(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】巻取式成膜装置及び真空処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
C23C14/56 B
(21)【出願番号】P 2019075392
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】木本 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】横山 礼寛
(72)【発明者】
【氏名】江平 大
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-053447(JP,A)
【文献】特開2002-367847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C
B32B
B65H 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が第1端と第2端とで構成され、帯状の成膜用フィルムを巻出ローラから繰り出し、巻取ローラに巻き取りながら、前記成膜用フィルムの成膜面に真空処理する巻取式成膜装置であって、
前記成膜用フィルムは、前記成膜面である第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、
前記成膜用フィルムが前記第1端を始点として前記巻取ローラに巻回され始めるときに、前記第2面において、前記第1端から前記巻出ローラまでの長さの1倍以上1.5倍以下の領域であ
り前記第1端を始点とする第1領域の少なくとも一部に対して、前記第1領域以外の表面摩擦係数よりも小さい表面摩擦係数となるように表面処理をする表面処理機構を具備する巻取式成膜装置。
【請求項2】
両端が第1端と第2端とで構成され、帯状の成膜用フィルムを巻出ローラから繰り出し、巻取ローラに巻き取りながら、前記成膜用フィルムの成膜面に真空処理する真空処理方法であって、
前記成膜用フィルムは、前記成膜面である第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、
前記成膜用フィルムが前記第1端を始点として前記巻取ローラに巻回され始めるときに、前記第2面において、前記第1端から前記巻出ローラまでの長さの1倍以上1.5倍以下の領域であ
り前記第1端を始点とする第1領域の少なくとも一部に対して、前記第1領域以外の表面摩擦係数よりも小さい表面摩擦係数となるように表面処理をする真空処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載された真空処理方法であって、
前記成膜用フィルムが前記第2端を始点として前記巻取ローラに巻回され始めるときに、前記第1面において、前記第2端から前記巻出ローラまでの長さの1倍以上1.5倍以下の領域であり前記第2端を始点とする第2領域の少なくとも一部が前記第2領域以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数となるように表面処理をする
真空処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載された真空処理方法であって、
前記第1面において、前記第2領域の少なくとも一部が前記第2領域以外の領域における前記表面摩擦係数よりも小さい表面摩擦係数となるように表面処理をする
真空処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜用フィルム、巻取式成膜装置、及び真空処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻取式成膜装置では、巻出ローラから成膜用フィルム(web)が繰り出され、その成膜面に成膜処理がなされた後、成膜用フィルムが巻取ローラに巻き取られる。但し、成膜用フィルムは、帯状で長尺であるため、巻取ローラに巻き取られる成膜用フィルムに皺が発生する場合がある。
【0003】
このような状況の中、成膜用フィルムに印加される張力、熱等の成膜条件を調整して、成膜用フィルムの皺発生を抑制する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、成膜中に発生する成膜用フィルムの皺発生を成膜条件で抑制しても、成膜用フィルムが巻取ローラに巻き取られる巻取開始時に、成膜用フィルムに既に皺が発生している場合には、続けて巻き取られる成膜用フィルムに該皺が転写される可能性がある。この場合、成膜条件で調整しても、成膜用フィルムに皺が残存することになる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、より確実に皺発生が抑制される成膜用フィルム、巻取式成膜装置、及び真空処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成膜用フィルムは、巻出ローラから繰り出され、成膜面に真空処理がなされ、巻取ローラに巻き取られる帯状の成膜用フィルムである。
