(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】平面アンテナ及び窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/36 20060101AFI20230926BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01Q1/36
H01Q13/08
(21)【出願番号】P 2020550421
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038526
(87)【国際公開番号】W WO2020071316
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018188584
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐山 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】奥田 崚太
(72)【発明者】
【氏名】茂木 健
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0287018(US,A1)
【文献】国際公開第2006/106982(WO,A1)
【文献】特表2002-511691(JP,A)
【文献】特開平11-177336(JP,A)
【文献】実開平02-004306(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/36
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、可視光が透過する誘電体層と、
前記第1面に設けられるアンテナ導体と、
前記第2面に設けられる接地導体とを備え、
前記接地導体は、平面視において、前記アンテナ導体と重複する第1領域と、前記アンテナ導体と重複しない第2領域に配置され、
前記接地導体は、平面視において、一部が前記アンテナ導体と重複する面状接地導体を含み、
前記第2領域は、平面アンテナによって送受される電波の、前記誘電体層における実効波長をλとすると、λ/4×λ/4の面積あたりに前記接地導体が占める面積の割合が50%以下の領域を有する、平面アンテナ。
【請求項2】
前記面状接地導体は、平面視において、全体が前記アンテナ導体と重複する請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
前記面状接地導体は、平面視において、前記アンテナ導体と同形状である請求項1または2に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
前記アンテナ導体は、可視光の透過度合いが前記誘電体層よりも低い領域を有し、又は、可視光の透過度合いが前記誘電体層よりも低い領域から構成される、請求項1
から3のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項5】
前記接地導体は、隙間が生じるように形成される線状接地導体を含む、請求項1
から4のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項6】
前記アンテナ導体は、隙間が前記アンテナ導体の内部に生じるように形成される内部線状導体を含み、
前記内部線状導体の少なくとも一部は、平面視において、前記線状接地導体と重複する、請求項
5に記載の平面アンテナ。
【請求項7】
前記アンテナ導体は、前記内部線状導体と接し、前記アンテナ導体の外縁を形成する外縁線状導体を含む、請求項
6に記載の平面アンテナ。
【請求項8】
前記線状接地導体の線幅は、1~500μmである、請求項
5から
7のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項9】
前記線状接地導体は、第1直線方向に延伸する第1線状接地導体と、前記第1直線方向と直交する第2直線方向に延伸する第2線状接地導体とを含む、請求項
5から
8のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項10】
隣り合う前記第1線状接地導体の間のピッチと、隣り合う前記第2線状接地導体の間のピッチと、が等しい、請求項
9に記載の平面アンテナ。
【請求項11】
前記線状接地導体の線幅は、前記ピッチに対して0.5~30%である、請求項
10に記載の平面アンテナ。
【請求項12】
前記線状接地導体に囲まれる領域の外縁の長さは、1λ以下である、請求項
5から
11のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項13】
前記線状接地導体は、前記第1領域と前記第2領域の両方に形成されている、請求項
5から
12のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項14】
