(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】蒸着装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20230925BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230925BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/24 U
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2020198686
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】砂川 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功康
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-083423(JP,A)
【文献】特開2010-140840(JP,A)
【文献】特開2005-260088(JP,A)
【文献】特開2014-110086(JP,A)
【文献】特開2009-108381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
H10K 50/10
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延設され、基板に蒸着物質を放出する蒸着源と、
シャッタと、
前記蒸着源と前記基板との間の位置を含む移動軌道上で前記シャッタを回動する回動手段と、
冷却媒体が流れる配管と、
を備えた蒸着装置であって、
前記回動手段は、
軸方向に延びる内部空間を有し、
前記蒸着源の延設方向に沿う前記シャッタの回動中心を形成する回転軸と、
前記回転軸に接続され、前記シャッタを支持する支持部材と、
前記回転軸を支持する軸受けと、
駆動源として中空モータと、を含み、
前記回転軸は、
前記中空モータを通過する部分と、
前記軸受けに支持される部分と、を含み、
前記支持部材は、前記配管に接続され、前記冷却媒体が流れる流路を有し、
前記流路と前記配管とを接続する接続部が、前記回転軸の前記内部空間において前記支持部材に設けられ、
前記配管は、前記接続部に接続され、前記回転軸の前記内部空間において前記回転軸の前記軸方向に延設された可撓性チューブを含む、
ことを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸着装置であって、
前記回転軸の、前記軸方向の両端部が開口しており、
前記支持部材は、前記回転軸の前記軸方向の一方端部の開口を塞ぐように前記回転軸に接続され、
前記可撓性チューブは、前記回転軸の前記軸方向の他方端部の開口よりも外部へ延設されている、
ことを特徴とする蒸着装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蒸着装置であって、
前記配管として、前記冷却媒体の供給用の配管と、前記冷却媒体の排出用の配管とを備え、
前記接続部として、前記供給用の配管が接続される供給用の接続部と、前記排出用の配管が接続される排出用の接続部と、を備え、
前記供給用の配管は、前記可撓性チューブとして前記供給用の接続部に接続される可撓性チューブを含み、
前記排出用の配管は、前記可撓性チューブとして前記排出用の接続部に接続される可撓性チューブを含む、
ことを特徴とする蒸着装置。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸着装置であって、
前記蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する監視手段を備え、
前記監視手段は、前記軸受けから前記回転軸の径方向に離間した位置に配置されている、
ことを特徴とする蒸着装置。
【請求項5】
基板を搬送する搬送装置と、
前記基板に蒸着物質を蒸着する蒸着装置と、を備え、
前記基板を搬送しながら蒸着を行うインライン型の成膜装置であって、
前記蒸着装置は、
前記基板の搬送方向と交差する方向に延設され、前記基板に蒸着物質を放出する蒸着源と、
シャッタと、
前記蒸着源と前記基板との間の位置を含む移動軌道上で前記シャッタを回動する回動手段と、
冷却媒体が流れる配管と、
前記蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する監視手段と、を備え、
前記回動手段は、
軸方向に延びる内部空間を有し、前記蒸着源の延設方向に沿う前記シャッタの回動中心を形成する回転軸と、
前記回転軸に接続され、前記シャッタを支持する支持部材と、
前記回転軸を支持する軸受けと、
駆動源として中空モータと、を含み、
