(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、シリコーンゴム及び物品
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20230926BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230926BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230926BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20230926BHJP
C08L 83/14 20060101ALI20230926BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20230926BHJP
C09D 183/14 20060101ALI20230926BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20230926BHJP
C09J 183/14 20060101ALI20230926BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/013
C08K5/5415
C08K5/544
C08L83/14
C09D183/06
C09D183/14
C09J183/06
C09J183/14
C09K3/10 G
(21)【出願番号】P 2021518353
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017666
(87)【国際公開番号】W WO2020226076
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019088868
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆文
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-185594(JP,A)
【文献】特開昭61-051056(JP,A)
【文献】特表2018-515634(JP,A)
【文献】特表2018-513129(JP,A)
【文献】特表2016-516101(JP,A)
【文献】特表2010-537015(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069706(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/109187(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/219927(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105238342(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107523257(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
C09D183/00-183/16
C09J183/00-183/16
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、nは10以上の整数であり、Xは酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
2は独立に炭素数1~6
の非置換一価炭化水素基又はアルコキシ置換
された炭素数1~6のアルキル基であり、aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1である。)
で示されるオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3、R
4は、それぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは3又は4である。)
で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物: 0.1~30質量部、
(C)アミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物: 0.1~10質量部、
(D)無機充填剤: 1~800質量部、及び
(E)有機スズ化合物又は有機チタン化合物である硬化触媒: 0.001~15質量部
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(C)成分が、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン又はN-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリアルコキシシランである請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(C)成分が、下記一般式(3)、(4)及び(5)
【化3】
Y=N-Z-SiR
3 (4)
Y-NH-Z-SiR
3 (5)
(式中、R
5はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の二価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR
5中の芳香環に直結していない。R
6は炭素数1~10の二価炭化水素基であり、R
7は炭素数1~10の非置換一価炭化水素基であり、R
8は独立に炭素数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基である。cはそれぞれ2又は3である。Yはその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の一価又は二価炭化水素基であり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の二価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の一価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の一価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれるものである請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなるシリコーンゴム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物でコーティング、封止、固定又は接着された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とし、架橋剤として乳酸エステルを脱離可能なラクタートシランを併用することによって、安全性、低臭気性、接着性、硬化性、耐湿性等に優れる硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、該組成物の硬化物からなるシリコーンゴム、並びに該組成物の硬化物でコーティング、封止、固定又は接着された物品等に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の湿気により室温(25±10℃)において縮合反応によって硬化(架橋)する室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物は、その取り扱いが容易な上、耐候性や電気特性に優れているため、建材用のシーリング材、電気電子分野での接着剤など様々な分野で使用されている。これらのRTVシリコーンゴム組成物は、分子鎖末端にシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)や加水分解性シリル基で封鎖されたオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)として設計される場合が多い。