前記アンテナ導体は、少なくとも一つのパッチ導体を有する、請求項1から
13のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項15】
前記第1面に前記アンテナ導体と接続する給電ラインを有し、
前記給電ラインは、第1の給電ラインと第2の給電ラインとを有し、
前記第2の給電ラインは、前記アンテナ導体と前記第1の給電ラインとの間に位置し、
前記第1の給電ラインは、前記第2の給電ラインよりも導体密度が高い、請求項1から
14のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項16】
前記アンテナ導体は、アレイアンテナを構成する、請求項1から
15のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項17】
請求項1から
16のいずれか一項に記載の少なくとも一つの平面アンテナを備える窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面アンテナ及び窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4G LTEから5G(sub6)への移行など、マイクロ波やミリ波の周波数帯を使用する高速・大容量の無線通信システムを利用するサービスが拡がる動きがある。具体的には、3GHz帯域から5~6GHz帯域まで、そのようなサービスの使用帯域が広がる傾向にある。更に高周波の28GHz帯なども有望な帯域と期待されている。このような周波数帯に対応可能であって、指向性及び受信感度の良好なアンテナとして、パッチアンテナに代表される平面アンテナが知られており、様々な平面形状を有する平面アンテナが開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017‐509266号公報
【文献】特開2017‐063255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のパッチアンテナは、所定の形状を有するパッチアンテナ部分と、パッチアンテナ部分に誘電体基板を介して対向する金属箔から形成される接地導体とを有するため、可視光の透過がその接地導体によって遮られる。したがって、従来の技術では、パッチアンテナを例えば窓ガラスなどの可視光透過部材に取り付けた場合、パッチアンテナ(特に、接地導体)が窓ガラス越しの視野を遮ってしまう問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、視野の遮りを抑え、指向性に優れ、所望の送受感度を有する平面アンテナを提供するとともに、少なくとも一つの当該平面アンテナを備える窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、可視光が透過する誘電体層と、
前記第1面に設けられるアンテナ導体と、
前記第2面に設けられる接地導体とを備え、
前記接地導体は、平面視において、前記アンテナ導体と重複する第1領域と、前記アンテナ導体と重複しない第2領域に配置され、
前記第2領域は、平面アンテナによって送受される電波の、前記誘電体層における実効波長をλとすると、λ/4×λ/4の面積あたりに前記接地導体が占める面積の割合が50%以下の領域を有する、平面アンテナを提供する。
【0007】
また、本開示は、少なくとも一つの当該平面アンテナを備える窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、視野の遮りを抑え、指向性に優れ、所望の送受感度を有する平面アンテナ、及び、少なくとも一つの当該平面アンテナを備える窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態の平面アンテナの平面図である。
【
図2】第1の実施形態の平面アンテナのアンテナ導体及び接地導体の平面図である。
【
図3】第2の実施形態の平面アンテナの平面図である。
【
図4】第2の実施形態の平面アンテナのアンテナ導体及び接地導体の平面図である。
【
図5A】第2の実施形態の平面アンテナの給電ラインの平面図である。
【
図5B】第2の実施形態の平面アンテナの給電ラインの平面図である。
【
図5C】第2の実施形態の平面アンテナの給電ラインの平面図である。
【
図5D】第2の実施形態の平面アンテナの給電ラインの平面図である。
【
図6】第3の実施形態の平面アンテナの平面図である。
【
図7】相互に交差する複数の線状導体の平面図である。
【
図9】一比較形態の平面アンテナのリターンロス特性の一例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態の平面アンテナのリターンロス特性の一例を示す図である。
【
図11】第3の実施形態の平面アンテナのリターンロス特性の一例を示す図である。
【
図12】一比較形態の平面アンテナのE面での指向性の一例を示す図である。
【
図13】第1の実施形態の平面アンテナのE面での指向性の一例を示す図である。
