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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20230925BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20230925BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230925BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20230925BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20230925BHJP
【FI】
C08G18/42
C08G18/16
C08G18/08 038
C08L75/06
H01M50/293
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021538796
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2020012140
(87)【国際公開番号】W WO2021049860
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0111238
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0111239
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・グ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・スク・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・スク・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジョ・ヤン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-518098(JP,A)
【文献】特開2010-001349(JP,A)
【文献】特開2019-065099(JP,A)
【文献】特開2011-079893(JP,A)
【文献】特開2018-206604(JP,A)
【文献】米国特許第04760101(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/
C08L75/
H01M50/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート化合物、反応抑制剤、触媒およびフィラーを含み、
前記ポリオールは、水酸基価が50~500の範囲内にあり、重量平均分子量が100~3000の範囲内にある、脂肪族エステルポリオールであり、
前記イソシアネート化合物は、下記式4:
[式4]
NCOV=NCO/MN
[式4でNCOVは、イソシアネート価であり、NCOは、前記イソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数であり、MNは、前記イソシアネート化合物のモル質量である]
によるイソシアネート価が0.001~0.1の範囲内にある非芳香族イソシアネート化合物であり、
前記反応抑制剤は、メルカプト基、アミノ基およびフェノール性水酸基よりなる群から選ばれた1つ以上の反応抑制性官能基を含み、下記式2:
[式2]
FV=F/M
[式2で、FVは、前記反応抑制性官能基価であり、Fは、前記反応抑制性官能基の数であり、Mは、前記反応抑制剤のモル質量である]
による反応抑制性官能基価が0.001~0.02の範囲内にあり、
前記触媒は、3次アミン化合物、非プロトン性塩、及び有機金属化合物から選択されるウレタン触媒であり、
前記フィラーは、セラミックフィラーであり、
前記フィラーの含量は、70~95重量%の範囲内にあり、
前記反応抑制剤(IW)および触媒(CW)の重量比(IW/CW)が1.3~4の範囲内にあり、
ASTM D2240によるショアA硬度90確認時間(Ht90)とショアA硬度40確認時間(Ht40)の差(Ht90-Ht40)が200分以下である、硬化性組成物。
【請求項2】
ASTM D2240によるショアA硬度90確認時間(Ht 90 が70分~400分の範囲内である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ASTM D2240によるショアA硬度40確認時間(Ht40)が40分~300分の範囲内である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ASTM D2240によるショア(Shore)A硬度確認時間(Ht)およびショアA硬度40確認時間(Ht40)の差(Ht40-Ht)は、1分~30分の範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
内部空間を有するモジュールケースと、
前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリーセルと、
請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物を含む樹脂層と、を含み、
前記樹脂層は、前記複数のバッテリーセルおよび前記モジュールケースと接触した状態で前記内部空間に存在するバッテリーモジュール。
【請求項6】
互いに電気的に連結されている、請求項に記載のバッテリーモジュールを2個以上含むバッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年09月09日付けで提出された韓国特許出願第10-2019-0111238号及び韓国特許出願第10-2019-0111239号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、硬化性組成物、バッテリーモジュール、バッテリーパックおよび自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化性組成物の硬化速度および硬化進行様相は、適用用途によって調節される必要がある。例えば、用途によって硬化性組成物は、硬化開始時点後に一定の待機時間が必要である。
【0004】
本明細書で用語「硬化開始時点」は、硬化性組成物が、硬化が進行され得る状態および環境に露出した時点を意味し、用語「待機時間」は、前記硬化が進行され得る状態および環境に露出したが、硬化の程度が意図した水準に遅延される時間を意味する。
【0005】
例えば、特許文献1は、硬化性組成物を使用してバッテリーセルおよびモジュールケースと接触する樹脂層を形成する内容を開示する。特許文献1の樹脂層の形成方式には、2液型の硬化性組成物を混合した混合物をノズル等の注入装備を使用してバッテリーモジュール内に注入し、硬化させる方式が含まれている。2液型の硬化性組成物は、混合されると、主剤樹脂と主剤樹脂の硬化剤が物理的に接触するので、一般的に前記混合時点が硬化開始時点であり、硬化反応が進行されると、通常、組成物の粘度が上昇する。特許文献1のような樹脂層の形成方式では、組成物がノズルのような直径が相対的に小さい管形態の注入装備に注入されるので、組成物の粘度が上昇すると、注入装備に負荷が加えられる。したがって、このような場合、少なくとも組成物がモジュールの内部に注入される前までは、粘度が低い水準に維持され得るようにする待機時間が要求される。
【0006】
また、バッテリーモジュールの製造ラインによっては、組成物の注入前にパージング(purging)工程等の前工程が行われる場合、2液型組成物が混合された後に前記混合状態は前記前工程が終了する前まで装備内で維持される必要があるので、このような場合に待機時間の必要性はさらに増加する。
【0007】
しかしながら、硬化性組成物が硬化可能な条件に露出した状態で硬化を遅延させることは容易ではない。
【0008】
また、バッテリーモジュールの製造工程には、バッテリーセルまたはモジュールの検査工程が進行されるが、この過程でバッテリーモジュールの上下が反転する場合もある。したがって、前記検査段階では、バッテリーモジュールの上下が反転した場合にも、モジュールの内部に注入された組成物が流下したり位置を離脱したりせず、一旦注入された組成物が注入口にさらに吐出される逆吐出が発生しないように粘度が上昇されなければならない。
【0009】
バッテリーモジュールの製造工程中には、前記逆吐出が発生した場合に、逆吐出された組成物を除去する工程が進行される必要がある。この場合、組成物の硬化が過度に進行されないか、反対に過度に進行されると、逆吐出された組成物の除去が困難である。したがって、モジュールの工程過程で逆吐出された組成物の除去時点で除去が容易な水準の硬化度が確保され得るように硬化速度が制御される必要性も発生する。
【0010】
上記のような検査工程および/または逆吐出された組成物の除去工程で適合した硬化度が確保され、バッテリーモジュール製造工程をより効率的に進行するためには、前記待機時間が経過した後には、硬化が速やかに進行されることが有利である。
【0011】
しかしながら、硬化性組成物の硬化開始時点後に硬化を遅延させて一定水準の待機時間を確保することは容易でない問題である。また、硬化性組成物は、硬化がゆっくり起こるように組成すると、ある程度待機時間を確保することはできるとしても、このような場合、前記待機時間が経過した後に硬化が速やかに進行されるようにすることはできない。
【0012】
また、特許文献1に開示された樹脂層を形成するための硬化性組成物は、樹脂層に高い熱伝導度を確保するために、過量のフィラーを配合した高充填システムである。高充填システムの硬化性組成物の場合、硬化反応を進行させる成分(主剤および硬化剤等)の量が相対的に少なく、前記成分の接触確率が高充填フィラーにより影響を受ける。このような場合に、硬化速度の調節はさらに難しく、待機時間を確保したり、待機時間後に硬化が速やかに進行されるようにすることは難しい問題である。
【0013】
また、特許文献1に開示された樹脂層を形成するための硬化性組成物は、注入のために相対的に低粘度を有するように組成される必要がある。このような場合に、硬化反応を進行させる成分(主剤および硬化剤等)の接触確率を制御することはさらに容易ではない。このような場合にも、硬化速度の調節はさらに難しく、待機時間を確保したり、待機時間後に硬化が速やかに進行されるようにすることは難しい問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国特許公開第2016-0105354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願は、硬化性組成物を提供することを目的とする。本出願は、待機時間を確保することができ、当該待機時間を用途によって自由に調節することができ、前記待機時間が経過した後の硬化速度を相対的に速やかに制御することができる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0016】
本出願は、前記硬化性組成物が相対的に低粘度の組成(formulation)および/または過量のフィラーを含む組成である場合にも、前記特性を確保することができる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0017】
本出願は、また、前記硬化性組成物またはその硬化物を含むバッテリーモジュール、バッテリーパックおよび/または自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書で言及する物性のうち測定温度がその結果に影響を及ぼす場合には、特に別途規定しない限り、当該物性は、常温で測定した物性である。用語「常温」は、加温および減温されない自然そのままの温度であって、通常、約10℃~30℃の範囲内の1つの温度または約23℃または約25℃程度の温度である。また、本明細書で特に別途言及しない限り、温度の単位は、℃である。
【0019】
本明細書で言及する物性のうち測定圧力がその結果に影響を及ぼす場合には、特に別途規定しない限り、当該物性は、常圧で測定した物性である。用語「常圧」は、加圧および減圧されない自然そのままの圧力であり、通常、約1気圧程度を常圧と称する。