前記回転軸は、
前記中空モータを通過する部分と、
前記軸受けに支持される部分と、を含み、
前記監視手段は、前記軸受けから前記回転軸の径方向に離間した位置に配置され、
前記支持部材は、前記配管に接続され、前記冷却媒体が流れる流路を有し、
前記流路と前記配管とを接続する接続部が、前記回転軸の前記内部空間において前記支持部材に設けられ、
前記配管は、前記接続部に接続され、前記回転軸の前記内部空間を前記回転軸の前記軸方向に延設された可撓性チューブを含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項5に記載の成膜装置であって、
前記支持部材は、
前記蒸着源の前記延設方向に沿って延設され、前記シャッタが取り付けられる取付部と、
前記回転軸の径方向に延設され、前記延設方向で前記取付部の端部と前記回転軸とを接続するアーム部と、を含み、
前記流路は、前記アーム部及び前記取付部に渡って形成され、
前記接続部は、前記アーム部に設けられている、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項5に記載の成膜装置であって、
前記シャッタは、前記回動中心の径方向で外側に凸の弧状断面形状を有している、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項6に記載の成膜装置であって、
前記シャッタは、前記取付部に対して、前記回動中心の径方向で内側に取り付けられている、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項6に記載の成膜装置であって、
前記シャッタは、前記取付部に対して、交換可能に取り付けられている、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
基板を搬送する搬送装置と、
前記基板に蒸着物質を蒸着する蒸着装置と、を備え、
前記基板を搬送しながら蒸着を行うインライン型の成膜装置であって、
前記蒸着装置は、
前記基板の搬送方向と交差する方向に延設され、前記基板に蒸着物質を放出する蒸着源と、
シャッタと、
前記蒸着源と前記基板との間の位置を含む移動軌道上で前記シャッタを回動する回動手段と、
冷却媒体が流れる配管と、を備え、
前記回動手段は、
軸方向に延びる内部空間を有し、前記蒸着源の延設方向に沿う前記シャッタの回動中心を形成する回転軸と、
前記回転軸に接続され、前記シャッタを支持する支持部材と、を含み、
前記支持部材は、前記配管に接続され、前記冷却媒体が流れる流路を有し、
前記流路と前記配管とを接続する接続部が、前記回転軸の前記内部空間において前記支持部材に設けられ、
前記配管は、前記接続部に接続され、前記回転軸の前記内部空間を前記回転軸の前記軸方向に延設された可撓性チューブを含み、
前記蒸着装置は、
前記回転軸として、同軸上に配置された第一の回転軸及び第二の回転軸を備え、
前記支持部材は、
前記蒸着源の前記延設方向に沿って延設され、前記シャッタが取り付けられる取付部と、
前記第一の回転軸の径方向に延設され、前記取付部の一方の端部と前記第一の回転軸とを接続する第一のアーム部と、
前記第二の回転軸の径方向に延設され、前記取付部の他方の端部と前記第二の回転軸とを接続する第二のアーム部と、を含み、
前記流路は、
前記第一のアーム部及び前記取付部の途中部に渡って形成された第一の流路と、
前記第二のアーム部及び前記取付部の途中部に渡って形成された第二の流路と、を含み、
前記蒸着装置は、前記可撓性チューブとして、
前記第一の流路と接続され、前記第一の回転軸の内部空間に配置される第一の可撓性チューブと、前記第二の流路と接続され、前記第二の回転軸の内部空間に配置される第二の可撓性チューブと、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
請求項5乃至請求項10のいずれか一項に記載の成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記搬送装置によって前記基板を搬送する搬送工程と、
搬送されている前記基板に、前記蒸着装置によって蒸着を行う蒸着工程と、を有する
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
請求項5乃至請求項10のいずれか一項に記載の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法であって、
前記搬送装置によって前記基板を搬送する搬送工程と、
搬送されている前記基板に、前記蒸着装置によって蒸着を行う蒸着工程と、を有する
