(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20230925BHJP
G05B 17/02 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
G05B13/04
G05B17/02
(21)【出願番号】P 2023517661
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2022030118
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/047814
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】川井 英司
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-008908(JP,A)
【文献】特開2003-233402(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159280(WO,A1)
【文献】特開2020-166779(JP,A)
【文献】特開平07-084606(JP,A)
【文献】国際公開第2021/157667(WO,A1)
【文献】特開2001-241635(JP,A)
【文献】特開2001-273474(JP,A)
【文献】特開2021-186761(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216746(WO,A1)
【文献】特開2018-092511(JP,A)
【文献】国際公開第2021/245910(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111899793(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/04
G05B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えた情報処理装置であって、
製品を製造する過程における所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、前記反応装置で前記化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得するステップと、
前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応
速度を予測した第1の反応
速度のパラメータを求めるステップと、
前記第1の反応速度のパラメータと、前記化学反応における前記第1の反応速度のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々との相関関係を用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記化学反応の前記複数の因子の各々を解析することにより、前記複数の因子の少なくとも1つを定量化するステップと、
前記定量化した前記複数の因子の各々を用いて、前記化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成するステップと、
前記修正モデルを用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応速度を予測した第3の反応速度のパラメータを求めるステップと、
前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の
反応速度である第2の反応
速度のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、反応
速度のパラメータと、を学習データとして学習するステップと、
学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップと、
を実行
し、
前記学習するステップは、前記第1の反応速度のパラメータおよび前記第3の反応速度のパラメータのうち何れかを選択的に反応速度のパラメータとして学習するステップである、
情報処理装置。
【請求項2】
前記定量化するステップは、真の反応速度、物質拡散速度、触媒吸着平衡、触媒活性のうちの少なくとも2つを含む前記複数の因子の各々を定量化するステップである、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
プロセッサを備える情報処理装置であって、
請求項1または2記載の情報処理装置により、前記第1の反応速度のパラメータおよび前記第3の反応速度のパラメータの何れかのパラメータに基づき学習された前記予測モデルを取得するステップと、
前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとの入力を受け付けるステップと、
前記物質に関する情報と、前記運転パラメータと、前記予測モデルとを用いて、
前記第2の反応速度のパラメータを求めるステップと、
前記物質に関する情報と、前記運転パラメータと、
前記第2の反応速度のパラメータとを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求めるステップと、
求めた前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を出力するステップと、
を実行する情報処理装置。
【請求項4】
前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の分析された前記物質の
反応速度の分析結果の取得に応じて、当該分析結果に基づき、前記予測モデルを再学習する再学習ステップと、
再学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップと
を実行する請求項1
または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記予測モデルは、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の反応速度である前記第2の反応速度のパラメータをリアルタイムに出力可能である、
請求項1
または2記載の情報処理装置。
【請求項6】
プロセッサを備えるコンピュータが、
製品を製造する過程における所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、前記反応装置で前記化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得するステップと、
前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応速度を予測した第1の反応速度のパラメータを求めるステップと、
前記第1の反応速度のパラメータと、前記化学反応における前記第1の反応速度のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々との相関関係を用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記化学反応の前記複数の因子の各々を解析することにより、前記複数の因子の少なくとも1つを定量化するステップと、
前記定量化した前記複数の因子の各々を用いて、前記化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成するステップと、
前記修正モデルを用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応速度を予測した第3の反応速度のパラメータを求めるステップと、
前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の反応速度である第2の反応速度のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、反応速度のパラメータと、を学習データとして学習するステップと、
学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップと、
を実行し、
前記学習するステップは、前記第1の反応速度のパラメータおよび前記第3の反応速度のパラメータのうち何れかを選択的に反応速度のパラメータとして学習するステップである、
方法。
【請求項7】
プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記プロセッサに、
製品を製造する過程における所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、前記反応装置で前記化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得するステップと、
前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応速度を予測した第1の反応速度のパラメータを求めるステップと、
前記第1の反応速度のパラメータと、前記化学反応における前記第1の反応速度のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々との相関関係を用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記化学反応の前記複数の因子の各々を解析することにより、前記複数の因子の少なくとも1つを定量化するステップと、
前記定量化した前記複数の因子の各々を用いて、前記化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成するステップと、
前記修正モデルを用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応速度を予測した第3の反応速度のパラメータを求めるステップと、
前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の反応速度である第2の反応速度のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、反応速度のパラメータと、を学習データとして学習するステップと、
学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップと、
を実行し、
前記学習するステップは、前記第1の反応速度のパラメータおよび前記第3の反応速度のパラメータのうち何れかを選択的に反応速度のパラメータとして学習するステップである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
線形計画法における目的関数の最適値を与える装置の運転条件を簡単に予測する石油コンビナートの運転条件の予測方法を提供するために、運転条件と、製品収率との関係をシミュレーションする技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、反応速度に関するパラメータなどの指標値等の重質油の反応状態については、シミュレーションにより決定しており、より正確な反応状態を予測することができない、という問題があった。
【0005】
重質油だけでなく、化学品(例えば、工業薬品・化学肥料・紙・パルプ・ゴム・合成繊維・合成樹脂・石油製品・医薬品・染料・洗剤・化粧品・バイオ製品)等の製品を製造する過程における様々な化学反応における反応状態についても、実験データや実際に運転中の反応装置を観測により決定しており、より正確な反応状態を予測することができない、という問題があった。
【0006】
