記(D)成分を、イソシアネート基、アクリル基、メタクリル基、アルコキシ基、アルケニル基、エステル基の群から選ばれる1つ以上の官能基を1分子中に2つ以上有するものとすることが好ましい。
【0016】
このような(D)成分を用いると、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化物の自己接着性をより向上させることができる。
【0017】
また、本発明では、前記電子線の照射は、電子線成形装置によって行うことができる。
【0018】
このような電子線の照射方法であれば、より確実に本発明の効果を向上させることができる。
【0019】
また、本発明では、前記方法により製造されたシリコーンコーティングエアーバッグ基布を用いるエアーバッグの製造方法とすることができる。
【0020】
このようなエアーバッグの製造方法であれば、難燃性に優れたエアーバッグを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特定の成分を含む液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を特定の照射線量の電子線にて架橋することで、エアーバッグ用基布への接着性及び難燃性に優れたシリコーンゴムコーティング層を有するシリコーンコーティングエアーバッグ基布を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、繊維等からなる基布に対する接着性及び難燃性に優れたゴムコーティング層を有するエアーバッグ基布の簡便な製造方法の開発が求められていた。
【0023】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含む液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を特定の照射線量の電子線にて架橋することで、接着性及び難燃性に優れたシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法となることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
即ち、本発明は、基布の少なくとも一方の表面に、
(A)粘度が1,000~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)補強性シリカ微粉末:1~100質量部
(C)硬化性向上剤:0.1~10質量部
(D)接着性向上剤:0.1~10質量部
を含む液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を塗布し、照射線量30~300kGyの電子線を照射することにより、前記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を架橋させて硬化することを特徴とするシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法である。
【0025】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。なお、本明細書中において、粘度は、25℃において、JIS K 7117-1:1999に記載の方法で回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型)により測定した値である(以下、同じ)。また、平均重合度(又は平均分子量)は、トルエンを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均重合度(又は重量平均分子量)として求めた値である(以下、同じ)。
【0026】
<液状シリコーンゴムコーティング剤組成物>
本発明の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、以下の(A)~(D)成分を含むものであって、室温(25℃)で液状のものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0027】
本発明に係る液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、
(A)粘度が1,000~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)補強性シリカ微粉末:1~100質量部
(C)硬化性向上剤:0.1~10質量部
(D)接着性向上剤:0.1~10質量部
を含むことを特徴とするものである。
【0028】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、本発明で使用する液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の主剤(ベースポリマー)となる成分であり、粘度が1,000~1,000,000mPa・s、好ましくは1,500~500,000mPa・s、より好ましくは3,000~100,000mPa・sである。
また(A)成分のオルガノポリシロキサンは、通常、平均重合度が50~1,500、好ましくは100~1,100程度であることが望ましい。
【0029】
本成分のオルガノポリシロキサン分子中において、ケイ素原子に結合した有機基(以下「ケイ素原子結合有機基」ともいう)は、特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が1~12、好ましくは1~10の炭化水素基等が挙げられる。この非置換又は置換の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等の不飽和結合を含むアルケニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、ビニル基である。
【0030】
本成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐した直鎖状、環状、分岐鎖状等が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状ジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0031】
本成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖片末端トリメチルシロキシ基封鎖・他方末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:R SiO1/2(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない非置換又はハロゲン置換等の置換の一価炭化水素基である。以下、同じ)で表されるシロキサン単位と式:R SiOで表されるシロキサン単位と少量の式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:R SiO1/2(式中、Rはアルケニル基である。以下、同じ)で表されるシロキサン単位と式:R SiOで表されるシロキサン単位と少量の式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:R SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:R SiOで表されるシロキサン単位と少量の式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RSiOで表されるシロキサン単位と少量の式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位もしくは少量の式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物等が挙げられる。
