(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】排水利用システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230926BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20230926BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20230926BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F9/00
C02F1/00 W
(21)【出願番号】P 2019183942
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】亀田 英邦
(72)【発明者】
【氏名】多田 景二郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 正嗣
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123906(JP,A)
【文献】特開2003-290775(JP,A)
【文献】特開2002-054894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
1/44
9/00- 9/20
B01D 53/22
61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水の前処理装置と、該前処理装置で処理された前処理水を脱塩する脱塩装置と、該脱塩装置からの脱塩水が供給される水使用機器とを有する排水利用システムにおいて、
水使用機器から排出される排出水が所定水質よりも良好である場合に、この排出水を前記前処理装置の上流側に送水する返送手段を備えた
排水利用システムであって、
前記水使用機器として、排出水の水質が前記所定水質よりも良好である低濃縮装置と、排出水の水質が該所定水質よりも不良である高濃縮装置とが設置されており、
前記返送手段は該低濃縮装置の排出水を前記前処理装置の上流側に送水するものであり、
前記高濃縮装置の排出水は放流されることを特徴とする排水利用システム。
【請求項2】
前記低濃縮装置は外気処理空調機及びスクラバーの少なくとも1つである請求項
1の排水利用システム。
【請求項3】
前記高濃縮装置は、冷却塔、ボイラ及びレトルト滅菌水製造装置の少なくとも1つである請求項
1又は2の排水利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水を処理して利用するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
深刻な水不足を緩和するための排水回収技術は、世界中で注目されている技術である。排水を回収して再利用するシステムとして、特許文献1には、有機性排水を1次~3次処理した後、ボイラ又は冷却塔等と、イオン交換樹脂再生装置とに切り替えて供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、排水の再利用率を向上させた排水利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の排水利用システムは、排水の前処理装置と、該前処理装置で処理された前処理水を脱塩する脱塩装置と、該脱塩装置からの脱塩水が供給される水使用機器とを有する排水利用システムにおいて、水使用機器から排出される排出水が所定水質よりも良好である場合に、この排出水を前記前処理装置の上流側に送水する返送手段を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様では、前記水使用機器として、排出水の水質が前記所定水質よりも良好である低濃縮装置と、排出水の水質が該所定水質よりも不良である高濃縮装置とが設置されており、前記返送手段は該低濃縮装置の排出水を送水するものである。
【0007】
本発明の一態様では、前記低濃縮装置は外気処理空調機及びスクラバーの少なくとも1つであり、前記高濃縮装置は、冷却塔、ボイラ及びレトルト滅菌水製造装置の少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排水利用システムでは、原水(排水)を前処理及び脱塩処理して生じた脱塩処理水を水使用機器に供給して利用する。
【0009】
水使用機器排出水の水質が良好な場合は、当該水使用機器の排出水を前処理装置の上流側に返送して再度利用する。これにより、排水の利用率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る排水利用システムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
【0012】
半導体製造工程のダイサーからの排水や、純水製造装置のROブライン水などの排水が原水槽1に導入される。原水槽1内の原水は、前処理装置2に送水され、凝集処理及び濾過処理等の処理によって微粒子が除去された前処理水とされ、前処理槽3を介して脱塩装置4に送水される。
【0013】
脱塩装置4としては、RO装置(逆浸透膜装置)が用いられており、その濃縮水は配管4aを介して下水、河川等に放流される。
【0014】
脱塩装置4の脱塩処理水は、脱塩処理水タンク5を経て高濃縮装置11,12,13及び低濃縮装置21,22,23の一方又は双方に送水される。なお、この実施の形態では、脱塩処理水タンク5に対しバックアップ用配管5aを介して工業用水、市水、井水あるいはそれらの膜濾過水などが必要に応じ供給される。