本開示の目的は、精度良く反応状態を予測し、反応制御を行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る情報処理装置は、プロセッサを備える情報処理装置であって、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置に関する運転パラメータと、前記運転パラメータにより前記重質油分解装置において前記重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値とを、学習データとして入力を受け付けるステップと、前記重質油の油性状と前記運転パラメータを入力することに応答して前記重質油分解の反応状態を出力する第1モデルを、前記学習データを用いて学習するステップと、学習した前記第1モデルを記憶部に格納するステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るプログラムによれば、精度良く重質油分解の反応状態を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】情報処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図2】情報処理装置10の構成を示すブロック図である。
【
図3】重質油分解装置20の構成例を示す図である。
【
図4】情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】情報処理装置10による学習処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】情報処理装置10による予測処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】情報処理装置10による再学習処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】情報処理装置10による製品収率算出処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】情報処理装置10による最適化処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】重質油分解装置20の構成例を示す図である。
【
図11】重質油分解装置20の構成例を示す図である。
【
図12】情報処理システム2の構成を示すブロック図である。
【
図13】情報処理装置50の機能構成を示すブロック図である。
【
図14】第1DB521のデータ構造の一例を示す図である。
【
図15】第2DB522のデータ構造の一例を示す図である。
【
図16】第3DB523のデータ構造の一例を示す図である。
【
図17】定量化した反応律速の相関の例を示す図である。
【
図18】情報処理装置50による学習処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図19】ステップS502の算出処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図20】情報処理装置50による予測処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
<本開示の概要>
本開示の技術は、重質油分解、化学品(例えば、工業薬品・化学肥料・紙・パルプ・ゴム・合成繊維・合成樹脂・石油製品・医薬品・染料・洗剤・化粧品・バイオ製品)などの化学反応における反応状態を予測する技術に関する。
<第1実施形態>
第1実施形態は、重質油の重質油分解を行う重質油分解装置の運転パラメータと、重質油の油性状とから、重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値を予測する技術について説明する。
【0012】
本開示において、重質油は、原油を蒸留した際に、常圧蒸留塔の塔底又は減圧蒸留塔の塔底より抜き出される油、又はこれに相当する原油である。本開示では、重質油が、常圧蒸留塔の塔底より抜き出される油を例に説明する。重質油の分解反応は様々な運転パラメータの影響を受ける複雑な反応であるため、実運転においてリアルタイムに反応状態を定量化し制御、最適化することは困難であった。反応状態は、シミュレーションを行うだけでは、実際に運転中の重質油分解装置で時々刻々と変化するため、精度よく予測することが困難であった。
【0013】
本開示の技術は、重質油の反応状態を示す値と、運転パラメータ及び重質油の油性状との関係を学習したモデルを用意する。重質油の反応状態は、例えば、重質油の油性分の反応速度に関するパラメータや、平衡触媒活性を示す指標値などである。平衡触媒活性を示す指標値は、例えば、分析によって得られている平衡触媒の活性の値や触媒に堆積している金属成分量などである。
【0014】
情報処理システム1は、このモデルにより、重質油の反応状態を示す値をリアルタイムに予測し、定量化する。情報処理システム1は、この反応状態を示す値と、運転パラメータとを、予め用意した製品収率などを予測する物理モデルの入力とすることで、反応を制御可能とする。このように、重質油の分解反応を最適化し、製品収率の向上及び触媒投入量の削減のようなOPEXの削減に寄与することで、製油所の収益向上に貢献することも可能とする。
【0015】
<1.情報処理システム1の構成>
図1を用いて、本開示に係る情報処理システム1について説明する。本開示に係る情報処理システム1は、情報処理装置10と、重質油分解装置20と、ユーザ端末30と、ネットワーク40とを含んで構成される。
【0016】
図2は、情報処理装置10の構成を示す図である。情報処理装置10は、例えば、ラップトップパソコン又はラックマウント型若しくはタワー型等のコンピュータ、スマートフォン等である。また、情報処理装置10は、複数の情報処理装置により、1つのシステムとして構成される、冗長化構成される等されてもよい。情報処理装置10を実現することに要する複数の機能の配分の仕方は、各ハードウェアの処理能力、情報処理装置10に求められる仕様等に鑑みて適宜決定することができる。
【0017】
情報処理装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信IF14と、入出力IF15とを含んで構成される。
【0018】
プロセッサ11は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0019】
メモリ12は、プログラム、及び、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(DynamicRandomAccessMemory)等の揮発性のメモリである。
【0020】
ストレージ13は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(HardDiscDrive)、SSD(SolidStateDrive)である。
【0021】
通信IF14は、情報処理装置10が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。通信IF14は、LAN、インターネット、広域イーサネット等のネットワーク40に有線又は無線により接続する。
【0022】
入出力IF15は、入力操作を受け付けるための入力装置(例えば、マウス等のポインティングデバイス、キーボード)、及び、情報を提示するための出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)とのインタフェースとして機能する。
【0023】
重質油分解装置20は、重質油を所定の分解反応により軽質化された分解油に分解する装置である。分解油は、例えば、軽質ガス(LPGを含む)、ガソリン、中間留分などである。重質油分解装置20は、例えば、流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking:FCC)、熱分解、水素化分解などにより、重質油を分解する。以下では、FCCを重質油分解装置20として説明する。
【0024】
重質油分解装置20は、リアクター21及びリジェネレーター22を制御する機能、情報処理装置10と所定の情報を通信により送受信することができる機能を有する。
【0025】
図3は、重質油分解装置20の構成例を示す図である。
図3の例は、重質油分解装置20が、FCCにより重質油を分解する場合である。
図3に示すように、重質油分解装置20は、リアクター21と、リジェネレーター22とを含む。
【0026】
リアクター21は、原料となる重質油を触媒に接触させることで、分解反応を生じさせ、分解生成物を得る装置である。具体的には、リアクター21は、重質油と、水蒸気と、触媒とが投入されると、当該重質油を触媒に接触させる。次に、リアクター21は、重質油が触媒に接触されたことによる分解反応により、重質油を重質油分解した分解油を得る。また、リアクター21は、得られた分解油に水蒸気を導入して、触媒に付着した分解油を取り去る。そして、リアクター21は、分解油を出力する。また、リアクター21は、使用した触媒を、リジェネレーター22に渡す。
【0027】
リジェネレーター22は、リアクター21において使用された触媒を再生する。触媒が重質油の分解反応に使用されると、触媒の表面には、コーク(炭素)が付着することにより、触媒が劣化する。リジェネレーター22は、触媒の表面に付着したコークを高温下で燃焼させることにより再生し、再生した触媒を、リアクター21内での活性を一定にするように、リアクター21に供給する。また、リジェネレーター22は、燃焼により生じた排ガスを排出する。
【0028】
ユーザ端末30は、ユーザにより操作される端末である。ここで、ユーザは、例えば、重質油分解装置20を操作、管理などする者である。ユーザ端末30は、例えば、スマートフォン、パソコン等である。
【0029】
情報処理装置10、重質油分解装置20、ユーザ端末30は、ネットワーク40を介して相互に通信可能に構成される。
【0030】
<2.情報処理装置10の機能構成>
【0031】
図4は、情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、情報処理装置10は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを含む。
【0032】
通信部110は、情報処理装置10が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0033】
記憶部120は、情報処理装置10が使用するデータ及びプログラムを記憶する。記憶部120は、学習データDB121、モデルDB122等を記憶する。
【0034】
学習データDB121は、学習処理を行う際に用いる学習データを保持するデータベースである。
【0035】
学習データは、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置20に関する運転パラメータと、当該運転パラメータにより当該重質油分解装置20において当該重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値の実データの組である。
【0036】
重質油の油性状は、重質油の密度、金属濃度、窒素濃度などの重質油の油性状に関する情報である。運転パラメータは、例えば、重質油分解装置20への重質油流量、触媒量、水蒸気流入量、リアクター21内の圧力、内部温度、触媒の温度、触媒と重質油の比率などのパラメータ、リジェネレーター22内の圧力、内部温度、触媒の温度などのパラメータである。
【0037】
学習データは、例えば、反応状態を示す値が、重質油分解における重質油の反応速度に関するパラメータである場合、運転パラメータとして、上記運転パラメータのうち重質油の分解反応に関する第1のパラメータを採用する。
【0038】
例えば、反応速度に関するパラメータは、反応速度定数、頻度因子、活性化エネルギーなどである。アレニウス式の反応速度定数は、例えば、下記式で表される。下記式において、kは反応速度定数であり、Rはガス定数であり,Tは絶対温度であり、Eは活性化エネルギーであり、Aは頻度因子である。
【数1】
以下では、反応速度に関するパラメータが、反応速度定数を例に説明する。
【0039】
また、学習データは、例えば、反応状態を示す値が、平衡触媒活性を示す指標値である場合、運転パラメータとして、上記運転パラメータのうち平衡触媒活性に関する第2のパラメータを採用する。
【0040】
モデルDB122は、各種モデル及びモデルのパラメータを保持するデータベースである。
