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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20230925BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
G01D5/245 E
G01D5/245 110P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020003469
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110670
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】川床 修
(72)【発明者】
【氏名】小林 博和
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-058766(JP,A)
【文献】特開2006-322927(JP,A)
【文献】特開2000-352523(JP,A)
【文献】特開2019-071712(JP,A)
【文献】特表2004-533000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸において測定方向に回転するロータと、前記ロータから回転角度を検出する検出信号を受信するステータと、前記ステータが受信した前記検出信号に基づき回転角度を演算する演算手段と、を備えるロータリエンコーダであって、
前記ロータは、
前記回転軸を中心として複数の単位パターンを測定方向に沿って配置する第1ロータパターンと、
前記回転軸を中心として前記第1ロータパターンにおける複数の単位パターンよりも少ない単位パターンを測定方向に沿って配置する第2ロータパターンと、を備え、
前記第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および前記第2ロータパターンの複数の単位パターンの数は、互いの最大公約数が2以上となるように設けられ、
前記演算手段は、前記ステータにより前記第1ロータパターンと前記第2ロータパターンのそれぞれから検出された検出信号に基づいて前記ロータの回転角度を演算することを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載されたロータリエンコーダにおいて、
前記第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および前記第2ロータパターンの複数の単位パターンの数は、偶数となるように設けられていることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたロータリエンコーダにおいて、
前記第1ロータパターンおよび前記第2ロータパターンは、それぞれ前記回転軸を中心とする連続した磁束結合巻線であり、
前記ステータは、
前記第1ロータパターンおよび前記第2ロータパターンと磁束結合可能に配置される送信巻線群と、
前記第1ロータパターンおよび前記第2ロータパターンと磁束結合可能に配置される受信巻線群と、を備える電磁誘導式であることを特徴とするロータリエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の回転軸において測定方向に回転するロータと、ロータから回転角度を検出する検出信号を受信するステータと、ステータが受信した検出信号に基づき回転角度を演算する演算手段と、を備えるロータリエンコーダが知られている。ロータリエンコーダは、マイクロメータやマイクロメータヘッド、ハイトゲージ、ホールテスト等に用いられる。このようなロータリエンコーダにおける検出方式としては、光学式や電磁誘導式、磁気式などがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のアブソリュートロータリエンコーダは、トラックが同心円状に配置されたトラック群を有するロータと、トラック群と磁束結合可能に配置された送信巻線群および受信巻線群を有するステータと、を備える。トラック群の各トラックは、ロータ上に配置された第1及び第2の半径の線状円弧部を含むとともに軸を中心とする連続した一つのリング状の磁束結合巻線であり、トラック群の少なくとも2つのトラックの線状円弧部の数は、互いに異なる。具体的には、アブソリュートロータリエンコーダは、36度周期のトラックおよび40度周期のトラックを用いることで、2つのトラックから得られる受信信号に基づいて絶対角度を演算している。これにより、アブソリュートエンコーダは、必要なときだけ絶対角度を演算することで間欠的な動作が実現できるため、角度の検出頻度を低減させ、使用電力の低下を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-322927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、物理的にロータリエンコーダの小型化ができても、部品の加工精度や組立て精度は容易には向上せず、また、2つのトラックから検出される検出信号における差分の誤差であるトラック間誤差が悪化することがある。トラック間誤差は、ロータとステータとの位置ずれ等により生じる。このため、ロータリエンコーダは、ロータとステータとの位置ずれ等を想定して、ある程度のトラック間誤差があっても絶対角度の演算ができるように、トラック間誤差の許容範囲である合成許容値を有している。トラック間誤差が合成許容値を超えると、ロータリエンコーダは、絶対角度の演算をすることができない。
