(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】半導体装置及びリセット信号の生成方法
(51)【国際特許分類】
H03K 17/22 20060101AFI20230925BHJP
G06F 1/24 20060101ALI20230925BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
H03K17/22 B
G06F1/24 351
H03K17/00 B
(21)【出願番号】P 2022110289
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2018010359の分割
【原出願日】2018-01-25
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 勝義
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-109717(JP,A)
【文献】特開2002-043918(JP,A)
【文献】特開昭62-269414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/22
G06F 1/24
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リセットを促す第1のレベルを
電源投入の時点から電源電圧の上昇期間において有するリセット信号を生成するパワーオンリセット部と、
前記電源電圧が印加され、前記電源電圧が前記電源電圧の定格電圧値より低い動作可能電圧値に達すると、前記第1のレベルを有する前記リセット信号に応じてリセットして出力を反転するフリップフロップを含む複数の回路素子によって回路が構成されている回路構成部と、を有し、
前記パワーオンリセット部は、
前記電源投入に応じて前記フリップフロップが出力反転したか否かを検知し、前記フリップフロップの出力反転を検知したとき前記リセット信号を前記第1のレベルの状態からリセット解除を促す第2のレベルに遷移させることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記回路素子は前記フリップフロップであり、
前記パワーオンリセット部は、前記フリップフロップの出力信号がリセット時のレベルを有する場合に前記回路素子が正常に動作したと検知することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記リセット時における前記フリップフロップの出力信号のレベルは前記第1のレベルであり、
前記パワーオンリセット部は、
前記フリップフロップの出力信号のレベルを反転した信号を前記フリップフロップが正常に動作したか否かを表す動作検知信号として生成するインバータと、
前記電源電圧の電圧値が第1閾値電圧以上である場合には前記第2のレベルを有し、前記電源電圧の電圧値が前記第1閾値電圧未満である場合には前記第1のレベルを有する第1の電源電圧判定信号を生成する第1のコンパレータと、
前記第1の電源電圧判定信号及び前記動作検知信号が共に前記第2のレベルを表す場合には前記第2のレベルを有し、前記第1の電源電圧判定信号及び前記動作検知信号のうちの少なくとも一方が前記第1のレベルを表す場合には前記第1のレベルを有するリセット解錠信号を生成するアンドゲートと、
前記電源電圧の電圧値が前記第1閾値電圧より低い第2閾値電圧以上である場合には前記第2のレベルを有し、前記電源電圧の電圧値が前記第2閾値電圧未満である場合には前記第1のレベルを有する第2の電源電圧判定信号を生成する第2のコンパレータと、
前記リセット解錠信号を自身のS端子で受けると共に前記第2の電源電圧判定信号を自身の反転R端子で受けて得られた出力信号を前記リセット信号として前記回路構成部に供給するRSフリップフロップと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2閾値電圧の電圧値は、前記動作可能電圧値の下限値よりも高いことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2閾値電圧の電圧値を設定するトリミング回路を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記回路構成部には複数のフリップフロップが含まれており、
