(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】めっき装置及びめっき方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/10 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
C25D21/10 301
(21)【出願番号】P 2023548292
(86)(22)【出願日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2023016570
【審査請求日】2023-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7069442(JP,B1)
【文献】特開2021-130848(JP,A)
【文献】特許第7279273(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を貯留するとともに、アノードが配置されためっき槽と、
カソードとしての基板を前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、
前記アノードと前記基板との間に配置されて、前記アノードに平行な方向で第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に往復移動することで前記めっき液を撹拌するように構成されるとともに、多角形の貫通孔を複数有するハニカム構造部を備える、パドルと、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記パドルの往復移動方向に垂直な方向である第3方向で中央部のパドル幅が、前記第3方向で端部のパドル幅よりも広い形状を有し、
前記ハニカム構造部は、前記第1方向を向いた第1外周壁を有し、
前記第1外周壁は、前記第1外周壁における前記第3方向で中央部に配置されるとともに前記第3方向に延在する第1中央壁を有する、めっき装置。
【請求項2】
前記ハニカム構造部は、前記第2方向を向いた第2外周壁を有し、
前記第2外周壁は、前記第2外周壁における前記第3方向で中央部に配置されるとともに前記第3方向に延在する第2中央壁を有する、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記第1外周壁は、前記第1中央壁の両端部を起点として前記第2方向且つ前記ハニカム構造部の端部に近づく方向に延在する一対の第1傾斜壁を有する、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記一対の第1傾斜壁の少なくとも一方は、少なくとも1つの段差を有する、請求項3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記第2外周壁は、前記第2外周壁の前記第3方向で中央部の側から端部の側に近づきながら前記第1方向に向かって延在する一対の第2傾斜壁を有する、請求項2に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記第2外周壁は、前記第2中央壁の両端部のそれぞれと一対の第2傾斜壁のそれぞれとを接続する、一対の接続壁を有する、請求項5に記載のめっき装置。
【請求項7】
請求項1に記載のめっき装置を用いためっき方法であって、
前記基板を前記めっき液に浸漬させることと、
前記パドルを前記第1方向及び前記第2方向に往復移動させて前記めっき液を撹拌させることと、
前記基板にめっき処理を施すことと、を含む、めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっき処理を施すことが可能なめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなめっき装置は、めっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽と、カソードとしての基板をアノードに対向するように保持する基板ホルダと、アノードと基板との間に配置されてアノードに平行な方向で第1方向及び第1方向とは反対の第2方向に往復移動することでめっき液を撹拌するように構成されるとともに、多角形の貫通孔を複数有するハニカム構造部を備えるパドルと、を備えている。このようなめっき装置は、パドルがハニカム構造部を備えることで、パドルによるめっき液の撹拌力の向上を図っている。
【0003】
また、この特許文献1に例示するパドルのハニカム構造部は、パドルの往復移動方向に垂直な方向である第3方向で中央部のパドル幅(パドルの往復移動方向の長さ)が、第3方向で端部のパドル幅よりも広い形状を有している。そして、このハニカム構造部の外周壁は、第3方向で中央部が円弧状になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来のパドルは、ハニカム構造部の外周壁における第3方向で中央部が円弧状になっているので、例えば、パドルが往復移動した場合に、めっき液が、この外周壁の円弧状の中央部に沿って逃げ易くなっている。このため、従来の技術は、パドルによるめっき液の撹拌力の向上を図るという観点において、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、パドルによるめっき液の撹拌力を向上させることができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、めっき液を貯留するとともに、アノードが配置されためっき槽と、カソードとしての基板を前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、前記アノードと前記基板との間に配置されて、前記アノードに平行な方向で第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に往復移動することで前記めっき液を撹拌するように構成されるとともに、多角形の貫通孔を複数有するハニカム構造部を備える、パドルと、を備え、前記ハニカム構造部は、前記パドルの往復移動方向に垂直な方向である第3方向で中央部のパドル幅が、前記第3方向で端部のパドル幅よりも広い形状を有し、前記ハニカム構造部は、前記第1方向を向いた第1外周壁を有し、前記第1外周壁は、前記第1外周壁における前記第3方向で中央部に配置されるとともに前記第3方向に延在する第1中央壁を有する。