そして、ロータリエンコーダを小型化すると、それにともない合成許容値が小さくなり、トラック間誤差も悪化することがあるため、トラック間誤差が合成許容値を超えやすくなり絶対角度の演算の実現が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、小型化を図りつつ、十分な合成許容値を確保することができるロータリエンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロータリエンコーダは、所定の回転軸において測定方向に回転するロータと、ロータから回転角度を検出する検出信号を受信するステータと、ステータが受信した検出信号に基づき回転角度を演算する演算手段と、を備える。ロータは、回転軸を中心として複数の単位パターンを測定方向に沿って配置する第1ロータパターンと、回転軸を中心として第1ロータパターンにおける複数の単位パターンよりも少ない単位パターンを測定方向に沿って配置する第2ロータパターンと、を備える。第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および第2ロータパターンの複数の単位パターンの数は、互いの最大公約数が2以上となるように設けられる。演算手段は、ステータにより第1ロータパターンと第2ロータパターンのそれぞれから検出された検出信号に基づいてロータの回転角度を演算することを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、ロータにおける第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および第2ロータパターンの複数の単位パターンの数は、互いの最大公約数が2以上となるように設けられるため、最大公約数が1である場合と比較して、演算に用いられる検出信号が検出される第1ロータパターンおよび第2ロータパターンの周期は、半分以下となる。また、最大公約数が1である場合と比較して、合成許容値は、そのままロータリエンコーダを小型化したときの合成許容値の2倍以上となり、小型化する前の合成許容値に近い合成許容値を保つことができる。したがって、ロータリエンコーダは、小型化を図りつつ、十分な合成許容値を確保することができる。
【0009】
この際、第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および第2ロータパターンの複数の単位パターンの数は、偶数となるように設けられていることが好ましい。
【0010】
ここで、第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および第2ロータパターンの複数の単位パターンの数が奇数となるように設けられている場合、第1ロータパターンおよび第2ロータパターンからの検出信号に基づく演算手段の演算結果である回転角度に誤差が生じやすく、精度を保つことが困難なことがある。
しかしながら、このような構成によれば、第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および第2ロータパターンの複数の単位パターンの数は、偶数となるように設けられているため、第1ロータパターンおよび第2ロータパターンからの検出信号に基づく演算手段の演算結果の精度が低下することを防止し、精度を保つことができる。
【0011】
この際、第1ロータパターンおよび第2ロータパターンは、それぞれ回転軸を中心とする連続した磁束結合巻線であり、ステータは、第1ロータパターンおよび第2ロータパターンと磁束結合可能に配置される送信巻線群と、第1ロータパターンおよび第2ロータパターンと磁束結合可能に配置される受信巻線群と、を備える電磁誘導式であることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、ロータリエンコーダは電磁誘導式であるため、第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および第2ロータパターンの複数の単位パターンの数の設計や、第1ロータパターンおよび第2ロータパターンに対応するステータの設計などを、従来技術に基づいて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るロータリエンコーダにおけるロータを示す平面図
図2】前記ロータリエンコーダにおけるステータを示す平面図
図3】前記ロータリエンコーダにおけるトラック間誤差と合成許容値との関係を示す図
図4】従来の小型化したロータリエンコーダにおけるトラック間誤差と合成許容値との関係を示す図
図5】従来の小型化以前のロータリエンコーダにおけるトラック間誤差と合成許容値との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るロータリエンコーダ1のロータ3を示す平面図であり、図2は、ロータリエンコーダ1のステータ4を示す平面図である。
ロータリエンコーダ1は、図1および図2に示すように、所定の回転軸2において測定方向に回転するロータ3と、ロータ3から回転角度を検出する検出信号を受信するステータ4と、を備える。ロータリエンコーダ1は、図示しない測定機器であるマイクロメータに用いられる。ロータリエンコーダ1は、マイクロメータの内部に設けられている。マイクロメータは、ステータ4に対してロータ3を測定方向に回転させ、ステータ4に対するロータ3の回転角度を検出し、検出結果を図示しない表示手段などに出力する。
【0015】
回転軸2は、ロータ3とステータ4とを支持する略円柱状の部材である。回転軸2には金属やガラス、樹脂などの素材を用いることができる。また、回転軸2の端部には、図示しない測定対象と接触する測定子が設けられている。