【0032】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
[(B)成分]
(B)成分である補強性シリカ微粉末は、機械的強度の優れたシリコーンゴムを得るために必要とされるものであるが、この目的のためには、BET法による比表面積が50m/g以上(通常、100~500m/g)であることが好ましく、より好ましくは120~400m/gである。比表面積が50m/g以上であれば補強性が十分であり、ゴム強度が低下してしまう恐れもない。
【0034】
補強性シリカ微粉末としては、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)、比表面積の高いゲル法シリカ(湿式シリカ)が例示され、特にヒュームドシリカ(BET比表面積が50m/g以上)が好ましく、BET比表面積が120~350m/gがより好ましい。
【0035】
上記補強性シリカ微粉末は、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の(通常、加水分解性の)有機ケイ素化合物等の表面処理剤で、表面が疎水化処理されたシリカ微粉末を用いることができる。その場合、これらのシリカ微粉末は、予め粉体の状態で、表面処理剤により、直接表面疎水化処理されたものを用いてもよいし、シリコーンオイル(例えば、上記(A)成分のオルガノポリシロキサン)との混練時に表面処理剤を添加して、表面疎水化処理したものを用いてもよい。
【0036】
(B)成分の通常の処理法として、公知の技術により表面処理することができ、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記未処理のシリカ微粉末と表面処理剤とを入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において、室温(25℃)あるいは熱処理(加熱)下にて混合処理することができる。場合により、水又は触媒(加水分解促進剤等)を使用して表面処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより、表面処理シリカ微粉末を製造し得る。表面処理剤の配合量は、その表面処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよく、通常、未処理のシリカ微粉末100質量部に対し、1~50質量部、好ましくは5~40質量部、より好ましくは10~30質量部とすることができる。
【0037】
表面処理剤として、具体的には、へキサメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール及びヒドロキシペンタメチルジシロキサン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられ、これらで表面処理した疎水性シリカ微粉末を用いることができる。表面処理剤としては、特にシラザン類又はクロロシラン類が好ましい。
【0038】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~100質量部であり、好ましくは5~80質量部であり、より好ましくは10~50質量部である。この配合量が1質量部未満である場合には、硬化物の強度が低くなり難燃性が悪化することがあり、この配合量が100質量部を超える場合には、粘度が高くなり作業性・加工性が悪化することがある。
【0039】
[(C)成分]
(C)成分である硬化性向上剤は、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化性を向上させるための成分である。この硬化性向上剤は、EB照射によるシリコーンゴムコーティング剤の硬化性を向上させることができるものであれば特に限定されない。具体例としては、1分子中にアクリル基を2つ以上、好ましくは3つ以上有する有機化合物などが挙げられる。
【0040】
具体的には、2官能を有するアクリル化合物としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等;3官能を有するアクリル化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等;4官能以上を有するアクリル化合物としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0041】
このようなアクリル基含有有機化合物の具体例として好ましくは、下記に示すジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【化1】
【0042】
式中、Rは水素原子、又はメチル基である。
【0043】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが必要であり、好ましくは0.5~5質量部である。この配合量が0.1質量部未満である場合には、硬化物は十分に硬化しないことがあり、この配合量が10質量部を超える場合には、粘度が高くなり作業性が悪化することがある。
【0044】
(C)成分の硬化性向上剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0045】
[(D)成分]
(D)成分である接着性向上剤は、エアーバッグ用の合成繊維織物基布等に対する、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化物(ゴムコーティング層)の接着性を向上させるための成分である。この接着性向上剤は、硬化物の自己接着性を向上させることができるものであれば特に限定されない。
その具体例としては、有機ケイ素化合物や非ケイ素有機化合物等が挙げられ、中でも、イソシアネート基、アクリル基、メタクリル基、アルコキシ基、アルケニル基、エステル基の群から選ばれる1つ以上の官能基を1分子中に少なくとも1種有するものが好ましく、2種以上有するものがより好ましい。
【0046】
有機ケイ素化合物としては、例えば、ケイ素原子に結合したビニル基、アリル基等のアルケニル基;γ-グリシドキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基;γ-アクリロキシプロピル基、γ-メタクリロキシプロピル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したアクリロキシ基やメタクリロキシ基;アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基;エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造、イソシアネート基;及びケイ素原子に結合した水素原子からなる群から選ばれる少なくとも2個の官能基を有する、オルガノシラン及びケイ素原子数3~100、好ましくは3~50、より好ましくは5~20の、直鎖状、環状又は分岐鎖状のシロキサンオリゴマー、トリアリルイソシアヌレートの(アルコキシ)シリル変性物、そのシロキサン誘導体(即ち、該トリアリルイソシアヌレートのアルコキシシリル変性物の加水分解縮合物)から選ばれる窒素含有有機ケイ素化合物などの有機ケイ素化合物等が挙げられ、中でも、官能基を1分子中に2種以上有するものが好ましい。
【0047】
このような有機ケイ素化合物の具体例としては、下記に示す化合物が挙げられる。
【化2】
【0048】
