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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】アンテナシステム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20230926BHJP
   H01Q 13/10 20060101ALI20230926BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20230926BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01Q1/22 C
H01Q13/10
H01Q13/08
H01Q21/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020550468
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2019038814
(87)【国際公開番号】W WO2020071390
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018190375
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018211308
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐山 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】奥田 崚太
(72)【発明者】
【氏名】茂木 健
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082418(JP,A)
【文献】特開2006-191574(JP,A)
【文献】特開2017-60038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0175478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 13/10
H01Q 13/08
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが1.1mm以上で28GHzにおける誘電正接が0.005以上のガラス板と、
前記ガラス板の一方の面から離れて位置するアンテナとを備え、
前記アンテナに入力される電力と前記アンテナから空間中に放射される電力との比を放射効率とし、
周波数10GHz以上の所定の周波数の電波の実効波長をλgとし、前記ガラス板と前記アンテナとを接触させたときの放射効率をη[dB]とし、前記一方の面と前記アンテナとの間の距離をλg/2離したときの放射効率をηλg/2[dB]とするとき、
η≧η+(ηλg/2-η)×0.1
を満足する放射効率η[dB]が得られる距離を離して、前記ガラス板と前記アンテナとが配置される、アンテナシステム。
【請求項2】
-10[dB]以上の放射効率ηが得られる距離を離して、前記ガラス板と前記アンテナとが配置される、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項3】
前記アンテナは、前記一方の面に対して平行になるように配置される平面アンテナである、請求項1又は2に記載のアンテナシステム。
【請求項4】
前記ガラス板と前記アンテナとの間に位置し、空気とは異なる整合層を備え、
前記整合層は、28GHzにおける誘電正接が0.03以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項5】
前記アンテナは、前記周波数の電波を放射する放射部を備え、前記ガラス板の平面視で前記整合層の外縁が前記放射部の外縁よりも外側となる、請求項4に記載のアンテナシステム。
【請求項6】
前記ガラス板の平面視で、前記整合層の外縁は、前記アンテナの外縁よりも外側となる、請求項5に記載のアンテナシステム。
【請求項7】
前記放射部は、導体材料からなる放射板である、請求項5又は6に記載のアンテナシステム。
【請求項8】
前記放射部は、スロットである、請求項5又は6に記載のアンテナシステム。
【請求項9】
前記ガラス板と前記アンテナとの間に位置し、空気とは異なる比誘電率を有するスペーサを備え、
前記スペーサは、28GHzにおける誘電正接が0.03以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項10】
前記アンテナは、前記周波数の電波を放射する放射部を備え、前記ガラス板の平面視で前記スペーサの外縁が前記放射部の外縁よりも外側となる、請求項9に記載のアンテナシステム。
【請求項11】
前記ガラス板の平面視で、前記スペーサの外縁は、前記アンテナの外縁よりも外側となる、請求項10に記載のアンテナシステム。
【請求項12】
前記スペーサは、28GHzにおける比誘電率が10以下である、請求項9から11のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項13】
前記ガラス板と前記アンテナとの間の媒質は、空気のみである、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項14】
前記ガラス板と前記アンテナとの距離は、10GHz以上の所定周波数の電波における空気中の波長をλ0としたとき、2×λ0以下である、請求項1から13のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項15】
前記アンテナは、複数のアンテナ素子が配列されるアレイアンテナである、請求項1から14のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項16】
前記ガラス板は、28GHzにおける比誘電率が5以上9以下である、請求項1から15のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項17】
前記アンテナと前記アンテナに給電する伝送線路とを有する、伝送線路付アンテナを含む請求項1から16のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項18】
前記アンテナは、誘電体基材を有し、
前記誘電体基材の第1の表面に前記伝送線路を有し、
前記誘電体基材の前記第1の表面と反対側にある第2の表面に導体板を有し、
前記誘電体基材は、10GHz以上の所定の周波数の電波における空気中の波長をλ0としたとき、厚さが0.1×λ0以下である、請求項17に記載のアンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4G LTEから5G(sub6)への移行など、マイクロ波やミリ波の周波数帯を使用する高速・大容量の無線通信システムを利用するサービスが拡がる動きがある。具体的には、3GHz帯域から5~6GHz帯域まで、そのようなサービスの使用帯域が広がる傾向にある。そして、このような周波数帯に対応可能であって、指向性及び受信感度の良好なアンテナが求められている。また、車車間通信および路車間通信として期待されているV2X(Vehicle to Everything)は、例えば5.9GHz帯において欧州のETC(Electronic Toll Collection)システムで使用されるなど、多くの用途に展開されている。さらに、sub6よりも高い周波数(例えば、28GHz帯、40GHz帯、60GHz帯、70GHz帯)を用いた無線通信システムの普及に向けた試みも行われている。