【
図14】第3の実施形態の平面アンテナのE面での指向性の一例を示す図である。
【
図15】一比較形態の平面アンテナのH面での指向性の一例を示す図である。
【
図16】第1の実施形態の平面アンテナのH面での指向性の一例を示す図である。
【
図17】第3の実施形態の平面アンテナのH面での指向性の一例を示す図である。
【
図18】平面アンテナの平面視での部分拡大図である。
【
図19】第4の実施形態の平面アンテナの斜視図を示す。
【
図20】第5の実施形態の平面アンテナの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態の説明を行う。なお、各形態において、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0011】
本開示に係る実施形態の平面アンテナは、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、0.3GHz~300GHz)の電波の送受に好適である。本開示に係る実施形態の平面アンテナは、例えば、V2X通信システム、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、車載レーダーシステムなどに適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限られない。V2X通信システムの一例として、ETC(Electronic Toll Collection)システムがある。
【0012】
図1は、第1の実施形態の平面アンテナの平面図である。
図1に示す平面アンテナ101は、可視光が透過する誘電体層40と、誘電体層40の片面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40を介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10に給電する給電ライン30とを備える。平面アンテナ101は、パッチアンテナ又はマイクロストリップアンテナと称される。
【0013】
図2は、第1の実施形態の平面アンテナのアンテナ導体及び接地導体の平面図である。誘電体層40は、第1主面41と、第1主面41とは反対側の第2主面42とを有する。
図2の上段は、誘電体層40の第1主面41に設けられるアンテナ導体10及び給電ライン30を示す。
図2の下段は、誘電体層40の第2主面42に設けられる接地導体20を示す。第1主面41は、誘電体層の第1面の一例である。第2主面42は、誘電体層の第1面とは反対側の第2面の一例である。
【0014】
誘電体層40は、誘電体を主成分とする板状又はシート状の基材である。第1主面41及び第2主面42は、いずれも、XY平面に平行である。誘電体層40は、例えば、誘電体基板でもよいし、誘電体シートでもよい。誘電体層40の材料は、例えば、石英ガラス等のガラス、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられるが、その材料は、これらに限られない。
【0015】
また、誘電体層40の材料は、可視光が透過する透明な誘電体部材であればよく、透明には、半透明が含まれる。誘電体層40の可視光線透過率は、視野の遮りを抑える点で、例えば90%以上が好ましい。
【0016】
アンテナ導体10は、その表面がXY平面に平行な平面状の導体パターンである。アンテナ導体10は、第1主面41に形成される導体パターンであり、第1主面41に配置される導体シート又は導体基板により形成されてもよい。アンテナ導体10に使用される導体の材料として、例えば、銀、銅などが挙げられるが、これらに限られない。
【0017】
アンテナ導体10は、例えば、少なくとも一つのパッチ導体を有する。第1の実施形態では、アンテナ導体10は、4つのパッチ導体11,12,13,14を有するアレイアンテナを構成する例を示す。
【0018】
第1の実施形態では、アンテナ導体10は、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域から構成されたソリッドなパターンである。例えば、アンテナ導体10の全体は、複数のパッチ導体11~14を含め、不透明な面状導体から構成されている。
【0019】
給電ライン30は、その表面がXY平面に平行な平面状の導体パターンである。給電ライン30は、第1主面41に形成される導体パターンであり、第1主面41に配置される導体シート又は導体基板により形成されてもよい。給電ライン30に使用される導体の材料として、例えば、銀、銅などが挙げられるが、これらに限られない。第1の実施形態では、給電ライン30は、アンテナ導体10と一体的に形成されている。
【0020】
給電ライン30は、パッチ導体11,12への分岐路とパッチ導体13,14への分岐路とが接続される分岐箇所36に接続される一方の端部32と、アンプ等の不図示の外部装置に接続される給電端である他方の端部33とを有する。第1の実施形態では、給電ライン30は、Y軸方向に延伸するストリップ導体であり、端部32がアンテナ導体10に接続されている。