【0020】
本明細書で言及する粘度は、特に別途規定しない限り、ブルックフィールドHBタイプ(Brookfiled HB type)粘度計を使用して、約25℃の温度で約90%のトルクおよび約100rpmのせん断速度の条件で測定した結果を意味する。
【0021】
本明細書で言及する硬度は、特に別途規定しない限り、ASTM D2240規格によってアスカー硬度計(ASKER、durometer hardness)を使用して測定したショア(shore)A硬度であり、厚さが略4mm程度のフィルム形態の試験片に対して厚さ方向に測定した硬度である。
【0022】
本明細書で用語「硬化開始時点」は、硬化性組成物が硬化可能な環境に露出し始めた時点を意味する。例えば、常温硬化型組成物の場合、組成物が常温に露出し始めた時点、湿気硬化型組成物の場合、組成物が硬化可能な程度の湿気に露出し始めた時点、熱硬化型組成物の場合、組成物に硬化が可能な程度の熱が印加され始めた時点、光硬化型組成物の場合、組成物に硬化が可能な程度の光が印加され始めた時点が前記硬化開始時点である。2液型硬化性組成物は、通常、物理的に分離した主剤組成物と硬化剤組成物からなるが、前記主剤および硬化剤組成物が混合される前には、前記条件に露出しても硬化が進行されない。したがって、2液型硬化型組成物の硬化開始時点は、前記主剤および硬化剤組成物が混合された状態で前記条件に露出した時点になる。例えば、常温硬化型2液型組成物の場合、常温で主剤および硬化剤組成物が混合されたら、前記混合時点が硬化開始時点であり、前記混合は、常温でない温度で行われ、混合後に混合物が常温に露出すると、前記常温露出時点が硬化開始時点になる。
【0023】
本明細書で用語「硬化遅延」は、硬化性組成物が硬化可能な環境に露出したが、意図した水準の粘度上昇が起こらない程度に硬化反応が起こらないか、硬化反応の程度が低い状態を意味する。
【0024】
本明細書で用語「待機時間」は、前記硬化開始時点から前記硬化遅延状態が終了するまでの時間である。
【0025】
本出願は、硬化性組成物に関する。本出願の硬化性組成物を使用すると、用途に適合した硬化性組成物の待機時間を確保することができ、前記待機時間が終了した後には、意図した水準の速やかな硬化を誘導することができる。
【0026】
本出願の硬化性組成物を使用すると、例えば、ノズルのように相対的に直径が小さい管形態の装備を使用して前記硬化性組成物を注入する場合および/または前記注入が相対的に狭い空間に対して行われる場合にも、装備に負荷を与えない。例えば、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造過程で硬化性組成物のモジュールケース内部への注入が前記モジュールケース内にバッテリーセルが装着された状態で行われると、前記硬化性組成物は、モジュールケース内部の狭い空間に注入されることになる。このような場合に、内部圧の発生によって装備に負荷が加えられることができるが、本出願の硬化性組成物を使用すると、このような場合にも、装備に負荷が加えられないか、最小化される。
【0027】
本出願の硬化性組成物は、多様な用途に適合するように使用され得、例えば、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックの製造(特に、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールまたはパックの製造)に適合するように使用され得る。このような場合に、本出願の硬化性組成物は、バッテリーモジュールのケース内部に注入され、バッテリーモジュール内に存在する1つ以上のバッテリーセルと接触してバッテリーモジュール内でバッテリーセルを固定させるのに使用され得る。
【0028】
本出願の硬化性組成物は、1液型組成物または2液型組成物でありうる。2液型組成物は、通常、物理的に分離した主剤組成物および硬化剤組成物を含む。したがって、本明細書での硬化性組成物に関する説明は、前記1液型硬化性組成物に関する内容、前記2液型硬化性組成物の主剤または硬化剤組成物に関する内容または前記2液型硬化性組成物の主剤および硬化剤組成物の混合物または反応物に関する内容でありうる。
【0029】
本出願の硬化性組成物は、例えば、ウレタン組成物でありうる。用語「ウレタン組成物」は、硬化してポリウレタンを形成できる組成物を意味し得る。
【0030】
本出願の硬化性組成物は、常温硬化型、常温湿気硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または光硬化型でありうる。硬化性組成物が特許文献1に示されたバッテリーモジュールの製造に適用される場合に、前記硬化性組成物は、常温硬化型で組成され得る。
【0031】
本出願の硬化性組成物は、ポリオール、反応抑制剤、触媒およびフィラーを少なくとも含むことができる。
【0032】
本出願の硬化性組成物は、硬化開始時点後に適切な待機時間を示す。したがって、例えば、前記硬化性組成物は、初期粘度に比べて2倍の粘度になる所要時間(Vt)(すなわち、前記初期粘度をVというとき、硬化開始時点から2Vの粘度を示すのに所要される時間)が15分以上でありうる。
【0033】
用語「初期粘度」は、硬化開始時点での硬化性組成物の粘度を意味する。実際に硬化開始時点ですぐに硬化性組成物の粘度を測定することが技術的に困難なことがあるので、前記初期粘度は、硬化開始時点で約3分以内、約2.5分以内、約1.5分以内または約1分以内に測定した粘度も、初期粘度と定義されることもでき、硬化開始時点で約10秒経過後、約20秒経過後、約30秒経過後または約60秒経過後に測定した粘度も、初期粘度と定義され得る。
【0034】
通常、硬化性組成物は、硬化反応が進行されるほど粘度が増加するが、本出願の硬化性組成物は、前記所要時間(Vt)が15分以上である待機時間を示すことができる。前記所要時間(Vt)は、必要に応じて所望の水準に制御され得る。例えば、前記所要時間(Vt)は、約17分以上、19分以上、21分以上、23分以上、25分以上、27分以上、29分以上、31分以上、33分以上、35分以上、37分以上、39分以上、41分以上、43分以上、45分以上、47分以上、49分以上、51分以上、53分以上、55分以上、57分以上、59分以上、61分以上、63分以上、65分以上または67分以上の範囲内および/または100分以下、98分以下、96分以下、94分以下、92分以下、90分以下、88分以下、86分以下、84分以下、82分以下、80分以下、78分以下、76分以下、74分以下、72分以下、70分以下、68分以下、66分以下、64分以下、62分以下、60分以下、58分以下、56分以下、54分以下、52分以下、50分以下、48分以下、46分以下、44分以下、42分以下、40分以下、38分以下、36分以下、34分以下、32分以下、30分以下、28分以下、26分以下、24分以下、22分以下または20分以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0035】
例えば、前記範囲内で調節された所要時間(Vt)を有する硬化性組成物は、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造に適合するように適用され得る。このような待機時間を示す硬化性組成物は、前記製造工程に適用されて装備に適用される負荷を減らし、適合した作業工程性(例えば、適合した工程タクトタイム(tact time)の確保)を確保することができる。
【0036】
他の例示において、前記硬化性組成物は、ショア(Shore)A硬度確認時間(Ht)が40分~300分の範囲内でありうる。用語「ショア(Shore)A硬度確認時間(Ht)」は、前記硬化開始時点から前記硬化性組成物のショアA硬度が確認され始めるまで所要される時間である。前述したように、一般的に硬化性組成物は、硬化開始後から粘度が増加し始め、それによって、硬度も増加することになる。しかしながら、硬化の程度が低い状態では、硬度が非常に低いので、装備を使用して硬化性組成物の硬度を確認することができない。したがって、硬化性組成物の硬度を測定するためには、硬化開始時点後に一定水準以上硬化が進行される必要があり、例えば、前記ショア(Shore)A硬度確認時間(Ht)が40分というのは、硬化開始時点後に40分が経過してから前記硬度が装備で測定され始めることを意味する。したがって、前記所要時間(Ht)が長いというのは、待機時間が長いことを意味し得、反対に短いというのは、待機時間後に硬化速度が速いことを意味し得る。
【0037】
前記確認時間(Ht)も、所望の水準に調節され得る。例えば、前記所要時間(Ht)は、約41分以上、42分以上、43分以上、44分以上、45分以上、46分以上、47分以上、48分以上、49分以上、50分以上、55分以上、60分以上、65分以上、70分以上、75分以上、80分以上、85分以上、90分以上、95分以上、100分以上、110分以上、120分以上、130分以上、140分以上、150分以上、160分以上、170分以上、180分以上、190分以上または200分以上の範囲内および/または200分以下、190分以下、180分以下、170分以下、160分以下、150分以下、140分以下、130分以下、120分以下、110分以下、100分以下、90分以下、80分以下、70分以下、60分以下または50分以下の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0038】
例えば、前記範囲内で調節された確認時間(Ht)を有する硬化性組成物は、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造に適合するように適用され得る。このような硬化性組成物は、前記製造工程に適用されて装備に適用される負荷を減らし、適合した作業工程性(例えば、適合した工程タクトタイム(tact time)の確保)を確保することができる。
【0039】
1つの例示において、前記硬化性組成物において前記所要時間(Vt)および確認時間(Ht)の差(Ht-Vt)は、25分~300分の範囲内でありうる。前記差(Ht-Vt)も、必要に応じて所望の水準に制御され得る。例えば、前記差(Ht-Vt)は、約27分以上、29分以上、31分以上、33分以上、35分以上、37分以上、39分以上、41分以上、43分以上、45分以上、47分以上、49分以上、51分以上、53分以上、55分以上、57分以上、59分以上、61分以上、63分以上、65分以上、67分以上、70分以上、80分以上、90分以上、100分以上、110分以上、120分以上または130分以上の範囲内および/または250分以下、200分以下、150分以下、100分以下、98分以下、96分以下、94分以下、92分以下、90分以下、88分以下、86分以下、84分以下、82分以下、80分以下、78分以下、76分以下、74分以下、72分以下、70分以下、68分以下、66分以下、64分以下、62分以下、60分以下、58分以下、56分以下、54分以下、52分以下、50分以下、48分以下、46分以下、44分以下、42分以下、40分以下、38分以下、36分以下、34分以下、32分以下または30分以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0040】
例えば、前記範囲内で調節された差(Ht-Vt)を有する硬化性組成物は、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造に適合するように適用され得る。このような硬化性組成物は、前記製造工程に適用されて装備に適用される負荷を減らし、適合した作業工程性(例えば、適合した工程タクトタイム(tact time)の確保)を確保することができる。
【0041】