【0003】
室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物の硬化タイプとしては、一般的に、架橋剤とベースポリマーの縮合反応の結果、系外に放出される脱離化合物の種類に応じて、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱アセトン型等が知られており、各種用途で使用されている。例えば、脱アルコール型のRTVシリコーンゴム組成物は、電気電子用の部品固定接着剤やコーティング剤、自動車用接着剤等で幅広く使用されている。脱オキシム型や脱酢酸型のRTVシリコーンゴム組成物は、硬化反応が比較的早いため、主に建材用シーリング材での使用例が多いが、硬化時に副生するガスが有毒あるいは刺激臭を有しているため、安全上の問題を孕んでいる。また脱オキシム型や脱酢酸型のRTVシリコーンゴム組成物は、被着体に対する腐食性も懸念されるため、使用時には注意が必要である。
【0004】
さて、上記記載の脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱アセトン型等のRTVシリコーンゴム組成物に加え近年注目され始めているのは、硬化時に乳酸エステルを発生する脱乳酸エステル型の硬化タイプである。乳酸エステル、特に乳酸エチルを例にとると、天然中にはワイン・果実類に含まれ、食品用の香料として非常に有用である。また、食品添加物や香水の原料となり、発がん性や変異原性も確認されておらず、人体的・環境的に優しい化合物として知られている。
【0005】
従来の技術として、縮合反応により脱乳酸エステル型の室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物が開示された(特許第5399392号公報:特許文献1)。該特許では、分子鎖両末端がシラノール基であるポリジメチルシロキサンとエチルラクタートシランからなる室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物が、従来の脱オキシム型のRTVシリコーンゴム組成物等と比較して人体健康面、環境面において優位であることが示されている。また従来の硬化タイプと比較して臭気が弱く不快でないため、作業性も良好と記載されている。また、該特許では、シーラントへの応用として構成されており、硬化時間が遅い室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物となっている。硬化時間が遅いと、シーラント以外の用途には適応が難しく、改良の余地があると考えられる。また接着性や作業性、電気電子用途に必須となる耐湿性に関する記載は一切ない。
【0006】
また特表2018-515634号公報(特許文献2)には、ヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン、ラクテートを有するシラン化合物、アミノシラン、スズ化合物を必須成分とする組成物が開示されている。該特許では、アミノシランとスズ化合物とが特定の量比で使用される硬化物に関し、特に貯蔵安定性に優れた組成物に関して記載されている。しかし、接着性やゴムとしての耐久性に関する記載はなく、幅広い用途に展開できるかどうかは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5399392号公報
【文献】特表2018-515634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とし、架橋剤として乳酸エステルを脱離可能なラクタートシランを併用することによって、脱乳酸エステル型の室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物においても、安全性、低臭気性、接着性、硬化性に優れると共に、良好な耐湿性を示す硬化物(シリコーンゴム)を与えることのできる室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物、及び該組成物の硬化物からなるシリコーンゴム、並びに該組成物の硬化物でコーティング、封止、固定又は接着された物品等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を行った結果、分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とし、架橋剤として乳酸エステルを脱離可能なラクタートシランを併用し、かつ、所定の硬化促進剤等を配合した室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物を構成することによって、上記目的を達成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び該組成物の硬化物からなるシリコーンゴム並びに該組成物の硬化物でコーティング、封止、固定又は接着された物品を提供するものである。
[1]
(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、nは10以上の整数であり、Xは酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
2は独立に炭素数1~6
の非置換一価炭化水素基又はアルコキシ置換
された炭素数1~6のアルキル基であり、aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1である。)
で示されるオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3、R
4は、それぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは3又は4である。)
で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物: 0.1~30質量部、
(C)アミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物: 0.1~10質量部、
(D)無機充填剤: 1~800質量部、及び
(E)有機スズ化合物又は有機チタン化合物である硬化触媒: 0.001~15質量部
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[2]
(C)成分が、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン又はN-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリアルコキシシランである[1]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3]
(C)成分が、下記一般式(3)、(4)及び(5)
【化3】
Y=N-Z-SiR
3 (4)
Y-NH-Z-SiR
3 (5)
(式中、R
5はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の二価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR
5中の芳香環に直結していない。R
6は炭素数1~10の二価炭化水素基であり、R
7は炭素数1~10の非置換一価炭化水素基であり、R