【0008】
この態様によれば、パドルのハニカム構造部の第1外周壁が第3方向(すなわち、パドルの往復移動方向に垂直な方向)に延在する第1中央壁を有するので、パドルが第1方向に移動する際に、第1中央壁によってめっき液を第1方向に効果的に押し出すことができる。これにより、パドルによるめっき液の撹拌力を向上させることができる。
【0009】
(態様2)
上記態様1において、前記ハニカム構造部は、前記第2方向を向いた第2外周壁を有し、前記第2外周壁は、前記第2外周壁における前記第3方向で中央部に配置されるとともに前記第3方向に延在する第2中央壁を有していてもよい。
【0010】
この態様によれば、パドルのハニカム構造部の第2外周壁が第3方向に延在する第2中央壁を有するので、パドルが第2方向に移動する際に、第2中央壁によってめっき液を第2方向に効果的に押し出すことができる。これにより、パドルによるめっき液の撹拌力をさらに向上させることができる。
【0011】
(態様3)
上記の態様1又は2において、前記第1外周壁は、前記第1中央壁の両端部を起点として前記第2方向且つ前記ハニカム構造部の端部に近づく方向に延在する一対の第1傾斜壁を有していてもよい。
【0012】
(態様4)
上記の態様3において、前記一対の第1傾斜壁の少なくとも一方は、少なくとも1つの段差を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、めっき液の撹拌力をさらに向上させることができる。
【0014】
(態様5)
上記の態様2~4のいずれか1態様において、前記第2外周壁は、前記第2外周壁の前記第3方向で中央部の側から端部の側に近づきながら前記第1方向に向かって延在する一対の第2傾斜壁を有していてもよい。
【0015】
(態様6)
上記の態様5において、前記第2外周壁は、前記第2中央壁の両端部のそれぞれと一対の第2傾斜壁のそれぞれとを接続する、一対の接続壁を有していてもよい。
【0016】
(態様7)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき方法は、上記の態様1~6のいずれか1態様に係るめっき装置を用いためっき方法であって、前記基板を前記めっき液に浸漬させることと、前記パドルを前記第1方向及び前記第2方向に往復移動させて前記めっき液を撹拌させることと、前記基板にめっき処理を施すことと、を含む。
【0017】
この態様によれば、パドルによるめっき液の撹拌力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係るめっき装置におけるめっきモジュールの構成を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る基板がめっき液に浸漬された状態を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係るパドル及び駆動装置を説明するための模式図である。
【
図6】実施形態に係るパドルの模式的な平面図である。
【
図7】実施形態に係るめっき液の供給からめっき処理の開始までの一連の動作を説明するためのフロー図である。
【
図8】比較例に係るめっき装置のパドルの模式的な平面図である。
【
図9】実施形態の変形例1に係るパドルの第1外周壁の周辺構成を示す模式的な平面図である。
【
図10】実施形態の変形例1に係るパドルの効果を実証するためのシミュレーション結果の一例である。
【
図11】実施形態の変形例1に係るパドルの第2外周壁の周辺構成を示す模式的な平面図である。
【
図12】実施形態の変形例2に係るパドルの第2外周壁の周辺構成を示す模式的な平面図である。
【
図13】実施形態の変形例3に係るパドルの第1外周壁の周辺構成を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、構成要素の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0020】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図(上面図)である。
図1及び
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0021】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200及びスピンリンスドライヤ600の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0022】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0023】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0024】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0025】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0026】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0027】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0028】
