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  • 特許-冷凍麺類及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-21
(45)【発行日】2023-09-29
(54)【発明の名称】冷凍麺類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20230922BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023533222
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2023008949
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2022041143
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老原 脩
(72)【発明者】
【氏名】仲西 由美子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武紀
(72)【発明者】
【氏名】小澤 佳祐
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067163(JP,A)
【文献】特開昭58-116643(JP,A)
【文献】国際公開第2020/040271(WO,A1)
【文献】XIE Liyang, et al.,Utilization of egg white solids to improve the texture and cooking quality of cooked and frozen pasta,LWT-Food Science and Technology,2020年,Vol.122,109031, pp.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生麺線の加熱調理物の冷凍物である冷凍麺線を含む冷凍麺類であって、
前記冷凍麺線として、当該冷凍麺線の長手方向と直交する方向での断面における最大差し渡し長さが1.2mm以上である、特定冷凍麺線を含み、
前記特定冷凍麺線を解凍して得られる特定麺線は、押し込み治具を備えたレオメーターを用いて、該特定麺線の品温40℃、該押し込み治具の押し込み速度0.5mm/秒の条件で破断試験を行った場合に、破断歪率が70~85%、破断荷重が0.7~4.0Nである、冷凍麺類。
【請求項2】
前記特定冷凍麺線は凝固剤を含有し、
前記凝固剤は、下記方法により調製した該凝固剤の試料について、押し込み治具を備えたレオメーターを用いて、該試料の品温25℃、該押し込み治具の押し込み速度0.5mm/秒の条件で破断試験を行った場合に、破断歪率が30~75%、破断荷重が2.0~4.0Nである、請求項1に記載の冷凍麺類。
(試料の調製方法)
評価対象の凝固剤を水に溶解又は分散させて、該凝固剤を12.5質量%含有する水溶液を調製し、該水溶液をゲル化させて円柱形状のゲル化物を調製する。前記ゲル化物は、前記押し込み治具の押し込み方向に沿う軸方向の長さを10.0mm、該軸方向と直交する方向の長さを50.0mmとする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷凍麺類の製造方法であって、
穀粉類を含む原料粉と液体との混合物を混捏して麺生地を得る麺生地調製工程と、
前記麺生地を圧延ロールにより所定回数圧延して麺帯を得る圧延工程と、
前記麺帯を切断して生麺線を得、該生麺線を乾燥させずに加熱調理し、冷凍する工程と、を有し、且つ下記<1>及び<2>の少なくとも一方を満たす、冷凍麺類の製造方法。
<1>前記麺生地調製工程は減圧度が-0.03MPa以下の減圧環境で実施される。
<2>前記圧延工程における前記麺生地の圧延回数が2回以下である。
【請求項4】
