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特許7353744制御ユニット、ポンプ装置、及び可変速制御器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】制御ユニット、ポンプ装置、及び可変速制御器
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
F04D15/00 J
F04D15/00 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018210448
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020076372
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝英
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117694(JP,A)
【文献】特開2015-042029(JP,A)
【文献】特開平07-308074(JP,A)
【文献】特開平09-149547(JP,A)
【文献】特開平10-318157(JP,A)
【文献】特開2017-006573(JP,A)
【文献】特開2007-202294(JP,A)
【文献】特許第2702952(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の可変速制御器によって少なくとも1台の電動機駆動のポンプを可変速制御するポンプ装置の制御ユニットであって、
前記ポンプ装置では、
前記可変速制御器が保護停止したとき、リトライ運転の回数がリトライ運転上限回数に至るまで、前記可変速制御器がリトライ運転され、
前記制御ユニットは、
前記保護停止の原因であるトリップ原因、前記リトライ運転時の動作の何れかに基づいて、グループ分けし、前記グループ毎にリトライ運転上限回数を有し、
記トリップ原因に基づいて前記リトライ運転上限回数を設定する、
制御ユニット。
【請求項2】
少なくとも1台の可変速制御器によって少なくとも1台の電動機駆動のポンプを可変速制御するポンプ装置の制御ユニットであって、
前記ポンプ装置では、
前記可変速制御器が保護停止したとき、リトライ運転の回数がリトライ運転上限回数に至るまで、前記可変速制御器がリトライ運転され、
前記制御ユニットは、
前記保護停止の原因であるトリップ原因に基づいて前記リトライ運転上限回数を設定し、
前記トリップ原因が過電流または過負荷であるときには、前記トリップ原因が前記可変速制御器の入力電圧異常であるときに比して、前記リトライ運転上限回数を少ない回数に設定する、
制御ユニット。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記トリップ原因および/または前記保護停止時の前記ポンプの運転状態であるトリップ時運転状態毎に、前記リトライ運転の回数をカウントする、請求
項1または2に記載の制御ユニット。
【請求項4】
前記ポンプ装置は、前記ポンプを可変速制御するための制御パラメータを有し、
前記リトライ運転時の動作で前記制御ユニットは、前記トリップ原因および/または前記保護停止時の前記ポンプの運転状態であるトリップ時運転状態に基づいて前記制御パラメータを設定変更する、
請求項1から3の何れか1項に記載の制御ユニット。
【請求項5】
前記リトライ運転時の動作で前記制御ユニットは、前記リトライ運転回数が第1回数のときには直前の保護停止から第1時間が経過した後に前記可変速制御器の前記リトライ運転を実行し、前記リトライ運転回数が前記第1回数よりも大きい第2回数のときには直前の前記保護停止から前記第1時間より長い第2時間が経過した後に前記可変速制御器の前記リトライ運転を実行する、請求項1から4の何れか1項に記載の制御ユニット。
【請求項6】
前記ポンプ装置は、前記ポンプを可変速制御するのに用いる制御パラメータを有し、
前記制御パラメータには、加速時間が含まれ、
前記リトライ運転時の動作で前記制御ユニットは、前記リトライ運転回数が第1回数のときには前記加速時間を第1加速時間に設定し、前記リトライ運転回数が前記第1回数よりも大きい第2回数のときには前記加速時間を前記第1加速時間よりも長い第2加速時間に設定する、
請求項1から5の何れか1項に記載の制御ユニット。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記可変速制御器のリトライ運転回数が前記リトライ運転上限回数よりも小さい発報回数に至ったときに発報する、
請求項1から6の何れか1項に記載の制御ユニット。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記可変速制御器と通信する制御部を含み、
前記制御部は、前記可変速制御器から前記保護停止したことを含む情報を受信したときには、前記保護停止が生じた原因を取得するための指令を前記可変速制御に割込送信する、
請求項1から7の何れか1項に記載の制御ユニット。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記可変速制御器が保護停止されたときに、前記トリップ原因と、前記保護停止時の前記ポンプの運転状態であるトリップ時運転状態とに基づいて、前記可変速制御器のリトライ運転の許可または禁止を判定する、
請求項1から8の何れか1項に記載の制御ユニット。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載の制御ユニットと、
前記少なくとも1台の可変速制御器によって電動機駆動されるポンプと、
を備える、
ポンプ装置。
【請求項11】
請求項1から9の何れか1項に記載の制御ユニットが備えられたポンプ装置の可変速制御器であって、
前記可変速制御器は、前記ポンプを可変速制御するための制御パラメータを記憶する揮発性メモリと不揮発性メモリとを有し、
前記可変速制御器は、前記リトライ運転時に前記制御ユニットから設定変更された前記制御パラメータを前記揮発性メモリにのみ記憶する、
可変速制御器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御ユニット、ポンプ装置、及び可変速制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ装置として、可変速制御器の一例であるインバータを通じて電力をポンプの電動機に供給し、ポンプを可変速運転させるものが知られている。こうしたインバータは、一般に、インバータ自体、又はインバータに接続された他の機器を保護するために、各種センサ情報が規定値範囲外となったときに制御不能(トリップともいう)を検出し、運転中であれば運転を停止する保護機能を有する。
【0003】
ポンプ装置を制御する制御ユニットは、インバータのトリップを確認した場合、インバータのリトライ運転を行う。特許文献1に記載のポンプ装置では、インバータのトリップが確認されたときのポンプの運転状態に基づいて、インバータのリトライ運転が可能かどうか判定している。また、特許文献2に記載のポンプ装置では、ポンプの吐出し流量が小さいほど、再運転回数として大きい値を用いている。こうした制御により、特許文献1、2に記載のポンプ装置では、可能な限りインバータ及びポンプの停止を回避しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第1914725号明細書
【文献】特許第2702952号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータのトリップは、インバータに過電流または過負荷が作用したことにより生じたり、インバータの入力電圧が所定範囲外となることにより生じるなど、様々な原因によって生じる。そして、こうしたインバータのトリップは、ポンプの運転状態に伴って生じた一時的な原因による場合もある。しかしながら、従来のポンプ装置でインバータは、トリップの原因によらずリトライ運転の判断や再運転回数の設定がなされるため、復帰可能な状態であってもリトライ運転がなされない場合がある。反対に、ポンプ装置が復帰できない不具合が生じている場合には、リトライ運転を行わずに確実に停止することも必要である。特に、インバータの電力回路が壊れた状態でのリトライ運転を繰り返すと電力回路で過大な電流や電圧が発生することになり回路が焼損し、重大事故に発展する虞があるため、電力回路が壊れた状態でのリトライ動作は避け確実に停止させる必要がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、可変速制御器が保護機能によって停止したときに可変速制御器のリトライ運転を適切に行うことができる制御ユニット、ポンプ装置、及び可変速制御器を提案することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、少なくとも1台の可変速制御器によって少なくとも1台の電動機駆動のポンプを可変速制御するポンプ装置の制御ユニットが提案され、前記ポンプ装置では、前記可変速制御器が保護停止したとき、リトライ運転の回数がリトライ運転上限回数に至るまで前記可変速制御器がリトライ運転され、前記制御ユニットは、前記保護停止の原因であるトリップ原因および/または前記保護停止時の前記ポンプの運転状態であるトリップ時運転状態に基づいて前記リトライ運転上限回数を設定する。かかる制御ユニット
によれば、可変速制御器が保護停止したときに、可変速制御器のリトライ運転上限回数を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポンプ装置の一例としての給水装置の構成概略に示す図である。
図2図1の給水装置におけるモータポンプとインバータ装置との構成の一例を示す図である。
図3】制御部とインバータ装置との通信の一例を説明するための図である。
図4】給水装置の制御部によって実行されるインバータトリップ時制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5】インバータ制御部によって実行されるインバータトリップ時制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6】トリップ原因とトリップ時運転状態とリトライ運転の許可/禁止の判定の関係の一例を示す図である。
図7】トリップ原因とトリップ時運転状態とリトライ上限回数の関係の一例を示す図である。
図8】トリップ原因とリトライ運転回数リセットの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0010】