なお、
図1や
図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、
図1や
図2の構成に限定されるものではない。
【0029】
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係るめっき装置1000におけるめっきモジュール400の構成を示す模式図である。具体的には、
図3は、基板Wfがめっき液Psに浸漬される前の状態におけるめっきモジュール400を模式的に図示している。
図4は、基板Wfがめっき液Psに浸漬された状態を示す模式図である。
【0031】
図3及び
図4に例示するめっき装置1000は、一例として、カップ式のめっき装置である。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば、本実施形態に係るめっき装置1000は、基板Wfの面方向を上下方向にした状態でめっき液Psに浸漬させるタイプのめっき装置(すなわち、縦型のめっき装置)であってもよい。
【0032】
図3及び
図4に例示するめっき装置1000のめっきモジュール400は、めっき槽10と、オーバーフロー槽20と、基板ホルダ30と、パドル70と、を備えている。また、めっきモジュール400は、
図3に例示するように、回転機構40と、傾斜機構45と、昇降機構50と、を備えていてもよい。
【0033】
本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。具体的には、めっき槽10は、底壁10aと、この底壁10aの外周縁から上方に延在する外周壁10bとを有しており、この外周壁10bの上部が開口している。なお、めっき槽10の外周壁10bの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る外周壁10bは、一例として円筒形状を有している。めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。
【0034】
めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、めっき液Psには所定の添加剤が含まれていてもよい。
【0035】
めっき槽10の内部には、アノード11が配置されている。アノード11の具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、アノード11の一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0036】
図3や
図4に例示するように、めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方には、イオン抵抗体12が配置されていてもよい。具体的には、
図4(B1部分の拡大図)に例示するように、イオン抵抗体12は、複数の孔12a(細孔)を有する多孔質の板部材によって構成されている。孔12aは、イオン抵抗体12の下面と上面とを連通するように設けられている。
【0037】
図3に例示するように、イオン抵抗体12における複数の孔12aが形成された領域を「孔形成エリアPA」と称する。本実施形態に係る孔形成エリアPAは、平面視で円形状を有している。また、本実施形態に係る孔形成エリアPAの面積は、基板Wfの被めっき面Wfaの面積と同じか、又は、この被めっき面Wfaの面積よりも大きい。但し、この構成に限定されるものではなく、孔形成エリアPAの面積は、基板Wfの被めっき面Wfaの面積よりも小さくてもよい。
【0038】
このイオン抵抗体12は、アノード11とカソードとしての基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている。本実施形態のように、めっき槽10にイオン抵抗体12が配置されることで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を容易に図ることができる。
【0039】
図3や
図4に例示するように、めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方且つイオン抵抗体12よりも下方の箇所には、膜16が配置されていてもよい。この場合、めっき槽10の内部は、膜16によって、膜16よりも下方のアノード室17aと、膜16よりも上方のカソード室17bとに区画される。アノード11はアノード室17aに配置され、イオン抵抗体12や基板Wfはカソード室17bに配置される。膜16は、めっき液Psに含まれる金属イオンを含むイオン種が膜16を通過することを許容しつつ、めっき液Psに含まれる非イオン系のめっき添加剤が膜16を通過することを抑制するように構成されている。このような膜16として、例えばイオン交換膜を用いることができる。
【0040】
めっき槽10には、めっき槽10にめっき液Psを供給するための供給口が設けられている。具体的には、本実施形態に係るめっき槽10の外周壁10bには、アノード室17aにめっき液Psを供給するための第1供給口13aと、カソード室17bにめっき液Psを供給するための第2供給口13bと、が設けられている。
【0041】
また、めっき槽10には、アノード室17aのめっき液Psをめっき槽10の外部に排出するための第1排出口14aが設けられている。第1排出口14aから排出されためっき液Psは、ポンプ(図示せず)によって圧送されて、再び、第1供給口13aからアノード室17aに供給される。