前記生麺線の長手方向と直交する方向での断面の空隙率が1.2%以下である、請求項3に記載の冷凍麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生麺線の加熱調理物、すなわち生麺線を乾燥させずに加熱調理した調理済み麺線を用いた冷凍麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺類を食品工業的に大量生産する場合には機械製麺が利用されている。機械製麺における製麺方法として、圧延製麺法と押出製麺法とが知られている。圧延製麺法は、麺生地(ドウ)に圧力をかけて伸ばしてから麺線に成形する方法であり、典型的には、小麦粉等を含む原料粉に加水し混捏して麺生地を得、該麺生地を重ね合わせてロール圧延機等の圧延手段により複数回圧延して麺帯を得、該麺帯を所定の切り刃で切断して生麺線を得る工程を有する。一方、押出製麺法は、生地に圧力をかけて麺線に押出成形する方法であり、典型的には、麺生地を押出機に供給し、該押出機が備えるダイスの孔から押し出して生麺線を得る工程を有する。一般に、圧延製麺法では複数回の圧延工程を経てグルテン組織が形成されるため、圧延製麺法によって得られる麺類は、押出製麺法によって得られる麺類に比べて、弾力感に富んだものとなりやすい。
【0003】
特許文献1には、圧延製麺法による生麺の製造方法として、常法により製造した麺生地を常圧下で押し出すことで麺帯を調製し、該麺帯を2回以内に所定の麺厚に圧延する工程を有するものが記載されている。特許文献1に記載の製造方法によれば、短時間で調理可能で、柔らかく、歯切れの良い食感の生麺が得られるとされている。
【0004】
特許文献2には、油脂含量の低い即席フライ麺を得るために、麺線断面における空隙率を17.2%以下とすることが記載されており、また、斯かる空隙率を実現するために、ロール圧延機を用いた圧延製麺法における圧延回数を、通常の3回~8回よりも少ない1回~2回とすることが好ましい旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-60427号公報
【文献】特開2020-178720号公報
【発明の概要】
【0006】
従来市販されている生麺は、加熱調理後の可食状態において粘弾性のあるもっちりした食感のものが多く、新規な食感を有する生麺に対するニーズがある。具体的には、生麺でありながら、生麺を乾燥させた乾麺に特有の食感、例えば、従来の生麺には無い硬さと噛み切りやすさとを備えた生麺が求められている。このような乾麺様の食感を有する生麺を用いた冷凍麺類は未だ提供されていない。
【0007】
本発明の課題は、従来の生麺には無い新規な食感を楽しむことができる冷凍麺類を提供することである。
【0008】
本発明は、生麺線の加熱調理物の冷凍物である冷凍麺線を含む冷凍麺類であって、
前記冷凍麺線として、当該冷凍麺線の長手方向と直交する方向での断面における最大差し渡し長さが1.2mm以上である、特定冷凍麺線を含み、
前記特定冷凍麺線を解凍して得られる特定麺線は、押し込み治具を備えたレオメーターを用いて、該特定麺線の品温40℃、該押し込み治具の押し込み速度0.5mm/秒の条件で破断試験を行った場合に、破断歪率が70~85%、破断荷重が0.7~4.0Nである、冷凍麺類である。
【0009】
また本発明は、前記の本発明の冷凍麺類の製造方法であって、
穀粉類を含む原料粉と液体との混合物を混捏して麺生地を得る麺生地調製工程と、
前記麺生地を圧延ロールにより所定回数圧延して麺帯を得る圧延工程と、
前記麺帯を切断して生麺線を得、該生麺線を乾燥させずに加熱調理し、冷凍する工程と、を有し、且つ下記<1>及び<2>の少なくとも一方を満たす、冷凍麺類の製造方法である。
<1>前記麺生地調製工程は減圧度が-0.03MPa以下の減圧環境で実施される。
<2>前記圧延工程における前記麺生地の圧延回数が2回以下である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係る破断試験によって得られる麺線の「歪率-荷重曲線」の例を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は冷凍麺類に関する。本発明における「麺類」には、麺と称される食品全般が包含される。具体的には例えば、ロングパスタ等のパスタ、スパゲッティ、うどん、蕎麦、素麺、冷麦、中華麺、フォー、ビーフン等が挙げられる。
本発明の冷凍麺類は、生麺線の加熱調理物の冷凍物である冷凍麺線を含む。本発明の冷凍麺類は、典型的には、冷凍麺線の集合体である冷凍麺塊である。