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に有機材料や金属材料等の蒸着物質が蒸着される。その蒸着装置として、基板に対して蒸着源を開閉可能なシャッタを設けた蒸着装置が提案されている(特許文献1及び2)。シャッタは蒸着源の熱の影響を受け、熱害の防止のため、その冷却が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-7587号公報
【文献】特開2019-534938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャッタの冷却方式として、シャッタを駆動する機構中に冷却水等の冷却媒体を循環させ、シャッタを間接的に冷却する方式が考えられる。しかし、シャッタを駆動する機構中に回転部分が存在すると回転部分における冷却媒体の漏れに対する対策が必要となる。対策として、回転部分にロータリジョイントを用いることが考えられるが高価であり、また、冷却媒体が漏れるという課題は残る。
【0005】
本発明は、冷却媒体の漏れを防止できる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
水平方向に延設され、基板に蒸着物質を放出する蒸着源と、
シャッタと、
前記蒸着源と前記基板との間の位置を含む移動軌道上で前記シャッタを回動する回動手段と、
冷却媒体が流れる配管と、
を備えた蒸着装置であって、
前記回動手段は、
軸方向に延びる内部空間を有し、前記蒸着源の延設方向に沿う前記シャッタの回動中心を形成する回転軸と、
前記回転軸に接続され、前記シャッタを支持する支持部材と、
前記回転軸を支持する軸受けと、
駆動源として中空モータと、を含み、
前記回転軸は、
前記中空モータを通過する部分と、
前記軸受けに支持される部分と、を含み、
前記支持部材は、前記配管に接続され、前記冷却媒体が流れる流路を有し、
前記流路と前記配管とを接続する接続部が、前記回転軸の前記内部空間において前記支持部材に設けられ、
前記配管は、前記接続部に接続され、前記回転軸の前記内部空間において前記回転軸の前記軸方向に延設された可撓性チューブを含む、
ことを特徴とする蒸着装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却媒体の漏れを防止できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
【
図2】(A)及び(B)は
図1の成膜装置の動作説明図。
【
図5】(A)は流路の説明図、(B)は可撓性チューブの変形態様を示す図。
【
図8】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<成膜装置の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。なお、各図において矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは垂直方向(鉛直方向)を示す。成膜装置1は、搬送装置2と、複数の蒸着装置3A及び3B(以下、両者を総称する場合、又は、区別しない場合は蒸着装置3と表す)と、を備える。複数の蒸着装置3A及び3BはX方向に並べて配置されており、搬送装置2はこれら蒸着装置3A及び3Bの上方に配置されている。
【0011】
搬送装置2は、使用時に真空に維持される搬送室20cを内部に形成する搬送チャンバ20を備える。搬送チャンバ20のX方向の一端部には搬入口20aが、他端部には搬出口20bが設けられており、処理対象物は、搬入口20aから搬送室20c内に搬入され、処理後に搬出口20bから外部へ搬出される。搬送室20cには、X方向に配列された複数の搬送ローラ21が設けられている。この搬送ローラ21の列は、Y方向に離間して二列配置されている。各搬送ローラ21はY方向の回転軸周りに回転する。搬送対象物は、二列の搬送ローラ21の列に、そのY方向の両端部が載置され、搬送ローラ21の回転によってX方向に水平姿勢で搬送される。本実施形態では処理対象物の搬送機構としてローラ機構を用いたが、磁気浮上搬送等、他の種類の搬送機構であってもよい。
【0012】
蒸着装置3は、使用時に真空に維持される内部空間3aを形成するソースチャンバ5を備える。ソースチャンバ5は、上部に開口部3bが形成された箱型を有しており、開口部3bを介して、搬送室20cと内部空間3aとが連通している。蒸着装置3は上方に蒸着物質を放出する蒸着源6を備える。本実施形態の蒸着源6はいわゆるラインソースであり、搬送装置2での処理対象物の搬送方向(X方向)と、交差する方向(本実施形態では搬送方向と直交するY方向)に延設されている。蒸着源6は、蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を搬送室20cへ放出する。
【0013】
