(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】行動支援メッセージ生成装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20230926BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2019213286
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-04-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.2019年3月11日https://www.ieice.org/ken/paper/20190516n1m9/にて公開2.2019年5月9日https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0https://www.ieice.org/ken/paper/20190516n1m9/https://www.ieice.org/ken/user/index.php?cmd=participation&tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0&lang=にて公開3.2019年5月16日一般社団法人電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎(HCS)研究会・ヒューマン情報処理(HIP)研究会にて公開4.2019年3月11日https://www.ieice.org/ken/paper/20190516j1mo/にて公開5.2019年5月9日https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0https://www.ieice.org/ken/paper/20190516j1mo/https://www.ieice.org/ken/user/index.php?cmd=participation&tgs_regid=e8e6965ba488c5d86aac2b0268f4caf6ebfee8539f015591f893824b39ecbaf0&lang=にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 6.2019年5月16日一般社団法人電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎(HCS)研究会・ヒューマン情報処理(HIP)研究会にて公開7.2019年3月19日http://tsys.jp/dicomo/2019/program/program.htmlhttp://tsys.jp/dicomo/2019/program/program_abst.html#3G-4にて公開8.2019年6月26日http://dicomo.org/cfp/http://tsys.jp/dicomo/2019/program/program_abst.html#3G-4https://tsys.jp/dicomo/cgi/online_archive.cgiにて公開9.2019年7月3日一般社団法人情報処理学会マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2019)シンポジウムにて公開10.2019年6月26日http://dicomo.org/cfp/http://tsys.jp/dicomo/2019/program/program_abst.html#5C-1https://tsys.jp/dicomo/cgi/online_archive.cgiにて公開11.2019年7月4日一般社団法人情報処理学会マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2019)シンポジウムにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 妙
(72)【発明者】
【氏名】青木 良輔
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智樹
(72)【発明者】
【氏名】犬童 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小安 宗徳
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 一慶
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0075390(US,A1)
【文献】特開2016-085703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機要因または阻害要因に係る情報を取得する情報取得部と、
取得された前記動機要因または阻害要因に関する情報に基づいて、前記対象ユーザの前記行動に
影響を及ぼしている要因が、前記動機要因のみ、前記阻害要因のみ、およびその両方のいずれであるかを判定する状況判定部と、
前記状況判定部の判定結果に基づいて、前記対象ユーザの前記行動の実行を支援するためのメッセージを生成し出力するメッセージ生成部と
を具備
し、
前記メッセージ生成部は、
前記対象ユーザに影響を及ぼしている要因が前記阻害要因のみであると判定された場合に、前記阻害要因の特徴をもとに前記対象ユーザによる前記阻害要因の変更の可能性を判定する阻害要因特徴判定部と、
前記対象ユーザにとって前記阻害要因となる要素を、現在を含む予め設定された第1の期間に渡って収集し、収集された前記阻害要因となる要素に基づいて、前記現在を含む直近の第2の期間に前記対象ユーザに前記行動を実行させることに対する肯定レベルを判定する第1の肯定レベル判定部と、
前記阻害要因特徴判定部により前記阻害要因の変更の可能性がないと判定された場合に、前記第1の肯定レベル判定部による前記肯定レベルの判定結果に基づいて、前記第2の期間における前記対象ユーザの前記行動に対し肯定的な旨を含む肯定メッセージを生成し出力する肯定メッセージ生成部と
を備える
行動支援メッセージ生成装置。
【請求項2】
前記肯定メッセージ生成部は、前記第1の肯定レベル判定部により前記肯定レベルがしきい値より高いと判定された場合に、前記第2の期間における前記対象ユーザの前記行動を積極的に肯定する旨の第1の肯定メッセージを生成して出力し、前記第1の肯定レベル判定部により前記肯定レベルがしきい値より低いと判定された場合に、前記第2の期間における前記対象ユーザの前記行動を妥協的に肯定する旨を含む第2の肯定メッセージを生成して出力する、請求項
1に記載の行動支援メッセージ生成装置。
【請求項3】
前記メッセージ生成部は、