【0015】
高濃縮装置11~13では、高度に濃縮された排水が生じる。この高濃縮排水は下水や河川等に放流される。
【0016】
低濃縮装置21~23では、それほど濃縮されない排水(例えば、外調機ドレン水)が生じる。この低濃縮排水は、配管30を介して原水槽1に返送され、再利用される。
【0017】
このように、低濃縮装置21~23で生じる低濃縮排水を原水槽1に返送して再度利用するので、低濃縮排水も放流してしまう場合に比べて排水の再利用率が高いものとなる。
【0018】
図1では、高濃縮装置及び低濃縮装置がいずれも3基示されているが、1基以上であればよく、その数は特に限定されない。
【0019】
本発明の一態様においては、高濃縮装置とは、5倍以上に濃縮された濃縮排水を生じさせるものであり、冷却塔、ボイラ、レトルト滅菌水製造装置などが例示される。また、低濃縮装置とは、濃縮倍率が5倍未満の低濃縮の排水を生じさせるものであり、外調機(外気処理空調機)やスクラバーなどが例示される。
【0020】
なお、前処理装置2では、酸化剤を添加してもよい。前処理装置2で酸化剤を添加した場合、RO給水に重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を添加することが好ましい。
【0021】
酸化剤としては塩素系酸化剤などが用いられるが、特に制限はなく、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素等、各種のものが用いられ、1種類単独でも2種類以上組み合わせて添加してもよい。塩素系酸化剤の添加量は、通常0.3~1.0mg/LasCl2であり、常時添加されることが好ましい。
【0022】
前処理装置2で用いる凝集剤の種類や、必要に応じて添加される凝集助剤の種類に特に制限はない。
【0023】
濾過器としては、一般的な重力濾過器、圧力濾過器、または除濁膜などのいずれでもよいが、除濁膜が好ましい。除濁膜を採用する場合は、クロスフロー方式のものであっても全量濾過方式のものであってもよい。
【0024】
除濁膜による除濁工程は、通水、エアバブリング、逆洗、及び水張りの工程よりなる。濾過通水時間は20~40分(通常30分)とし、差圧(入口圧力-出口圧力)は0.02~0.04MPa程度で運転することが好ましい。差圧が0.07~0.10MPaになったときには、定置洗浄することが好ましい。除濁膜の材質は、耐薬品性の良好なポリフッ化ビニリデンが好適であり、孔径は0.02μm以上、例えば0.02~0.1μm程度が好適であるが、これに限定されない。
【0025】
脱塩装置4としては、RO装置が好ましく、ライン流量3.6m3/h以上を確保することが好ましい。なお、RO装置以外の機器をさらに備えてもよい。
【0026】
逆浸透膜に特に制限はない。標準圧力0.735MPaの超低圧膜を採用してもよい。膜面積は35~41m2程度が好ましい。初期純水フラックスは、1.0m/d(25℃、0.735MPa)以上が好ましく、初期脱塩率は98%以上が好ましい。ランゲリア指数が0以下となるように、また、ブライン水のシリカ濃度が溶解度以内となるように回収率を設定することが好ましい。回収率は50~80%が通常である。
【0027】
RO給水にスライムコントロール剤を添加することが好ましい。スライムコントロール剤としては、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)等の遊離塩素剤、クロラミン、モノクロロスルファミン酸などの塩素とアミド硫酸、アミド硫酸基を有する化合物が反応した結合塩素剤、ジブロモヒダントインなどの臭素剤、DBNPA(ジブロモニトリロプロピオンアシド)、MIT(メチルイソチアゾロン)などの有機剤などの1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
結合塩素系酸化剤の場合0.3~1.0mg/LasCl2となるように添加することが好ましい。
【0029】
クロロスフファミン酸ナトリウム酸化剤は例えば、有効塩素濃度1~8重量%、好ましくは3~6重量%の塩素系酸化剤と、1.5~9重量%、好ましくは4.5~8重量%のスルファミン酸化合物を含む、pH≧12の水溶液として用いることが好ましい。
【0030】
RO給水にスケール分散剤など、その他の添加剤を添加してもよい。
【0031】
なお、RO装置の後段に電気脱イオン装置やイオン交換塔などを設置してもよい。
【0032】
本発明では、高濃縮装置11~13、低濃縮装置21~23など、処理水の使用先で使用された水の排水は、原水の要求水質を目安に返送の有無を決定することが好ましい。即ち、当該水質よりもよければ排水回収装置(前処理装置2及び脱塩装置4)の負荷を下げることが可能なため、排水回収装置の原水として使用し、悪い場合は、系外に排出する。
【0033】
排水回収装置の原水として使用される水質は、回収装置の仕様で決定される。
【0034】
本発明の一態様では、高濃縮装置11~13、低濃縮装置21~23などの水使用機器の排出水の導電率を測定し、導電率が所定値よりも高い場合に当該水使用機器を高濃縮装置とし、所定値よりも低い場合に当該水使用機器を低濃縮装置と設定してもよい。
【0035】
導電率の所定値としては、例えば0.1~500mS/mの間から選ばれた値、具体的には10mS/mが挙げられるが、これに限定されない。脱塩装置4がRO装置を含む場合、脱塩処理水中のSS濃度は著しく低いので、SS濃度は高濃縮装置、低濃縮装置の判定に影響を与えない。
【符号の説明】
【0036】
2 前処理装置
4 脱塩装置
11~13 高濃縮装置
21~23 低濃縮装置