(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】イソプロピルアルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/80 20060101AFI20230926BHJP
C07C 31/10 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C07C29/80
C07C31/10
(21)【出願番号】P 2022540969
(86)(22)【出願日】2021-12-05
(86)【国際出願番号】 KR2021018304
(87)【国際公開番号】W WO2022255576
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070239
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、サ ウン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ビュン ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン キュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ウー
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217279(WO,A1)
【文献】特開平8-291092(JP,A)
【文献】特開昭47-031911(JP,A)
【文献】米国特許第4469903(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器から、プロピレン単量体と水を反応させた反応生成物ストリームを吸収塔に供給するステップと、
前記吸収塔から、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームは第1ガス精製カラムに供給し、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームの一部のストリームは第2ガス精製カラムに供給し、残りのストリームは前記反応器に還流させるステップと、
前記第1ガス精製カラムから、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは第2ガス精製カラムに供給し、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給するステップと、
前記第2ガス精製カラムから、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは不活性気体除去カラムに供給し、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給するステップと、
前記不活性気体除去カラムから、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームを反応器に還流させるステップと、
を含む、イソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項2】
前記吸収塔の下部排出ストリームは第1フラッシュドラムに供給し、前記第1フラッシュドラムの上部排出ストリームは前記第2ガス精製カラムに供給し、下部排出ストリームは第2フラッシュドラムに供給し、
前記第2フラッシュドラムの上部排出ストリームは前記第1ガス精製カラムに供給し、下部排出ストリームはIPA精製部に供給する、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項3】
前記吸収塔の下部排出ストリームは、第1バルブを用いて減圧させた後に前記第1フラッシュドラムに供給し、
前記第1フラッシュドラムの下部排出ストリームは、第2バルブを用いて減圧させた後に前記第2フラッシュドラムに供給する、請求項2に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項4】
前記第1フラッシュドラムの上部排出ストリームおよび第2フラッシュドラムの上部排出ストリームの単位時間当たりの流量の重量の比は、1:0.2~1:0.8である、請求項2または3に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項5】
前記不活性気体除去カラムの上部排出ストリームおよび前記不活性気体除去カラムの下部排出ストリームから不活性気体を分離する、請求項1から4のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項6】
前記反応生成物ストリームは、1器以上の熱交換器を用いて第1反応生成物ストリームと第2反応生成物ストリームに分離され、前記第1反応生成物ストリームと第2反応生成物ストリームは、吸収塔に供給される、請求項1から5のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項7】
前記第2ガス精製カラムの全体段数は25段~40段であり、
前記第2ガス精製カラムに供給されるストリームの供給段は、前記第2ガス精製カラムの全体段数の40%~55%の段である、請求項1から6のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項8】
前記第2ガス精製カラムの運転圧力は12kg/cm
2・g~20kg/cm
2・gであり、運転温度は30℃~170℃である、請求項1から7のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項9】
前記不活性気体除去カラムの全体段数は65段~80段であり、
前記不活性気体除去カラムに供給されるストリームの供給段は、前記不活性気体除去カラムの全体段数の50%以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項10】
前記不活性気体除去カラムの運転圧力は15kg/cm
2・g~25kg/cm
2・gであり、運転温度は30℃~70℃である、請求項1から9のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項11】
前記第2ガス精製カラムおよび不活性気体除去カラムの全体段数比率は、1:1.5~1:5である、請求項1から10のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年05月31日付けの韓国特許出願第10-2021-0070239号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、イソプロピルアルコールの製造方法に関し、より詳しくは、イソプロピルアルコール製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコールを高純度で分離し、未反応物を効果的に回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)は、半導体やLCD(Liquid crystal display)製造などの電子産業において、洗浄剤などの用途を含め、多様な用途として用いられている。
【0004】
イソプロピルアルコールを製造する工程は、例えば、プロピレン(propylene)と水を原料成分として用いる。この際、前記プロピレンと水が反応してイソプロピルアルコールを生成する。
【0005】