非ケイ素系有機化合物としては、例えば、1分子中に1個のアルケニル基と少なくとも1個のエステル基とを有する有機酸アリルエステル等が挙げられる。有機酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸;安息香酸、フタル酸、ピロメリト酸等の芳香族カルボン酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸等の飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの有機酸を含む有機酸アリルエステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸アリルエステル;安息香酸アリルエステル、フタル酸ジアリルエステル、ピロメリト酸テトラアリルエステル等の芳香族カルボン酸アリルエステル;酢酸アリルエステル、プロピオン酸アリルエステル、酪酸アリルエステル、吉草酸アリルエステル、ラウリン酸アリルエステル等の飽和脂肪酸アリルエステル等が挙げられる。
【0049】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが必要であり、好ましくは0.5~5質量部である。この配合量が0.1質量部未満である場合には、硬化物は十分な接着性を有しないことがあり、この配合量が10質量部を超える場合には、粘度が高くなり作業性が悪化することがある。
【0050】
(D)成分の接着性向上剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
[その他の成分]
本発明にかかる組成物には、前記(A)~(D)成分以外にも、目的に応じてその他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
・縮合助触媒
接着促進のための縮合助触媒として作用する有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物を用いることができる。上記成分の具体例としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、チタンテトラオクチルオキシド(チタン酸オクチル)等の有機チタン酸エステル、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラアセチルアセトネート等の有機チタンキレート化合物等のチタン系縮合助触媒(チタニウム化合物)、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等の有機ジルコニウムエステル、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機ジルコニウムキレート化合物等のジルコニウム系縮合助触媒(ジルコニウム化合物)が挙げられる。上記成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
・非補強性充填剤
(B)成分のシリカ微粉末以外の充填剤として、例えば、結晶性シリカ(例えば、BET法比表面積が50m2/g未満の石英粉)、有機樹脂製中空フィラー、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(いわゆるシリコーンレジンパウダー)、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、カーボンブラック、ケイ藻土、タルク、カオリナイト、ガラス繊維等の充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。
【0054】
・その他の成分
上記の他にも、例えば、三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チキソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤等を配合することができる。
【0055】
<電子線照射方法>
本発明においては、上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化方法として、照射線量30~300kGyの電子線を照射することにより、好ましくは電子線成形装置を用いて照射線量30~300kGyの電子線を照射することによって硬化させることを特徴とする。加速電圧は、例えば50~500kV、好ましくは80~300kVとすることができる。
【0056】
電子線硬化手段として例えばCB-300型の電子線成形装置(Energy Sciencec、Inc)で電子線硬化を実施することができる。この場合エアーバッグに使用される基布に上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物をコーティングし、装置の不活性化されたチャンバに通過させる(<50ppm酸素)。その後、不活性化されたチャンバ中で、電子線照射に暴露し、照射線量で30~300kGy、好ましくは300kGy未満、特に50~200kGyの電子線を与えることで硬化させることができる。30kGy未満では、硬化が不十分であり、300kGyより大きい照射線量では、シリコーンゴム層の硬度が高くなり、クラッキングが発生することがある。
【0057】
従来は、30Mrad(300kGy)を超える照射線量が必要であったが、本発明では(C)成分を含むため、より低照射線量で硬化させることができる。また、(A)成分には、アルケニル基などがなくともよい。
【0058】
また、電子線硬化は、公知の方法を採用できるが、バッチ式よりもベルトコンベア式が好ましい。ベルトコンベア式であると架橋対象物を炉の中に入れるときに一時的にチャンバ内酸素濃度が上昇することがなく、表面架橋性が悪化するおそれがない。
【0059】
<液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の調製>
上記(A)~(D)成分と、必要に応じて配合されるその他の任意成分を均一に混合することにより、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を調製することができる。
こうして得られる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、25℃で液状の組成物であり、JIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度は、1,000~1,000,000mPa・sであり、好ましくは10,000~700,000mPa・sである。この粘度範囲内であれば、エアーバッグ用基布に塗工する際に、塗工むらや硬化後の基布への接着力不足などが生じにくいため、好適に用いることができる。
【0060】
<エアーバッグ用基布>
本発明において、上記組成物の硬化物からなるシリコーンゴム層が形成されるエアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)としては、公知のものが用いられ、その具体例としては、6,6-ナイロン、6-ナイロン、アラミド繊維などの各種ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの各種ポリエステル繊維などの各種合成繊維の織生地が挙げられる。
【0061】
<エアーバッグの製造方法>
上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を、エアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)の少なくとも一方の表面、特には一方の表面に塗布した後、30~300kGyの電子線を照射することで、これを架橋、硬化させてシリコーンゴム層(硬化被膜層)を形成する。さらに、このようにして得たシリコーンコーティングエアーバッグ基布を用いて、エアーバッグを製造することができる。
【0062】