前記フリップフロップは、前記複数のフリップフロップのうちで前記リセット信号を伝送するリセット配線の配線長が最も長くなる位置に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記回路素子は複数の前記フリップフロップであり、
前記パワーオンリセット部は、前記複数の前記フリップフロップ各々の出力信号が全てリセット時のレベルを有する場合に前記回路素子が正常に動作したと検知することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
リセットを促す第1のレベルを
電源投入の時点から電源電圧の上昇期間において有するリセット信号を生成するリセット信号の生成方法であって、
前記電源電圧が印加され、前記電源電圧が前記電源電圧の定格電圧値より低い動作可能電圧値に達すると、前記第1のレベルを有する前記リセット信号に応じてリセットして出力を反転するフリップフロップを含む複数の回路素子によって回路が構成されている回路構成部に含まれる前記フリップフロップが出力反転したか否かを検知し、
前記フリップフロップの出力反転を検知したとき前記リセット信号を前記第1のレベルの状態からリセット解除を促す第2のレベルに遷移させることを特徴とするリセット信号の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特に電源投入に応じてリセット信号を生成するパワーオンリセット部を含む半導体装置及びリセット信号の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の回路素子によってディジタル回路が構築されている回路構成部を含む半導体装置には、電源投入に応じて、回路素子としてのフリップフロップの状態を初期化するパワーオンリセット回路が設けられている。
【0003】
このようなパワーオンリセット回路として、電源投入直後はリセットを促すローレベルの状態を維持し、電源電圧の上昇によりその電圧値が所定の電圧値に至ったときにリセット解除を促すハイレベルに遷移するリセット信号を生成する回路が提案されている(例えば特許文献1参照)。かかるリセット信号は回路構成部に含まれるフリップフロップ各々のリセット端子に供給される。これにより、各フリップフロップは、リセット信号がローレベルの状態にある間に自身の状態をリセットする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体装置の製造上のバラツキ等により、電源投入直後の電源電圧の上昇区間においてその電圧値が、回路素子(フリップフロップを含む)を動作可能な電圧値に到る前に、リセット信号がリセット状態を解除するレベルに遷移する場合があった。この際、リセットが解除されてから、電源電圧の電圧値が回路素子を動作可能な電圧値に到達するまでの間は、各回路素子から誤った出力が為されるので、回路構成部が誤動作する虞があるという問題が生じた。
【0006】
本願発明は、回路構成部に誤動作を生じさせることなく、電源投入に応じて回路構成部に含まれるフリップフロップをリセットすることが可能な半導体装置、及びリセット信号の生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体装置は、リセットを促す第1のレベルを電源投入の時点から電源電圧の上昇期間において有するリセット信号を生成するパワーオンリセット部と、前記電源電圧が印加され、前記電源電圧が前記電源電圧の定格電圧値より低い動作可能電圧値に達すると、前記第1のレベルを有する前記リセット信号に応じてリセットして出力を反転するフリップフロップを含む複数の回路素子によって回路が構成されている回路構成部と、を有し、前記パワーオンリセット部は、前記電源投入に応じて前記フリップフロップが出力反転したか否かを検知し、前記フリップフロップの出力反転を検知したとき前記リセット信号を前記第1のレベルの状態からリセット解除を促す第2のレベルに遷移させることを特徴としている。
【0008】