ロータ3は、図1に示すように、ステータ4と対向し回転軸2と直交する面S1を有する略円環状の絶縁基板30と、回転軸2を中心として複数の単位パターン310を測定方向に沿って配置する第1ロータパターン31と、回転軸2を中心として第1ロータパターン31における複数の単位パターン310よりも少ない単位パターン320を測定方向に沿って配置する第2ロータパターン32と、回転軸2が通る軸孔20と、を備える。絶縁基板30は、ガラスエポキシ樹脂やガラス、シリコン等の材料にて構成することができる。軸孔20は、面S1と直交する方向に回転軸2を挿通するように絶縁基板30の中央に設けられている。絶縁基板30は、面S1において外径が13.5mm、回転軸2が通る軸孔20の内径が8mmとなるように形成されている。
【0016】
第1ロータパターン31および第2ロータパターン32は、ステータ4と対向するように測定方向である周方向に沿って絶縁基板30の面S1に設けられる、それぞれ回転軸2を中心とする連続した磁束結合巻線である。具体的には、第1ロータパターン31および第2ロータパターン32は、電磁誘導にて起電流を生じる導体にて形成され、それぞれ導体である導線を単一のループ状にするとともに略波状、若しくは略歯車状に形成されている。第1ロータパターン31および第2ロータパターン32には、銅や、金などの電気抵抗が小さい材料が用いられる。
【0017】
第1ロータパターン31の複数の単位パターン310は、測定方向に沿って、所定のピッチP1で磁場が発生するように設けられている。具体的には、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310は、22.5度周期となるピッチP1にて磁場が発生するように設けられている。
第2ロータパターン32の複数の単位パターン320は、所定のピッチP2で磁場が発生するように設けられている。具体的には、第2ロータパターン32の複数の単位パターン320は、約25.71度周期となるピッチP2にて磁場が発生するように設けられている。
【0018】
そして、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は、互いの最大公約数が2以上となるように設けられる。
具体的には、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は、偶数となるように設けられている。本実施形態では、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数は16であり、第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は14である。したがって、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は、互いの最大公約数が2となるように設けられる。
【0019】
ステータ4は、図2に示すように、ロータ3と対向し回転軸2と直交する面S2を有する略円環状の絶縁基板40と、第1ロータパターン31および第2ロータパターン32と磁束結合可能に配置される送信巻線群41と、第1ロータパターン31および第2ロータパターン32と磁束結合可能に配置される受信巻線群42と、回転軸2が通る軸孔21と、を備える。したがって、ロータリエンコーダ1は、電磁誘導式である。
軸孔21は、面S2と直交する方向に回転軸2を挿通するように絶縁基板40の中央に設けられている。絶縁基板40は、ガラスエポキシ樹脂やガラス、シリコン等の材料にて構成することができる。
送信巻線群41および受信巻線群42は、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数のそれぞれに対応するように設計されている。送信巻線群41および受信巻線群42には、銅や、金などの電気抵抗が小さい材料が用いられる。
【0020】
ロータリエンコーダ1は、先ず、ステータ4の送信巻線群41を用いてロータ3の第1ロータパターン31および第2ロータパターン32に起電流を生じさせる。次に、ステータ4の受信巻線群42は、ロータ3の第1ロータパターン31および第2ロータパターン32から印加される磁場の変化を受信する。ロータリエンコーダ1は、ロータ3とステータ4との相対移動量である回転角度を磁場の変化に基づき測定する。
【0021】
また、ロータリエンコーダ1は、ステータ4が受信した検出信号に基づき回転角度を演算する図示しない演算手段をさらに備える。演算手段は、ステータ4により第1ロータパターン31と第2ロータパターン32のそれぞれから検出された検出信号に基づいてロータ3の回転角度を演算する。
ここで、ステータ4に対するロータ3の回転角度の検出方式は、インクリメンタル方式(INC方式)と、アブソリュート方式(ABS方式)と、が知られている。
INC方式は、ロータに設けられた一定ピッチのインクリメンタルパターン(INCパターン)を連続的に検出し、検出したINCパターンの数をカウントアップまたはカウントダウンすることで回転角度を検出する方式である。
ABS方式は、それぞれピッチの異なるINCパターンを有する複数のトラックから検出される複数のインクリメンタル信号(INC信号)を合成したり、ランダムに設けられたアブソリュートパターン(ABSパターン)を検出しABSパターンを解析する等により、絶対角度を演算する方式である。
【0022】
本実施形態では、ピッチP1で設けられる第1ロータパターン31およびピッチP2で設けられる第2ロータパターン32は、それぞれINCパターンに相当する。演算手段は、第1ロータパターン31と第2ロータパターン32のそれぞれから検出された検出信号であるINC信号を合成することで絶対角度を演算することができる。ロータリエンコーダ1は、絶対角度を検出することにより、常時角度検出をすることなく、必要なときだけ絶対角度を演算することで間欠的な動作を実現している。これにより、ロータリエンコーダ1は、角度の検出頻度を低減させ、使用電力の低下を図ることができる。