【0041】
モデルDB122は、重質油反応状態予測モデル(以下、第1モデル)を保持する。第1モデルは、重質油の油性状と運転パラメータを入力することに応答して、重質油分解の反応状態を出力するモデルである。
【0042】
具体的には、第1モデルは、反応速度定数予測モデル(以下、第2モデル)である。第2モデルは、重質油の油性状と、第1のパラメータとを入力することに応答して、反応速度定数を出力するモデルである。
【0043】
また、第1モデルは、平衡触媒活性予測モデル(以下、第3モデル)であってもよい。第3モデルは、重質油の油性状と、第2のパラメータとを入力することに応答して、平衡触媒活性を示す指標値を出力するモデルである。
【0044】
第1モデル~第3モデルの各々は、機械学習モデル、ニューラルネットワークなど、任意のモデルを採用することができる。第1モデル~第3モデルは、例えば、線形回帰モデルを用いて、重質油の油性状と、運転パラメータと、重質油分解の反応状態との関係を表してもよい。また、モデルDB122は、第2モデルと第3モデルの両方を保持してもよい。本開示では、モデルDB122が、第2モデルと第3モデルの両方を保持する場合を例に説明する。
【0045】
また、モデルDB122は、前述した以外のモデルを保持する。例えば、モデルDB122は、重質油の油性状と、第1のパラメータと、第2モデルにより求めた重質油分解の反応速度定数と、第2のパラメータと、第3モデルにより求めた平衡触媒活性を示す指標値とを入力することにより、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を出力する物理モデルを保持する。
【0046】
制御部130は、情報処理装置10のプロセッサ11がプログラムに従って処理を行うことにより、受信制御部131、送信制御部132、入力部133、学習部134、取得部135、予測部136、決定部137、算出部138、最適化部139、出力部140などに示す機能を発揮する。
【0047】
受信制御部131は、情報処理装置10が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。
【0048】
送信制御部132は、情報処理装置10が外部の装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0049】
入力部133は、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置20に関する運転パラメータと、当該運転パラメータにより重質油分解装置20において当該重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値とを、学習データとして入力を受け付ける。
具体的には、入力部133は、学習データDB121から、学習データを取得する。
【0050】
学習部134は、第2モデル及び第3モデルを、取得した学習データを用いて学習する。
【0051】
具体的には、学習部134は、学習データのうち、重質油の油性状、第1パラメータ、及び反応速度定数を用いて、第2モデルを学習する。学習部134は、例えば、第2モデルが線形回帰モデルであれば、反応速度定数を目的変数、重質油の油性状、及び第1のパラメータを説明変数として、第2モデルを学習する。
【0052】
無数の連続沸点成分を持つ重質油の分解反応においては、その原料油成分の数のみではなく、複数の運転パラメータが相互に作用することから反応制御の難易度が高い。実運転においては原料油性状が頻繁に変化するため、分解反応の最適化はできていなかった。このため、製品収率の低下など収益悪化に繋がっていた。特にFCCや水素化分解のような触媒を有する分解反応においては触媒劣化を加味する必要があり、反応制御が的確にできておらず新触媒の過剰投入などOPEXの増大に繋がっていた。
【0053】
上記の第2モデルを学習することにより、原料油性状の変化に伴い変化する反応速度定数と運転パラメータの相関を学習することができる。よって、学習した第2モデルを用いることで、実運転における反応速度定数を精度よく予測することができる。
【0054】
ここで、第2モデルは、重質油の油性分の各々について、第1のパラメータと、当該第1のパラメータで重質油分解を行った場合の分解反応の反応速度定数と相関関係を学習する。例えば、学習部134は、第2モデルが、重質油の油性分であるVR(vacuum residue)相当の油、VGO(vacuum gas oil)相当の油等の各々について、重質油分解により、他の油性分と反応して、ガソリン、コーク、排ガス等の各々に変わる反応速度定数を出力するように、反応速度定数と運転パラメータとの相関関係を学習する。
【0055】
学習部134が、このように第2モデルを学習することにより、無数の連続沸点成分を持つ重質油の分解反応における、その原料油成分の数のみではなく、複数の運転パラメータが相互に作用する相関関係を学習することができる。このように学習された第2モデルは、精度よく、反応速度定数を予測することができる。
【0056】
そして、学習部134は、学習した第2モデルを、モデルDB122に格納する。
【0057】
また、学習部134は、学習データのうち、重質油の油性状、第2パラメータ、及び平衡触媒活性を示す指標値を用いて、第3モデルを学習する。学習部134は、例えば、第3モデルが線形回帰モデルであれば、平衡触媒活性を示す指標値を目的変数、重質油の油性状、及び第2のパラメータを説明変数として、第3モデルを学習する。
【0058】
上記の例のように、重質油分解装置20のリアクター21及びリジェネレーター22内では触媒が循環している。リアクター21で生じた触媒劣化は、リジェネレーター22においてある程度回復することが可能であるが、リジェネレーター22においても完全な触媒の劣化回復はできないため、触媒の活性を一定に保つため、リジェネレーター22での回復に加え、新触媒を供給する必要がある。しかし、新触媒の投入量は、これまでの経験則に基づき決定されている。実運転において、触媒劣化速度は、処理する重質油の変更などにより異なる。このため、目的の触媒活性に調節することが困難となっていた。
【0059】
上記の第3モデルを学習することにより、実運転における重質油の油性状及び第2のパラメータと平衡触媒活性を示す指標値との相関を学習することができる。よって、学習した第3モデルを用いることで、実運転における平衡触媒活性を示す指標値を精度よく予測することができる。これにより、本開示の技術は、平衡触媒活性の静定、新触媒投入量の最適化、平衡触媒分析コスト及び手間の削減という効果を奏する。特に、学習した第3モデルを用いることにより、分析にかかる時間を考慮する必要がないため、実運転における重質油の油性状及び第2のパラメータがあれば、リアルタイムに平衡触媒活性を得ることができる。
【0060】
そして、学習部134は、学習した第3モデルを、モデルDB122に格納する。
【0061】
また、学習部134は、第1モデルを、学習データと、重質油分解を実行中の重質油分解装置20に関する運転パラメータである第3のパラメータと、予測された反応状態を示す値とを用いて再学習することができる。学習部134は、例えば、分析結果を取得したタイミングなどにより、再学習を行う。
【0062】
具体的には、学習部134は、学習データと、後述の取得した実際に稼働中の重質油分解装置20に関する運転パラメータである第3のパラメータと、後述の分析によって得られた反応状態を示す値を取得し、各モデルを再学習する。例えば、学習部134は、学習データと、第3のパラメータのうちの第1のパラメータと、分析された反応速度定数とから、第2モデルを再学習する。また、例えば、学習部134は、学習データと、第3のパラメータのうちの第2のパラメータと、分析された平衡触媒活性を示す指標値とから、第3モデルを再学習する。
【0063】
このように、学習部134は、分析結果を取得したタイミングなどにおいて第2モデル及び第3モデルを再学習することで、リアルタイムに、より精度よく反応速度定数や平衡触媒活性を示す指標値を求めることができる。例えば、所定の平衡触媒活性を得るためには、新触媒の投入量を調整する必要がある。精度よく新触媒の投入量を決定するためには、平衡触媒活性の分析結果が必要である。この平衡触媒活性の分析結果は、分析のために触媒を取り出してから時間を要する。このため、分析結果は、予測に用いるシミュレーションに反映させることにも時間がかかっていた。しかし、学習部134は、分析結果を取得したタイミングで第2モデル及び第3モデルを再学習することができるため、リアルタイムに、より精度よく反応速度や平衡触媒活性を示す指標値を求めることができ、例えば触媒変更等の影響に対しても迅速に予測精度を追従することができる。
【0064】
取得部135は、重質油分解を実行中の重質油分解装置に関する運転パラメータである第3のパラメータと、重質油の油性状と、学習済みの第2モデル及び第3モデルとを取得する。
【0065】
具体的には、取得部135は、重質油分解装置20から第3のパラメータと、重質油分解装置に投入する重質油の油性状とを取得する。なお、取得部135は、第3のパラメータ及び重質油の油性状を、ユーザ端末30から受信することにより取得してもよい。また、取得部135は、モデルDB122から、学習済みの第2モデル及び第3モデルを取得する。
【0066】
また、取得部135は、反応状態の分析結果を取得する。具体的には、取得部135は、実際の運転パラメータ、分解生成物、触媒などに基づいて、反応状態を分析した結果を取得する。
【0067】
予測部136は、重質油の油性状と、第3のパラメータとを、第1モデルに入力することにより、反応状態を示す値を予測する。
【0068】
具体的には、予測部136は、重質油の油性状と、第3のパラメータのうち第1のパラメータとを、第2モデルに入力することにより、反応速度定数を予測する。
【0069】
また、予測部136は、重質油の油性状と、第3のパラメータのうち第2のパラメータとを、第3モデルに入力することにより、平衡触媒活性を示す指標値を予測する。
【0070】
決定部137は、平衡触媒活性を示す指標値に基づいて、重質油分解装置20に投入する最適な新触媒の量を決定する。
【0071】
具体的には、決定部137は、平衡触媒活性を示す指標値に基づいて、平衡触媒活性を所定の値にするために投入すべき触媒の量を算出する。そして、決定部137は、算出した量を、最適な新触媒の量として決定する。
【0072】
算出部138は、重質油の油性状と、第3のパラメータと、反応状態を示す値とを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求める。
【0073】
具体的には、算出部138は、まず、反応モデルをモデルDB122から取得する。次に、算出部138は、重質油の油性状と、第3のパラメータの第1のパラメータと、求めた重質油分解の反応速度定数と、第3のパラメータの第2のパラメータと、求めた平衡触媒活性を示す指標値と、反応モデルとを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求める。製品収率は、例えば、重質油分解装置20により得られる分解油の収率である。また、製品収率に寄与する指標値は、製品収率を求めるために必要な運転パラメータなどである。当該指標値は、例えば、反応温度、反応時間、触媒濃度などである。
【0074】
最適化部139は、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、重質油の油性状と、運転パラメータと、反応状態を示す値とを用いて、最適な製品収率を実現する運転パラメータを求める。
【0075】
具体的には、最適化部139は、まず、製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、重質油の油性状と、第3のパラメータの第1のパラメータ及び反応速度定数と、第3のパラメータの第2のパラメータ及び平衡触媒活性を示す指標値とを用いて、最適な製品収率を求める。例えば、最適化部139は、重質油の油性状と、第3のパラメータと、求めた反応速度と、求めた平衡触媒活性とを、最適な製品収率を探索するためのモデルに入力することにより、最適となる製品収率を探索する。