図1は、ポンプ装置の一例としての給水装置の構成概略に示す図である。本実施形態のポンプ装置は、戸建て、マンション、オフィスビル、商業施設、工場、又は、学校等の建物に水を供給するための給水装置10として使用される。ただし、ポンプ装置は、水道水や中水を建物に給水するものに限定されず、例えばスプリンクラー等の消火設備に給水する消火ポンプ装置などのポンプ装置や汚水や雑排水等を搬送する汚水用のポンプ装置等、種々の使用態様において使用されればよい。図1では、給水装置10が直結給水方式で使用されており、給水装置10の吸込口は、導入管105を介して水道管(水道本管)104に接続されている。ただし、給水装置10は、給水装置10の吸込口が図示しない受水槽を介して水道管104より供給される水を給水する受水槽方式で使用されてもよい。給水装置10の吐出口には給水管107が接続されており、この給水管107は、各建物の給水栓(例えば蛇口)に連通している。給水装置10は、水道管104(または受水槽)からの水を増圧し、建物の各給水栓に水を供給する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の給水装置10は、2台のモータポンプ40a、40bと、可変速制御器の一例であるインバータ装置50a、50bと、制御部60と、を備える。モータポンプ40a、40bのそれぞれは、図示しない羽根車を有するポンプ44と、ポンプ44に動力を供給する電動機の一例であるモータ42と、を有する。なお、本実施形態では、2台のモータポンプ40a、40bが設けられるものとしたが、1台または3台以上のモータポンプが設けられてもよい。
【0012】
ポンプ44の上流側(吸込側)には、逆流防止装置25が設けられている。本実施形態で逆流防止装置25は、給水装置10の吸込口に接続された導入管105に設けられており、給水装置10から水道管104への水の逆流を防止する。逆流防止装置25の上流側には、圧力センサ21が設けられている。圧力センサ21は、ポンプ44(給水装置10)の吸込圧力を測定するための圧力測定器である。
【0013】
ポンプ44の下流側(吐出し側)には、逆止弁23と、フロースイッチ24と、圧力センサ26と、圧力タンク28と、が設けられている。図1に示す例では、ポンプ44、逆
止弁23、および、フロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。複数台のポンプ44を設けることにより、一部のポンプ44が運転不可となった場合には、運転可能な他のポンプ44にて給水を継続し極力断水を避けるようになっている。
【0014】
逆止弁23は、ポンプ44の吐出口に接続された吐出管32に設けられており、ポンプ44が停止したときの水の逆流を防止する。逆止弁23の下流側(二次側)には、フロースイッチ24が設けられている。フロースイッチ24は、吐出管32を流れる水の流量が所定の値にまで低下したこと、すなわち過小水量(小水量)を検出する流量検出器である。また、複数の吐出管32が統合されて接続される給水管107には、圧力センサ26、及び、圧力タンク28が設けられている。圧力センサ26は、ポンプ44(給水装置10)の吐出し圧力を測定するための圧力測定器である。圧力タンク28は、ポンプ44が停止している間の吐出し圧力を保持するための圧力保持器である。
【0015】
インバータ装置50a、50bは、制御部60からの制御指令に基づいてモータ42に流れる電流を制御する。一例として、インバータ装置50a、50bは、ポンプ44の目標回転速度に基づいて指令周波数を算出(例えばPID制御等)し、この指令周波数とモータ42の実際の周波数との差分を最小とするためのPWM信号を生成する。
【0016】
給水装置10の制御部60は、ポンプ44による自動給水を制御するために設けられている。本実施形態の制御部60は、記憶部(制御用メモリ)66と、演算部67と、I/O部68と、を備えている。また、運転パネル70と、外部通信部73と、を備えていてもよい。
【0017】
制御部60の記憶部66としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。記憶部66には、給水装置10を制御するための制御プログラム、装置情報、設定値情報、履歴情報、及び異常情報など、給水装置10に関する各種データが記憶される。
【0018】
設定値情報は、主に給水装置10の使用環境、装置構成、および、給水方式等によって値が変更される情報であり、作業者が外部入力によって変更可能な情報である。なお、本実施形態で、設定値情報は、設定部71、外部通信部73、またはI/O部68(図示しない外部入力端子)を通じた入力により設定可能である。本実施形態では、設定部71を通じた入力と、外部通信部73を通じた入力と、I/O部68の外部入力端子に入力された信号とを、「外部入力」という。なお、装置情報も外部入力により変更可能としてもよい。
【0019】
異常情報は、給水装置10における異常に関する情報である。異常情報は、各種警報(インバータトリップ、吐出し圧力異常低下、各種センサ異常等)および異常(流入圧低下または受水槽の満水渇水減水等)に関する情報等を含む。また、異常情報は、インバータ装置50a、50bにおける交換またはメンテナンスを促すための情報などを含むとよい。更に、異常情報はインバータ装置50a、50bが保護停止となる保護機能が生じたときの当該保護機能が生じた原因であるトリップ原因も含まれる。
【0020】
履歴情報は、給水装置10の各種履歴に関する情報である。履歴情報は、モータポンプ40a、40bの積算運転時間並びに積算運転回数、給水装置10にける警報履歴、各種通信の履歴、各種操作履歴等を含むとよい。履歴情報には、インバータ装置50a、50bが保護停止となる保護機能が生じたときの当該保護機能が生じた原因であるトリップ原因と、保護機能が生じたときの給水装置10の運転情報が含まれるとよい。
【0021】
運転情報は、給水装置10における現在の状態を示す情報であり、一定の周期(数10
mSECから数秒の間隔)にて更新される。運転情報は、現在のモータポンプ40a、40bのそれぞれの運転または停止状態、モータポンプ40a、40bの回転速度、モータポンプ40a、40bを駆動するモータに流れる電流値、給水装置10の入力電圧、モータポンプ40a、40bの吸込圧力、モータポンプ40a、40bの吐出し圧力、および、目標圧SV等を含む。また、I/O部68に入力される各種センサ類の値や出力信号等を含んでもよい。運転情報には、インバータ装置50a、50bが保護停止となる保護機能が生じたときの当該保護機能が生じた原因であるトリップ原因と、保護機能が生じたときのモータポンプ40a、40bの運転状態が含まれる。
【0022】
制御部60の演算部67としては、例えばCPUが使用される。演算部67は、記憶部66に格納されている制御プログラム及び各種データ、並びにI/O部68から入力される信号に基づいて、給水装置10を構成する各機器を制御するための演算等を行う。また、演算部67は、外部通信部73並びにI/O部68等における通信制御や運転パネル70における表示や操作の制御を行う。演算部67における演算結果は、記憶部66に記憶されるとともに、I/O部68、外部通信部73に出力される。
【0023】
I/O部68としては、ポート等が使用される。I/O部68は、図示しない各種センサからの検出信号等を受け入れて演算部67に送る。また、I/O部68は通信部68aを備え、通信部68aと各インバータ装置50a、50bとは、RS422,RS232C,RS485等のシリアル通信やEthernet等のパケット通信等の有線もしくは無線通信により互いに接続されている。インバータ装置50a、50bは、Modbus、またはTCP/IP、又はメーカー特有の通信プロトコルなどのメーカー毎に共通した通信プロトコルを用いて制御部60と通信可能に構成されている。そして、インバータ装置50a、50bと制御部60とは、記憶部66に記憶される各種データを通信にて共有する。
【0024】
運転パネル70は、記憶部66に記憶される各種データを、演算部67を介して表示ならびに変更することができるGUI(Graphical User Interface)である。具体的には、運転パネル70は、装置情報および設定値情報の表示および設定変更、異常情報の表示およびリセット、並びに、運転情報の表示等を行う。本実施形態の運転パネル70は、設定部71と表示部72を備える。なお、制御部60と運転パネル70は別々の基板としてもよい。この場合、制御部60と運転パネル70とは、シリアル通信もしくは信号線等の有線、または無線にて接続されるとよい。制御部60と運転パネル70とを別々の基板とした場合は、運転パネル70を給水装置10から離れた場所(例えば、管理人室等)に設置してもよい。また、運転パネル70は、CPUを備えて該CPUにて表示操作の制御をしたり、制御部60および外部装置との通信制御を行ったりしてもよい。また、運転パネル70は、警告音や操作音を鳴らすためのブザー(不図示)を備えてもよい。
【0025】
運転パネル70の設定部71は、制御部60の情報入力部であって、ユーザの外部操作により給水装置10における自動給水の運転/停止、警報リセット、及び、各種データの設定変更等の各種入力操作を行うために使用される。設定部71は、不図示の操作ボタンまたはタッチパネル等を備えるとよい。設定部71を通じて外部操作によって入力された情報は記憶部66に記憶される。運転パネル70の表示部72は、ユーザインターフェースとして機能し、記憶部66に格納されている各種データを表示できるように構成されている。給水装置10が機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置される場合に備えて、表示部72として、液晶表示およびタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDまたは表示灯、並びに、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器が使用されてもよい。これにより、給水装置10を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。ただし、表示部72としては、電気的ノイズに強い表示器に限定
されず、ドットマトリクス方式による液晶表示器などが使用されてもよい。
【0026】
外部通信部73は、有線通信または無線通信によって外部装置(外部端末)90と通信可能なように構成されている。外部通信部73における無線通信としては、例えば近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術を利用することができる。また、Bluetooth(登録商標)およびWi-Fiなど、任意の方式の無線通信を利用することができる。ここで、NFCは、制御部60と外部装置90とを近づけるだけで通信を完了させることができる点で有利である。また、有線通信としては、例えば制御部60にUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部装置90が接続されることによって通信がなされてもよいし、RS422,RS232C,RS485等のシリアル通信を用いてもよい。
【0027】
なお、上述した運転パネル70の機能は、外部装置90にて全て実施可能としてもよい。こうすれば、給水装置10が操作しにくい場所(例えば、運転パネル70が操作者の足元あたり)に設置されていても給水装置10の状態確認や設定値情報の変更等の操作が容易となる。
【0028】
図2は、図1の給水装置10におけるモータポンプとインバータ装置との構成の一例を示す図である。図2に示すように、給水装置10は、インバータ装置50a、50bのそれぞれに入力する商用電源100からの電力を遮断するスイッチSW1、SW2を備える。スイッチSW1、SW2は、例えば漏電遮断器(ELB:Earth Leakage Circuit Breaker