【0042】
オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外側に配置された、有底の容器によって構成されている。オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外周壁10bの上端を超えためっき液Ps(すなわち、めっき槽10からオーバーフローしためっき液Ps)を一時的に貯留するために設けられている。オーバーフロー槽20に貯留されためっき液Psは、第2排出口14bから排出された後に、ポンプ(図示せず)によって圧送されて、再び、第2供給口13bからカソード室17bに供給される。
【0043】
基板ホルダ30は、カソードとしての基板Wfを、基板Wfの被めっき面Wfaがアノード11に対向するように保持している。本実施形態において、基板Wfの被めっき面Wfaは、具体的には、基板Wfの下方側を向いた面(下面)に設けられている。
【0044】
図3に例示するように、基板ホルダ30は基板Wfの被めっき面Wfaの外周縁よりも下方に突出するように設けられたリング31を有していてもよい。具体的には、本実施形態に係るリング31は、下面視で、リング形状を有している。
【0045】
基板ホルダ30は、回転機構40に接続されていている。回転機構40は、基板ホルダ30を回転させるための機構である。
図3に例示されている「R1」は、基板ホルダ30の回転方向の一例である。回転機構40としては、公知の回転モータ等を用いることができる。傾斜機構45は、回転機構40及び基板ホルダ30を傾斜させるための機構である。昇降機構50は、上下方向に延在する支軸51によって支持されている。昇降機構50は、基板ホルダ30、回転機構40及び傾斜機構45を上下方向に昇降させるための機構である。昇降機構50としては、直動式のアクチュエータ等の公知の昇降機構を用いることができる。
【0046】
制御モジュール800は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサ801や、非一時的な記憶媒体としての記憶装置802等を備えている。制御モジュール800は、記憶装置802に記憶されたプログラムの指令に基づいて、プロセッサ801が作動することで、めっきモジュール400の動作を制御する。
【0047】
図5は、パドル70及び後述する駆動装置90を説明するための模式図である。
図6はパドル70の模式的な平面図である。
図3~
図6を参照して、パドル70は、めっき槽10の内部におけるアノード11と基板Wfとの間の箇所に配置されている。具体的には、本実施形態に係るパドル70は、アノード11よりも上方に配置されたイオン抵抗体12と基板Wfとの間に配置されている。
【0048】
図5を参照して、パドル70は、駆動装置90によって駆動される。駆動装置90の動作は制御モジュール800が制御する。パドル70が駆動されることで、めっき槽10のめっき液Psは撹拌される。
【0049】
本実施形態に係る駆動装置90は、制御モジュール800の指示を受けて、パドル70を、アノード11(又は、基板Wf)に平行な方向で「第1方向(本実施形態では、一例として、X方向)」、及び、第1方向とは反対の「第2方向(本実施形態では、一例として、-X方向)」に交互に駆動する。すなわち、本実施形態に係るパドル70は、第1方向及び第2方向に往復移動する。
【0050】
なお、このような駆動装置90のメカニカルな機構自体は、例えば、特許文献1や、特開2021-130848号公報等に開示されているような公知の駆動装置と同様である。すなわち、本実施形態に係る駆動装置90は、電動機91と、パドル70に接続されるとともに電動機91の回転運動を直進往復運動に変換してパドル70に伝達するように構成された動力変換機構92と、を備えている。
【0051】
なお、第1方向や第2方向は上述した方向に限定されるものではない。他の一例を挙げると、-X方向を第1方向とし、X方向を第2方向としてもよい。また、パドル70の往復移動方向に垂直な方向を「第3方向(本実施形態では、一例として、Y方向及び-Y方向)」と称する。また、
図5及び
図6には、パドル70の中心軸線として、第3方向に延在する第1中心軸線XL1と、パドル70の往復移動方向に延在する第2中心軸線XL2と、が例示されている。
【0052】
パドル70は、平面視で、めっき液Psの撹拌時におけるパドル70の移動領域MA(すなわち、パドル70が往復移動する範囲)がイオン抵抗体12の孔形成エリアPAの全面を覆うように構成されていることが好ましい。この構成によれば、イオン抵抗体12の孔形成エリアPAよりも上方のめっき液Psを、パドル70によって効果的に撹拌することができる。
【0053】
なお、パドル70は、少なくともめっき液Psを撹拌するときに、めっき槽10の内部に配置されていればよく、めっき槽10の内部に常に配置されている必要はない。例えば、パドル70の駆動が停止されてパドル70によるめっき液Psの撹拌が行われない場合には、パドル70はめっき槽10の外部に配置された構成とすることもできる。
【0054】
パドル70は、ハニカム構造を有するハニカム構造部71と、このハニカム構造部71の第3方向の端部に接続された一対の外枠(第1外枠72a及び第2外枠72b)と、を備えている。第1外枠72a及び第2外枠72bの具体的な構造は、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る第1外枠72a及び第2外枠72bは、一例として、平板状の部材によって構成されている。第1外枠72a及び第2外枠72bの少なくとも一方は、駆動装置90に接続されている。