前記対象ユーザの行動に影響を及ぼしている要因が前記阻害要因のみであると判定された場合に、前記阻害要因の特徴をもとに前記対象ユーザによる前記阻害要因の変更の可能性を判定する阻害要因特徴判定部と、
前記対象ユーザにより変更の可能性がある要素を収集し、収集された前記要素の中から代替可能な要素を選択する代替要素選択部と、
前記阻害要因特徴判定部により前記阻害要因の変更の可能性があると判定された場合に、前記代替要素選択部により選択された代替可能な要素に基づく代替メッセージを生成し出力する代替メッセージ生成部と
を備える、請求項
1に記載の行動支援メッセージ生成装置。
【請求項4】
前記代替メッセージ生成部は、前記代替要素選択部により代替可能な要素が選択できなかった場合には、前記阻害要因のなかった場合を仮定した仮定メッセージを生成し出力する、請求項
3に記載の行動支援メッセージ生成装置。
【請求項5】
前記メッセージ生成部は、
前記対象ユーザの行動に影響を及ぼしている要因が前記動機要因と阻害要因の両方であると判定された場合に、前記対象ユーザにとって前記動機要因となる要素を、現在を含む予め設定された第3の期間に渡って収集し、収集された前記動機要因となる要素に基づいて、前記現在を含む直近の第4の期間に前記対象ユーザに前記行動を実行させることに対する肯定のレベルを判定する第2の肯定レベル判定部と、
前記第2の肯定レベル判定部により判定された前記動機要因の肯定レベルを表す情報を含む第3の肯定メッセージと、前記阻害要因に対し受容する旨の情報を含む受容メッセージとを生成し出力する複合メッセージ生成部と
を備える、請求項
1に記載の行動支援メッセージ生成装置。
【請求項6】
前記メッセージ生成部は、前記対象ユーザの行動に影響を及ぼしている要因が前記動機要因のみであると判定された場合に、前記動機要因に基づいて前記対象ユーザの行動を応援する応援メッセージを生成し出力する、請求項
1に記載の行動支援メッセージ生成装置。
【請求項7】
プロセッサを有する装置が実行する行動支援メッセージ生成方法であって、
対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機要因または阻害要因に係る情報を取得する過程と、
取得された前記動機要因または阻害要因に関する情報に基づいて、前記対象ユーザの前記行動に
影響を及ぼしている要因が、前記動機要因のみ、前記阻害要因のみ、およびその両方のいずれであるかを判定する
判定過程と、
前記判定過程の判定結果に基づいて、前記対象ユーザの前記行動の実行を支援するためのメッセージを生成し出力する
メッセージ生成過程と
を具備
し、
前記メッセージ生成過程は、
前記対象ユーザに影響を及ぼしている要因が前記阻害要因のみであると判定された場合に、前記阻害要因の特徴をもとに前記対象ユーザによる前記阻害要因の変更の可能性を判定する阻害要因特徴判定過程と、
前記対象ユーザにとって前記阻害要因となる要素を、現在を含む予め設定された第1の期間に渡って収集し、収集された前記阻害要因となる要素に基づいて、前記現在を含む直近の第2の期間に前記対象ユーザに前記行動を実行させることに対する肯定レベルを判定する肯定レベル判定過程と、
前記阻害要因特徴判定過程により前記阻害要因の変更の可能性がないと判定された場合に、前記肯定レベル判定過程による前記肯定レベルの判定結果に基づいて、前記第2の期間における前記対象ユーザの前記行動に対し肯定的な旨を含む肯定メッセージを生成し出力する肯定メッセージ生成過程と
を備える
行動支援メッセージ生成方法。
【請求項8】
請求項1乃至
6のいずれかに記載の行動支援メッセージ生成装置が備える前記各部の処理を、前記行動支援メッセージ生成装置が有するプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一態様は、対象ユーザの行動変容を支援する装置において行動を支援するためのメッセージを生成する、行動支援メッセージ生成装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病は不健全な生活の積み重ねを改善することで予防が可能である。そこで、対象ユーザの特徴やニーズ、受け入れやすさに関する情報を調べ、これらの情報に基づいて対象ユーザに対し健康行動の変容を支援する情報を提供する技術が種々提案されている。例えば、非特許文献1には、個人の行動を変容させることを目的として定義されたトランスセオレティカル・モデル(Transtheoretical Model:TTM)に着目し、対象ユーザの属性情報や行動情報、環境情報等をもとに対象ユーザの状況がどの行動変容ステージに位置するかを推定し、その推定結果に応じて対象ユーザに適合した行動を推奨する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】櫻田好司、「行動変容型生活習慣改善システム」、OKIテクニカルレビュー、2016年12月/第228号 Vol.83 No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載された技術は、対象ユーザの属性情報や行動情報、環境情報等とトランスセオレティカル・モデルをもとに、対象ユーザへの介入情報を生成して対象ユーザに提示するものとなっている。しかし、トランスセオレティカル・モデルの概念要素データを考慮するだけでは対象ユーザの状況を正確に把握することが困難であり、対象ユーザの状況に応じて適切な介入情報を提示できない場合がある。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、一側面では、対象ユーザに対し行動変容のための適切な支援メッセージを提示できるようにする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様は、対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機要因または阻害要因に関する情報を取得する情報取得部と、取得された前記動機要因または阻害要因に関する情報に基づいて、前記対象ユーザの前記行動に影響を及ぼしている要因が、前記動機要因のみ、前記阻害要因のみ、およびその両方のいずれであるかを判定する状況判定部と、前記状況判定部の判定結果に基づいて、前記対象ユーザの現在の状況に応じて前記対象ユーザの前記行動の実行を支援するためのメッセージ情報を生成し出力するメッセージ生成部とを具備する。