(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20230926BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230926BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20230926BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B24B27/06 J
H01L21/78 F
B24B47/22
B24B49/12
(21)【出願番号】P 2019163649
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 信
(72)【発明者】
【氏名】羽田 舞
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-177973(JP,A)
【文献】特開2001-332515(JP,A)
【文献】特開平8-52733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
H01L 21/301
B24B 47/22
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドル、および、該スピンドルに装着され環状の刃先を外周に備えた切削ブレードを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段と、
該切削手段を該保持面に垂直な上下方向に移動させる切り込み送り手段と、
該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に該保持面に平行な水平方向に移動させる加工送り手段と、
該保持面に該切削ブレードの該刃先が接触するときの該切削ブレードの高さを認識する高さ認識手段と、を備え、
該高さ認識手段は、
該スピンドルに装着された該切削ブレードの一方の面を該一方の面側の上方から照らし、該保持面に該切削ブレードの影を映し出させる光源と、
該切削ブレードの他方の面側から、該刃先および該保持面を撮像エリアに入れて撮像するカメラと、
該切り込み送り手段によって、該切削ブレードが、該保持面に接近する方向に移動され、該カメラによって撮像される画像において該刃先と該保持面に映し出された該切削ブレードの影とが互いに接触したときの該切削ブレードの高さを記憶する高さ記憶部と、
該高さ記憶部によって記憶された該切削ブレードの高さから補正値を差し引くことによって、該切削ブレードの該刃先が該保持面に接触するときの該切削ブレードの高さを算出する高さ算出部と、を備える、
切削装置。
【請求項2】
該高さ認識手段は、該保持面に対する該光源の角度である第1角度と、該保持面に対する該カメラの角度である第2角度とに基づいて、該補正値を算出する補正値算出部をさらに備える、
請求項1記載の切削装置。
【請求項3】
該第1角度および該第2角度が45度であり、
該補正値算出部は、該切削ブレードの厚みの半分を該補正値として算出する、
請求項2記載の切削装置。
【請求項4】
該スピンドルに装着された該切削ブレードは、該刃先がV字で形成される、
請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削ブレードで被加工物を切削する切削装置では、特許文献1に開示のように、切削ブレードの初期高さが検知および認識される。この切削ブレードの初期高さは、被加工物を保持するチャックテーブルの保持面に切削ブレードの先端が接触するときの、切削ブレードの高さ、である。このように認識された切削ブレードの初期高さを用いて、切削ブレードを被加工物に切り込ませる切り込み量が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の技術では、切削ブレードの初期高さの認識の際に、保持面に、切削ブレードの先端が接触する。このため、切削ブレードによって保持面が傷つけられる可能性がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、保持面を傷つけることを抑制しながら、保持面に切削ブレードの先端が接触したときの切削ブレードの高さである切削ブレードの初期高さを認識することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切削装置(本切削装置)は、保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドル、および、該スピンドルに装着され環状の刃先を外周に備えた切削ブレードを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段と、該切削手段を該保持面に垂直な上下方向に移動させる切り込み送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に該保持面に平行な水平方向に移動させる加工送り手段と、該保持面に該切削ブレードの該刃先が接触するときの該切削ブレードの高さを認識する高さ認識手段と、を備え、該高さ認識手段は、該スピンドルに装着された該切削ブレードの一方の面を該一方の面側の上方から照らし、該保持面に該切削ブレードの影を映し出させる光源と、該切削ブレードの他方の面側から、該刃先および該保持面を撮像エリアに入れて撮像するカメラと、該切り込み送り手段によって、該切削ブレードが、該保持面に接近する方向に移動され、該カメラによって撮像される画像において該刃先と該保持面に映し出された該切削ブレードの影とが互いに接触したときの該切削ブレードの高さを記憶する高さ記憶部と、該高さ記憶部によって記憶された該切削ブレードの高さから補正値を差し引くことによって、該切削ブレードの該刃先が該保持面に接触するときの該切削ブレードの高さを算出する高さ算出部と、を備える。
切削装置。
【0007】
また、本切削装置では、該高さ認識手段は、該保持面に対する該光源の角度である第1角度と、該保持面に対する該カメラの角度である第2角度とに基づいて、該補正値を算出する補正値算出部をさらに備えてもよい。
【0008】
また、本切削装置では、該第1角度および該第2角度が45度であり、該補正値算出部は、該切削ブレードの厚みの半分を該補正値として算出してもよい。
【0009】