蒸着装置3は、シャッタ7と、シャッタ7を回動する回動ユニット8とを備える。回動ユニット8は、蒸着源6と搬送室20c内を搬送される処理対象物との間の位置を含む移動軌道上でシャッタ7を回動する。移動軌道は、シャッタ7の移動する経路であり、典型的には円軌道であるが、回動ユニット8に他の可動部(リンク機構等)が追加されることで、楕円軌道や直線軌道となることもある。本実施形態の場合、シャッタ7は、蒸着源6の延設方向(本実施形態ではY方向)に沿って延設されており、回動ユニット8は、蒸着源6の延設方向に沿う回動中心(本実施形態ではY方向の回動中心)周りにシャッタ7を回動する。本実施形態の場合、一つの蒸着源6に対して二組のシャッタ7及び回動ユニット8が設けられている。二組のシャッタ7及び回動ユニット8は、蒸着源6の延設方向と交差する方向(本実施形態では延設方向と直交するX方向)に離間して配置されている。そして、搬送室20cに対して蒸着源6の放出口を二つのシャッタ7で開閉し、蒸着物質の搬送室20cへの放出の規制や、入射角の規制を行うことができる。
【0014】
蒸着装置3には、また、蒸着源6からの蒸着物質の放出状態を監視する監視装置9が設けられている。蒸着源6の上部やシャッタ7の周囲には防着板4が設けられており、蒸着物質が周囲に付着することを抑制する。防着板4は上下が開放した角筒形状を有しており、内部空間3aから搬送室20cに渡って配置されている。
【0015】
図2(A)及び
図2(B)は成膜装置1の動作の一例を示す説明図である。成膜装置1は、搬送装置2により処理対象物を搬送しながら(搬送工程)、蒸着装置3により処理対象物に蒸着物質を蒸着する(蒸着工程)成膜方法を実行可能な、インライン型の成膜装置である。成膜装置1は、例えば、表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する、電子デバイスの製造方法を実行する製造装置に適用可能である。
図2(A)及び
図2(B)では、処理対象物として基板10が例示されている。基板10はマスク11と共に搬送され、基板10の下側に位置するマスク11を通して蒸着物質を基板10に蒸着することにより、所定のパターンの蒸着物質の薄膜を基板100に形成することができる。基板10は例えばガラス、樹脂、金属等の材料からなる板材であり、蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。
【0016】
本実施形態では、複数の蒸着装置3A、3Bが基板10の搬送方向に配置されている。蒸着装置3A、3Bにより異なる種類の蒸着物質を放出する場合、基板10に異なる蒸着物質を連続的に蒸着することができる。なお、蒸着装置3の数は2つに限られず、1つでもよいし、3以上であってもよい。
【0017】
図2(A)は、蒸着装置3Aのシャッタ7が開放されており、蒸着装置3Aの上方に位置する基板10に蒸着材料12が放出されている態様を模式的に示している。
図2(A)において蒸着装置3Bのシャッタ7は閉鎖されており、シャッタ7は蒸着源6と搬送室20c内を搬送される基板10との間となる位置に位置している(但し、
図2(A)の態様では蒸着装置3Bの上方に基板10は存在していない。)。蒸着装置3Bの蒸着源6から搬送室20cへ蒸着物質が到達することが規制される。
【0018】
図2(B)は、蒸着装置3Aにより蒸着物質が蒸着された基板10が蒸着装置3Bの上方に到達した態様を模式的に示している。蒸着装置3Bのシャッタ7が開放されており、蒸着装置3Bの上方に位置する基板10に蒸着材料12が放出されている。
図2(B)において蒸着装置3Aのシャッタ7は閉鎖されており、シャッタ7は蒸着源6と搬送室20c内を搬送される基板10との間となる位置に位置している(但し、
図2(B)の態様では蒸着装置3Aの上方に基板10は存在していない。)。蒸着装置3Aの蒸着源6から搬送室20cへ蒸着物質が到達することが規制される。
【0019】
このように本実施形態では、基板10に対して複数の蒸着装置3A、3Bによって連続的に蒸着物質を蒸着することができる。
図2(A)及び
図2(B)の例では、シャッタ7の動作として、その開閉によって蒸着源6から搬送室20cへの蒸着物質の放出と遮断を行う例を例示した。しかし、シャッタ7の動作はこれに限られず、二つのシャッタ7の開度を中間の開度としたり、二つのシャッタ7の一方を開放位置、他方を閉鎖位置に位置させることで、蒸着物質の放出範囲を規制し、基板10への単位時間当たりの蒸着物質の蒸着量や基板10への蒸着物質の入射角を制御することもできる。
【0020】
<シャッタと回動ユニット>
図1~
図2(B)に加えて、
図3~
図5(B)を参照してシャッタ7と回動ユニット8の構造について説明する。主に、
図3を参照する。
図3は蒸着装置3の内部構造を示す概略図であり、