本発明に係るリセット信号の生成方法は、リセットを促す第1のレベルを電源投入の時点から電源電圧の上昇期間において有するリセット信号を生成するリセット信号の生成方法であって、前記電源電圧が印加され、前記電源電圧が前記電源電圧の定格電圧値より低い動作可能電圧値に達すると、前記第1のレベルを有する前記リセット信号に応じてリセットして出力を反転するフリップフロップを含む複数の回路素子によって回路が構成されている回路構成部に含まれる前記フリップフロップが出力反転したか否かを検知し、前記フリップフロップの出力反転を検知したとき前記リセット信号を前記第1のレベルの状態からリセット解除を促す第2のレベルに遷移させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、電源投入に応じて生成するリセット信号の状態を、半導体装置に含まれる回路素子が実際に正常に動作したと検知した後に、リセットを促す状態からリセット解除を促す状態に遷移させる。これにより、回路構成部に誤動作を生じさせることなく、電源投入に応じて回路構成部に含まれるフリップフロップの状態をリセットすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】半導体ICチップ100に含まれる回路構成部10及びパワーオンリセット部20を示す回路図である。
【
図3】パワーオンリセット部20の動作を表すタイムチャートである。
【
図4】半導体ICチップ100に含まれる回路構成部10及びパワーオンリセット部20の変形例を示す回路図である。
【
図5】半導体ICチップ100に含まれる回路構成部10及びパワーオンリセット部20の他の変形例を示す回路図である。
【
図6】トリミング回路29の構成を示す回路図である。
【
図7】トリミングコードTMCと第2閾値電圧Vt2の電圧値との対応関係の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、半導体装置としての半導体ICチップ100に含まれる回路構成部10、及び
パワーオンリセット部20を示す回路図である。
【0012】
回路構成部10には、JK、RS、T、D型等の各種フリップフロップ(以下、FFと称する)、アンドゲート、オアゲート、インバータ等の各種論理ゲート、及びメモリ等の複数の回路素子により各種の回路が構成されている。
【0013】
パワーオンリセット部20は、電源投入に応じた電源電圧VDDの上昇期間においてリセットを促す例えば論理レベル0を有し、その後、リセット解除を促す論理レベル1の状態に遷移するリセット信号RESを生成する。パワーオンリセット部20は、リセット信号RESを、リセット配線LRを介して回路構成部10に含まれる複数のリセット端子付きFF(FF12を含む)のリセット端子に供給する。
【0014】
図1に示すように、パワーオンリセット部20は、コンパレータ21及び22、RSフリップフロップ23(以下、RSFF23と称する)、アンドゲート24及びインバータ25を有する。
【0015】
コンパレータ21は、電源電圧VDDの電圧値が所定の第1閾値電圧Vt1以上であるか否かを判定する。尚、第1閾値電圧Vt1は、電源電圧VDDの定格電圧値よりも低い電圧値を有する。コンパレータ21は、電源電圧VDDの電圧値が第1閾値電圧Vt1以上であると判定した場合には論理レベル1、電源電圧VDDの電圧値が第1閾値電圧Vt1以上ではないと判定した場合には論理レベル0を有する第1の電源電圧判定信号D1を生成する。コンパレータ21は、電源電圧判定信号D1をアンドゲート24に供給する。
【0016】
コンパレータ22は、電源電圧VDDの電圧値が、所定の第2閾値電圧Vt2以上であるか否かを判定する。尚、第2閾値電圧Vt2は、上記した第1閾値電圧Vt1よりも低く、且つ各回路素子を動作させることが可能な電源電圧VDDの電圧値の下限値以上の電圧値を有する。
【0017】
コンパレータ22は、電源電圧VDDが第2閾値電圧Vt2以上ではないと判定した場合には論理レベル0、電源電圧VDDが第2閾値電圧Vt2以上であると判定した場合には論理レベル1を有する第2の電源電圧判定信号D2を生成する。コンパレータ22は、生成した電源電圧判定信号D2をRSFF23の反転R端子に供給する。
【0018】
インバータ25は、回路構成部10に含まれる複数の回路素子のうちの特定の1つの回路素子の出力信号を受け、この出力信号の論理レベルを反転させた信号を動作検知信号BCとして生成し、これをアンドゲート24に供給する。すなわち、インバータ25は、この特定の1つの回路素子の出力信号に基づき、電源投入後、この回路素子が正常に動作しているか否かを検知し、その検知結果を示す動作検知信号BCを生成する。
【0019】
尚、
図1に示される実施例では、インバータ25は、回路構成部10に含まれる複数の回路素子のうちのリセット端子付きFFであるFF12の出力信号を受け、当該出力信号の論理レベルを反転させた信号を動作検知信号BCとして生成する。