1つの例示において、前記硬化性組成物は、ショア(Shore)A硬度40確認時間(Ht40)が40分~300分の範囲内でありうる。用語「ショア(Shore)A硬度40確認時間( Ht40)」は、前記硬化開始時点から前記硬化性組成物のショアA硬度が40と確認され始めるまで所要される時間である。前記所要時間(Ht40)も、目的によって所望の水準に調節され得る。例えば、前記所要時間(Ht40)は、290分以下、280分以下、270分以下、260分以下、250分以下、240分以下、230分以下、220分以下、210分以下、200分以下、190分以下、180分以下、170分以下、160分以下、150分以下、140分以下、130分以下、120分以下、118分以下、116分以下、114分以下、112分以下、100分以下、90分以下、80分以下、70分以下、60分以下または50分以下の範囲内および/または約45分以上、約50分以上、52分以上、54分以上、56分以上、58分以上、約60分以上、70分以上、80分以上、90分以上、100分以上、110分以上、120分以上、130分以上、140分以上、150分以上、160分以上、170分以上、180分以上、190分以上、200分以上、210分以上、220分以上、230分以上、240分以上、250分以上、260分以上、270分以上、280分以上または290分以上の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0042】
例えば、前記範囲内で調節された確認時間(Ht40)を有する硬化性組成物は、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造に適合するように適用され得る。このような待機時間を示す硬化性組成物は、前記製造工程に適用されて装備に適用される負荷を減らし、適合した作業工程性(例えば、適合した工程タクトタイム(tact time)の確保)を確保することができる。
【0043】
1つの例示において、前記確認時間HtおよびHt40の差(Ht40-Ht)は、1分~30分の範囲内でありうる。前記差(Ht40-Ht)も、必要に応じて所望の水準に制御され得る。例えば、前記差(Ht40-Ht)は、約2分以上、3分以上、4分以上または4.5分以上の範囲内および/または25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、9分以下、8分以下、7分以下、6分以下または5.5分以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0044】
前記確認時間の差(Ht40-Ht)を有する硬化性組成物は、待機時間後に速やかな硬化が起こることを意味し、このような硬化性組成物は、例えば、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造に適合するように適用され得る。このような硬化性組成物は、前記製造工程に適用されて装備に適用される負荷を減らし、適合した作業工程性(例えば、適合した工程タクトタイム(tact time)の確保)を確保することができる。
【0045】
1つの例示において、前記硬化性組成物は、ショア(Shore)A硬度90確認時間(Ht90)が70分~400分の範囲内でありうる。用語「ショア(Shore)A硬度90確認時間( Ht40Ht90)」は、前記硬化開始時点から前記硬化性組成物のショアA硬度が90と確認され始めるまで所要される時間である。前記所要時間(Ht90)も、目的によって所望の水準に調節され得る。例えば、前記所要時間(Ht90)は、75分以上、80分以上、82分以上、84分以上、86分以上、88分以上、約90分以上、100分以上、150分以上、200分以上または250分以上の範囲内および/または350分以下、300分以下、250分以下、200分以下、約178分以下、176分以下、174分以下、約172分以下、165分以下、160分以下、155分以下、150分以下、145分以下、140分以下、135分以下、130分以下、125分以下、120分以下、115分以下、110分以下、105分以下、100分以下、90分以下または80分以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0046】
例えば、前記範囲内で調節された確認時間(Ht90)を有する硬化性組成物は、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造に適合するように適用され得る。このような待機時間を示す硬化性組成物は、前記製造工程に適用されて装備に適用される負荷を減らし、適合した作業工程性(例えば、適合した工程タクトタイム(tact time)の確保)を確保することができる。
【0047】
1つの例示において、前記硬化性組成物において前記確認時間Ht90およびHt40の差(Ht90-Ht40)は、200分以下でありうる。前記差(Ht90-Ht40)は、190分以下、180分以下、170分以下、160分以下、150分以下、140分以下、130分以下、120分以下、110分以下、100分以下、90分以下、80分以下、70分以下、68分以下、66分以下、約64分以下、60分以下、55分以下、50分以下または45分以下または40分以下の範囲内および/または10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上、35分以上、40分以上、45分以上、50分以上、55分以上、60分以上、65分以上、70分以上、75分以上、80分以上、85分以上、90分以上、95分以上、100分以上、110分以上、120分以上、130分以上、140分以上、150分以上、160分以上、170分以上、180分以上または190分以上の範囲内で追加で調節され得る。
【0048】
前記確認時間の差(Ht90-Ht40)を有する硬化性組成物は、待機時間後に速やかな硬化が起こることを意味し、このような硬化性組成物は、例えば、特許文献1に開示されたバッテリーモジュールの製造に適合するように適用され得る。このような硬化性組成物は、前記製造工程に適用されて装備に適用される負荷を減らし、適合した作業工程性(例えば、適合した工程タクトタイム(tact time)の確保)を確保することができる。
【0049】
1つの例示において、本出願の硬化性組成物は、低い初期負荷値(Li)を有することができる。用語「負荷値」は、前記硬化性組成物がノズル等の相対的に狭い直径の管等の装備により注入される場合を仮定して、前記過程で前記装備に加えられる負荷を定量化したものであり、後述する方式で測定した値である。また、用語「初期負荷値」は、硬化開始時点の硬化性組成物の前記負荷値を定量化した値である。負荷値の単位は、kgfである。
【0050】
本出願の硬化性組成物は、前記初期負荷値(Li)が10~35kgfの範囲内でありうる。前記初期負荷値(Li)は、他の例示において、約10kgf以上、11kgf以上、12kgf以上、13kgf以上、14kgf以上、15kgf以上、16kgf以上、17kgf以上、18kgf以上、19kgf以上、20kgf以上、21kgf以上、22kgf以上、23kgf以上、24kgf以上、25kgf以上、26kgf以上、27kgf以上または28kgf以上の範囲内および/または約35kgf以下、34kgf以下、33kgf以下、32kgf以下、31kgf以下、30kgf以下、29kgf以下、28kgf以下、27kgf以下、26kgf以下、25kgf以下、24kgf以下、23kgf以下または22kgf以下の範囲内で追加調節され得る。
【0051】
本出願に硬化性組成物は、また、下記式1による負荷値の変化率が1~2の範囲内でありうる。
【0052】
[式1]
負荷値の変化率=Lf/Li
【0053】
式1で、Liは、前記初期負荷値であり、Lfは、前記硬化開始時点後に30分経過時点での負荷値である。
【0054】
前記負荷値変化率が大きいというのは、待機時間が短いことを意味し、反対に負荷値変化率が低いというのは、待機時間が長いことを意味する。
【0055】
前記負荷値変化率(Lf/Li)は、他の例示において1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下または1.1以下程度でありうる。
【0056】
また、前記負荷値(Lf)は、約50kgf以下でありうる。他の例示において、前記負荷値(Lf)は、約20kgf以上、22kgf以上、24kgf以上、26kgf以上、28kgf以上、30kgf以上、32kgf以上、34kgf以上、36kgf以上、38kgf以上、40kgf以上、42kgf以上または44kgf以上の範囲内および/または約48kgf以下、46kgf以下、44kgf以下、42kgf以下、40kgf以下、38kgf以下、36kgf以下、34kgf以下、32kgf以下、30kgf以下、28kgf以下または26kgf以下の範囲内で追加で制御されることもできる。
【0057】
図1は、前記負荷値を測定するための装置1の構成を模式的に示す図である。負荷値は、図1に示されたように、カートリッジ2、2a、2bに硬化性組成物を入れ、加圧手段3、3a、3bで加圧してミキサーを経由させて排出させる過程で前記加圧手段3、3a、3bにかかる最大の力と定義され得る。
【0058】
例えば、前記負荷値LiおよびLfは、加圧手段3a、3bで約1mm/s程度の等速度でカートリッジ2、2a、2b内の硬化性組成物を加圧して、ミキサー5を経由させて吐出される時から加圧手段にかかる力を測定し始めて、前記力が最大となる時点での力を前記負荷値Li、Lfとすることができる。
【0059】
図1の装置1は、2液型硬化型組成物に対する負荷値を測定するための装置であり、主剤組成物と硬化剤組成物をそれぞれローディングするために2個のカートリッジ2a、2bを装着した構造であるが、1液型硬化型組成物の負荷値の測定時には、カートリッジは、1つのみを装着してもよい。
【0060】
また、前記負荷値Lfは、硬化開始時点後に30分が経過した時点で同様に最大の力を確認して測定することができる。2液型組成物に対しては、例えば、主剤および硬化剤組成物を2個のカートリッジ2a、2bにそれぞれ注入し、加圧手段3a、3bで1mm/sの等速度で加圧して、ミキサー5に主剤組成物および硬化剤組成物を注入しつつ、前記注入された組成物の量がミキサーの容量(体積)の95%水準になった時に加圧を中止し、30分程度待機した後に、さらに同じ等速度(1mm/s)で加圧を始めて加圧手段にかかる最大の力を前記負荷値(Lf)として測定することができる。
【0061】
前記方式で加圧手段にかかる力をモニタリングすると、通常、前記力は、加圧開始時点から時間の経過に伴って増加しつつ、一定時間が経過した後にさらに減少し始めたり、あるいは、前記増加が止まり、一定の水準の力が持続的に維持される傾向を示す。したがって、前記最大の力は、前記力の減少が始まる時点直前の力であるか、前記一定水準に維持される力でありうる。
【0062】
前記測定装置1で適用されるカートリッジ2、ミキサー5および加圧手段3の種類は、実施例の項目で記述する。
【0063】
本出願の硬化性組成物は、用途によって前述した所要時間や確認時間(Vt、Ht、Ht40およびHt90)および/またはこれらの差(Ht-Vt、Ht40-HtおよびHt90-Ht40)のうちいずれか1つまたは2個以上または全部を満たすように組成され得る。
【0064】
前記時間Vt、Ht、Ht40およびHt90とこれらの差Ht-Vt、Ht40-HtおよびHt90-Ht40は、例えば、本明細書の実施例で記載された内容によって前記反応抑制剤および/または触媒の量や、反応抑制剤の官能基価等を制御して調節することができる。
【0065】
硬化性組成物に含まれるポリオールは、主剤樹脂でありうる。硬化性組成物がウレタン組成物である場合に、前記ポリオール(主剤樹脂)は、硬化剤と反応してポリウレタンを形成することができる。このような場合に、硬化剤としては、イソシアネート化合物が使用され得る。前記ポリウレタンは、前記ポリオール由来単位と前記イソシアネート化合物由来単位を全部含むことができる。前記ポリオール由来単位は、前記ポリオールが前記イソシアネート化合物とウレタン反応して形成される単位であり、前記イソシアネート化合物由来単位は、前記イソシアネート化合物が前記ポリオールとウレタン反応して形成される単位でありうる。
【0066】