【0076】
次に、最適化部139は、重質油の油性状と、第3のパラメータの第1のパラメータ及び反応速度と、第3のパラメータの第2のパラメータ及び平衡触媒活性を示す指標値と、求めた最適となる製品収率とを用いて、最適な運転パラメータを求める。なお、最適化部139は、学習済みの第2モデル及び第3モデルも用いて最適な運転パラメータを求める構成としてもよい。
【0077】
出力部140は、予測した反応速度定数及び平衡触媒活性を示す指標値を、出力装置などに出力する。予測した反応速度定数及び平衡触媒活性を示す指標値は、出力部140により、通信を介して外部装置に出力、表示される構成としても良い。
【0078】
また、出力部140は、決定した新触媒の量を出力する。これに応じてユーザがユーザ端末30などから図示しない触媒投入装置などに、触媒投入の指示を出すことで、重質油分解装置20に新触媒が投入されることになる。
【0079】
また、出力部140は、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値を出力する。
【0080】
また、出力部140は、求めた最適な運転パラメータを出力する。
【0081】
<3.動作>
以下では、情報処理装置10における処理について図面を参照しながら説明する。
【0082】
<3.1.学習処理>
図5は、情報処理装置10による学習処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、当該処理を、任意のタイミング(例えば、学習処理開始信号の受信など)において実行する。
【0083】
ステップS101において、入力部133は、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置20に関する運転パラメータと、当該運転パラメータにより重質油分解装置20において当該重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値とを、学習データとして入力を受け付ける。
【0084】
ステップS102において、学習部134は、第2モデル及び第3モデルを、取得した学習データを用いて学習する。
【0085】
ステップS103において、学習部134は、学習した第2モデル及び第3モデルを、モデルDB122に格納し、処理を終了する。
【0086】
<3.2.予測処理>
図6は、情報処理装置10による予測処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、当該処理を、重質油の油性状と、運転パラメータとが入力されること等により実行する。
【0087】
ステップS201において、取得部135は、重質油分解を実行中の重質油分解装置20に関する運転パラメータである第3のパラメータと、重質油の油性状と、学習済みの第2モデル及び第3モデルとを取得する。
【0088】
ステップS202において、予測部136は、重質油の油性状と、第3のパラメータのうち第1のパラメータとを、第2モデルに入力することにより、反応速度定数を予測する。
【0089】
ステップS203において、予測部136は、重質油の油性状と、第3のパラメータのうち第2のパラメータとを、第3モデルに入力することにより、平衡触媒活性を示す指標値を予測する。
【0090】
ステップS204において、出力部140は、予測した反応速度定数及び平衡触媒活性を示す指標値を、出力装置などに出力する。
【0091】
情報処理装置10は、予測処理を任意のタイミングで実行することができるため、運転中の重質油分解装置20についてリアルタイムに反応状態を示す値を予測することができる。
【0092】
<3.3.再学習処理>
図7は、情報処理装置10による再学習処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、当該処理を、任意のタイミング(例えば、反応状態の分析結果の取得、再学習処理開始信号の受信など)において実行する。
【0093】
ステップS211において、取得部135は、重質油分解を実行中の重質油分解装置20に関する運転パラメータである第3のパラメータと、重質油の油性状と、分析によって得られた反応状態と、学習済みの第2モデル及び第3モデルとを取得する。
【0094】
ステップS212において、学習部134は、第2モデルを、学習データと、重質油分解を実行中の重質油分解装置20に関する運転パラメータである第3のパラメータと、分析された反応速度定数とを用いて再学習する。
【0095】
ステップS213において、学習部134は、第3モデルを、学習データと、重質油分解を実行中の重質油分解装置20に関する運転パラメータである第3のパラメータと、分析された平衡触媒活性を示す指標値とを用いて再学習する。
【0096】
ステップS214において、学習部134は、再学習した第2モデル及び第3モデルをモデルDB122に格納し、処理を終了する。
【0097】
情報処理装置10は、予測処理を任意のタイミングで実行することができるため、運転中の重質油分解装置20についてリアルタイムに反応状態を示す値を予測することができる。
【0098】
<3.4.製品収率算出処理>
図8は、情報処理装置10による製品収率算出処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、当該処理を、重質油の油性状と、運転パラメータとが入力されること等により実行する。なお、予測処理と共通する処理については同一の符号を付して説明を省略する。
【0099】
S304において、算出部138は、重質油の油性状と、第3のパラメータと、反応状態を示す値とを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求める。
【0100】
S305において、出力部140は、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値を出力し、処理を終了する。
【0101】
<3.5.最適化処理>
図9は、情報処理装置10による最適化算出処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、当該処理を、任意のタイミングにおいて実行する。なお、予測処理及び製品収率算出処理と共通する処理については同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
S401において、最適化部139は、製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、重質油の油性状と、第3のパラメータの第1のパラメータ及び反応速度と、第3のパラメータの第2のパラメータ及び平衡触媒活性を示す指標値とを用いて、最適な製品収率を求める。
【0103】
S405において、最適化部139は、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、重質油の油性状と、運転パラメータと、反応状態を示す値とを用いて、求めた最適となる製品収率を実現する運転パラメータを求める。
【0104】
S406において、出力部140は、求めた最適な運転パラメータを出力し、処理を終了する。
【0105】
以上説明したように、本開示によれば、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置に関する運転パラメータと、運転パラメータにより重質油分解装置において重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値とを、学習データとして入力を受け付け、当該重質油の油性状と当該運転パラメータを入力することに応答して重質油分解の反応状態を出力する第1モデルを、学習データを用いて学習し、学習した第1モデルを記憶部に格納することにより、精度良く重質油分解の反応状態を予測するための第1モデルを得ることができる。
【0106】
また、本開示によれば、重質油分解を実行中の重質油分解装置に関する運転パラメータである第3のパラメータと、重質油の油性状と、学習済みの第1モデルとを取得し、重質油の油性状と、第3のパラメータとを、第1モデルに入力することにより、反応状態を示す値を予測し、反応状態を示す値を出力することにより、精度良く重質油分解の反応状態を予測することができる。
【0107】
また、本開示によれば、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置に関する運転パラメータを入力することに応答して当該運転パラメータにより重質油分解装置において重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値を出力する第1モデルを取得し、重質油の油性状と、運転パラメータとの入力を受け付け、重質油の油性状と、運転パラメータと、第1モデルとを用いて、反応状態を示す値を求め、重質油の油性状と、運転パラメータと、反応状態を示す値とを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求めることにより、製品収率の向上を図り、製油所の収益向上に貢献することができる。
【0108】
また、本開示によれば、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、重質油の油性状と、運転パラメータと、反応状態を示す値とを用いて、最適な製品収率を実現する運転パラメータを求めることにより、製品収率を向上させることができる。
【0109】
<第2実施形態>
第2実施形態は、化学品(例えば、工業薬品・化学肥料・紙・パルプ・ゴム・合成繊維・合成樹脂・石油製品・医薬品・染料・洗剤・化粧品・バイオ製品)等(以下、単に化学品等という)の製品を製造する過程における様々な化学反応における反応状態を予測する技術に関する。第2実施形態に係る技術は、所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、当該反応装置で化学反応に用いる化学物質に関する情報とから、当該反応装置において化学反応を行ったときの反応状態を示す値を予測する技術について説明する。
【0110】
従来の化学品等の化学反応をモデル化した反応モデルは、物質移動のような定量化しにくい項目を含む。これらの値は、既存の論文を参照することにより、または実験により決定する。このため、反応モデルの作成に多大な時間を要し、更に、反応モデルのような物理モデルでは、人間が考慮できるパラメータの数は限られる。
【0111】
このため、反応モデルでは考慮していないパラメータの変動によって、予測精度の低下に繋がってしまう、という問題があった。
【0112】
本開示の技術は、化学品等の反応状態のパラメータと、運転パラメータ及び化学物質に関する情報との関係を学習したモデルを用意する。反応状態のパラメータは、例えば、化学物質の反応速度に関するパラメータや、触媒活性を示す指標値などである。これにより、本開示の技術は、精度良く化学品などの製造に係る反応状態を予測することができる。
【0113】
また、本開示の技術は、過去の化学反応の結果、実験結果などを用いて、運転パラメータ及び化学物質に応じた見かけの反応状態のパラメータを算出する。本開示の技術は、この見かけの反応状態のパラメータを用いて、当該モデルを学習する。これにより、定量化の難しい各運転パラメータの影響をデータドリブンに精度よく定量化することができ、反応モデルの構築の高速化及び精度向上に寄与することができる。
【0114】
<4.情報処理システム2の構成>
図12を用いて、本開示に係る情報処理システム2について説明する。本開示に係る情報処理システム2は、情報処理装置50と、反応装置60と、ユーザ端末30と、ネットワーク40とを含んで構成される。
【0115】
<5.情報処理装置50の機能構成>
【0116】
図13は、情報処理装置50の機能構成を示すブロック図である。
図13に示すように、情報処理装置50は、通信部110と、記憶部520と、制御部530とを含む。
【0117】
記憶部520は、情報処理装置50が使用するデータ及びプログラムを記憶する。記憶部520は、第1DB521、第2DB522、第3DB523等を記憶する。
【0118】