【0021】
第1の実施形態では、給電ライン30は、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域から構成されたソリッドなパターンである。例えば、給電ライン30の全体は、不透明な面状導体から構成されている。
【0022】
接地導体20は、その表面がXY平面に平行な導体パターンである。接地導体20は、第2主面42に形成される導体パターンであり、第2主面42に配置される導体シート又は導体基板により形成されてもよい。接地導体20に使用される導体の材料として、例えば、銀、銅などが挙げられるが、これらに限られない。
【0023】
接地導体20は、隙間が生じるように形成される線状接地導体27と、線状接地導体27に接続される面状接地導体26とを有する。面状接地導体26は、第2主面42の一端辺に帯状に設けられたグランド部である。面状接地導体26は、給電端である端部33に対応するグランド電極である。
【0024】
第1の実施形態では、線状接地導体27は、隙間が生じるように網目状に形成され、当該隙間によって視野(透明性)を確保できる。第1の実施形態では、格子状の隙間が形成されている。
【0025】
第1の実施形態では、接地導体20は、線状接地導体27と接し、接地導体20の外縁を形成する外縁線状導体28を含む。外縁線状導体28は、線状接地導体27を囲んでいる。なお、外縁線状導体28は、線状接地導体27の一部を囲むように配置されてもよいが、外縁線状導体28自体を配置しなくてもよい。外縁線状導体28配置の有無については、以下の実施形態も同様である。
【0026】
第1の実施形態では、
図1に示されるように、平面視において、アンテナ導体10と重複する第1領域21と、アンテナ導体10と重複しない第2領域22に接地導体20を有する。より具体的に、第1の実施形態では、線状接地導体27が第1領域21と第2領域22の両方に形成されている。
【0027】
第2領域22は、平面アンテナ101によって送受される電波の、誘電体層40における実効波長をλとすると、λ/4×λ/4の面積あたりに接地導体20が占める面積の割合(以下、割合Rとも称する)が50%以下の領域23を有する。第1の実施形態では、領域23は、可視光の透過を遮る線状接地導体27の割合Rが50%以下である。第2領域22がこのような領域23を有することにより、視野の遮りを抑え、指向性に優れ、所望の送受感度を有する平面アンテナ101を提供できる。例えば、平面アンテナ101を窓ガラス200の表面又は内部に設置した場合、割合Rが50%以下の領域23を有することにより、平面アンテナ101(特に、接地導体20)が窓ガラス200越しの視野を遮ることを抑制できる。割合Rは、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。割合Rの下限は、0%超であればとくに制限されないが、安定したアンテナ利得を確保するために例えば、割合Rは、2%以上であればよく、5%以上であれば好ましい。また、割合Rが50%以下の領域23を有するとともに、第2領域22全ての面積あたりに接地導体20が占める面積の割合(以下、割合R'とも称する)が50%以下であると、より好ましい。割合R'も、割合Rと同様に、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。割合R'の下限は、0%超であればとくに制限されないが、安定したアンテナ利得を確保するために例えば、割合R'は、2%以上であればよく、5%以上であれば好ましい。
【0028】
割合Rが50%を超えると、視野の確保が難しくなる。割合Rが例えば2%未満になると、視野の確保が容易になるが、アンテナ利得の確保が難しくなる。また、割合R'が50%を超えると、視野の確保が難しくなり、割合R'が例えば2%未満になると、視野の確保が容易になるが、アンテナ利得の確保が難しくなる場合がある。
【0029】
図3は、第2の実施形態の平面アンテナの平面図である。
図3に示す平面アンテナ102は、可視光が透過する誘電体層40と、誘電体層40の片面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40を介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10に給電する給電ライン30とを備える。
【0030】
第1の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の実施形態の説明を援用することで省略する。
図3に示す第2の実施形態では、アンテナ導体10及び給電ライン30の形態が、
図1に示す第1の実施形態と異なる。
【0031】
図4は、第2の実施形態の平面アンテナのアンテナ導体及び接地導体の平面図である。第2の実施形態では、アンテナ導体10及び給電ライン30は、いずれも、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域を有するパターンを含む。
【0032】