前記イソプロピルアルコール製造工程の反応生成物は、イソプロピルアルコール、未反応プロピレン単量体、および未反応水を含むことになる。この際、前記イソプロピルアルコール製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコールを分離して回収し、未反応プロピレン単量体を回収して前記イソプロピルアルコール製造工程にて再使用することになる。
【0006】
これに対し、従来は、前記イソプロピルアルコール製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコールと未反応プロピレン単量体を分離し、前記未反応プロピレン単量体を回収して再使用するための多様な工程が試みられた。しかし、従来のイソプロピルアルコール製造工程においては、回収される未反応プロピレン単量体にイソプロピルアルコールが少量含まれており、それを反応器に供給して再使用する場合、反応器内で逆反応を招いてプロピレンの転換率(Conversion)およびイソプロピルアルコールの選択度(Selectivity)が低下するという問題があった。また、イソプロピルアルコールを精製するためのIPA精製部に供給されるストリーム中にプロピレン単量体が含まれており、プロピレン単量体の損失が発生するという問題があった。
【0007】
また、従来のイソプロピルアルコール製造工程においては、反応器に供給されるプロピレン単量体中に存在する不活性気体が除去されることができず、工程中に蓄積されるという問題があった。このため、高純度のプロピレン単量体を必ず用いなければならないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術において言及した問題を解決するために、イソプロピルアルコール製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコールおよび未反応プロピレン単量体を分離するにおいて、未反応物を効果的に回収する方法を提供することにある。
【0009】
すなわち、本発明は、プロピレン単量体と水の反応生成物ストリームを吸収塔、第1ガス精製カラム、第2ガス精製カラム、および不活性気体除去カラムを用いて分離するにおいて、反応器に未反応プロピレン単量体を回収する際に、回収されるストリーム中にイソプロピルアルコールが含まれるのを防止し、IPA精製部に供給されるストリーム中に未反応プロピレンが含まれるのを防止する方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、反応器から、プロピレン単量体と水を反応させた反応生成物ストリームを吸収塔に供給するステップと、前記吸収塔から、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームは第1ガス精製カラムに供給し、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームの一部のストリームは第2ガス精製カラムに供給し、残りのストリームは前記反応器に還流させるステップと、前記第1ガス精製カラムから、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは第2ガス精製カラムに供給し、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給するステップと、前記第2ガス精製カラムから、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは不活性気体除去カラムに供給し、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給するステップと、前記不活性気体除去カラムから、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームを反応器に還流させるステップと、を含む、イソプロピルアルコールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のイソプロピルアルコールの製造方法によると、プロピレン単量体と水の反応を介したイソプロピルアルコール製造工程における反応生成物を吸収塔、第1ガス精製カラム、第2ガス精製カラム、および不活性気体除去カラムを用いて分離することにおいて、分離効率が増加することができる。
【0012】
また、分離効率の増加により反応器に循環する未反応プロピレン単量体にイソプロピルアルコールが伴うのを防止することで、反応器での平衡反応の正反応を促進してイソプロピルアルコールの生産量を増加させることができ、IPA精製部に供給されるストリームに未反応プロピレン単量体が流出されるのを防止することで、プロピレン単量体の損失を減らすことができる。
【0013】
また、前記不活性気体除去カラムを用いて不活性気体を除去することで、不活性気体が工程中に蓄積されるのを防止することができる。
また、前記第2ガス精製カラムおよび不活性気体除去カラムそれぞれに供給されるストリームの供給段を制御することで、分離効率を向上させることができる。
【0014】
また、前記吸収塔の下部排出ストリームを前記第1ガス精製カラムに供給する前に1器以上のフラッシュドラムを用いて先分離することで、前記第1ガス精製カラムおよび第2ガス精製カラムの分離効率を向上させ、後段カラムの装置の大きさを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るイソプロピルアルコールの製造方法の工程フローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るイソプロピルアルコールの製造方法の工程フローチャートである。
【
図3】比較例に係るイソプロピルアルコールの製造方法の工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程中の流体(fluid)の流れを意味し得るし、また、配管内に流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内に流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得る。前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0018】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明について下記の
図1および
図2を参照してさらに詳しく説明する。
本発明によると、イソプロピルアルコールの製造方法が提供される。前記イソプロピルアルコールは、プロピレン単量体と水が気相(Vapor Phase)反応する工程により生成されることができる。具体的に、プロピレン単量体および水を含むフィードストリームは反応器に供給され、前記反応器で生成された反応生成物は、イソプロピルアルコール、未反応のプロピレン単量体、および未反応の水を含むことができる。この際、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離して回収し、未反応プロピレン単量体を回収して前記イソプロピルアルコール製造工程にて再使用することになる。
【0019】
従来は、前記イソプロピルアルコール製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコールと未反応プロピレン単量体を分離し、前記未反応プロピレン単量体を回収して再使用するための多様な工程が試みられた。しかし、従来の工程においては、回収される未反応プロピレン単量体にイソプロピルアルコールが少量含まれており、それを反応器に供給して再使用する場合、反応器内で逆反応を招いてプロピレンの転換率(Conversion)およびイソプロピルアルコールの選択度(Selectivity)が低下し、イソプロピルアルコールの生成量が減少するという問題があった。また、イソプロピルアルコールを精製するためのIPA精製部に供給されるストリーム中にプロピレン単量体が含まれており、プロピレン単量体の損失が発生するという問題がある。