そして、前記メッセージ生成部には、前記対象ユーザに影響を及ぼしている要因が前記阻害要因のみであると判定された場合に、前記阻害要因の特徴をもとに前記対象ユーザによる前記阻害要因の変更の可能性を判定する阻害要因特徴判定部と、前記対象ユーザにとって前記阻害要因となる要素を、現在を含む予め設定された第1の期間に渡って収集し、収集された前記阻害要因となる要素に基づいて、前記現在を含む直近の第2の期間に前記対象ユーザに前記行動を実行させることに対する肯定レベルを判定する第1の肯定レベル判定部と、前記阻害要因特徴判定部により前記阻害要因の変更の可能性がないと判定された場合に、前記第1の肯定レベル判定部による前記肯定レベルの判定結果に基づいて、前記第2の期間における前記対象ユーザの前記行動に対し肯定的な旨を含む肯定メッセージを生成し出力する肯定メッセージ生成部とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の第1の態様によれば、対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機要因または阻害要因に基づいて対象ユーザが現在置かれている状況が判定され、その判定結果に応じて対象ユーザの行動支援メッセージが生成される。このため、対象ユーザに対しその動機要因または阻害要因を踏まえた適切なメッセージを提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る行動変容モデルの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した行動変容モデルにおける状態遷移の方向を示す図である。
【
図3】
図3は、この発明の一実施形態に係る行動変容支援システムの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したシステムにおいて行動支援メッセージ生成装置として動作するサーバ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、
図3に示したシステムにおいて行動支援メッセージ生成装置として動作するサーバ装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図5に示したサーバ装置の処理手順と処理内容の前半部分を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図5に示したサーバ装置の処理手順と処理内容の後半部分を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7に示した処理手順のうち阻害排除メッセージの生成処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図7に示した処理手順のうち阻害需要・動機強化メッセージの生成処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図7に示した処理手順のうち応援メッセージの生成処理内容を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、ユーザ特徴量およびシチュエーション情報の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、
図5に示したサーバ装置に入力されるユーザ特徴量の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図5に示したサーバ装置に入力されるシチュエーション情報の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、行動可能性の判定しきい値の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、行動変容ステージの判定条件の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、進捗フェーズの判定条件の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、動機要因および阻害要因の種類とその影響確率の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(構成例)
(1)行動変容モデル
図1はこの発明の一実施形態に係る行動支援メッセージ生成装置で使用される行動変容モデルの構成の一例を示すものである。
行動変容モデルは、ユーザのターゲット行動に対する取り組みの程度を複数の状態で定義した行動変容ステージと、上記ターゲット行動に対する計画および実施の進捗度合いを複数の段階で定義した進捗フェーズとにより構成される。
【0010】
この例では、上記行動変容ステージの複数の状態として、無関心期ST1、関心期ST2、準備期ST3、実行期ST4、維持期ST5からなる5つのステージ(状態)が定義される。一方、進捗フェーズは、上記行動変容ステージの5つのステージのうち、準備期ST3および実行期ST4に対し定義されるもので、計画フェーズP1、行動意志フェーズP2、行動フェーズP3の3段階のフェーズにより構成される。
【0011】
より具体的には、無関心期ST1はターゲット行動(準備行動)をする予定がない状態を、関心期ST2はターゲット行動をするつもりがある状態をそれぞれ示す。また、準備期ST3における計画フェーズP1は近いうちに準備行動をする予定がある段階を、行動意志フェーズP2は準備行動をしようとする段階を、行動フェーズP3は準備行動を実施する段階をそれぞれ示す。さらに、実行期ST4における計画フェーズP1は近いうちにターゲット行動をする予定がある段階を、行動意志フェーズP2はターゲット行動をしようとする段階を、行動フェーズP3はターゲット行動を実施する段階をそれぞれ示す。最後に、維持期ST5はターゲット行動が継続されている状態を示している。
【0012】
以上述べた行動変容モデルでは、無関心期ST1からスタートして維持期ST5に至るまで各ステージおよびフェーズを順に遷移する。
図2はその状態遷移の方向を矢印で示したものである。なお、
図2における(1) はステージ移行可能性を、(2) は計画フェーズから行動意志フェーズへの上昇可能性を、(3) は行動意志フェーズから行動フェーズへの移行可能性をそれぞれ示すものである。
【0013】
(2)システム
図3は、この発明の一実施形態に係る行動変容支援システムの全体構成を示す図である。この行動変容支援システムは、この発明の一実施形態に係る行動支援メッセージ生成装置として動作するサーバ装置SVと、複数のユーザが各々使用するユーザ端末MT1~MTnとの間で、ネットワークNWを介してデータ通信を可能にしたものである。
【0014】
ユーザ端末MT1~MTnは、スマートフォンやタブレット型端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等からなり、対象ユーザだけでなく、対象ユーザの行動変容をサポートする家族やトレーナ、医療関係者等のサポータにより使用されてもよい。
【0015】
ネットワークNWは、例えば、インターネット等のIP(Internet Protocol)ネットワークと、このIPネットワークにアクセスするためのアクセスネットワークとにより構成される。アクセスネットワークとしては、例えば有線および無線の公衆ネットワークや、有線および無線のLAN(Local Area Network)が使用される。
