(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】インクジェット印刷インク及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20230926BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230926BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 110
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2023527742
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2023001431
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022014095
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】合田 恵吾
(72)【発明者】
【氏名】鍋 卓哲
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特許第6443607(JP,B1)
【文献】特開2018-172502(JP,A)
【文献】特開2014-074153(JP,A)
【文献】特開2009-149815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と、分散物(A)と、分散物(B)と
、バインダーとを含有するインクジェット印刷インクであって、
前記分散物(A)は、顔料(a)及び顔料分散樹脂を含むものであり、
前記分散物(A)の体積平均粒子径が70nm以上90nm未満であり、
前記分散物(B)は自己分散性顔料(b)を含むものであり、
前記分散物(B)の体積平均粒子径が160nm以上210nm以下であり、
前記分散物(A)と分散物(B)との質量割合[分散物(A)/分散物(B)]が1.5~9であ
り、
前記バインダーが、アクリルアミド由来の単位を有す樹脂であることを特徴とするインクジェット印刷インク。
【請求項2】
前記樹脂が、更に、2-エチルヘキシルアクリレート由来の単位を有する樹脂である請
求項1に記載のインクジェット印刷インク。
【請求項3】
前記樹脂が、更に、スチレン由来の単位を有する樹脂である請求項1または2に記載の
インクジェット印刷インク。
【請求項6】
ピエゾ式インクジェット印刷法によって、普通紙に、請求項1または2に記載のインクを印刷して得られる印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式の印刷方法で使用されるインクには、粘度が低く、長時間使用されなくとも沈澱や凝集が生じにくく、インクジェットプリンターのヘッドの先端部及びインク流路内で詰まりにくく、かつ、普通紙をはじめとする記録媒体に印刷した際に、光学濃度が高く印字品質に優れた印刷物を製造できるものが求められる。
【0003】
前記普通紙への印刷に使用可能なインクとしては、例えば色材として第1の顔料及び第2の顔料を水性媒体中に分散状態で含むインクであって、該第1の顔料が少なくとも1つのアニオン性の基が直接もしくは他の原子団を介して該第1の顔料の表面に結合されている自己分散型の顔料もしくは少なくとも1つのカチオン性の基が直接もしくは他の原子団を介して該第1の顔料の表面に結合されている自己分散型の顔料であり、該第2の顔料が高分子分散剤によって該水性媒体に分散させることのできる顔料であり、該インクは更に該第1の顔料の表面に結合されている基と同極性の高分子分散剤及びノニオン性の高分子分散剤の少なくとも一方を含むことを特徴とするインクが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、普通紙を用いた場合であっても光学濃度が高い印刷物を製造可能なインクは、顔料濃度がおよそ5質量%とやや高い場合が多く、このような高顔料濃度のインクは保存安定性が十分でない場合があった。
【0005】
また、印刷物に優れた耐擦過性が求められるなかで、耐擦過性を向上可能なバインダー樹脂をインクに配合することが、検討されている。
【0006】
しかし、顔料濃度が高いインクには、耐擦過性を向上可能なバインダー樹脂を多く配合しにくく、仮にバインダー樹脂を多く配合できても、印刷物の光学濃度を低下させたり、インク吐出ノズルの詰まりを引き起こす(再溶解性の低下)場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、普通紙に印刷した場合であっても光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造可能で、かつ、保存安定性や再溶解性に優れたインクジェット印刷インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、水性媒体と、分散物(A)と、分散物(B)とを含有するインクジェット印刷インクであって、前記分散物(A)は、顔料(a)及び顔料分散樹脂を含むものであり、前記分散物(A)の体積平均粒子径が70nm以上90nm未満であり、
前記分散物(B)は自己分散性顔料(b)を含むものであり、前記分散物(B)の体積平均粒子径が160nm以上210nm以下であり、前記分散物(A)と分散物(B)との質量割合[分散物(A)/分散物(B)]が1.5~9であることを特徴とするインクジェット印刷インクによって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェット印刷インクは、保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のインクジェット印刷インクは、水性媒体と、分散物(A)と、分散物(B)とを含有するインクジェット印刷インクであって、前記分散物(A)は、顔料(a)及び顔料分散樹脂を含むものであり、前記分散物(A)の体積平均粒子径が70nm以上90nm未満であり、前記分散物(B)は自己分散性顔料(b)を含むものであり、前記分散物(B)の体積平均粒子径が160nm以上210nm以下であり、前記分散物(A)と分散物(B)との質量割合[分散物(A)/分散物(B)]が1.5~9であることを特徴とする。前記インクジェット印刷インクは、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造することができる。
【0012】
本発明のインクジェット印刷インクは、分散物(A)と分散物(B)とを含有する。前記分散物(A)は、顔料(a)及び顔料分散樹脂を含むものであり、前記分散物(A)の体積平均粒子径が70nm以上90nm未満である。
【0013】
前記分散物(A)としては、顔料(a)及び顔料分散樹脂を含むものを使用する。具体的には、前記分散物(A)としては、前記顔料(a)の表面に前記顔料分散樹脂が吸着したり、または、前記顔料(a)が前記顔料分散樹脂に包まれる等することによって水性媒体に対する分散性が付与されたものを使用する。前記顔料(a)は、後述する自己分散性顔料(b)と異なり、水性媒体中で安定して分散するために、顔料分散樹脂を必要とする。
【0014】
前記分散物(A)としては、体積平均粒子径70nm以上90nm未満のものを使用し、好ましくは80nm以上90nm未満のものを使用する。ここで、前記分散物(A)の代わりに、前記範囲外の体積平均粒子径を有する分散物を、後述する分散物(B)と組み合わせ使用したインクジェット印刷インクでは、保存安定性や再溶解性の低下を引き起こしたり、普通紙に印刷した場合に、光学濃度が低く耐擦過性の点で十分でない印刷物が得られる場合がある。
【0015】
本発明では、上記範囲の体積平均粒子径を有する分散物(A)を、後述する分散物(B)と組み合わせ含有するインクジェット印刷インクを使用することによって、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造することができる。
【0016】
なお、上記体積平均粒子径は、本願明細書の実施例に記載のとおり、マイクロトラック・ベル株式会社社製ナノトラック粒度分布計「UPA150」を用い、25℃環境下で、レーザー光の散乱光を検出することにより3回測定し、その平均値を算出し、前記平均値の小数点以下一桁目を四捨五入した値を、本願発明特定事項の体積平均粒子径の値(単位:nm)とした。
【0017】
前記顔料(a)としては、例えば黒色のインクを製造する場合であれば、カーボンブラックを使用することができ、三菱ケミカル株式会社製の#2600シリーズ、#2300シリーズ、#1000シリーズ、#900シリーズ、#600シリーズ、#90シリーズ、MAシリーズ、オリオンエンジニアドカーボンズ社製のCOLOR-BLACKシリーズ、SPESIAL-BLACKシリーズ、PRINTEXシリーズ、HIBLACKシリーズ、NEROXシリーズ、NIPexシリーズ、旭カーボン株式会社製のSUNBLACKシリーズ、#70シリーズ、#80シリーズ、東海カーボン株式会社製のトーカブラック#7000シリーズ、#8000シリーズ等を使用することができる。
【0018】