【0020】
これに対し、本発明においては、上述した従来の問題を解決するために、イソプロピルアルコール製造工程の反応生成物から未反応プロピレン単量体を回収して反応器にて再使用する際に、イソプロピルアルコールとプロピレン単量体の分離効率を最大化させ、前記回収される未反応プロピレン単量体にイソプロピルアルコールが含まれるのを防止することで、反応器での平衡反応の正反応を促進してイソプロピルアルコールの生産量を増加させることができ、IPA精製部に供給されるストリーム中に未反応プロピレン単量体が流出されるのを防止することで、プロピレン単量体の損失を減少させるための方法を提供しようとする。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記イソプロピルアルコールの製造方法であって、反応器から、プロピレン単量体と水を反応させた反応生成物ストリームを吸収塔100に供給するステップと、前記吸収塔100から、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームは第1ガス精製カラム200に供給し、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームの一部のストリームは第2ガス精製カラム300に供給し、残りのストリームは前記反応器に還流させるステップと、前記第1ガス精製カラム200から、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは第2ガス精製カラム300に供給し、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給するステップと、前記第2ガス精製カラム300から、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは不活性気体除去カラム400に供給し、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給するステップと、前記不活性気体除去カラム400から、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームを反応器に還流させるステップと、を含む、イソプロピルアルコールの製造方法を提供することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記反応器にプロピレン単量体および水を含むフィードストリームを供給し、気相反応させることでイソプロピルアルコールを含む反応生成物を製造することができる。この際、前記フィードストリーム中に含まれたプロピレン単量体に対する水のモル比率は、0.3~0.5、0.35~0.5、または0.35~0.45であってもよい。前記反応器に供給されるフィードストリーム中のプロピレン単量体に対する水のモル比率が前記範囲を満たすことで、平衡反応の正反応を促進させ、逆反応が進行するのを防止してイソプロピルアルコールの生産量を増加させることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記反応器は、プロピレン単量体と水の気相反応により、イソプロピルアルコールを効率的に製造可能な最適の条件で運転されることができる。例えば、前記反応器の運転圧力は、30kg/cm2・g~50kg/cm2・g、35kg/cm2・g~50kg/cm2・g、または35kg/cm2・g~45kg/cm2・gであってもよく、運転温度は、180℃~220℃、185℃~220℃、または190℃~215℃であってもよい。前記範囲の圧力および温度で反応器を運転することで、プロピレン単量体と水を用いた気相反応により、イソプロピルアルコールを効果的に生成することができる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記反応器にてプロピレン単量体と水を気相反応させることで生成された反応生成物は、気相であって、イソプロピルアルコール、未反応プロピレン単量体、および未反応水を含むことができる。前記反応器から排出される気相の反応生成物は、1器以上の熱交換器を用いて液相の反応生成物に凝縮させた後に吸収塔100に供給することができる。この際、前記吸収塔100に供給される反応生成物の温度は、例えば、105℃~150℃、110℃~140℃、または115℃~140℃であってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によると、前記反応器から排出される気相の反応生成物は、1器以上の熱交換器にて、反応器に供給されるフィードストリームと熱交換を行うことができる。前記1器以上の熱交換器を通過させたフィードストリームの温度は、例えば、170℃~210℃、180℃~200℃、または185℃~195℃に加熱されることができる。
【0026】
このように、反応器から排出される気相の反応生成物ストリームと反応器に供給されるフィードストリームとを熱交換させることで、反応器から排出される気相の反応生成物を液相の反応生成物に凝縮させるとともに、フィードストリームを予熱させた後に反応器に供給することができる。これにより、フィードストリームを反応器に供給する前にイソプロピルアルコールを効率的に製造するための最適の温度に加熱させるためのエネルギーを節減することができ、気相の反応生成物を吸収塔100に供給して分離効率を増加させるための温度で凝縮させるのに必要な冷媒費用を節減させることができる。
【0027】
本発明の一実施形態によると、前記気相の反応生成物は、1器以上の熱交換器を通過しつつ、一部は液相の反応生成物に凝縮され、残りは気相の反応生成物として存在し得る。一例として、前記反応器から排出される気相の反応生成物は、1器以上の熱交換器を通過しつつ、気相の第1反応生成物ストリームと、液相の第2反応生成物ストリームに分離することができる。この際、前記第1反応生成物ストリームと第2反応生成物ストリームは、後段熱交換器に形成された別の配管を通して分離排出されるか、または前記熱交換器の後段に設けられた気液分離装置を経て分離されることができる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記第2反応生成物ストリームの流量に対する第1反応生成物ストリームの流量比は、5~11、6~10、または7~9であってもよい。上記のように、反応器から排出される気相の反応生成物ストリームを1器以上の熱交換器にてフィードストリームと熱交換させる過程で、前記反応器から排出される気相の反応生成物ストリームを105℃~150℃の温度に冷却させることで、前記第2反応生成物ストリームの流量に対する第1反応生成物ストリームの流量比を5~11に制御することができた。ここで、「流量」は、単位時間当たりの重量の流れを意味し得る。具体的な例として、前記流量の単位はton/hrであってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記第1反応生成物ストリームは、冷却器を用いて追加的に凝縮させ、気相と液相が混合された気液混合相として吸収塔100に供給されることができる。この際、前記第1反応生成物ストリームは、上述したように1器以上の熱交換器を通過しつつ冷却された状態であって、前記冷却器で用いられる冷媒を安価の冷却水に代替することができ、前記冷却水の使用量を最小化することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、前記気相の第1反応生成物ストリームは、未反応プロピレン単量体85重量%~95重量%、イソプロピルアルコール4重量%~8重量%、および水1重量%~5重量%を含むことができる。具体的に、前記第1反応生成物ストリームには、未反応プロピレン単量体の含量が高く、イソプロピルアルコールおよび水の含量が少ないということが分かる。