図2(A)のA-A線断面図に相当する。回動ユニット8は、一対の駆動ユニットDU1及びDU2(以下、両者を総称する場合、又は、区別しない場合は駆動ユニットDUと表す)と、駆動ユニットDU1及びDU2に支持された支持部材30とを備え、蒸着源6の延設方向(本実施形態ではY方向)の回動中心線AL周りにシャッタ7を回動する。シャッタ7を回動することで、平行移動させる構成に比べて、防着板4に囲まれた狭い空間で蒸着源6の開閉動作を行うことができる。
【0021】
支持部材30はシャッタ7を支持する部材であり、蒸着源6の延設方向(本実施形態ではY方向)に沿って延設された取付部31と、取付部31の延設方向の各端部に固定された一対のアーム部32とを備える。取付部31は、屋根型の断面形状を有する板状の部材によって構成されており、その長手方向に離間した一対のアーム部32に架設されている。取付部31には、ボルト締結構造等の固定構造(不図示)によってシャッタ7が交換可能に取り付けられる。蒸着装置3の使用により、シャッタ7には蒸着物質が付着したり、熱の影響により劣化が生じ、回動ユニット8よりも寿命が短い場合がある。シャッタ7が交換可能であることにより、回動ユニット8とシャッタ7が不可分の構成に比べて、回動ユニット8をより長期に渡って使用することができる。
【0022】
図5(A)等に示すように、シャッタ7は回動中心線ALの径方向Rで取付部31の内側に取り付けられている。取付部31と蒸着源6との間にシャッタ7が介在することから、取付部31に対する蒸着物質の付着や熱の影響を低減でき、取付部31の寿命を長くすることができる。また、本実施形態の場合、回動中心線ALと直交する平面におけるシャッタ7の断面形状(X-Z面切断面形状)が、
図5(A)等に示すように回動中心線ALの径方向Rで外側に凸の弧状断面形状を有している。換言するとシャッタ7は、蒸着源6から遠ざかる方向に凸形状となる、表面が曲面の殻形状を有している。シャッタ7が平板形状の構成と比べて、本実施形態のシャッタ7は、防着板4に囲まれた狭い空間で防着板4と干渉することなく、その回動範囲(移動軌跡長)を大きくとることができる。本実施形態の場合、シャッタ7の断面形状は、回動中心線ALと同心円弧形状を有しているが、これに限られず、異心円弧形状でもよいし、また、楕円弧形状等、円弧形状以外の弧形状であってもよい。
【0023】
各アーム部32は、回転軸方向(Y方向)に交差する方向に延び、かつ、X-Z面に沿った方向、すなわち、回動中心線ALの径方向Rに延びる板状の部材によって構成されている。アーム部32の一方端部には取付部31が接続され、他方端部には駆動ユニットDUの回転軸33が接続される。アーム部32の長さは、シャッタ7の移動軌道が、蒸着源6と搬送室20c内を搬送される処理対象物との間の位置を含むように設定される。
【0024】
シャッタ7は蒸着源6の熱にさらされる。特に蒸着物質が金属材料の場合、蒸着源6の温度が高く、シャッタ7が高温になり易い。シャッタ7が高温になるとシャッタ7に付着した蒸着物質がシャッタ7から放出される場合がある。よってシャッタ7の冷却が望まれる。本実施形態の場合、支持部材30に冷却媒体を流通させることで支持部材30を冷却し、これによりシャッタ7を間接的に冷却する。冷却媒体は例えば冷却水である。
図3、
図5(A)を参照して冷却媒体の流路について説明する。
図5(A)は駆動ユニットDU1に接続されているアーム部32を示しているが、駆動ユニットDU2に接続されているアーム部32も同様である。
【0025】
支持部材30のうち、取付部31には流路31aが内部に形成されている。大型のシャッタ7の場合、その長手方向(本実施形態ではY方向)の長さが長く、その結果、取付部31の長手方向(本実施形態ではY方向)の長さも長くなって数mに及ぶ場合がある。冷却媒体の流路は、取付部31を長手方向に貫通した流路でもよいが、そうすると取付部31の長手方向に大きな温度差が生じる場合がある。本実施形態では、取付部31に独立した二つの流路31aが形成されている。各流路31aは、取付部31の長手方向の一方端部から取付部31の長手方向の途中部(本実施形態では中央部CL付近)へ延び、折り返し部31bで折り返されて一方端部に戻るU字形状を有している。取付部31の長手方向に二分して、流路31aを形成することで、取付部31をその長手方向に、より均一に冷却することができる。
【0026】
図5(A)に示すように、アーム部32には流路31aと連通した流路32a、32bが内部に形成されている。流路32a、32bのうちの一方の流路は冷却媒体の供給用の流路であり、他方の流路は冷却媒体の排出用の流路である。
【0027】
主に
図3、
図4を参照して駆動ユニットDUの構成について説明する。
図4は駆動ユニットDU1周辺の断面図であり、主に駆動ユニットDU1の構造を示している。なお、駆動ユニットDU2は駆動ユニットDU1と同様の構造を有している。
【0028】