なかでも、前記カーボンブラックとしては、普通紙に印刷した場合に光学濃度が高い印刷物を製造でき、水性媒体中に分散しやすいことから、酸性のカーボンブラックを使用することが好ましい。前記酸性カーボンブラックとしては、例えば三菱ケミカル株式会社製のMAシリーズ、#900シリーズ、#2300シリーズ、オリオンエンジニアドカーボンズ社製のNEROX600、NIPex160IQ、旭カーボン株式会社製のSUNBLACK-Xシリーズ等のpHが4.5以下のものを使用することが好ましい。
【0019】
またイエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0020】
また、マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209等が挙げられる。
【0021】
また、シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0022】
前記顔料(a)としては、一次粒子径が10nm~30nmの範囲のものを使用することが好ましく、15nm~25nmの範囲のものを使用することが、フォト紙(写真紙)に印刷した場合に高光沢の印刷物を得るうえでより好ましい。
【0023】
なお、本発明でいう顔料(a)及び自己分散型顔料(b)の一次粒子径D(nm)は、下記のようにして求めた値である。はじめに、コロジオン膜付きメッシュに、顔料(a)または自己分散型顔料(b)を含有する顔料濃度1質量%の水性顔料組成物を滴下し乾燥させた。乾燥物の表面を、STEM(走査透過電子顕微鏡)を用いて観察した(JEOL製JSM-7500FA)。加速電圧は30kVとし、観察倍率は5000倍から200,000倍の範囲で観察試料に応じて、観察しやすい倍率に設定した。前記方法で観察された画像に基づき、前記顔料(a)及び自己分散型顔料(b)を形成する最小単位の粒子径(一次粒子径)を100点測定し平均化した値を、本発明でいう一次粒子径D(nm)とした。
【0024】
前記顔料(a)を水性媒体に分散させる際に使用する顔料分散樹脂としては、例えばアニオン性基を有するポリビニル系樹脂、アニオン性基を有するポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するアミノ系樹脂、アニオン性基を有するアクリル系樹脂、アニオン性基を有するエポキシ系樹脂、アニオン性基を有するポリウレタン系樹脂、アニオン性基を有するポリエーテル系樹脂、アニオン性基を有するポリアミド系樹脂、アニオン性基を有する不飽和ポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するフェノール系樹脂、アニオン性基を有するシリコーン系樹脂、アニオン性基を有するフッ素系樹脂等を使用することができる。
【0025】
なかでも、前記顔料分散樹脂としては、アニオン性基を有するアクリル系樹脂やアニオン性基を有するポリウレタン樹脂を使用することが、顔料(a)に吸着しやすく、より一層分散安定性に優れたインクジェット印刷インクを得るうえで好ましい。
【0026】
アニオン性基を有するアクリル系樹脂としては、例えばアニオン性基を有する単量体と、必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体とを含む単量体成分を重合して得られる樹脂を使用することができる。具体的には、前記アニオン性基を有するアクリル系樹脂としては、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体等を使用することが好ましい。
【0027】
前記アニオン性基を有するアクリル系樹脂の製造に使用可能なアニオン性基を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、これらを単独または2以上組み合わせ使用することができる。
【0028】
前記アニオン性基を有するアクリル系樹脂としては、前記スチレンとアクリル酸とメタクリル酸とを重合して得られた重合体を使用することが、分散安定性や保存安定性に優れたインクジェット印刷インクを得るうえで好ましい。
【0029】
前記アニオン性基を有するアクリル系樹脂の製造に使用可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-エチルスチレン、α-ブチルスチレン、α-ヘキシルスチレン等のアルキルスチレン、4-クロロスチレン、3-クロロスチレン、3-ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン、3-ニトロスチレン、4-メトキシスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーや、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニルプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることができる。
【0030】
なかでも、前記エチレン性不飽和単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、tert-ブチルスチレンを用いることが特に好ましい。
【0031】
前記エチレン性不飽和単量体としては、前記したものの他に、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、1,3-ジメチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、エチルメタアクリレート、n-ブチルメタアクリレート、2-メチルブチルメタアクリレート、ペンチルメタアクリレート、ヘプチルメタアクリレート、ノニルメタアクリレート等のアクリル酸エステル類及びメタアクリル酸エステル類;3-エトキシプロピルアクリレート、3-エトキシブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、エチル-α-(ヒドロキシメチル)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのようなアクリル酸エステル誘導体及びメタクリル酸エステル誘導体;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、フェニルエチルメタアクリレートのようなアクリル酸アリールエステル類及びアクリル酸アラルキルエステル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ビスフェノールAのような多価アルコールのモノアクリル酸エステル類あるいはモノメタアクリル酸エステル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのようなマレイン酸ジアルキルエステル、酢酸ビニル等を使用することができる。
【0032】
前記顔料分散樹脂としては、エチレン性不飽和基を1個有する単量体の重合体(線状(リニア)の重合体)や、エチレン性不飽和基を1個有する単量体とエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体との重合体を使用することができる。
【0033】
前記エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体としては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0034】
前記顔料分散樹脂として前記スチレン-アクリル酸系共重合体を使用する場合、その製造に使用する単量体成分の全量に対するスチレンの使用比率は50質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが、前記分散物(A)の体積平均粒子径を前記した範囲内に調整しやすく、その結果、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクジェット印刷インクを得るうえで特に好ましい。
【0035】
前記顔料分散樹脂として前記スチレン-アクリル酸系共重合体を使用する場合、その製造に使用する単量体成分の全量に対する前記スチレンとアクリル酸とメタクリル酸との合計質量の比率は80質量%以上であることが好ましく、95質量%~100質量%であることが、顔料(a)により一層優れた分散安定性を付与するうえで好ましい。
【0036】
前記顔料分散樹脂の製造方法としては、例えば前記アニオン性基を有するアクリル樹脂を使用する場合であれば、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を採用することができる。前記顔料分散樹脂を製造する際には、必要に応じて重合触媒、連鎖移動剤(重合度調整剤)、界面活性剤、消泡剤等を使用することができる。
【0037】
前記重合触媒としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等を使用することができる。前記重合触媒は、前記アニオン性基を有するアクリル樹脂の製造に使用する前記単量体成分の全量に対して0.1質量%~10.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0038】