【0031】
また、前記液相の第2反応生成物ストリームは、未反応プロピレン単量体1重量%~10重量%、イソプロピルアルコール5重量%~15重量%、および水80重量%~90重量%を含むことができる。具体的に、前記第2反応生成物ストリームには、未反応プロピレン単量体の含量が少なく、水の含量が多くなり得る。この際、第2反応生成物ストリーム中に含まれたイソプロピルアルコールの含量は、第1反応生成物ストリーム中に含まれたイソプロピルアルコールの含量よりも高くなり得る。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記一部凝縮された気液混合相の第1反応生成物ストリームと液相の第2反応生成物ストリームは、それぞれのストリームまたは混合されたストリームとして吸収塔100の下段の側面に供給されることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記吸収塔100の全体段数は、10段~30段、15段~30段、または15段~25段であってもよい。例えば、吸収塔100の全体段数が10段である場合、前記第1反応生成物および第2反応生成物は、吸収塔100の10段に供給されることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記反応生成物は吸収塔100に供給され、前記吸収塔100にて、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームと、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームを分離することができる。この際、前記吸収塔100の上部排出ストリームは、未反応プロピレン単量体とともに不活性気体をさらに含むことができ、下部排出ストリームは、イソプロピルアルコールとともに未反応水をさらに含むことができる。具体的に、前記反応生成物は吸収塔100の下段に供給されることができ、前記吸収塔100に供給される溶媒を用いて前記反応生成物中に含まれたイソプロピルアルコールを溶解させて吸収塔100の下部に分離し、未反応プロピレン単量体を含むストリームは上部に分離することができる。
【0035】
前記吸収塔100で用いられる溶媒は、例えば、水であってもよい。前記溶媒として反応に用いられる成分である水を用いることで、後段にて溶媒を分離するための別の装置が求められない。
【0036】
前記吸収塔100に供給される溶媒の流量は、前記吸収塔100に供給される反応生成物の総流量の20%~50%、20%~45%、または25%~40%であってもよい。前記範囲内の流量で溶媒を供給することで、吸収塔100に供給される反応生成物中に含まれたイソプロピルアルコールの吸収能を向上させるとともに、後段での溶媒回収のためのエネルギー費用の過度な増加を防止することができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記吸収塔100の運転圧力は、20kg/cm2・g~40kg/cm2・g、25kg/cm2・g~40kg/cm2・g、または25kg/cm2・g~35kg/cm2・gであってもよく、運転温度は、80℃~110℃、90℃~110℃、または90℃~100℃であってもよい。前記範囲の圧力および温度で吸収塔100を運転することで、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームと、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームを効果的に分離することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記吸収塔100の下部排出ストリームは、イソプロピルアルコールおよび未反応水の他に、未反応プロピレン単量体を少量含むことができる。例えば、前記吸収塔100の下部排出ストリーム中に含まれた未反応プロピレン単量体の含量は、5重量%以下、または3重量%~5重量%であってもよい。そこで、前記吸収塔100から、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームの全量または一部は第1ガス精製カラム200に供給し、前記吸収塔100の下部排出ストリーム中に含まれた未反応プロピレン単量体を上部排出ストリームとして分離し、イソプロピルアルコールおよび未反応水を含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記吸収塔100の下部排出ストリームは、第1ガス精製カラム200に供給される前に、1器以上、1器~3器、または1器~2器のフラッシュドラムを経ることができる。例えば、前記吸収塔100の下部排出ストリームは、第1フラッシュドラム500、または第1フラッシュドラム500および第2フラッシュドラム510を用いて、前記吸収塔100の下部排出ストリームの一部のストリームが第1ガス精製カラム200に供給されることができる。
【0040】
一例として、1器のフラッシュドラムを用いる場合、前記吸収塔の下部排出ストリームは第1フラッシュドラムに供給され、前記第1フラッシュドラムから、前記吸収塔の下部排出ストリーム中に含まれた未反応プロピレン単量体を上部排出ストリームとして分離して第1ガス精製カラムに供給し、下部排出ストリームはIPA精製部に供給することができる。
【0041】
前記吸収塔の下部排出ストリームを第1フラッシュドラムに供給する前に、第1バルブを用いて減圧させた後に第1フラッシュドラムに供給することができ、これにより、前記第1フラッシュドラム500での気相と液相の分離効率を向上させることができる。
【0042】
前記吸収塔の下部排出ストリームを第1フラッシュドラムを経て先分離し、未反応プロピレン単量体および不活性気体を含む一部のストリームは第1ガス精製カラムに供給し、イソプロピルアルコールおよび未反応水を含む一部のストリームはIPA精製部に供給することができる。
【0043】
また、前記第2ガス精製カラムに供給されるストリームの組成を制御して分離効率が向上することで、第2ガス精製カラムの上部排出ストリームにイソプロピルアルコールが流出されるのを防止することができる。例えば、前記第2ガス精製カラムに供給されるストリーム中のイソプロピルアルコールおよび水の含量が5重量%以下に減少し、第2ガス精製カラムの上部排出ストリームにイソプロピルアルコールが流出されるのを防止することができる。
【0044】
他の一例として、前記吸収塔100の下部排出ストリームは第1フラッシュドラム500に供給され、前記第1フラッシュドラム500から、前記吸収塔100の下部排出ストリーム中に含まれた未反応プロピレン単量体を上部排出ストリームとして分離して第2ガス精製カラム300に供給し、下部排出ストリームは第2フラッシュドラム510に供給することができる。
【0045】
前記吸収塔100の下部排出ストリームを第1フラッシュドラム500に供給する前に、第1バルブ600を用いて減圧させた後に第1フラッシュドラム500に供給することができる。また、第1フラッシュドラム500の下部排出ストリームを第2フラッシュドラム510に供給する前に、第2バルブ610を用いて減圧させた後に第2フラッシュドラム510に供給することができる。これにより、前記第1フラッシュドラム500および第2フラッシュドラム510それぞれでの気相と液相の分離効率を向上させることができる。