【0016】
(3)サーバ装置SV
図4および
図5は、それぞれ上記サーバ装置SVのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
サーバ装置SVは、例えばクラウドサーバやWebサーバにより構成される。サーバ装置SVは、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部1を備え、この制御部1に対し、記憶部2および通信インタフェース(通信I/F)3を、バス4を介して接続したものとなっている。
【0017】
通信I/F3は、例えば、公衆データネットワークに対応したインタフェースを備え、ネットワークNWを介してユーザ端末MT1~MTnとの間でデータ伝送を行う。なお、通信I/F3は、設置場所や運用者によっては有線LAN等のその他のインタフェースを備えていてもよい。
【0018】
記憶部2は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSolid State Drive(SSD)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)とを組み合わせて構成される記憶媒体を備えたもので、プログラム記憶領域とデータ記憶領域とを有する。なお、記憶媒体の構成は上記構成に限るものではない。プログラム記憶領域には、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムが格納されている。
【0019】
データ記憶領域には、ユーザ特徴量記憶部21と、シチュエーション情報記憶部22と、ステージ判定条件記憶部23と、フェーズ判定条件記憶部24と、動機・阻害要因記憶部25と、判定データ記憶部26と、メッセージ文・使用履歴記憶部27とが設けられている。
【0020】
ユーザ特徴量記憶部21は、ユーザ端末MT1~MTnから送られる対象ユーザの特徴量を表す情報を、入力日時または受信日時順に、ユーザ識別情報(ユーザID)またはユーザ端末の識別情報(端末ID)と関連付けて記憶する。ユーザ特徴量の一例については後述する。
【0021】
シチュエーション情報記憶部22は、ユーザ端末MT1~MTnから送られる対象ユーザのスケジュール情報、生体情報および環境情報等のシチュエーション情報を、入力または検出日時、或いは受信日時順に、ユーザIDまたは端末IDと関連付けて記憶する。シチュエーション情報の一例についても後述する。
【0022】
ステージ判定条件記憶部23には、
図1に例示した行動変容モデルの5つのステージの各々に対応付けて、対象ユーザの状態がどのステージに対応するか判定するためのステージ判定条件が記憶されている。
【0023】
フェーズ判定条件記憶部24には、
図1に例示した行動変容モデルの3段階のフェーズの各々に対応付けて、対象ユーザの段階がどのフェーズに対応するか判定するためのステージ判定条件が記憶されている。
【0024】
動機・阻害要因記憶部25には、上記行動変容モデルの5つのステージと3段階のフェーズとのすべての組み合わせに対応付けて、ユーザが行動する際の動機・阻害要因となる情報がカテゴリ別に記憶されている。なお、上記ステージ判定条件、フェーズ判定条件および動機・阻害要因の具体例は後述する。
【0025】
判定データ記憶部26は、対象ユーザの状態および段階の判定結果と、対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機・阻害要因の判定結果と、対象ユーザの行動に対する介入の適否の判定結果を保存するために用いられる。
【0026】
メッセージ文・使用履歴記憶部27は、メッセージ生成出力部19により生成された各支援メッセージをその生成日時とユーザIDまたは端末IDと関連付けられた状態で記憶するために用いられる。すなわち、メッセージ文・使用履歴記憶部27には、ユーザごとに過去に生成され出力された各支援メッセージが日時順に記憶される。なお、メッセージ文・使用履歴記憶部27には、ユーザ特徴量記憶部21に記憶された特徴量のうち、対象ユーザの行動履歴を関する情報が記憶される。
【0027】
制御部1は、この発明の一実施形態を実現するための各種制御機能として、ユーザ特徴量取得部11と、シチュエーション情報取得部12と、行動変容ステージ判定部13と、フェーズ判定部14と、動機・阻害要因判定部15と、行動可能性推定部16と、介入適否判定部17と、動機・阻害要因区分判定部18と、メッセージ生成出力部19とを有している。これらの制御機能は、何れも記憶部2のプログラム記憶領域に格納されたプログラムを、制御部1のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0028】
ユーザ特徴量取得部11は、対象ユーザのユーザ端末MT1~MTnに対し、例えばアンケート形式の質問リストを送信する。質問リストは、対象ユーザのターゲット行動に対する意識を調査するためのもので、例えばユーザ特徴量記憶部21に記憶されている複数のリストの中から選択される。
【0029】
またユーザ特徴量取得部11は、上記質問リストに対する回答情報がユーザ端末MT1~MTnから返送された場合に、この回答情報を通信I/F3を介して受信し、受信された回答情報をユーザ特徴量として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてユーザ特徴量記憶部21に記憶させる処理を行う。
【0030】
シチュエーション情報取得部12は、例えばユーザ端末MT1~MTnから送信される、ユーザのスケジュールデータ、生体データ、周囲の温度や湿度等の環境データ等を通信I/F3を介して受信し、受信された上記各データをシチュエーション情報として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてシチュエーション情報記憶部22に記憶させる処理を行う。
【0031】
行動変容ステージ判定部13は、上記ユーザ特徴量記憶部21に新たなユーザ特徴量が記憶されるごとに、当該ユーザ特徴量を読み出す。そして、読み出されたユーザ特徴量を、ステージ判定条件記憶部23に記憶されている複数のステージ判定条件と照合することにより、上記対象ユーザの現在の状態がどのステージに対応するかを判定する処理を行う。
【0032】
フェーズ判定部14は、上記行動変容ステージ判定部13により上記対象ユーザの現在の状態が「準備期」または「実行期」に対応していると判定された場合に、上記ユーザ特徴量を、フェーズ判定条件記憶部24に記憶されている複数のフェーズ判定条件と照合し、上記対象ユーザの現在の状態がどのフェーズに対応するかを判定する処理を行う。またフェーズ判定部14は、上記対象ユーザの現在の状態の判定結果を、ユーザIDまたは端末IDと関連付けて判定データ記憶部26に記憶させる処理も行う。