【0003】
このような高周波数帯域の通信を行うため、例えば、車内に備えられたミリ波レーダーによる送受を行う場合、これまでの周波数帯の通信において顕著ではなかった、窓ガラスによる利得の減衰が起こることがある。そこで、高い利得を得るために、窓ガラスの一部に電波透過材を嵌め込む構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2017/188415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、窓ガラスそのものに機械的な加工を施したり、窓ガラスとは別の部材を、窓ガラスが通常存在する部分に包含させたりするため、構成が複雑になる問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、厚さが1.1mm以上で28GHzにおける誘電正接が0.005以上の従来のガラス板を用いて、そのガラス板の構成を複雑化させることなく、所定の高周波帯の電波を送受可能なアンテナシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
厚さが1.1mm以上で28GHzにおける誘電正接が0.005以上のガラス板と、
前記ガラス板の一方の面から離れて位置するアンテナとを備え、
前記アンテナに入力される電力と前記アンテナから空間中に放射される電力との比を放射効率とし、
周波数10GHz以上の所定の周波数の電波の実効波長をλgとし、前記ガラス板と前記アンテナとを接触させたときの放射効率をη[dB]とし、前記一方の面と前記アンテナとの間の距離をλg/2離したときの放射効率をηλg/2[dB]とするとき、
η≧η+(ηλg/2-η)×0.1
を満足する放射効率η[dB]が得られる距離を離して、前記ガラス板と前記アンテナとが配置される、アンテナシステムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、厚さが1.1mm以上で28GHzにおける誘電正接が0.005以上の従来のガラス板を用いて、そのガラス板の構成を複雑化させることなく、所定の高周波帯の電波を送受可能なアンテナシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】アンテナシステムの斜視図である。
図2】アンテナの正面図である。
図3】アンテナの側面図である。
図4】アンテナの斜視図である。
図5】アンテナの断面図である。
図6A】伝送線路付アンテナの斜視図である。
図6B】伝送線路付アンテナの断面図である。
図7A】伝送線路付アンテナの斜視図である。
図7B】伝送線路付アンテナの断面図である。
図8A】伝送線路付アンテナの斜視図である。
図8B】伝送線路付アンテナの断面図である。
図9A】伝送線路付アンテナの斜視図である。
図9B】伝送線路付アンテナの断面図である。
図9C】伝送線路付アンテナの断面図である。
図10A】伝送線路付アンテナの斜視図である。
図10B】伝送線路付アンテナの断面図である。
図10C】伝送線路付アンテナの断面図である。
図11】複数のアンテナを備えるアンテナシステムを例示する図である。
図12】ガラス板とアンテナとの間に整合層と空気が存在する構成を示す配置図である。
図13】ガラス板とアンテナとの間に整合層が存在する構成を示す配置図である。
図14】ガラス板とアンテナとの間に整合層とスペーサが存在する構成を示す配置図である。
図15】アレイアンテナを備えるアンテナシステムを例示する図である。
図16】板厚が2mmのガラス板とアンテナとの距離に対する放射効率の変化の一例を示す図である。
図17】板厚が3mmのガラス板とアンテナとの距離に対する放射効率の変化の一例を示す図である。
図18】板厚が4mmのガラス板とアンテナとの距離に対する放射効率の変化の一例を示す図である。
図19】板厚が5mmのガラス板とアンテナとの距離に対する放射効率の変化の一例を示す図である。
図20A】ガラス板と伝送線路付アンテナとの間に整合層が存在する構成を示す配置図である。
図20B】伝送線路付アンテナにおける伝送線路領域を示す斜視図である。
図21】誘電体基材の厚さに対する、伝送線路の伝送損失の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態の説明を行う。なお、各形態において、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0011】
また、本発明のアンテナシステムは、車両用に限られず、建物用でもよいし、電子機器用でもよい。本開示に係る実施形態の以下の説明では、車両用を代表例に挙げて説明する。
【0012】
本開示に係る実施形態の車両用アンテナは、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、0.3GHz~300GHz、特には10GHz以上、例えば28GHz含む帯域や39GHzを含む帯域)の電波の送受に好適である。本開示に係る実施形態の車両用アンテナは、例えば、V2X通信システム、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、車載レーダーシステムなどに適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限られない。V2X通信システムの一例として、ETC(Electronic Toll Collection)システムがある。
【0013】
図1は、本開示に係る実施形態のアンテナシステムを例示する斜視図である。図1に示すアンテナシステム101は、車両80の窓用のガラス板70と、ガラス板70に取り付けられる車両用アンテナ110(以下、単に"アンテナ110"とも称する)とを備える。
【0014】
ガラス板70は、1.1mm以上の厚さ(T)を有し、28GHzにおける誘電正接(いわゆる、tanδ)が0.005以上である。ガラス板70は、例えば、車両80の前側に設置されるフロントガラスである。ガラス板70は、水平面90に対して所定の設置角度θで車両80の前側の窓枠に取り付けられる。なお、ガラス板70は、厚さ(T)の上限はとくにないが、例えば、車両用であれば通常、1枚のガラスであれば、5mm以下の厚さのものが使用される。また、2枚のガラスを積層した構造を備える合わせガラスの場合、ガラス板70の最大の厚さは10mm以下(5mm×2)程度のものが使用される。ガラス板70の厚さは、用途に応じて、2mm以上でもよく、3mm以上でもよい。また、合わせガラスの場合、例えば、4mm以上(2mm以上×2)でもよく、6mm以上(3mm以上×2)でもよい。
【0015】
なお、誘電正接(tanδ)は、25℃、28GHzで、日本工業規格(JIS R 1641:2007)に規定されている方法により、空洞共振器及びベクトルネットワークアナライザを用いて測定された値である。本明細書における誘電正接(tanδ)の値は、とくにことわりがない場合、25℃、28GHzで上記規定により測定された値とする。
【0016】