上記成膜用フィルムの両端は、第1端と第2端とで構成される。
上記成膜用フィルムが上記巻出ローラ及び上記巻取ローラに支持され、上記成膜用フィルムが上記第1端を始点として上記巻取ローラに巻回され始めるときに、上記第1端から少なくとも上記巻出ローラまでの長さ領域を含む第1領域は、上記第1領域以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数の領域を有する。
【0008】
このような成膜用フィルムであれば、巻取ローラに巻き取られる開始直後に成膜用フィルムが巻取ローラの軸心方向に滑りやすくなり、成膜用フィルムに皺が発生しにくくなる。
【0009】
上記の成膜用フィルムにおいては、上記成膜用フィルムは、上記成膜面である第1面と、上記第1面とは反対側の第2面とを有し、上記第2面において、上記第1領域の少なくとも一部が上記第1領域以外の領域における上記表面摩擦係数よりも小さく構成されてもよい。
【0010】
このような成膜用フィルムであれば、上記第2面において、上記第1領域の少なくとも一部が上記第1領域以外の領域における上記表面摩擦係数よりも小さく構成されているため、巻取ローラに巻き取られる成膜用フィルムに皺が発生しにくくなる。
【0011】
上記の成膜用フィルムにおいては、上記成膜用フィルムが上記第2端を始点として上記巻取ローラに巻回され始めるときに、上記第2端から少なくとも上記巻出ローラまでの長さ領域を含む第2領域は、上記第2領域以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有してもよい。
【0012】
このような成膜用フィルムであれば、上記第2端から少なくとも上記巻出ローラまでの長さ領域を含む第2領域は、上記第2領域以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有しているため、巻取ローラに巻き取られる成膜用フィルムに皺が発生しにくくなる。
【0013】
上記の成膜用フィルムにおいては、上記第1面において、上記第2領域の少なくとも一部が上記第2領域以外の領域における上記表面摩擦係数よりも小さく構成されてもよい。
【0014】
このような成膜用フィルムであれば、上記第1面において、上記第2領域の少なくとも一部が上記第2領域以外の領域における上記表面摩擦係数よりも小さく構成されているため、巻取ローラに巻き取られる成膜用フィルムに皺が発生しにくくなる。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る巻取式成膜装置は、両端が第1端と第2端とで構成され、帯状の成膜用フィルムを巻出ローラから繰り出し、巻取ローラに巻き取りながら、上記成膜用フィルムの成膜面に真空処理する巻取式成膜装置である。
上記の巻取式成膜装置は、上記成膜用フィルムが上記第1端を始点として上記巻取ローラに巻回され始めるときに、上記第1端から少なくとも上記巻出ローラまでの長さ領域を含む第1領域に対して、上記第1領域以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有するように表面処理をする表面処理機構を具備する。
【0016】
このような巻取式成膜装置であれば、巻取ローラに巻き取られる開始直後に成膜用フィルムが巻取ローラの軸心方向に滑りやすくなり、成膜用フィルムに皺が発生しにくくなる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空処理方法は、両端が第1端と第2端とで構成され、帯状の成膜用フィルムを巻出ローラから繰り出し、巻取ローラに巻き取りながら、上記成膜用フィルムの成膜面に真空処理する真空処理方法である。
上記の真空処理方法では、上記成膜用フィルムが上記第1端を始点として上記巻取ローラに巻回され始めるときに、上記第1端から少なくとも上記巻出ローラまでの長さ領域を含む第1領域に対して、上記第1領域以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有するように表面処理がされる。
【0018】
このような真空処理方法であれば、巻取ローラに巻き取られる開始直後に成膜用フィルムが巻取ローラの軸心方向に滑りやすくなり、成膜用フィルムに皺が発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、より確実に皺発生が抑制される成膜用フィルム、巻取式成膜装置、及び真空処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】図(a)は、本実施形態に係る成膜用フィルムの模式的斜視図である。図(b)、(c)は、本実施形態に係る成膜用フィルムが巻出ローラに巻き取られている様子を示す模式的斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る巻取式成膜装置の模式的断面図である。