【0046】
前記第2フラッシュドラム510から、イソプロピルアルコールおよび未反応水を含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給し、残りの成分を含む上部排出ストリームは第1ガス精製カラム200に供給することができる。
【0047】
前記吸収塔100の下部排出ストリームを第1フラッシュドラム500および第2フラッシュドラム510を用いて先分離し、未反応プロピレン単量体および不活性気体を含む一部のストリームは第2ガス精製カラム300に供給し、イソプロピルアルコールおよび未反応水を含む一部のストリームはIPA精製部に供給することができる。また、前記第2ガス精製カラム300に供給されるストリーム中のイソプロピルアルコールおよび水の含量が5重量%以下に減少し、第2ガス精製カラム300の分離効率を高めて不活性気体除去カラム400に供給されるストリーム中にイソプロピルアルコールが含まれるのを防止することで、前記不活性気体除去カラム400にて、イソプロピルアルコールが含まれていない未反応プロピレン単量体を高純度で回収し、反応器に還流および再使用することができる。
【0048】
このように、1器以上のフラッシュドラムを用いて前記吸収塔100の下部排出ストリームを先分離する場合、前記吸収塔100の下部排出ストリームを減圧後、後段カラムに供給される前に気相と液相が分離可能な空間を提供することで、後段カラムにて気液分離のためにカラム大きさが非効率的に増加しなければならない問題を防止することができ、前記第2ガス精製カラム300の分離効率を向上させることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記第1フラッシュドラム500の上部排出ストリームおよび第2フラッシュドラム510の上部排出ストリームの流量比は、1:0.4~1:0.8、1:0.5~1:0.8、または1:0.5~1:0.7であってもよい。前記範囲内に第1フラッシュドラム500の上部排出ストリームおよび第2フラッシュドラム510の上部排出ストリームの流量比を制御することで、先分離効果を向上させるとともに、第1ガス精製カラム200および第2ガス精製カラム300に供給されるストリームの成分および流量を制御することで、カラムの装置の大きさを減らし、分離効率を向上させることができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記第1フラッシュドラム500での運転温度は、80℃~100℃、85℃~100℃、または85℃~95℃であってもよい。また、前記第1フラッシュドラム500での運転圧力は、10kg/cm2・g~25kg/cm2・g、15kg/cm2・g~25kg/cm2・g、または15kg/cm2・g~20kg/cm2・gであってもよい。前記第1フラッシュドラム500での運転条件を前記範囲に制御する場合に分離効率が向上することができる。
【0051】
前記第2フラッシュドラム510での運転温度は、80℃~95℃、85℃~95℃、または85℃~90℃であってもよい。また、前記第2フラッシュドラム510での運転圧力は、0kg/cm2・g~2kg/cm2・g、0kg/cm2・g~1kg/cm2・g、または0kg/cm2・g~0.5kg/cm2・gであってもよい。前記第2フラッシュドラム510での運転条件を前記範囲に制御する場合に分離効率が向上することができる。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記第1ガス精製カラム200においては、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームと、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームを分離することができる。この際、前記第1ガス精製カラム200の上部排出ストリームは、未反応プロピレン単量体とともに不活性気体をさらに含むことができ、下部排出ストリームは、イソプロピルアルコールとともに未反応水をさらに含むことができる。具体的に、前記第1ガス精製カラム200から、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは第2ガス精製カラム300に供給し、イソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはIPA精製部に供給することができる。
【0053】
前記第1ガス精製カラム200の運転圧力は、0kg/cm2・g~2kg/cm2・g、0kg/cm2・g~1kg/cm2・g、または0kg/cm2・g~0.5kg/cm2・gであってもよく、運転温度は、40℃~80℃、50℃~80℃、または50℃~70℃であってもよい。前記範囲の運転温度および運転圧力で第1ガス精製カラム200を運転することで、上部排出ストリームとしてプロピレン単量体を高純度で分離することができる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、前記第2ガス精製カラム300に供給されるストリームは、それぞれのストリームとして供給されるか、または混合ストリームを形成して第2ガス精製カラム300に供給されることができる。例えば、吸収塔100の上部排出ストリームの一部のストリームおよび第1ガス精製カラム200の上部排出ストリームは、混合ストリームを形成して第2ガス精製カラム300に供給されることができ、場合によっては、吸収塔100の上部排出ストリームの一部のストリーム、第1ガス精製カラム200の上部排出ストリーム、および第1フラッシュドラム500の上部排出ストリームは、混合ストリームを形成して第2ガス精製カラム300に供給されることができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記第2ガス精製カラム300は、供給されるストリームから未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームを分離して不活性気体除去カラム400に供給し、イソプロピルアルコールおよび水を含む下部排出ストリームを分離してIPA精製部に供給することができる。この際、前記第2ガス精製カラム300に供給されるストリーム中のイソプロピルアルコールおよび未反応水の全量が下部排出ストリームとして分離されることができる。この場合、前記不活性気体除去カラム400に供給される第2ガス精製カラム300の上部排出ストリーム中にイソプロピルアルコールおよび未反応水が含まれていないため、前記不活性気体除去カラム400で回収されて反応器に還流される未反応プロピレン単量体にイソプロピルアルコールが含まれない。
【0056】