ガラス板70を構成するガラスの組成はとくに限定されないが、酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを50~80%、Bを0~10%、Alを0.1~25%、LiO、NaO及びKOからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属酸化物を合計で3~30%、MgOを0~25%、CaOを0~25%、SrOを0~5%、BaOを0~5%、ZrOを0~5%及びSnOを0~5%含むガラス板を使用できる。
【0017】
アンテナ110は、ガラス板70の一方の面から離れて位置する。アンテナ110は、例えば、ガラス板70の内側表面から離れて位置するように、ガラス板70の内側に筐体等の不図示の部材を介して取り付けられている。この例では、ガラス板70の上側領域の中央部付近に取り付けられる。ガラス板70に取り付けられるアンテナ110の数は、この例では、一つであるが、複数でもよい。なお、ガラス板70の一方の面とアンテナとの距離Dは、アンテナ110が送受する10GHz以上の所定周波数の電波における空気中の波長をλ0としたとき、2×λ0以下であれば、低背化の観点から好ましく、1.5×λ0以下であればより好ましく、1.0×λ0以下であればさらに好ましい。
【0018】
なお、この例では、アンテナ110は、不図示の取り付け部材を介してガラス板70の内側表面に間接的に取り付けられているが、ガラス板70の内側表面から離れた位置に配置されていれば、他の取り付け箇所に取り付けられてもよい。例えば、アンテナ110は、車室内の天井部や、ルームミラーなどに取り付けられてもよい。アンテナ110がこのような取り付け箇所に取り付けられる場合でも距離Dは、ガラス板70から2×λ0以下であればよく、1.5×λ0以下であればより好ましく、1.0×λ0以下であればさらに好ましい。なお、距離Dは、ガラス板70とアンテナ110との間に、後述する整合層やスペーサが配置される場合においても上記の範囲が好ましい。
【0019】
図2は、アンテナを正面視で示す図である。図3は、アンテナを側面視で示す図である。図2,3に示すアンテナ110は、ガラス板70の内側表面76から離れた位置に配置されている。ガラス板70は、車室側の内側表面76と、車外側の外側表面77とを有する。内側表面76は、ガラス板70の一方の表面であり、外側表面77は、当該一方の表面とは反対側の表面である。板厚Tは、ガラス板70の厚さを示し、上記のように1.1mm以上である。
【0020】
距離Dは、内側表面76とアンテナ110との最短距離である。図3の場合、距離Dは、放射板20と内側表面76との間の最短距離を表す。アンテナ110は、ガラス板70から離れて配置されているため、距離Dは、零よりも大きい。つまり、距離Dが零のとき、アンテナ110は内側表面76に接触している。なお、アンテナ110は、内側表面76に対して平行に配置されていても、非平行に配置されていてもよく、非平行に配置されている場合でも、距離Dは、放射板20と内側表面76との間の最短距離を表す。つまり、アンテナ110について、電波の主な放射源が放射板20表面であれば、上記のように距離Dは、放射板20と内側表面76との間の最短距離としてもよい。放射板20は、10GHz以上の所定の周波数の電波を放射する例であり、同等の周波数の電波を放射するスロットも含めて本明細書では、これらを「放射部20」とも称する。
【0021】
なお、アンテナ110がガラス板70の一方の面(図3の場合、内側表面76)から離れて位置する形態には、アンテナ110を当該一方の面に接着させる接着部材が有限の厚さを有していれば、アンテナ110と当該一方の面との間に接着部材が介在する形態も含む。つまり、この場合、接着部材の厚さ(の最薄距離)が距離Dに相当する。接着部材の具体例として、接着剤や粘着剤や接着テープなどが挙げられる。換言すれば、アンテナ110がガラス板70の一方の面から離れて位置する形態には、アンテナ110が当該一方の面に接着部材等の介在部材を介して接触する形態も含む。
【0022】
接着部材としては、アクリル系樹脂、ゴム、シリコーン樹脂、ブタジエン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アイオノマー、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等が挙げられ、これらのうち1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
ここで、アンテナ110に入力される電力とアンテナ110から空間中に放射される電力との比を放射効率とする。アンテナ110に入力される電力とは、アンテナ110に給電される電力のうちアンテナ110が受け取る電力を表す。したがって、例えば、アンテナ110に接続される同軸ケーブルやマイクロストリップライン等の伝送線路において損失した電力は、上記「アンテナ110に入力される電力」には含まれない。本発明者らは、研究の結果、放射効率が板厚Tと距離Dに関係することを見出した。
【0024】
また、周波数10GHz以上の所定の周波数の電波の実効波長をλgとするが、実効波長λgとは、アンテナ110からガラス板70までの媒質が空気であれば、真空中の波長λ0と同じ(λg=λ0)である。しかし、空気以外に、アンテナ110とガラス板70との間に、整合層やスペーサなどの後述の誘電体、または、誘電体および金属が存在する場合、実効波長λgは、これらの材料の波長短縮率を考慮した波長を意味する。なお、整合層やスペーサは、ドライコーティングやウェットコーティングなどのコーティングによって形成されてもよい。
【0025】
ここで、ガラス板70とアンテナ110とを接触させたとき(D=0のとき)の放射効率をη[dB]とする。そして、ガラス板70の一方の面とアンテナ110との間の距離をλg/2離したとき(D=λg/2のとき)の放射効率をηλg/2[dB]とする。本発明者らは、『η≧η+(ηλg/2-η)×0.1』を満足する放射効率η[dB]が得られるように、ガラス板70とアンテナ110とを配置すると、ガラス板70を加工せずに、10GHz以上の高周波数帯の電波を送受できることを見出した。また、放射効率ηは、『η≧η+(ηλg/2-η)×0.2』を満足することが好ましく、『η≧η+(ηλg/2-η)×0.3』を満足することがより好ましい。なお「ガラス板70を加工せずに」というのは、アンテナ110近傍のガラス板70そのものを、部分的に厚さを薄くするなどの加工をしない場合が例示でき、通常、使用するガラス単体、または、合わせガラスの状態を維持する、という意味である。
【0026】
また、本発明者らは、-10[dB]以上の放射効率ηが得られるように、ガラス板70とアンテナ110とを配置すると、ガラス板70を加工せずに、10GHz以上の高周波数帯の電波を送受できることを見出した。本発明者らは、好ましくは-7[dB]以上、より好ましくは-5[dB]以上、さらに好ましくは-3[dB]以上、より一層好ましくは-1[dB]以上の放射効率ηが得られるように、ガラス板70とアンテナ110とを配置すると、ガラス板70を加工せずに、10GHz以上の高周波数帯の電波を送受できることを見出した。
【0027】
次に、アンテナ110の一構成例について、詳細に説明する。図2,3に示すアンテナ110は、少なくとも、導体板10と、放射板20とを備える。
【0028】