駆動ユニットDUは、回転軸33、軸受け34、駆動源36及び軸受け37を含む。回転軸33は、回動中心線AL上の軸であり、シャッタ7の回動中心を形成する。駆動ユニットDU1及びDU2の各回転軸33は同軸上(共通の回動中心線AL上)に配置されている。駆動ユニットDU1及びDU2は、蒸着源6に対して、蒸着源6の延設方向(本実施形態ではY方向)の側方に配置されている。換言すると、Y方向で駆動ユニットDU1とDU2との間に蒸着源6が位置している。したがって、駆動ユニットDU1及びDU2の各回転軸33は、蒸着源6の延設方向(本実施形態ではY方向)に離間し、蒸着源6に対してその延設方向の側方において同軸上に配置されている。
【0029】
回転軸33はその軸方向(本実施形態の場合Y方向)に延びる内部空間33a(本実施形態の場合、回転軸33を貫通している)を有する中空の回転軸であり、その軸方向の両端部が開口している。本実施形態の回転軸33は、複数の部材を連結して構成されており、軸受け34に支持された軸部材331と、駆動源36を通過した軸部材332とを含む。軸受け34はステム35を介してソースチャンバ5の壁部に支持されている。軸受け34は中空のケース34aと、回転軸33の軸方向でケース34aの両端部にそれぞれ支持されたボールベアリング34bとを備える。軸部材331はボールベアリング34bの内輪に嵌合している。
【0030】
駆動源36は、回転軸33に回転力を付勢する。本実施形態の場合、駆動源36は中空モータであり、軸部材332はそのロータと一体的に設けられている。駆動源36はソースチャンバ5の外部に配置されており、そのフランジ部36aがソースチャンバ5の壁部に固定されている。なお、本実施形態では駆動源36として中空モータを利用したが、これに限られない。例えば、駆動源は、回転軸33から離間した通常のモータとし、歯車装置やベルト伝動機構等の伝達機構によりモータの駆動力を回転軸33に伝達してもよい。
【0031】
軸受け37は、回転軸33の端部を支持する軸受けである。軸受け37は、回転軸33の内部空間33aと連通し、回転軸33の軸方向に延びる内部空間37cを有する中空の本体37aと、回動中心線AL周りに回転自在に本体37aに支持された円盤37bとを有する。回転軸33の端部は円盤37bに連結されている。軸受け37は、複数の連結部材38を介して駆動源36のフランジ部36aに支持されている。
【0032】
支持部材30のアーム部32は、回転軸33の端部の開口を塞ぐように回転軸33に接続されている。以上の構成によって、駆動ユニットDU1及びDU2の各駆動源36を同期的に駆動することで、支持部材30が回動中心線ALの周りに回動し、シャッタ7が回動することになる。支持部材30の長手方向の両側に駆動ユニットDUを設けたことで、支持部材30を一つの駆動ユニットDUで片持ち状態で回動する構成に比べて、安定した動作を行うことができる。
【0033】
支持部材30に冷却媒体を循環させる構成について
図4を参照して説明する。成膜装置1は、冷却媒体を循環させる循環装置50を備える。循環装置50は、例えば、冷却媒体を収容するタンク、冷却媒体を圧送するポンプ、冷却媒体を冷却する熱交換器等を備える。循環装置50と、アーム部32の流路32a及び32bとは、配管40を介して接続されている。配管40は、冷却媒体の供給側の配管として、金属製配管42aと、可撓性チューブ41aと、これらを接続する接続部43aとを含む。また、配管40は、冷却媒体の排出側(戻り側)の配管として、金属製配管42bと、可撓性チューブ41bと、これらを接続する接続部43bとを含む。金属製配管42a、42b及び接続部43a、43bは、駆動ユニットDUの外部に位置し、接続部43a、43bは不図示のステイに固定されている。
【0034】
可撓性チューブ41a及び41bは、例えば、ナイロンチューブやポリウレタンチューブである。可撓性チューブ41a及び41bと、流路32a及び32bとの接続部39a、39bは内部空間33a内においてアーム部32に設けられている。可撓性チューブ41aは接続部39aに接続されており、可撓性チューブ41bは接続部39bに接続されている。可撓性チューブ41a、41bは、接続部39a、39bから回転軸33の軸方向に延設されており、本実施形態の場合、回転軸33の軸受け37側の端部の開口よりも外部に延設され、更に軸受け37の外部へ延設されて接続部43a、43bに接続されている。
【0035】
回転軸33の回動する範囲は、360度以下の範囲で設定される。本実施形態の場合、シャッタ7の回動の際、回転軸33は約60度回動する。配管40のうち、回転軸33の内部を通る可撓性チューブ41a及び41bは、接続部43a、43b側の端部は不動である一方、アーム部32側の端部は変位する。しかし、可撓性チューブ41a及び41bは可撓性を有しているため、弾性的に変形して、端部間の位置のずれを吸収する。