【0023】
図3から図5は、トラック間誤差と合成許容値との関係を示す図である。具体的には、図3(A)は、ロータリエンコーダ1のロータ3を示す平面図であり、図3(B)は、ロータリエンコーダ1におけるトラック間誤差と合成許容値との関係を示すグラフである。また、図4(A)は、従来の小型化したロータリエンコーダ1Aのロータ3Aを示す平面図であり、図4(B)は、従来の小型化したロータリエンコーダ1Aにおけるトラック間誤差と合成許容値との関係を示すグラフであり、図5(A)は、従来の小型化以前のロータリエンコーダ1Bのロータ3Bを示す平面図であり、図5(B)は、小型化従来の以前のロータリエンコーダ1Bにおけるトラック間誤差と合成許容値との関係を示すグラフである。図3(B)と図4(B)と図5(B)とのグラフは、縦軸がトラック間誤差であり、横軸が角度であり、トラック間誤差曲線を示している。また、グラフより破線にて延長された範囲は、合成許容値を示している。
【0024】
図3(A)に示すように、ロータ3における第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は、互いの最大公約数が2となるように設けられる。これにより、前述のABS方式にて絶対角度を演算すると、1回転において、同じ絶対角度が2か所に出現することとなる。したがって、ロータリエンコーダ1は、例えば図3(A)における破線の範囲R内の第1ロータパターン31および第2ロータパターン32を用いて回転角度の検出を実行する。
【0025】
ここで、第1ロータパターンの周期をλ1とし、第2ロータパターンの周期をλ2としたとき、ロータリエンコーダにおける合成許容値δABSは、式(1)により求めることができる。
【0026】
δABS=│λ1-λ2│ ・・・(1)
【0027】
本実施形態では、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数は16であり、λ1は22.5度周期となる。また、第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は14であり、λ2は約25.71周期となる。このため、ロータリエンコーダ1における合成許容値δABSは、約3.2142度となる。
【0028】
図4(A)に示すように、従来の小型化したロータリエンコーダ1Aでは、第1ロータパターン31Aの複数の単位パターン310Aの数は16であり、λ1は22.5度周期となる。また、第2ロータパターン32Aの複数の単位パターン320Aの数は15であり、λ2は24周期となる。このとき、第1ロータパターン31Aの複数の単位パターン310Aの数および第2ロータパターン32Aの複数の単位パターン320Aの数は、互いの最大公約数が1となるように設けられる。そして、ロータリエンコーダ1Aにおける合成許容値δABSを式(1)にて求めると、合成許容値δABSは、1.5度となる。なお、絶縁基板30Aは、面S1Aにおいて外径が13.5mm、回転軸2が通る軸孔20の内径が8mmとなるように形成されている。
【0029】
そして、図5(A)に示すように、従来の小型化以前のロータリエンコーダ1Bでは、第1ロータパターン31Bの複数の単位パターン310Bの数は10であり、λ1は36度周期となる。また、第2ロータパターン32Bの複数の単位パターン320Bの数は9であり、λ2は40周期となる。このとき、第1ロータパターン31Bの複数の単位パターン310Bの数および第2ロータパターン32Bの複数の単位パターン320Bの数は、互いの最大公約数が1となるように設けられる。そして、ロータリエンコーダ1Bにおける合成許容値δABSを式(1)にて求めると、合成許容値δABSは、4度となる。なお、絶縁基板30Bは、面S1Bにおいて外径が18.2mm、回転軸2が通る軸孔20の内径が8mmとなるように形成されている。
【0030】
本発明のロータリエンコーダ1と、従来の小型化したロータリエンコーダ1Aと、従来の小型化以前のロータリエンコーダ1Bと、のそれぞれの合成許容値δABSは、図3(B)と図4(B)と図5(B)とに示すように、第1ロータパターン31,31A,31Bの複数の単位パターン310,310A,310Bの数および第2ロータパターン32,32A,32Bの複数の単位パターン320,320A,320Bの数により変動することがわかる。
具体的には、従来のロータリエンコーダ1Bを小型化し、第1ロータパターン31Aの複数の単位パターン310Aの数および第2ロータパターン32Aの複数の単位パターン320Aの数が互いの最大公約数が1となるように設けられるロータリエンコーダ1Aでは、図4(B)と図5(B)に示すように、従来のロータリエンコーダ1Bの合成許容値δABS=4度の半分以下の合成許容値δABS=1.5度となる。
【0031】
これに対し、図3(B)に示すように、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数が互いの最大公約数が2となるように設けられる本発明のロータリエンコーダ1では、合成許容値δABS=約3.2142度となる。すなわち、ロータリエンコーダ1は、従来の小型化したロータリエンコーダ1Aの合成許容値δABS=1.5度の約2倍の合成許容値δABSを有することとなる。
したがって、ロータリエンコーダ1は、小型化を図りつつ、従来の小型化以前のロータリエンコーダ1Bに近い、十分な合成許容値δABSを確保することができる。