前記顔料分散樹脂としては、重量平均分子量が6000~25000の範囲内であるものを使用することが好ましく、6000~20000の範囲内であるものを使用することがより好ましく、6000~15000範囲内であるものを使用することが、本発明の水性顔料分散体の粘度の上昇を抑制でき、かつ、より一層優れた分散安定性や保存安定性を付与するうえで特に好ましい。ここで重量平均分子量とはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法で測定された値であり、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。
【0039】
前記顔料分散樹脂としては、酸価50~220(mgKOH/g)であるものを使用することが好ましく、70~200(mgKOH/g)であるものを使用することがより好ましく、80~180(mgKOH/g)であるものを使用することが、分散物(A)の優れた分散安定性と、インクジェット印刷インクの優れた保存安定性や再溶解性と、普通紙に印刷した場合に光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造するうえで好ましい。
【0040】
ここでいう酸価とは、日本工業規格「K0070:1992.化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」に従って測定された数値であり、樹脂1gを完全に中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)である。
【0041】
前記顔料分散樹脂として、カルボキシル基等のアニオン性基を有する顔料分散樹脂を使用する場合、前記アニオン性基は塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。
【0042】
前記塩基性化合物としては、例えばカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属などの炭酸塩;水酸化アンモニウム等の無機系塩基性化合物や、トリエタノールアミン、N,N-ジメタノールアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-N-ブチルジエタノールアミンなどのアミノアルコール類、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリンなどのモルホリン類、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、ピペラジンヘキサハイドレートなどのピペラジン等の有機系塩基性化合物を使用することができる。なかでも、前記塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムに代表されるアルカリ金属の水酸化物を使用することが、インクジェット印刷インクやその製造に使用する水性顔料分散体の粘度の上昇を抑制でき、かつ、吐出安定性に優れたインクジェット印刷インクを得るうえで水酸化カリウムを使用することがより好ましい。
【0043】
前記分散物(A)としては、本発明のインクジェット印刷インクを製造する際の原料として、顔料(a)が予め顔料分散樹脂によって水性媒体中に分散された分散液(すなわち、前記分散物(A)が水性媒体に分散した分散液)を使用することが、分散物(A)の前記体積平均粒子径を前記した範囲内に制御しやすく、分散安定性に優れ、かつ、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物の製造に使用可能なインクジェット印刷インクを得るうえで好ましい。
【0044】
前記分散液中の分散物(A)は、前記顔料(a)の表面に前記顔料分散樹脂が吸着した状態、または、前記顔料(a)が前記顔料分散樹脂に包まれた状態の分散物(A)であることが好ましい。
【0045】
次に、本発明で使用する分散物(B)について説明する。
【0046】
前記分散物(B)としては、自己分散性顔料(b)を含むものであって、体積平均粒子径が160nm以上210nm以下のものを使用する。
【0047】
前記分散物(B)としては、体積平均粒子径が160nm以上210nm以下であるものを使用し、好ましくは、160nm以上190nm未満の範囲のものを使用する。
【0048】
ここで、単に、前記分散物(A)や前記分散物(B)のいずれか一方のみを含有するインクジェット印刷インクでは、前記した課題を解決することはできない。前記分散物(A)及び分散物(B)を組合せ含有するインクジェット印刷インクを使用することによって、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造することができる。
【0049】
前記分散物(B)を構成する自己分散性顔料(b)は、水性媒体への良好な分散性を有することから、前記分散物(A)で使用するような顔料分散樹脂を使用する必要がない。 前記自己分散性顔料(b)としては、顔料の表面に水分散性を付与可能な官能基が導入されたものを使用することができる。前記自己分散性顔料(b)としては、例えば自己分散性黒顔料の場合であれば、カーボンブラックの表面にカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基及びそれらの官能基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が結合したものが挙げられる。
【0050】
本発明で用いる自己分散性顔料(b)としては、例えば、黒色顔料であれば自己分散性のカーボンブラックを使用することができ、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等をいずれも使用することができる。
【0051】
前記自己分散性のカーボンブラックとしては、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA-II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch) 700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Vulcan)XC-72R(以上、キャボット製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグサ製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.960、No.2300、MCF-88、MA600、MA7、MA8、MA14、MA77、MA100、MA220(以上、三菱ケミカル株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0052】
前記自己分散性顔料(b)の一次粒子径としては、10nm~30nmの範囲のものを使用することが好ましく、15nm~30nmの範囲ものを使用することが、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクジェット印刷インクを得るうえで特に好ましい。
【0053】
前記自己分散性顔料(b)を含む分散物(B)は、例えば、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「CAB-O-JET200」、「CAB-O-JET250C」、「CAB-O-JET260M」、「CAB-O-JET270Y」、「CAB-O-JET300」、「CAB-O-JET400」、「CAB-O-JET450C」、「CAB-O-JET465M」及び「CAB-O-JET470Y」;オリエント化学工業株式会社製の「BONJET BLACK CW-2」及び「BONJET BLACK CW-3」;東洋インキSCホールディングス株式会社製の「LIOJET WD BLACK 002C」等を使用することができる。
【0054】
また、前記分散物(B)としては、分散物(B)が予め水性媒体に分散したものを使用することができ、例えば米国センシエントカラーズ社製の「SENSIJJET Black SDP100」、「SENSIJJET Black SDP1000」「SENSIJJET Black SDP2000」「Sensijet Ultra Yellow PY74」、「Sensijet Ultra Magenta PR122」、「Sensijet Ultra Cyan PB15:4」、「Sensijet Ultra K」等を使用することができる。
【0055】
前記自己分散性顔料(b)は、例えば顔料の表面に水分散性を付与可能な官能基が導入することによって製造することができる。前記官能基の導入方法としては、例えばペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、オゾン、酸素(純粋な酸素または酸素を含む空気)、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム等を用いる方法が挙げられる。
【0056】
前記自己分散性顔料(b)としては、本発明の水性顔料分散体の製造原料として、予め水性媒体中に分散した分散液(すなわち分散物(B)が水性媒体に分散した分散液)を使用することが好ましい。
【0057】