)であって、漏電検出時、制御部60の出力、および手動によってON状態(通電状態)とOFF状態(電源遮断状態)とが個別に切り替わるとよい。本実施形態では、インバータ装置50a、50bの異常時またはメンテナンス時ではない通常時には、SW1、SW2はON状態とされ、インバータ装置50a、50bに商用電源100からの電力が供給される。そして、インバータ装置50a、50bは、商用電源100からの交流電力を所望の周波数を持つ交流電力に変換してモータポンプ40a、40bの各モータ42に供給する。なお、本実施形態では、1つのポンプに対して1つのインバータ装置がそれぞれ設けられているが、2つ以上のモータポンプに対して1つのインバータ装置が設けられてもよい。また、本実施形態において、インバータ装置50aとインバータ装置50bとは同様の構成であり、以下では重複する説明を省略する。
【0029】
インバータ装置50aは、インバータ回路570と、制御部60と通信可能な通信部561を備えたインバータ制御部560と、を有する。
【0030】
インバータ回路570は、インバータ制御部560からのPWM信号に基づいて交流電圧を生成し、この交流電圧をモータ42に印加するインバータ回路である。インバータ回路570は、コンバータ部570aと、直流電圧平滑回路570bと、インバータ部570cと、ゲートドライバ570dと、を備えている。
【0031】
コンバータ部570aは、商用電源100から供給される3相の交流電圧を直流電圧に変換するために、ダイオードなどにより構成される整流回路を有する。直流電圧平滑回路570bは、コンデンサを備えており、コンバータ部570aにより変換された直流電圧を平滑化する。インバータ部570cは、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワー素子、およびパワー素子に並列に接続されるダイオードを複数有しており、直流電圧平滑回路570bによって平滑化された直流電圧から3相の交流電圧を生成するように構成されている。ゲートドライバ570dは、インバータ制御部560からのPWM信号に基づいて、インバータ部570cの各パワー素子をスイッチング動作させるためのゲートドライブ信号を生成する。
【0032】
インバータ装置50aは、商用電源100から入力される電圧を計測する電圧センサ570eを有する。具体的には、インバータ回路570は、直流電圧平滑回路570bの電圧を計測する電圧センサ570eを有し、電圧センサ570eはインバータ制御部560に接続されているとよい。そして、電圧センサ570eで得られた電圧の測定値は、インバータ制御部560に入力される。以降、インバータ制御部560に入力された当該電圧をインバータ装置50aの入力電圧と称す。
【0033】
インバータ制御部560は、制御用メモリ562と、通信部561と、不図示の演算部とを備える。また、インバータ制御部560は、不図示のI/O部と、不図示の運転パネルと、を更に備えてもよい。インバータ制御部560の演算部としては、例えばCPUが使用される。該演算部は、制御用メモリ562に格納されている制御プログラム及び各種データ、並びに不図示のI/O部から入力される信号に基づいて、インバータ装置50aを構成する各機器を制御するための演算等を行う。インバータ制御部560のI/O部としては、デジタル信号やアナログ信号を入出力するためのポートや各種通信ポート等が使用される。該I/O部は、図示しない各種センサからの検出信号等を受け入れて演算部に送る。制御用メモリ562(記憶部)としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。制御用メモリ562は、演算部で実行するインバータ回路570の制御プログラムと、インバータ装置50aに関する情報を記憶している。
【0034】
制御用メモリ562に記憶された情報は、運転情報、装置情報、制御パラメータ、履歴情報、及びトリップ情報などを含む。制御用メモリ562に記憶される運転情報は、保護停止している旨を含む情報、電流、電圧、加速中、減速中、指令周波数、現在の周波数等の運転状態が含まれる。また、制御用メモリ562に記憶される履歴情報は、トリップの発生における履歴とトリップ原因の履歴が含まれるとよい。また、制御用メモリ562はトリップが発生した時の運転状態を履歴情報として記憶するとよい。
【0035】
インバータ制御部560は、インバータ回路570を制御するための複数の制御パラメータを制御用メモリ562に記憶している。例えば、インバータ制御部560は、PID演算にて用いるゲイン、積分時間、微分時間等を制御パラメータとして有する。また、インバータ制御部560は、スイッチング動作させるためのキャリア周波数を制御パラメータとして有する。インバータ制御部560は、V/f特性を設定可能な制御パラメータを有し、設定されているV/f特性に基づいて、モータ42に出力する電圧と周波数がほぼ正比例関係となる「V/f制御」を行う。ここで、モータ42に出力する周波数が低いときには、電圧降下の影響が大きくなってモータ42から出力されるトルクが低下する。このため、インバータ制御部560は、当該影響を補償するために低周波数領域で出力電圧を上げるトルクブースト電圧制御を行う。インバータ制御部560は、このトルクブースト電圧を設定するための制御パラメータを有する。また、インバータ制御部560は、インバータ装置50aが出力する最高周波数を制御パラメータとして有する。さらに、インバータ制御部560は、加速時間、及び減速時間を制御パラメータとして有する。インバータ制御部560は、モータ42を加速・減速する際には、加速時間・減速時間に基づいてモータ42の周波数の増加、減少を制限する。ここで、加速時間は、例えば、モータ42の周波数が、ゼロから所定の回転速度(例えば、最高出力周波数)に到達する時間とするとよい。減速時間は、例えば、モータ42の周波数が、所定の回転速度(例えば、最高出力周波数)からゼロに到達する時間とするとよい。つまり、加速時間、及び減速時間は、これらの時間が長い程モータ42の加速・減速を抑制することができる制御パラメータである。
【0036】
インバータ制御部560には、更に、インバータ回路570の二次側に配置された電圧センサ571と、電流センサ572とが接続されているとよい。電圧センサ571および
電流センサ572で得られた電圧および電流の測定値は、インバータ制御部560に入力される。インバータ制御部560は、フィードバックされた電流の測定値と指令電流との差分を最小とするためのPWM信号を生成する。なお、インバータ制御部560がインバータ回路570の二次側の電圧と電流を予測できる場合には、電圧センサ571及び電流センサ572が設けられなくてもよい。インバータ制御部560は、電流制御機能を有し、ストール電流値にてモータ42に流れる電流を抑制するとよい。インバータ制御部560は、電流センサ572で得られた電流による電子サーマル機能によってモータ42の過負荷検出を行ってもよい。インバータ制御部560は、電子サーマルの機能の有効無効や動作レベル等を制御パラメータとして有するとよい。
【0037】
なお、図2に示す例では、ポンプ44、モータ42、インバータ回路570に、これらの温度を測定する温度センサ80,81,82がそれぞれ取り付けられている。制御部60もしくはインバータ制御部560は、温度センサ80,81,82のうちの少なくとも1つの温度の測定値が所定の上限値に達したときは、ポンプ44の回転速度を定常運転時よりも低下させる若しくはポンプ44を停止させるように、インバータ回路570に指令を発してもよい。
【0038】
インバータ装置50a,50bは、給水装置における各機器を焼損等の重大事故から保護するため保護停止する各種保護機能を有する。インバータ制御部560による保護停止は、具体的に、モータ42を運転中であれば停止し、停止中であれば停止を継続する。また、保護機能および保護停止が生じた原因であるトリップ原因としては、以下の例が挙げられる。
【0039】
インバータ制御部560は、出力電流が所定の閾値以上になると、保護停止する保護機能を有する。当該保護機能は「過電流トリップ」とも称し、トリップ原因は過電流である。具体的には、インバータ制御部560は、電流センサ572の測定値もしくはインバータ制御部560の出力電流値が所定の電流規定値以上になると、保護停止する。
【0040】
インバータ制御部560は、モータ42の負荷が負荷規定値以上であると判断すると、保護停止する保護機能を有する。以下、当該保護機能を「過負荷トリップ」とも称し、トリップ原因は過負荷である。具体的には、インバータ制御部560は電流センサ572もしくはインバータ制御部560の出力電流値の値を用いた電子サーマル機能もしくは不図示のサーマルによって、過負荷を判断したら保護停止する。
【0041】
インバータ制御部560は、入力電圧が所定の閾値以上となると保護停止する保護機能を有する。以下、当該保護機能を「入力過電圧トリップ」とも称し、トリップ原因は過電圧である。具体的には、インバータ制御部560は電圧センサ570eの電圧が第1電圧規定値以上になると、保護停止する。一実施形態として、第1電圧規定値は、商用電源100が定格電圧よりも10パーセント以上高くなる電圧変動が発生した場合に「入力過電圧トリップ」となる値とするとよい。
【0042】
インバータ制御部560は、入力電圧が所定の閾値以下となると、保護停止する保護機能を有する。以下、当該保護機能を「入力不足電圧トリップ」とも称し、トリップ原因は入力不足電圧である。具体的には、インバータ制御部560は、電圧センサ570eの電圧が第2電圧規定値以下になると保護停止する。なお、第2電圧規定値は第1電圧規定値よりも小さい値とし、一実施形態として、第2電圧規定値は、商用電源100が定格電圧よりも10パーセント以上低下する電圧変動が発生した場合に「入力不足電圧トリップ」となる値とするとよい。
【0043】
さらに、インバータ制御部560は、温度センサ80,81,82の測定値が温度規定
値以上になると、保護停止する保護機能を有する。以下、当該保護機能を「加熱トリップ」とも称し、トリップ原因は加熱である。
【0044】
また、インバータ制御部560は、各種センサとの所定の通信異常、又は制御部60との所定の通信異常を検出したときに、保護停止する保護機能を有する。以下、当該保護機能を「通信エラートリップ」とも称し、トリップ原因は通信異常である。
【0045】
なお、インバータ制御部560は、インバータ装置50a,50bによる保護機能として、上記した保護機能をすべて有するものに限定されず、これらのうち少なくとも一部を有するとよい。また、インバータ制御部560は、保護機能によって保護停止したときには、トリップ原因(例えば、過電流、過負荷、入力過電圧、入力不足電圧、通信エラーなど)と、トリップ時運転状態(周波数指令値、周波数現在値、電流値、入力電圧値、加速中、減速中、低速中、停止中)とを記憶しておくとよい。
【0046】
また、図2に示すように、インバータ制御部560に、更に、ポンプ44の小水量を検出するフロースイッチ24と、ポンプ44の吐出し圧力を測定する圧力センサ21、26と、が接続されてもよい。つまり、フロースイッチ24および圧力センサ21、26による検出値は、制御部60に入力される、および/または、インバータ装置50a、50bのインバータ制御部560に入力されるとよい。フロースイッチ24および圧力センサ21、26による検出値が制御部60またはインバータ制御部560のどちらか一方に入力される場合は、当該検出値は通信によって制御部60とインバータ装置50a、50bとで共有される。
【0047】