アンテナ導体10は、隙間がアンテナ導体10の内部に生じるように形成される内部線状導体17を含む。第2の実施形態では、内部線状導体17は、格子状の隙間が生じるように網目状に形成されている。内部線状導体17の少なくとも一部は、平面視において、接地導体20の線状接地導体27と重複しているが、内部線状導体17の全てが線状接地導体27と重複しているとより好ましい。このように、アンテナ導体10と接地導体20の両方が、隙間が生じるように線状導体によって形成されているので、視野の確保が更に容易になる。
【0033】
第2の実施形態では、アンテナ導体10は、内部線状導体17と接し、アンテナ導体10の外縁を形成する外縁線状導体18を含む。外縁線状導体18は、内部線状導体17を囲んで閉じた状態になっている。このように、アンテナ導体10について、外縁線状導体18が内部線状導体17を囲む構成とすることで、第1の実施形態のような面状導体の場合の電流分布との相違を抑制でき、良好なアンテナ特性を確保できる。
【0034】
給電ライン30は、隙間が給電ライン30の内部に生じるように形成される内部線状導体37を含む。第2の実施形態では、内部線状導体37は、格子状の隙間が生じるように網目状に形成されている。内部線状導体37の少なくとも一部は、平面視において、接地導体20の線状接地導体27と重複しているが、内部線状導体37の全てが線状接地導体27と重複しているとより好ましい。このように、給電ライン30と接地導体20の両方が、隙間が生じるように線状導体によって形成されているので、視野の確保が更に容易になる。
【0035】
第2の実施形態では、給電ライン30は、内部線状導体37と接し、給電ライン30の外縁を形成する外縁線状導体38を含む。外縁線状導体38は、内部線状導体37を囲んで閉じた状態になっている。このように、給電ライン30について、外縁線状導体38が内部線状導体37を囲む構成とすることで、第1の実施形態のような面状導体の場合の電流分布との相違を抑制でき、良好なアンテナ特性を確保できる。
【0036】
第2の実施形態でも、
図3に示されるように、平面視において、アンテナ導体10と重複する第1領域21と、アンテナ導体10と重複しない第2領域22に接地導体20を有する。第2の実施形態では、線状接地導体27が第1領域21と第2領域22の両方に形成されている。第2領域22は、平面アンテナ102によって送受される電波の、誘電体層40における実効波長をλとすると、λ/4×λ/4の面積あたりに接地導体20が占める面積の割合Rが50%以下の領域23を有する。したがって、第2領域22がこのような領域23を有することにより、視野の遮りを抑え、指向性に優れ、所望の送受感度を有する平面アンテナ102を提供できる。なお、割合R、割合R'は、第1の実施形態と同じような好ましい範囲の値であればよい。さらに、第2の実施形態の場合、第1領域21全ての面積あたりにアンテナ導体10が占める面積の割合(以下、割合R"とも称する)が50%以下であると、より好ましい。割合R"も、割合Rと同様に、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。割合R"の下限は、0%超であればとくに制限されないが、安定したアンテナ利得を確保するために例えば、割合R"は、2%以上であればよく、5%以上であれば好ましい。
【0037】
図5A~
図5Dは、第2の実施形態における給電ライン30の他の形態を示す平面図である。
図5Aは、給電ライン60aの平面図であり、給電ライン60aは、第1の給電ライン61と第2の給電ライン62を有する。第2の給電ライン62は、アンテナ導体10と第1の給電ライン61との間に位置し、一端はアンテナ導体10に接続され、他端は第1の給電ライン61に接続される。第1の給電ライン61は、単位面積(例えば1mm
2)あたりの導体の密度が、第2の給電ライン62よりも高く、例えば可視光に対する透過率が0%であるソリッドな領域を一部含む構成でもよく、全てがソリッドな領域からなる構成でもよい。言い換えると、第2の給電ライン62は、第1の給電ライン61よりも高い透明性を有する。とくに、給電ライン60a(30)は、伝送線路が長くなるほど伝送損失が大きくなるため、例えば、透明性を必要としない部分の導体密度を高くして伝送効率を高めてもよい。例えば、第1領域21に至るまでの給電ラインのうち、第1領域21から離れる部分ほど、透明性を必要としない場合があり、該部分の導体密度を他の部分よりも高くする構成が挙げられる。
【0038】
図5Aに示す給電ライン60aは、互いに隣り合う第1の給電ライン61と第2の給電ライン62とを有し、これらの境界となる境界線63を含む。例えば、第1の給電ライン61はその領域が全て導体によって形成され、第2の給電ライン62はその領域が上述のような網目状となっている組み合わせの場合、境界線63で給電ライン60aのインピーダンス不整合が発生して伝送損失が生じやすくなる。
図5A~
図5Dは、境界線63によるインピーダンス不整合を抑制し、インピーダンス整合が可能となるような種々の形態を示した、給電ライン60a~給電ライン60dを示した平面図である。