8は独立に炭素数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基である。cはそれぞれ2又は3である。Yはその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の一価又は二価炭化水素基であり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の二価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の一価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の一価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物から選ばれるものである[1]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなるシリコーンゴム。
[5]
[1]~[3]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物でコーティング、封止、固定又は接着された物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とし、架橋剤として乳酸エステルを脱離可能なラクタートシランを併用し、かつ、所定の硬化促進剤等を配合することによって、脱乳酸エステル型の室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物においても、安全性、低臭気性、接着性、硬化性に優れると共に、良好な耐湿性を示す硬化物(シリコーンゴム)を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0013】
[(A)成分]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物の(A)成分は、本発明の組成物において主剤(ベースポリマー)として作用するものであって、分子鎖両末端にそれぞれ2個又は3個のケイ素原子に結合したオルガノオキシ基を有する加水分解性シリル基で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、下記一般式(1)で示されるものである。
【化4】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、nは10以上の整数であり、Xは酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
2は独立に炭素数1~6の非置換又は置換一価炭化水素基であり、aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1である。)
【0014】
上記式(1)中、R1は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などの環状アルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、特にメチル基が好ましい。また、複数のR1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0015】
上記式(1)中のnは10以上の整数であり、通常、10~2,000の整数、好ましくは20~1,500の整数、より好ましくは30~1,000の整数、更に好ましくは50~800の整数である。また、このnの値は、特に(A)成分のジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が25~500,000mPa・sの範囲、好ましくは500~100,000mPa・sの範囲となる整数であることが望ましい。
なお、本発明において、(A)成分のジオルガノポリシロキサンの主鎖を構成する((R1)2SiO2/2)で示される2官能性のジオルガノシロキサン単位の繰り返し数であるn(又は重合度)は、通常、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。また、粘度は通常、25℃において回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定することができる。
【0016】
上記式(1)中、Xは酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基であり、炭素数1~4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの直鎖アルキレン基、及びこれらの異性体、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基などが該当する。Xとしては、特に、エチレン基が好ましい。
エチレン基の場合、α,ω-ジビニル末端ポリオルガノシロキサンに対し、対応するヒドロシランを金属触媒存在下で付加反応させることにより容易に生成できることから、非常に汎用性がある。
【0017】
また上記式(1)中、R2は独立に炭素数1~6の非置換又は置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシ置換アルキル基;シクロヘキシル基などの環状アルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基、フェニル基等が挙げられるが、特にメチル基が好ましい。
aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1である。
【0018】
[(B)成分]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物の(B)成分は、下記一般式(2)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物(ラクタートシラン化合物)及び/又はその部分加水分解縮合物であり、上記した(A)成分のジオルガノポリシロキサン(ベースポリマー)の末端にそれぞれ2個又は3個ずつ存在する加水分解性シリル基(ケイ素原子結合オルガノオキシ基)と縮合反応することにより、乳酸エステルを放出して架橋(硬化)する架橋剤(硬化剤)として作用するものである。
【化5】
(式中、R
3、R
4は、それぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは3又は4である。)
【0019】
上記式(2)中、R3、R4は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などの環状アルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、メチル基、エチル基、ビニル基が好ましい。R3、R4は同一であっても異なっていてもよい。
bは3又は4である。
また、式(2)のメチル基が結合しているメチン炭素は不斉中心となり得るが、(R)体、(S)体、ラセミ体のいずれであっても構わない。
【0020】
(B)成分の具体例としては、メチルトリスエチルラクタートシラン、ビニルトリスエチルラクタートシラン、エチルトリスエチルラクタートシラン、n-プロピルトリスエチルラクタートシラン、n-ブチルトリスエチルラクタートシラン、メチルトリスメチルラクタートシラン、ビニルトリスメチルラクタートシラン、エチルトリスメチルラクタートシラン、n-プロピルトリスメチルラクタートシラン、n-ブチルトリスメチルラクタートシラン、メチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、ビニルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、エチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、n-プロピルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、n-ブチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン等の化合物、並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。