【0055】
ハニカム構造部71は、梁部材73によって区画された多角形の貫通孔74を複数有している。本実施形態に係る貫通孔74は、ハニカム構造部71の上面と下面とを連通するように、上下方向に貫通している。
【0056】
貫通孔74の多角形の具体的な形状は、特に限定されるものではなく、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等、種々のN角形(Nは3以上の自然数)を用いることができる。本変形例では、多角形の一例として、六角形が用いられている。
【0057】
図6を参照して、本実施形態に係るハニカム構造部71は、平面視で、第3方向に沿ってハニカム構造部71の「パドル幅D2(パドル70の往復移動方向の長さ)」が変化する部分を有している。具体的には、ハニカム構造部71は、第3方向で中央部のパドル幅D2(後述する第1中央壁77と第2中央壁80との距離)が第3方向で端部のパドル幅D2(後述する第1端部壁79と第2端部壁82との距離)よりも広い形状を有している。換言すると、ハニカム構造部71は、第3方向で端部よりも中央側の部分が、この端部よりも第1方向及び第2方向に突出した形状を有している。
【0058】
この構成によれば、例えば、ハニカム構造部71における中央部のパドル幅D2が端部のパドル幅D2と同じ場合に比較して、パドル70が一定距離移動したときのパドル70が撹拌可能なエリアを広くすることができる。
【0059】
また、本実施形態に係るハニカム構造部71は、一例として、第2中心軸線XL2を挟んで線対称(左右対称)の形状を有している。
【0060】
また、本実施形態に係るハニカム構造部71は、第1方向を向いた第1外周壁75と、第2方向を向いた第2外周壁76とを備えている。第1外周壁75及び第2外周壁76は、梁部材73によって構成されている。
【0061】
第1外周壁75は、第1中央壁77と、一対の第1傾斜壁78と、一対の第1端部壁79と、を有している。
【0062】
第1中央壁77は、第1外周壁75における第3方向で中央部に配置されている。また、第1中央壁77は第3方向に延在している。換言すると、第1中央壁77は、第1中心軸線XL1と平行に延在している。すなわち、本実施形態に係る第1中央壁77は、第1方向に円弧状に突出した曲面ではなく、第3方向に直線的に延在した平面によって構成されている。
【0063】
一対の第1傾斜壁78は、第1中央壁77の第3方向で中央部の側から端部の側に近づきながら第2方向に向かって延在している。具体的には、本実施形態に係る一対の第1傾斜壁78は、第1中央壁77の両端部を起点として第2方向、且つ、ハニカム構造部71の端部に近づく方向に延在している。換言すると、一対の第1傾斜壁78は、第1中央壁77の両端部を起点として、第2中心軸線XL2から離れる方向に延在するとともに、第2中心軸線XL2から離れるほど第1中心軸線XL1に近づくように延在している。
【0064】
一対の第1端部壁79は、一対の第1傾斜壁78のそれぞれの端部を起点として第3方向に延在している。換言すると、一対の第1端部壁79は、一対の第1傾斜壁78のそれぞれの端部を起点として、第2中心軸線XL2から離れる方向に、且つ、第1中心軸線XL1と平行に延在している。
【0065】
なお、パドル70が第1方向に移動した際に、一対の第1傾斜壁78と一対の第1端部壁79との接続箇所に対して、めっき液Psから、大きな応力が加わる。このため、一対の第1傾斜壁78と一対の第1端部壁79との接続箇所は、所定の曲率を有する曲面84(換言すると、R面)になっていることが好ましい。この構成によれば、一対の第1傾斜壁78と一対の第1端部壁79との接続箇所の強度を向上させることができる。
【0066】
第2外周壁76は、第2中央壁80と、一対の第2傾斜壁81と、一対の第2端部壁82と、一対の接続壁83と、を有している。
【0067】
第2中央壁80は、第2外周壁76における第3方向で中央部に配置されている。また、第2中央壁80は、第3方向に延在している。換言すると、第2中央壁80は、第1中心軸線XL1と平行に延在している。すなわち、本実施形態に係る第2中央壁80は、第2方向に円弧状に突出した曲面ではなく、第3方向に直線的に延在した平面によって構成されている。
【0068】
一対の第2傾斜壁81は、第2外周壁76の第3方向で中央部の側から端部の側に近づきながら第1方向に向かって延在している。換言すると、一対の第2傾斜壁81は、第2中心軸線XL2から離れる方向に延在するとともに、第2中心軸線XL2から離れるほど第1中心軸線XL1に近づくように延在している。
【0069】
一対の接続壁83は、第2中央壁80の両端部のそれぞれと、一対の第2傾斜壁81のそれぞれと、を接続している。また、本実施形態に係る一対の接続壁83は、第2中央壁80の両端部のそれぞれを起点として第2方向に延在している。さらに、本実施形態に係る一対の接続壁83は、第2方向に向かうにつれてハニカム構造部71の端部に近づくように延在している。
【0070】
但し、接続壁83の構成はこれに限定されるものではない。例えば、接続壁83は、パドル70の往復移動方向に延在していてもよい(換言すると、第2中心軸線XL2に平行に延在していてもよい)。
【0071】
なお、本実施形態に係るパドル70の第2外周壁76は、上述した接続壁83を有しているので、第2中央壁80と一対の接続壁83とによって区画された領域が、第1方向に凹んだ「凹部」になっている。但し、これは、第2外周壁76の一例に過ぎず、第2外周壁76の構成は、このような接続壁83を有する形状(すなわち、凹部を有する形状)に限定されるものではない。なお、第2外周壁76が接続壁83を備えていない場合の一例については、後述する
図12で説明する。
【0072】