前記「生麺線の加熱調理物」は、生麺線を乾燥させずに加熱調理した調理済み麺線である。すなわち本発明の冷凍麺類は、加熱調理した麺線を用いたものであるところ、加熱調理の対象とする麺線は、乾麺ではなく、生麺である。
【0012】
本発明の冷凍麺類は、冷凍麺線として、当該冷凍麺線の長手方向と直交する方向での断面(以下、「麺線断面」とも言う。)における最大差し渡し長さが1.2mm以上ある、特定冷凍麺線を含む点で特徴付けられる。本発明において、特定冷凍麺線の麺線断面における最大差し渡し長さを1.2mm以上の特定範囲に限定した理由は、麺線断面における最大差し渡し長さ(麺線の最大太さ)が1.2mm未満であるような比較的細い冷凍麺線では、後述する特徴的な構成を採用しても、喫食時に良好な硬さを感じることができず、本発明の所定の効果が奏されないためである。
前記最大差し渡し長さは、好ましくは1.4mm以上、より好ましく1.5mm以上である。また、前記最大差し渡し長さの上限値は特に制限されないが、麺線を可食状態にするための加熱調理時間が長くなりすぎることを防止する観点から、好ましくは3.8mm以下、より好ましく3.6mm以下である。
特定冷凍麺線の麺線断面の形状は特に制限されず、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形等であり得る。例えば、特定冷凍麺線の麺線断面の形状が円形の場合、前記最大差し渡し長さは、該円形の直径である。また例えば、特定冷凍麺線の麺線断面の形状が楕円形又は長方形の場合、前記最大差し渡し長さは、該楕円形又は該長方形の長軸方向の長さである。
【0013】
特定冷凍麺線は、押し込み治具を備えたレオメーターを用いた破断試験において測定される物性の点で特徴付けられる。すなわち特定冷凍麺線を解凍して得られる特定麺線は、押し込み治具を備えたレオメーターを用いて、特定麺線の品温40℃、押し込み治具の押し込み速度0.5mm/秒の条件で破断試験を行った場合に、破断歪率が70~85%、破断荷重(破断歪率が70~85%となったときの荷重)が0.7~4.0Nである。本発明の冷凍麺類は前記特徴を有するため、喫食した際に歯切れがよく食感が良好である。
前記破断歪率は、麺線の喫食時の噛み切りやすさの指標となるもので、この値が小さすぎると、弾力性に乏しく脆い食感となるおそれがあり、この値が大きすぎると、弾力性が高すぎて麺線が噛み切りにくいものとなるおそれがある。
前記破断荷重は、麺線の喫食時の硬さの指標となるもので、この値が小さすぎると、硬さ不足で軟らかすぎる食感となるおそれがあり、この値が大きすぎると、麺線が硬くなりすぎるおそれがある。
食感の更なる向上の観点から、特定麺線の破断歪率は、好ましくは70~82%、より好ましくは70~80%であり、特定麺線の破断荷重は、好ましくは1.0~4.0N、より好ましくは1.2~4.0Nである。
【0014】
前記破断試験について更に説明する。
前記押し込み治具としてくさび型プランジャーを用いる。前記くさび型プランジャーは、形状がくさび型、すなわち押し込み方向の後端から先端に向かって幅(押し込み方向と直交する方向の長さ)が漸次減少する形状をなし、且つ押し込み方向の先端が1mm幅の平面仕上げのものである。前記くさび型プランジャーを備えたレオメーターの具体例として、株式会社山電製の「RHEOMETER IIシリーズ CREEP METER RE2-33005C」が挙げられる。
【0015】
前記破断試験では、前記くさび型プランジャーを備えたレオメーターを用いて、以下の手順1~3により、試料の破断歪率及び破断荷重を求める。試料は、冷凍麺線(特定冷凍麺線)を解凍して得られる麺線(特定麺線)である。具体的には、試験対象の冷凍麺類(冷凍麺塊)から冷凍麺線を1本取り出してサンプルとする。サンプルを食品用ラップフィルムで覆った状態で電子レンジを用いて加熱し、サンプルの品温が80℃以上となった時点で電子レンジから取り出し、その後2分以内に以下の手順1~3により測定を行う。
【0016】
手順1:試料である麺線をレオメーターの試料台に載置する。このとき、試料の長手方向と直交する方向(麺線の厚さ方向)がレオメーターのプランジャーによる押圧方向と一致するように、試料を試料台に載置する。