【0020】
すなわち、電源投入後の電源電圧VDDの電圧値がFF12を正常に動作させることが可能な電圧値以上である場合には、FF12は、論理レベル0のリセット信号RESに応じて自身の状態をリセットする。よって、当該リセットにより、FF12の出力信号のレベルは論理レベル0となる。一方、電源投入後の電源電圧VDDの電圧値がFF12を正常に動作させることが可能な電圧値より低い場合には、FF12は、論理レベル0のリセット信号RESが供給されてもリセットしない。よって、この際、FF12の出力信号のレベルは不定な状態となる。
【0021】
そこで、インバータ25は、FF12の出力信号のレベルが、当該FF12がリセット時に出力する論理レベル0である場合に、このFF12が正常に動作していると検知し、正常動作を表す論理レベル1の動作検知信号BCをアンドゲート24に供給する。
【0022】
アンドゲート24は、上記電源電圧判定信号D1が論理レベル1を有し、且つ動作検知信号BCがFF12の正常動作を表す論理レベル1である場合に、リセット解除を表す論理レベル1のリセット解除信号RCを生成する。また、アンドゲート24は、これら動作検知信号BC及び電源電圧判定信号D1のうちの少なくとも一方が論理レベル0を表す場合には、現状維持を表す論理レベル0のリセット解除信号RCを生成する。
【0023】
アンドゲート24は、生成したリセット解除信号RCをRSFF23のS端子に供給する。
【0024】
RSFF23は、
図1に示すように、インバータIV1~IV5、ナンドゲートND1、ノアゲートNR1~NR3を含む。ここで、インバータIV1の入力端がRSフリップフロップ23の反転R端子となり、インバータIV2の入力端がRSフリップフロップ23のS端子となる。
【0025】
インバータIV1は、反転R端子を介して供給された電源電圧判定信号D2の論理レベルを反転させた信号RaをナンドゲートND1及びノアゲートNR1に供給する。インバータIV2は、S端子を介して供給されたリセット解除信号RCの論理レベルを反転させた信号SaをナンドゲートND1及びノアゲートNR1に供給する。
【0026】
ノアゲートNR1は、信号Saと信号Raとの論理和結果を反転させた信号Rbを、ノアゲートNR2に供給する。ナンドゲートND1及びインバータIV3は、信号Saと信号Raとの論理積結果を示す信号Sbを、ノアゲートNR3に供給する。
【0027】
ノアゲートNR2は、ノアゲートNR3の出力信号Y1と信号Rbとの論理和結果を反転させた信号を出力信号Y2としてノアゲートNR3に供給する。ノアゲートNR3は、出力信号Y2と信号Sbとの論理和結果を反転させた信号を上記した出力信号Y1として、ノアゲートNR2及びインバータIV4に供給する。
【0028】
インバータIV4及びIV5は、ノアゲートNR3から出力された出力信号Y1をリセット信号RESとし、これをリセット配線LRを介して回路構成部10に含まれる複数のリセット端子付きFF(FF12を含む)のリセット端子に供給する。
【0029】
図2は、上記した構成からなるRSFF23の動作を表す真理値表である。
図2に示すように、RSFF23は、電源電圧判定信号D2及びリセット解除信号RCが共に論理レベル0である場合には、リセットを促す論理レベル0のリセット信号RESを生成する。また、RSFF23は、電源電圧判定信号D2及びリセット解除信号RCが共に論理レベル1である場合には、リセットの解除を促す論理レベル1のリセット信号RESを生成する。
【0030】
また、
図2に示すように、電源電圧判定信号D2及びリセット解除信号RCのうちの一方が論理レベル0、他方が論理レベル1を表す場合には、RSFF23は、現在のリセット信号RESの状態を維持する。
【0031】
以下に、パワーオンリセット部20の動作について、
図3に示すタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0032】
先ず、電源投入時点では、電源電圧VDDの電圧値は第2閾値電圧Vt2よりも低いので、電源電圧判定信号D1及びD2、並びにリセット解除信号RCは、論理レベル0の状態を維持する。また、当該電源投入時点において、RSFF23は、リセットを促す論理レベル0のリセット信号RESを出力する。
【0033】
当該電源投入後、電源電圧VDDの電圧値は
図3に示すように徐々に上昇し、その電圧値が第2閾値電圧Vt2に到る時点t1で、電源電圧判定信号D2が論理レベル0の状態から論理レベル1に遷移する。尚、