本発明の一実施形態によると、前記第2ガス精製カラム300の運転圧力は、12kg/cm2・g~20kg/cm2・g、15kg/cm2・g~20kg/cm2・g、または15kg/cm2・g~17kg/cm2・gであってもよく、運転温度は、30℃~170℃、40℃~170℃、または40℃~160℃であってもよい。前記範囲の圧力および温度で第2ガス精製カラム300を運転することで、上部および下部を通してそれぞれの成分を高純度で分離することができ、特に、不活性気体除去カラム400に供給される上部排出ストリームにイソプロピルアルコールが共に排出されない。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記第2ガス精製カラム300の全体段数は、25段~40段、28段~40段、または28段~35段であってもよい。また、前記第2ガス精製カラム300に供給されるストリームの供給段は、前記第2ガス精製カラム300の全体段数の40%~55%、43%~55%、または45%~53%であってもよい。例えば、前記第2ガス精製カラム300の全体段数が32段である場合、前記第2ガス精製カラム300に供給されるストリームは、前記第2ガス精製カラム300の12段~16段に供給されることができる。このように、前記第2ガス精製カラム300の全体段数、および前記第2ガス精製カラム300に供給されるストリームの供給段を制御することで、前記第2ガス精製カラム300に供給されるストリーム中のイソプロピルアルコールおよび未反応水の全量が下部排出ストリームとして分離されるようにし、不活性気体除去カラム400に供給される第2ガス精製カラム300の上部排出ストリーム中にイソプロピルアルコールおよび水が含まれないようにすることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、前記不活性気体除去カラム400は、供給されるストリームから未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームを分離し、反応器に還流させて再使用することができる。この際、前記不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中には、イソプロピルアルコールが存在しない。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記不活性気体除去カラム400の上部排出ストリームは気相ストリームであって、不活性気体、例えば、エタンを分離して除去することで、不活性気体が工程中に蓄積されるのを防止し、高純度のプロピレン単量体を用いなくても、イソプロピルアルコールの生産量を増加させることができる。具体的に、気相反応で行われるイソプロピルアルコール製造工程において、反応物として投入されるプロピレン単量体中に不活性気体が一部含まれることができる。前記不活性気体は、例えば、炭素数2~3の炭化水素からなる群から選択された1種以上を含むことができ、具体的な例として、前記不活性気体は、エタンおよびプロパンからなる群から選択された1種以上を含むことができる。この際、不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中の不活性気体を含む気相成分はパージ(purge)して不活性気体の一部または全量を分離および除去することで、反応器に還流されるストリーム中の不活性気体の含量を下げ、不活性気体が工程中に蓄積されないようにするという効果がある。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記不活性気体除去カラム400の下部排出ストリームは、不活性気体、例えば、プロパンを含む液相ストリームであって、第3バルブ620を通過させて減圧した後に気液分離装置700に供給し、前記気液分離装置700にて不活性気体を上部に分離し、不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中の気相成分とともにパージ(purge)して除去することができる。この際、前記不活性気体除去カラム400の下部排出ストリーム中には、イソプロピルアルコールおよび未反応水が存在しないため、気液分離装置700の下部に排出されるストリームはない。
【0061】
本発明の一実施形態によると、前記不活性気体除去カラム400の運転圧力は、15kg/cm2・g~25kg/cm2・g、18kg/cm2・g~25kg/cm2・g、または18kg/cm2・g~20kg/cm2・gであってもよく、運転温度は、30℃~70℃、40℃~70℃、または40℃~60℃であってもよい。前記範囲の圧力および温度で不活性気体除去カラム400を運転することで、上部に未反応プロピレン単量体を高純度で分離し、反応器に還流させて再使用することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記不活性気体除去カラム400の全体段数は、65段~80段、65段~78段、または67段~75段であってもよい。また、前記不活性気体除去カラム400に供給されるストリームの供給段は、前記不活性気体除去カラム400の全体段数の50%以下、1%~50%、5%~45%、または10%~45%であってもよい。例えば、前記不活性気体除去カラム400の全体段数が70段である場合、前記不活性気体除去カラム400に供給されるストリームは、前記不活性気体除去カラム400の35段以下に供給されることができる。このように、前記不活性気体除去カラム400の全体段数、および前記不活性気体除去カラム400に供給されるストリームの供給段を制御することで、未反応プロピレン単量体を高純度で分離することができる。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記第2ガス精製カラム300および不活性気体除去カラム400の全体段数比率は、1:1.5~1:5、1:2~1:4、または1:2~1:3であってもよい。上記のように、第2ガス精製カラム300および不活性気体除去カラム400の全体段数比率を制御することで、第2ガス精製カラム300の上部排出ストリームおよび下部排出ストリームの組成を制御するとともに、不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中にイソプロピルアルコールが含まれるのを防止することができる。
【0064】
本発明の一実施形態によると、IPA精製部に供給されるストリームには、イソプロピルアルコール、未反応水、および溶媒として用いられた水が含まれることができ、IPA精製部にて、水が除去された高純度のイソプロピルアルコールを分離することができる。この際、前記IPA精製部で分離された水は、反応器に供給して再使用することができ、この場合、プロピレン単量体やイソプロピルアルコールなどの不純物が含まれていないため、前記反応器にてイソプロピルアルコールを製造するにおいて、プロピレン単量体に対する水のモル比率の制御が容易である。
【0065】
本発明の一実施形態によると、イソプロピルアルコールの製造方法においては、必要な場合、蒸留カラム、コンデンサ、リボイラー、バルブ、ポンプ、分離器、および混合器などの装置を追加的にさらに設けて用いることができる。
【0066】
以上、本発明に係るイソプロピルアルコールの製造方法を記載および図面に図示したが、上記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成だけを記載および図示したものであって、上記の記載および図面に図示した工程および装置の他に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明に係るイソプロピルアルコールの製造方法を実施するために適宜応用して利用されてもよい。
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白であり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0068】
実施例
実施例1
図1に示された工程フローチャートのように、イソプロピルアルコール(IPA)を含む反応生成物を製造し、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離する工程をAspen社のアスペンプラスを用いてシミュレーションした。
【0069】