本実施形態の制御部60の通信部68aとインバータ装置50a、50bとは通信線68bにて接続されており、一例として、RS485のシリアル通信にてModbusのようなマスタ・スレーブ方式にて通信を行う。また、マスタ・スレーブ方式のマスタ側を制御部60、スレーブ側をインバータ装置50a、50bとし、制御部60から各種問い合わせを送信し、問い合わせを受信したインバータ装置50a、50bは自分に対する問い合わせの場合のみ応答を送信し、それ以外の場合は無応答状態となるとよい。問い合わせ先に該当するインバータ装置50a、50bは、問い合わせの内容に基づいた応答(正常応答または異常応答)を送信する。また、通信部68aはインバータ装置50a、50bの1つを問い合わせ先に指定して、各種記憶部562に記憶されている情報、並びに、周波数値及び電流値等の現在値の読み込みを行うための問い合わせを送信し、問い合わせ先に該当するインバータ装置50a、50bは、正常応答として、記憶部562に記憶する情報や実際の周波数値および電流値等を送信するか、異常応答を送信する。なお、スレーブ側であるインバータ装置50a、50bは、書き込みの問い合わせを受信したときも読み込みの問い合わせを受信したときも、問い合わせ先に該当しない場合、問い合わせに対して無応答となる。制御部60は、上述した異常応答を受信した、又は、インバータ装置50a、50bのいずれもが問い合わせに対して無応答となったと判断した時に、インバータ装置50a、50bとの通信エラーが発生したと判断する。なお、制御部60とインバータ装置50a、50bとは、インバータ装置50a、50bの何れかをマスタ側とし、制御部60をスレーブ側とするマスタ・スレーブ方式にて通信を行うものとしてもよい。この場合、制御部60は、所定時間以上通信が途切れたと判断したら通信エラーが発生したと判断すればよい。なお、通信エラーの判断は、制御部60とインバータ装置50a、50bとの通信が行われている間に常時実施されるとよい。
【0048】
図3(A)(B)は、制御部60とインバータ装置50a、50bとの通信の一例を説明するための図である。本実施形態の制御部60は、インバータ装置50a、50bのそれぞれに、ポンプ44の回転速度などの制御指令、及びインバータ装置50a、50bの情報を読み込むための指令などを順次送信する。一例として、制御部60は、ポンプ44
への制御指令として、回転速度指令を含む制御信号(以下、「第1制御指令」ともいう)、及びポンプ44の運転/停止の指令を含む制御信号(以下、「第2制御指令」ともいう)を送信する。また、制御部60は、インバータ装置50a、50bの情報を読み込むための読込指令を送信する。なお、読込指令には、インバータ装置50a、50bがトリップ(保護停止)したことを示す情報も含まれるとよい。また、制御部60は、インバータ装置50a、50bへ記憶部66に記憶された各種データ(圧力値等の各種センサーの入力値や運転状態等)を書き込むための状態書込指令を送信する。
【0049】
図3(A)に示す例では、インバータ装置50a、50bが共にトリップ(保護停止)を発生していないときの通信順を示す。制御部60は、以下の順番にて問い合わせを行う。(以下、インバータ装置50a並びにモータポンプ40aをNo.1ポンプ、インバータ装置50b並びにモータポンプ40bを以下、No.2ポンプともいう。)
(1)No.1ポンプへの第1制御指令
(2)No.2ポンプへの第1制御指令
(3)No.1ポンプへの第2制御指令
(4)No.2ポンプへの第2制御指令
(5)No.1ポンプへの読込指令
(6)No.2ポンプへの読込指令
(7)No.1ポンプへの状態書込指令
(8)No.2ポンプへの状態書込指令
制御部60は、上述した(1)~(8)の問い合わせの送信を繰り返す。一例として、制御部60からの各指令信号の問い合わせは所定の期間(例えば50msecなど)ごと、または各指令信号の問い合わせによるインバータ装置50a、50bの応答が受信されると、次の指令信号の問い合わせ送信へと切り替えられる。
【0050】
なお、図3(A)に示す例では、まずは、No.2ポンプが先発ポンプとして起動された。そのため、No.1ポンプへの第1制御指令として「0Hz」、第2制御指令として「停止」がこの順番に送信され、これらの制御指令を受信したインバータ装置50aはポンプ44を停止させた状態とする。また、No.2ポンプへの第1制御指令として「FHz」、第2制御指令として「運転」の問い合わせが送信され、この問い合わせを受信したインバータ装置50bはポンプ44をFHzで運転させる。なお、給水装置10が後述する自動給水を行う場合、「FHz」は吐出し圧力に基づいて決定した回転速度である。
【0051】
その後、給水量の増加に伴い、制御部60はt1でNo.1ポンプを追加したため、No.1ポンプへの第1制御指令の問い合わせとして「FHz」、第2制御指令として「運転」が送信され、これらの制御指令を受信したインバータ装置50aはポンプ44をFHzで運転させる。また、No.2ポンプへの第1制御指令として「FHz」、第2制御指令として「運転」の問い合わせが送信され、この問い合わせを受信したインバータ装置50bはポンプ44をFHzで運転させる。
【0052】
図3(B)に示す例では、インバータ装置50aが運転中に保護停止したときの通信順を示す。上述した(5)No.1ポンプへの読込指令に対する応答を受信した制御部60は、当該応答にトリップ信号が含まれていると判断したら、トリップ原因並びにトリップ発生時の運転状態を読み書きするための割込指令(トリップ時割込指令)の問い合わせをインバータ装置50a(No.1ポンプ)に送信する。その後、通常の送信順(6)~に戻る。このような割込通信により、制御部60およびインバータ装置50aまたは/および50bは、保護機能が生じたときに、当該保護機能が生じた原因であるトリップ原因と、保護機能が生じたときの運転状態とを迅速に取得することができる。なお、トリップ時割込指令は、複数の問い合わせで構成されてもよい。
【0053】
なお、制御部60は、第1制御指令、第2制御指令、読込制御指令、及び状態書込指令をNo.1ポンプ及びNo.2ポンプへと順々に送信するものに限定されず、これらの信号に代えて又は加えて他の指令信号が制御部60からインバータ装置50a、50bへと送信されてもよい。また、No.1ポンプ及びNo.2ポンプへのトリップ時割込指令の問い合わせは、トリップ発生の有無に関わらず定期的に送信されてもよいし、(5)No.1ポンプへの読込指令および/または(6)No.2ポンプへの読込指令に含まれてもよい。
【0054】
給水装置10では、制御部60によって以下の自動給水(ポンプ44の自動運転制御)が行われる。ポンプ44が停止している状態で吐出し圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、ポンプ44の始動条件が成立したものと判断して、制御部60はポンプ44のうち少なくとも1台を始動させる。なお、ポンプ44の始動条件は、吐出し圧力が始動圧力以下に至ることに代えて、または加えて予め定められた種々の条件が用いられてもよい。ポンプ44の運転中は、設定された圧力(設定圧)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などのポンプ44の回転速度制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合はポンプ44の回転速度と目標圧力制御カーブとを用いて目標圧(SV)を設定し、目標圧力一定制御の場合は設定圧を目標圧(SV)とする。また、吐出し圧力を現在圧(PV)とする。そして、SVとPVの差(圧力偏差)に基づいて、比例ゲインGp、及び、積分ゲインGiを用いたPI演算、もしくは、比例ゲインGp、積分ゲインGi、及び、微分ゲインGdを用いたPID演算を行い、ポンプ44の目標回転速度(FHz)が設定される。また、制御部60は、本実施形態のようにポンプ44が複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行う。なお、PID演算は、圧力偏差が所定の圧力偏差閾値GAP(例えば、±1%)以内であれば、省略されることで、安定した圧力制御が実現する。
【0055】
ポンプ44にて給水中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ24は、過小水量を検出し、その検出信号を制御部60に送る(小水量状態)。制御部60はこの検出信号を受け、ポンプ44に指令を出して吐出し圧力が所定の停止圧力に達するまでポンプ44の回転速度を増加させ、圧力タンク28に蓄圧した後ポンプ44を停止(小水量停止)させる。ポンプ44が小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出し圧力が始動圧力以下まで低下しポンプ44が始動する(小停再始動)。なお、本実施形態のようにポンプ44が複数台ある場合には、始動するポンプ44をローテーションさせ、ポンプ44内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、過小水量を検知する方法としては、フロースイッチ24を用いずに、モータ42の電流値が所定の閾値以下での軽負荷や吐出し圧力と締切り圧力を比較する等のその他の手段を用いてもよい。
【0056】
次に、インバータ装置50a、50bが保護停止した際の給水装置10の動作について説明する。図4は、給水装置の制御部によって実行されるトリップ時制御処理の一例を示すフローチャートである。図4に示す例において、ポンプが保護停止されたときに、制御部60(制御ユニット)は、保護停止の原因(トリップ原因)と、保護停止時のポンプ装置10の運転状態(トリップ時運転状態)とに基づいて、インバータ装置50a、50bのリトライ運転の許可または禁止を判定する。給水装置10は、リトライ運転の許可にてリトライ運転が実行される。また、制御部60(制御ユニット)は、保護停止の原因であるトリップ原因に基づいてリトライ運転上限回数CNを設定してもよい。この場合、制御部60(制御ユニット)は、リトライ運転回数がリトライ運転上限回数CNに至るまでリトライ運転を実行する。リトライ運転が禁止されると、リトライ運転上限回数CNに関わらず、リトライ運転は実行されずに保護停止が継続される。以下、説明を簡単にするために、インバータ装置50aが保護停止したときについて説明するが、インバータ装置50bが保護停止しても同様である。
【0057】
図4の処理は、インバータ装置50aが保護停止したときに開始される。具体的には、一実施形態として、制御部60がインバータ装置50aから保護停止をした旨を示す情報を受信したときに開始される。一例として、図3(B)を参照すると、t2の直前に送信された制御部60からの(5)No.1ポンプについての読込指令を受信したインバータ装置50aは、保護停止している旨を示す情報である情報信号を制御装置60へ送信し、当該情報信号を受信した制御部60は、図4に示す処理を開始する。
【0058】
トリップ時制御処理が開始されると、制御部60は、まずインバータ装置50aにトリップ原因を取得するため「トリップ時割込指令」を割込送信し、インバータ装置50aのトリップ原因やトリップ時運転状態を取得する(S12)。インバータ装置50aでは、瞬間的に生じた過電流など、きわめて短い時間に生じた原因によって保護機能が働き、保護停止する場合がある。これに対して、上記したように制御部60は定期的にインバータ装置50aの情報を取得するための読込指令をインバータ装置50aに送信している。そのため、インバータ装置50aの保護機能が生じてから制御部60がインバータ装置50aから情報を取得するための問い合わせを送信するまで(例えば数百msec後)に、インバータ装置50aの保護機能は復帰している場合がある。したがって、インバータ装置50aが読込指令を受けて自身の情報を制御部60に送信しても、当該送信した情報に基づいて制御部60がトリップ原因を認識できない場合がある。このため、制御部60は、インバータ装置50aから保護停止している旨を含む情報を受信したら、割込にてトリップ情報を読み込むための問い合わせを送信して当該保護停止が生じた原因をインバータ装置50aから取得するとよい。トリップ情報読込指令の問い合わせを受信したインバータ装置50aは、応答として保護機能が生じた原因(例えば、過電流、過負荷、過電圧、入力不足電圧、通信エラーなど)や運転状態(電流、電圧、加速中、減速中、指令周波数、現在の周波数等)を制御部60に送信する。これにより、制御部60は、インバータ装置50aのトリップ原因やトリップ時運転状態を適正に把握することができる。