次に、本発明の水性顔料分散体の製造方法について説明する。
【0058】
前記水性顔料分散体は、例えば前記分散物(A)と分散物(B)をそれぞれ別々に製造し、それらを水性媒体中に供給し混合することによって製造することができる。
【0059】
また、前記水性顔料分散体は、例えば、予め製造した顔料(a)及び顔料分散樹脂を含む分散物(A)が水性媒体中に分散した分散液と、前記自己分散性顔料(b)を含む分散物(B)または前記分散物(B)が水性媒体に分散した分散液とを混合することによって製造することもできる。前記水性顔料分散体を製造する際には、前記混合後、必要に応じてろ過処理等を施すことによって異物を除去してもよい。
【0060】
はじめに、前記分散物(A)が水性媒体に分散した分散液を製造する方法を説明する。
【0061】
前記顔料(a)及び前記顔料分散樹脂を含む分散物(A)が水性媒体に分散した分散液は、例えば、顔料(a)、顔料分散樹脂、塩基性化合物、必要に応じて水性媒体を含有する混合物を混練することによって混練物を得る工程、ならびに、前記混練物と水性媒体等とを混合する工程を経ることによって製造することができる。
【0062】
前記混合物は、前記顔料(a)と前記顔料分散樹脂と、必要に応じて塩基性化合物や湿潤剤や水とを混合することによって製造することができる。前記混合物は、予め顔料(a)と粉体状の顔料分散樹脂とを混合し、その後、必要に応じて塩基性化合物や湿潤剤や水とを混合することによって製造することが、分散物(A)の優れた分散安定性や、水性顔料分散体の優れた保存安定性を両立するうえで好ましい。
【0063】
前記混合物としては、前記混合物の全量に対する顔料(a)及び顔料分散樹脂の合計質量が50質量%~80質量%の範囲であることが好ましく、60質量%~80質量%の範囲であることがより好ましい。
【0064】
また、前記混合物としては、前記顔料(a)と前記顔料分散樹脂との質量比(顔料分散樹脂の質量/顔料(a)の質量)が、1.0以下であるものを使用することが好ましく、0.5以下であるものを使用することがより好ましく、0.4以下であるものを使用することが、分散物(A)の一次粒子径を前記した範囲に調整でき、かつ、インクジェット記録用インクの製造に使用した場合に掲示的なインク吐出不良を引き起こしにくいためより好ましい。
【0065】
前記混合物を混練する方法としては、例えば加圧ニーダー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサーを使用する方法が挙げられ、加圧ニーダー、プラネタリーミキサーを使用することが、分散物(A)の優れた分散安定性や、水性顔料分散体の優れた保存安定性を両立するうえで好ましい。
【0066】
前記混練工程を経て得られた混練物と水性媒体等とを混合する方法としては、前記混練物に水性媒体を供給し攪拌する方法が挙げられる。例えば、前記混合方法としては、前記混練工程を経て得られた好ましくは固形分濃度50質量%~80質量%の混練物に、水性媒体等の供給と攪拌とを繰り返し行う方法が挙げられる。
【0067】
前記方法で得られた前記分散物(A)が水性媒体に分散した分散液としては、固形分濃度20質量%~35質量%のものを使用することができる。
【0068】
前記分散物(A)が水性媒体に分散した分散液中に、前記分散物(A)の粗大粒子が含まれる場合には、必要に応じて遠心分離処理やろ過処理することによって、粗大粒子の除去を行うことが、インク吐出ノズルにおけるインクの詰まりの発生を抑制でき、かつ、フォト紙(写真紙)に印刷した場合により一層高光沢の印刷物の製造に使用可能なインクを得るうえで好ましい。
【0069】
次に、前記分散物(B)が水性媒体に分散した分散液を製造する方法を説明する。
【0070】
前記水分散性顔料(b)を含む分散物(B)が水性媒体に分散した分散液は、
例えば、水分散性顔料(b)と水性媒体とを混合することによって製造することができる。前記混合は、必要に応じてメディアレス分散法で行うことができる。
【0071】
前記メディアレス分散法としては、具体的には、超音波分散法、高速ディスクインペラー、コロイドミル、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、アルティマイザー等による分散法等があげられる。以下、超音波分散法について詳細に説明する。
【0072】
はじめに、水分散性顔料(b)と水性媒体とを予め混合、攪拌することによって混合物を製造する。
【0073】
前記混合物は、水性媒体で希釈しインクを製造しやすくするうえで適度な流動性を有していることが好ましく、粘度が0.1mPa・s~100mPa・sの範囲であることが好ましく、0.5mPa・s~10mPa・sの範囲が最も好ましい。
【0074】
前記混合物としては、前記混合物の全量に対する水分散性顔料(b)の濃度が5質量%~30質量%であるものを使用することが好ましく、10質量%~20質量%であるものを使用することがより好ましい。
【0075】
次に、前記で得た混合物に、超音波を照射する。
【0076】
超音波の照射条件は、特に制限されないが、200W~3000Wの出力と15kHz~40kHzの周波数で行うことが好ましく、500W~2000Wの出力と15kHz~25kHzの周波数で行うことがより好ましい。
【0077】
超音波照射を行う時間は、前記分散物(B)が水性媒体に分散した分散液中に含まれる自己分散性顔料(b)の質量に対して0.5W/g~2.0W/gの電力量を与えるのが適当である。
【0078】
前記分散物(B)が水性媒体に分散した分散液中に、前記分散物(B)の粗大粒子が含まれる場合には、必要に応じて遠心分離処理やろ過処理することによって、粗大粒子の除去を行うことが、インク吐出ノズルにおけるインクの詰まりの発生を抑制でき、かつ、フォト紙(写真紙)に印刷した場合により一層高光沢の印刷物の製造に使用可能なインクを得るうえで好ましい。
【0079】
前記分散物(B)が水性媒体に分散した分散液としては、必要に応じてアニオン性基を有する樹脂や塩基性化合物等を含有するものを使用することが、前記分散物(B)のより一層優れた分散安定性と、記録媒体へのインクの密着性と印刷物の耐擦過性等とをより一層向上させるうえで好ましい。具体的には、前記分散液としては、前記アニオン性基を有する樹脂と塩基性化合物と水とを含有する組成物を予め用意し、前記組成物を、前記分散液に供給し混合することによって得られた物を使用することができる。
【0080】
前記組成物は、予め製造された前記分散液に対して、添加することが好ましい。これにより、前記分散物(B)同士の凝集等を効果的に抑制でき、より一層優れた保存安定性を水性顔料分散体に付与することができる。
【0081】
前記分散物(B)として、例えば前記自己分散性顔料(b)である酸性カーボンブラックを使用する場合、前記酸性カーボンブラックと前記アニオン性基を有する樹脂等とを一括して混合すると、前記カーボンブラック由来の酸と前記樹脂が有するアニオン性基とに起因した凝集が生じやすくなる場合がある。よって、前記アニオン性基を有する樹脂等を含む組成物は、予め前記酸性カーボンが水性媒体中に分散した分散液に対して、供給し混合することが好ましい。
【0082】
前記アニオン性基を有する樹脂は、例えばアニオン性基を有するポリビニル系樹脂、アニオン性基を有するポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するアミノ系樹脂、アニオン性基を有するアクリル系共重合体、アニオン性基を有するエポキシ系樹脂、アニオン性基を有するポリウレタン系樹脂、アニオン性基を有するポリエーテル系樹脂、アニオン性基を有するポリアミド系樹脂、アニオン性基を有する不飽和ポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するフェノール系樹脂、アニオン性基を有するシリコーン系樹脂、アニオン性基を有するフッ素系高分子化合物等を使用することができ、アニオン性基を有するアクリル系共重合体やアニオン性基を有するポリウレタン樹脂を使用することが、原料が豊富であり設計が容易であること、顔料分散機能に優れることから好ましい。
【0083】
アニオン性基を有する樹脂は、自己分散性顔料(b)1質量部に対して0.2質量部~1.0質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0084】
前記方法で得られた本発明の水性顔料分散体としては、固形分が15質量%~30質量%で、かつ、顔料濃度が10質量%~20質量%の範囲のものを使用することが、より一層優れた保存安定性を維持するうえで好ましい。
【0085】
次に、本発明のインクジェット印刷インクの製造方法を説明する。
【0086】
本発明のインクジェット印刷インクは、あらかじめ水性媒体と分散物(A)と分散物(B)とを含有する水性顔料分散体を製造し、次いで、必要に応じて水溶性有機溶剤や水等の溶媒と、バインダーとしてアクリル系樹脂やポリウレタン系樹脂等の樹脂と、乾燥抑止剤、浸透剤、界面活性剤、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤とを混合することによって製造することができる。本発明のインクジェット印刷インクは、前記方法で製造した後に、遠心分離処理やろ過処理を施してもよい。
【0087】