具体的に、40kg/cm2・gの圧力および192℃~208℃の温度で運転される反応器にフィードストリームを10ton/hrの流量で供給し、前記フィードストリーム中のプロピレン単量体(PP)に対する水(H2O)のモル比率を0.4に制御し、不活性気体としてエタンおよびプロパンを含んだ。
【0070】
前記反応器から排出される気相の反応生成物ストリームは、2器の熱交換器を通過しつつ、気相の第1反応生成物ストリームと液相の第2反応生成物ストリームとして分離排出され、前記第1反応生成物ストリームは、冷却器にて一部を液相に凝縮させた後に吸収塔100の20段に供給し、第2反応生成物ストリームは、吸収塔100の20段に供給した。この際、前記吸収塔100の全体段数は20段であった。
【0071】
前記吸収塔100は、96℃~98℃の温度および31.2kg/cm2・g~31.6kg/cm2・gの圧力で運転され、前記吸収塔100の上段に溶媒として供給される水を用いて前記反応生成物ストリーム中のイソプロピルアルコールを吸収させ、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームと、水およびイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームに分離した。具体的に、前記吸収塔100の上部排出ストリームの一部のストリームは、第2ガス精製カラム300に供給し、残りのストリームは、反応器に還流させ、下部排出ストリームは、第1バルブ600を用いて減圧させた後、第1フラッシュドラム500に供給した。この際、第1フラッシュドラム500の運転圧力は16.8kg/cm2・gで運転し、上部排出ストリームの流量は0.2ton/hrに制御した。
【0072】
前記第1フラッシュドラム500から、下部排出ストリームは、第2バルブ610を用いて減圧させた後、第2フラッシュドラム510に供給し、前記第2フラッシュドラム510から、上部排出ストリームは、第1ガス精製カラム200に供給し、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、第2フラッシュドラム510の運転圧力は0.2kg/cm2・gで運転し、上部排出ストリームの流量は0.1ton/hrに制御した。
【0073】
前記第1ガス精製カラム200から、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、第1ガス精製カラム200の全体段数は4段であり、運転温度は57℃~64℃、運転圧力は0.15kg/cm2・g~0.2kg/cm2・gに制御した。
【0074】
前記吸収塔100の上部排出ストリームの一部のストリーム、第1ガス精製カラム200の上部排出ストリーム、および第1フラッシュドラム500の上部排出ストリームは、混合ストリームを形成して第2ガス精製カラム300の16段に供給した。この際、第2ガス精製カラム300の全体段数は32段であり、運転温度は41℃~160℃、運転圧力は16.50kg/cm2・g~16.52kg/cm2・gに制御した。前記第2ガス精製カラム300から、上部排出ストリームは、不活性気体除去カラム400の26段に供給し、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、前記不活性気体除去カラム400の全体段数は70段であった。
【0075】
前記不活性気体除去カラム400は、47℃~55℃の温度および19.10kg/cm2・g~19.59kg/cm2・gの圧力で運転され、上部排出ストリームとして未反応プロピレン単量体を分離し、反応器に還流させて再使用した。
【0076】
前記(1)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0077】
実施例2
図2に示された工程フローチャートのように、イソプロピルアルコール(IPA)を含む反応生成物を製造し、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離する工程をAspen社のアスペンプラスを用いてシミュレーションした。
【0078】
具体的に、40kg/cm2・gの圧力および192℃~208℃の温度で運転される反応器にフィードストリームを10ton/hrの流量で供給し、前記フィードストリーム中のプロピレン単量体(PP)に対する水(H2O)のモル比率を0.4に制御し、不活性気体としてエタンおよびプロパンを含んだ。
【0079】
前記反応器から排出される気相の反応生成物ストリームは、2器の熱交換器を通過しつつ、気相の第1反応生成物ストリームと液相の第2反応生成物ストリームとして分離排出され、前記第1反応生成物ストリームは、冷却器にて一部を液相に凝縮させた後に吸収塔100の20段に供給し、第2反応生成物ストリームは、吸収塔100の20段に供給した。この際、前記吸収塔100の全体段数は20段であった。
【0080】
前記吸収塔100は、96℃~98℃の温度および31.2kg/cm2・g~31.6kg/cm2・gの圧力で運転され、前記吸収塔100の上段に溶媒として供給される水を用いて前記反応生成物ストリーム中のイソプロピルアルコールを吸収させ、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームと、水およびイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームに分離した。具体的に、前記吸収塔100の上部排出ストリームの一部のストリームは、第2ガス精製カラム300に供給し、残りのストリームは、反応器に還流させ、下部排出ストリームは、第1バルブ600を用いて減圧させた後、第1フラッシュドラム500に供給した。この際、第1フラッシュドラム500の運転圧力は16.8kg/cm2・gで運転し、上部排出ストリームの流量は0.2ton/hrに制御した。
【0081】
前記第1フラッシュドラム500から、下部排出ストリームは、第2バルブ610を用いて減圧させた後、第2フラッシュドラム510に供給し、前記第2フラッシュドラム510から、上部排出ストリームは、第1ガス精製カラム200に供給し、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、第2フラッシュドラム510の運転圧力は0.2kg/cm2・gで運転し、上部排出ストリームの流量は0.1ton/hrに制御した。
【0082】
前記第1ガス精製カラム200から、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、第1ガス精製カラム200の全体段数は4段であり、運転温度は57℃~64℃、運転圧力は0.15kg/cm2・g~0.2kg/cm2・gに制御した。
【0083】
前記吸収塔100の上部排出ストリームの一部のストリーム、第1ガス精製カラム200の上部排出ストリーム、および第1フラッシュドラム500の上部排出ストリームは、混合ストリームを形成して第2ガス精製カラム300の16段に供給した。この際、第2ガス精製カラム300の全体段数は32段であり、運転温度は41℃~160℃、運転圧力は16.50kg/cm2・g~16.52kg/cm2・gに制御した。前記第2ガス精製カラム300から、上部排出ストリームは、不活性気体除去カラム400の26段に供給し、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、前記不活性気体除去カラム400の全体段数は70段であった。
【0084】