【0059】
なお、制御用メモリ562が記憶する履歴情報にトリップ原因が含まれる場合、「トリップ時割込指令」の割込送信にて取得する情報は、当該履歴情報に格納されたトリップ原因でもよい。そうすれば、割込送信のタイミングで保護機能が復帰してしまっている場合でも、トリップ原因を特定できる。
【0060】
続いて、制御部60は、取得したトリップ原因と、保護停止が生じたときの運転状態(以下、「トリップ時運転状態」という)とに基づいて、インバータ装置50aのリトライ運転の許可/禁止を判定する(S14)。ここで、トリップ時運転状態は、トリップ原因毎に予め定められた情報が使用される。
【0061】
なお、制御部60は、インバータ装置50aからトリップ原因と共に保護停止が生じた時刻を読み込み、当該時刻におけるポンプ44の運転状態をトリップ時運転状態としてもよい。制御部60は、インバータ装置50aからトリップ原因と共に保護停止が生じた時刻のインバータ装置50aの運転状態(電流、電圧、加速中、減速中、指令周波数、現在の周波数等)を読み込み、当該読み込み情報をトリップ時運転状態としてもよい。また、制御部60は、インバータ装置50aが保護停止している旨を示す情報を受信したときのポンプ44の運転状態をトリップ時運転状態としてもよい。さらに、制御部60は、運転中のインバータ装置50aが保護停止するとポンプ44の停止により、吐出し圧力が急激に低下するため、吐出し圧力が急激に低下したときのポンプ44の運転状態をトリップ時運転状態としてもよい。制御部60は、インバータ装置50aから受信した保護停止したときの運転状態と、保護停止の情報を受信したときのポンプ44の運転状態との組み合わせにてトリップ時運転状態としてもよい。
【0062】
以下、S14におけるインバータ装置50aのリトライ運転の許可/禁止の判定につい
て説明する。図6に示すように、インバータ装置50aのリトライ運転の許可/禁止の判定は、トリップ原因とトリップ時運転状態とに基づいて判定する。図6はトリップ原因とトリップ時運転状態とリトライ運転の許可/禁止の判定の関係の一例を示す図である。制御部60は、保護停止がポンプの運転状態に起因すると判断した場合はリトライ運転を許可し、インバータ装置50aの電力回路が壊れた虞があると判断した場合にリトライ運転を禁止する。
【0063】
図6の(A)に示すように、トリップ原因はインバータ装置50aの過電流であり、且つ、トリップ時運転状態がポンプ44の加速中であるとき、制御部60はインバータ装置50aのリトライ運転を許可する。これは、ポンプ44の加速中には、減速中並びに定速運転中に比べて電流が大きくなるためである。
【0064】
具体的に、ポンプ44の回転速度の変化が所定の回転速度変化閾値以上であるときに、制御部60は、ポンプ44を加速中としてインバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。より具体的には、ポンプ44の回転速度の単位時間当たりの上昇量が所定の第1閾値より大きいときに、制御部60は、トリップ時運転状態が加速中であると判断する。これは、インバータ装置50aに生じた過電流が、ポンプ44の負荷の急激な増加によるものと考えられることに基づく。ここで、第1閾値は、例えば、インバータ装置50aの制御パラメータである加速時間による単位時間当たりの上昇量の近傍であるとよい。
【0065】
なお、ポンプ44の回転速度は、不図示の速度検出器の測定値などに基づく回転速度を使用してもよいし、制御部60による回転速度指令を使用してもよい。また、ポンプ44の回転速度は、インバータ装置50aより受信した値を用いてもよい。
【0066】
制御部60は、回転速度の変化に代えて、または加えてポンプ44の目標圧力と吐出し圧力との差に基づいて、ポンプ44の加速中を判定してもよい。つまり、制御部60は、ポンプ44が運転中に目標圧力と吐出し圧力との差が所定の圧力閾値以上であるとき(目標圧力>吐出し圧力)に加速中とする。自動給水制御で制御部60は、目標圧力と吐出し圧力との差である圧力偏差に基づいてポンプ44を可変速制御している。そのため、圧力偏差が所定の圧力閾値以上であるとポンプ44の回転速度は加速中となる。
【0067】
なお、制御部60は、通信にて、インバータ装置50aから加速中の信号を受信してもよい。インバータ装置50aは、出力周波数および/または現在の周波数の変化に基づいて加速中、減速中または定速中かの運転状態を判断し記憶し、当該運転状態を(5)No.1ポンプへの読込指令の応答とする。インバータ装置50aは、保護機能が生じたときに記憶した運転状態をトリップ情報読込指令の問い合わせの応答とし、制御部60に送信してもよいし、インバータ装置50aが保護停止している旨を示す情報を受信した前後に受信した加速中か否かの信号をトリップ時運転状態とするとよい。
【0068】
一方、制御部60は、過電流トリップが生じた場合に、保護機能が生じたときのポンプ44の運転状態が減速中または定速中であるとき、リトライ運転を禁止する。具体的に、制御部60は、ポンプ44の回転速度の変化が所定の回転速度変化閾値未満であるとき、又はポンプ44の目標圧力と吐出し圧力との差が所定の圧力閾値未満であるときに、インバータ装置50aのリトライ運転を禁止してもよい。なお、制御部60は、通信にて、インバータ装置50aから減速中または定速中の信号を受信してもよい。
【0069】
また、図6の(B)に示すように、インバータ装置50aが過電流トリップを生じた場合、ポンプ始動完了後の定常運転中であれば、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。これは、ポンプ44の吐出し圧力は回転速度の2乗に比例し、ポンプ44の軸動力は回転速度の3乗に比例するため、ポンプ44の吐出し圧力が大
きいほど、インバータ装置50aに流れる電流が大きくなるためである。ポンプ44が始動してから所定の圧力に達しているとき、及び/又は、ポンプが始動してから所定時間が経過しているときには始動完了後の定常運転となる。制御部60は、始動完了後の定常運転時に過電流トリップを生じたら、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。具体的には、制御部60は、ポンプ44が始動してから吐出し圧力が所定の圧力(一例として、始動圧以上の圧力値)に達した後、及び/又は、ポンプ44が始動してから所定時間(例えば、インバータ装置50aの制御パラメータである加速時間以上の時間)が経過しているときにポンプ44の始動が完了した定常運転の状態(ポンプ始動完了後の定常運転中)と判断する。制御部60は、過電流による保護停止が生じた際に、ポンプ44が始動完了後の定常運転中である場合には、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。これは、ポンプ44の水量は回転速度に比例するため、定常運転中よりも回転速度が低い始動中はポンプ44の負荷による電流は少ない。そのため、始動中に過電流トリップが頻繁に発生する場合は、インバータ回路570が壊れている可能性がある。また、インバータ装置50aの設定値に問題があり、過電流トリップが発生している場合は、設定値の再調整を行う必要がある。一方で、ポンプ44が始動完了後の定常運転中のときには、インバータ装置50aに生じた過電流は、搬送液による負荷に加えてポンプ44の異物の噛み込みや負荷変動など、一時的な原因によるものと考えられることに基づく。一方、制御部60は、過電流トリップが生じた際に、ポンプ44が始動中であるときには、インバータ装置50aのリトライ運転を禁止してもよい。
【0070】
制御部60が始動完了後の定常運転中と判断するための所定の圧力は、一例として、始動圧以上の圧力値が好ましい。小水量停止中は、始動圧以下にてポンプ44が始動するため、始動圧以上に吐出し圧力が復帰するまでの間を始動中とするとよい。また、制御部60が始動完了後の定常運転中と判断するためのポンプ44が始動してから所定時間は、一例として、インバータ装置50aの制御パラメータである加速時間以上の時間である。インバータ装置50aは0Hz~最高周波数にまで加速時間かけて上昇するため、始動時に一旦落ち込んだ圧力を目標圧まで回復するのにかかる時間は加速時間付近であると想定できる。
【0071】
図6の(C)に示すように、インバータ装置50aが過負荷トリップを生じた場合、トリップ時運転状態がポンプ重負荷運転中であるとき、制御部60はリトライ運転を許可する。具体的には、制御部60は、所定の回転速度以上でポンプ44が運転中であるときポンプ重負荷運転中と判断する。インバータ装置50aが過負荷トリップを生じた場合、制御部60が指令するポンプ44の回転速度が所定の回転速度閾値以上であるときには、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。これは、ポンプ44の水量は回転速度に比例するため、インバータ装置50a又はポンプ44に生じた過負荷が、設計時の計画水量以上の大量の水の消費、又は異物の噛み込みなど、ポンプ44を一旦停止することで解消される一時的な外的要因によるものと考えられることに基づく。例えば、回転速度閾値はインバータ装置50aの制御パラメータである最高周波数の90パーセント以上に相当する回転速度であるとよい。一方、制御部60は、過負荷トリップが生じた際に、ポンプ44の回転速度が所定の回転速度閾値未満であるときには、インバータ装置50aのリトライ運転を禁止してもよい。
【0072】
また、制御部60は、所定の回転速度以上でポンプ44が運転中であるとき重負荷運転中と判断するのに加えて、または、代えて、吐出し圧力が所定の閾値以下で、所定の時間ΔT以上の間連続運転した場合に、重負荷状態と判断するとよい。この重負荷状態は、給水先での使用水量が多く、回転速度が最高回転数であるにも関わらず、吐出し圧力が目標圧以下の状態を想定している。一例として、重負荷状態を判断するための吐出し圧力の閾値は目標圧未満(例えば、目標圧の98パーセント以下)の値であって、所定の時間ΔTはインバータ装置50aの制御パラメータである加速時間以上の時間であるとよい。これ
は、ポンプ装置10は、計画水量に対してある程度の余裕をもって選定されることに基づく。使用水量が設計時の計画水量以下の水量であれば、使用水量が変わり圧力変動する過渡期を除いては、吐出し圧力は目標圧力とほぼ同じ値となる。よって、吐出し圧力が目標圧以下で連続運転された重負荷状態で生じた過負荷トリップは、設計時の計画水量以上の大量の水の消費、又は異物の噛み込みなど、ポンプ44を一旦停止することで解消される一時的な外的要因によるものと考えられる。
【0073】