手順2:試料台に載置された試料の上方に待機するプランジャーに対して、0.5mm/秒の一定速度で試料台を上昇させ、該プランジャーの先端で該試料を上方側から下方側に押圧し、該試料を破断(麺線を切断)する。斯かる一連の試料台の動作において、プランジャーの先端が試料に接触した時点(押圧開始点)の該試料の厚さ(麺線の厚さ方向の長さ)をL1、該押圧開始点から該試料が破断するまでの間の該試料の厚さをLtとした場合に、下記式により算出される歪率(%)の変化に応じた、プランジャーにかかる荷重(N)の変化のデータを取得する。このときのデータ取得頻度は100データ/秒とする。 歪率(%)=(L1-Lt/L1)×100
手順3:手順2で取得したデータに基づいて、歪率(%)の変化に応じた荷重(N)の変化のデータを、歪率(%)を横軸、荷重(N)を縦軸とした座標平面上にプロットし、歪率-荷重曲線を得る。得られた歪率-荷重曲線から、当該試料の破断歪率及び破断荷重を求める。
【0017】
図1には、前記破断試験により得られた歪率-荷重曲線の一例が示されている。図1の歪率-荷重曲線において符号Aで示すピークは、試料が破断されたときに出現する。試料の破断歪率及び破断荷重はこのピークAの座標(B、C)として求められる。すなわち、ピークAに対応する歪率(横軸)の数値Bが、当該試料の破断歪率であり、ピークAに対応する荷重(縦軸)の数値Cが、当該試料の破荷重である。
なお、本明細書において特定麺線を含む麺線の破断歪率及び破断荷重は、特に断らない限り、前記破断試験による測定値である。
【0018】
特定麺線の破断歪率及び破断荷重を前記特定範囲に確実に調整する観点から、特定冷凍麺線は、「下記の凝固剤評価試験において破断歪率が30~75%、破断荷重が2.0~4.0Nである凝固剤」(以下、「特定凝固剤」とも言う。)を含有することが好ましい。ここで言う破断歪率及び破断荷重については、前述したとおりである。
食感の更なる向上の観点から、特定凝固剤の破断歪率は、好ましくは30~80%、より好ましくは40~75%であり、特定凝固剤の破断荷重は、好ましくは1.5~4.0N、より好ましくは2.0~3.8Nである。
【0019】
(凝固剤評価試験)
まず、試験に供する試料を調製する。評価対象の凝固剤を水に溶解又は分散させて、該凝固剤を12.5質量%含有する水溶液を調製し、該水溶液をゲル化させて円柱形状の凝固剤含有ゲルを調製する。前記凝固剤含有ゲルは、円柱の軸方向(長手方向)の長さを50.0mm、該軸方向と直交する方向(半径方向)の長さ(直径)を10.0mmとする。
次に、試料(前記凝固剤含有ゲル)について、押し込み治具を備えたレオメーターを用いて、前記試料の品温25℃、該押し込み治具の押し込み速度0.5mm/秒の条件で破断試験を行う。この凝固剤含有ゲルについての破断試験は、前述した特定麺線についての破断試験と同様に、くさび型プランジャーを備えたレオメーターを用いて、前記手順1~3に準じて行う。ただし、前記手順1に代えて下記手順1aを行う。また、凝固剤含有ゲルについての破断試験においては、前記手順2の「麺線の厚さ方向の長さ」は、「円柱形状の試料の半径方向の長さ」となる。
手順1a:試料である円柱形状のゲルをレオメーターの試料台に載置する。このとき、円柱形状の試料の半径方向(軸方向と直交する方向)がレオメーターのプランジャーによる押圧方向と一致するように、試料を試料台に載置する。試料の品温は25℃に調整する。
なお、本明細書において特定凝固剤を含む凝固剤の破断歪率及び破断荷重は、特に断らない限り、前記破断試験による測定値である。
【0020】
特定凝固剤としては、例えば、全卵、卵黄、卵白、乳清等の動物由来の熱凝固性蛋白素材;豆類、小麦、米等の植物由来の熱凝固性蛋白素材;寒天等の増粘多糖類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に卵白粉は、硬く噛み切りやすいゲルを形成することができ、これにより本発明の所定に効果が一層確実に奏され得るため好ましい。
【0021】
特定凝固剤による効果を一層確実に奏させるようにする観点から、特定冷凍麺線(特定麺線)における特定凝固剤の含有量は、該特定冷凍麺線(特定麺線)の全質量に対して、好ましくは0.1~2.5質量%、より好ましくは0.3~2.0質量%である。斯かる含有量が少なすぎると特定凝固剤を使用する意義に乏しく、斯かる含有量が多すぎると、麺線が硬く噛み切りにくくなるおそれがある。
【0022】