前記インクジェット印刷インクの製造に使用する前記水性顔料分散体は、例えば、前記分散物(A)と水性媒体とを含む水性顔料分散体と、前記分散物(B)と水性媒体とを含有する水性顔料分散体とを製造し、それらを混合する方法や、前記分散物(A)と水性媒体とを含む水性顔料分散体に、前記分散物(B)でさる自己分散性顔料(b)を供給し混合する方法などによって製造することができる。
【0088】
前記インクジェット印刷インクの製造に使用可能な添加剤としては、例えば水溶性有機溶剤が挙げられる。前記水溶性有機溶剤は、前記インクの乾燥を防止し、インクジェット印刷インクの粘度や濃度を好適な範囲に調整するうえで使用することができる。
【0089】
前記水溶性有機溶剤としては、記録媒体へのインクジェット印刷インクの浸透性を高めるうえで、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物;プロピレングリコールプロピルエーテルなどのアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0090】
前記乾燥防止剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。なかでも、前記乾燥防止剤としては、グリセリン、トリエチレングリコールを使用することが、安全性を有し、かつインクが乾燥しにくく、吐出性能に優れたインクジェット印刷インクを得ることができる。
【0091】
なお、前記乾燥防止剤は、前述の水溶性有機溶剤と同じ化合物を使用することができる。
【0092】
前記浸透剤は、記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として使用することができる。
【0093】
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのグリコールモノエーテルが挙げられる。インク中の浸透剤の含有量は0.01質量%~10質量%であることが好ましい。
【0094】
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために使用することができる。界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0095】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0096】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0097】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0098】
前記界面活性剤は、単独または2種類以上を組み合わせ使用することができる。前記界面活性剤の使用量は、前記インクの全質量に対し0.001質量%~2質量%の範囲であることが好ましく、0.001質量%~1.5質量%の範囲であることがより好ましく、0.01質量%~1質量%の範囲であることが、印刷画像のにじみ等をより効果的に防止するうえでさらに好ましい。
【0099】
また、前記インクジェット印刷インクを製造する際には、耐擦過性に優れた印刷物を製造するうえで、バインダーを使用することが好ましい。本発明では、普通紙に印刷した場合であっても光学濃度が高い印刷物を得るために、顔料濃度が比較的高いインクジェット印刷インクを用いた場合であっても、前記光学濃度の低下を抑制し、かつ、優れた耐擦過性を備えた印刷物を製造することができる。
【0100】
前記バインダーとしては、アクリル系樹脂やポリウレタン系樹脂等の樹脂を使用できる。なかでも、前記バインダーとしては、アクリル系樹脂を使用することが好ましく、スチレンと(メタ)アクリル酸との重合体を使用することがより好ましく、スチレンとアクリル酸とメタクリル酸との重合体を使用することが、モットリングや光沢の観点で印刷品質を奏するうえで好ましい。
【0101】
また、前記バインダーとしては、ポリオレフィン樹脂を使用することもできる。
【0102】
酸変性ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレンを1種又は2種以上の酸性化合物で変性することにより得られる樹脂であり、ポリプロピレン由来の骨格(ポリプロピレン骨格)と、酸性化合物由来の官能基と、を有する。ポリプロピレン骨格は主としてプロピレンに由来する構造単位を有している。
【0103】
ポリプロピレン骨格は、ホモポリプロピレン(プロピレンの単独重合体)骨格であってよく、ブロックポリプロピレン(プロピレンと他のオレフィン(例えばエチレン)とのブロック共重合体)骨格であってもよく、ランダムポリプロピレン(プロピレンと他のオレフィン(例えばエチレン)とのランダム共重合体)骨格であってもよい。他のオレフィンとしては、例えばエチレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のアルケンが挙げられる。これらの成分は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。他のオレフィン成分の炭素数は、例えば、2~6である。
【0104】
ポリプロピレン骨格におけるプロピレン成分の含有量(プロピレンに由来する構造単位の含有量)は、例えば60モル%以上であり、70モル%以上であってもよい。ポリプロピレン骨格がブロックポリプロピレン骨格又はランダムポリプロピレン骨格である場合、ポリプロピレン骨格におけるプロピレン成分の含有量(プロピレンに由来する構造単位の含有量)は、例えば95モル%以下であり、90モル%以下であってもよい。
【0105】
酸変性ポリプロピレン樹脂中のポリプロピレン骨格の含有量は、酸変性ポリプロピレン樹脂の全量に対して、例えば50~99質量%である。酸変性ポリプロピレン樹脂におけるポリプロピレン骨格の含有量は、酸変性ポリプロピレン樹脂の全量に対して、50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上であってよく、99質量%以下、95質量%以下又は90質量%以下であってよい。
【0106】
酸性化合物は、例えば、カルボキシ基、酸無水物基等の酸性基を有する化合物又はその誘導体である。誘導体とは、酸性基を有する化合物の当該酸性基を変性(例えば、エステル化、アミド化又はイミド化)することによって得られる化合物である。酸性化合物における酸性基の数は1つであっても複数(例えば2つ)であってもよい。酸性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物及びこれらの誘導体が挙げられる。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸及び無水ハイミック酸、並びに、これらの化合物の誘導体を例示することができる。誘導体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物が挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルについても同様である。酸性化合物は、好ましくは酸性基を有する化合物である。
【0107】
酸変性ポリプロピレン樹脂における酸変性度(例えばグラフト重量)は、例えば、1~20質量%である。酸変性ポリプロピレン樹脂における酸変性度は、1質量%以上又は3質量%以上であってよく、20質量%以下又は10質量%以下であってよい。酸変性度及びグラフト重量は、アルカリ滴定法又はフーリエ変換赤外分光法により求めることができる。
【0108】
酸変性の方法としては、例えば、ポリプロピレンに対しグラフト変性させる方法が挙げられる。具体的には、ラジカル反応開始剤の存在下でポリプロピレンを融点以上に加熱融解して反応させる方法(溶融法)、ポリプロピレンを有機溶剤に溶解させた後ラジカル反応開始剤の存在下で加熱撹拌して反応させる方法(溶液法)等が挙げられる。ラジカル反応開始剤としては、有機過酸化物系化合物、アゾニトリル類等が挙げられる。
【0109】
酸変性ポリプロピレン樹脂は塩素化されたものであってもよい。塩素化反応は、従来公知の方法で行うことができる。
【0110】
酸変性ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は、例えば、10,000~200,000である。酸変性ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は、10,000以上、15,000以上又は40,000以上であってよく、200,000以下、150,000以下又は120,000以下であってよい。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
【0111】
酸変性ポリプロピレン樹脂の融点(Tm1)は、例えば50~150℃である。酸変性ポリプロピレン樹脂の融点(Tm1)がこの範囲であると、より優れたセット性と画像堅牢性が得られる傾向がある。酸変性ポリプロピレン樹脂の融点(Tm1)は、酸化ポリエチレンワックスの融点よりも低いことが好ましい。上記融点(Tm1)は、JIS K 0064に準拠した融点測定装置によって測定した値である。
【0112】