一対の第2端部壁82は、一対の第2傾斜壁81のそれぞれの端部を起点として第3方向に延在している。換言すると、一対の第2端部壁82は、一対の第2傾斜壁81のそれぞれの端部を起点として、第2中心軸線XL2から離れる方向に、且つ、第1中心軸線XL1と平行に延在している。
【0073】
パドル70が第2方向に移動した際に、一対の第2傾斜壁81と一対の第2端部壁82との接続箇所には、めっき液Psから大きな応力が加わる。このため、一対の第2傾斜壁81と一対の第2端部壁82との接続箇所は、所定の曲率を有する曲面84(換言すると、R面)になっていることが好ましい。この構成によれば、一対の第2傾斜壁81と一対の第2端部壁82との接続箇所の強度を向上させることができる。
【0074】
第1中央壁77の第3方向の長さ(D4)は、一例として、ハニカム構造部71の第3方向の長さ(すなわち、全長(D3))の5%以上、50%以下である。また、第2中央壁80の第3方向の長さ(D5)は、一例として、ハニカム構造部71の全長(D3)の5%以上、50%以下である。また、
図6に例示する構成では、一例として、第1中央壁77の長さ(D4)は、第2中央壁80の長さ(D5)よりも長くなっている。但し、これらは、第1中央壁77や第2中央壁80の長さの一例に過ぎず、第1中央壁77及び第2中央壁80の長さは、これらの例に限定されるものではない。
【0075】
また、パドル幅D2の「最大値(D2max)」は、基板Wfの被めっき面Wfaの第1方向にある外縁と第2方向にある外縁との距離の最大値である「基板幅D1(この符号は
図3に例示されている)」よりも大きくてもよく、小さくてもよい。あるいは、パドル幅D2の最大値(D2max)は基板幅D1と同じ値であってもよい。
【0076】
但し、パドル幅D2の最大値(D2max)が基板幅D1よりも小さい場合の方が、パドル幅D2の最大値(D2max)が基板幅D1と同じ場合又は基板幅D1よりも大きい場合に比較して、パドル70とめっき槽10の外周壁10bとの間の隙間を大きく確保することができる。この結果、めっき槽10の内部におけるパドル70の第1方向及び第2方向への移動距離(すなわち、パドル70の往復移動時のストローク)を大きくすることができる。これにより、パドル70によってめっき液Psを効果的に撹拌することができる。このような観点において、パドル幅D2の最大値(D2max)は基板幅D1よりも小さいことが好ましい。
【0077】
なお、基板Wfの被めっき面Wfaが円形の場合、基板幅D1は、被めっき面Wfaの直径に相当する。基板Wfの被めっき面Wfaが四角形の場合、基板幅D1は、被めっき面Wfaの第1方向にある辺と、この辺に対向する辺(第2方向にある辺)との間隔の最大値に相当する。
【0078】
パドル70の具体的な製造手法は、特に限定されるものではないが、本実施形態に係るパドル70は、一例として、3Dプリンター等の公知の立体印刷機を用いて製造することができる。
【0079】
図7は、本実施形態に係るめっき液の供給からめっき処理の開始までの一連の動作を説明するためのフロー図である。まず、めっき槽10にめっき液Psを供給する(ステップS10)。具体的には、アノード11及びイオン抵抗体12がめっき液Psに浸漬するように、めっき槽10にめっき液Psを供給する。より具体的には、本実施形態では、第1供給口13a及び第2供給口13bからめっき液Psをめっき槽10に供給する。
【0080】
次いで、基板Wfをめっき液Psに浸漬させる(ステップS20)。具体的には、本実施形態では、昇降機構50が基板ホルダ30を下降させることで、基板Wfの少なくとも被めっき面Wfaをめっき液Psに浸漬させる。
【0081】
次いで、駆動装置90がパドル70の駆動を開始させることで、パドル70によるめっき液Psの撹拌を開始させる(ステップS30)。
【0082】
次いで、通電装置(図示せず)によってアノード11と基板Wfとの間に電気を流すことで、基板Wfへのめっき処理を開始させる(ステップS40)。これにより、基板Wfの被めっき面Wfaへのめっき皮膜の形成が開始される。具体的には、本実施形態では、このステップS40に係る基板Wfへのめっき処理の実行中においても、ステップS30に係るパドル70によるめっき液Psの撹拌は行われている(すなわち、めっき液Psを撹拌しつつ、被めっき面Wfaへのめっき皮膜の形成が行われている)。
【0083】
なお、パドル70がめっき液Psを撹拌する時期は、上述した時期に限定されるものではない。例えば、ステップS10とステップS20との間の時期(すなわち、めっき槽10にめっき液Psが供給された後であって、基板Wfがめっき液Psに浸漬される前の時期)においても、パドル70によってめっき液Psを撹拌してもよい。
【0084】
続いて、上述しためっき装置1000の作用効果について説明する。まず、本実施形態に係るめっき装置1000によれば、パドル70がハニカム構造部71を有するので、パドル70がハニカム構造部71を有さない場合に比較して、梁部材73(すなわち、撹拌部材)の配置密度を多くすることができる。これより、めっき液Psを効果的に撹拌することができる。また、パドル70の強度を向上させることもできる。
【0085】
さらに、本実施形態によれば、以下に説明する作用効果を奏することもできる。この作用効果について、比較例と比較しつつ説明する。
図8は、比較例に係るめっき装置のパドル7000の模式的な平面図である。具体的には、
図8は、比較例に係るパドル7000が第1方向に移動した場合の様子を模式的に図示している。
【0086】
比較例に係るパドル7000は、第1外周壁75が第1中央壁77及び第1傾斜壁78に代えて第1円弧壁7100を有する点と、第2外周壁76が第2中央壁80、接続壁83、及び、第2傾斜壁81に代えて、第2円弧壁7110を有する点と、において、前述した