硬化性組成物内で前記ポリオールの割合は、前記フィラー100重量部に対して約0.5~40重量部の範囲内で調節され得る。前記硬化性組成物が2液型硬化性組成物の主剤組成物である場合に、前記割合は、前記主剤組成物に含まれたすべてのフィラーの重量とポリオールの重量の割合であり、2液型硬化性組成物の主剤および硬化剤組成物の混合物である場合には、前記割合は、前記混合物に含まれたすべてのフィラーの重量とポリオールの重量の割合である。前記割合は、他の例示において、約1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上、5重量部以上、5.5重量部以上、6重量部以上、6.5重量部以上、7重量部以上、7.5重量部以上、8重量部以上、8.5重量部以上または9重量部以上の範囲内および/または38重量部以下、36重量部以下、34重量部以下、32重量部以下、30重量部以下、28重量部以下、26重量部以下、24重量部以下、22重量部以下、20重量部以下、18重量部以下、16重量部以下、14重量部以下、12重量部以下、10重量部以下、8重量部以下または6重量部以下の範囲内で追加で調節され得る。このような割合は、硬化性組成物内でフィラーの含量が過量な高充填システムである場合に現れることができる割合である。
【0067】
ポリオールとしては、特別な制限なしに公知のポリオールを適用することができる。例えば、ポリオールとしては、ポリウレタンの形成に適用されるポリオールを適用することができる。このようなポリオールとしては、いわゆるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび/またはその他ポリオール(ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール等)等が知られている。
【0068】
1つの例示において、適切な硬化速度の調節可能性を考慮して前記ポリオールとしては、いわゆる脂肪族ポリオールを使用することができる。
【0069】
前記ポリオールとしては、水酸基価(Hydroxyl valueまたはOH value)が約50~500の範囲内にあるポリオールを使用することもできる。前記水酸基価の単位は、mgKOH/gであり、標準試験方法(ASTM E1899-08)によって測定した値である。前記水酸基価は、他の例示において、約60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上、200以上、210以上、220以上、230以上、240以上、250以上、260以上または270以上の範囲内および/または490以下、480以下、470以下、460以下、450以下、440以下、430以下、420以下、410以下、400以下、390以下、380以下、370以下、360以下、350以下、340以下、330以下、320以下、310以下または300以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0070】
前記ポリオールとしては、また、適切な硬化速度、粘度、耐久性および/または接着性等を考慮して分子量が約100~3000の範囲内のポリオールを使用することができる。特に別途規定しない限り、本明細書で用語「分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を使用して測定した重量平均分子量(Mw)であり、単位は、g/molである。前記分子量は、他の例示において、150以上、200以上、250以上、300以上または350以上の範囲内および/または2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下または500以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0071】
1つの例示において、前記ポリオールとしては、エステルポリオール樹脂が使用され得る。エステルポリオールとしては、例えば、前記言及した水酸基価および/または分子量を満たす脂肪族エステルポリオールが使用され得る。
【0072】
前記ポリオールは、非結晶性であるか、十分に結晶性が低いポリオールでありうる。用語「非結晶性」は、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない場合を意味する。前記DSC分析は、10℃/分の速度で-80~60℃の範囲内の温度で行うことができ、例えば、前記速度で25℃から60℃に昇温後にさらに-80℃に減温し、さらに60℃に昇温する方式で行われ得る。また、上記で十分に結晶性が低いというのは、前記DSC分析で観察される溶融点(Tm)が15℃未満であり、約10℃以下、5℃以下、0℃以下、-5℃以下、-10℃以下また約-20℃以下程度である場合を意味する。この際、溶融点の下限は、特に制限されないが、例えば、前記溶融点は、約-80℃以上、-75℃以上または約-70℃以上でありうる。
【0073】
1つの例示において、前記エステルポリオールとしては、例えば、カルボン酸ポリオールやカプロラクトンポリオールが使用され得る。
【0074】
前記カルボン酸ポリオールは、カルボン酸とポリオール(ex.ジオールまたはトリオール等)を含む成分を反応させて形成することができ、カプロラクトンポリオールは、カプロラクトンとポリオール(ex.ジオールまたはトリオール等)を含む成分を反応させて形成することができる。この際、前記カルボン酸は、ジカルボン酸でありうる。
【0075】
一例において、前記ポリオールは、下記化学式2または3で表示されるポリオールでありうる。
【0076】
【化1】
【0077】
【化2】
【0078】
化学式2および3で、Xは、カルボン酸由来の単位であり、Yは、ポリオール由来の単位である。ポリオール由来の単位は、例えば、トリオール単位またはジオール単位でありうる。また、nおよびmは、任意の数であってもよく、例えばnは、2~10の範囲内の数であり、mは、1~10の範囲内の数であり、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~14の範囲内のアルキレンでありうる。
【0079】
本明細書で使用した用語「カルボン酸由来単位」は、カルボン酸化合物の中からカルボキシ基を除いた部分を意味し得る。同様に、本明細書で使用した用語「ポリオール由来単位」は、ポリオール化合物構造の中からヒドロキシ基を除いた部分を意味し得る。
【0080】
すなわち、ポリオールのヒドロキシ基とカルボン酸のカルボキシル基が反応すると、縮合反応により水(HO)分子が脱離してエステル結合が形成される。このようにカルボン酸が縮合反応によりエステル結合を形成する場合、カルボン酸由来単位は、カルボン酸構造のうち前記縮合反応に参加しない部分を意味し得る。また、ポリオール由来単位は、ポリオール構造のうち前記縮合反応に参加しない部分を意味し得る。
【0081】
化学式3のYも、ポリオールがカプロラクトンとエステル結合を形成した後にそのエステル結合を除いた部分を示す。すなわち、化学式3でポリオール由来単位、Yは、ポリオールとカプロラクトンがエステル結合を形成する場合、ポリオール構造のうち前記エステル結合に参加しない部分を意味し得る。エステル結合は、それぞれ化学式2および3に表示されている。
【0082】
前記化学式でYのポリオール由来単位がトリオール単位のように3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールに由来する単位である場合、前記化学式構造でY部分には、分岐が形成された構造が具現され得る。
【0083】
化学式2で、Xのカルボン酸由来単位の種類は、特に制限されないが、目的とする物性の確保のために、脂肪酸化合物、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、2個以上のカルボキシル基を有する脂環族化合物および2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物よりなる群から選はれた1つ以上の化合物に由来する単位でありうる。
【0084】
前記2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物は、一例としてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸またはテトラクロロフタル酸でありうる。
【0085】
前記2個以上のカルボキシル基を有する脂環族化合物は、一例としてテトラヒドロフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸でありうる。
【0086】
前記2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物は、一例としてシュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,2-ジメチルコハク酸、3,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸でありうる。
【0087】
ポリオールのガラス転移温度を考慮すると、芳香族カルボン酸由来単位よりは、脂肪族カルボン酸由来単位が好ましい。
【0088】
化学式2および3でYのポリオール由来単位の種類は、特に制限されないが、目的とする物性の確保のために、2個以上のヒドロキシ基を有する脂環族化合物および2個以上のヒドロキシ基を有する脂肪族化合物よりなる群から選ばれる1つ以上の化合物に由来することができる。
【0089】
前記2個以上のヒドロキシ基を有する脂環族化合物は、一例として1,3-シクロヘキサンジメタノールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールでありうる。
【0090】
前記2個以上のヒドロキシ基を有する脂肪族化合物は、一例としてエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-エチルヘキシルジオール、1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、グリセリンまたはトリメチロールプロパンでありうる。
【0091】
化学式2でnは、任意の数であり、その範囲は、硬化性組成物またはその硬化物である樹脂層が目的とする物性を考慮して選択され得る。例えば、nは、約2~10または2~5でありうる。
【0092】
化学式3でmは、任意の数であり、その範囲は、硬化性組成物またはその硬化物である樹脂層が目的とする物性を考慮して選択され得る。例えば、mは、約1~10または1~5でありうる。
【0093】
化学式2および3でnとmが前記範囲を外れると、ポリオールの結晶性発現が強くなって組成物の注入工程性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0094】
化学式3でRおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~14の範囲内のアルキレンである。炭素数は、硬化性組成物またはその硬化物である樹脂層が目的とする物性を考慮して選択され得る。
【0095】
硬化性組成物に含まれる反応抑制剤としては、反応抑制性官能基を有する化合物を使用することができる。用語「反応抑制性官能基」は、主剤樹脂および硬化剤の反応を遅延乃至抑制させることができる官能基を意味し、例えば、前記主剤樹脂に比べて前記硬化剤にさらに高い反応性を示したり、あるいは、前記硬化剤に比べて前記主剤樹脂にさらに高い反応性を示す官能基を意味し得る。このような反応抑制性官能基の種類は、主剤樹脂および/または硬化剤の種類によって決定される。例えば、主剤樹脂がポリオールであり、硬化剤がイソシアネート化合物である場合に、前記反応抑制性官能基は、メルカプト基(mercapto group)、アミノ基および/またはフェノール性水酸基でありうる。このような官能基は、前記ポリオールに比べて前記イソシアネート化合物に対してさらに高い反応性を示し、これによって、目的とする待機時間を確保することができる。
【0096】
1つの例示において、反応抑制剤としては、下記式2による反応抑制性官能基価が0.001~0.02の範囲内にある化合物を使用することができる。
【0097】
[式2]
FV=F/M
【0098】
式2でFVは、前記反応抑制性官能基価であり、Fは、前記反応抑制剤に存在する反応抑制性官能基の数(モル数)であり、Mは、前記反応抑制剤のモル質量である。
【0099】
前記反応抑制性官能基価を有する反応抑制剤の使用を通じて適合した待機時間および待機時間経過後に目的とする硬化速度を効率的に達成することができる。
【0100】
前記官能基価は、他の例示において、0.002以上、0.003以上、0.004以上または0.0045以上の範囲内および/または0.015以下、0.01以下、0.009以下、0.008以下、0.007以下、0.006以下または0.0055以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0101】