なお、本発明において「部分加水分解縮合物」とは、(B)成分などの加水分解性シラン化合物を部分的に加水分解・縮合して生成する、分子中に残存加水分解性シリル基を2個以上、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する。
【0021】
これらの中では、メチルトリスエチルラクタートシラン、ビニルトリスエチルラクタートシラン、メチルトリスメチルラクタートシラン、ビニルトリスメチルラクタートシランが好ましく、メチルトリスエチルラクタートシラン、ビニルトリスエチルラクタートシランが特に好ましい。
(B)成分は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0022】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、特に好ましくは1~15質量部の範囲で使用される。0.1質量部未満では、目的とするゴム弾性を有するシリコーンゴム硬化物が得難い。また30質量部を超えると、得られる硬化物は機械的特性が低下し易く、硬化速度も遅くなる、価格的に不利などの欠点がある。
【0023】
[(C)成分]
(C)成分のアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、上記した(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進する硬化促進剤として作用し、更には硬化物(シリコーンゴム)の各種基材に対する接着性を向上する接着性向上剤(接着助剤)としても作用するものである。
【0024】
この(C)成分のアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物(アミノ官能性基含有カーボンファンクショナルシラン又はアミノ官能性シランカップリング剤)としては公知のものが好適に使用され、具体的には、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のN-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のγ-アミノプロピルトリアルコキシシランなどの末端アミノ官能性基置換アルキル基含有アルコキシシランが例示される。これらの中では、特にγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0025】
また、下記一般式(3)、(4)及び(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(アミノ官能性基含有カーボンファンクショナルシラン又はアミノ官能性シランカップリング剤)も好適に用いることができる。
【化6】
Y=N-Z-SiR
3 (4)
Y-NH-Z-SiR
3 (5)
(式中、R
5はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の二価炭化水素基であり、但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR
5中の芳香環に直結していない。R
6は炭素数1~10の二価炭化水素基であり、R
7は炭素数1~10の非置換一価炭化水素基であり、R
8は独立に炭素数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基である。cはそれぞれ2又は3である。Yはその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の一価又は二価炭化水素基であり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の二価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の一価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の一価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
【0026】
まず、一般式(3)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物において、このアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物は、1級と2級アミンの間に芳香環を含み、更に少なくとも一方が芳香環に直結していない構造をしており、詳しくは特開平5-105689号公報に記載されている。
【0027】
この場合、一般式(3)において、R5はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の二価炭化水素基であり、フェニレン基(-C6H4-)と、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1~4のアルキレン基とが結合した基が好ましく、例えば下記式で示されるものが挙げられる。
-CH2-C6H4-
-CH2-C6H4-CH2-
-CH2-C6H4-CH2-CH2-
-CH2-C6H4-CH2-CH2-CH2-
-CH2-CH2-C6H4-
-CH2-CH2-C6H4-CH2-
-CH2-CH2-C6H4-CH2-CH2-
-CH2-CH2-CH2-C6H4-
-CH2-CH2-CH2-C6H4-CH2-
これらの中で、特に好ましくは-CH2-C6H4-CH2-である。
【0028】
R6は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の二価炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基とが結合した基などが挙げられるが、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
【0029】
また、R7は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換一価炭化水素基であり、R8は独立に炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又は置換一価炭化水素基であり、このうち、R7、R8の非置換一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。また、R8の置換一価炭化水素基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシ置換アルキル基等が挙げられる。R7としては、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、より好ましくはメチル基であり、R8としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0030】
一般式(3)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物の具体例としては、下記式で示されるもの等を挙げることができる。なお、Me、Etはそれぞれ、メチル基、エチル基を示す。
【化7】
【0031】
次に、一般式(4)及び(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、1分子中に窒素原子を3個以上、好ましくは3~6個、より好ましくは3~5個含み、末端封鎖触媒機能を発現する一価又は二価の塩基性部位(Y)を有するものである。