ここで、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物をエアーバッグ用基布にコーティングする方法としては、常法を採用することができるが、ナイフコーターによるコーティングが好ましい。コーティング層の厚さ(又は表面塗布量)は、通常5~150g/m、好ましくは8~120g/m、より好ましくは10~100g/mとすることができる。
【0063】
このようにして製造された少なくとも一方の表面にシリコーンゴム層を有するエアーバッグ用基布(シリコーンコーティングエアーバッグ基布)をエアーバッグに加工する際は、少なくともエアーバッグの内面側がシリコーンゴムでコーティングされている2枚の平織布の外周部同士を接着剤で貼り合わせ、かつその接着剤層を縫い合わせて作製する方法が挙げられる。また、予め袋織りして作製されたエアーバッグ用基布の外側両面に、上記のように、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を所定のコーティング量でコーティングし、所定の硬化条件下で硬化させる方法を採ってもよい。なお、ここで用いる接着剤には、公知のものを用いることができるが、シームシーラントと呼ばれるシリコーン系接着剤が接着力や接着耐久性などの面から好適である。
【0064】
こうして、エアーバッグ用基布上に、シリコーンゴム組成物の硬化被膜を有するエアーバッグを得ることができるが、かかるエアーバッグは、シリコーンゴムコーティング層のエアーバッグ用基布への接着性及び低燃焼速度性(難燃性)に優れていることから、その産業上の利用価値は極めて高いものである。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明について具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、「部」とは「質量部」を表し、粘度は25℃における回転粘度計による測定値である。また、実施例中で用いた硬化性向上剤(C1)、接着性向上剤(D1)、(D2)は、下記化学式で表される構造を有するものである。
【0066】
・硬化性向上剤(C1)
【化3】
【0067】
・接着性向上剤(D1)
【化4】
【0068】
・接着性向上剤(D2)
【化5】
【0069】
[実施例1]
25℃における粘度が約30,000mPa・sであり、平均重合度が750である分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)60質量部、へキサメチルジシラザン8質量部、水2質量部、およびBET法による比表面積が約300m2/gであるシリカ微粉末(B)(商品名:アエロジル300、日本アエロジル社製)40質量部を、ニーダー中で1時間混合した。次にニーダー内の温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。次いで、該温度を100℃まで降温した後、粘度が約30,000mPa・sであり、平均重合度が750である分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)30質量部を添加し、均一になるまで混合することで、ベースコンパウンド(BC1)を得た。
得られたベースコンパウンド(BC1)55質量部に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が30,000mPa・s(平均重合度:約750)である分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)35質量部、硬化性向上剤(C1)0.9質量部、接着性向上剤(D1)0.9質量部を均一に混合し、組成物A(粘度:172,000mPa・s)を調製した。
【0070】
エアーバッグ用PET基布(495デニール)に表面塗布量が10~20g/mになるようにコーティングした後に、約150kGyの電子線照射線量で照射を行い、シリコーンゴム硬化物でコーティングされたエアーバッグ基布(シリコーンゴム被覆PET基布)を作製した。下記の測定方法に従って、接着性、難燃性の試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0071】
<接着性試験方法>
上記のシリコーンゴム被覆PET基布について、ISO 5981に記載の方法で、スクラブ試験機(SERVONETIC Control Instruments製)を用いて接着性を評価した。600回スクラブ試験を行った後、コーティング部分の破壊状況を目視で確認し、シリコーンゴム層がコーティング面から剥離していない場合を合格と評価し、剥離している場合を不合格と評価した。
【0072】
<難燃性試験方法>
上記のシリコーンゴム被覆PET基布について、FMVSS-302(Federal Moter Vehicle Safety Standard-302)に記載の方法で、難燃性を評価した。試験片である基布(幅10cm×長さ35cm)のシリコーンゴムコーティング面を上側にして、FMVSS-302に記載の方法で燃焼させた時の炎が消えるまでの燃焼距離及び燃焼時間をN=10で測定した。この燃焼距離と燃焼時間から燃焼速度を計算する。この際、試験片に着火しない又はA標線手前で自己消火するもの、燃焼距離51mm以内(且つ60秒以内)で自己消火するもの(SE)、燃焼速度が102mm/minのものを合格と評価した。
【0073】
[実施例2]
実施例1の接着性向上剤(D1)を接着性向上剤(D2)に置き換えたこと以外は同様にして組成物B(粘度:148,000mPa・s)を調製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0074】
[実施例3]
実施例1の硬化時の電子線照射線量を300kGyにして照射したこと以外は同様にして、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
実施例1の硬化時の電子線照射線量を1200kGyにして照射したこと以外は同様にして、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0076】
[比較例2]
実施例1の硬化時の電子線照射線量を10kGyにして照射したこと以外は同様にして、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0077】
[比較例3]
実施例1の接着性向上剤(D1)を配合しなかったこと以外は同様にして組成物C(粘度:172,000mPa・s)を調製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0078】
[比較例4]
実施例1の硬化性向上剤(C1)を配合しなかったこと以外は同様にして組成物D(粘度:186,000mPa・s)を調製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
比較例1は、電子線の照射線量が300kGyを超えているため、接着性と難燃性が劣る結果となった。また、比較例2は、電子線の照射線量が30kGyに満たないため、硬化しなかった。比較例3、4は本発明の必須成分である(C)又は(D)成分を欠いているため、接着性に劣る結果となった。
【0081】
このように、基布の少なくとも一方の表面に、(A)~(D)成分を含む液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を照射線量30~300kGyの電子線を照射することにより、前記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を架橋させて硬化することで、優れた接着性と難燃性を示すシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法となる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。