【0039】
図5Aに示す給電ライン60aは、第1の給電ライン61の幅が一定で、その幅が第2の給電ライン62の幅よりも狭い形態である。
図5Bに示す給電ライン60bは、第1の給電ラインの61が、異なる幅を有する2つ以上の部分を有する。例えば、給電ライン60bは、境界線63を含む第1の部分64と(境界線63を含まない)第2の部分65を有し、第1の部分64の幅は第2の給電ライン62の幅および第2の部分65の幅よりも狭い。第1の部分64は、そのY軸方向の長さが、波長の1/4となる変成器として機能するように設けてよい。インピーダンス変成器の長さを波長の1/4とすることで、インピーダンス変成器の設計が容易になる。なお、「波長の1/4」とは、例えば給電ライン30が誘電体層上に形成されている場合、実効波長λの1/4倍とするとよい。このようにして、第1の部分64の幅および(Y軸方向の)長さ、ならびに第2の部分65の幅は、所定のインピーダンスに調整するよう設定できる。
【0040】
図5Cに示す給電ライン60cは、第1の給電ライン61の幅が境界線63に近くなるにつれて狭くなる形態である。第1の給電ライン61は、その長手方向に沿った外縁が直線に限らず曲線を含む形状でもよい。
図5Dに示す給電ライン60dは、第1の給電ライン61の幅と第2の給電ライン62の幅が同一で、第1の給電ライン61の導体密度が異なる2つ以上の部分を有する形態である。例えば、給電ライン60dは、第1の部分66、第2の部分67、第3の部分68がこの順に並んで配置され、第1の部分66は、境界線63と接する。例えば、第1の部分66、第2の部分67および第3の部分68のうち、第1の部分66の導体密度が最も低く、第2の部分67、第3の部分68の順に導体密度が高くなる構成が挙げられる。
【0041】
なお、第2の実施形態における給電ライン30は、
図5A~
図5Dに示した給電ライン60a~給電ライン60dに限らず、インピーダンス整合が可能となるように、導体密度に適宜調整でき、これらの形態を組み合わせた形状に適宜調整できる。
【0042】
図6は、第3の実施形態の平面アンテナのアンテナ導体及び接地導体の平面図である。
図6に示す平面アンテナ103は、可視光が透過する誘電体層40と、誘電体層40の片面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40を介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10に給電する給電ライン30とを備える。
【0043】
第3の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の実施形態の説明を援用することで省略する。
図6に示す第3の実施形態の平面アンテナ103は、平面視で、
図1に示す同じ形状に見える。第3の実施形態では、接地導体20の形態が、
図1に示す第1の実施形態と異なる。
【0044】
接地導体20は、平面視において、全体がアンテナ導体10と重複する面状接地導体25を含む。面状のアンテナ導体10と面状接地導体25とが対向しているので、面状接地導体25としてのグランド部のレベルが安定する。さらに、面状のアンテナ導体10と面状接地導体25とが対向していることで、面状接地導体25が主な放射源(面状のアンテナ導体10)となるパッチの裏側に位置する。そのため、面状接地導体25が反射板として機能するため、パッチの表側(+Z側)の指向性やアンテナ利得の向上が可能となる。第3の実施形態では、面状接地導体25は、平面視において、アンテナ導体10と同形状である。これにより、視野の確保が容易になる。なお、面状接地導体25は、平面視において、面状接地導体25の一部がアンテナ導体10からはみ出るように、当該一部がアンテナ導体10と重複してもよく、面状接地導体25の一部がアンテナ導体10の外縁よりも内側となるように、当該一部がアンテナ導体10と重複してもよい。
【0045】
接地導体20は、平面視において、全体が給電ライン30と重複する面状接地導体29を含む。面状の給電ライン30と面状接地導体29とが対向しているので、給電ラインとしての動作が安定する。第3の実施形態では、面状接地導体29は、平面視において、給電ライン30と同形状である。これにより、視野の確保が容易になる。なお、面状接地導体29は、平面視において、面状接地導体29の一部が給電ライン30からはみ出るように、当該一部が給電ライン30と重複してもよく、面状接地導体29の一部が給電ラインの30の外縁よりも内側になるように、当該一部が給電ライン30と重複してもよい。
【0046】
図7は、相互に交差する複数の線状導体の平面図である。線状接地導体27の線幅Wは、1~500μmであることが、視野の確保の点で好ましい。線幅Wが1μm未満であると、接地(アース)が安定せずにアンテナ利得が安定しなくなるおそれがある。また、線幅Wが500μm超であると、視野の確保が難しくなる。したがって、線幅Wが1~500μmであると、安定したアンテナ利得と視野の確保が両立できる。また、線幅Wは、3~200μmが好ましく、5~50μmがより好ましい。