【0032】
この場合、一般式(4)又は(5)において、末端封鎖触媒機能を発現し得る、一価又は二価の塩基性部位Yは、その構造中に窒素原子を2個以上、好ましくは2~5個、より好ましくは2~4個含む炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10の一価又は二価炭化水素基であり、塩基性部位Yのうち、二価の基としては、例えば、下記式(6)で示される非置換又はN-置換のグアニジル基等の強塩基性を示すものなど、一価の基としては、例えば、下記式(7)で示される非置換又はN-置換のグアニジル基等の強塩基性を示すものなどが挙げられる。なお、下記式において、波線部は、窒素原子との結合部位である。
【化8】
【化9】
【0033】
ここで、式(6)、(7)中のR9はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、R9は同じものであっても、異なっていてもよい。
【0034】
上記式(4)又は(5)において、Zは、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい、炭素数1~10、特には炭素数3~6の、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等又はこれらが組み合わされた基などの非置換又は置換の二価炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基が結合した基、ケトン、エステル、アミド等が介在した上記アルキレン基などが挙げられるが、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、アミド結合を介したプロピレン基等であり、特に好ましくはプロピレン基である。
【0035】
また、上記式(4)又は(5)において、Rは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシ置換アルキル基、ビニロキシ基、アリロキシ基、プロペノキシ基、イソプロペノキシ基等のアルケニルオキシ基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基などの炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4の加水分解性基(即ち、ケイ素原子に結合してSi-O-C結合を形成し得る基)、あるいは、メチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などの炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4の一価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の一価の基であるが、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個、好ましくは3個のRは加水分解性基である。
【0036】
また、加水分解性シリル基(-SiR3)としては、例えば、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ビニルジメトキシシリル基、フェニルジメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のアルコキシシリル基;トリイソプロペノキシシリル基、メチルジイソプロペノキシシリル基、エチルジイソプロペノキシシリル基、ビニルジイソプロペノキシシリル基、フェニルジイソプロペノキシシリル基等のイソプロペノキシシリル基;トリス(ジメチルケトオキシム)シリル基、トリス(ジエチルケトオキシム)シリル基、トリス(エチルメチルケトオキシム)シリル基等のケトオキシムシリル基などが挙げられる。
【0037】
一般式(4)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物の具体例としては、下記一般式(8)~(13)で示されるもの等を挙げることができ、一般式(5)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物の具体例としては、下記一般式(14)~(16)で示されるもの等を挙げることができる。なお、Me、Et、Phはそれぞれ、メチル基、エチル基、フェニル基を示す。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0038】
これらの中では、式(8)、式(9)又は式(10)で示されるN-メチル置換グアニジル基含有トリメトキシシランが好ましく、特には、式(10)で示される、N,N,N’,N’-テトラメチル-N”-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジンが好ましい。
【0039】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.1~3質量部である。(C)成分の配合量が0.1質量部未満では、接着性が低下したり、特に上記式(4)又は(5)の化合物を用いた場合は硬化性が十分促進されなかったりし、10質量部を超えると価格的に不利になったり、組成物の保存安定性が低下したりする。
【0040】
[(D)成分]
(D)成分の無機充填剤は、組成物の強度やチキソトロピー性等の向上を目的として添加される成分であり、具体的には、粉砕シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ又は乾式シリカ)、湿式シリカ(沈降シリカ、ゾルゲルシリカ)、結晶性シリカ(微粉末石英)、珪藻土などの補強性又は非補強性のシリカ系充填剤、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラック、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シラスバルーンなどが挙げられ、単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせてもよい。これらの無機充填剤は、表面処理されていなくても、公知の処理剤で表面処理されていてもよい。公知の処理剤としては例えば、特許第3543663号公報記載の加水分解性基含有メチルポリシロキサンが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0041】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~800質量部であり、好ましくは1~600質量部であり、特に好ましくは1~500質量部である。1質量部未満では、機械的特性が乏しくなる。800質量部を超えると、ゴム弾性を有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得難い。
【0042】
[(E)成分]
(E)成分の硬化触媒は、スズ、チタン、ジルコニウム、鉄、アンチモン、ビスマス、マンガン等の金属の有機カルボン酸塩、アルコキサイド;有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物等が例示され、より具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズマレートエステル、ジメチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズジメトキサイド、ジオクチルスズジネオデカノエート、スタナスオクトエート等のスズ化合物;テトラブチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタン化合物、ジブチルアミン、ラウリルアミン、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のアミン化合物及びその塩などが例示される。本発明組成物の速硬化性や深部硬化性などの硬化特性が優れることから、有機スズ化合物あるいは有機チタン化合物を添加することが好ましく、中でも、ジアルキルスズジアルコキサイド、ジアルキルスズジカルボン酸塩であることが好ましい。