【0032】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)ロータ3における第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は、互いの最大公約数が2以上となるように設けられるため、最大公約数が1である場合と比較して、演算に用いられる検出信号が検出される第1ロータパターン31および第2ロータパターン32の周期は、半分以下となる。また、最大公約数が1である場合と比較して、合成許容値は、そのままロータリエンコーダ1を小型化したときの合成許容値の2倍以上となり、小型化する前の合成許容値に近い合成許容値を保つことができる。したがって、ロータリエンコーダ1は、小型化を図りつつ、十分な合成許容値を確保することができる。
【0033】
(2)第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は、偶数となるように設けられているため、第1ロータパターン31および第2ロータパターン32からの検出信号に基づく演算手段の演算結果の精度が低下することを防止し、精度を保つことができる。
(3)ロータリエンコーダ1は電磁誘導式であるため、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数の設計や、第1ロータパターン31および第2ロータパターン32に対応するステータ4の設計などを、従来技術に基づいて容易に行うことができる。
【0034】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、ロータリエンコーダ1は、測定機器としてのマイクロメータに用いられていたが、マイクロメータヘッドやハイトゲージ、ホールテスト等の他の測定機器に用いられていてもよい。また、ロータリエンコーダは、センサ等の測定機器以外のものに用いられていてもよい。
【0035】
前記実施形態では、ロータリエンコーダ1は、電磁誘導式であったが、ステータは、送信巻線群を備えず、ロータにおける第1ロータパターンおよび第2ロータパターンは測定方向に沿ってS極とN極とが交互になるように配置された磁気式であってもよい。さらに、ロータにおける第1ロータパターンおよび第2ロータパターンは、スリットであってもよく、その他の必要な光学系を備える光学式であってもよい。
要するに、ロータリエンコーダは、用いられる実装形式や検出方式などについて特に限定されるものではなく、その他の測定機器などにおいても利用可能であり、本発明のロータリエンコーダを何に実装するかについては、特に限定されるものではない。
【0036】
前記実施形態では、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数は16であり、第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は14であり、偶数となるように設けられていたが、奇数となるように設けられていてもよい。
前記実施形態では、第1ロータパターン31の複数の単位パターン310の数および第2ロータパターン32の複数の単位パターン320の数は、互いの最大公約数が2となるように設けられていたが、互いの最大公約数が3であってもよいし、4であってもよい。要するに、第1ロータパターンの複数の単位パターンの数および第2ロータパターンの複数の単位パターンの数は、互いの最大公約数が2以上となるように設けられていればよい。
【0037】
前記実施形態では、演算手段は、第1ロータパターン31と第2ロータパターン32のそれぞれから検出された検出信号であるINC信号を合成することで絶対角度を演算していたが、他の方法により回転角度を演算してもよい。要するに、演算手段は、ステータにより第1ロータパターンと第2ロータパターンのそれぞれから検出された検出信号に基づいてロータの回転角度を演算することができればよい。
前記実施形態では、ロータ3には、第1ロータパターン31と第2ロータパターン32との2つのロータパターンが設けられていたが、ロータは、2つ以上のロータパターンを備えていてもよい。この際、2つ以上のロータパターンにおいて、第1ロータパターンは、回転軸を中心として複数の単位パターンを測定方向に沿って配置し、第2ロータパターンは、回転軸を中心として第1ロータパターンにおける複数の単位パターンよりも少ない単位パターンを測定方向に沿って配置していれば、どのロータパターンを第1ロータパターンおよび第2ロータパターンとして扱ってもよい。
【0038】
前記実施形態では、ロータ3における絶縁基板30は、面S1において外径が13.5mm、回転軸2が通る軸孔20の内径が8mmとなるように形成されていたが、ロータにおける絶縁基板は、どのような大きさや形状等に形成されていてもよい。また、前記実施形態では、第1ロータパターン31および第2ロータパターン32は、ステータ4と対向するように絶縁基板30の面S1、すなわち、平面に設けられていたが、第1ロータパターンおよび第2ロータパターンは、ステータと対向していれば、例えば、略円柱状のロータにおける周面である曲面に設けられていてもよい。また、前記実施形態では、ロータ3の面S1とステータ4の面S2とを対向させ、ステータ4は面S2に対するロータ3の面S1の回転角度を検出していたが、ロータは略円柱状の部材を有し、ステータはロータの略円柱状の部材を中央に挿入し回転させることができるリング状の部材であってもよい。要するに、ロータとステータの形式や形状は、どのように形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明は、ロータリエンコーダに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1,1A,1B ロータリエンコーダ
2 回転軸
3,3A,3B ロータ
31,31A,31B 第1ロータパターン
32,32A,32B 第2ロータパターン
310,310A,310B 第1ロータパターンの単位パターン
320,320A,320B 第2ロータパターンの単位パターン
4 ステータ
図1
図2
図3
図4
図5