【0047】
また、線状接地導体27は、第1直線方向51に延伸する第1線状接地導体と、第1直線方向51と直交する第2直線方向52に延伸する第2線状接地導体とを含む。これにより、接地(アース)が安定しアンテナ特性のばらつきを抑制できる。
図7は、2本の第1線状接地導体と2本の第2線状接地導体とが交差している状態を示している。
【0048】
隣り合う第1線状接地導体の間のピッチP2と、隣り合う第2線状接地導体の間のピッチP1と、が等しいと、アンテナの指向性のばらつきを抑制できる。線状接地導体27の線幅Wは、ピッチP1(又は、ピッチP2)に対して0.5~30%であることが、視野の確保の点で好ましい。線幅WがピッチP1又はピッチP2に対して0.5%未満であると、接地(アース)が安定せずにアンテナ利得が安定しなくなるおそれがある。また、線幅WがピッチP1又はピッチP2に対して30%超であると、視野の確保が難しくなる。したがって、線幅Wは、ピッチP1(又は、ピッチP2)に対して0.5~30%であると、安定したアンテナ利得と視野の確保が両立できる。また、線幅Wは、ピッチP1(又は、ピッチP2)に対して0.7~23%が好ましく、1~15%がより好ましい。
【0049】
また、線状接地導体27に囲まれる領域53の外縁の長さLは、誘電体層40における実効波長λに対して、1λ以下であることが、アンテナ利得を向上させる点で好ましい。長さLが1λを超えると、線状接地導体で不要な共振が発生しアンテナ性能の確保が難しくなる。
【0050】
次に、本実施形態の平面アンテナのリターンロスと指向性を、一比較形態の平面アンテナと比較した結果について説明する。
【0051】
図8は、一比較形態の平面アンテナの平面図である。
図8に示す平面アンテナ100は、可視光が透過する誘電体層40と、誘電体層40の片面に設けられるアンテナ導体110と、誘電体層40を介してアンテナ導体110と対向する接地導体120と、アンテナ導体110に給電する給電ライン130とを備える。
図8に示す形態では、接地導体の形態が、
図1,2に示す第1の実施形態と異なる。
【0052】
図8に示す接地導体120は、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域から構成されたソリッドなパターンである。接地導体120の全体は、不透明な面状導体から構成されている。
【0053】
図9は、一比較形態の平面アンテナ100のリターンロス特性の一例を示す図である。
図10は、第1の実施形態の平面アンテナ101のリターンロス特性の一例を示す図である。
図11は、第3の実施形態の平面アンテナ103のリターンロス特性の一例を示す図である。
図9~11において、縦軸のS11は、リターンロス特性を示す。
【0054】
図10,11に示されるように、本実施形態の平面アンテナ101,103は十分なリターンロス特性が得られる。一方、平面アンテナ100は、接地導体120が面状導体であるため、視界が遮られる。したがって、本実施形態の平面アンテナ101,103は、視界の遮りを抑制しつつ、十分なリターンロス特性が得られる。
【0055】
図12~14は、それぞれ、平面アンテナ100,101,103のE面での指向性の一例を示す図である。
図15~17は、それぞれ、平面アンテナ100,101,103のH面での指向性の一例を示す図である。E面は、分岐箇所36を通るYZ平面を表し、H面は、分岐箇所36を通るZX平面を表す。
図12~17に示されるように、本実施形態の平面アンテナ101,103は、平面アンテナ100と同等のアンテナ利得と同等の指向性が得られる。したがって、本実施形態の平面アンテナ101,103は、視界の遮りを抑制しつつ、指向性に優れ、所望の送受感度を有する。
【0056】
なお、第1の実施形態の平面アンテナ101は、
図10,13,16に示す例では、26.5GHzの電波に対して高い送受感度を示すものあり、第2主面42において、λ/4×λ/4の面積あたりに接地導体20が占める面積の割合(R)は、20%とした。また、隣り合う第1線状接地導体の間のピッチP2と、隣り合う第2線状接地導体の間のピッチP1と、が等しく、847μmとした。また、線幅Wは100μmであり、ピッチP1,P2に対する線幅Wの割合は12%であった。
【0057】
また、第3の実施形態の平面アンテナ103は、
図11,14,17に示す例では、28GHzの電波に対して高い送受感度を示すものあり、第2主面42において、λ/4×λ/4の面積あたりに接地導体20が占める面積の割合(R)は、20%とした。また、隣り合う第1線状接地導体の間のピッチP2と、隣り合う第2線状接地導体の間のピッチP1と、が等しく、847μmとした。また、線幅Wは100μmであり、ピッチP1,P2に対する線幅Wの割合は12%であった。
【0058】
また、一比較形態の平面アンテナ100は、
図9,12,15に示す例では、28GHzの電波に対して高い送受感度を示すものあり、第2主面42において、λ/4×λ/4の面積あたりに接地導体20が占める面積の割合(R)は、100%である。