第1DB521は、予測モデルの学習/構築処理を行う際に用いる学習データを保持するデータベースである。学習データは、過去に当該化学反応を行ったデータである。具体的には、学習データは、化学反応の対象となる物質に関する情報、所定の化学反応を行う反応装置60に関する運転パラメータ、当該運転パラメータにより反応装置60において当該物質を化学反応させたときの反応状態のパラメータ等からなる実データの組である。
【0119】
図14は、第1DB521のデータ構造の一例を示す図である。
図14に示すように、第1DB521のレコードのそれぞれは、項目「ID」、項目「物質」、項目「分量」、項目「運転パラメータ」、項目「触媒活性」などを含む。なお、ここに示す項目はすべてではなく、ここに示す項目がなくても、また、他の項目があっても構わない。
【0120】
項目「ID」は、各レコードを識別するための情報を記憶する。
【0121】
項目「物質」は、化学反応に用いた物質名を記憶する。
【0122】
項目「物質に関する情報」は、化学反応に用いた物質に関する情報を記憶する。物質に関する情報は、例えば、物質の物性、使用した量、重さ等である。なお、物質が複数ある場合、当該項目は、物質同士の分量の割合も含んで記憶しても良い。
【0123】
項目「運転パラメータ」は、反応装置の運転パラメータを記憶する。運転パラメータは、例えば、反応装置60の反応炉のサイズ、反応装置60への物質の流量、触媒量、圧力、内部温度、触媒の温度、触媒と物質との比率などのパラメータである。
【0124】
項目「触媒活性」は、当該運転パラメータにより反応装置60において使用された触媒活性に関するデータである。触媒活性に関するデータは、使用した触媒、触媒の流入量、触媒活性を示す指標値などである。
【0125】
第2DB522は、物質の反応状態である反応状態のパラメータを記憶する。
【0126】
図15は、第2DB522のデータ構造の一例を示す図である。
図15に示すように、第2DB522のレコードのそれぞれは、項目「ID」、項目「第1の反応状態のパラメータ」、項目「第3の反応状態のパラメータ」などを含む。なお、ここに示す項目はすべてではなく、他の項目があっても構わない。
【0127】
項目「ID」は、各レコードを識別するための情報を記憶する。この「ID」は、第1DB521の「ID」と紐づいている。
【0128】
項目「第1の反応状態のパラメータ」は、対応するIDにおける運転パラメータにより反応装置60において当該物質を化学反応させたときの反応状態のパラメータを記憶する。第1の反応状態のパラメータは、例えば、反応速度、反応速度定数、頻度因子、活性化エネルギー、触媒活性などである。などである。第1の反応状態のパラメータは、例えば、反応モデルにより算出された第1の反応状態のパラメータである。
【0129】
項目「第3の反応状態のパラメータ」は、物質の反応状態である第3の反応状態のパラメータを記憶する。第3の反応状態のパラメータは、例えば、反応速度、反応速度定数、頻度因子、活性化エネルギー、触媒活性などである。第3の反応状態のパラメータは、修正モデルにより算出された第3の反応状態のパラメータである。
【0130】
第3DB523は、各種モデル及びモデルのパラメータを保持するデータベースである。
【0131】
具体的には、第3DB523は、予測モデル、反応モデル、修正モデル、物理モデル等の本開示の技術で用いるモデルと、それらのパラメータとを保持する。
【0132】
予測モデルは、物質に関する情報と、運転パラメータとを入力することに応じて、物質の反応状態である反応状態のパラメータを出力するモデルである。反応状態のパラメータは、例えば、反応装置60において所定の化学反応が行われた際の物質の反応速度定数である。予測モデルは、機械学習モデル、ニューラルネットワークなど、任意のモデルを採用することができる。予測モデルは、例えば、線形回帰モデルを用いて、物質に関する情報と、運転パラメータと、所定の化学反応の反応状態との関係を表してもよい。
【0133】
反応モデルは、反応状態のパラメータを求める物理モデルである。反応モデルは、例えば、所定の反応速度論モデルである。
【0134】
修正モデルは、反応モデルを修正したモデルである。修正モデルについては、後述する。
【0135】
収率モデルは、物質に関する情報と、運転パラメータと、反応速度定数とを入力することにより、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を出力するモデルである。
【0136】
図16は、第3DB523のデータ構造の一例を示す図である。
図16に示すように、第3DB523のレコードのそれぞれは、項目「ID」、項目「モデル名」、項目「パラメータ」、項目「日時」などを含む。なお、ここに示す項目はすべてではなく、ここに示す項目がなくても、また、他の項目があっても構わない。
【0137】
項目「ID」は、各レコードを識別するための情報を記憶する。
【0138】
項目「モデル名」は、モデルの名称を格納する。
【0139】
項目「パラメータ」は、対応するモデルのパラメータを記憶する。
【0140】
項目「日時」は、当該モデルの学習日時又は取得日時を記憶する。
【0141】
制御部530は、情報処理装置50のプロセッサ11がプログラムに従って処理を行うことにより、受信制御部131、送信制御部132、取得部533、第1算出部534、解析部535、生成部536、第2算出部537、学習部538、入力部539、予測部540、第3算出部541、最適化部542、出力部543などに示す機能を発揮する。
【0142】
取得部533は、反応状態のパラメータを算出するために必要なデータを、第1DB521から取得する。
【0143】
具体的には、取得部533は、反応装置60において当該化学反応に用いる物質に関する情報、反応装置60の運転パラメータ、その他の過去に当該化学反応を行った際のデータ(例えば、触媒活性、製品収率など)等からなる実データの組を、第1DB521から取得する。
【0144】
また、取得部533は、第3DB523から反応モデル及び反応モデルのパラメータを取得する。
【0145】
第1算出部534は、反応装置60において当該化学反応に用いる物質に関する情報、及び、反応装置60の運転パラメータを用いて、反応装置60において、所定の運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応状態を予測した第1の反応状態のパラメータを求める。
【0146】
化学品等の製造における化学反応においては、高いモデル予測精度が要求される。一方で、モデルでは考慮できるパラメータが限定的になってしまい実験で得られたデータと、モデルの予測結果とでは、ギャップが大きくなってしまう。本開示の技術は、第1の反応状態のパラメータを求めることにより、一旦見かけの反応状態のパラメータを用いる。本開示の技術は、この見かけの反応状態のパラメータを用いることにより、予測モデルの精度向上を図る。
【0147】
具体的には、第1算出部534は、まず、第1DB521から、反応装置60において当該化学反応に用いる物質に関する情報、及び、反応装置60の運転パラメータを取得する。次に、第1算出部534は、第1の反応状態のパラメータとして、反応装置60において、所定の運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応速度を予測した第1の反応速度のパラメータを求める。より具体的には、第1算出部534は、取得した反応装置60において当該化学反応に用いる物質に関する情報と、反応装置60の運転パラメータと、反応モデルとを用いて、反応速度又は反応速度定数を求める。
反応モデルは、例えば、下記式で表される。
【0148】
【0149】
ここで、上記式中において、kは反応速度定数、tは時間、Cは物質濃度、kC 2は反応速度である。
【0150】
そして、第1算出部534は、第1の反応速度のパラメータとして、例えばkを求める。
算出された第1の反応状態のパラメータは、第2DB522に記憶される。
【0151】
解析部535は、第1の反応状態のパラメータと、当該化学反応における所定の反応律速との相関関係を用いて、反応装置60において、所定の運転パラメータで化学反応を行った場合の化学反応の反応律速を解析することにより、反応律速を定量化する。
【0152】
具体的には、解析部535は、まず、反応装置60における反応律速を解析する。解析部は、反応律速を解析する際に、第1の反応状態のパラメータと、化学反応における第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々との相関関係を用いて、反応装置60において、当該運転パラメータで化学反応を行った場合の化学反応の反応律速を解析する。
【0153】
反応律速は、反応を構成する段階のうち、反応状態のパラメータの決定に影響のあるものである。反応律速は、例えば、反応速度を決定する反応を構成する各段階において、最も時間がかかるものである。反応律速は、第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子により表すことができる。当該因子は、例えば、真の反応速度、溶媒中の物質拡散速度、触媒吸着平衡、触媒活性などである。解析部535は、見かけの反応状態のパラメータである第1の反応状態のパラメータと、これらの当該複数の因子の各々の数式から導かれる数値との相関関係を解析する。
【0154】
ここで、第1の反応状態のパラメータと、当該複数の因子の各々との相関関係を、真の反応速度定数であれば反応速度依存、溶媒中の物質拡散速度であれば物質拡散依存、触媒吸着平衡であれば触媒吸着依存、触媒活性であれば触媒活性依存と呼ぶ。
【0155】
次に、解析部535は、解析した第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々を定量化する。具体的には、解析部535は、例えば触媒活性律速の場合、当該運転パラメータについて触媒活性の異なるデータと、各触媒活性と見かけの反応速度定数の相関とを用いて、見かけの反応速度定数と触媒活性の線形近似式を求める。解析部535は、求めた線形近似式を用いて、当該運転パラメータにおける触媒活性を求めることにより、当該化学反応における触媒活性律速を定量化することができる。
【0156】
図17は、運転状態によって、反応律速が何なのかを示す例を示す図である。
図17は、運転パラメータにおいて、反応速度依存、物質拡散依存、触媒吸着依存の関係を示している。
図17に示すように、解析部535が、第1の反応状態のパラメータと、第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々との関係を解析し、定量化することにより、当該運転パラメータにおける物質の反応速度について、他の反応律速との相対的な位置が可視化される。
【0157】
なお、解析部535は、反応律速を定量化した図を画面等の出力デバイスに表示するように構成しても良い。
【0158】
生成部536は、定量化した第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々を用いて、化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成する。
【0159】
具体的には、生成部536は、定量化した1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々により、反応モデルにその相関関係を反映させた修正モデルを生成する。生成部536は、例えば、触媒活性依存を定量化したことにより、kを修正する触媒活性係数αが求まっている場合、上記反応モデルの式においてkにαk´を代入することにより、反応モデルを修正する。生成部536は、同様に、物質拡散依存などにより物質濃度Cに所定の式を代入するなどにより、反応モデルを修正する。
【0160】
そして、生成部536は、生成した修正モデルを、第3DB523に格納する。
【0161】
第2算出部537は、修正モデルを用いて、反応装置60において、運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応状態を予測した第3の反応状態のパラメータを求める。