酸変性ポリプロピレン樹脂は、例えば、粒子状である。粒子状の酸変性ポリプロピレン樹脂の平均粒子径は、インクジェットヘッドの目詰まりを防止する観点から、例えば、10~200nmである。粒子状の酸変性ポリプロピレン樹脂の平均粒子径は、10nm以上又は20nm以上であってよく、200nm以下又は170nm以下であってよい。上記平均粒子径は、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて、レーザー散乱法により測定される、体積基準の粒度分布におけるd50径である。
【0113】
酸変性ポリプロピレン樹脂は、溶媒中に溶解又は分散した状態のものを用いることが好ましく、溶媒中に分散したエマルションの状態のものを用いることがより好ましい。上記溶媒は、水性媒体であることが好ましく、インクジェット印刷インクの溶媒に用いられる水性媒体と同じ水性媒体であることがより好ましい。このような分散体を用いる場合、分散体のpHは、酸変性ポリプロピレン樹脂が溶媒中に分散しやすくなり、貯蔵安定性が向上する観点から、例えば、液温25℃において6~10である。pHがこのような範囲となるように、分散体には、アンモニア水、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、モルホリン等のアミン系の中和剤、もしくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基を含有させてもよい。
【0114】
酸変性ポリプロピレン樹脂は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0115】
酸変性ポリプロピレン樹脂としては、市販品を用いることもできる。好ましい市販品としては、日本製紙株式会社製のアウローレン(登録商標)AE-301及びAE-502が挙げられる。
【0116】
前記酸変性ポリプロピレン樹脂をはじめとするバインダーの含有量は、普通紙へ印刷した場合であっても高い光学濃度と優れた耐擦過性とを両立した印刷物を得るうえで、インクジェット印刷インクの全量に対して、3質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下又は2質量%以下であってもよい。酸変性ポリプロピレン樹脂をはじめとするバインダーの含有量は、普通紙へ印刷した場合であっても高い光学濃度と優れた耐擦過性とを両立した印刷物を得るうえで、インクジェット印刷インクの全量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上または0.75質量%以上であってもよい。これらの観点から、前記バインダーの含有量は、インクジェット印刷インクの全量に対して、0.2~3質量%であることが好ましい。
【0117】
上記方法で得られた本発明のインクジェット印刷インクは、前記分散物(A)と分散物(B)との質量割合[分散物(A)/分散物(B)]が1.5~9の範囲である。上記範囲のインクジェット印刷インクであれば、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造することができる。質量割合[分散物(A)/分散物(B)]は、1.25~5.0の範囲であることが好ましく、1.2~2.0の範囲であることが、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクジェット印刷インクを得るうえで特に好ましい。
【0118】
前記インクジェット印刷インクは、前記インクジェット印刷インクの全量に対して、分散物(A)を2~5質量%含まれるものを使用することが好ましく、3~4.5質量%含まれるものを使用することが、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクジェット印刷インクを得るうえで特に好ましい。
【0119】
前記インクジェット印刷インクは、前記インクジェット印刷インクの全量に対して、分散物(B)を0.5~5.0質量%含まれるものを使用することが好ましく、1.0~4.0質量%含まれるものを使用することが、高顔料濃度であっても保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクジェット印刷インクを得るうえで特に好ましい。
【0120】
前記インクジェット印刷インクは、前記インクジェット印刷インクの全量に対して、顔料を5~12質量%含まれるものを使用することが好ましく、7.0~10.0質量%含まれるものを使用することが、保存安定性や再溶解性に優れ、また、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く優れた印刷物を製造可能なインクジェット印刷インクを得るうえで特に好ましい。
【0121】
上記方法で得られたインクジェット印刷インクを吐出可能なインクジェット印刷方式としては、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などが挙げられる。なかでも、インクジェット印刷方式として、ピエゾ式インクジェット印刷法での印刷に好適であり、一般に、マルチパス方式(スキャン方式)のインクジェット印刷法と比較して吐出ノズルの目詰まり等に起因した画像品質の低下を引き起こしやすいラインヘッドによるシングルパス方式でのインクジェット記録方式を選択し、本発明のインクジェット印刷インクと組み合わせ使用する印刷方法や印刷物の製造方法が、吐出ノズルの目詰まり等に起因した画像品質の低下を引き起こしにくく、スジ等の発生が抑制された印刷物を得るうえで好ましい。
【0122】
(記録媒体)
本発明のインクジェット印刷インクは、普通紙への印刷に使用することで光学濃度が高く優れた印刷物を得ることができる。
【0123】
前記普通紙としては、例えばキヤノン普通紙(ホワイト、ホワイト両面厚口、ビジネス)、EPSON普通紙(エプソン純正両面上質普通紙、KA4500BZ、上質普通紙、エプソン両面上質普通紙<再生紙>)、普通紙High-White、エレコム普通紙、NEXT-IJ(日本製紙製)、npi上質紙(日本製紙製)、インクジェット用紙マット紙等が挙げられる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0125】
スチレン77質量部、メタクリル酸13質量部及びアクリル酸10質量部の重合体(重量平均分子量8000、酸価150mgKOH/g、ガラス転移点111℃)を顔料分散樹脂Aとして使用した。
【0126】
(分散液(A-1)の調製)
#2650(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)50質量部、顔料分散樹脂A15質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液6.6質量部及びジエチレングリコール33質量部を、プラネタリーミキサー(愛工舎製作所ACM04LVTJ-B)に仕込み、ジャケット温度60℃、攪拌羽根回転数25rpm(公転数80rpm)にて60分間混練することによって混練物を得た。
【0127】
次に、前記混練物をミキサー(象印マホービン株式会社製ヘルシーミックス)に投入し、イオン交換水を加え密栓し20分間撹拌することによって、体積平均粒子径41nmの分散物(A-1)を含む顔料濃度12質量%の分散液(A-1)を得た。
【0128】
(分散液(A-2)の調製)
前記#2650(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)の代わりに#2300(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)を50質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、体積平均粒子径53nmの分散物(A-2)を含む顔料濃度12質量%の分散液(A-2)を得た。
【0129】
(分散液(A-3)の調製)
前記#2650(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)の代わりに#650B(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)を50質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、体積平均粒子径72nmの分散物(A-3)を含む顔料濃度12質量%の分散液(A-3)を得た。
【0130】
(分散液(A-4)の調製)
前記#2650(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)の代わりに#750B(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)を50質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、体積平均粒子径90nmの分散物(A-4)を含む顔料濃度12質量%の分散液(A-4)を得た。
【0131】
(分散液(A-5)の調製)
前記#2650(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)の代わりに#85(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)を50質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、体積平均粒子径120nmの分散物(A-4)を含む顔料濃度12質量%の分散液(A-5)を得た。