(E)成分は、1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。
【0043】
(E)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.001~15質量部であり、好ましくは0.001~10質量部であり、特に好ましくは0.01~5質量部である。0.001質量部未満では、十分な架橋性が得られない。15質量部を超えると、価格的に不利になる場合や硬化速度が低下するなどの欠点がある。
【0044】
[その他の成分]
また上記成分以外に、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の添加剤として公知の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、チキソトロピー向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としての非反応性ジメチルシリコーンオイル(例えば、分子鎖両末端トリメチルシリル基封鎖の直鎖状ジメチルポリシロキサン等のいわゆる無官能性ジメチルシリコーンオイル)、イソパラフィン、架橋密度向上剤としてのトリメチルシロキシ単位とSiO2単位とからなる3次元網状ポリシロキサンレジン等が挙げられる。
【0045】
更に、必要に応じて、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、ブリードオイルとしての非反応性フェニルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤なども添加してよい。
【0046】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述した(A)~(E)成分、更には必要により上記その他の成分の所定量を、乾燥雰囲気中において均一に混合することにより得ることができる。
【0047】
また、得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、室温(25±10℃)で放置することにより硬化するが、その成形方法、硬化条件などは、組成物の種類に応じた公知の方法、条件を採用することができる。
【0048】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、安全性、低臭気性、接着性、硬化性に優れると共に、良好な耐湿性を示す硬化物(シリコーンゴム)を与えることから、コーティング剤、封止剤、固定又は接着剤等として有用である。
【0049】
ここで、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物でコーティング、封止、固定又は接着される物品(あるいは基材)としては特に限定されないが、電気電子用の基板(例えば回路基板等)に対するコーティング、あるいは電子部品の固定、封止(ポッティング)等の用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を具体的に説明する実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、粘度は回転粘度計により測定したものであり、重合度はトルエンを展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度を示す。
【0051】
[実施例1]
上記式(1)において、Xがエチレン基(-CH2CH2-)であり、R1、R2がメチル基であり、aが0であり、nが約750である、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が300mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン20質量部、及びBET比表面積130m2/gの煙霧質シリカ10質量部を20分間均一に混合・撹拌してベース混合物を調製し、次いで、該ベース混合物に、メチルトリスエチルラクタートシラン5質量部、ビニルトリスエチルラクタートシラン1.6質量部及びN-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量部を常圧下にて15分間均一に混合・撹拌し、次いで、ジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧条件下15分間均一に混合・撹拌して組成物1を得た。
【0052】
[実施例2]
上記式(1)において、Xがエチレン基(-CH2CH2-)であり、R1、R2がメチル基であり、aが0であり、nが約750である、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が300mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン20質量部、及びBET比表面積130m2/gの煙霧質シリカ10質量部を20分間均一に混合・撹拌してベース混合物を調製し、次いで、該ベース混合物に、メチルトリスエチルラクタートシラン5質量部、ビニルトリスエチルラクタートシラン1.6質量部及びγ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.4質量部を常圧下にて15分間均一に混合・撹拌し、次いで、ジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧条件下15分間均一に混合・撹拌して組成物2を得た。
【0053】
[実施例3]
上記式(1)において、Xがエチレン基(-CH
2CH
2-)であり、R
1、R
2がメチル基であり、aが0であり、nが約750である、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が300mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン20質量部、及びBET比表面積130m
2/gの煙霧質シリカ10質量部を20分間均一に混合・撹拌してベース混合物を調製し、次いで、該ベース混合物に、メチルトリスエチルラクタートシラン5質量部、ビニルトリスエチルラクタートシラン1.6質量部及び下記式(17)で示されるアミノ基含有トリメトキシシラン化合物0.4質量部を常圧下にて15分間均一に混合・撹拌し、次いで、ジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧条件下15分間均一に混合・撹拌して組成物3を得た。
【化19】
【0054】
[実施例4]
上記式(1)において、Xがエチレン基(-CH
2CH
2-)であり、R
1、R
2がメチル基であり、aが0であり、nが約750である、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が300mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン20質量部、及びBET比表面積130m
2/gの煙霧質シリカ10質量部を20分間均一に混合・撹拌してベース混合物を調製し、次いで、該ベース混合物に、メチルトリスエチルラクタートシラン5質量部、ビニルトリスエチルラクタートシラン1.6質量部及び下記式(18)で示されるアミノ基含有トリメトキシシラン化合物0.4質量部を常圧下にて15分間均一に混合・撹拌し、次いで、ジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧条件下15分間均一に混合・撹拌して組成物4を得た。