【0162】
具体的には、第2算出部537は、第3の反応状態のパラメータとして、反応装置60において、所定の運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応速度を予測した第3の反応速度のパラメータを求める。より具体的には、第2算出部537は、取得した運転パラメータ、物質に関する情報、及び第1の反応状態のパラメータと、修正モデルとを用いて、第3の反応状態のパラメータとして、反応速度又は反応速度定数を算出する。そして、第2算出部537は、算出した第3の反応状態のパラメータを、第2DB522に格納する。なお、第3の反応状態のパラメータも、見かけの反応状態のパラメータである。
【0163】
学習部538は、物質に関する情報と、運転パラメータとを入力することに応じて、当該物質の反応状態である第2の反応状態のパラメータを出力する予測モデルを、第1DB521に記憶された物質に関する情報及び取得した運転パラメータと、算出され第2DB522に記憶された見かけの反応状態のパラメータ(第1の反応状態のパラメータ又は第3の反応状態のパラメータ)とを学習データとして学習する。
【0164】
具体的には、学習部538は、物質に関する情報と運転パラメータとを入力することに応じて第2の反応状態のパラメータとして第2の反応速度のパラメータを出力する予測モデルを、第1DB521に記憶された物質に関する情報及び取得した運転パラメータと、求めた見かけの反応状態のパラメータ(第1の反応状態のパラメータ又は第3の反応状態のパラメータ)とを学習データとして学習する、
【0165】
学習部538は、見かけの反応状態のパラメータとして、第1の反応状態のパラメータ又は第3の反応状態のパラメータを学習に用いることができる。第3の反応状態のパラメータは、定量化の難しい第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々の影響を反応モデルに適用しているため、第1の反応状態のパラメータよりも、予測モデルの学習精度の向上に寄与することができる。また、第1の反応状態のパラメータは、修正モデルを作らないため、より早く精度のよい予測モデルを取得したい場合に向いている。学習部538が何れのパラメータを学習に用いるかは、任意に決定することができる。
【0166】
学習部538は、予測モデルを、上記第1実施形態と同様の学習方法を用いて学習する。学習部538が予測モデルを学習することにより、物質の変化に伴い変化する反応速度又は反応速度定数と運転パラメータの相関を学習することができる。よって、学習した予測モデルを用いることで、実運転における反応速度又は反応速度定数を精度よく予測することができる。
【0167】
そして、学習部538は、学習した予測モデルを第3DB523に格納する。
【0168】
入力部539は、物質に関する情報と、運転パラメータとの入力を受け付ける。
【0169】
具体的には、入力部539は、反応装置60における物質の反応状態のパラメータを求めたい物質に関する情報と、求めたい反応状態における運転パラメータとの入力を受け付ける。
【0170】
予測部540は、物質に関する情報と、運転パラメータと、予測モデルとを用いて、第2の反応状態のパラメータを求める。
【0171】
具体的には、予測部540は、まず、学習された予測モデルを第3DB523から取得する。
【0172】
次に、予測部540は、入力を受け付けた物質に関する情報及び運転パラメータを、予測モデルに入力することにより、第2の反応状態のパラメータを求める。
【0173】
第3算出部541は、物質に関する情報と、運転パラメータと、第2の反応状態のパラメータとを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求める。
【0174】
具体的には、第3算出部541は、まず、収率モデルを第3DB523から取得する。次に、第3算出部541は、物質に関する情報と、運転パラメータと、第2の反応状態のパラメータと、収率モデルとを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求める。第2実施形態において、製品収率は、例えば、反応装置60により得られる化学品等の収率である。また、製品収率に寄与する指標値は、製品収率を求めるために必要な運転パラメータなどである。当該指標値は、例えば、反応温度、反応時間、触媒濃度、反応圧力、溶媒の基質濃度などである。
【0175】
最適化部542は、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、物質に関する情報と、運転パラメータと、第2の反応状態のパラメータとを用いて、最適な製品収率を実現する運転パラメータを求める。
【0176】
具体的には、最適化部542は、まず、製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、重物質に関する情報と、運転パラメータと、第2の反応状態のパラメータとを用いて、最適な製品収率を求める。例えば、最適化部542は、製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、物質に関する情報と、運転パラメータと、第2の反応状態のパラメータとを、最適な製品収率を探索するためのモデルに入力することにより、最適となる製品収率を探索する。
【0177】
次に、最適化部542は、製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、物質に関する情報と、第2の反応状態のパラメータと、求めた最適となる製品収率とを用いて、最適な運転パラメータを求める。なお、最適化部542は、学習済みの予測モデルも用いて最適な運転パラメータを求める構成としてもよい。
【0178】
出力部543は、最適な運転パラメータを出力する。出力部543は、出力部140と同様の手法により、出力することができる。また、出力部543は、予測した第2の反応状態のパラメータ、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値も出力する構成としてもよい。
【0179】
なお、第2実施形態において、第1実施形態の技術を用いて、触媒活性を求めること、求めた触媒活性を用いて製品収率等を求めることとしてもよい。
【0180】
<6.動作>
以下では、情報処理装置50における処理について図面を参照しながら説明する。
【0181】
<6.1.学習処理>
図18は、情報処理装置50による学習処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置50は、当該処理を、任意のタイミング(例えば、学習処理開始信号の受信など)において実行する。
【0182】
ステップS501において、取得部533は、化学反応に用いる物質に関する情報及び反応装置の運転パラメータを、第1DB521から取得する。
【0183】
ステップS502において、情報処理装置50は、見かけの反応状態のパラメータの算出処理を実行する。
【0184】
ステップS503において、学習部538は、物質に関する情報と、運転パラメータとを入力することに応じて、当該物質の反応状態である第2の反応状態のパラメータを出力する予測モデルを、取得した物質に関する情報と、取得した運転パラメータと、求めた見かけの反応状態のパラメータとを学習データとして学習する。
【0185】
ステップS504において、学習部538は、学習した予測モデルを第3DB523に格納し、処理を終了する。
【0186】
<6.2.ステップS502の算出処理>
図19は、情報処理装置50によるステップS502の算出処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【0187】
ステップS601において、第1算出部534は、取得した化学反応に用いる物質に関する情報及び反応装置の運転パラメータを用いて、反応装置60において、所定の運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応状態を予測した第1の反応状態のパラメータを求める。
【0188】
ステップS602において、解析部535は、取得したデータを解析することにより、反応装置60における反応律速を解析する。
【0189】
ステップS603において、解析部535は、反応律速を定量化した図を画面等の出力デバイスに表示する。
【0190】
ステップS604において、解析部535は、解析した各反応律速を定量化する。
【0191】
ステップS605において、生成部536は、定量化した第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々を用いて、化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成する。
【0192】
ステップS606において、第2算出部537は、修正モデルを用いて、反応装置60において、運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応状態を予測した第3の反応状態のパラメータを求め、リターンする。
【0193】
<6.3.予測処理>
図20は、情報処理装置50による予測処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置50は、当該処理を、物質に関する情報と、運転パラメータとが入力されること等により実行する。
【0194】
ステップS701において、入力部539は、物質に関する情報と、運転パラメータとの入力を受け付ける。
【0195】
ステップS702において、予測部540は、学習された予測モデルを第3DB523から取得する。
【0196】
ステップS703において、予測部540は、入力を受け付けた物質に関する情報及び運転パラメータを、予測モデルに入力することにより、第2の反応状態のパラメータを求める。
【0197】
ステップS704において、第3算出部541は、物質に関する情報と、運転パラメータと、第2の反応状態のパラメータとを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求める。
【0198】
ステップS705において、最適化部542は、求めた製品収率又は製品収率に寄与する指標値と、物質に関する情報と、運転パラメータと、第2の反応状態のパラメータとを用いて、最適な製品収率を実現する運転パラメータを求める。
【0199】
ステップS706において、出力部543は、最適な運転パラメータを出力し、処理を終了する。
【0200】
<7.小括>
以上説明したように、本開示の技術は、所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、当該反応装置で化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得し、当該反応装置において、運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応状態を予測した第1の反応状態のパラメータを求める。本開示の技術は、物質に関する情報と、運転パラメータとを入力することに応じて、物質の反応状態である第2の反応状態のパラメータを出力する予測モデルを、取得した物質に関する情報と、取得した運転パラメータと、第1の反応状態のパラメータとを学習データとして学習する。本開示の技術は、学習した予測モデルを記憶部に格納する。これにより、本開示の技術は、精度良く化学品(例えば、工業薬品・化学肥料・紙・パルプ・ゴム・合成繊維・合成樹脂・石油製品・医薬品・染料・洗剤・化粧品・バイオ製品)などの製造に係る反応状態を予測することができるモデルを学習することができる。
【0201】