導体板10は、典型的には、その表面がXY平面に平行な平面状の層であり、アンテナ110のグランドとして機能する。導体板10は、板状又は膜状の導体である。導体板10に使用される導体の材料は、例えば、銀、銅などが挙げられるが、これらに限られない。また、図示の導体板10の形状は、(Z軸方向からみた)平面視で正方形であるが、正方形以外の多角形でもよいし、円等の他の形状でもよい。なお、ここでいう「板状又は膜状」とは、3次元的な形状を有するものでもよく、例えば、凸状、凹状、波状のものも含み、後述する放射板及び誘電体基材についても同様である。ただし、上述する「板状又は膜状」については、所定のアンテナ利得特性を予測しやすい点で平面形状(2次元形状)が好ましい。
【0029】
放射板20は、Z軸方向で導体板10に対向して配置される板状又は膜状の導体であり、その面積は導体板10よりも狭い。放射板20は、その表面がXY平面に平行な平面状の層であり、アンテナ110の放射素子として機能する。放射板20に使用される導体の材料は、例えば、銀、銅などが挙げられるが、これらに限られない。また、図示の放射板20の形状は、(Z軸方向からみた)平面視で正方形であるが、正方形以外の多角形でもよいし、円等の他の形状でもよい。
【0030】
放射板20は、導体板10から離れて配置されている。導体板10と放射板20との間の媒質は、空間と誘電体基材の少なくとも一方を含むものである。図2,3は、その媒質が誘電体基材60のみからなる場合を示す。なお、媒質が空間(空気)の場合、放射板20及び導体板10は、必要に応じて不図示の筐体によって固定されていればよい。
【0031】
誘電体基材60は、誘電体を主成分とする板状又は膜状の誘電体層である。誘電体基材60は、第1の表面61と、第1の表面61とは反対側の第2の表面62とを有する。表面61,62は、XY平面に平行である。誘電体基材60の一方の表面である表面61には、放射板20が設けられており、誘電体基材60の他方の表面である表面62には、導体板10が設けられている。
【0032】
誘電体基材60は、例えば、ガラスエポキシ基板等の誘電体基板でもよいし、誘電体シートでもよい。誘電体基材60に使用される誘電体の材料は、例えば、石英ガラス等のガラス、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられるが、これらに限られない。また、誘電体基材60が樹脂材料である場合、紫外線耐性を高めるために、樹脂の表面に紫外線吸収層をコーティングしてもよく、樹脂材料中に紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0033】
アンテナ110は、例えば、内側表面76に対して平行になるように配置される平面アンテナである。水平面90(図1参照)に対して傾斜する内側表面76に対して平行になるように平面アンテナであるアンテナ110を配置することによって、実装が容易となり、低背化を実現しやすい。
【0034】
アンテナ110は、例えば、誘電体基材60と、第1の表面61に設けられる放射板20と、放射板20に誘電体基材60を介して対向する導体板10とを備える平面アンテナである。このような構造を備える平面アンテナは、パッチアンテナ又はマイクロストリップアンテナと称される。
【0035】
図4は、導体板10及び放射板20が形成される誘電体基材60を含むアンテナ110を示す斜視図である。図5は、導体板10及び放射板20が形成される誘電体基材60を含むアンテナ110を示す断面図である。アンテナ110は、誘電体基材60の一部を貫通するように、給電部30と放射板20とを接続する接続導体40を備える。
【0036】
給電部30は、接触又は非接触で給電される箇所であり、不図示の伝送線路の一端が接続される又は近接する部位である。伝送線路の具体例として、同軸ケーブル、マイクロストリップラインなどが挙げられる。伝送線路の他端は、アンテナ110を利用して車外と通信する通信装置に接続される。給電部30は、放射板20に対して導体板10が配置される側に位置する。
【0037】
接続導体40は、導体板10には接触していない。接続導体40は、その一端が給電部30に接続され、その他端が接続点22で放射板20に接続される。接続点22は、放射板20の重心21からずれており、図示の場合、重心21に対してY軸方向の負側に位置している。重心21は、放射板20が正方形のような対称図形の場合、その対称図形の中心に相当する。
【0038】
接続導体40の具体例として、Z軸方向に誘電体基材60を貫通するスルーホールの内部に形成された導体、同軸ケーブルの芯線、ピン状に形成された導体ピンなどがあるが、接続導体40は、これらに限られない。なお、導体板10と放射板20との間の媒質が空間を含む場合、接続導体40の具体例として、同軸ケーブルの芯線や導体ピンなどがあるが、接続導体40は、これらに限られない。
【0039】
図5に示すように、放射板20の重心21は、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、導体板10の重心11と重複することが、導体板10側から放射板20側に向かう方向のアンテナ110のアンテナ利得を向上させる点で好ましい。この例では、導体板10に対して放射板20側からの視点とは、Z軸方向の正側からの視点を表し、導体板10側から放射板20側に向かう方向とは、Z軸方向の正側に向かう方向を表す。
【0040】
平面アンテナへの伝送線路としては、上記のように同軸ケーブル、マイクロストリップラインについて例示したが、該伝送線路についてより具体的に説明する。なお、本明細書では、平面アンテナと伝送線路を含むものを、「伝送線路付アンテナ」と称する。
【0041】
図6Aは、伝送線路付アンテナ201を示す斜視図であり、図6Bは、Y1-Y1’の断面図である。伝送線路付アンテナ201は、誘電体基材60と、誘電体基材60の第1の表面61に設けられる放射板20と、第1の表面61に設けられ放射板20に接続するマイクロストリップライン24を有する。また、伝送線路付アンテナ201は、誘電体基材60の第1の表面61の反対側にある第2の表面62に導体板10を備え、グランドとして機能する。なお、誘電体基材60(後述の第1の誘電体基材60a、第2の誘電体基材60b)は、誘電正接(tanδ)が小さい方が伝送線路における伝送損失を低減できる。また、誘電体基材60の誘電正接(tanδ)は、0.03以下であればよく、0.008以下がより好ましく0.001以下がさらに好ましい。
【0042】
伝送線路付アンテナ201において、誘電体基材60は、その厚さが薄いほど伝送線路からの放射損失を抑えられることからマイクロストリップライン24による伝送損失を低減しやすく、とくに高周波数になれば、より伝送損失の低減効果が顕著になりやすい。この中でも、図3のように放射板20(アンテナ110)とガラス板70との間が空気である場合に比べ、後述する図12図14のように、放射板20(アンテナ110)とガラス板70との間に整合層74を備える構成、または、整合層74およびスペーサ75を備える構成の場合の方が、誘電体基材60の厚さが薄いほど伝送線路からの放射損失を抑えられる。よって、放射板20(アンテナ110)とガラス板70との間に整合層74を備える構成、または、整合層74およびスペーサ75を備える構成の場合、誘電体基材60の厚さが薄いほどマイクロストリップライン24による伝送損失を低減しやすい。なお、誘電体基材60は、その厚さが0.1×λ0以下であればよく、0.08×λ0以下が好ましく、0.06×λ0以下がより好ましい。また、誘電体基材60の厚さの下限はとくに無いが、取り扱いの観点から、0.01mm以上であればよい。