【化20】
【0055】
[実施例5]
上記式(1)において、Xがエチレン基(-CH2CH2-)であり、R1、R2がメチル基であり、aが0であり、nが約750である、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が300mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン20質量部、及びBET比表面積130m2/gの煙霧質シリカ10質量部を20分間均一に混合・撹拌してベース混合物を調製し、次いで、該ベース混合物に、メチルトリスエチルラクタートシラン5質量部、ビニルトリスエチルラクタートシラン1.6質量部及びN-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.4質量部を常圧下にて15分間均一に混合・撹拌し、次いで、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)3質量部を加え、減圧条件下15分間均一に混合・撹拌して組成物5を得た。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、上記式(1)においてXがエチレン基(-CH2CH2-)であり、R1、R2がメチル基であり、aが0であり、nが約750である、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部に代えて、分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖され、25℃における粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部を使用したこと以外は、実施例1に記載の同じ成分を同様にして配合することにより、組成物6を得た。
【0057】
[比較例2]
ベースポリマーとして、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖され、25℃における粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が300mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン20質量部、及びBET比表面積130m2/gの煙霧質シリカ10質量部を20分間均一に混合・撹拌してベース混合物を調製し、次いで、該ベース混合物に、メチルトリスエチルラクタートシラン5質量部、ビニルトリスエチルラクタートシラン1.6質量部及び上記式(17)で示されるアミノ基含有トリメトキシシラン化合物0.8質量部を減圧下にて30分間均一に混合・撹拌し、次いで、ジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を加え、減圧条件下15分間均一に混合・撹拌して組成物7を得た。
【0058】
[比較例3]
ベースポリマーとして、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖され、25℃における粘度が20,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が300mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン20質量部、及びBET比表面積130m2/gの煙霧質シリカ10質量部を20分間均一に混合・撹拌してベース混合物を調製し、次いで、該ベース混合物に、メチルトリスエチルラクタートシラン5質量部、ビニルトリスエチルラクタートシラン1.6質量部及び上記式(17)で示されるアミノ基含有トリメトキシシラン化合物0.8質量部を減圧下にて30分間均一に混合・撹拌し、次いで、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)3質量部を加え、減圧条件下15分間均一に混合・撹拌して組成物8を得た。
【0059】
調製した組成物1~8を用いて、以下の特性を評価した。
【0060】
・タックフリータイム
JIS K 6249に準拠して測定した。
【0061】
・硬化性
調製した組成物1~8を、23℃/50%RH環境下にて厚さが3mmになるように7日放置し、硬化させ、JIS K 6249に従い硬さ(Durometer A)を測定した。
【0062】
・硬化速度
調製した組成物1~8をφ10mm、高さ13mmのガラスシャーレに入れ、23℃/50%RH環境下に1日放置した。1日後、表面から深部方向に硬化したゴムをくり抜いた後、硬化した厚み(mm)を測定した。
【0063】
・接着性
被着体〔金属(アルミニウム)、樹脂(PA66、エポキシ)、ガラス〕をエタノールで洗浄後、調製した組成物1~8をビード状に塗布した。23℃/50%RH環境下に7日放置し、各被着体に接着しているかどうか簡易的に試験を行った。具体的に試験方法としては、被着体と組成物1~8を硬化して得られた厚さ3mmの硬化物(シリコーンゴム)との界面にカッターナイフで切り込みを入れ、それぞれの硬化物(シリコーンゴム)を被着体に対して水平方向に引っ張り、接着しているかどうか確認するものである。
上記試験における被着体への接着の状態を下記基準により評価した。
〇:被着体に対し良好に接着している(ビードの全長に亘って凝集破壊する
)
△:被着体に対し一部剥離が確認される(ビード全長の1/2以上が界面剥
離する)
×:被着体に対し全く接着しない(ビードの全長に亘って界面剥離する)
【0064】
・貯蔵安定性
調製した組成物1~8をポリエチレン製の密閉可能な容器に入れ、70℃のオーブンに7日放置した。その後、上記の硬化性の測定方法に従い、組成物を硬化させて、硬さを測定した。
【0065】
・耐湿性
調製した組成物1~8を、23℃/50%RH環境下にて厚さが3mmになるように7日放置し、硬化サンプルを作製した。得られた硬化サンプルを85℃/85%RHの恒温恒湿槽に一定時間(250時間、500時間、750時間、1,000時間)入れ、それぞれの硬さを測定し、変化を確認した。
【0066】
・引火点
調製した組成物1~8の引火点をSTANHOPE SETA社製セタ密閉式引火点試験器によりJIS K 2265-2で定められた方法に準拠して測定した。
【0067】
得られた結果を下記表1に示す。
【0068】
【0069】
本発明の実施例である組成物1~4において、硬化性、硬化速度、接着性は良好であった。耐湿性は250時間で若干の低下が確認されたものの、1,000時間経過後も初期値と殆ど同程度の値を示しており、耐湿性は良好であると判断できる。また、貯蔵安定性評価においても、初期と同等の硬さとなっており、長期に亘り安定した物性を維持できると想定される。
また、本発明の比較例である組成物6及び7においては、硬化性、硬化速度、接着性は良好であったものの、耐湿性評価において僅か250時間で硬さが初期値の半分以下となった。また、組成物8においては、23℃/50%RH環境下に7日放置してももはや硬化せず、物性評価は不可能であった。
一方、本発明の実施例である組成物5では、本発明の比較例である組成物8と比較して、硬化触媒に有機チタン化合物を使用しても硬化することを確認し、組成物1~4の結果と同様に、良好な耐湿性が発現することが認められた。
【0070】
上記本発明の組成物は、硬化が進行する際に乳酸エチルを発生するため、人体的・環境的に非常に安全性が高く、またいずれの組成物も引火点が90℃以上であったため、危険性も低いと考えられる。
また、乳酸エステル自身は天然にも存在し、食品や香水にも添加されている化合物であるため、脱アルコール型のアルコール(メタノール、エタノール)、脱オキシム型のオキシム、脱酢酸型の酢酸と比較して低臭気であることも利点の一つとして挙げられる。