【0132】
(自己分散性顔料(b-1)の調製)
NIPex90(Orion Engineered Carbons社製、カーボンブラック)100質量部を、ペルオキソ2硫酸ナトリウム水溶液(濃度1.5mol/L)4000質量部中に投入し、温度85℃、攪拌速度0.12回転/sの条件下で攪拌することによって酸化処理を行った。
【0133】
次に、前記酸化処理したものをろ過した。次に、ろ紙上に残った酸化処理されたカーボンブラックと、イオン交換水と水酸化ナトリウムと混合して得た分散液を、限外ろ過膜AHP-1010(旭化成製)を用いて処理し、前記ろ過膜上の酸化処理されたカーボンブラックを乾燥させることによって、表面にカルボキシル基が導入されたカーボンブラックである自己分散性顔料(b-1)を得た。
【0134】
(バインダー水溶液(スチレン-アクリル酸樹脂水溶液Xの調製))
攪拌機、温度計、冷却管、窒素導入管を装備した4つ口のフラスコに、「ニューコール707SF」(日本乳化剤(株)製、アニオン性乳化剤)16質量部、「ノイゲンTDS-200D」(第一工業製薬(株)製、ノニオン性乳化剤)6.5質量部および脱イオン水220質量部を仕込み、窒素気流下に80℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム0.8質量部を脱イオン水16質量部に溶解させた水溶液を添加した。さらに2-エチルヘキシルアクリレート60質量部、スチレン100質量部、メタクリル酸メチル27質量部、アクリルアミド3質量部、メタクリル酸6質量部の混合液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間反応せしめた後、25℃まで冷却し、28質量%アンモニア水1.5質量部で中和せしめ、脱イオン水を加えて不揮発分を40質量%に調整して、ガラス転移温度(Tg)35℃アクリル系樹脂水溶液(X)を得た。アクリル系樹脂水溶液(X)の最終固形分濃度は39質量%であった。
【0135】
(分散液(B-1)の調製)
金属製ビーカーに、前記自己分散性顔料(b-1)15質量部とイオン交換水85質量部と34質量%水酸化カリウム水溶液0.55質量部とを供給し、攪拌することによって混合物を得た。
【0136】
次に、下記超音波分散機を用いて、前記混合物を超音波分散処理した。超音波処理時間は3分間とした。前記超音波分散処理によって前記混合物に与えられたエネルギーが、前記自己分散性顔料(b-1)1g0.7W/gとなるよう調整した。
【0137】
超音波分散機(hielscher社製UP200St)
最大出力:200W
周波数:20KHz
【0138】
次に、前記超音波分散処理して得られた分散液を30分間静置した。イオン交換水で顔料濃度を調整することによって、体積平均粒子径110nmの分散物(B-1)がイオン交換水に分散した顔料濃度20質量%の分散液(B-1)を得た。
【0139】
(自己分散性顔料(b-2)の調製)
前記NIPex90(Orion Engineered Carbons社製、カーボンブラック)の代わりに、MA77(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)を使用すること以外は、前記「(自己分散性顔料(b-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で自己分散性顔料(b-2)を得た。
【0140】
(分散液(B-2)の調製)
前記自己分散性顔料(b-1)の代わりに前記自己分散性顔料(b-2)を使用すること以外は、前記「(分散液(B-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で、体積平均粒子径145nmの分散物(B-2)がイオン交換水に分散した顔料濃度20質量%の分散液(B-2)を得た。
【0141】
(自己分散性顔料(b-3)の調製)
前記NIPex90(Orion Engineered Carbons社製、カーボンブラック)の代わりに、NIPex150(Orion Engineered Carbons社製、カーボンブラック)を使用すること以外は、前記「(自己分散性顔料(b-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で自己分散性顔料(b-3)を得た。
【0142】
(分散液(B-3)の調製)
前記自己分散性顔料(b-1)の代わりに前記自己分散性顔料(b-3)を使用すること以外は、前記「(分散液(B-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で、体積平均粒子径170nmの分散物(B-3)がイオン交換水に分散した顔料濃度20質量%の分散液(B-3)を得た。
【0143】
(自己分散性顔料(b-4)の調製)
前記NIPex90(Orion Engineered Carbons社製、カーボンブラック)の代わりに、MA230(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)を使用すること以外は、前記「(自己分散性顔料(b-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で自己分散性顔料(b-4)を得た。
【0144】
(分散液(B-4)の調製)
前記自己分散性顔料(b-1)の代わりに前記自己分散性顔料(b-4)を使用すること以外は、前記「(分散液(B-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で、体積平均粒子径208nmの分散物(B-4)がイオン交換水に分散した顔料濃度20質量%の分散液(B-4)を得た。
【0145】
(自己分散性顔料(b-5)の調製)
前記NIPex90(Orion Engineered Carbons社製、カーボンブラック)の代わりに、MA14(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック)を使用すること以外は、前記「(自己分散性顔料(b-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で自己分散性顔料(b-5)を得た。
【0146】
(分散液(B-5)の調製)
前記自己分散性顔料(b-1)の代わりに前記自己分散性顔料(b-5)を使用すること以外は、前記「(分散液(B-1)の調製)」に記載した方法と同様の方法で、体積平均粒子径223nmの分散物(B-5)がイオン交換水に分散した顔料濃度20質量%の分散液(B-5)を得た。
【0147】
(実施例1)
前記で得た分散液(A-3)60質量部と、前記で得た分散液(B-3)40質量部とを混合し、スターラーで10分間撹拌後、1.2μmのフィルター(ポール社製)でろ過することによって、顔料濃度20質量%の水性顔料分散体を得た。
【0148】
前記水性顔料分散体と、バインダー水溶液と、プロピレングリコール10質量部と、精製グリセリン10質量部と、サーフィノール420(EVONIK社製)1.0質量部とを混合し、表1に記載の顔料濃度、バインダー濃度となるように残量分としてイオン交換水を加えることによって、100質量部のインクジェット印刷インクを得た。
【0149】
(実施例2)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)90質量部及び前記分散液(B-3)10質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0150】
(実施例3)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0151】
(実施例4)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-4)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0152】
(実施例5)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-4)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0153】
(実施例6)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-4)70質量部及び前記分散液(B-4)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0154】
(実施例7)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-4)70質量部及び前記分散液(B-4)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0155】
(実施例8)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0156】
(実施例9)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0157】