本発明の冷凍麺類を構成する特定冷凍麺線は、特定麺線の冷凍物である。特定麺線は少なくとも穀粉類を含有する。特定麺線における穀粉類の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35~60質量%である。
本発明で用いる穀粉類には、穀粉及び澱粉が含まれ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
穀粉としては、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉が挙げられる。小麦粉としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉、デュラム粉(デュラムセモリナ、デュラム小麦粉を含む)が挙げられる。
澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、小麦澱粉、豆類由来の澱粉などの未加工澱粉;未加工澱粉に、架橋、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化などの加工処理の1種以上を施した加工澱粉が挙げられる。
【0023】
特定麺線は、前述した穀粉類及び特定凝固剤以外の他の成分を含有してもよい。前記他の成分としては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、麺類の製造に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、小麦蛋白、小麦グルテン、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、焼成カルシウム、膨張剤、乳化剤、増粘剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、アルコール、保存剤、酵素剤が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
特定麺線は、従来公知の麺類の製造方法を利用して製造することができるが、特に好適な製造方法は圧延製麺法である。
【0024】
本発明の冷凍麺類は、特定冷凍麺線以外の冷凍麺線を含んでいてもよい。本発明の所定の効果を確実に奏させるようにする観点から、冷凍麺類における特定冷凍麺線の含有量は、該冷凍麺類の全質量に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは100質量%である。すなわち本発明の冷凍麺類は、冷凍麺線として特定冷凍麺線のみを含むことが特に好ましい。
【0025】
本発明の冷凍麺類は、常法に従って解凍することで可食状態となる。本発明の冷凍麺類の解凍方法は特に制限されず、例えば、自然解凍、緩慢解凍、加熱を伴う解凍(急速解凍)の何れでもよい、急速解凍には、電子レンジ加熱、ボイル、蒸気による加熱、オーブン加熱等がある。
【0026】
以下、本発明の冷凍麺類の製造方法について説明する。本発明の冷凍麺類の製造方法では、ロール圧延機を用いた圧延製麺法を利用して特定麺線(生麺線)を製造し、更に該特定麺線から、特定冷凍麺線を含む冷凍麺塊である本発明の冷凍麺類を製造する。
【0027】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、穀粉類を含む原料粉と液体との混合物を混捏して麺生地を得る麺生地調製工程を有する。
前記麺生地調製工程において、生地の調製は常法に従って行うことができる。典型的には、原料粉に液体を添加し、ミキサー等を用いて混捏することで、多数の麺粒の集合体からなるそぼろ状の麺生地を調製する。
原料粉としては、少なくとも穀粉類を含み、更に必要に応じ、それ以外の他の成分を含むものを用いることができる。原料粉に添加する液体は、典型的には、水が用いられるが特に制限されず、例えば、水に塩などの調味料を溶解又は分散させた調味液、卵液等を用いることができる。原料粉に添加する液体の量は、製造する麺の種類等に応じて適宜調整すればよい。例えば、原料粉に添加する液体の量は、原料粉100質量部に対して、28~50質量部とすることができる。
【0028】
本発明で用いる原料粉の好ましい一例として、以下の配合の原料粉Aが挙げられる。原料粉Aは特にパスタに好適である。
(原料粉Aの配合)
・デュラム粉:原料粉の全質量に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは75~100質量%。