図6の(D)に示すようにインバータ装置50aが入力過電圧トリップを生じた場合、トリップ時運転状態がポンプ減速中であるときに、インバータ装置50aはリトライ運転を許可する。具体的には、ポンプ44の回転速度の減少が所定の回転速度減少閾値以上であるときには減速中として、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。これは、インバータ装置50aに生じた過電圧の原因が、ポンプ44の減速時における一時的な回生によるものと考えられることに基づく。特に、運転中のポンプ44が小水量停止やポンプ解列等で停止するときには、制御部60から「停止指令」を受信したインバータ装置50aは、減速時間に基づいて、モータ42の周波数を0Hzまで減速していくので、一時的な回生が発生しやすい。そのため、制御部60がインバータ装置50aへ「停止」を指令した後の減速中に入力過電圧トリップが生じた場合、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。一方、制御部60は、入力過電圧トリップが生じた際に、ポンプ44の回転速度の減少が所定の回転速度減少閾値未満であるときには、インバータ装置50aの入力電圧またはインバータ回路570に何らかの不具合が発生していると考えられるため、インバータ装置50aのリトライ運転を禁止する。なお、制御部60は、インバータ装置50aから受信した減速中の信号にてリトライを判断してもよい。
【0074】
図6の(E)に示すように、インバータ装置50aが入力不足電圧トリップを生じた場合、トリップ時運転状態がポンプ軽負荷状態であれば、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可する。具体的には、ポンプ軽負荷状態は、ポンプ44の停止中または、ポンプ44の回転速度が軽負荷回転閾値以下である。また、入力不足電圧が所定時間以内に解消されるときには、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。これは、インバータ装置50aに生じた入力不足電圧が、商用電源100の瞬間的な停電(瞬停)などの一時的な外的要因によるものと考えられることに基づく。なお、軽負荷回転閾値は一例として、自動給水制御におけるポンプ44の最低回転数と同じとするとよい。
【0075】
また、ポンプ軽負荷状態とは、ポンプ44における給水量が少ない(たとえば、0.03m/min以下)時であって、例えば、フロースイッチ24、モータ42の電流値と閾値の比較、吐出し圧力と締切り圧力の比較等の検出手段で小水量を検出したらポンプ軽負荷状態とするとよい。
【0076】
図6の(F)に示すように、インバータ装置50aが入力不足電圧トリップを生じた場合、トリップ時運転状態は圧力偏差が所定の第1圧力偏差閾値以内である状態であれば、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可する。具体的には、前記圧力偏差が所定の第1圧力偏差閾値以内である状態は、ポンプ始動完了後の定常運転中であり、且つ圧力変動が少ない安定した状態で運転されている。そのため、インバータ装置50aに生じた入力不足電圧が、瞬間的な停電(瞬停)などの一時的な外的要因によるものと考えられることに基づく。なお、第1圧力偏差閾値は、PID演算における圧力偏差不感帯GAPと同等の値とするとよい。
【0077】
図6の(G)に示すように、インバータ装置50aが入力不足電圧トリップを生じた場合、トリップ時運転状態は圧力偏差が所定の第2圧力偏差閾値以上である状態であれば、
制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可する。具体的には、前記圧力偏差が所定の第2圧力偏差閾値以上である状態が継続している状態は、ポンプ44が過大水量により吐出し圧力が不足した状態で運転されていると想定される。このため、インバータ装置50aに生じた入力不足電圧が、過大流量によって電源負荷が増加したことによる瞬間的な電圧低下などの一時的な外的要因によるものと考えられることに基づく。第2圧力偏差閾値は、第1圧力偏差閾値より大きな値とする。
【0078】
また、図6の(H)に示すように、入力不足電圧トリップが生じた後、当該入力不足電圧トリップが所定時間(例えば、数ミリ秒間から数秒間)以内に解消されるときには、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。商用電源100の瞬間的な停電(瞬停)などの一時的な外的要因によるものと考えられることに基づく。一方、制御部60は、入力不足電圧による保護停止が生じた際に、入力不足電圧が所定時間経過しても解消されない場合には、外的要因による入力不足電圧トリップではないと判断してインバータ装置50aのリトライ運転を禁止してもよい。
【0079】
また、図6の(I)に示すように、(A)~(H)に示すトリップ原因以外の保護停止が発生した場合は、所定のリトライ回数にてリトライ運転を実施するとよい。
【0080】
このように、S14の処理により、本実施形態の給水装置10では、インバータ装置50aが保護機能によって保護停止したときに、トリップ原因と、トリップ時運転状態とに基づいて、インバータ装置50aのリトライ運転の許可/禁止を適正に判定することで、重大事故に発展する虞がある状態でのリトライ動作を避け、適切な状態での給水が継続できる。なお、制御部60は、上記した条件以外で、トリップ原因と、トリップ時運転状態とに基づいて、インバータ装置50aのリトライ運転の許可/禁止を判定してもよい。また、制御部60は、例えば通信エラーによる保護停止など、所定のトリップ原因については、トリップ時運転状態によらずインバータ装置50aのリトライ運転を許可してもよい。また、リトライ運転の許可/禁止を判定するのに用いた閾値は、外部入力によって設定可能としてもよい。
【0081】
図4の説明に戻り、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を禁止すると判断したときには(S16:No)、インバータ装置50aのリトライ運転を行うことなく運転不可として(S30)、本処理を終了する。このように、インバータ装置50aのリトライ運転を行うことなくインバータ装置50aを運転不可とすることにより、インバータ装置50aまたはポンプ44等に不具合が生じており、焼損等の重大事故に発展する虞がある状態でリトライ運転が行われることを抑制することができる。
【0082】
なお、本実施形態の給水装置10のように複数台のポンプ44が設けられている場合には、運転不可とされたポンプ44の他のポンプ44を用いて給水を継続するとよい。インバータ装置50aを運転不可とする場合、対応したポンプ44を運転しないものとしてもよい。また、特にモータ42が誘導電動機である場合などには商用電源100をモータ42に直接つなぐことにより、ポンプ44を固定速度で運転/停止させるものとしてもよい。また、制御部60は、インバータ装置50aを運転不可とする場合、発報するとよい。制御部60による発報としては、一例として、表示部72による表示、図示しないブザーによる警報の発報、または、外部通信部73もしくはI/O部68から外部へ所定の信号を送信することにより行われるものとすればよい。
【0083】
制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を許可すると判断したときには(S16:Yes)、トリップ原因に基づいてインバータ装置50aのリトライ運転上限回数CN(以下、単に「上限回数CN」ともいう)を設定する(S18)。
【0084】
以下、上限回数CNの設定について説明する。図7に示すように、リトライ上限回数CNは、トリップ原因に基づいて決定される。また、リトライ上限回数CNは、トリップ原因に加えて、S26で実行するリトライ時の動作に基づいて決定されてもよい。
【0085】
図7(A)(B)に示すように、制御部60は、トリップ原因が過電流の場合、S22で実行するリトライ時の動作によって、CN1またはCN2を上限回数CNとして設定する。なお、本実施形態では、CN1とCN2は同じ値(例えば、値CN1=値CN2=値4)とする。一実施形態としてCN1とCN2は異なる値でもよいし、更に異なるリトライ時の動作がある場合には、リトライ時の動作毎に上限回数CNを定めてもよい。
【0086】
図7(C)に示すように、トリップ原因が過負荷の場合、制御部60は、CN3(例えば値CN3=値4)を上限回数CNとして設定する。本実施形態では、トリップ原因が過負荷の場合、S22で実行するリトライ時の動作はひとつであるが、当該リトライ時の動作が複数ある場合には、リトライ時の動作毎に上限回数CNを定めてもよい。
【0087】
図7(D)に示すように、トリップ原因が入力過電圧の場合、制御部60は、CN4(例えば値CN4=値6)を上限回数CNとして設定する。本実施形態では、トリップ原因が入力過電圧の場合、S22で実行するリトライ時の動作はひとつであるが、当該リトライ時の動作が複数ある場合には、リトライ時の動作毎に上限回数CNを定めてもよい。
【0088】
図7(E)(F)に示すように、トリップ原因が入力不足電圧の場合、制御部60は、S22で実行するリトライ時の動作によって、CN5またはCN6を上限回数CNとして設定する。なお、本実施形態では、CN5,CN6は同じ値(値CN5=値CN6=値6)とする。一実施形態としてCN5とCN6は異なる値でもよいし、更にリトライ時の動作がある場合には、リトライ時の動作毎に上限回数CNを定めてもよい。
【0089】
図7(G)に示すように、インバータ装置50aが通信エラーによる保護停止など、(A)~(F)の他のトリップ原因によって保護停止を生じた場合、制御部60は、値CN0(例えば値CN0=値5)を上限回数CNとして設定する。
【0090】
なお、本実施形態で制御ユニット60がS14にてリトライ禁止を判断した場合、S16がNoとなり、リトライ運転を実行しない。一実施形態では、S14にてリトライ禁止の場合に、リトライ許可時の上限回数CNよりも小さい値Cnを上限回数としてリトライ運転を実行するとよい。その場合、図4のS16の判断は省略される。換言すれば、一実施形態では、リトライ運転が許可されたインバータ装置50a、50bに接続されたモータポンプ40a、40bに対してはCN(第1上限回数)をリトライ運転上限回数として設定し、リトライ運転が禁止されたインバータ装置50a、50bに接続されたモータポンプ40a、40bに対してはCNよりも少ないCn(第2上限回数)をリトライ運転上限回数として設定するとよい。
【0091】
ここで、図7に示すように、トリップ原因毎に重大事故につながる虞があると判断される順でグループ1~4に分け、各グループごとの上限回数が設定されるとよい。このグループ分けは、一時的な要因にて保護停止したと判断できるトリップ原因毎に、グループを分けてもよい。本実施形態では、過電流・過負荷をグループ1とし、リトライ上限回数を、例えば値4とする。過電圧・入力不足電圧をグループ3とし、リトライ上限回数を、例えば値6とする。それ以外のトリップ原因についてはグループ2とし、リトライ上限回数を、例えば値5とする。このように、各グループごとに上限回数が設定されることで、設定変更が容易となる。また、同一グループでは、共通のリトライ運転回数Crが用いられてもよい。
【0092】
ここで、制御部60は、過電流または過負荷による保護停止が生じているときには、過電圧または不足電圧(入力電圧異常)による保護停止が生じているときに比して、上限回数CNとして小さい値を設定することが好ましい。これは、過電流または過負荷は温度上昇を伴い、入力電圧異常に比して、インバータ装置50a又はモータ42の焼損など重大事故につながる虞があることに基づく。
【0093】