図5(B)はその説明図である。図示のように、可撓性チューブ41a及び41bは、回転軸33の回動によってアーム部側32の端部が変位することにより捻りが生じるが、その可撓性によって破断することはなく、また、回転軸33が元の位置に戻ることによって、当初の状態に復元する。本実施形態では、このように回転軸33内の配管を可撓性チューブ41a、41bで構成し、回転軸33の回転に伴うチューブの端部間の位置ずれをチューブの変形で吸収することができる。回転部分に冷却媒体を通過させる構造としては、ロータリジョイントが知られているが高価であるところ、本実施形態では可撓性チューブを用いることで比較的安価に冷却媒体の流路構造を提供できる。しかも、ロータリジョイントのように互いにシールされる摺動部材が存在せず、可撓性チューブ41a、41bの捻りを利用しているので、構造的に冷却媒体が漏れる部位がなく、冷却媒体の漏れをより確実に防止できる。
【0036】
本実施形態のように、回転軸33の回転に伴うチューブの端部間の位置ずれを可撓性チューブ41a及び41bの変形で吸収する場合、可撓性チューブ41a、41bが長い程、より大きな回転量に対応することができる。本実施形態の軸受け34は、Y方向に離間したボールベアリング34bを有しており、比較的長い全長を有している。この軸受け34の構造は回転軸33の回転安定性を高めるだけでなく、回転軸33の長尺化による可撓性チューブ41a、41bの長尺化の点でも有利である。また、接続部43a、43bは回転軸33の内部に位置していてもよいが、本実施形態のように、外部に位置していることで、配管作業の作業性を向上すると共に、可撓性チューブ41a、41bの長尺化の点でも有利である。また、可撓性チューブ41a、41bが、軸受け37を通過して外部に延設されていることもこれらの長尺化の点で有利である。
【0037】
<監視装置>
監視装置9について
図3、
図4を参照して説明する。監視装置9は台座部材13に搭載されており、台座部材13はソースチャンバ5の底部に立設された支柱15に支持されている。本実施形態の場合、一つの台座部材13に二つの監視装置9が搭載されている。監視装置9は取り付け部材9cを介して交換可能に台座部材13に固定される。
【0038】
台座部材13の蒸着源6側の端部には壁部材14が設けられており、監視装置9は壁部材14の背後に位置している。台座部材13、壁部材14及び監視装置9は、蒸着源6に対して、蒸着源6の延設方向(本実施形態ではY方向)の側方に配置されており、本実施形態では蒸着源6の両側方にそれぞれ配置されている。このような配置によって、蒸着源6から基板10への蒸着物質の放出に影響を与えずに、監視装置9によって放出状態を監視することができる。
【0039】
監視装置9は、また、回転軸33に対して、その径方向Rの側方に回転軸33から離間して配置されており、特に、軸受け34の側方に位置している。回転軸33の周囲の空のスペースを監視装置9の配置スペースとして有効に活用することができる。
【0040】
本実施形態の監視装置9は、ケース9aの内部に膜厚センサとして水晶振動子9cを備えている。水晶振動子9cには、ケース9aに形成された導入部9bを介して蒸着源6から放出された蒸着物質が導入されて付着する。水晶振動子9cの振動数は蒸着物質の付着量により変動する。水晶振動子9cの振動数を監視することで、基板10に蒸着した蒸着物質の膜厚を監視することができる。
【0041】
図6及び
図7を参照して台座部材13及び壁部材14の構成を更に説明する。
図6は監視装置9及びその周辺の台座部材13及び壁部材14の斜視図であり、
図7は台座部材13及び壁部材14を反対側から見た斜視図である。
【0042】
台座部材13は板状の部材であり、水平姿勢で支柱15に支持されており、その上面13aが監視装置9の設置面である。壁部材14は板状の部材であり、垂直姿勢で台座部材13に支持されている。台座部材13と壁部材14とは全体としてL字型をなしている。壁部材14は、監視装置9と蒸着源6との間に介在するように台座部材13に設けられており、かつ、監視装置9を蒸着源6に露出させる窓部14aを有する。窓部14aは、二つの監視装置9に対応して二つ形成されており、本実施形態の場合、上側が開放した切り欠き状の窓部である。監視装置9の導入部9bは窓部14aから蒸着源6に対して露出している。
【0043】
水晶振動子9cはその温度変化により振動特性が変化し、振動数の変化と蒸着源6の蒸着物質の放出状態との相関関係が変動する。このため、蒸着源6の熱により水晶振動子9cの温度が上昇すると、監視精度が低下する。壁部材14は、蒸着物質の周囲への飛散を抑制する他、監視装置9と蒸着源6との間に介在して、蒸着源6から監視装置9へ熱の輻射を低減する冷却板としての機能も有している。
【0044】
本実施形態では、更に台座部材13及び壁部材14に冷却媒体を循環させることで、監視装置9を間接的に冷却する。監視装置9の冷却性能を向上できる。
【0045】