式2でMは、1つの例示において、約50~400g/molの範囲内でありうる。前記Mは、他の例示において、約60g/mol以上、70g/mol以上、80g/mol以上、90g/mol以上、100g/mol以上、110g/mol以上、120g/mol以上、130g/mol以上、140g/mol以上、150g/mol以上、160g/mol以上、170g/mol以上、180g/mol以上、190g/mol以上または195g/mol以上の範囲内および/または390g/mol以下、380g/mol以下、370g/mol以下、360g/mol以下、350g/mol以下、340g/mol以下、330g/mol以下、320g/mol以下、310g/mol以下、300g/mol以下、290g/mol以下、280g/mol以下、270g/mol以下、260g/mol以下、250g/mol以下、240g/mol以下、230g/mol以下、220g/mol以下、210g/mol以下、200g/mol以下、190g/mol以下、180g/mol以下、170g/mol以下、160g/mol以下、150g/mol以下、140g/mol以下、130g/mol以下、120g/mol以下または110g/mol以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0102】
適合した反応抑制剤としては、前記官能基のうちメルカプト基を有する化合物を使用することができ、例えば、下記化学式1で表示される化合物を使用することができる。特に下記化学式1の化合物のうち前記官能基がおよび/またはモル質量を有する化合物を使用することができる。
【0103】
【化3】
【0104】
化学式1で、Rは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基または-Si(Rを示すことができる。前記でRは、それぞれ独立して、アルキル基またはアルコキシ基でありうる。化学式1でRは、単一結合またはアルキレン基でありうる。
【0105】
化学式1でアルキル基、アルコキシ基またはアルキレン基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基またはアルキレン基でありうる。前記アルキル基、アルコキシ基またはアルキレン基は、直鎖状、分岐状または環状でありうる。
【0106】
化学式1で、芳香族炭化水素基とは、アリール基またはヘテロアリール基を意味する。一具体例として、前記アリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、フェニレニル基、クリセニル基またはフルオレニル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、前記ヘテロアリール基は、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ビリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンズオキサゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナンスロリン基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基またはジベンゾフラニル基等があるが、これに限定されるものではない。
【0107】
化学式1で単一結合は、両側の原子団が別途の原子を媒介とせず、直接結合された場合を意味する。
【0108】
化学式1のアルキル基、アルコキシ基、アルキレン基または芳香族炭化水素基は、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。この際、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基またはメルカプト基等が例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0109】
他の例として、前記化学式1で、Rは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基で置換あるいは非置換の炭素数1~4のアルキル基;炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基で置換あるいは非置換の芳香族炭化水素基;または-Si(Rを示し、ここで、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルコキシ基でありうる。一方、前記化学式1でRは、単一結合であるか;炭素数1~10のアルキレン基、または2~10のアルキレン基でありうる。
【0110】
1つの例示において、前記化学式1で表示される化合物は、前記反応抑制性官能基として、1つのメルカプト基のみを有していてもよい。したがって、前記化学式1でRおよびRは、メルカプト基(-SH)および他の反応抑制性官能基を含まなくてもよい。
【0111】
硬化性組成物内で前記反応抑制剤の含量は、目的とする硬化速度等の確保に適合した範囲で制御され得る。1つの例示において、前記反応抑制剤は、前記硬化性組成物の全体100重量部内に約0.05~0.5重量部の範囲内で存在することができる。前記硬化性組成物の全体100重量部は、硬化性組成物が溶媒のように最終的に除去される成分を含む場合には、その除去される成分の重量は除いて規定する範囲である。また、前記全体100重量部は、硬化性組成物が1液型である場合には、その組成物の重量を基準として規定する範囲であり、2液型である場合には、主剤組成物の重量、硬化剤組成物の重量またはその主剤および硬化剤組成物の全体重量を基準として求められる範囲である。
【0112】
前記反応抑制剤の割合は、他の例示において、約0.06重量部以上、0.07重量部以上、0.08重量部以上、0.09重量部以上または約0.1重量部以上の範囲内および/または約0.45重量部以下、0.40重量部以下、0.35重量部以下または約0.30重量部以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0113】
他の例示において、前記反応抑制剤は、硬化性組成物内で、前記触媒の含量(CW)と前記反応抑制剤の含量(IW)の重量比(IW/CW)が1.3~4の範囲内となるように調節されることもできる。このような範囲で目的とする待機時間と待機時間経過後の硬化速度をより効果的に確保することができる。
【0114】
前記含量IWおよびCWは、互いに同一単位であり、硬化性組成物内に含まれた触媒および反応抑制剤の絶対重量であるか、前記ポリオール100重量部に対する重量部でありうる。他の例として前記割合(IW/CW)は、約1.35以上、1.4以上、1.45以上、1.50以上、約1.55以上、2以上、2.5以上または3以上の範囲内および/または約3.8以下、約3.6以下、約3.4以下、約3.2以下、約3以下、約2.98以下、2.96以下、約2.94以下、約2.5以下または約2以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0115】
前記割合(IW/CW)を調節することによって、待機時間および/または待機時間経過後の硬化速度を制御することができる。
【0116】
他の例示において、前記反応抑制剤の硬化性組成物内での含量は、下記式3のR1が2~30の範囲内となる範囲で調節され得る。
【0117】
[式3]
R1=(W1×O/M)-(FV×W2)
【0118】
式3で、Oは、前記ポリオールの水酸基価であり、Mは、前記ポリオールの重量平均分子量であり、FVは、前記反応抑制剤の反応抑制性官能基価(式2により求められるFV)であり、W1は、前記ポリオールの前記反応抑制剤に対する重量比であり、W2は、前記反応抑制剤の前記ポリオールに対する重量比である。例えば、前記式3によるとき、硬化性組成物内の前記ポリオールと反応抑制剤の重量比(ポリオール:反応抑制剤)は、W1:W2である。
【0119】
硬化性組成物の2種以上のポリオールおよび/または2種以上の反応抑制剤が存在する場合に、それぞれに対して計算されたW1×O/MとFV×W2を合算して前記式3を確認する。例えば、硬化性組成物内に水酸基価がO1であり、重量平均分子量がM1である第1ポリオールと、水酸基価がO2であり、重量平均分子量がM2である第2ポリオールと、反応抑制性官能基価がFV1である第1反応抑制剤と、反応抑制性官能基価がFV2である第2反応抑制剤が、W11:W12:W21:W22(第1ポリオール:第2ポリオール:第1反応抑制剤:第2反応抑制剤)の重量比で存在すると、W11×O1/M1+W12×O2/M2が前記式3のW1×O/Mとなり、FV1×W21+FV2×W22が前記式3のFV×W2となる。
【0120】
前記R1は、他の例示において、2.5以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、5.5以上、6以上または6.5以上の範囲内および/または29以下、28以下、27以下、26以下、25以下、24以下、23以下、22以下、21以下、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下または7以下の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0121】
前記R1の範囲内で目的とする待機時間を確保し、待機時間後に所望の硬化速度を効率的に確保することができる。
【0122】
硬化性組成物に含まれる触媒の種類も、特に制限されず、ポリオールとその硬化剤の反応に対する公知の触媒を使用することができる。このような触媒としては、例えば、ウレタン触媒として多様な種類が公知されている。その例には、3次アミン化合物、非プロトン性塩(aprotic salt)または有機金属化合物が含まれ、適切な例示においてジブチルスズジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)等のような有機スズ系触媒が使用され得るが、これに制限されるのではない。
【0123】
硬化性組成物内で前記触媒の含量は、目的とする硬化速度等の確保に適合した範囲で制御され得る。1つの例示において、前記触媒は、前記硬化性組成物全体100重量部内に約0.01~0.1重量部の範囲内で存在することができる。前記硬化性組成物全体100重量部は、硬化性組成物が溶媒のように最終的に除去される成分を含む場合には、その除去される成分の重量は除いて規定する範囲である。また、前記全体100重量部は、硬化性組成物が1液型である場合には、その組成物の重量を基準として規定する範囲であり、2液型である場合には、主剤組成物の重量、硬化剤組成物の重量またはその主剤および硬化剤組成物の全体重量を基準として求められる範囲である。前記触媒の割合は、他の例示において、約0.02重量部以上、0.03重量部以上または約0.04重量部以上の範囲内および/または約0.09重量部以下、0.08重量部以下または約0.07重量部以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0124】
適切な効果を得るために、触媒の含量は、前記割合(IW/CW)を満足できる範囲内で追加で調節され得る。
【0125】
硬化性組成物は、目的とする機能(例えば、熱伝導度等)を確保するためにフィラーを含むことができる。特に本出願によれば、前記フィラーが非常に過量含まれる高充填システム下でも目的とする待機時間および/または待機時間経過後の硬化速度を効果的に達成することができる。前記硬化性組成物が2液型である場合に、前記フィラーは、2液型組成物の主剤および硬化剤組成物にそれぞれ含まれることもできる。
【0126】
1つの例示において、前記フィラーは、熱伝導性フィラーでありうる。用語「熱伝導性フィラー」は、熱伝導度が約1W/mK以上、5W/mK以上、10W/mK以上または約15W/mK以上の材料となるフィラーを意味し得る。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、350W/mK以下または約300W/mK以下でありうる。熱伝導性フィラーの種類は、特に制限されないが、絶縁性等を共に考慮するとき、無機フィラーでありうる。例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(aluminum nitride)、窒化ホウ素(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiCまたはBeO等のようなセラミック粒子が使用され得る。