【
図3】図(a)は、比較例に係る成膜用フィルムが巻取ローラに巻かれ始めた直後の様子を示す模式的斜視図である。図(b)は、本実施形態に係る成膜用フィルムが巻取ローラに巻かれ始めた直後の様子を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0022】
図1(a)は、本実施形態に係る成膜用フィルムの模式的斜視図である。
図1(b)、(c)は、本実施形態に係る成膜用フィルムが巻出ローラに巻き取られている様子を示す模式的斜視図である。
図2は、本実施形態に係る巻取式成膜装置の模式的断面図である。
【0023】
図1(a)、(b)に示す成膜用フィルム100は、巻取式成膜装置1(
図2)に設置される帯状であって長尺のフィルム基材である。成膜用フィルム100としては、金属フィルム、樹脂フィルム、または金属膜がコーティングされた樹脂フィルム等があげられる。
【0024】
成膜用フィルム100の両端は、第1端101と第2端102とで構成される。また、成膜用フィルム100は、真空処理がされる第1面111と、第1面111とは反対側の第2面112とを有する。第1面111は、成膜面である。本実施形態では、第1面111のみが成膜面であるとは限らない。成膜用フィルム100に両面成膜を試みる場合には、第2面112も成膜面になる。
【0025】
成膜用フィルム100は、巻取式成膜装置1内では、巻出ローラ31及び巻取ローラ32に支持される。成膜用フィルム100は、巻出ローラ31から繰り出され、主ローラ10で所定の巻付角度で巻回され、主ローラ10上で、前処理、成膜処理等がなされる。この後、成膜用フィルム100は、巻取ローラ32に巻き取られる。
【0026】
ここで、成膜用フィルム100が第1端101を始点として巻取ローラ32に巻回され始めるときに、成膜用フィルム100における第1端101から少なくとも巻出ローラ31までの長さ領域を含む領域を第1領域110とする。
【0027】
例えば、第1端101から成膜用フィルム100が巻出ローラ31から放れる位置Pまでの領域を通紙領域110aとした場合、第1領域110は、通紙領域110aと、通紙領域110aに連なる連通領域110bとを有する。
【0028】
第1領域110には、選択的な表面処理が施され、成膜用フィルム100においては、第1領域110が第1領域110以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有している。つまり、第1領域110の少なくとも一部と、第1領域110以外とで、表面摩擦係数が異なっている。例えば、第2面112において、第1領域110の少なくとも一部における表面摩擦係数は、第1領域110以外の領域における表面摩擦係数よりも小さく構成されている。
【0029】
また、このような表面摩擦係数が領域によって異なる構成は、第2面112に限らず、第1面111において、第1領域110の少なくとも一部における表面摩擦係数が第1領域110以外の領域における表面摩擦係数よりも小さくてもよい。
【0030】
また、成膜用フィルム100の第1面111に成膜処理がなされて、成膜用フィルム100が巻取ローラ32に巻き終えられた後、成膜用フィルム100の第2面112に成膜を試みる場合は、成膜用フィルム100を巻き取った巻取ローラ32が巻出ローラ31として転用される。
【0031】
例えば、
図1(c)に示すように、第2面112を成膜面として成膜用フィルム100を巻出ローラ31から繰り出す場合は、第2端102を始点として成膜用フィルム100が巻取ローラ32に巻回される。
【0032】
ここで、成膜用フィルム100が第2端102を始点として巻取ローラ32に巻回され始めるときに、成膜用フィルム100における第2端101から少なくとも巻出ローラ31までの長さ領域を含む領域を第2領域120とする。
【0033】
例えば、第2端102から成膜用フィルム100が巻出ローラ31から放れる位置Pまでの領域を通紙領域120aとした場合、第2領域120は、通紙領域120aと、通紙領域120aに連なる連通領域120bとを有する。
【0034】
第2領域110に選択的な表面処理が施され、成膜用フィルム100においては、第2領域120が第2領域120以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有している。つまり、第2領域120の少なくとも一部と、第2領域120以外とで、表面摩擦係数が異なっている。例えば、第1面111において、第2領域120の少なくとも一部における表面摩擦係数は、第2領域120以外の領域における表面摩擦係数よりも小さい。
【0035】
また、このような表面摩擦係数が領域によって異なる構成は、第1面111に限らず、第2面112において、第2領域120の少なくとも一部における表面摩擦係数が第2領域120以外の領域における表面摩擦係数よりも小さくてもよい。
【0036】