台座部材13は、配管44、45が接続される接続部13b、13cを有している。接続部13b、13cはX方向で台座部材13の一方端部、他方端部に形成されている。配管44、45は例えば、循環装置50に接続されており、配管44が冷却媒体の供給側の配管であり、配管45が冷却媒体の排出側(戻り側)の配管である。台座部材13には、冷却媒体が流れる流路13dが内部に形成されており、冷却媒体は接続部13bから接続部13cへ向けて流路13dを流れる。これにより台座部材13が冷却される。
【0046】
また、壁部材14にも冷却媒体の流路14bが内部に形成されている。流路14bは、台座部材13の流路13dから分岐した流路であり、これらの流路13d、14bは連通点14cで連通している。連通点14cは壁部材14と台座部材13との接続部分に位置している。流路13dと流路14bとが連通していることで、共通の配管44、45により冷却媒体を台座部材13及び壁部材14に流通させることができる。
【0047】
<電子デバイス>
次に、電子デバイスの一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を例示する。
【0048】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図8(A)は有機EL表示装置500の全体図、
図8(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0049】
図8(A)に示すように、有機EL表示装置500の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0050】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0051】
図8(B)は、
図8(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0052】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図8(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0053】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0054】
図8(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0055】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0056】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0057】
こうした電子デバイスの製造において、上述した成膜装置1が適用可能であり、当該製造方法は、搬送装置2により基板53を搬送する搬送工程と、搬送されている基板53に蒸着装置3によって各層の少なくともいずれか一つの層を蒸着する蒸着工程と、を含むことができる。
【0058】
<他の実施形態>
上記実施形態では、一つの蒸着源6に対して二つのシャッタ7を設けたが、一つの蒸着源6に対して一つのシャッタ7を設けた構成でもよい。また、一つの支持部材30に対して二つの駆動ユニットDU1、DU2を設けたが、一つの支持部材30に対して一つの駆動ユニットDUを設けてもよい。
【0059】
蒸着源6はラインソース以外にスポットソースであってもよい。上記実施形態では、シャッタ7の回動中心線ALは水平方向(Y方向)であるが、垂直方向(Z方向)であってもよい。この場合、シャッタ7は水平姿勢に支持される板状のシャッタであってもよく、支持部材30はアーム部32が無い取付部31が回転軸33に接続される構成であってもよい。蒸着源6がスポットソースである場合に有利な構成である。
【0060】
冷却媒体は循環されなくてもよく、排出された冷却媒体は再度支持部材30等に供給されることなく廃棄されてもよい。
【0061】
取付部31の流路31aは途中部で折り返さずに取付部31の長手方向の一方端部から他方端部へ貫通していてもよい。この場合、アーム部32内の流路も一つとなり、駆動ユニットDU1→アーム部32→取付部31→アーム部32→駆動ユニットDU2の順に一方向に冷却媒体が流通するようにすることができる。そして、駆動ユニットDU1の回転軸33内には供給側の可撓性チューブ41aのみが配置され、駆動ユニットDU2の回転軸33内には排出側の可撓性チューブ41bのみが配置される。
【0062】
台座部材13及び壁部材14の冷却構造は、上記実施形態の蒸着装置3に限られず、多様な蒸着装置に適用可能である。
【0063】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0064】
1 成膜装置、2 搬送装置、3 蒸着装置、9 監視装置