【0127】
前記フィラーの形態や割合は、特に制限されず、硬化性組成物の粘度、硬度、硬化性組成物の硬化速度、硬化性組成物が硬化した樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗乃至熱伝導度、絶縁性、硬度、充填効果、分散性または保存安定性等を考慮して適切に調節され得る。一般的にフィラーのサイズが大きくなるほどこれを含む組成物の粘度が高まり、後述する樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高まる傾向がある。したがって、上記のような点を考慮して適正種類および大きさのフィラーが選択され得、必要に応じて2種以上のフィラーを共に使用することもできる。また、充填される量を考慮すると、球形のフィラーを使用することが有利であるが、ネットワークの形成や導電性等を考慮して針状や板状等のような形態のフィラーも使用され得る。
【0128】
1つの例示において、前記フィラーの平均粒径が約0.001μm~80μmの範囲内にありえる。前記フィラーの平均粒径は、他の例示において、約0.01μm以上、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上でありうる。前記フィラーの平均粒径は、他の例示において、約75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下または約5μm以下でありうる。用語「フィラーの平均粒径」は、いわゆるD50粒径またはメディアン粒径(median diameter)とも呼称される粒径である。D50粒径は、体積基準累積50%での粒子直径(メディアン直径)であり、体積基準として粒度分布を求め、全体積を100%とした累積曲線で累積値が50%となる地点の粒子直径を意味し、これは、公知のレーザー回折法(laser Diffraction)方式で測定することができる。本明細書でいうD50粒径は、ISO-13320に準拠してMarvern社のMASTERSIZER3000装備を利用し、溶媒としては、Ethanolを使用して測定した粒径でありうる。
【0129】
硬化性組成物は、前記フィラーを過量含む高充填システムでありうる。例えば、硬化性組成物内で前記フィラーは、硬化性組成物100重量部内に70~95重量部の範囲内の割合で存在することができる(すなわち、1つの例示において、硬化性組成物内での前記フィラーの割合は、70~95重量%程度でありうる)。前記硬化性組成物全体100重量部は、硬化性組成物が溶媒のように最終的に除去される成分を含む場合には、その除去される成分の重量は除いて規定する範囲である。また、前記全体100重量部は、硬化性組成物が1液型である場合には、その組成物の重量を基準として規定する範囲であり、2液型である場合には、主剤組成物の重量、硬化剤組成物の重量またはその主剤および硬化剤組成物の全体重量を基準として求められる範囲である。前記フィラーの含量は、他の例示において、約74重量部以上、78重量部以上、82重量部以上または約86重量部以上の範囲内および/または94重量部以下、93重量部以下または約92重量部以下の範囲内で追加で調節され得る。
【0130】
1つの例示において、硬化性組成物内でフィラーの含量は、70~95重量%の範囲内であり得、これは、約72重量%以上、74重量%以上、76重量%以上、78重量%以上、80重量%以上、82重量%以上、84重量%以上、86重量%以上または88重量%以上の範囲内および/または93重量%以下または91重量%以下の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0131】
このようなフィラー含量の範囲内で目的とするフィラーの機能を発現させることができる。例えば、前記フィラーが熱伝導性フィラーである場合に、前記含量の範囲で高い熱伝導度(例えば、3.0W/mK以上)を満たす硬化物を形成することができる。
【0132】
硬化性組成物は、前記言及した種類の他にも多様な種類のフィラーが使用され得る。例えば、硬化性組成物が硬化した樹脂層の絶縁特性が確保される場合に、グラファイト(graphite)等のような炭素フィラーの使用も考慮され得る。または例えば、ヒュームドシリカ、クレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛(ZnO)またはアルミニウムヒドロキシド(Al(OH))等のようなフィラーも使用され得る。このようなフィラーの形態や含量の割合は、特に制限されず、硬化性組成物の粘度、硬化速度、樹脂層内での沈降可能性、揺変性、絶縁性、充填効果および/または分散性等を考慮して選択され得る。
【0133】
硬化性組成物は、必要な場合に硬化剤を追加で含むことができる。2液型組成物において前記硬化剤は、前記主剤樹脂であるポリオールとは物理的に分離した状態で硬化性組成物に含まれていてもよい。例えば、硬化性組成物が2液型組成物である場合に、硬化性組成物は、前記ポリオール、反応抑制剤、触媒およびフィラーを主剤組成物に含み、前記硬化剤を硬化剤組成物に含むことができる。前記硬化剤組成物は、前記硬化剤とともに前記フィラーも含むことができる。
【0134】
硬化剤としては、特別な制限なしに公知の硬化剤を使用することができ、例えばウレタン組成物においてポリオールの硬化剤として通常使用されるイソシアネート化合物を使用することができる。硬化剤に適用され得るイソシアネート化合物の種類は、特に制限されないが、目的とする物性の確保のために芳香族基を含まない非芳香族イソシアネート化合物を使用することができる。芳香族ポリイソシアネートを使用する場合、反応速度が過度に速く、硬化物のガラス転移温度が高くなり得るので、前述した待機時間および/または待機時間後の硬化速度の確保に不利になり得、後述する硬化性組成物の硬化物である樹脂層が目的とする電気絶縁性および接着力など物性を満たすことが難しくなり得る。
【0135】
非芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネートまたはテトラメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンジイソシアネートまたはジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;または前記のうちいずれか1つ以上のカルボジイミド変性ポリイソシアネートやイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が使用され得る。また、前記羅列された化合物のうち2以上の混合物が使用され得る。
【0136】
1つの例示において、前記イソシアネート化合物としては、下記式4によるイソシアネート価が0.001~0.1の範囲内にある化合物を使用することができる。
【0137】
このような化合物は、前述した待機時間および/または待機時間後の硬化速度の確保に効果的である。
【0138】
[式4]
NCOV=NCO/MN
【0139】
式4で、NCOVは、前記イソシアネート価であり、NCOは、前記イソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数(モル数)であり、MNは、前記イソシアネート化合物のモル質量である。
【0140】
前記イソシアネート価は、他の例示において、0.003以上、0.005以上、0.007以上、0.009以上または0.01以上の範囲内および/または0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下または0.015以下の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0141】
式4でイソシアネート化合物のモル質量(MN)は、例えば、60~300g/molの範囲内にありえる。前記モル質量(MN)は、他の例示において、70g/mol以上、80g/mol以上、90g/mol以上、100g/mol以上、110g/mol以上、120g/mol以上、130g/mol以上、140g/mol以上、150g/mol以上または160g/mol以上の範囲内および/または290g/mol以下、280g/mol以下、270g/mol以下、260g/mol以下、250g/mol以下、240g/mol以下、230g/mol以下、220g/mol以下、210g/mol以下、200g/mol以下、190g/mol以下、180g/mol以下、170g/mol以下の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0142】
前記硬化性組成物に含まれる樹脂成分(例えば、前記ポリオール、前記イソシアネート化合物および/またはそれら間の反応物)は、硬化後に0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することができる。前記ガラス転移温度の範囲を満たす場合、バッテリーモジュールやバッテリーパックが使用され得る低い温度でもブリトル(brittle)な特性を比較的短時間内に確保することができ、それによって、耐衝撃性や耐振動特性が保障され得る。1つの例示において、前記硬化後に硬化性組成物が有するガラス転移温度の下限は、約-70℃以上、-60℃以上、-50℃以上、-40℃以上または約-30℃以上であり得、その上限は、約-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下、または約-20℃以下でありうる。
【0143】
硬化性組成物内で前記ポリオールとイソシアネート化合物の割合は、特に制限されず、これら間にウレタン反応が可能に適切に調節され得る。一例としてポリオールとイソシアネート化合物の割合は、当量比で1.0:1.1~1.0:2.0の割合(ポリオール:イソシアネート化合物)でありうる。
【0144】
他の例示において、前記イソシアネート化合物は、下記式5のR2が10~150の範囲内となるように存在する硬化性組成物に存在することもできる。
【0145】
[式5]
R2=(W1×O/M)/(NCOV×W3)
【0146】
式5で、Oは、ポリオールの水酸基価であり、NCOVは、イソシアネート化合物のイソシアネート価である。式5で、W1は、前記イソシアネート化合物に対する前記ポリオールの重量比であり、W3は、前記ポリオールに対する前記イソシアネート化合物の重量比である。すなわち、硬化性組成物内でポリオールとイソシアネート化合物の重量比(ポリオール:イソシアネート化合物)は、W1:W3である。
【0147】
硬化性組成物の2種以上のポリオールおよび/または2種以上のイソシアネート化合物が存在する場合に、それぞれに対して計算されたW1×O/MとNCOV×W3を合算して前記式5を確認する。例えば、硬化性組成物内に水酸基価がO1であり、重量平均分子量がM1である第1ポリオールと、水酸基価がO2であり、重量平均分子量がM2である第2ポリオールと、イソシアネートが(NCO価)がNCOV1である第1イソシアネート化合物と、イソシアネート価がNCOV2である第2イソシアネート化合物が、W11:W12:W31:W2(第1ポリオール:第2ポリオール:第1イソシアネート化合物:第2イソシアネート化合物)の重量比で存在すると、W11×O1/M1+W12×O2/M2が前記式5のW1×O/Mとなり、NCOV1×W31+NCOV2×W32が前記式5のNCOV×W3となる。
【0148】
前記R2は、他の例示において、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上または65以上の範囲内および/または140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下または60以下の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0149】
他の例示において、前記イソシアネート化合物は、下記式6のR3が50~500の範囲内となるように存在する硬化性組成物に存在することもできる。