成膜用フィルム100において、第1端101から第2端102までの長さをL0とした場合、長さL0は、10m以上10000m以下に構成されている。また、第1領域110の長さL1、または第2領域120の長さL2は、特に限ることなく、例えば、第1端101から巻出ローラ31までの長さ領域の1倍以上1.5倍以下とされてよく、1m以上50m以下である。また、成膜用フィルム100の厚みは、4μm以上数100μm以下である。
【0037】
成膜用フィルム100の材料は、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、ステンレス箔、樹脂フィルムの少なくともいずれかを含む。樹脂としては、PET樹脂、OPP樹脂、CPP樹脂、PE樹脂、PEN樹脂、PI樹脂、PP樹脂等のいずれかを含む。
【0038】
また、通紙領域110aにおいては、第1端101から1m以上20m以下の領域が表面処理されていない未処理領域であってもよい。また、通紙領域120aにおいては、第2端102から1m以上20m以下の領域が表面処理されていない未処理領域であってもよい。このような未処理領域は、巻取ローラ32に成膜用フィルム100を取り付け支持するための係止領域となる。
【0039】
成膜用フィルム100における、第1領域110または第2領域120の表面摩擦係数は、巻取式成膜装置1内に成膜用フィルム100を設置する事前に調整してもよく、後述する巻取式成膜装置1内で、第1領域110または第2領域120の表面摩擦係数を調整する表面処理を行ってもよい。
【0040】
図2に示す巻取式成膜装置1は、真空容器70内で成膜用フィルム100が走行しながら、成膜用フィルム100の成膜面(第1面111または第2面112)に金属膜(例えば、リチウム膜)が形成される成膜装置である。巻取式成膜装置1は、例えば、主ローラ10と、成膜源20と、フィルム走行機構30と、仕切板40と、表面処理機構60と、真空容器70とを具備する。
【0041】
主ローラ10は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属製の筒状ローラである。主ローラ10は、中心軸C1を中心に回転する。主ローラ10は、成膜用フィルム100と、成膜源20との間に配置される。主ローラ10の直径は、特に限定されることなく、巻出ローラ31及び巻取ローラ32のそれぞれの直径よりも小さく構成されている。
【0042】
巻取式成膜装置1の外部には、主ローラ10を回転駆動させる回転駆動機構が設けられている。あるいは、主ローラ10が回転駆動機構を有してもよい。あるいは、主ローラ10は、回転駆動機構によって回転されず、中心軸10cを中心に自由に回転するローラであってもよい。主ローラ10においては、その外周面10sがローラ面となり、外周面10sが成膜用フィルム100の成膜面とは反対側の成膜用フィルム100の面に当接する。
【0043】
成膜用フィルム100が矢印Aの方向に走行しているとき、例えば、成膜用フィルム100に接する主ローラ10は、反時計回りに回転する。このとき、外周面10sが中心軸10cを中心に動く速度(接線速度)は、例えば、成膜用フィルム100の走行速度と同じ速度に設定される。これにより、成膜用フィルム100の走行中には、外周面10sと成膜用フィルム100との間でずれが起きにくく、成膜面に安定して膜を形成することができる。
【0044】
本実施形態においては、主ローラ10の内部には、外周面10sの温度を調節する温調媒体循環系等の温調機構が設けられてもよい。温調機構は、例えば、温調媒体循環系等の温調機構である。
【0045】
成膜源20は、溶融容器21(坩堝)と、天板22と、噴出ノズル23とを有する。成膜源20は、主ローラ10の外周面10sに対向する。溶融容器21には、例えば、リチウム(Li)等の蒸着材料25が収容される。蒸着材料25は、例えば、溶融容器21内において抵抗加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱等の手法によって溶融される。
【0046】
フィルム走行機構30は、巻出ローラ31と、巻取ローラ32と、ガイドローラ33a、33b、33c、33dとを有する。巻出ローラ31及び巻取ローラ32のそれぞれの直径は、特に限定されることなく、ガイドローラ33a、33b、33c、33dの直径よりも小さく構成されている。巻取式成膜装置1の外部には、巻出ローラ31及び巻取ローラ32を回転駆動させる回転駆動機構が設けられている。あるいは、巻出ローラ31及び巻取ローラ32のそれぞれが回転駆動機構を有してもよい。
【0047】
成膜用フィルム100は、予め巻出ローラ31に巻かれ、巻出ローラ31から繰り出される。この後、成膜用フィルム100には、成膜処理が施され、成膜用フィルム100は、巻取ローラ32によって巻き取られる。
【0048】
例えば、巻出ローラ31から連続的に繰り出された成膜用フィルム100は、走行中にガイドローラ33a、33bによって支持されつつ、ガイドローラ33a、33bのそれぞれによって走行方向が変えられ、主ローラ10に巻回される。
【0049】