図3に示すように電源電圧VDDの電圧値が第2閾値電圧Vt2以上である間に亘り、電源電圧判定信号D2は論理レベル1の状態を維持する。
【0034】
この間、電源電圧判定信号D2が論理レベル1に遷移するものの、電源電圧判定信号D1及びリセット解除信号RCが論理レベル0の状態にあるので、RSFF23は、リセット信号RESを、リセットを促す論理レベル0の状態に維持する。
【0035】
その後、電源電圧VDDの電圧値が更に上昇し、当該電源電圧VDDが第1閾値電圧Vt1に到る時点t2で、電源電圧判定信号D1が論理レベル0の状態から論理レベル1に遷移する。尚、
図3に示すように電源電圧VDDの電圧値が第1閾値電圧Vt1以上である間に亘り、電源電圧判定信号D1は論理レベル1の状態を維持する。
【0036】
ここで、時点t2での電源電圧VDDの電圧値によれば、回路構成部10に含まれる各回路素子は正常な動作が可能な状態になっている筈である。しかしながら、製造上のバラツキ等に伴い、時点t2の段階での電源電圧VDDの電圧値では回路素子が正常に動作しない場合がある。例えば、
図3に示す一例では、時点t2の段階での電源電圧VDDの電圧値ではFF12が正常に動作せず、リセットを促す論理レベル0のパワーオンリセットRESが供給されていてもリセット状態にならない。
【0037】
よって、時点t2では、FF12の出力端子の信号レベルはリセット時の論理レベル0の状態にはないので、インバータ25は、FF12が正常に動作したことを検知できず、論理レベル0の動作検知信号BCを引き続きアンドゲート24に供給する。これにより、アンドゲート24は、論理レベル0のリセット解除信号RCをRSFF23のS端子に供給する。従って、時点t2以降も、RSFF23は、リセット信号RESの信号レベルを、パワーオンリセットを促す論理レベル0の状態に維持させる。
【0038】
その後、電源電圧VDDの電圧値が更に増加し、例えば
図3に示す時点t3にてFF12が動作し得る電圧値に至ると、FF12が論理レベル0のリセット信号RESに応じてリセットされる。これにより、時点t3にて、動作検知信号BCが論理レベル0の状態から、FF12が正常に動作したことを表す論理レベル1の状態に遷移し、それに伴いリセット解除信号RCも論理レベル0の状態から論理レベル1の状態に遷移する。よって、
図3に示す時点t3にてFF12が実際に正常に動作(パワーオンリセット)したことがインバータ25によって検知されるので、RSFF23は、リセット信号RESを、論理レベル0の状態からリセット解除を促す論理レベル1に遷移させる。
【0039】
このように、パワーオンリセット部20は、電源投入に応じて、先ず、リセットを促す論理レベル0のリセット信号RESを生成する。そして、パワーオンリセット部20は、電源電圧VDDの電圧値が第1閾値電圧Vt1以上となり且つFF12が正常に動作(パワーオンリセット)したことが検知されてから、リセット信号RESをリセットの解除を促す論理レベル1の状態に遷移させる。
【0040】
これにより、電源投入後、電源電圧の電圧値が、各回路素子を動作し得る電圧値に到る前にリセット信号RESがリセット解除を促す状態に遷移してしまうという不具合が防止される。よって、
図1に示す構成によれば、半導体装置の製造上のバラツキに拘わらず、回路構成部10に誤動作を生じさせることなく、電源投入に応じて、当該回路構成部10に含まれるFFをリセットすることが可能となる。
【0041】
尚、上記実施例では、回路構成部10に含まれる複数のFFのうちの特定の1つのFF12を回路素子の代表として、当該FF12が正常動作しているか否かを検知している。
【0042】
このFF12としては、半導体ICチップ100内において、パワーオンリセット部20からのリセット配線LRの配線長が最も長くなる位置に配置されているFFとするのが好ましい。つまり、リセット配線LRの配線遅延に伴い、電源投入後、最も遅れて論理レベル0のリセット信号RESが供給されることになるFFの出力信号をパワーオンリセット部20にフィードバックする。これにより、全てのFFがリセット状態になった後でリセット状態が解除されるので、一部のFFだけが先にリセット解錠されることによって生じる不具合が回避される。
【0043】
また、回路構成部10に含まれる複数のFFのうちの1つのFF12だけでなく、2つ或いは3つ以上のFFを回路素子の代表として、正常動作しているか否かの検知を行うようにしても良い。
【0044】