【0150】
[式6]
R3=(FV×W2)/(NCOV×W3)
【0151】
式6でFVは、反応抑制剤の反応抑制性官能基価であり、NCOVは、イソシアネート化合物のイソシアネート価である。式6でW2は、前記イソシアネート化合物に対する前記反応抑制剤の重量比であり、W3は、前記反応抑制剤に対する前記イソシアネート化合物の重量比である。すなわち、硬化性組成物内で反応抑制剤とイソシアネート化合物の重量比(反応抑制剤:イソシアネート化合物)は、W2:W3である。
【0152】
硬化性組成物の2種以上の反応抑制剤および/または2種以上のイソシアネート化合物が存在する場合に、それぞれに対して計算されたFV×W2とNCOV×W3を合算して前記式6を確認する。例えば、硬化性組成物内に反応抑制性官能基価がFV1である第1反応抑制剤と、反応抑制性官能基価がFV2である第2反応抑制剤と、イソシアネートが(NCO価)がNCOV1である第1イソシアネート化合物と、イソシアネート価がNCOV2である第2イソシアネート化合物が、W21:W22:W31:W32(第1反応抑制剤:第2反応抑制剤:第1イソシアネート化合物:第2イソシアネート化合物)の重量比で存在すると、W21×FV1+W22×FV2が前記式6のFV×W2となり、NCOV1×W31+NCOV2×W32が前記式6のNCOV×W3となる。
【0153】
前記R3は、他の例示において、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、90以上、95以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上または200以上の範囲内および/または490以下、480以下、470以下、460以下、450以下、440以下、430以下、420以下、410以下、400以下、390以下、380以下、370以下、360以下、350以下、340以下、330以下、320以下、310以下、300以下、290以下、280以下、270以下、260以下、250以下、240以下、230以下、220以下、210以下、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下または100以下の範囲内で追加で調節されることもできる。
【0154】
前記R2および/またはR3の範囲内で目的とする待機時間を確保し、待機時間後に所望の硬化速度を効率的に確保することができる。
【0155】
上記の内容によってイソシアネート化合物の割合が調節されることによって、目的とする硬化特性(待機時間および/または待機時間経過後の硬化速度)を満たすのに有利である。
【0156】
硬化性組成物は、前記成分の他にも必要な適切な成分を追加で含むこともできる。
【0157】
例えば、前記硬化性組成物は、必要な粘度の調節、例えば粘度を上げたり、あるいは、下げたりするために、またはせん断力による粘度の調節のために、粘度調節剤、例えば、揺変性付与剤、希釈剤、分散剤、表面処理剤またはカップリング剤等を追加で含んでいてもよい。
【0158】
揺変性付与剤は、硬化性組成物のせん断力による粘度を調節してバッテリーモジュールの製造工程が効果的に行われるようにすることができる。使用できる揺変性付与剤としては、ヒュームドシリカ等が例示され得る。
【0159】
希釈剤または分散剤は、通常、硬化性組成物の粘度を下げるために使用されるものであり、前記のような作用を示すことができるものなら、当業界で公知となった多様な種類のものを制限なしに使用することができる。
【0160】
表面処理剤は、樹脂層に導入されているフィラーの表面処理のためのものであり、前記のような作用を示すことができるものなら、当業界で公知となった多様な種類のものを制限なしに使用することができる。
【0161】
カップリング剤の場合は、例えば、アルミナのような熱伝導性フィラーの分散性を改善するために使用され得、前記のような作用を示すことができるものなら、当業界で公知となった多様な種類のものを制限なしに使用することができる。
【0162】
また、前記硬化性組成物は、難燃剤または難燃補助剤等を追加で含むことができる。この場合、特別な制限なしに公知の難燃剤が使用され得、例えば、固状のフィラー形態の難燃剤や液状難燃剤等が適用され得る。難燃剤としては、例えば、メラミンシアヌレート(melamine cyanurate)等のような有機系難燃剤や水酸化マグネシウム等のような無機系難燃剤等がある。樹脂層に充填されるフィラーの量が多い場合、液状タイプの難燃材料(TEP、Triethyl phosphateまたはTCPP、tris(1,3-chloro-2-propyl)phosphate等)を使用することもできる。また、難燃上昇剤の作用ができるシランカップリング剤が追加されることもできる。
【0163】
前記硬化性組成物は、前述したような構成を含むことができ、また、溶剤型組成物、水系組成物または無溶剤型組成物でありうるが、製造工程の便宜等を考慮するとき、無溶剤型が適切である。
【0164】
硬化性組成物は、前記成分を上記のように含むことによって、目的とする適合した物性を示すこともできる。
【0165】
本出願は、また、バッテリーモジュールに関する。前記バッテリーモジュールは、内部空間を有するモジュールケースおよび前記内部空間に存在する複数のバッテリーセルを含むことができる。前記バッテリーセルは、前記モジュールケース内に収納されていてもよい。バッテリーセルは、モジュールケース内に1つ以上存在することができ、複数のバッテリーセルがモジュールケース内に収納されていてもよい。モジュールケース内に収納されるバッテリーセルの数は、用途等によって調節されるものであり、特に制限されない。モジュールケースに収納されているバッテリーセルは、互いに電気的に連結されていてもよい。
【0166】
前記バッテリーモジュールは、前記硬化性組成物の硬化物である樹脂層を含むことができる。前記樹脂層は、前記複数のバッテリーセルと接触し、また、前記モジュールケースと接触した状態で前記モジュールケースの内部空間に存在することができる。
【0167】
例えば、前記バッテリーモジュールは、前述した硬化性組成物をバッテリーモジュール内に注入する段階および前記硬化性組成物が注入されたバッテリーモジュールを検査する段階を経て生産され得る。前記過程でバッテリーセルは、硬化性組成物をバッテリーモジュール内に注入する前にバッテリーモジュールケース内に装着されたり、硬化性組成物をバッテリーモジュール内に注入した後にバッテリーモジュールケース内に装着され得る。
【0168】
モジュールケースは、バッテリーセルが収納され得る内部空間を形成する側壁と下部板を少なくとも含むことができる。また、モジュールケースは、前記内部空間を密閉する上部板を追加で含むことができる。前記側壁、下部板および上部板は、互いに一体型で形成されていてもよく、またはそれぞれ分離した側壁、下部板および/または上部板が組み立てられて、前記モジュールケースが形成されていてもよい。このようなモジュールケースの形態および大きさは、特に制限されず、用途や前記内部空間に収納されるバッテリーセルの形態および個数などによって適切に選択され得る。
【0169】
前記で用語「上部板と下部板」は、モジュールケースを構成している板が、少なくとも2個存在するので、これを区別するために使用される相対的概念の用語である。すなわち、実際使用状態で上部板が必ず上部に存在し、下部板が必ず下部に存在しなければならないことを意味するものではない。
【0170】
図2は、例示的なモジュールケース10を示す図であり、1つの下部板10aと4個の側壁10bを含む箱形態のケース10の例示である。モジュールケース10は、内部空間を密閉する上部板10cを追加で含むことができる。
【0171】
図3は、バッテリーセル20が収納されている図2のモジュールケース10を上部で観察した模式図である。
【0172】
モジュールケースの前記下部板、側壁および/または上部板には、ホールが形成されていてもよい。前記ホールは、注入工程により樹脂層を形成する場合に、前記樹脂層の形成材料、すなわち前述した硬化性組成物を注入するのに使用される注入ホールでありうる。前記ホールの形態、個数および位置は、前記樹脂層形成材料の注入効率を考慮して調整され得る。1つの例示において、前記ホールは、少なくとも前記下部板および/または上部板に形成されていてもよい。
【0173】
前記注入ホールが形成されている上部板と下部板等の末端には、観察ホールが形成され得る。このような観察ホールは、例えば、前記注入ホールを通じて樹脂層材料を注入するとき、注入された材料が当該側壁、下部板または上部板の末端まで良好に注入されるものであるかを観察するために形成されたものでありうる。前記観察ホールの位置、形態、大きさおよび個数は、前記注入される材料が適切に注入されたかを確認できるように形成される限り、特に制限されない。
【0174】
前記モジュールケースは、熱伝導性ケースでありうる。用語「熱伝導性ケース」は、ケース全体の熱伝導度が10W/mk以上であるか、あるいは、少なくとも上記のような熱伝導度を有する部位を含むケースを意味する。例えば、前述した側壁、下部板および上部板のうち少なくとも1つは、前述した熱伝導度を有することができる。さらに他の例示において、前記側壁、下部板および上部板のうち少なくとも1つが前記熱伝導度を有する部位を含むことができる。
【0175】
前記で熱伝導性の上部板、下部板、側壁;または熱伝導性部位の熱伝導度は、他の例示において、約20W/mk以上、30W/mk以上、40W/mk以上、50W/mk以上、60W/mk以上、70W/mk以上、80W/mk以上、90W/mk以上、100W/mk以上、110W/mk以上、120W/mk以上、130W/mk以上、140W/mk以上、150W/mk以上、160W/mk以上、170W/mk以上、180W/mk以上、190W/mk以上または約195W/mk以上でありうる。前記熱伝導度は、その数値が高いほどモジュールの放熱特性等の観点から有利であるので、その上限は、特に制限されない。1つの例示において、前記熱伝導度は、約1,000W/mK以下、900W/mk以下、800W/mk以下、700W/mk以下、600W/mk以下、500W/mk以下、400W/mk以下、300W/mkまたは約250W/mK以下でありうるが、これに制限されるものではない。上記のような熱伝導度を示す材料の種類は、特に制限されず、例えば、アルミニウム、金、銀、タングステン、銅、ニッケルまたは白金等の金属素材等がある。モジュールケースは、全体が上記のような熱伝導性材料からなるか、少なくとも一部の部位が前記熱伝導性材料からなる部位でありうる。これに伴い、前記モジュールケースは、前記言及された範囲の熱伝導度を有するか、あるいは、前記言及された熱伝導度を有する部位を少なくとも1つの部位含むことができる。
【0176】
モジュールケースにおいて前記範囲の熱伝導度を有する部位は、前記樹脂層および/または絶縁層と接触する部位でありうる。また、前記熱伝導度を有する部位は、冷却水のような冷却媒体と接する部位でありうる。このような構造を有する場合、バッテリーセルから発生した熱を効果的に外部に放出することができる。
【0177】
本出願で用語「バッテリーセル」は、単位二次電池を意味する。このようなバッテリーセルの種類は、特に制限されず、公知の多様なバッテリーセルが全部適用され得る。1つの例示において、前記バッテリーセルは、パウチ型、円筒形または角形であるか、他の形態でありうる。
【0178】
前記バッテリーモジュールは、前記硬化性組成物の硬化物である樹脂層を含むことができ、このような樹脂層は、例えば、特許文献1に開示された形態でモジュールケース内に存在することができる。
【0179】
本出願は、また、バッテリーパック、例えば、前述したバッテリーモジュールを2個以上含むバッテリーパックに関する。バッテリーパックにおいて前記バッテリーモジュールは、互いに電気的に連結されていてもよい。2個以上のバッテリーモジュールを電気的に連結してバッテリーパックを構成する方式は、特に制限されず、公知の方式が全部適用され得る。
【0180】
本出願は、また、前記バッテリーモジュールまたは前記バッテリーパックを含む装置に関する。前記装置の例としては、電気自動車のように自動車を挙げることができるが、これに制限されず、2次電池を出力に要求するすべての用途が含まれ得る。例えば、前記バッテリーパックを使用して前記自動車を構成する方式は、特に制限されず、一般的な方式が適用され得る。