・特定凝固剤:原料粉中の穀粉類(穀粉及び澱粉)100質量部に対して、好ましくは0.2~2.5質量部、より好ましくは0.5~2.1質量部。
【0029】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記麺生地調製工程で得られた麺生地を圧延ロールにより所定回数圧延して麺帯を得る圧延工程を有する。
前記圧延工程に供する麺生地は、典型的には、前記麺生地調製工程で得られたそぼろ状の麺生地(麺粒の集合体)を帯状に整形した粗麺帯である。粗麺帯は、単層構造でも積層構造でもよい。積層構造の粗麺帯(複合粗麺帯)は、例えば、複数枚の粗麺帯を重ねて整形ロールに通すことで得られる。粗麺帯は常法に従って製造することができる。例えば、整形ロールを用いてそぼろ状の麺生地を帯状に整形することで粗麺帯が得られる。また例えば、エクストルーダー等の押出し機にそぼろ状の麺生地を投入して常圧下又は減圧下で帯状に押し出すことで粗麺帯が得られる。また、後者の方法において、押出し機から粗麺帯を直接押し出す代わりに、非帯状(例えば塊状)の麺生地を押し出し、その押し出した麺生地を整形ロール等により整形して粗麺帯を得ることもできる。
前記圧延工程は、圧延ロールを備えた公知の圧延装置を用いて常法に従って行うことができる。圧延装置は、典型的には、一対又は複数対の圧延ロールを備え、供給される粗麺帯を該圧延ロール間に挟持して圧延することにより、粗麺帯よりも厚さの薄い麺帯を形成するようになされている。
【0030】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記圧延工程で得られた麺帯を切断して生麺線(特定麺線を含む。以下、特に断らない限り同じ。)を得る工程(麺帯切断工程)を有する。前記麺帯切断工程は、切り刃を用いて常法に従って行うことができる。前記麺帯切断工程で切り出す生麺線が特定麺線である場合、前述したように、その冷凍後の麺線断面における最大差し渡し長さが1.2mm以上となるようにする。
【0031】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記麺帯切断工程で得られた生麺線を乾燥させずに加熱調理して調理済み麺線(生麺線の加熱調理物)を得る工程(加熱調理工程)を有する。
ここで言う「生麺線を乾燥させない」とは、生麺線の含水率を一定程度以上意図的に低下させる工程(生麺線乾燥工程)を実施しないことを意味する。前記生麺線乾燥工程としては、例えば、生麺線に熱風を吹き付ける工程、雰囲気温度が比較的高温の環境に生麺線を静置する工程が挙げられ、本発明では、少なくとも特定麺線を製造する際にこれらの工程を実施しない。加熱調理に供する生麺線を乾燥させると、乾麺又はこれに近いものとなってしまい、本発明の主要な目的の1つである「新規な食感を有する生麺の提供」を達成できないおそれがある。加熱調理に供される直前の生麺線の含水率は、好ましくは15~45質量%、より好ましくは20~40質量%である。ここで言う「含水率」は、絶乾法(測定対象を品温130℃に加熱し、加熱前後での重量変化を測定する方法)に従って測定した値である。
本発明において、生麺線の加熱調理法は特に制限されず、生麺線中の澱粉をα化し得る公知の方法を利用できる。生麺線の加熱調理法の具体例として、湯を用いた茹で調理、飽和水蒸気又は過熱水蒸気を用いた蒸し調理など、水分の存在下での加熱調理法が挙げられる。
【0032】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記加熱調理工程で得られた調理済み麺線(生麺線の加熱調理物)を冷凍する工程(冷凍工程)を有する。前記冷凍工程を経て、特定冷凍麺線を含む本発明の冷凍麺類が得られる。本発明において、生麺線の冷凍方法は特に制限されず、急速冷凍法、緩慢冷凍法等の公知の冷凍方法を利用できる。
【0033】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、下記<1>及び<2>の少なくとも一方を満たす点で特徴付けられる。これにより、破断歪率及び破断荷重がそれぞれ前記特定範囲にある特定麺線を一層安定的に製造することが可能となり、更には、特定麺線の麺線断面の空隙率を前記特定範囲に調整することが一層容易になる。