【0043】
図7Aは、伝送線路付アンテナ202を示す斜視図であり、図7Bは、Y2-Y2’の断面図である。伝送線路付アンテナ202は、第1の誘電体基材60a、第2の誘電体基材60b、放射板20、導体板10、接続導体40およびマイクロストリップライン25を有する。また、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bは、厚さ方向に重なるように配置される。第1の誘電体基材60aは、第2の誘電体基材60bとは反対側にある第1の表面61と第2の誘電体基材60b側にある第2の表面62を有し、第2の誘電体基材60bは、第1の誘電体基材60a側にある第3の表面63と第1の誘電体基材60aとは反対側にある第4の表面64を有する。なお、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bは、異なる材料でもよく同じ材料でもよい。
【0044】
伝送線路付アンテナ202は、第1の表面61に設けられる放射板20と、放射板20に接続される接続導体40と、接続導体40に接続されるマイクロストリップライン25を有する。また、伝送線路付アンテナ202は、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bとの間で、第2の表面62および第3の表面63に導体板10を備え、グランドとして機能する。接続導体40は、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bの厚さ方向(Z軸方向)に延伸して、第1の誘電体基材60a、導体板10、および第2の誘電体基材60bを貫通するスルーホールの内部に形成された導体であり、少なくとも導体板10とは接続しない。さらに、マイクロストリップライン25は、第4の表面64に備えられる。
【0045】
伝送線路付アンテナ202は、マイクロストリップライン25が、導体板10を基準に放射板20側とは反対側(マイナスZ軸方向)に設けられている。このため、伝送線路付アンテナ202においてマイクロストリップライン25は、放射板20とガラス板70との間に備わる不図示の誘電体やガラス板70に起因する、マイクロストリップライン25の伝送損失を低減できる。
【0046】
図8Aは、伝送線路付アンテナ203を示す斜視図であり、図8Bは、Y3-Y3’の断面図である。伝送線路付アンテナ203は、第1の誘電体基材60a、第2の誘電体基材60b、スロット20a、第1の導体板10a、第2の導体板10bおよびストリップライン26を有する。また、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bは、厚さ方向に重なるように配置される。第1の誘電体基材60aは、第2の誘電体基材60bとは反対側にある第1の表面61と第2の誘電体基材60b側にある第2の表面62を有し、第2の誘電体基材60bは、第1の誘電体基材60a側にある第3の表面63と第1の誘電体基材60aとは反対側にある第4の表面64を有する。なお、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bは、異なる材料でもよく同じ材料でもよい。また、伝送線路付アンテナ203でいうスロット20aは、「放射部20」に相当する。
【0047】
伝送線路付アンテナ203は、第2の表面62と第3の表面63との間に設けられるストリップライン26を有する。また、伝送線路付アンテナ203は、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bの厚さ方向(Z軸方向)からみて、ストリップライン26の少なくとも一部と重なるように、第1の表面61に、第1の導体板10aを備え、グランドとして機能する。また、伝送線路付アンテナ203は、第1の導体板10aの一部に開口部が形成されたスロット20aを備える、いわゆるスロットアンテナである。スロット20aは、第1の導体板10aの平面視において、ストリップライン26の少なくとも一部(例えば、先端部分)と重なっているとよい。なお、スロット20aは、第1の表面61が曝される凹部により形成されてもよく、この場合、スロット20aを形成する凹部の媒質は空気であるが、該凹部は空気以外の誘電体材料で充填されてもよい。さらに、伝送線路付アンテナ203は、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bの厚さ方向(Z軸方向)からみて、スロット20aおよびストリップライン26と重なるように、第4の表面64に、第2の導体板10bを備え、グランドとして機能する。
【0048】
伝送線路付アンテナ203は、ストリップライン26が、Z軸方向からみて、第1の導体板10aと第2の導体板10bとの間に配置されるので、第1の導体板10aとガラス板70との間に備わる不図示の誘電体やガラス板70に起因する、ストリップライン26の伝送損失を低減できる。
【0049】
図9Aは、伝送線路付アンテナ204を示す斜視図であり、図9Bは、Y4-Y4’の断面図であり、図9Cは、Y5-Y5’の断面図である。伝送線路付アンテナ204は、信号の伝送線路が基板集積導波管(SIW:Substrate Integrated Waveguide)として機能する形態を有する。伝送線路付アンテナ204は、第1の表面61と第1の表面61に対向する(第1の)誘電体基材60aと、第1の表面61に設けられる第1の導体板27aと、第2の表面62に設けられる第2の導体板27bを備える。また、伝送線路付アンテナ204は、第1の導体板27aの一部に開口部が形成されたスロット20aを備える、いわゆるスロットアンテナである。なお、スロット20aは、伝送線路付アンテナ204と同様に、凹部が空気または空気以外の誘電体材料で充填されてもよい。
【0050】
また、伝送線路付アンテナ204は、誘電体基材60aの厚さ方向に延伸し、第1の導体板27aと第2の導体板27bを接続する、導体材料からなる導体壁28a、28b、28cを有する。図9Aに示す伝送線路付アンテナ204は、誘電体基材60aの厚さ方向(Z軸方向)からみて、Y軸方向に一定間隔で複数本並んで配置される(複数の)導体壁28aと、(複数の)導体壁28aに略平行に配置される(複数の)導体壁28bと、スロット20aを囲うようにX軸方向に一定間隔で複数本並んで配置される(複数の)導体壁28cとを有する。つまり、伝送線路付アンテナ204における伝送線路は、(複数の)導体壁28a、(複数の)導体壁28bおよび(複数の)導体壁28cの間に位置する、誘電体基材60aに相当する。なお、導体壁28a、導体壁28bおよび導体壁28cは、これらをまとめて「導体壁28」ともいい、導体壁28は、誘電体基材60aの厚さ方向(Z軸方向)からみて、スロット20aを囲うようにU字状に配置される。
【0051】
伝送線路付アンテナ204は、誘電体基材60aの両主表面に設けられる導体板(第1の導体板27a、第2の導体板27b)と、誘電体基材60aの厚さ方向に両導体板を接続する導体壁28を有する。導体板(第1の導体板27a、第2の導体板27b)と導体壁28を有することで、第1の導体板27aとガラス板70との間に備わる不図示の誘電体やガラス板70に起因する、誘電体基材60aに設けられた伝送線路の伝送損失を低減できる。