【0033】
動機・阻害要因判定部15は、上記シチュエーション情報記憶部22に対象ユーザの新たなシチュエーション情報が記憶されるごとに、当該シチュエーション情報を読み出す。そして、読み出されたシチュエーション情報を、動機・阻害要因記憶部25に記憶されている動機・阻害要因と照合することにより、上記対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機要因または阻害要因の種類と、その影響の度合い(例えば影響確率)を判定する処理を行う。また、動機・阻害要因判定部15は、判定された上記動機要因または阻害要因の種類とその影響確率を、ユーザIDまたは端末IDと関連付けて判定データ記憶部26に記憶させる処理も行う。
【0034】
行動可能性推定部16は、上記動機・阻害要因判定部15により判定された動機要因または阻害要因の種類とその影響確率をもとに、上記対象ユーザの現在の行動可能性を表すスコアを算出する処理を行う。
【0035】
介入適否判定部17は、算出された上記行動可能性を表すスコアを、予め設定されている判定しきい値と比較することにより、上記対象ユーザに対する介入の適否を判定し、その判定結果を上記行動可能性を表すスコアと共に、判定データ記憶部26に記憶させる処理を行う。
【0036】
動機・阻害要因区分判定部18は、判定データ記憶部26に記憶された動機・阻害要因の判定結果に基づいて、対象ユーザの行動に影響を及ぼす要因が「阻害要因のみ」、「動機要因と阻害要因との混在」、「動機要因のみ」のいずれであるかを判定する処理を行う。
【0037】
メッセージ生成出力部19は、上記動機・阻害要因区分の判定結果に基づいて、シチュエーション情報記憶部22に記憶された同一ユーザの過去のシチュエーション情報と、メッセージ文・使用履歴記憶部27に記憶されたメッセージ定型文と同一ユーザの過去の支援メッセージの使用履歴とを参照することにより、ユーザに通知すべき支援メッセージを生成し、通信I/F3からユーザ端末MT1~MTnに向け送信する処理を行う。
【0038】
(動作例)
次に、以上のように構成されたサーバ装置SVの動作を説明する。
図6および
図7はサーバ装置SVによる状況判定制御の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0039】
(1)ユーザ特徴量の取得
サーバ装置SVは、ユーザ特徴量取得部11の制御の下、先ずステップS10において、対象ユーザごとにその特徴量を取得する処理を以下のように実行する。
すなわち、ユーザ特徴量取得部11は、先ず対象ユーザのユーザ端末MT1~MTnに対し、例えば1日のうちの予め設定された取得タイミングになるごとに、アンケート形式の質問リストを送信する。この動作は、例えば、サーバ装置SVのURL(Uniform Resource Locator)を含む電子メールをユーザ端末MT1~MTnに送信し、ユーザが上記URLをもとにサーバ装置SVに対しアクセスして質問リストをダウンロードすることにより行われる。
【0040】
質問リストは、例えばユーザ特徴量記憶部21に記憶されている複数のリストの中から選択される。なお、対象ユーザの属性情報が事前に取得されている場合には、この属性情報に対応するリストを選択するようにしてもよい。このようにすると、対象ユーザごとに、その年齢や性別、職業、病歴等に応じた適切な質問リストを選択し送信することが可能となる。
【0041】
ユーザ端末MT1~MTnにおいて対象ユーザは、表示された質問リストを見ながら回答を入力する。そして、回答の入力終了後にユーザが終了操作を行うと、上記入力された回答の内容とその入力日時、およびユーザIDまたはユーザ端末IDを含む回答情報がユーザ端末MT1~MTnからサーバ装置SVへ送信される。
【0042】
これに対しサーバ装置SVは、ユーザ端末MT1~MTnから回答情報が送信されると、ユーザ特徴量取得部11の制御の下、上記回答情報を通信I/F3を介して受信する。そして、受信された上記回答情報をユーザ特徴量として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてユーザ特徴量記憶部21に記憶させる。その際ユーザ特徴量取得部11は、上記回答情報に含まれている入力日時をもとに、回答情報を日時順にユーザ特徴量記憶部21に記憶させる。なお、回答情報に入力日時が含まれていない場合には、回答情報をその受信日時の順にユーザ特徴量記憶部21に記憶させるようにしてもよい。
【0043】
(2)シチュエーション情報の取得
サーバ装置SVは、上記ユーザ特徴量の取得動作と並行して、シチュエーション情報取得部12の制御の下、ステップS11において、シチュエーション情報の取得動作を以下のように実行する。
【0044】
すなわち、シチュエーション情報取得部12は、先に述べたユーザ特徴量の取得動作と同様に、取得タイミングになるごとに、シチュエーション用の質問リストをユーザ端末MT1~MTnへ送信する。その送信方法は、ユーザ特徴量の場合と同様に、電子メールによりユーザ端末MT1~MTnにURLを通知し、このURLに基づくアクセスに応じて質問リストをダウンロードすることにより行われる。
【0045】
対象ユーザは、ユーザ端末MT1~MTnにおいて、表示された上記質問リストに従いスケジュールデータや衣食住に関するデータ等を入力する。またユーザ端末MT1~MTnは、内蔵または外部に設置されたセンサから、ユーザの周辺温度等の環境データや疲労度合い等を表す生体データを取得する。なお、環境データについてはWebサイトから取得するようにしてもよい。また、家族構成や居住形態等の属性情報を取得してもよいが、これらの属性情報は定期的に取得する必要はなく、システムの利用開始時にのみ取得すればよい。
【0046】
ユーザ端末MT1~MTnは、入力された上記スケジュールデータや衣食住に関するデータ、および取得された上記環境データ等を、ユーザIDまたは端末IDと共にサーバ装置SVへ送信する。なお、上記スケジュールデータや衣食住に関するデータ、および環境データ等には入力日時または検出日時が含まれる。
【0047】
サーバ装置SVは、シチュエーション情報取得部12の制御の下、ユーザ端末MT1~MTnから送信される、上記スケジュールデータや衣食住に関するデータ、および取得された上記環境データ等を通信I/F3を介して受信し、受信された上記各データをシチュエーション情報として送信元のユーザIDまたは端末IDと関連付けてシチュエーション情報記憶部22に記憶させる。その際、上記各データには入力日時または検出日時が含まれているので、シチュエーション情報取得部12は上記シチュエーション情報を入力日時または検出日時の順に記憶させる。なお、各データに入力日時または検出日時が含まれていない場合には、シチュエーション情報取得部12は各データをその受信日時の順に記憶させる。