このように、制御部60は、インバータ装置50aが保護停止した際に、トリップ原因に加えてトリップ時運転状態に基づいてリトライ運転上限回数CNを設定するとよい。制御部60は、トリップ原因とトリップ時運転状態とに基づいて、インバータ装置50aの保護停止が比較的軽度な要因によると想定される場合や、トリップがポンプ44の一時的な運転状態や外的要因によると想定される場合などには、上限回数CNとして大きい値を設定するとよい。
【0094】
このように、S18の処理により、本実施形態の給水装置10では、インバータ装置50aが保護停止したときに、トリップ原因に基づいてリトライ運転上限回数CNを適正に設定することができる。なお、制御部60は、上記した条件以外の条件によっても、トリップ原因に基づいて上限回数CNを設定してもよい。なお、上限回数CNに設定する値CN1~CN5は、外部入力によって設定可能としてもよい。これにより、ポンプ44の容量や給水装置10の使用環境等によって上限回数CNを変更することができる。
【0095】
次に、制御部60は、リトライ運転回数Crを上限回数CNと比較する(S20)。ここで、リトライ運転回数Crは、リトライ運転が行われるごとに値1ずつ加算されるカウンタであり、初期値として給水装置10の電源投入時に値0にリセットされているものとする。また、リトライ運転回数Crはトリップ原因およびトリップ時運転状態毎に複数個設けられるとよい。具体的には、図7に示すように、制御部60は、トリップ原因およびトリップ時運転状態毎にCr0~Cr6の複数のリトライ回数カウンタを有する。これにより、トリップ原因が異なる保護停止が連続して発生した場合にも適切なリトライ運転ができる。
【0096】
リトライ運転回数Crが上限回数CN未満であるときには(S20:Yes)、制御部60は、インバータ装置50aがリトライ運転可能な状態となるまで待つ(S22)。ここで、インバータ装置50aがリトライ運転可能な状態は、例えば前回にインバータ装置50aが保護停止してから所定期間が経過したことと、ポンプ44の自動給水制御における始動条件(例えば、小停再始動の条件やポンプ追加の条件等)を含む予め定められた条件によるものとするとよい。
【0097】
制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転が可能な状態であると判断すると(S22:Yes)、リトライ運転回数Crを値1だけカウントアップして(S24)、インバータ装置50aのリトライ運転を実行する(S26)。ここで、S24にて制御部60は、トリップ原因およびトリップ時運転状態に該当するリトライ運転回数Cr0~Cr6をカウントする。なお、本実施形態でリトライ運転回数Crはトリップ原因とトリップ時運転状態毎に複数個設けられる。一実施形態でリトライ運転回数Crはトリップ原因またはトリップ時運転状態毎に複数個設けられてもよいし、トリップ原因またはトリップ時運転状態に関わらず、ひとつのみ設けられてもよい。複数のリトライ回数カウンタを有することにより、トリップ原因およびトリップ時運転状態に適したリトライ回数にてリトライ運転を行うことができる。
【0098】
S26のリトライ運転時に、制御部60は、インバータ装置50aにトリップ解除指令を送信した後、ポンプ44を運転すべく運転指令を送信する。ここで、図7の(A)~(G)の「リトライ時の動作」に示すように、リトライ運転時は通常時(リトライ運転回数
Crが値0のとき)とは異なるリトライ運転用の制御パラメータを用いるとよい。これにより、ポンプの運転状態に起因する保護機能を回避してリトライ運転を適切に行うことができる。
【0099】
図7の(A)に示すように、トリップ原因が過電流の場合、制御部60は通常時よりも出力周波数の上限値を制限する。これにより、ポンプ44の流量を制限でき、搬送液による負荷を減らすことができる。
【0100】
図7の(B)に示すように、トリップ原因が過電流の場合、通常時よりも長い加速時間をリトライ運転用の制御パラメータとして設定するとよい。これにより、ポンプ44の加速が緩やかになり、電流を制限することができる。
【0101】
図7の(C)に示すように、トリップ原因が過負荷の場合、制御部60は通常時よりも出力周波数の上限値を制限する。これにより、ポンプ44の流量を制限でき、搬送液による負荷を減らすことができる。
【0102】
図7の(D)に示すように、トリップ原因が入力過電圧の場合、制御部60は、通常時によりも長い減速時間をリトライ運転用の制御パラメータとして設定するとよい。これにより、ポンプ44の減速が緩やかになり、起電圧を制限することができる。
【0103】
図7の(E)に示すように、トリップ原因が入力不足電圧の場合、制御部60は、他の保護停止よりも長い時間保護停止させる。電圧平滑回路570bは経年劣化等で充電可能な容量が減少する。保護停止時間を長くすることで直流電圧平滑回路570bの充電容量不足による入力不足電圧トリップが発生するのを抑制できる。
【0104】
図7の(F)に示すように、トリップ原因が入力不足電圧の場合、制御部60は通常時よりも出力周波数の上限値を制限する。これにより、モータ42に流す電流を制限でき、経年劣化等による直流電圧平滑回路570bの容量不足による入力不足電圧トリップが発生するのを抑制できる。
【0105】
さらに、制御部60は、トリップ原因に加えてトリップ時運転状態に基づいてリトライ運転用の制御パラメータを設定変更してもよい。具体的には、一例として、トリップ原因が過電流且つトリップ時運転状態がポンプ加速中(図6の(A))であれば、加速時間を長くする(図7の(B))。トリップ原因が過電流且つトリップ時運転状態が定常運転中(図6の(B))であれば、出力周波数の上限値を制限する(図7の(A))。トリップ原因が過負荷且つトリップ時運転状態が重負荷運転中(図6の(C))であれば、出力周波数の上限値を制限する(図7の(C))。このように、制御部60はトリップ原因とトリップ時運転状態とに基づいて制御パラメータを設定変更するとよい。
【0106】
図4のS26のリトライ運転を実行した後、制御部60は、インバータ装置50aが復帰したか否かの判断を行う。制御部60は、インバータ装置50aが復帰したと判断したときには(S28:Yes)、本処理を終了する。ここで、インバータ装置50aが復帰したか否かの判断は、例えばインバータ装置50aのリトライ運転を実行してから所定期間にわたって保護停止することなく運転継続するなど、予め定められた条件に基づいてなされればよい。
【0107】
なお、図8に示すように、インバータ装置50aが復帰したのち、リトライ運転回数Crを値0にクリアするか否かは、トリップ原因によって異なる基準に基づいて判断されてもよい。一例として、過電流トリップまたは過負荷トリップによる保護停止が生じた際には、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を実行してから所定期間にわた
って異常が生じていない場合に、インバータ装置50aの復帰が完了しリトライ運転回数Crをクリアするとよい。また、入力過電圧トリップまたは入力不足電圧トリップによる保護停止が生じた際には、制御部60は、インバータ装置50aのリトライ運転を実行してから次にポンプ44が停止するまで異常が生じていない場合に、インバータ装置50aの復帰が完了しリトライ運転回数Crをクリアするとよい。さらに、通信エラーによる保護停止が生じた際には、制御部60は、一定期間通信エラーが生じることなく正常に通信がなされるときに、インバータ装置50aの復帰が完了しリトライ運転回数Crをクリアするとよい。
【0108】
本実施形態では、トリップ原因毎に重大事故につながる虞があると判断される順に定めたグループ毎にリトライ運転回数Crのクリア条件を設けている。一実施形態では、トリップ原因毎にリトライ運転回数Crのクリア条件を設けてもよいし、リトライ時の動作毎にリトライ運転回数Crのクリア条件を設けてもよい。このように、重大事故につながる虞があるトリップのクリア条件を他のトリップのクリア条件に比べてより厳しくすることでリトライ運転を適切に行うことができる。
【0109】
図4のS28にて、インバータ装置50aのリトライ運転時に再びインバータ装置50aが保護停止するなどインバータ装置50aが復帰したと判断されない場合には(S28:No)、制御部60は、再びS20の処理に戻る。そして、複数回にわたってインバータ装置50aのリトライ運転を実行してリトライ運転回数Crが上限回数CN以上に至ったときには(S20:No)、制御部60は、インバータ装置50aを運転不可(運転禁止)として(S30)、本処理を終了する。上記したように、本実施形態の給水装置10では、トリップ原因に基づいてリトライ運転上限回数CNを設定しているため、インバータ装置50aのリトライ運転を適性に実行することができる。
【0110】
なお、S22の処理では、リトライ運転回数Crが大きいほど、インバータ装置50aのリトライ運転が可能な状態であるか否かの判定が厳しくなされるとよい。例えば、リトライ運転回数Crが第1回数のときには、直前のインバータ装置50aの停止から第1時間が経過した後にインバータ装置50aのリトライ運転が実行されるものとする。一方、リトライ運転回数Crが第1回数より大きい第2回数のときには、直前のインバータ装置50aの停止から第1時間より長い第2時間が経過した後にインバータ装置50aのリトライ運転が実行されるものとするとよい。これは、インバータ装置50aのリトライ運転回数Crが大きいほど、インバータ装置50a又はモータ42等に異常が生じている可能性が高いと考えられることに基づく。
【0111】
また、図7のリトライ時の動作に示すように、インバータ装置50aは、リトライ運転が実行される際に、通常時(リトライ運転回数Crが値0のとき)とは異なるリトライ運転用の制御パラメータを用いるとよい。このリトライ運転用の制御パラメータは、インバータ装置50aに予め定められたリトライ運転用の制御パラメータが用いられてもよいし、S26のリトライ運転時に制御部60によってインバータ装置50aに設定変更されてもよい。ここで、制御部60がリトライ運転時にインバータ装置50aの制御パラメータを設定変更する場合、制御部60から設定変更の問い合わせを受信したインバータ装置50aは、リトライ運転用の制御パラメータを揮発性メモリにのみ記憶するとよい。こうすれば、インバータ装置50aにおける不揮発性メモリへの書き込み回数の増加を抑制できる。また、インバータ装置50aは、リトライ中に停電し、復電した際には(S28)、不揮発性メモリに記憶された通常時用の制御パラメータを使用して、その後の制御を実行するとよい。
【0112】
また、制御部60は、リトライ運転回数Crが大きいほど、インバータ装置50aのリトライが通常時(リトライ運転回数Crが値0のとき)よりも緩やかに実行されるように
リトライ運転用の制御パラメータを設定してもよい。例えば、制御部60は、リトライ運転回数Crが第1回数のときには加速時間を第1加速時間に設定する。一方、制御部60は、リトライ運転回数Crが第1回数より大きい第2回数のときには加速時間を第1加速時間よりも長い第2加速時間に設定する。これは、インバータ装置50aのリトライ運転回数Crが大きいほど、インバータ装置50aの復帰が困難な状態にあると想定されることに基づく。
【0113】
さらに、制御部60は、リトライ運転回数Crが、上限回数CNよりも小さい所定の発報回数に至ったときには、その旨を発報するとよい。制御部60による発報としては、一例として、表示部72による表示、図示しないブザーによる警報の発報、または、外部通信部73もしくはI/O部68から外部へ所定の信号を送信することにより行われるものとすればよい。また、リトライ運転回数Crが発報回数に至ったときには、制御部60は、その旨を履歴情報として記憶するとよい。こうした制御により、その後にインバータ装置50aが復帰した場合においても、インバータ装置50aの交換またはメンテナンスをユーザに促すことができる。