図4は、かかる点に鑑みて為された、半導体ICチップ100に含まれる回路構成部10、及びパワーオンリセット部20の変形例を示す回路図である。尚、
図4に示すパワーオンリセット部20では、
図1に示すような2入力型のアンドゲート24に代えて3入力型のアンドゲート24Aを採用し、正常動作の検知を行う為のインバータ26を新たに追加した点を除く他の構成は
図1に示すものと同一である。
【0045】
インバータ26は、回路構成部10に含まれる複数のFFのうちで、リセット端子付きのFF13の出力信号の論理レベルを反転させた信号を動作検知信号BCrとしてアンドゲート24Aに供給する。
【0046】
よって、アンドゲート24Aは、電源電圧判定信号D1が論理レベル1を表し、且つインバータ25及び26がFF12及び13の正常動作(リセット)を検知した場合に、論理レベル1のリセット解除信号RCをRSFF23のS端子に供給する。これにより、RSFF32は、リセット信号RESを論理レベル0の状態から、リセット解除を促す論理レベル1の状態に遷移させる。
【0047】
従って、
図4に示す構成によれば、
図1に示す構成を採用した場合に比べて、より確実に、パワーオンリセット時における回路構成部10の誤動作を防止することが可能となる。
【0048】
尚、
図1及び
図4に示す一例では、回路素子が正常動作しているか否かを検知する回路素子の代表としてFFを用いているが、FF以外の他の回路素子を用いても良い。
【0049】
図5は、かかる点に鑑みて為された、半導体ICチップ100に含まれる回路構成部10、及びパワーオンリセット部20の変形例を示す回路図である。
【0050】
図5に示す構成では、パワーオンリセット部20については、
図1に示されるものと同一である。ただし、
図5に示す構成では、回路構成部10に含まれるメモリ14を回路素子の代表として正常動作の検知対象としている。
【0051】
尚、回路構成部10には、メモリ14に対するデータの書き込み及び読み出しを制御するメモリコントローラ15の他に、メモリ14から読み出された読出データDATを取り込むD型のFF16と、コンパレータ17とが設けられている。尚、メモリ14の所定番地には動作確認用データが予め格納されている。
【0052】
メモリコントローラ15は、電源投入に応じて、メモリ14の所定番地に格納されている動作確認用データを読み出し、これを読出データDATとしてFF16に供給する。FF16は、当該読出データDATを取り込み、これをコンパレータ17に供給する。
【0053】
コンパレータ17は、上記した動作確認用データと同一のデータ値を示す期待値データPDTと、読出データDATとが同一のデータ値を表すか否かを判定する。コンパレータ17は、期待値データPDT及び読出データDATが同一データ値を表すと判定した場合には論理レベル0、異なるデータ値を表すと判定した場合には論理レベル1の比較結果信号CMを、パワーオンリセット部20のインバータ25に供給する。
【0054】
すなわち、電源投入後の電源電圧VDDの電圧値がメモリ14及びメモリコントローラ15を正常に動作させることが可能な電圧値以上である場合には、メモリ14から読み出された読出データDATと期待値データPDTとが一致する。よって、この際、比較結果信号CMは論理レベル0を表すことになる。一方、電源電圧VDDの電圧値がメモリ14及びメモリコントローラ15を正常に動作させることが可能な電圧値未満である場合には、メモリ14は、正しい読み出しを行うことができない。よって、この際、比較結果信号CMは論理レベル1を表すことになる。
【0055】
そこで、インバータ25は、比較結果信号CMが論理レベル0を表す場合には、メモリ14が正常に動作していると検知し、正常動作を表す論理レベル1の動作検知信号BCをアンドゲート24に供給する。一方、比較結果信号CMが論理レベル1を表す場合には、インバータ25は、論理レベル0の動作検知信号BCをアンドゲート24に供給する。
【0056】
よって、RSFF23は、電源投入に応じて、先ず、リセットを促す論理レベル0のリセット信号RESを生成する。そして、RSFF23は、電源電圧VDDの電圧値が第1閾値電圧Vt1以上となり、且つメモリ14の正常動作(データ読出)が検知された時点で、リセット信号RESをリセットの解除を促す論理レベル1の状態に遷移させる。
【0057】
これにより、
図1及び
図4に示す実施例と同様に、電源投入後、電源電圧の電圧値が各回路素子を動作し得る電圧値に到る前にリセット信号RESがリセット解除を促す状態に遷移してしまうという不具合を防止することが可能となる。