(実施例10)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0158】
(比較例1)
前記分散液(A-3)50質量部及び前記分散液(B-3)50質量部の代わりに、前記分散液(A-3)50質量部及び前記分散液(B-3)0質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0159】
(比較例2)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)95質量部及び前記分散液(B-3)5質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0160】
(比較例3~6)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0161】
(比較例7)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-1)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0162】
(比較例8)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-2)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0163】
(比較例9)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-5)70質量部及び前記分散液(B-3)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0164】
(比較例10)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-1)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0165】
(比較例11)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-2)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0166】
(比較例12)
前記分散液(A-3)60質量部及び前記分散液(B-3)40質量部の代わりに、前記分散液(A-3)70質量部及び前記分散液(B-5)30質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット印刷インクを得た。
【0167】
<顔料の一次粒子径測定方法>
顔料(a)及び自己分散型顔料(b)の一次粒子径D(nm)は、下記のようにして求めた。はじめに、コロジオン膜付きメッシュに、顔料(a)または自己分散型顔料(b)とイオン交換水とを含有する顔料濃度1質量%の水性顔料組成物を滴下し乾燥させた。その表面を、STEM(走査透過電子顕微鏡)を用いて観察した(JEOL製JSM-7500FA)。加速電圧は30kVとし、観察倍率は5000倍から200,000倍の範囲で観察試料に応じて、観察しやすい倍率に設定した。前記方法で観察された画像に基づき、前記顔料(a)及び自己分散型顔料(b)を形成する最小単位の粒子径(一次粒子径)を100点測定し平均化した値を、本発明でいう一次粒子径D(nm)とした。
【0168】
<分散物(A)及び分散物(B)の体積平均粒子径の測定方法>
インクジェット印刷インクの製造に使用する前記分散液(A-1)~(A-5)、分散液(B-1)~分散液(B-5)を、それぞれイオン交換水で10000倍に希釈したものを試料とした。
【0169】
次に、前記試料4mlをセルにいれ、マイクロトラック・ベル株式会社製ナノトラック粒度分布計「UPA150」を用い、25℃環境下で、レーザー光の散乱光を検出することにより、体積平均粒子径(MV)を測定した。
【0170】
1つの試料に対し体積平均粒子径を3回測定し平均値を算出した。前記平均値の小数点以下一桁目を四捨五入した値を、本願発明特定事項の体積平均粒子径の値(単位:nm)とした。この際の測定条件は、溶媒名:水、溶媒屈折率:1.333、粒子透過性:吸収、密度:1.45、粒子形状:非球形とした。
【0171】
<粘度変化に基づく保存安定性の評価>
実施例及び比較例で得たインクジェット印刷インクの製造直後の粘度0を、ViscometerTV-20(東機産業株式会社)を用いて、25℃、50~100rpmの条件で測定した。
【0172】
次に、前記インクジェット印刷インクを、ポリエチレン容器に密封し、60℃雰囲気下に28日間保存した。次に、前記保存後のインクジェット印刷インクの粘度1を、ViscometerTV-20(東機産業株式会社)を用いて、25℃、50~100rpmの条件で測定した。
【0173】
前記インクジェット印刷インクの粘度0及び粘度1と、式〔変化率(%)=(粘度1/粘度0)×100〕に基づき、粘度の変化率を算出した。
【0174】
○:インクジェット印刷インクの粘度の変化率が1.2未満
△:インクジェット印刷インクの粘度の変化率が1.2以上で1.7未満
×:インクジェット印刷インクの変化率が1.7以上
【0175】
<印刷>
前記した方法で製造したインクジェット印刷インクを、製造後24時間静置した。その後、インクジェット印刷インクを、市販のインクジェットプリンターのカートリッジに充填し、普通紙(普通紙High-White)に、画像濃度設定100%設定の印刷パターンを印刷した。
【0176】
<普通紙における光学濃度(OD)評価>
前記普通紙に前記インクジェット印刷インクを印刷したものを常温環境下に1日放置することによって印刷物を得た。
【0177】
次に、前記印刷物の印刷部の光学濃度(OD)を、分光光度計「Gretag Macbeth Spectro Scan Transmission」(X-Rite社)を用いて、D65光源、フィルターなし、視野角2°の条件で測定し、以下の評価基準にしたがい、光学濃度を評価した。
【0178】
評価基準:
○:1.30以上、
△:1.10以上で1.30未満
×:1.10未満
【0179】
[再溶解性]
シャーレにインクジェット印刷インクを100μL滴下し、60℃の環境下に30分間放置した。次に、モデルインク(プロピレングリコール:10質量%、グリセリン:10質量%、サーフィノール420:0.1質量%、水:79.9質量%)を静かに前記シャーレに注ぎ入れ、60℃の環境下に30分間放置した。その後、前記シャーレの内容物を攪拌した際の内容物の溶解性を、下記評価基準に基づいて目視評価した。
【0180】
評価基準
〇:前記内容物がほぼ均一な黒色となり、顔料の塊は確認できない。
【0181】
△:一部分散してない顔料の塊が確認できるが、シャーレ中の溶液は黒に色づく
×:顔料が塊として残り、顔料分散体周囲の溶液は透明色のまま
【0182】
[耐擦過性の評価]
京セラ株式会社製インクジェットヘッドKJ4B-YHに、実施例及び比較例で得た水性インクをそれぞれ充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧-5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。また、インクジェットヘッドのインク吐出口を有する面(x)から、前記面(x)に対して仮定した垂線と、被記録媒体とが交わる位置(y)までの距離(ギャップ)は2mmに設定した。被記録媒体としては白の着色層を有する厚さ2mm程度の段ボールを使用した。前記ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧、標準温度とし、液滴サイズを18pLに設定して100%ベタ印刷を実施し、印刷物を得た。
【0183】
次に、太平理化学工業製「ラビングテスター」のヘッド部分に小津産業(株)製「ベンコットAP-2」を固定し、100μLのイオン交換水を含ませ、前記印刷物の印刷面を500g荷重で10回擦過した。
【0184】
次に、前記印刷物の擦過面をスキャナーで読み取り、前記擦過面積に対して、非擦過面と同程度の色を有する割合(色残存率)を画像解析ソフト『ImageJ』にて解析した。
○:印刷物の色残存率が60%以上
△:印刷物の色残存率が30%以上60%未満
×:印刷物の色残存率が30%未満
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【要約】
本発明が解決しようとする課題は、普通紙に印刷した場合であっても光学濃度が高く耐擦過性に優れた印刷物を製造可能で、かつ、保存安定性や再溶解性に優れたインクジェット印刷インクを提供することである。
本発明者等は、水性媒体と、分散物(A)と、分散物(B)とを含有するインクジェット印刷インクであって、前記分散物(A)は、顔料(a)及び顔料分散樹脂を含むものであり、前記分散物(A)の体積平均粒子径が70nm以上90nm未満であり、前記分散物(B)は自己分散性顔料(b)を含むものであり、前記分散物(B)の体積平均粒子径が160nm以上210nm以下であり、前記分散物(A)と分散物(B)との質量割合[分散物(A)/分散物(B)]であることを特徴とするインクジェット印刷インクによって前記課題を解決した。