図5や
図6に例示する本実施形態に係るパドル70と異なっている。
【0087】
比較例に係るパドル7000の場合、例えば、パドル7000が往復移動した場合に、めっき液Psが、パドル7000の第1円弧壁7100の部分、及び/又は、第2円弧壁7110の部分に沿って逃げ易い構造になっている。この点において、比較例に係るパドル7000のめっき液Psの撹拌力は十分に大きいとはいえない。
【0088】
これに対して、本実施形態に係るパドル70によれば、パドル70の第1中央壁77が第3方向(すなわち、パドル70の往復移動方向に垂直な方向)に延在しているので、パドル70が第1方向に移動する際に、第1中央壁77によってめっき液Psを第1方向に効果的に押し出すことができる。これにより、パドル70によるめっき液Psの撹拌力を向上させることができる。
【0089】
さらに、本実施形態によれば、パドル70の第2中央壁80も第3方向に延在しているので、パドル70が第2方向に移動する際に、第2中央壁80によってめっき液Psを第2方向に効果的に押し出すことができる。これにより、パドル70によるめっき液Psの撹拌力をさらに向上させることができる。
【0090】
本実施形態によれば、上述したように、めっき液Psの撹拌力を向上させることができるので、基板Wfの特に外周部におけるめっき液Pdの撹拌力を向上させることができる。この結果、基板Wfの中心部と基板Wfの外周部との間におけるめっき液Psの撹拌力の差を低減することができる。これにより、基板Wfに対して高電流密度でめっき処理を施した際に、基板Wfの外周部においてめっき異常が発生することを抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、上述したように、めっき液Psの撹拌力を向上させることができるので、めっき液Psの均一化を効果的に図ることができる。また、本実施形態によれば、例えば、めっき槽10にめっき液Psを供給した際にめっき液Psに含まれた気泡Bu(これは
図4に例示されている)がイオン抵抗体12の孔12aに付着した場合であっても、パドル70によるめっき液Psの撹拌によって、孔12aに付着した気泡Buの上方への移動を効果的に促進させることができる。これにより、孔12aに付着した気泡Buを効果的に除去することができる。
【0092】
なお、上述した実施形態において、第2外周壁76は第2中央壁80を有しているが、この構成に限定されるものではない。上述した実施形態において、第2外周壁76は第2中央壁80を有しておらず、例えば、
図8に例示した比較例の第2円弧壁7110のような円弧状の形状であってもよい。但し、第2外周壁76が第2中央壁80を有する場合の方が、第2外周壁76が円弧状の場合に比較して、めっき液Psを効果的に撹拌することができる点で好ましい。
【0093】
(変形例1)
図9は、実施形態の変形例1に係るパドル70aの後述する第1外周壁75aの周辺構成を示す模式的な平面図である。なお、
図9は、本変形例に係るパドル70aの第1中心軸線XL1よりも第1方向の側の部分のみを図示している。また、
図9において、ハニカム構造部71の貫通孔74の図示は省略されている。
【0094】
本変形例に係るパドル70aは、第1外周壁75に代えて、第1外周壁75aを備える点で、
図6に例示した実施形態に係るパドル70と異なっている。第1外周壁75aは、第1傾斜壁78に代えて第1傾斜壁78aを有する点で、第1外周壁75と異なっている。パドル70aの他の構成はパドル70と同様である(なお、この場合、パドル70aの第2外周壁76は、
図6に例示した構成になっている)。
【0095】
本変形例に係る一対の第1傾斜壁78aは、その少なくとも一方が少なくとも1つの段差85を有する点で、このような段差85を有せずに平滑な面を有する実施形態に係る一対の第1傾斜壁78(
図6)と異なっている。すなわち、本変形例に係る2つの第1傾斜壁78aのうち、いずれか一方のみが少なくとも1つの段差85を有していてもよく、2つの第1傾斜壁78aの両方が少なくとも1つの段差85を有していてもよい。
図9に例示するパドル70aでは、一例として、一対の第1傾斜壁78aの両方が、複数の段差85を有している。段差85は、第1中央壁77と同様に、第3方向に延在する平面を有することが好ましい。
【0096】
本変形例によれば、第1中央壁77を有するとともに、第1傾斜壁78aが段差85を有するので、パドル70aが第1方向に移動する際に、第1中央壁77及び第1傾斜壁78aの段差85の両方によって、めっき液Psを第1方向に効果的に押し出すことができる。これにより、めっき液Psの撹拌力をより向上させることができる。
【0097】
図10は、本変形例に係るパドル70aの効果を実証するためのシミュレーション結果の一例である。具体的には、
図10のラインL1a及びラインL1bは、
図9で説明した本変形例に係るパドル70aのシミュレーション結果である。一方、ラインL2a及びラインL2bは、比較例に係るパドル7000(
図8)のシミュレーション結果である。なお、ラインL1a,L1bに係る本変形例もラインL2a,L2bに係る比較例も、パドルの形状以外は、同じシミュレーション条件下でシミュレーションが行われた。また、ラインL1bとラインL2bとは、ラインが重なっている。また、
図10の横軸は、パドルの往復移動によってめっき液Psが撹拌された場合におけるめっき液Psの流速(mm/sec)を示している。
図10の縦軸は、基板Wfの表面からの垂直方向の距離(μm)を示している。
【0098】
具体的には、ラインL1a及びラインL2aは、パドルが往復移動した場合における、
図5に例示する「P2」、「P4」、「P6」、「P8」のいずれかの箇所(すなわち、基板Wfの外周部の箇所)の流速の計算結果を示している。一方、ラインL1b及びラインL2bは、