前記不活性気体除去カラム400は、47℃~55℃の温度および19.10kg/cm2・g~19.59kg/cm2・gの圧力で運転され、未反応プロピレン単量体を含む液相成分の上部排出ストリームは、反応器に還流させて再使用した。また、前記不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中の不活性気体を含む気相成分をパージして除去し、下部排出ストリームは、第3バルブ620を通過させて減圧させた後、気液分離装置700に供給し、前記気液分離装置700にて上部に不活性気体を分離して除去した。
【0085】
前記(1)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0086】
実施例3
前記実施例2において、前記第2ガス精製カラム300の上部排出ストリームを不活性気体除去カラム400の7段に供給したことを除いては、前記実施例2と同様の方法で、イソプロピルアルコールを製造した。
【0087】
前記(1)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0088】
実施例4
前記実施例2において、前記混合ストリームを第2ガス精製カラム300の4段に供給したことを除いては、前記実施例2と同様の方法で、イソプロピルアルコールを製造した。
【0089】
前記(1)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0090】
実施例5
前記実施例2において、前記混合ストリームを第2ガス精製カラム300の30段に供給したことを除いては、前記実施例2と同様の方法で、イソプロピルアルコールを製造した。
【0091】
前記(1)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0092】
実施例6
前記実施例2において、前記第2ガス精製カラム300の上部排出ストリームを前記不活性気体除去カラム400の38段に供給したことを除いては、前記実施例2と同様の方法で、イソプロピルアルコールを製造した。
【0093】
前記(1)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0094】
実施例7
前記実施例2において、前記混合ストリームを前記第2ガス精製カラム300の30段に供給し、前記第2ガス精製カラム300の上部排出ストリームを前記不活性気体除去カラム400の38段に供給したことを除いては、前記実施例2と同様の方法で、イソプロピルアルコールを製造した。
【0095】
前記(1)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流される不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0096】
比較例
比較例1
図3に示された工程フローチャートのように、イソプロピルアルコール(IPA)を含む反応生成物を製造し、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離する工程をAspen社のアスペンプラスを用いてシミュレーションした。
【0097】
具体的に、40kg/cm2・gの圧力および192℃~208℃の温度で運転される反応器にフィードストリームを10ton/hrの流量で供給し、前記フィードストリーム中のプロピレン単量体(PP)に対する水(H2O)のモル比率を0.4に制御し、不活性気体としてエタンおよびプロパンを含んだ。
【0098】
前記反応器から排出される反応生成物ストリームは、吸収塔100の20段に供給した。この際、前記吸収塔100の全体段数は20段であった。前記吸収塔100は、96℃~98℃の温度および31.2kg/cm2・g~31.6kg/cm2・gの圧力で運転され、前記吸収塔100の上段に溶媒として供給される水を用いて前記反応生成物ストリーム中のイソプロピルアルコールを吸収させ、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームと、水およびイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームに分離した。具体的に、前記吸収塔100の上部排出ストリームの一部のストリームは、ガス精製カラム310に供給し、残りのストリームは、反応器に還流させ、下部排出ストリームは、フラッシュドラム520に供給した。
【0099】
前記ガス精製カラム310から、未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは、反応器に還流させ、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、前記ガス精製カラム310の全体段数は32段であり、運転温度は41℃~160℃、運転圧力は16.50kg/cm2・g~16.52kg/cm2・gに制御した。
【0100】
前記フラッシュドラム520から、気相の未反応プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは、反応器に還流させ、下部排出ストリームは、IPA精製部に供給した。この際、前記フラッシュドラムの運転圧力は16.8kg/cm2・gで運転し、上部排出ストリームの流量は0.2ton/hrに制御した。
【0101】
前記(1)反応器に還流されるガス精製カラム310の上部排出ストリームおよびフラッシュドラム520の上部排出ストリーム中のIPA含量、(2)反応器に還流されるガス精製カラム310の上部排出ストリームおよびフラッシュドラム520の上部排出ストリーム中のPP含量、および(3)IPA精製部に供給されるストリーム中のPP含量に対して下記表1に示した。
【0102】
【0103】
前記表1において、実施例1~7の場合、反応器に還流されるストリーム中のイソプロピルアルコールの含量が0重量%と示され、プロピレン単量体の含量が94.7重量%以上と高く示され、IPA精製部に供給されるストリーム中のプロピレン単量体の含量が0.014重量%以下と低く示されることを確認することができた。
【0104】
また、前記実施例2~7の場合、不活性気体除去カラム400の上部排出ストリーム中の不活性気体を除去した後に反応器に還流させて再使用することで、不活性気体が工程中に蓄積されるのを防止し、高純度のプロピレン単量体を用いなくても、イソプロピルアルコールの生産量を増加させることができる。
【0105】
ただし、実施例4~7の場合は、混合ストリームが第2ガス精製カラム300に供給される供給段、および不活性気体除去カラム400に供給されるストリームの供給段のうちいずれか1つ以上が本発明に係る範囲から外れる場合であって、高沸点物質を下部に分離させる精留部(Rectifying section)が足りないか、または低沸点物質を上部に分離させる蒸留部(stripping section)が足りなくなり、分離効率が多少低下したことを確認することができた。
【0106】
これに対し、比較例1のように、吸収塔100、フラッシュドラム520、およびガス精製カラム310を用いて反応生成物ストリームから未反応プロピレン単量体とイソプロピルアルコールを分離する場合、前記反応器に還流されるフラッシュドラム520の上部排出ストリームおよびガス精製カラム310の上部排出ストリーム中のイソプロピルアルコールの含量が3.5重量%と高く示され、プロピレン単量体の含量が83.2重量%と低く示されることを確認することができた。これにより、前記反応器での逆反応がもたらされ、イソプロピルアルコールの生産量が少なくなるという問題があった。また、前記IPA精製部に供給されるストリーム中のプロピレン単量体の含量が0.4重量%と高く示されることを確認することができた。これにより、前記反応器に還流されて再使用されずに損失するプロピレン単量体の量が増加するという問題があった。