【発明の効果】
【0181】
本出願は、硬化開始後に待機時間を確保することができ、当該待機時間を用途によって効率的に制御することができ、前記待機時間が経過した後の硬化速度も用途に適合するように制御することができる硬化性組成物を提供することができる。本出願は、相対的に低粘度で組成(formulation)されるか、過量のフィラーを含むように組成される場合にも、前記特性を確保できる硬化性組成物を提供することができる。
【0182】
本出願は、また、前記硬化性組成物またはその硬化物を含むバッテリーモジュール、バッテリーパックおよび/または自動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
図1】本出願で適用され得る例示的な混合器を示す図である。
図2】本出願で適用され得る例示的なモジュールケースを示す図である。
図3】モジュールケース内にバッテリーセルが収納されている形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0184】
以下、実施例および比較例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例により制限されるものではない。
【0185】
1.粘度
硬化性組成物(主剤組成物、硬化剤組成物またはこれらの混合物)の粘度は、ブルックフィールドHBタイプ(Brookfiled HB type)粘度計を使用して測定した。粘度の測定時に、温度は約25℃に維持した。前記粘度計を使用して、約90%のトルクおよび約100rpmのせん断速度の条件で前記硬化性組成物の粘度を時間によって測定した。
【0186】
2.硬度
硬化性組成物の硬度は、ASTM D2240規格によってアスカー硬度計(ASKER、durometer hardness)を使用して測定した。硬度は、硬化性組成物を厚さが約4mm程度のフィルム形態に維持した状態で温度を約25℃に維持した状態で厚さ方向に時間によって測定した。フィルム形態の前記サンプルの表面に1Kg以上の荷重(約1.5Kg)を加えて初期硬度を測定し、15秒後に安定化した測定値で確認して、硬度(Shore A硬度)を評価した。
【0187】
3.負荷値(Li、Lf)
硬化性組成物の負荷値(kgf)は、2個のカートリッジ2a、2bおよび1個のスタティックミキサー(static mixer)5を図1のように連結した測定装置1を使用して測定した。
【0188】
前記測定装置1においてカートリッジ2a、2bとしては、直径が18mmの円形注入部と直径が3mmの円形吐出部4、4a、4bを有し、カートリッジ2a、2bの高さが100mmであり、内部体積が25mlであるもの(Sulzer社、AB050-01-10-01)を使用した。前記測定装置1においてスタティックミキサー5としては、直径2mmの円形吐出部7を有し、stepped型であり、エレメント数が16であるミキサー5(Sulzer社、MBH-06-16T)を使用した。前記測定装置において加圧手段3、3a、3bとしては、TA(Texture analyzer)を使用した。
【0189】
2液型硬化性組成物の主剤組成物を前記2個のカートリッジ2a、2bのうちいずれか1つに充填し、硬化剤組成物を他のカートリッジに充填した後に、加圧手段3、3a、3bで一定の力を加えて、前記主剤および硬化剤組成物がそれぞれ第1吐出部4a、4bを経由してスタティックミキサー5内で混合された後に、第2吐出部7に吐出されるようにして、負荷値(Li、Lf)を測定した。
【0190】
負荷値Liは、主剤および硬化剤組成物を前記2個のカートリッジ2a、2bにそれぞれローディングした後に、TA(Texture analyzer)3a、3bで1mm/s程度の等速度で加圧して、前記組成物がスタティックミキサー5の内部で混合された後に、最初に吐出される時から、加圧手段に印加される力を測定して、前記力が最大値となる地点での前記最大値である。
【0191】
負荷値Lfは、負荷値Liと類似した方式で測定した。すなわち、負荷値Lfは、主剤および硬化剤組成物を前記2個のカートリッジ2a、2bにそれぞれローディングした後に、TA(Texture analyzer)3a、3bで1mm/s程度の等速度で加圧して、前記組成物がスタティックミキサー5の内部で混合された後に最初に吐出される時から、加圧手段に印加される力を測定して、前記力が最大値となる地点での前記最大値である。ただし、Liの測定時には、前記最大値が測定されるまで中断なく前記加圧手段で加圧をしたが、Lfの測定時には、主剤および硬化剤組成物がミキサー5の内部で混合される時点で加圧手段による加圧を中止し、30分程度ミキサー5の内部で硬化反応を進行させた後に、さらに等速度(1mm/s)で加圧をしながら、前記最大値を測定し、その最大値をLfとした。
【0192】
Lfの測定時に加圧を中止する時点は、ミキサー5に注入された主剤組成物および硬化剤組成物の量がミキサーの容量(体積)の95%程度になる時点であった。前記30分が経過した時点で加圧手段でさらに1mm/sの等速度で加圧して最初に吐出される時から加圧手段に印加される力を測定し始めて、前記力が最大値となる地点で前記最大値を前記負荷値(Lf)とした。
【0193】
前記最大値は、最初に確認される最大値である。すなわち、上記のように加圧手段で加圧しながら印加される力を測定すると、前記力は、増加してから減少したり、あるいは、増加してからこれ以上増加せずに一定水準に維持されるが、前記最大値は、前記減少する前の最大値であるか、前記一定水準に維持される最大値である。
【0194】
4.重量平均分子量の測定
ポリオールの重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した。具体的に下記順序によって測定した。
【0195】
(1)5mLバイアル(vial)に分析対象物質(ポリオール)を入れ、約1mg/mL程度の濃度になるようにTHF(tetrahydro furan)に希釈する。
(2)Calibration用標準試料と分析しようとする試料をsyringe filter(pore size:0.45μm)を通じて濾過させる。
(3)濾過された標準試料と分析試料をGPC機器に注入した後、GPC分析を行う。
分析プログラムは、Agilent technologies社製ChemStationを使用し、試料のelution timeをcalibration curveと比較して重量平均分子量(Mw)を計算した。GPCの測定条件は、下記の通りである。
【0196】
<GPC測定条件>
機器:Agilent technologies社、1200 series
カラム:Polymer laboratories社、PLgel mixed B 2個使用
溶媒:THF
カラム温度:35℃
サンプル濃度:1mg/mL、200μL注入
標準試料:ポリスチレン(Mp:3900000、723000、316500、52200、31400、7200、3940、485)
【0197】
実施例1
硬化性組成物は、2液型で製造した。すなわち、ポリオール(主剤樹脂)、反応抑制剤、触媒およびフィラーを配合して主剤組成物を製造し、イソシアネート化合物とフィラーを配合して硬化剤組成物を製造した。
【0198】
主剤樹脂としては、下記化学式4で表示されるカプロラクトンポリオールを使用した。前記ポリオールは、重量平均分子量が約400g/mol程度であり、水酸基価(OH value)は、約280mgKOH/g程度であった。前記水酸基価は、標準試験方法(ASTM E1899-08)によって評価したものである。
【0199】
【化4】
【0200】
化学式4でmは、1~3の範囲内の数であり、RおよびRは、それぞれ炭素数が4のアルキレンであり、Yは、1,4-ブタンジオール単位である。
【0201】
反応抑制剤としては、1-ドデカンチオール(1-Dodecanethiol、モル質量:約202.4g/mol)を使用し、触媒としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)を使用し、硬化剤としては、HDI(Hexamethylene diisocyanate、モル質量約168.2g/mol)を使用した。
【0202】
フィラーとしては、アルミナを使用し、D50粒径が約40μm程度の第1フィラー、D50粒径が約20μm程度の第2フィラーおよびD50粒径が約2μm程度の第3フィラーを4:3:3の重量比(第1フィラー:第2フィラー:第3フィラー)で混合したフィラー混合物を使用した。
【0203】
主剤組成物は、前記カプロラクトンポリオール、反応抑制剤、触媒およびフィラーを9.98:0.12:0.040:89.9の重量比(ポリオール:反応抑制剤:触媒:フィラー)で混合して製造し、硬化剤組成物は、前記HDIおよびフィラーを10:90の重量比(HDI:フィラー)で混合して製造した。前記で主剤組成物内のポリオールと硬化剤組成物内のHDIの重量比(ポリオール:HDI)は、1:1程度であった。
【0204】
前記主剤組成物および硬化剤組成物の製造時の混合は、planetary mixerで行った。
【0205】
実施例2
主剤組成物の製造時にカプロラクトンポリオール、反応抑制剤、触媒およびフィラーの重量比(ポリオール:反応抑制剤:触媒:フィラー)を9.98:0.15:0.070:89.8とし、硬化剤組成物の製造時にHDIおよびフィラーの重量比(HDI:フィラー)を10:90とし、主剤組成物内のポリオールと硬化剤組成物内のHDIの重量比(ポリオール:HDI)を1:1として、実施例1と同様に各組成物を製造した。
【0206】
実施例3
主剤組成物の製造時にカプロラクトンポリオール、反応抑制剤、触媒およびフィラーの重量比(ポリオール:反応抑制剤:触媒:フィラー)を9.98:0.12:0.070:89.8とし、硬化剤組成物の製造時にHDIおよびフィラーの重量比(HDI:フィラー)を10:90とし、主剤組成物内のポリオールと硬化剤組成物内のHDIの重量比(ポリオール:HDI)を1:1として、実施例1と同様に各組成物を製造した。
【0207】
実施例4
主剤組成物の製造時にカプロラクトンポリオール、反応抑制剤、触媒およびフィラーの重量比(ポリオール:反応抑制剤:触媒:フィラー)を9.97:0.25:0.090:89.7とし、硬化剤組成物の製造時にHDIおよびフィラーの重量比(HDI:フィラー)を10:90とし、主剤組成物内のポリオールと硬化剤組成物内のHDIの重量比(ポリオール:HDI)を1:1として、実施例1と同様に各組成物を製造した。
【0208】
実施例5
反応抑制剤として1-ドデカンチオール(1-Dodecanethiol、モル質量:約202.4g/mol)の代わりに、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3-Mercaptopropyltrimethoxysilane、モル質量約196.4g/mol)を使用し、他の材料は、実施例1と同様に使用した。
【0209】
主剤組成物の製造時にカプロラクトンポリオール、反応抑制剤、触媒およびフィラーの重量比(ポリオール:反応抑制剤:触媒:フィラー)を9.97:0.15:0.070:89.8とし、硬化剤組成物の製造時にHDIおよびフィラーの重量比(HDI:フィラー)を10:90とし、主剤組成物内のポリオールと硬化剤組成物内のHDIの重量比(ポリオール:HDI)を1:1として、実施例1と同様に各組成物を製造した。
【0210】
前記実施例に対して測定した物性を下記表1に整理して記載した。
【0211】
【表1】
【0212】
表1の結果を通じて本出願の硬化性組成物により適切な待機時間を確保することができるという点を確認することができる。すなわち、反応抑制剤がない場合に比べて存在する場合に、Vtがさらに長く測定され、他の条件が同等である場合に、触媒量を基準とする応抑制剤の量の割合が高いほどさらに長い待機時間が確保され、他の条件が同等である場合に、反応抑制剤の官能基価が低いほどさらに長い待機時間が確保される傾向を確認した。
【0213】
また、Hti、Ht40またはHt90から、他の条件が同等である場合に、触媒の含量が増加する場合、触媒量を基準とする反応抑制剤の量の割合が減少した場合、および/または反応抑制剤の官能基価が高まる場合に、待機時間経過後に硬化速度が速くなる傾向があることを確認した。
【0214】
また、実施例の硬化性組成物は、低い負荷値(L、L)を示した。
図1
図2
図3