【0058】
尚、上記した第2閾値電圧Vt2は、回路構成部10に含まれる回路素子(論理素子、FF、メモリ等)を正常に動作することが可能な電源電圧VDDの下限値よりも高い電圧値に設定するのが望ましい。これにより、電源投入後、電源電圧VDDの電圧値が当該回路素子を正常に動作することができない電圧値、つまり上記した下限値未満であるときにパワーオンリセットが解錠されてしまい、回路構成部10が誤動作するという不具合を回避することが可能となる。
【0059】
図6は、第2閾値電圧Vt2を、回路素子を正常に動作させることが可能な電源電圧VDDの下限値よりも高い電圧値に設定する為に半導体ICチップ100に設けるトリミング回路29の一例を表す回路図である。
【0060】
図6に示すトリミング回路29は、直列に接続された抵抗RN0~RN6と、トリミン
グ素子TR1~TR5と、トリミングデコーダDECと、を含む。
【0061】
抵抗RN0の一端には電圧VDが印加されている。また、抵抗RN(k)(kは1~5の整数)の一端には抵抗RN(k-1)の他端が接続されている。抵抗RN5の他端には抵抗RN6の一端が接続されており、当該抵抗RN6の他端には接地電位が印加されている。
【0062】
ここで、抵抗RN5と抵抗RN6との接続点CNに生じた電圧が第2閾値電圧Vt2として、コンパレータ22に供給される。
【0063】
抵抗RN(k)の両端には、トリミング素子TR(k)の両端が接続されている。
【0064】
トリミング素子TR(k)は、製造直後は抵抗RN(k)の両端を短絡している。しかしながら、トリミングデコーダDECからハイレベルのトリミング信号g(k)が供給されると、トリミング素子TR(k)は抵抗RN(k)の両端を開放し、その後はトリミング信号g(k)のレベルに拘わらず、抵抗RN(k)の両端の開放状態を維持する。一方、ローレベルのトリミング信号g(k)が供給された場合には、トリミング素子TR(k)は、抵抗RN(k)の両端を短絡した状態を維持する。
【0065】
トリミングデコーダDECは、トリミングコードTMCに応じてハイレベル又はローレベルを有するトリミング信号g(k)を生成し、トリミング素子TR(k)に供給する。
【0066】
かかる構成によれば、トリミングコードTMCによって表されるデータ値により、抵抗RN0及び接続点CN間の抵抗値が変化し、それに伴い接続点CNに生じる第2閾値電圧Vt2の電圧値も変化する。
【0067】
例えば
図7に示すように、3ビットのトリミングコードTMCによって表されるデータ値[000]~[101]毎に、第2閾値電圧Vt2がそのデータ値に対応した大きさの電圧値に設定される。
【0068】
ここで、回路素子を動作することが可能な電源電圧VDDの下限値が、例えば
図7の一点鎖線にて示す下限値VLLである場合には、データ値[011]、[100]又は[101]を表すトリミングコードTMCをトリミングデコーダDECに供給すれば良い。
【0069】
尚、上記実施例におけるリセット信号RESでは、論理レベル0の状態にある場合にリセットを促し、論理レベル1の状態でリセット解除を促すようにしているが、論理レベル1でリセットを促し、論理レベル0でリセット解除を促すようにしても良い。よって、
図1、
図4及び
図5に示される各信号についても、前述した論理レベルの状態(0又は1)に限定されない。
【0070】
要するに、半導体ICチップ100として、以下の回路構成部及びパワーオンリセット部を含むものを採用すれば良い。
【0071】
すなわち、回路構成部(10)には、リセット信号(RES)に応じてリセットするフリップフロップ(FF12)を含む複数の回路素子によって回路が構成されている。パワーオンリセット部(20)は、電源投入に応じた電源電圧(VDD)の上昇期間でのリセットを促す第1のレベル(例えば論理レベル0)を有する信号をリセット信号(RES)として生成する。ここで、パワーオンリセット部は、電源投入に応じて回路素子(12、13、14)が正常に動作したか否かを検知し(25)、当該回路素子が正常に動作したと検知した場合にリセット信号(RES)を第1のレベルの状態からリセット解除を促す
第2のレベル(例えば論理レベル1)に遷移させる。
【符号の説明】
【0072】
10 回路構成部
12、13 フリップフロップ
14 メモリ
20 パワーオンリセット部
21、22 コンパレータ
23 RSフリップフロップ
24 アンドゲート
25 インバータ