主ローラ10に巻回された成膜用フィルム100は、主ローラ10の外周面10sに接触しながら、主ローラ10によって支持されて、ガイドローラ33cに導かれる。
【0050】
主ローラ10の外周面10sから離れた成膜用フィルム100は、走行中にガイドローラ33c、33dに支持されつつ、ガイドローラ33c、33dのそれぞれによって走行方向が変えられ、巻取ローラ32に連続的に巻き取られる。
【0051】
仕切板40は、成膜源20と主ローラ10との間に配置される。仕切板40には、成膜源20を主ローラ10の外周面10sに向けて開口する開口41が設けられている。
【0052】
表面処理機構60は、成膜用フィルム100の第1領域110に対して、第1領域110以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有するように表面処理をする。または、表面処理機構60は、成膜用フィルム100の第2領域120に対して、第2領域120以外の表面摩擦係数とは異なる表面摩擦係数を有するように表面処理をする。
【0053】
例えば、表面処理としては、第1領域110または第2領域120の表面摩擦係数を選択的に減少する処理があげられる。例えば、成膜用フィルム100を走行させながら、表面処理機構60が第1領域110または第2領域120に対してコーティング剤の噴霧、プラズマクリーニング処理等を行う。コーティング剤としては、一例として、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア等の無機フィラーが含まれた樹脂コート(例えば、アクリル系樹脂)を用いる。
【0054】
例えば、表面摩擦係数の調整は、一例として、成膜用フィルム100の表面粗さによって調整される。第1領域110以外の領域または第2領域120以外の領域の算術平均粗さRaが10nm以上500nm以下であるのに対し、第1領域110または第2領域120の算術平均粗さRaは、1000nm以上5000nm以下に調整される。
【0055】
真空容器70は、主ローラ10、成膜源20、フィルム走行機構30、仕切板40、表面処理機構60、及び成膜用フィルム100等を収容する。真空容器70は、減圧状態を維持することができ、例えば、真空ポンプ等の真空排気系(不図示)に接続された排気管71を通じて、その内部が所定の真空度に維持される。
【0056】
または、真空容器70内には、ガス供給機構72によって乾燥空気、不活性ガス(Ar、He等)、二酸化炭素(CO2)、窒素等の少なくともいずれかのガスが供給されてもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、リチウム以外に、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)等の少なくともいずれかが溶融容器21内に収容されてもよい。
【0058】
[作用]
【0059】
図3(a)は、比較例に係る成膜用フィルムが巻取ローラに巻かれ始めた直後の様子を示す模式的斜視図である。
図3(b)は、本実施形態に係る成膜用フィルムが巻取ローラに巻かれ始めた直後の様子を示す模式的斜視図である。
【0060】
図3(a)に示す成膜用フィルム100は、第1領域110及び第2領域120を有していない。このため、成膜用フィルム100が巻取ローラ32に巻かれ始めると、成膜用フィルム100は、例えば、軸心32cの方向に逃げることができず、巻取ローラ32上で成膜用フィルム100に皺130が発生する可能性がある。
【0061】
従って、この状態で成膜用フィルム100への成膜処理を続けると、皺130の上に巻回される成膜用フィルム100にも皺130が転写される可能性がある。
【0062】
これに対して、
図3(b)に示す本実施形態では、成膜用フィルム100が第1領域110または第2領域120を有している。このため、成膜用フィルム100が巻取ローラ32に巻かれ始めると、例えば、成膜用フィルム100が軸心32cの方向に容易に逃げることができ、巻取ローラ32上で成膜用フィルム100に皺130が発生しにくい。
【0063】
従って、この状態で成膜用フィルム100への成膜処理を続けても、皺130の上に巻回される成膜用フィルム100に皺130は転写されず、巻取ローラ32に巻回される成膜用フィルム100に皺が発生しにくくなる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…巻取式成膜装置
10…主ローラ
10s…外周面
10c…中心軸
20…成膜源
21…溶融容器
22…天板
23…噴出ノズル
25…蒸着材料
30…フィルム走行機構
31…巻出ローラ
32…巻取ローラ
32c…軸心
33a、33b、33c、33d…ガイドローラ
40…仕切板
41…開口
60…表面処理機構
70…真空容器
71…排気管
72…ガス供給機構
100…成膜用フィルム
101…第1端
102…第2端
110…第1領域
120…第2領域
110a、120a…通紙領域
110b、120b…連通領域
111…第1面
112…第2面
130…皺