【0052】
図10Aは、伝送線路付アンテナ205を示す斜視図であり、図10Bは、Y6-Y6’の断面図であり、図10Cは、Y7-Y7’の断面図である。伝送線路付アンテナ205は、伝送線路付アンテナ204に付加的要素を含むものであり、伝送線路付アンテナ204の説明と重複する部分は説明を省略する。
【0053】
伝送線路付アンテナ205は、上記の付加的要素として、第2の誘電体基材60bとスロット20aを備える。また、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bは、厚さ方向に重なるように配置される。第1の誘電体基材60aは、第2の誘電体基材60b側にある第1の表面61と第2の誘電体基材60bとは反対側にある第2の表面62を有し、第2の誘電体基材60bは、第1の誘電体基材60a側とは反対側にある第3の表面63と第1の誘電体基材60a側にある第4の表面64を有する。なお、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基材60bは、異なる材料でもよく同じ材料でもよい。
【0054】
具体的に、第2の誘電体基材60bは、第3の表面63上に放射板20が備えられ、第4の表面64に第1の導体板27aが備えられる。また、放射板20は、第1の誘電体基材60aと第2の誘電体基板の厚さ方向(Z軸方向)からみてスロット20aと近い位置に設けられる。伝送線路付アンテナ205も、伝送線路付アンテナ204と同様に、第1の誘電体基材60aの両主表面に設けられる導体板(第1の導体板27a、第2の導体板27b)と、第1の誘電体基材60aの厚さ方向に両導体板を接続する導体壁28を有する。導体板(第1の導体板27a、第2の導体板27b)と導体壁28を有することで、放射板20とガラス板70との間に備わる不図示の誘電体やガラス板70に起因する、第1の誘電体基材60aに設けられた伝送線路の伝送損失を低減できる。なお、伝送線路付アンテナ205は、放射部が放射板20に相当する。
【0055】
伝送線路としては、この他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路(CBCPW:Conductor Back Coplanar Wave Guide)、ポスト壁導波路(PWW:Post Wall Waveguide)、平行二線型のライン(CPS:Coplanar Strip)、スロットラインを用いてもよい。
【0056】
図11は、複数のアンテナ(伝送線路付アンテナ)を備える車両用アンテナシステムを例示する部分断面図である。図11に示すアンテナシステム100は、フロントガラス71と、リアガラス72と、フロントガラス71に取り付けられるフロントアンテナ111と、リアガラス72に取り付けられるリアアンテナ112とを備える。フロントガラス71及びリアガラス72は、夫々、上述のガラス板70の一例であり、フロントアンテナ111及びリアアンテナ112は、夫々、上述のアンテナ110の一例である。フロントアンテナ111は、第1のアンテナの一例であり、リアアンテナ112は、第2のアンテナの一例である。
【0057】
フロントアンテナ111の放射板20は、水平面90に直角な鉛直面91に対して所定の傾斜角度αで設置される。その場合でも、放射板20がフロントガラス71の内側表面に対して平行になるように傾斜角度αを調整することにより、フロントアンテナ111の実装が容易となり、低背化を実現しやすい。
【0058】
同様に、リアアンテナ112の放射板20は、水平面90に直角な鉛直面91に対して所定の傾斜角度αで設置される。その場合でも、放射板20がリアガラス72の内側表面に対して平行になるように傾斜角度αを調整することにより、リアアンテナ112の実装が容易となり、低背化を実現しやすい。
【0059】
図11では、放射板20が導体板10に対して車両前側に位置するようにフロントアンテナ111がフロントガラス71の一方の面から離れて取り付けられている。一方、放射板20が導体板10に対して車両後側に位置するようにリアアンテナ112がリアガラス72の一方の面から離れて取り付けられている。フロントアンテナ111及びリアアンテナ112がこのように取り付けられることにより、フロントアンテナ111は車両前方における領域のアンテナ利得を確保でき、リアアンテナ112は車両後方における領域のアンテナ利得を確保できる。よって、車両80の前後方向のアンテナ利得を確保できる。
【0060】
また、フロントアンテナ111の導体板10は、水平面90に直角な鉛直面91に対して所定の傾斜角度γで設置される。その場合でも、導体板10が、フロントガラス71の内側表面に対して平行になるように傾斜角度γを調整することにより、フロントアンテナ111の実装が容易となり、低背化を実現しやすい。リアアンテナ112の導体板10の傾斜角度γについても同様である。
【0061】
なお、鉛直面91に対して0°の傾きで設置されるとは、鉛直面91に対して平行に設置されることを意味する。
【0062】
また、図11に示すアンテナシステム100では、車両用アンテナ(伝送線路付アンテナ)がフロントガラス71とリアガラス72に一つずつ取り付けられている。しかしながら、車両用アンテナシステム100は、フロントガラス71とリアガラス72とサイドガラス73とのうちの少なくとも2つの窓ガラスと、当該少なくとも2つの窓ガラスの夫々に少なくとも一つ取り付けられる車両用アンテナ(伝送線路付アンテナ)とを備えてもよい。アンテナシステム100は、フロントガラス71に複数のアンテナを備えても、リアガラス72に複数のアンテナ(伝送線路付アンテナ)を備えてもよい。
【0063】
図12は、ガラス板70とアンテナ110との間に整合層74と空気92が存在する構成を示す配置図(YZ平面の断面模式図)である。整合層74によりインピーダンスを整合させることで、ガラス板70と整合層74を透過する電波の透過率を向上できる。整合層74は、ガラス板70の一方の面に接触している。なお、整合層74は、接着剤を含んでガラス板70の内側表面に接触する構成に限らず、不図示のブラケット等の取り付け部材を介して接着剤を含まずにガラス板70の内側表面に接触する構成でもよい。図12における断面模式図(YZ平面)において、整合層74は、一定の厚さ、すなわち長方形状を示しているがこれに限らない。整合層74は、その断面が三角形や台形など、ガラス板70の内側表面76とアンテナ110との間で非平行な面を有するものでもよい。さらに、整合層74は、この他に例えば、平凸状や平凹状等の形状を有する誘電体レンズでもよい。このように、整合層74が、その厚さに分布を有することで、アンテナの指向性を所望の仕様に合わせて調整できる。なお、整合層74が、その厚さに分布を有する態様は、図12に限らず、後述する図13図14の説明においても適用できる。
【0064】
また、整合層74は、ガラス板70の平面視における外縁が、放射部20(放射板20またはスロット20a)の外縁よりも外側となる領域を有する構成であるとよい。これは、放射部(放射板20またはスロット20a)からの電波は、整合層74の厚さ方向(Z軸方向)だけでなく、厚さ方向に対して所定の拡がり角を持って放射されるので、そのような角度で放射された電波の方向にも、整合層74の効果が発現するからである。さらに、整合層74は、ガラス板70の平面視における外縁が、アンテナ110の外縁よりも外側となる領域を有する構成でもよい。
【0065】