<1>前記麺生地調製工程は減圧度が-0.03MPa以下の減圧環境で実施される。
<2>前記圧延工程における麺生地(粗麺帯)の圧延回数が2回以下である。
【0034】
前記麺生地調製工程が実施される環境の減圧度は、好ましくは-0.03~-0.1MPa、より好ましくは-0.06~-0.1MPaである。減圧度が-0.03MPa以下の減圧環境での麺生地調製は、真空ミキサー等の公知の手段を用いて実施することができる。なお、本明細書における減圧度(減圧空間の圧力)は、大気圧をゼロとしたゲージ圧である。
【0035】
高品質の特定麺線をより一層安定的に製造する観点から、前記圧延工程では、麺生地(粗麺帯)の圧延回数を2回以下とすることに加えて更に、麺生地(粗麺帯)の圧延度合を適切な範囲に設定することが好ましい。
具体的には、圧延前の麺生地(粗麺帯)の厚さをT1、該麺生地の圧延後の厚さ(麺帯の厚さ)をT2とした場合に、T1に対するT2の比率(T2/T1、以下「圧延率」とも言う。)は前記圧延度合の指標となり得る。圧延率の数値が小さいほど、麺生地(粗麺帯)の圧延度合いが大きい、すなわち麺生地が比較的薄く延ばされていることを示す。前記圧延工程における圧延率は、好ましくは0.60~0.10、より好ましくは0.35~0.10である。
なお、圧延回数を複数回とする場合、各回の圧延度合は互いに同じでもよく、異なっていてもよい。後者の場合、例えば、1回目の圧延で圧延率を0.40とし、2回目の圧延で圧延率を再び0.40とし、最終的な圧延率を0.16とすることができる。
また、前記と同様の観点から、前記圧延工程で用いる圧延ロールの直径は、好ましくは45~600mm、より好ましくは90~450mmである。
【0036】
前記麺帯切断工程で得られる中間製造物である生麺線(特定麺線)は、典型的には、麺線断面において微細な空隙が複数散在している。生麺線の麺線断面の空隙率は、好ましくは1.2%以下、より好ましくは1.0%以下である。
麺線断面の空隙率は、下記式によって算出される。
麺線断面の空隙率(%)=(A/B)×100
前記式中、Aは「麺線断面における面積1000μm以上の空隙の面積の合計」であり、Bは「麺線断面の面積」であり、何れも単位は「μm」である。
前記空隙率は、麺線の密度の指標として用いることができる。前記空隙率の数値が小さいほど麺線の密度は高く、該空隙率の数値が大きいほど麺線の密度は低いと評価できる。
中間製造物である生麺線の麺線断面の空隙率が前記特定範囲にあることにより、最終製造物である特定冷凍麺線の破断歪率及び破断荷重が前記の特定範囲に設定されやすくなり、可食状態において適度に硬さがありつつ噛み切りやすい食感の冷凍麺類が得られやすくなる。中間製造物である生麺線の麺線断面の空隙率が高すぎると、麺線の密度が低くなりすぎる結果、食感が軟らかすぎて脆い食感となるおそれがある。中間製造物である生麺線の麺線断面の空隙率の下限値は特に制限されないが、該空隙率が低すぎると麺線が噛み切りにくくなることから、これを防止するために、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上である。
【0037】
麺線断面の空隙率を算出するための前記A及びBは、以下の手順で求められる。
先ず、測定対象の麺線をその長手方向と直交する方向に切断し、該長手方向長さが20μmの切片を得、該切片の両麺線断面が上下面となるように該切片をスライドガラスの上に載せ、更に該切片の上にカバーガラスを載せて、スライドガラスとカバーガラスとの間に切片が挟持された状態の観察用サンプルを作製する。次に、光学顕微鏡を用いて観察用サンプルを観察し、20倍に拡大した観察画像を撮影する。そして、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて、観察画像から前記A及びBを測定する。具体的には、観察画像における前記切片の外縁をPolygon sectionにて縁取り、該切片の面積である「麺線断面の面積」(B)を測定した後、観察画像を16-bitデータとすることで白黒画像へ変換し、輝度の閾値を200に設定して、該切片における「1000μm以上の空隙の面積の合計」(A)を測定する。
【実施例
【0038】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