【0059】
また、
図9~17に示す例の平面アンテナ100,101,103において、
図1に示す共通寸法L11,L12,L13は、単位をmmとすると、
L11:18
L12:18
L13:1.1
である。
【0060】
また、
図9~17に示す例の平面アンテナ100,101,103において、各部の共通寸法は、
図18に示す通りである。
【0061】
以上、平面アンテナ及び窓ガラスを実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0062】
アンテナ導体は、可視光の透過度合いが、誘電体層に比べて低く又は高くてもよく、誘電体層と同じでもよい。また、線状導体は、隙間が生じるように網目状に形成されてもよいし、隙間が生じるようにストライプ状に形成されてもよい。
【0063】
アンテナ導体の外形は、円形等の他の外形でもよい。また、アンテナ導体は、給電ピンやスルーホール等の他の給電ラインによって給電されてもよい。
【0064】
例えば、
図19は、給電ライン30がコプレーナ線路によって構成された第4の実施形態の平面アンテナの斜視図である。第4の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の実施形態の説明を援用することで省略する。平面アンテナ104は、可視光が透過する誘電体層40と、誘電体層40の片面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40を介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10にスロット31を介して給電する給電ライン30とを備える。
【0065】
図19において、給電ライン30及び接地導体20は、誘電体層40の第2主面(アンテナ導体10が形成される第1主面41の反対側の面)に形成されている。給電ライン30は、並走する一対のギャップと、それらの一対のギャップに挟まれた中心導体とを有する。給電ライン30の一方の端部に形成されるスロット31と、第1主面41に形成されるアンテナ導体10とが高周波的に結合する。
【0066】
図19に示す形態では、接地導体20は、隙間が生じるように形成される線状接地導体27を有し、線状接地導体27は、隙間が生じるように網目状に形成され、当該隙間によって視野(透明性)を確保できる。なお、給電ライン30の中心導体とアンテナ導体10との少なくとも一方が、隙間が生じるように形成される線状導体を有してもよい。これにより、更なる透明性を確保できる。
【0067】
図20は、第5の実施形態の平面アンテナの斜視図である。第5の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の実施形態の説明を援用することで省略する。平面アンテナ105は、可視光が透過する誘電体層40A,40Bと、誘電体層40Aの片面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40Aを介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10にスロット31を介して給電する給電ライン30とを備える。
【0068】
図20において、接地導体20は、一対の誘電体層40A,40Bの間に挟まれている。アンテナ導体10は、第1誘電体層40Aの表面に形成されたパッチ導体である。給電ライン30は、第2誘電体層40Bの表面に形成されたマイクロストリップ線路である。接地導体20に空けられたスロット31を介して、アンテナ導体10と給電ライン30とが電磁結合することによって、アンテナ導体10が給電されて励振する。
【0069】
図20に示す接地導体20が、隙間が生じるように形成される線状接地導体を有することが好ましい。当該隙間によって視野(透明性)を確保できる。なお、給電ライン30とアンテナ導体10との少なくとも一方が、隙間が生じるように形成される線状導体を有してもよい。これにより、更なる透明性を確保できる。
【0070】
本国際出願は、2018年10月3日に出願した日本国特許出願第2018-188584号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-188584号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0071】
10 アンテナ導体
11~14 パッチ導体
17 内部線状導体
18 外縁線状導体
20 接地導体
21 第1領域
22 第2領域
23 領域
27 線状接地導体
28 外縁線状導体
30,60a,60b,60c,60d 給電ライン
31 スロット
32,33 端部
36 分岐箇所
37 内部線状導体
38 外縁線状導体
40 誘電体層
41 第1主面
42 第2主面
51 第1直線方向
52 第2直線方向
53 領域
61 第1の給電ライン
62 第2の給電ライン
63 境界線
100,101,102,103,104,105 平面アンテナ
200 窓ガラス