整合層74の材料は、とくに限定されないが、樹脂等の有機材料、ガラス等の無機材料を使用できる。整合層74が樹脂である場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。整合層74は、この中でも耐熱性の観点からシクロオレフィン樹脂を好適に使用できる。さらに、整合層74が樹脂材料である場合、紫外線耐性を高めるために、樹脂の表面に紫外線吸収層をコーティングしてもよく、樹脂材料中に紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0066】
なお、整合層74の誘電正接(tanδ)は、0.03以下が好ましく、0.03を超える場合に比べて、アンテナ110の利得を向上できる。また、アンテナ110の利得をより向上させる点で、整合層74の誘電正接(tanδ)は、0.02以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。なお、整合層74の誘電正接(tanδ)の下限値は、零(つまり、空気の誘電正接(tanδ))よりも大きければよい。
【0067】
また、整合層74は、誘電体のみで形成される場合に限らず、複数の金属パターンを樹脂等でコーティングしたメタマテリアルを含んでもよく、整合層74そのものがメタマテリアルから構成してもよい。メタマテリアルは、特定の波長に対して誘電率と透磁率を任意に設計でき、それを応用して、アンテナ110の指向性を所望の仕様に合わせて調整できる。また、整合層74が誘電体とメタマテリアルを含む場合、メタマテリアルは、誘電体に対してガラス板70の内側表面76側に備えてもよく、誘電体に対してアンテナ110側に備えてもよい。さらに、メタマテリアルは、後述するスペーサ75が存在する場合、スペーサ75の表面に配置してもよい。
【0068】
なお、メタマテリアルは、電気的な制御回路を用いて、例えば金属パターンの誘電率を変えるアクティブ制御が可能な構成を有してもよい。このように、メタマテリアルが、アクティブ制御が可能な構成とすることで、アンテナ110の指向性を状況に応じて、所望の状態に調整できる。
【0069】
また、整合層74は、誘電体のみで形成される場合に限らず、導波器を含んでもよい。導波器が電波の位相を制御することにより、アンテナ110の指向性を調整できる。
【0070】
さらに、整合層74は、誘電体のみで形成される場合に限らず、導電体(金属)パターンからなる周波数選択表面(FSS:Frequency Selective Surface)を含んでもよく、整合層74そのものが周波数選択表面から構成してもよい。周波数選択表面は、導電体表面に(導電体を有しない)開口部を有し、その開口部のパターンによって所定の周波数の電波を選択的に透過できるため、アンテナ110と送受する特定の周波数をより所望の範囲に選択できる。また、整合層74が誘電体と周波数選択表面を含む場合、周波数選択表面は、誘電体に対してガラス板70の内側表面76側に備えてもよく、誘電体に対してアンテナ110側に備えてもよい。さらに、周波数選択表面は、後述するスペーサ75が存在する場合、スペーサ75の表面に配置してもよい。また、周波数選択表面でインピーダンスを整合させることで、ガラス板70と整合層74を透過する電波の透過率を向上させることもできる。
【0071】
図13は、ガラス板70とアンテナ110との間に整合層74が存在する構成を示す配置図である。図13では、ガラス板70とアンテナ110との間に空気が存在しない。整合層74は、ガラス板70の一方の面に接触する第1整合面と、アンテナ110と接触する第2整合面とを有する。整合層74の誘電正接の好適な範囲は、上述と同じである。なお、図13では、ガラス板70の(Z軸方向からみた)平面視において整合層74とアンテナ110が同じ領域として示しているが、図12において説明した理由と同様に、整合層74は、平面視における外縁が、放射部20(放射板20またはスロット20a)の外縁よりも外側となる領域を有する構成であるとよい。さらに、整合層74は、平面視における外縁が、アンテナ110の外縁よりも外側となる領域を有する構成でもよい。
【0072】
図14は、ガラス板70とアンテナ110との間に整合層74とスペーサ75が存在する構成を示す配置図である。図14では、ガラス板70とアンテナ110との間に空気が存在しないが、空気が存在してもよい。また、整合層74が無くてもよい。整合層74は、ガラス板70の一方の面に接触する第1整合面と、スペーサ75と接触する第2整合面とを有する。整合層74の誘電正接の好適な範囲は、上述と同じである。スペーサ75は、ガラス板70からアンテナ110までの距離を調整するための距離調整部材である。なお、スペーサ75は、距離を調整する形状を有する他にインピーダンス調整ができる材料を用いることで整合層に近い機能を発揮させることもできる。図14に例示するスペーサ75は、整合層74に接触する第1スペーサ面と、アンテナ110に接触する第2スペーサ面とを有する。しかし、スペーサ75は、図14に示したものに限らず、例えば周囲が所定の厚さを有し、中心部に貫通孔が形成された筒状の構造を備えるものでもよい。
【0073】
なお、図14でも、図12において説明した理由と同様、スペーサ75および整合層74は、ガラス板70の(Z軸方向からみた)平面視における外縁が、放射部(放射板20またはスロット20a)よりも外側となる領域を有する構成であるとよい。つまり、アンテナ110(の放射板20)からの電波は、スペーサ75および整合層74の厚さ方向(Z軸方向)だけでなく、厚さ方向に対して所定の拡がり角を持って放射される。よって、そのような角度で放射された電波の方向にも、スペーサ75および整合層74が備えられることで放射効率を高められる。さらに、スペーサ75および整合層74は、平面視における外縁が、アンテナ110の外縁よりも外側となる領域を有する構成でもよい。
【0074】
なお、スペーサ75の誘電正接(tanδ)は、0.03以下が好ましく、0.03を超える場合に比べて、アンテナ110の利得を向上できる。また、アンテナ110の利得をより向上させる点で、スペーサ75の誘電正接(tanδ)は、0.02以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。スペーサ75の誘電正接(tanδ)の下限値は、零(つまり、空気の誘電正接(tanδ))よりも大きければよい。
【0075】
スペーサ75の材料は、とくに限定されないが、上記で説明した整合層74と同様、樹脂等の有機材料、ガラス等の無機材料を使用できる。また、スペーサ75が樹脂材料である場合、整合層74と同様、紫外線耐性を高めるために、樹脂の表面に紫外線吸収層をコーティングしてもよく、樹脂材料中に紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0076】
スペーサ75の比誘電率は、10以下であると、アンテナ110の利得を確保できる。また、スペーサ75の比誘電率は、ガラス板70の比誘電率以下である場合、ガラス板70の比誘電率を超える場合に比べて、アンテナ110の設計が容易となる。例えば、ガラス板70の比誘電率は5以上9以下であるので、スペーサ75の比誘電率は、好ましくは1.5以上7以下であり、より好ましくは2以上5以下である。なお、本明細書ではとくにことわりがない場合、比誘電率は28GHzの周波数における値を指す。
【0077】