〔実施例1~7、比較例1~3:冷凍パスタの製造〕
下記表1の「原料粉組成」の欄に記載の配合で原料を混合して原料粉を調製した。使用した原材料の詳細は下記のとおりである。
・小麦粉:デュラムセモリナ(日清製粉株式会社製、商品名「レオーネG」)
・特定凝固剤:卵白粉(動物由来の熱凝固性蛋白素材)、キユーピータマゴ株式会社製、商品名「乾燥卵白KタイプNo.10」、破断歪率70%、破断荷重2.2N
調製した原料粉100質量部に水36質量部を添加し、製麺ミキサー(横型ピンミキサー)を用いて、減圧度が表1に示す所定範囲に設定された環境で、高速5分間、低速10分間混捏してそぼろ状の麺生地を得た(麺生地調製工程)。得られた麺生地を整形ロールにより帯状に整形して粗麺帯を得、更に該粗麺帯を2枚重ねて整形ロールに通すことで複合粗麺帯を得た。
次に、得られた複合粗麺帯を圧延ロールにより、表1に示す条件にて所定回数圧延し、麺帯を得た(圧延工程)。得られた麺帯の厚さを表1に示す。前記圧延工程では、直径180mmの圧延ロールを用いた。また、圧延回数を複数回行う場合、各回の圧延率を互いに同じとした。
次に、得られた麺帯を表1に記載の切刃により切断して生麺線を得、該生麺線を乾燥させずに沸騰水で3~5分間茹で後、水冷して茹で麺線(調理済み麺線)を得た。前記生麺線の麺線断面の空隙率を表1に示す。茹で麺線の重量は粉体原料100質量部に対して245質量部なるように調整した。次に、得られた茹で麺線40gに対し、油脂濃度50質量%の乳化液を2g付着させた後、その茹で麺線をポリプロピレン製容器に収容し、該容器を-35℃の環境に静置して、該容器内の茹で麺線を急速冷凍し、目的の冷凍麺類(冷凍パスタ)を得た。
【0040】
〔評価試験〕
評価対象の冷凍麺類を庫内温度-20℃の冷凍庫で1週間保存した後、電子レンジを用いて出力600Wで40秒加熱することで可食状態となるまで解凍し、その解凍した麺類を10名の専門パネラーに食してもらい、その際の食感を下記評価基準により評価してもらった。前記専門パネラーは、麺類の食感を評価する業務に5年以上従事している者であった。評価結果(パネラー10名の平均点)を表1に示す。
<食感の評価基準>
5点:硬さと噛み切りやすさとが非常に良好。
4点:硬さと噛み切りやすさとが良好。
3点:硬さと噛み切りやすさとがやや良好。
2点:硬さと噛み切りやすさとが不良。
1点:硬さと噛み切りやすさとが非常に不良。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すとおり、実施例の冷凍パスタは、冷凍麺線の麺線断面の最大差し渡し長さ、冷凍麺線の解凍状態での破断歪率及び破断荷重がそれぞれ前記特定範囲にあるため、これを満たさない比較例の冷凍パスタに比べて、食感に優れていた。また、実施例の冷凍パスタは、「麺生地調製工程における減圧度が-0.03MPa以下」及び「圧延工程における麺生地の圧延回数が2回以下」の少なくとも一方を満たすのに対し、比較例の冷凍パスタはこれを満たさずに製造されていることから、食感に優れた冷凍麺類を製造するためには、減圧度及び圧延回数を前記特定範囲に調整することが有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、従来の生麺には無い新規な食感を楽しむことができる冷凍麺類が提供される。本発明によって提供される冷凍麺類は、加熱調理後の可食状態において、生麺でありながら乾麺様の食感、具体的には、適度な硬さがあり噛み切りやすい食感を有する。
【要約】
本発明の冷凍麺類は、生麺線の加熱調理物の冷凍物である冷凍麺線として、当該冷凍麺線の長手方向と直交する方向での断面における最大差し渡し長さが1.2mm以上である、特定冷凍麺線を含む。前記特定冷凍麺線を解凍して得られる特定麺線は、押し込み治具を備えたレオメーターを用いて、該特定麺線の品温40℃、該押し込み治具の押し込み速度0.5mm/秒の条件で破断試験を行った場合に、破断歪率が70~85%、破断荷重が0.7~4.0Nである。本発明の冷凍麺類の製造方法は、下記<1>及び<2>の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
<1>前記麺生地調製工程は減圧度が-0.03MPa以下の減圧環境で実施される。
<2>前記圧延工程における前記麺生地の圧延回数が2回以下である。
図1