図5に例示する「P0」の箇所(すなわち、基板Wfの中心部の箇所)の流速の計算結果を示している。
【0099】
図10のラインL1a(本変形例)をラインL2a(比較例)と比較すると分かるように、基板Wfからの距離が同じ場合で比較したときに、本変形例の方が比較例に比較して流速が全体的に上昇している。具体的には、ラインL1aの流速はラインL2aの流速の最大で約1.25倍になっている。このシミュレーション結果からも、本変形例に係るパドル70aを用いることで、めっき液Psの撹拌力の向上を図れることが分かる。特に、基板Wfの外周部におけるめっき液Pdの撹拌力の向上を図れることが分かる。この結果、本変形例の場合、ラインL1aとラインL1bとの間の流速差が、比較例の場合に比較して小さくなっている。すなわち、本変形例によれば、基板Wfの中心部(ラインL1b)と基板Wfの外周部(L1a)との間におけるめっき液Psの撹拌力の差を低減することができる。
【0100】
なお、
図11に例示するように、本変形例において、第2外周壁76aの一対の第2傾斜壁81aの少なくとも一方も、第1傾斜壁78aと同様に、少なくとも1つの段差85を有していてもよい。この構成によれば、パドル70aが第2方向に移動する際に、第2中央壁80及び第2傾斜壁81aの段差85の両方によって、めっき液Psを第2方向に効果的に押し出すことができる。これにより、めっき液Psの撹拌力をより向上させることができる。
【0101】
(変形例2)
図12は、実施形態の変形例2に係るパドル70bの後述する第2外周壁76bの周辺構成を示す模式的な平面図である。なお、
図12は、本変形例に係るパドル70bの第1中心軸線XL1よりも第2方向の側の部分のみを図示している。また、
図12において、ハニカム構造部71の貫通孔74の図示は省略されている。
【0102】
本変形例に係るパドル70bは、第2外周壁76に代えて、第2外周壁76bを備える点で、
図6に例示した実施形態に係るパドル70と異なっている。第2外周壁76bは、接続壁83を有しない点で、第2外周壁76と異なっている。すなわち、本変形例に係る第2外周壁76bの第2傾斜壁81は、第2中央壁80の端部に直接接続している。パドル70bの他の構成は、パドル70と同様である(なお、この場合、パドル70bの第1外周壁75は、
図6に例示した構成になっている)。
【0103】
本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0104】
なお、パドル70は、
図9に例示する第1外周壁75aと、
図12に例示する第2外周壁76bと、を備える構成とすることもできる。
【0105】
(変形例3)
図13は、実施形態の変形例3に係るパドル70cの後述する第1外周壁75cの周辺構成を示す模式的な平面図である。なお、
図13は、本変形例に係るパドル70cの第1中心軸線XL1よりも第1方向の側の部分のみを図示している。また、
図13において、ハニカム構造部71の貫通孔74の図示は省略されている。
【0106】
本変形例に係るパドル70cは、第1外周壁75に代えて、第1外周壁75cを備える点で、
図6に例示した実施形態に係るパドル70と異なっている。第1外周壁75cは、第1中央壁77と一対の第1傾斜壁78とを接続する一対の接続壁83cをさらに備えている点において、
図6に例示したパドル70の第1外周壁75と異なっている。パドル70cの他の構成はパドル70と同様である(なお、この場合、パドル70cの第2外周壁76は、
図6に例示した構成になっている)。
【0107】
一対の接続壁83cは、第1中央壁77の両端部のそれぞれと、一対の第1傾斜壁78のそれぞれと、を接続している。また、本変形例に係る一対の接続壁83cは、第1中央壁77の両端部のそれぞれを起点として第1方向に延在している。さらに、本変形例に係る一対の接続壁83cは、第1方向に向かうにつれてハニカム構造部71の端部に近づくように延在している。換言すると、本変形例に係る一対の接続壁83cは、第1中心軸線XL1から離れるにつれて第2中心軸線XL2からも離れるように、延在してる。
【0108】
但し、接続壁83cの構成はこれに限定されるものではない。例えば、接続壁83cは、パドル70の往復移動方向に延在していてもよい(換言すると、第2中心軸線XL2に平行に延在していてもよい)。
【0109】
本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、さらなる種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0111】
10 めっき槽
11 アノード
30 基板ホルダ
70 パドル
71 ハニカム構造部
74 貫通孔
75 第1外周壁
76 第2外周壁
77 第1中央壁
78 第1傾斜壁
79 第1端部壁
80 第2中央壁
81 第2傾斜壁
82 第2端部壁
83 接続壁
85 段差
1000 めっき装置
Wf 基板
Ps めっき液
Bu 気泡
D2 パドル幅
【要約】
パドルによるめっき液の撹拌力を向上させることができる技術を提供する。
めっき装置1000は、アノード11と基板Wfとの間に配置されてアノードに平行な方向で第1方向及び第2方向に往復移動することでめっき液Psを撹拌するように構成されるとともに、多角形の貫通孔74を複数有するハニカム構造部71を備えるパドル70を備え、ハニカム構造部は、パドルの往復移動方向に垂直な方向である第3方向で中央部のパドル幅が、第3方向で端部のパドル幅よりも広い形状を有し、ハニカム構造部は、第1方向を向いた第1外周壁75を有し、第1外周壁は、第1外周壁における第3方向で中央部に配置されるとともに第3方向に延在する第1中央壁77を有する。