図15は、アレイアンテナを備えるアンテナシステムを例示する図である。ガラス板70の一方の面から離れて位置するアンテナ(伝送線路付アンテナ)は、複数のアンテナ素子が配列されるアレイアンテナでもよい。図15には、4つアンテナ素子20A,20B,20C,20DがY軸方向に配列されるアレイアンテナ113が示されている。アレイアンテナ113は、上述のアンテナ110と同様の構成を有する複数のアンテナをアレイ状に備える。アンテナ素子20A,20B,20C,20Dは、それぞれ、上述の放射板20またはスロット20aと同様の構成を有する。給電部30A,30B,30C,30Dは、それぞれ、上述の給電部30と同様の構成を有する。
【0078】
ガラス板70の一方の面から離れて位置するアンテナ(伝送線路付アンテナ)を、複数のアンテナ素子が配列されるアレイアンテナとすることにより、アンテナの放射範囲(アンテナの指向性)を拡張できる。
【0079】
図16~19は、それぞれ、28GHzの電波において、板厚Tが2,3,4,5mmのガラス板70とアンテナ110との距離Dに対する放射効率ηの変化の一例を示す図である。図16~19は、シミュレーション上で測定されたデータを示す。なお、距離Dにおける媒質は空気である。このとき、シミュレーション上において、図4等に示すアンテナ110の各部の寸法は、単位をmmとすると、
L60:10
L61:10
L62:0.2
L20:2.6
L21:2.6
である。接続点22から正方形状の放射板20の一辺までの最短距離は、0.9mmである。誘電体基材60の28GHzの電波における比誘電率は、3.79である。シミュレーション上でのガラス板70の形状は、縦50mm横50mmの正方形である。また、ガラス板70は、28GHzの電波における比誘電率が6.8であり、誘電正接が0.01である。このとき、放射板20の表面とガラス板70の内側表面とは平行に配置し、これらの間の距離はどの位置でも距離Dとなる条件でシミュレーションを実施した。
【0080】
図16~19を参照すると、距離Dが短くなるほど、放射効率ηは低下する傾向を示す。また、放射効率ηの低下度合いは、同じ距離Dで比較すると、板厚Tが厚くなるほど大きくなる。図16~19に示す各測定データは、上述の『η≧η+(ηλg/2-η)×0.1』を満足する放射効率ηである。なお、図16図19は、周波数28GHzの電波における特性を示したが、周波数が高くなるほど波長が短くなるので、『η≧η+(ηλg/2-η)×0.1』を満足する距離Dの値は小さくなる。すなわち、送受する電波の周波数が高い場合、距離Dを小さくできることから、アンテナ110をガラス板70に近づけることができ、アンテナシステムの低背化を実現しやすくなる。
【0081】
次に、図20A及び図20Bに基づき、伝送線路付アンテナにおける伝送線路の損失(伝送損失)に関するシミュレーションモデルを説明する。図20Aは、伝送線路付アンテナ201を、整合層74を介してガラス板70に取り付けた構成を示しており、伝送線路付アンテナ201と整合層74を接続する第1の接着部材51と、ガラス板70と整合層74を接続する第2の接着部材52を有する。また、図20Aにおいて、領域Aは、伝送線路付アンテナ201において平面アンテナを含む領域であり、領域Bは、伝送線路付アンテナ201において伝送線路を含む領域に分けて図示する。つまり、伝送線路付アンテナ201は、領域Aに含まれるアンテナ領域201aと、領域Bに含まれる伝送線路領域201bを有する。
【0082】
図20Bは、領域Bのうち伝送線路付アンテナ201の伝送線路領域201bのみを取り出した斜視図である。伝送線路領域201bは、誘電体基材60と、誘電体基材60のうち第1の表面61側に伝送線路となるマイクロストリップライン24を有し、第2の表面62側にグランドとして機能する導体板10を備える。本シミュレーションモデルでは、領域Bすなわち、伝送線路付アンテナ201の伝送線路領域201b、第1の接着部材51、整合層74、第2の接着部材52およびガラス板70をこの順に積層させた構造において、誘電体基材60の厚さ(t)を変化させた以外は同一の条件とし、周波数に対する伝送線路の伝送特性(S21)のシミュレーションを実施した。具体的には、誘電体基材60の厚さ(t)は、t=0.2mm(0.027×λ0’)、0.4mm(0.053×λ0’)、0.6mm(0.080×λ0’)、0.8mm(0.11×λ0’)、1.0mm(0.13×λ0’)と変化させた。ここでλ0’は40GHzにおける真空中の波長(≒7.5mm)である。なお、本シミュレーションの条件は以下のとおりである。
【0083】
【表1】
【0084】
ここで、整合層74は、具体的にシクロオレフィンポリマー(COP)、誘電体基材60は、合成石英ガラス(AGC社製、商品名:AQ)を想定してシミュレーションを実施した。また、図20Bに示す伝送線路領域201bは、XY平面が10mm×10mmの四角形である。マイクロストリップライン24は、幅が0.25mmで、X軸方向に平行な長さ3.5mmの直線、Y軸に平行な長さ3.5mmの直線、そしてこれら2つの直線を繋ぎ、X軸およびY軸に対して45°の角度となる長さ2.1mmの直線である。つまり、マイクロストリップライン24は、XY平面において、135°で折れ曲がる2つの屈曲点を有する、全長約9.1mmのラインである。
【0085】
図21は、領域Bとなる積層体における、マイクロストリップライン24における伝送損失(S21:単位[dB])であり、図20Bにおけるマイクロストリップライン24の両端、すなわち、点P1から点P2に至る経路で信号が伝送されるときの伝送損失を示したグラフである。図21に示すように、誘電体基材60(合成石英ガラス)の厚さが薄くなにつれて、伝送損失(S21の値)が小さくなり、さらに、10GHz以上の周波数に対するS21の特性が安定した(揺らぎが小さい)特性となる。
【0086】
以上、アンテナシステムを実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0087】
例えば、ガラス板は、車両用に限られず、建物用でもよいし、電子機器用でもよい。
【0088】
本国際出願は、2018年10月5日に出願した日本国特許出願第2018-190375号及び2018年11月9日に出願した日本国特許出願第2018-211308号に基づく優先権を主張するものであり、両出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0089】
10,10a,10b,27a,27b 導体板
11 重心
20 放射板(放射部)
20a スロット(放射部)
21 重心
22 接続点
24,25 マイクロストリップライン
26 ストリップライン
28a,28b,28c 導体壁
30 給電部
40 接続導体
51 第1の接着部材
52 第2の接着部材
60,60a,60b 誘電体基材
70 ガラス板
71 フロントガラス
72 リアガラス
73 サイドガラス
74 整合層
75 スペーサ
76 内側表面
77 外側表面
80 車両
90 水平面
91 鉛直面
92 空気
100,101 アンテナシステム
110 アンテナ
111 フロントアンテナ
112 リアアンテナ
113 アレイアンテナ
201,202,203,204,205 伝送線路付アンテナ
201a アンテナ領域
201b 伝送線路領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21