また、本開示の技術は、第1の反応状態のパラメータと、化学反応における所定の反応律速との相関関係を用いて、反応装置において、運転パラメータで化学反応を行った場合の化学反応の反応律速を解析することにより、反応律速を定量化する。本開示の技術は、定量化した反応律速を用いて、化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成し、当該修正モデルを用いて、反応装置において、運転パラメータで化学反応を行った場合の物質の反応状態を予測した第3の反応状態のパラメータを求める。本開示の技術は、予測モデルを、取得した物質に関する情報と、取得した運転パラメータと、第3の反応状態のパラメータとを学習データとして学習する。これにより、本開示の技術は、過去の化学反応の結果、実験結果などを用いて、運転パラメータ及び化学物質に応じた見かけの反応状態のパラメータを算出する。本開示の技術は、この見かけの反応状態のパラメータを用いて、当該モデルを学習する。これにより、定量化の難しい第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々の影響をデータドリブンに精度よく定量化することができ、反応モデルの構築の高速化及び精度向上に寄与することができる。
【0202】
<8.その他>
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換及び変更を行なって実施することができる。これらの実施形態及び変形例ならびに省略、置換及び変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【0203】
例えば、情報処理装置10及び情報処理装置50の各機能を、他の装置に構成してもよい。例えば、記憶部120の各DBは、外部のデータベースとして構築してもよい。また、情報処理装置10及び情報処理装置50の各機能を、他の装置に構成してもよい。また、第1実施形態の技術と、第2実施形態の技術とを適宜組み合わせて実施することができる。
【0204】
また、上記開示では、重質油分解装置20がFCCを採用する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。重質油分解装置20が熱分解及び水素化分解の場合でも、本開示の構成を適用することができる。
図10及び
図11に、重質油分解装置20が熱分解及び水素化分解の場合の構成例を示す。なお、下記の構成例は説明のための一例であり、熱分解及び水素化分解における重質油分解装置20を限定するものではない。
【0205】
図10は、重質油分解装置20の構成例を示す図である。
図10の例は、重質油分解装置20が、熱分解により重質油を分解する場合である。
図10に示すように、重質油分解装置20は、蒸留塔23と、加熱炉24と、リアクター25とを含む。重質油分解装置20は、熱分解において、蒸留塔23、加熱炉24、及びリアクター25を制御する機能、情報処理装置10と所定の情報を通信により送受信することができる機能を有する。
【0206】
蒸留塔23は、原料となる重質油を受け入れ、蒸留によって重質油の各成分(軽質ガス、ナフサ留分、中間留分、重質成分までの各成分及びコーク)を沸点に従い分離し出力する。蒸留塔23は、出力された各成分の中でも蒸留塔23の底部より出力された重質油を加熱炉24に渡す。
【0207】
加熱炉24は、蒸留塔23によって分離された重質油を熱分解に必要な温度まで加熱し、高温の重質油を出力する。加熱炉24は、出力された高温の重質油を、リアクター25に渡す。
【0208】
リアクター25は、加熱炉24によって昇温された高温の重質油を分解し、分解ガス及びコークを出力する。リアクター25は、バッチサイクル運転又はセミバッチサイクル運転を行う。リアクター25は、反応後において、リアクター25内部に残存した重質油のパージを行い、リアクター25表面に付着したコークを取り除くデコーキングがされた後、次の反応に備えてウォームアップされる。
【0209】
図11は、重質油分解装置20の構成例を示す図である。
図11の例は、重質油分解装置20が、水素化分解により重質油を分解する場合である。
図11に示すように、重質油分解装置20は、リアクター26と、水素分離槽27とを含む。重質油分解装置20は、水素化分解において、リアクター26及び水素分離槽27を制御する機能、情報処理装置10と所定の情報を通信により送受信することができる機能を有する。
【0210】
リアクター26は、原料となる重質油を触媒及び水素に接触させることにより分解反応を生じさせ、分解生成物(軽質ガス、ナフサ留分、中間留分、重質成分までの各成分及びコークやスラッジ成分)を得る装置である。具体的には、リアクター26は、重質油と水素と触媒が投入されると当該重質油を水素及び触媒に接触させる。次にリアクター26は、重質油が水素及び触媒に接触されたことによる分解反応により、重質油を重質油分解した分解生成物を得る。そして、リアクター26は、分解油を出力する。
【0211】
水素分離槽27はリアクター26によって分解された分解生成物及び水素(スラリー床水素化分解の場合は触媒も含む)を分離する。具体的には、水素分離槽27は、高圧水素分離槽、中圧水素分離槽及び低圧水素分離槽(スラリー床水素化分解の場合は触媒分離槽も含む)を有し、それぞれの槽において分解生成物及び水素(スラリー床水素化分解の場合は触媒も分離)を分離する。水素分離槽27は、分離された分解生成物及び水素(スラリー床水素化分解の場合は触媒)を出力する。
【0212】
また、第2実施形態において、化学品の製造について例を挙げたが、これに限定されるものではない。化学反応を伴う製品の製造、特にプラントにおいて当該製造を実施する場合、本開示の技術を適用できることが明白である。
【0213】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を、以下に付記する。 (付記1)プロセッサ(11)を備えた重質油反応状態を予測する情報処理装置(10)であって、
重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置に関する運転パラメータと、前記運転パラメータにより前記重質油分解装置において前記重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値とを、学習データとして入力を受け付けるステップ(S101)と、前記重質油の油性状と前記運転パラメータを入力することに応答して前記重質油分解の反応状態を出力する第1モデルを、前記学習データを用いて学習するステップ(102)と、学習した前記第1モデルを記憶部に格納するステップ(S103)と、を実行する情報処理装置。
【0214】
(付記2)前記運転パラメータは、前記運転パラメータのうち前記重質油の分解反応に関する第1のパラメータであり、前記反応状態を示す値は、前記重質油分解における前記重質油の反応速度に関するパラメータであり、前記第1モデルは、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータとを入力することに応答して、前記反応速度に関するパラメータを出力するモデルである、(付記1)に記載の情報処理装置。
【0215】
(付記3)前記運転パラメータは、前記運転パラメータのうち平衡触媒活性に関する第2のパラメータであり、前記反応状態を示す値は、前記重質油分解における前記重質油の平衡触媒活性を示す指標値であり、前記第1モデルは、前記重質油の油性状と、前記第2のパラメータとを入力することに応答して、前記平衡触媒活性を示す指標値を出力するモデルである、(付記1)に記載の情報処理装置。
【0216】
(付記4)重質油分解を実行中の重質油分解装置に関する運転パラメータである第3のパラメータと、重質油の油性状と、学習済みの第1モデルとを取得するステップ(S201)と、前記重質油の油性状と、前記第3のパラメータとを、前記第1モデルに入力することにより、前記反応状態を示す値を予測するステップ(S202、S203)と、前記反応状態を示す値を出力するステップ(S204)と、を実行する(付記1)~(付記3)の何れかに記載の情報処理装置。
【0217】
(付記5)前記第1モデルを、前記学習データと、前記第3のパラメータと、前記予測するステップにより予測された前記反応状態を示す値とを用いて再学習するステップ(S212、S213)と、再学習した前記第1モデルを記憶部に格納するステップ(S214)と、を実行する(付記4)に記載の情報処理装置。
【0218】
(付記6)プロセッサ(11)を備える情報処理装置(10)であって、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置に関する運転パラメータを入力することに応答して前記運転パラメータにより前記重質油分解装置において前記重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値を出力する第1モデルを取得するステップ(S201)と、前記重質油の油性状と、前記運転パラメータとの入力を受け付けるステップ(S202、S203)と、前記重質油の油性状と、前記運転パラメータと、前記第1モデルとを用いて、前記反応状態を示す値を求めるステップ(S203)と、前記重質油の油性状と、前記運転パラメータと、前記反応状態を示す値とを用いて、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を求めるステップ(S304)と、求めた前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を出力するステップ(S305)と、を実行する情報処理装置。
【0219】
(付記7)前記運転パラメータは、前記運転パラメータのうち前記重質油の分解反応に関する第1のパラメータであり、前記反応状態を示す値は、前記重質油分解における前記重質油の反応速度に関するパラメータであり、前記第1モデルは、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータとを入力することに応答して、前記反応速度に関するパラメータを出力するモデルであり、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を求めるステップにおいて、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータと、求めた前記重質油分解の反応速度に関するパラメータとを用いて、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を求める、(付記6)に記載の情報処理装置。
【0220】
(付記8)前記運転パラメータは、前記運転パラメータのうち平衡触媒活性に関する第2のパラメータであり、前記反応状態を示す値は、前記重質油分解における前記重質油の平衡触媒活性を示す指標値であり、前記第1モデルは、前記重質油の油性状と、前記第2のパラメータとを入力することに応答して、前記平衡触媒活性を示す指標値を出力するモデルであり、前記製品収率に寄与する指標値を求めるステップにおいて、前記重質油の油性状と、前記第2のパラメータと、求めた前記平衡触媒活性を示す指標値とを用いて、前記製品収率に寄与する指標値を求める、(付記6)に記載の情報処理装置。
【0221】
(付記9)前記運転パラメータのうち重質油の分解反応に関する第1のパラメータの入力を受け付けるステップ(S201)と、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータとを入力することに応答して、前記重質油分解の反応速度に関するパラメータを出力する第2モデルと、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータと、を用いて、前記反応速度に関するパラメータを求めるステップ(S202)と、を実行し、前記取得するステップにおいて、前記重質油の油性状と、前記第1モデルと、前記第2モデルとを取得し、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を求めるステップにおいて、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータと、求めた前記重質油分解の反応速度に関するパラメータと、前記第2のパラメータと、求めた前記平衡触媒活性を示す指標値とを用いて、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を求める、(付記8)に記載の情報処理装置。
【0222】