【0048】
図11は、ユーザ特徴量およびシチュエーション情報の種別とその収集方法および収集タイミングの一例を示したものである。
図12はユーザ特徴量を取得するための質問リストとその回答の一例を示し、また
図13はシチュエーション情報の回答の一例を示す。なお、質問リストの項目は任意に設定することができ、また質問に対する回答には漏れがあっても構わない。
【0049】
(3)行動変容ステージの判定
サーバ装置SVは、上記新たなユーザ特徴量が取得されると、行動変容ステージ判定部13の制御の下、ステップS12において、ユーザ特徴量記憶部21から上記新たなユーザ特徴量を読み出す。そして、読み出されたユーザ特徴量を、ステージ判定条件記憶部23に記憶されているステージ判定条件と照合することにより、上記対象ユーザの現在の状態がどのステージに対応するかを判定する。
【0050】
例えば、いまステージ判定条件記憶部23に
図15に示す複数のステージ判定条件が記憶されているものとする。この状態で、例えば
図12に示すユーザ特徴量が取得されたとすると、行動変容ステージ判定部13はユーザ特徴量の内容が「ターゲット実行計画:あり」で、かつ「いま行動しようと思っているか:はい」となっていることから、対象ユーザの現在の状態は「実行期」であると判定する。
【0051】
(4)フェーズの判定
サーバ装置SVは、上記行動変容ステージの判定において、対象ユーザの現在の状態が「実行期」に対応していると判定されると、フェーズ判定部14の制御の下、ステップS13において、上記ユーザ特徴量をフェーズ判定条件記憶部24に記憶されている複数のフェーズ判定条件と照合し、ユーザの現在の状況がどのフェーズに対応するかを判定する。
【0052】
例えば、いまフェーズ判定条件記憶部24に
図16に示すフェーズ判定条件が記憶されているものとする。この状態で、例えば
図12に示すユーザ特徴量が取得されたとすると、フェーズ判定部14はユーザ特徴量に含まれる「行動の実施計画:あり」、「今行動しようと思っているか:はい」、「今行動しているか:いいえ」を、フェーズ判定条件記憶部24に記憶されているフェーズ判定条件と照合する。その結果、ユーザの現在の段階は「行動意志フェーズ」であると判定される。
【0053】
以上のように得られた対象ユーザの状態(ステージ)と段階(フェーズ)の判定結果は、フェーズ判定部14の制御の下、判定時刻およびユーザIDまたは端末IDと関連付けられた状態で判定データ記憶部26に記憶される。
【0054】
(5)動機・阻害要因の判定
上記したように対象ユーザの状態(ステージ)と段階(フェーズ)の判定が終了すると、サーバ装置SVは次に動機・阻害要因判定部15の制御の下、ステップS14において、シチュエーション情報記憶部22から対象ユーザの最新のシチュエーション情報を読み出す。そして、読み出されたシチュエーション情報を、動機・阻害要因記憶部25に記憶されているステージ×フェーズの各組み合わせに対応する動機・阻害要因のうち、「実行期×行動意志フェーズ」に対応する動機・阻害要因と照合することにより、対象ユーザがターゲット行動を実行しようとするときに影響を及ぼす動機要因または阻害要因を判定する。
【0055】
例えば、いま動機・阻害要因記憶部25には、「実行期×行動意志フェーズ」に対応する動機・阻害要因として
図17に示す情報が記憶されているものとする。この情報は、例えば、カテゴリ別に複数の動機要因および阻害要因を定義し、さらに要因ごとに行動実行に対する影響確率を定義したものである。
【0056】
この状態で、対象ユーザのシチュエーション情報に、例えば
図13に示すように「やや疲れている」、「外気温:9℃」が含まれていたとすると、対象ユーザの現在のシチュエーションは「外気温:寒い」、「疲労度:やや疲れ」に該当するため、影響確率はp=0.3、p=0.4となる。このとき、影響確率pがp≧0.5のときは動機要因、p<0.5のときは阻害要因と定義されている。このため、上記の場合、「外気温」および「疲労度」のいずれも「阻害要因」と判定される。
【0057】
上記の判定結果、つまり「阻害要因:寒い(p=0.3)」、「阻害要因:やや疲れ(p=0.4)」は、動機・阻害要因判定部15の制御の下、判定日時およびユーザIDまたは端末IDに関連付けられた状態で判定データ記憶部26に記憶される。
【0058】
(6)行動可能性の推定
サーバ装置SVは、上記動機・阻害要因の判定結果が得られると、次に行動可能性推定部16の制御の下、ステップS15において、上記判定された動機・阻害要因の種類とその影響確率pの値をもとに、対象ユーザの現在の行動可能性を表す値(行動可能性スコア)を算出する。
【0059】
例えば、行動可能性スコアをaとすると、aは
a=Πpk
により表されるので、上記の例では
a=0.3×0.4
=0.12
となる。
【0060】
(7)介入の適否判定
サーバ装置SVは、続いて介入適否判定部17の制御の下、ステップS16において、上記算出された行動可能性のスコアaを予め設定されている判定しきい値と比較することで、対象ユーザに対する介入の適否を判定する。
【0061】
例えば、判定しきい値が
図14に示すように0.1<a<0.9に設定されているものとすると、上記の例では行動可能性スコアa=0.12であるため、対象ユーザに対する介入は“適”と判定される。ちなみに、行動可能性スコアaが0.1以下の場合には、対象ユーザにとって阻害要因が大きく行動を実行する可能性が低いため、介入は“不適”と判定される。これに対し、行動可能性スコアaが0.9以上の場合には、対象ユーザは既に十分に大きな動機要因を有しているため、対象ユーザは自力で行動を実行することが可能であると見なされ、介入の必要がないと判定される。
【0062】
上記介入の適否の判定結果は、介入適否判定部17の制御の下、判定日時およびユーザIDまたは端末IDと関連付けられた状態で判定データ記憶部26に記憶される。
【0063】
(8)動機・阻害要因区分の判定
上記介入の適否判定において、介入が“適”と判定されると、サーバ装置SVは、動機・阻害要因区分判定部18の制御の下、ステップS17において、上記判定データ記憶部26に記憶されている動機・阻害要因の判定結果を読み出す。そして、読み出された判定結果に基づいて、対象ユーザの行動に影響を及ぼす現在の要因が「阻害要因のみ」、「動機要因と阻害要因との混在」、「動機要因のみ」のいずれであるかを判定する。
【0064】
(9)行動支援メッセージの生成および出力
サーバ装置SVは、メッセージ生成出力部19の制御の下、上記動機・阻害要因区分の判定結果に応じて行動支援メッセージを生成し出力する処理を以下のように実行する。
【0065】
(9-1)「阻害要因のみ」の場合
サーバ装置SVは、対象ユーザの行動に影響を及ぼす現在の要因が「阻害要因のみ」と判定されると、ステップS20に移行して阻害排除メッセージを生成する処理を以下の通り実行する。