【0114】
上記した実施形態では、インバータ装置50aのリトライ運転の許可/禁止またはリトライ運転上限回数CNが制御部60によって設定されるものとした。しかし、こうした例に限定されず、リトライ運転の許可/禁止とリトライ運転上限回数CNとの少なくとも一方は、インバータ装置50aのインバータ制御部560によって設定されるものとしてもよい。
【0115】
図5は、インバータ制御部560によって実行されるインバータトリップ時制御処理の一例を示すフローチャートである。図5に示す例でポンプ装置10は、可変速制御器であるインバータ装置50a、50bが保護停止したときに、制御部60に代えてインバータ制御部560(制御ユニット)が、保護停止の原因であるトリップ原因と、保護停止時のポンプ装置10の運転状態とに基づいて、インバータ装置50a、50bのリトライ運転の許可または禁止を判定する。また、給水装置10は、インバータ装置50a、50bが保護停止した後、リトライ運転回数がリトライ運転上限回数CNに至るまでリトライ運転が実行されるとともに、インバータ制御部560(制御ユニット)は、保護停止の原因であるトリップ原因に基づいてリトライ運転上限回数CNを設定する。
【0116】
図5の処理は、インバータ装置50aが、保護停止したときに開始される。本処理が開始されると、インバータ制御部560は、まずトリップ時運転状態を取得する(S42)。一例として、インバータ制御部560は、制御部60との通信を通じてトリップ時運転状態を取得するとよい。また、図2に示すように、インバータ制御部560は、ポンプ44の運転状態を測定するセンサ(図2に示す例では、フロースイッチ24及び圧力センサ21、26)から測定値を直接読み込み、トリップ時運転状態を取得してもよい。
【0117】
続いて、インバータ制御部560は、トリップ原因とトリップ時運転状態とに基づいて自身のリトライ運転の許可/禁止を判定する(S44)。また、インバータ制御部560は、トリップ原因に基づいてリトライ運転上限回数CNを設定する(S46)。S44、S46の処理は、制御部60による図3のS14、S18の処理と同様に行われればよい。そして、インバータ制御部560は、リトライ運転の許可/禁止の判定、及びリトライ運転上限回数CNを給水装置10の制御部60へ送信して(S48)、本処理を終了する。このように、インバータ制御部560によってリトライ運転の許可/禁止の判定、及びリトライ運転上限回数CNの設定がなされることによっても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0118】
このように、制御部60および/またはインバータ制御部560は、可変速制御器であ
るインバータ装置50a,50bによって少なくとも1台のポンプ44を可変速制御する給水装置10の制御ユニットであって、可変速制御器が保護停止されたときに、制御ユニットは、保護停止の原因であるトリップ原因(例えば、過電流、過負荷、入力過電圧、入力不足電圧等)と、保護停止時のトリップ時運転状態(ポンプ44の加速中、定常運転中、重負荷運転中、減速中、軽負荷運転中、吐出し圧力の圧力偏差、トリップ時間)とに基づいて、可変速制御器のリトライ運転の許可または禁止を判定する。これにより、復帰可能な状態の給水装置10はリトライ運転が実行され、焼損や重大事故に発展する虞がある状態の給水装置10はリトライ運転を避け確実に停止させることができる。なお、制御ユニットは、トリップ原因に依らずに所定回数リトライ運転を行った後に、トリップ原因とトリップ時運転状態とに基づいて、リトライ運転の許可または禁止を判定してもよい。
【0119】
また、給水装置10は、可変速制御器が保護停止したときリトライ運転の回数がリトライ運転上限回数に至るまでリトライ運転し、制御ユニットは前記保護停止の原因であるトリップ原因に基づいて前記リトライ運転上限回数を設定する。そして、制御ユニットは、トリップ原因および/または保護停止時のトリップ時運転状態毎に、リトライ運転の回数をカウントする。これにより、復帰可能な状態の給水装置10に比べて焼損や重大事故に発展する虞がある状態の給水装置10はリトライ運転の回数が制限され、適切なリトライ運転が実行できる。
【0120】
なお、上述した実施例では、制御部60とインバータ制御部560は通信にて各種データを共有したが、制御部60とインバータ制御部66はアナログ信号とデジタル信号にて各種データを共有してもよい。また、上述した実施形態ではインバータ装置50a,50bが各種保護機能を有したが、制御部60が上述した各種保護機能を有してもよい。更に、制御部60とインバータ制御部560は同一基板上に配置されてもよいし、1つのCPUにて制御部60とインバータ制御部560が構成されてもよい。その場合、当該1つのCPUを制御ユニットと称す。
【0121】
以上説明した実施形態は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、少なくとも1台の可変速制御器によって少なくとも1台の電動機駆動のポンプを可変速制御するポンプ装置の制御ユニットが提案される。前記ポンプ装置では、前記可変速制御器が保護停止したとき、リトライ運転の回数がリトライ運転上限回数に至るまで、前記可変速制御器がリトライ運転され、制御ユニットは、前記保護停止の原因であるトリップ原因および/または前記保護停止時の前記ポンプの運転状態であるトリップ時運転状態に基づいて前記リトライ運転上限回数を設定する。かかる制御ユニットによれば、可変速制御器が保護停止したときに、可変速制御器のリトライ回数を適切に設定することができる。
【0122】
[形態2]形態2によれば、形態1の制御ユニットにおいて、前記制御ユニットは、前記トリップ原因および/または前記トリップ時運転状態毎に、前記リトライ運転の回数をカウントする。形態2によれば、トリップ原因と、トリップ時運転状態とに基づいて、より適正にリトライ運転を行うことができる。
【0123】
[形態3]形態3によれば、形態1または2の制御ユニットにおいて、前記トリップ原因、前記トリップ時運転状態、前記リトライ運転時の動作の何れかに基づいて、グループ分けし、前記グループ毎にリトライ運転上限回数を有する。
【0124】
[形態4]形態4によれば、形態1から3の制御ユニットにおいて、前記トリップ原因が過電流または過負荷であるときには、前記トリップ原因が前記可変速制御器の入力電圧異常であるときに比して、前記リトライ運転上限回数を少ない回数に設定する。これは、可
変速制御器に過電流または過負荷が生じた場合、可変速制御器または電動機等の損傷の原因となる可能性が高いことに基づく。
【0125】
[形態5]形態5によれば、形態1から4の制御ユニットにおいて、前記ポンプ装置は、前記ポンプを可変速制御するための制御パラメータを有し、前記リトライ運転時の動作で前記制御ユニットは、前記トリップ原因および/または前記トリップ時運転状態に基づいて前記制御パラメータを変更する。形態5によれば、トリップ原因および/またはトリップ時運転状態によって制御パラメータが変更されるので、可変速制御器のリトライ運転をより適性に行うことができる。
【0126】
[形態6]形態6によれば、形態1から5の制御ユニットにおいて前記制御ユニットは、前記リトライ運転回数が第1回数のときには直前の保護停止から第1時間が経過した後に前記可変速制御器の前記リトライ運転を実行し、前記リトライ運転回数が前記第1回数よりも大きい第2回数のときには直前の前記保護停止から前記第1時間より長い第2時間が経過した後に前記可変速制御器の前記リトライ運転を実行する。これは、リトライ運転回数が大きいほど、可変速制御器や電動機の異常が復帰するのに時間がかかる可能性が高いと考えられることに基づく。
【0127】
[形態7]形態7によれば、形態1から6の制御ユニットにおいて、前記ポンプ装置は、前記ポンプを可変速制御するのに用いる制御パラメータを有し、前記制御パラメータには、加速時間が含まれ、前記リトライ運転時の動作で前記制御ユニットは、前記リトライ運転回数が第1回数のときには前記加速時間を第1加速時間に設定し、前記リトライ運転回数が前記第1回数よりも大きい第2回数のときには前記加速時間を前記第1加速時間よりも長い第2加速時間に設定する。これは、可変速制御器が時間をかけて起動する方が異常から復帰できる可能性が高いと考えられることに基づく。
【0128】
[形態8]形態8によれば、形態1から7の制御ユニットにおいて、前記制御ユニットは、前記可変速制御器のリトライ運転回数が前記リトライ運転上限回数よりも小さい発報回数に至ったときに発報する。形態8によれば、可変速制御器のリトライ運転回数が発報回数に至ったことをユーザに発報することで、可変速制御器等のメンテナンスまたは交換を促すことができる。
【0129】
[形態9]形態9によれば、形態1から8の制御ユニットにおいて、前記制御ユニットは、前記可変速制御器と通信する制御部を含み、前記制御部は、前記可変速制御器から前記保護停止したことを含む情報を受信したときには、前記保護機能が生じた原因を取得するための指令を前記可変速制御機に割込送信する。形態9によれば、制御部が、可変速制御器の保護機能が生じた原因を適正に取得することができる。
【0130】
[形態10]形態10によれば、形態1から9の制御ユニットにおいて、前記制御ユニットは、前記可変速制御器が保護停止されたときに、前記トリップ原因と、前記保護停止時のトリップ時運転状態とに基づいて、前記可変速制御器のリトライ運転の許可または禁止を判定する。形態10によれば、制御ユニットによれば、可変速制御器が保護機能によって停止したときに、トリップ原因と、トリップ時運転状態とに基づいて、可変速制御器のリトライ運転を適切に行うことができる。
【0131】
[形態11]形態11によれば、形態1から10の何れかの制御ユニットと、前記少なくとも1台の可変速制御器によって電動機駆動されるポンプと、を備え、前記リトライ運転が許可された前記可変速制御器に接続された前記電動機駆動のポンプは所定の自動給水を継続し、前記リトライ運転が禁止された前記可変速制御器に接続された前記電動機駆動の
ポンプは保護停止する、ポンプ装置が提案される。形態11のポンプ装置によれば、上記した制御ユニットと同様の効果を奏することができる。
【0132】
[形態12]形態12によれば、形態1から11の何れかの制御ユニットが備えられたポンプ装置の可変速制御器であって、前記可変速制御器は、前記ポンプを可変速制御するための制御パラメータを記憶する揮発性メモリと不揮発性メモリとを有し、前記可変速制御器は、前記リトライ運転時に前記制御ユニットから設定変更された前記制御パラメータを前記揮発性メモリにのみ記憶する。形態12によれば、リトライ運転用の設定値が揮発性メモリにのみ記憶されるので、不揮発性メモリの書き込み回数の増加を抑制することができる。
【0133】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0134】
10…ポンプ装置
40a、40b…モータポンプ
42…モータ(電動機)
44…ポンプ
50a、50b…インバータ装置
60…制御部
66…記憶部
67…演算部
68…I/O部
68a…通信部
70…運転パネル
71…設定部
72…表示部
73…外部通信部
図1
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図8