(付記10)前記取得するステップにおいて、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータと、求めた前記重質油分解の反応速度に関するパラメータと、前記第2のパラメータと、求めた前記平衡触媒活性を示す指標値とを入力することにより、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を出力する反応モデルと、前記重質油の油性状と、前記第1モデルと、前記第2モデルとを取得し、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を求めるステップにおいて、前記重質油の油性状と、前記第1のパラメータと、求めた前記重質油分解の反応速度に関するパラメータと、前記第2のパラメータと、求めた前記平衡触媒活性を示す指標値と、前記反応モデルとを用いて、前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を求める、(付記9)に記載の情報処理装置。
【0223】
(付記11)求めた前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値と、前記重質油の油性状と、前記運転パラメータと、前記反応状態を示す値とを用いて、最適な製品収率を実現する運転パラメータを求めるステップ(S405)と、を実行する(付記7)~(付記10)の何れかに記載の情報処理装置。
【0224】
(付記12)前記第1モデルは、線形回帰モデル又はニューラルネットワークモデルであり、前記学習するステップにおいて、前記重質油の油性状と、前記運転パラメータと、前記反応状態との相関関係を表すように、前記第1モデルを学習する、(付記1)~(付記11)の何れかに記載の情報処理装置。
【0225】
(付記13)プロセッサ(11)を備えるコンピュータ(例えば、情報処理装置10)が、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置に関する運転パラメータと、前記運転パラメータにより前記重質油分解装置において前記重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値とを、学習データとして入力を受け付けるステップ(S101)と、前記重質油の油性状と前記運転パラメータを入力することに応答して前記重質油分解の反応状態を出力する第1モデルを、前記学習データを用いて学習するステップ(S102)と、学習した前記第1モデルを記憶部に格納するステップ(S103)と、を実行する方法。
【0226】
(付記14)プロセッサ(11)を備えるコンピュータ(例えば、情報処理装置10)に実行させるプログラムであって、前記プロセッサに、重質油分解の対象となる重質油の油性状と、重質油分解を行う重質油分解装置に関する運転パラメータと、前記運転パラメータにより前記重質油分解装置において前記重質油を重質油分解したときの反応状態を示す値とを、学習データとして入力を受け付けるステップ(S101)と、前記重質油の油性状と前記運転パラメータを入力することに応答して前記重質油分解の反応状態を出力する第1モデルを、前記学習データを用いて学習するステップ(S102)と、学習した前記第1モデルを記憶部に格納するステップ(S103)と、を実行させるプログラム。
【0227】
(付記15)プロセッサ(10)を備えた情報処理装置(50)であって、所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、前記反応装置で前記化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得するステップ(S501)と、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応状態を予測した第1の反応状態のパラメータを求めるステップ(S502)と、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の反応状態である第2の反応状態のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、前記第1の反応状態のパラメータとを学習データとして学習するステップ(S503)と、学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップ(S504)と、を実行する情報処理装置。
【0228】
(付記16)前記第1の反応状態のパラメータを求めるステップ(S502)において、前記第1の反応状態のパラメータとして、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応速度を予測した第1の反応速度のパラメータを求め、前記学習するステップ(S503)において、前記物質に関する情報と前記運転パラメータとを入力することに応じて前記第2の反応状態のパラメータとして第2の反応速度のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、前記第1の反応状態のパラメータとを学習データとして学習する、(付記15)に記載の情報処理装置。
【0229】
(付記17)前記第1の反応状態のパラメータと、前記化学反応における所定の反応律速との相関関係を用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記化学反応の反応律速を解析することにより、前記反応律速を定量化するステップ(S602、S604)と、前記定量化した反応律速を用いて、前記化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成するステップ(S605)と、前記修正モデルを用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応状態を予測した第3の反応状態のパラメータを求めるステップ(S606)と、を実行し、前記学習するステップ(S503)において、前記学習データとして、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、前記第3の反応状態のパラメータとを用いて、前記予測モデルを学習する、(付記15)に記載の情報処理装置。
【0230】
(付記18)前記定量化するステップ(S604)において、前記第1の反応状態のパラメータと、前記化学反応における第1の反応状態のパラメータに影響を及ぼす複数の因子の各々との相関関係を用いて、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記化学反応の前記複数の因子の各々を解析することにより、前記前記複数の因子の各々を定量化し、前記生成するステップ(S605)において、前記定量化した前記複数の因子の各々を用いて、前記化学反応を示す反応モデルを修正した修正モデルを生成する、(付記17)に記載の情報処理装置。
【0231】
(付記19)プロセッサ(10)を備える情報処理装置(50)であって、(付記15)~(付記18)の何れかに記載の情報処理装置により学習された前記予測モデルを取得するステップ(S702)と、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとの入力を受け付けるステップ(S701)と、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータと、前記予測モデルとを用いて、前記反応状態のパラメータを求めるステップ(S703)と、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータと、前記第2の反応状態のパラメータとを用いて、製品収率又は製品収率に寄与する指標値を求めるステップ(S704)と、求めた前記製品収率又は前記製品収率に寄与する指標値を出力するステップ(S706)と、を実行する情報処理装置。
【0232】
(付記20)プロセッサ(10)を備えるコンピュータ(例えば、情報処理装置50)が、所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、前記反応装置で前記化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得するステップ(S501)と、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応状態を予測した第1の反応状態のパラメータを求めるステップ(S502)と、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の反応状態である第2の反応状態のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、前記第1の反応状態のパラメータとを学習データとして学習するステップ(S503)と、学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップ(S504)と、を実行する方法。
【0233】
(付記21)プロセッサ(10)を備えるコンピュータ(例えば、情報処理装置50)に実行させるプログラムであって、前記プロセッサに、定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、前記反応装置で前記化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得するステップ(S501)と、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応状態を予測した第1の反応状態のパラメータを求めるステップ(S502)と、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の反応状態である第2の反応状態のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、前記第1の反応状態のパラメータとを学習データとして学習するステップ(S503)と、学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップ(S504)と、を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0234】
1 :情報処理システム
10 :情報処理装置
11 :プロセッサ
12 :メモリ
13 :ストレージ
14 :通信IF
15 :入出力IF
20 :重質油分解装置
21 :リアクター
22 :リジェネレーター
23 :蒸留塔
24 :加熱炉
25 :リアクター
26 :リアクター
27 :水素分離槽
30 :ユーザ端末
40 :ネットワーク
50 :情報処理装置
60 :反応装置
110 :通信部
120 :記憶部
121 :学習データDB
122 :モデルDB
130 :制御部
131 :受信制御部
132 :送信制御部
133 :入力部
134 :学習部
135 :取得部
136 :予測部
137 :決定部
138 :算出部
139 :最適化部
140 :出力部
520 :記憶部
521 :第1DB
522 :第2DB
523 :第3DB
530 :制御部
533 :取得部
534 :第1算出部
535 :解析部
536 :生成部
537 :第2算出部
538 :学習部
539 :入力部
540 :予測部
541 :第3算出部
542 :最適化部
543 :出力部
【要約】
プロセッサを備えた情報処理装置であって、所定の化学反応を行う反応装置に関する運転パラメータと、前記反応装置で前記化学反応に用いる物質に関する情報と、を取得するステップと、前記反応装置において、前記運転パラメータで前記化学反応を行った場合の前記物質の反応状態を予測した第1の反応状態のパラメータを求めるステップと、前記物質に関する情報と、前記運転パラメータとを入力することに応じて、前記物質の反応状態である第2の反応状態のパラメータを出力する予測モデルを、取得した前記物質に関する情報と、取得した前記運転パラメータと、前記第1の反応状態のパラメータとを学習データとして学習するステップと、学習した前記予測モデルを記憶部に格納するステップと、を実行する情報処理装置。