図8はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0066】
(9-1-1)阻害要因の特徴判定
メッセージ生成出力部19は、先ずステップS201において、上記阻害要因の特徴を抽出して、当該阻害要因が、時系列で変化するものでかつ対象ユーザがコントロール可能なものであるか否かを判定する。
【0067】
例えば、阻害要因が、天気予報やパブリックなイベント等、インターネットで公開されている情報でかつ日々更新されるものや、対象ユーザの疲労状態、帰宅時間、心の余裕等のように外的な要因により時間により変化するものの場合には、当該阻害要因は「時系列変化するものでかつユーザがコントロール不可能或いは困難なもの」と判定する。
一方、阻害要因が、ユーザの衣類等の持ち物に関するものの場合には、当該阻害要因は「時系列変化するものでかつユーザがコントロール可能なもの」と判定する。
【0068】
なお、以上の判定処理は、例えば、シチュエーション情報記憶部22に記憶される各シチュエーション情報に対し、動機・阻害要因判定部15の判定結果に基づいて阻害要因である旨のラベルを付けておき、当該ラベルを参照することで行われる。
【0069】
(9-1-2)コントロール不可能な場合
上記阻害要因の特徴判定の結果、阻害要因が「時系列変化するものでかつユーザがコントロール不可能或いは困難なもの」と判定されると、メッセージ生成出力部19は、行動の実行は“今”であることを肯定する支援メッセージ、つまり阻害要因排除メッセージを作成するための処理を以下のように実行する。
【0070】
すなわち、メッセージ生成出力部19は、先ずステップS202において、シチュエーション情報記憶部22から阻害要因のラベルが付された現在を含む過去の一定期間におけるシチュエーション情報を抽出すると共に、例えばWebサイト等をアクセスして未来の一定期間に渡る阻害要因になりそうな天気予報の情報を取得する。つまり、現在を含む過去および未来の第1の期間に渡る阻害要因に相当するシチュエーション情報を収集する。
【0071】
メッセージ生成出力部19は、次にステップS203において、例えば、上記第1の期間に収集された各シチュエーション情報の阻害要因の影響確率をもとに、現在を含む直近の第2の期間、つまり“今”が、阻害要因はあっても行動の実行に最も適したときであるか否かを判定する。そして、“今”が、行動の実行に最も適したときであると判定されると、メッセージ生成出力部19は、ステップS204において、第2の期間は阻害要因の強さが低下している状態であるため行動の実行を促す、すなわち今行動を起こすことを強く勧める第1の肯定メッセージを生成する。
【0072】
例えば、メッセージ文・使用履歴記憶部27に、「今日は、[期間]の中で最も[阻害要因排除となる状態(阻害する要因の対義語)]ですよ。」という穴埋め定型文を記憶しておき、ステップS210により上記定型文を読み出す。そして、読み出された定型文の穴埋め部分にシチュエーション情報のワードを挿入することで、例えば
「今日は、今週の中で一番暖かいですよ。」
という肯定メッセージを生成する。
【0073】
これに対し、上記ステップS203において“今”が、行動の実行に最も適したときではないと判定されると、メッセージ生成出力部19は、ステップS205,S210において、メッセージ文・使用履歴記憶部27を参照して過去のメッセージ送信履歴および行動履歴を確認する。そして、予め設定された過去の一定期間内に、メッセージの送信および行動の実行が実施されていなければ、予めメッセージ文・使用履歴記憶部27に記憶しておいた、“妥協して今を肯定する”メッセージを読み出し、例えば、
「しばらく様子は変わらないみたいですので、そろそろやってみてはいかがでしょう」
という第2の肯定メッセージを生成する。この第2の肯定メッセージは、第2の期間は阻害要因が強いため行動に適した状況ではないが、妥協していまの状況を肯定することで実行を促すものである。
【0074】
なお、第2の肯定メッセージの他の例としては、例えば穴埋め定型文である、
「[期間]は[阻害要因となる状態(阻害する要因)]に変化はないので、そろそろやってみてはどうでしょうか?」
を読み出し、この穴埋め定型文をもとに
「今週は寒さに変化はないので、そろそろやってみてはどうでしょうか?」
のようなメッセージを生成してもよい。
【0075】
(9-1-3)コントロール可能な場合
上記ステップS201における阻害要因の特徴判定の結果、阻害要因が「時系列変化するものでかつユーザがコントロール可能なもの」と判定されると、メッセージ生成出力部19は、ステップS206において、シチュエーション情報記憶部22から対象ユーザがコントロール可能なシチュエーション情報を収集する。そして、ステップS207において、収集した上記シチュエーション情報の中に今実施可能な代替手段があるか否かを判定する。
【0076】
この判定の結果、代替手段が見つかった場合には、メッセージ生成出力部19はステップS208,S210において、この代替手段を含めた代替メッセージを生成する。例えば、メッセージ文・使用履歴記憶部27に「代わりに[代替手段]があるよ」という穴埋め定型文を記憶しておき、ステップS210により上記定型文を読み出す。そして、読み出された定型文の穴埋め部分に上記代替手段に相当するワードを挿入することで、例えば
「代わりにジャージがあるよ」
という代替メッセージを生成する。この代替メッセージは、ユーザが代替手段を利用することで実行可能なことを示し、これにより行動の実行を促すものである。
【0077】
これに対し、上記ステップS207により今実施可能な代替手段がないと判定された場合には、メッセージ生成出力部19は、ステップS209,S210において、メッセージ文・使用履歴記憶部27を参照して過去のメッセージ送信履歴および行動履歴を確認する。そして、予め設定された過去の一定期間内に、メッセージの送信および行動の実行が実施されていなければ、予めメッセージ文・使用履歴記憶部27に記憶しておいた、“阻害要因を無くす方法と阻害要因を悲しむ”旨を含む残念メッセージを読み出す。
【0078】
例えば、「[阻害要因]があれば[ターゲット行動]できたのに、[悲しむ表現]ね」というような穴埋め定型文を選択的に読み出す。そして、取得したシチュエーション情報や事前に用意しておいた「悲しむ表現(“残念だった”、“悲しい”、“がっかり”、“しょんぼりだ”)」を、読み出された上記定型文の穴埋め部分に挿入し、例えば
「ウェアがあれば運動できたのに、残念だったね。」
という代替メッセージを生成する。この代替メッセージは、阻害要因の排除が成立すれば実行できることを示すものである。
【0079】
(9-1-4)生成メッセージの選択
上記ステップS204、S205、S208による第1の肯定メッセージ、第2の肯定メッセージおよび代替メッセージの各生成処理において、メッセージが複数生成されたとする。この場合メッセージ生成出力部19は、ステップS210において、メッセージ文・使用履歴記憶部27を検索して、過去のメッセージ使用履歴から直近の期間における使用履歴がなく使用頻度の最も低いものを1つ選択する。
【0080】
(9-2)「動機要因と阻害要因が混在」の場合
サーバ装置SVは、対象ユーザの行動に影響を及ぼす現在の要因が「動機要因と阻害要因が混在」と判定されると、ステップS19に移行して阻害受容・動機強化メッセージを生成する処理を以下の通り実行する。
図9はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0081】
すなわち、メッセージ生成出力部19は、先ずステップS191において動機要因に関わる過去、現在および未来の各シチュエーション情報(例えば過去の天気情報や天気予報情報)を収集する。そして、ステップS192において、“今”を肯定するレベル(例えばベスト、それ以外:かなり良い)を満足するシチュエーション情報を抽出し、ステップS193において動機要因を肯定し、強化するメッセージを生成する。
【0082】
例えば、メッセージ文・使用履歴記憶部27から予め記憶しておいた、「今日は[“今”を肯定できるレベル][動機要因]ですね」という穴埋め定型文を読み出す。そして、読み出された定型文の穴埋め部分に、上記抽出されたシチュエーション情報を挿入することで、例えば
「今日はかなりいい天気ですね」
という、動機要因の種類と動機要因の肯定の程度による動機要因肯定メッセージを生成する。
【0083】
またメッセージ生成出力部19は、阻害要因に対し、ステップS193において阻害要因を受容するメッセージを生成する。例えば、メッセージ文・使用履歴記憶部27から予め記憶しておいた、「[阻害されている状態]みたいです」という穴埋め定型文を読み出す。そして、読み出された定型文の穴埋め部分に、上記抽出されたシチュエーション情報を挿入することで、例えば
「疲れがたまっているみたいです」
という阻害要因を受容するメッセージを生成する。
【0084】
メッセージ生成出力部19は、最後にステップS194において、メッセージ文・使用履歴記憶部27を検索して、過去のメッセージ使用履歴から直近の期間における使用履歴がなく使用頻度の最も低い動機要因肯定メッセージおよび阻害要因受容メッセージを1つずつ選択する。そして、阻害要因受容メッセージを前に、動機要因肯定メッセージを後にそれぞれ配置することで、1つの組み合わせメッセージ文を編集する。
【0085】
例えば、メッセージ文・使用履歴記憶部27から予め記憶しておいた、「[阻害要因受容メッセージ]が、[動機要因肯定メッセージ]」という穴埋め定型文を読み出す。そして、読み出された定型文の穴埋め部分に、上記抽出されたシチュエーション情報を挿入することで、例えば
「疲れがたまっているみたいですが、今日はかなりいい天気ですね」
という複合メッセージを編集する。
【0086】
(9-3)「動機要因のみ」の場合
サーバ装置SVは、対象ユーザの行動に影響を及ぼす現在の要因が「動機要因のみ」と判定されると、ステップS18に移行して応援メッセージを生成する処理を実行する。
図10はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0087】
すなわち、メッセージ生成出力部19は、ステップS181において、例えば、メッセージ文・使用履歴記憶部27を検索して、過去のメッセージ使用履歴から直近の期間における使用履歴がなく使用頻度の最も低い応援メッセージを1つずつ選択する。例えば、「応援しています」、「きっとできる」、「楽しんでみよう」等の複数のメッセージが使用履歴に存在する場合には、これらのメッセージの中から、直近の使用履歴がなく使用頻度の最も低いメッセージを一つ選択する。
【0088】
(9-4)生成メッセージの送信
以上のように行動支援メッセージの生成が終了すると、メッセージ生成出力部19は、ステップS21において、生成された上記行動支援メッセージを通信I/F3から対象ユーザのユーザ端末MT1~MTnに向け送信する。送信方法としては、例えばメール本文にメッセージを記載する方法や添付する方法が用いられる。
【0089】
ユーザ端末MT1~MTnは、上記行動支援メッセージを受信すると、受信された行動支援メッセージを記憶すると共に、表示部に表示する。なお、行動支援メッセージの取得方法としては、メールによる受信を用いる以外に、ユーザ端末MT1~MTnからがサーバ装置SVにアクセスして自己宛の行動支援メッセージをダウンロードするものであってもよい。
【0090】
(作用効果)
以上述べたように一実施形態では、対象ユーザに係る環境データやスケジュールデータ等のシチュエーション情報を取得して、このシチュエーション情報をもとに対象ユーザの行動に影響を及ぼす動機要因または阻害要因を判定する。そして、動機要因および阻害要因の区分を判定し、その判定結果に応じた行動支援メッセージを生成しユーザ端末MT1~MTnへ送信するようにしている。
【0091】
従って、対象ユーザに対しその動機要因または阻害要因を踏まえた適切なメッセージを提示することが可能となる。
【0092】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記一実施形態に限定されるものではない。例えば、上記一実施形態では、行動支援メッセージ生成装置の機能をWebサーバまたはクラウドサーバ等のサーバ装置SVに設けた場合を例にとって説明したが、行動支援メッセージ生成装置の機能をユーザが使用するスマートフォンやタブレット型端末、パーソナルコンピュータ等のユーザ端末に設けてもよい。
【0093】
また、この発明が対象とする行動変容の種類としては、生活習慣病予防やダイエットのための生活改善ばかりでなく、運動の習慣づけ、食事の習慣づけ、学習の習慣づけ、禁煙のための行動および維持等が考えられる。その他、ユーザの状況の判定に使用するユーザ特徴量の種類、動機・阻害要因の判定に使用するやシチュエーション情報の種類、行動可能性スコアの判定しきい値、表示データの構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0094】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0095】
SV…サーバ装置
MT1~MTn…ユーザ端末
NW…ネットワーク
1…制御部
2…記憶部
3…通信I/F
4…バス
11…ユーザ特徴量取得部
12…シチュエーション情報取得部
13…行動変容ステージ判定部
14…フェーズ判定部
15…動機・阻害要因判定部
16…行動可能性推定部
17…介入適否判定部
18…動機・阻害要因区分判定部
19…メッセージ生成出力部
21…ユーザ特徴量記憶部
22…シチュエーション情報記憶部
23…ステージ判定条件記憶部
24…フェーズ判定条件記憶部
25…動機・阻害要因記憶部
26…判定データ記憶部
27…メッセージ文・使用履歴記憶部