また、該スピンドルに装着された該切削ブレードは、該刃先がV字で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本切削装置では、カメラによって得られる画像上で、切削ブレードと保持面に映し出される切削ブレードの影とが接触したときの、切削ブレードの高さを求める。さらに、この高さから補正値を差し引くことによって、切削ブレードの刃先が保持面に接触するときの切削ブレードの高さ(初期高さ)を求めている。このように、切削ブレードの初期高さを求める際、本実施形態では、切削ブレードを保持面に接触させないため、保持面が切削ブレードによって傷つけられることを抑制することができる。
【0011】
また、切削ブレードと保持面とを接触させる従来の構成では、接触を検知するために、切削ブレードおよび保持面を、導電材料から構成している。これに関し、本切削装置では、切削ブレードと保持面とを接触させる必要がないので、切削ブレードおよび保持面の材料として、導電材料以外の材料を選択することができる。
【0012】
また、本切削装置では、補正値算出部は、チャックテーブルの保持面に対する光源の角度である第1角度と、保持面に対するカメラの角度である第2角度とに基づいて、補正値を算出することができる。これにより、補正値算出部は、補正値を容易に算出することができる。
【0013】
また、本切削装置では、第1角度および第2角度が45度である場合、補正値算出部は、切削ブレードの厚みの半分を補正値として算出することができる。このように、第1角度および第2角度が45度である場合、補正値をさらに容易に算出することが可能となる。
【0014】
該スピンドルに装着された該切削ブレードは、該刃先がV字で形成されていてもよい。この場合でも、たとえば、第1角度および第2角度を、切削ブレードの刃先のV字形状に合わせて設定することにより、切削ブレードの初期高さを良好に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】被加工物の一例であるウェーハを示す斜視図である。
【
図3】切削装置における切削手段の構成を示す説明図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、切削ブレードの初期高さの認識動作に関する説明図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、切削ブレードの初期高さの認識動作に関する説明図である。
【
図6】切削ブレードおよびチャックテーブルにおけるYZ平面に沿う切断面を示す説明図である。
【
図7】切削ブレードおよびチャックテーブルにおけるYZ平面に沿う切断面を示す説明図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、V字の刃先を有する切削ブレードの初期高さの認識動作に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すウェーハWは、被加工物の一例であり、たとえば、円板状の半導体ウェーハである。ウェーハWの表面Waには、格子状の分割予定ラインNが形成されている。分割予定ラインNによって区画された各領域には、デバイスDが形成されている。ウェーハWの裏面Wbは、デバイスDを有しておらず、研削砥石などによって研削される被研削面である。
【0017】
図2に示す切削装置1は、このようなウェーハWに対して、切削加工を実施する。切削装置1は、チャックテーブル30の保持面300に保持されたウェーハWに対して、切削手段6に備えられる切削ブレード63を回転させ切り込ませて、切削加工を施す装置である。
【0018】
切削装置1による切削加工は、たとえば、ウェーハWのエッジWEの表面Wa側を除去するエッジトリミング加工、あるいは、ウェーハWを分割予定ラインNに沿って分割することによってチップを形成するダイシング加工である。
【0019】
切削装置1は、基台10、基台10に立設された門型コラム14、および、切削装置1の各部材を制御する制御部7を備えている。
【0020】
基台10上には、X軸方向送り手段11が配設されている。X軸方向送り手段11は、加工送り手段であり、チャックテーブル30と切削手段6とを、相対的に、チャックテーブル30の保持面300に平行な水平方向(加工送り方向;X軸方向)に沿って移動させる。
【0021】
X軸方向送り手段11は、X軸方向に延びる一対のガイドレール111、ガイドレール111に載置されたX軸テーブル113、ガイドレール111と平行に延びるボールネジ110、および、ボールネジ110を回転させるモータ112を含んでいる。
【0022】
一対のガイドレール111は、X軸方向に平行に、基台10の上面に配置されている。X軸テーブル113は、一対のガイドレール111上に、これらのガイドレール111に沿ってスライド可能に設置されている。X軸テーブル113上には、保持部3が載置されている。
【0023】
ボールネジ110は、X軸テーブル113の下面側に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ112は、ボールネジ110の一端部に連結されており、ボールネジ110を回転駆動する。ボールネジ110が回転駆動されることで、X軸テーブル113および保持部3が、ガイドレール111に沿って、加工送り方向であるX軸方向に沿って移動する。
【0024】
保持部3は、ウェーハWを保持するチャックテーブル30を有している。さらに、保持部3は、チャックテーブル30を支持して回転させるθテーブル31を有している。
【0025】
チャックテーブル30は、
図1に示したウェーハWを吸着保持するための部材であり、円板状に形成されている。チャックテーブル30は、ポーラス材を含む保持面300を備えている。保持面300は、図示しない吸引源に連通されている。チャックテーブル30は、この保持面300によって、ウェーハWを吸引保持する。
【0026】
チャックテーブル30は、チャックテーブル30の底面側に配設されたθテーブル31に支持されている。θテーブル31は、X軸テーブル113の上面に、XY平面内で回転可能に設けられている。したがって、θテーブル31は、チャックテーブル30を支持するとともに、チャックテーブル30をXY平面内で回転駆動することができる。
【0027】
基台10上の後方側(-X方向側)には、門型コラム14が、X軸方向送り手段11を跨ぐように立設されている。門型コラム14の前面(+X方向側の面)には、切削手段6を移動させる切削手段移動機構13が設けられている。切削手段移動機構13は、切削手段6を、Y軸方向にインデックス送りするとともに、Z軸方向に切込み送りする。切削手段移動機構13は、切削手段6をインデックス送り方向(Y軸方向)に移動するY軸方向移動手段12、および、切削手段6を切込み送り方向(Z軸方向)に移動するZ軸方向移動手段16を備えている。
【0028】
Y軸方向移動手段12は、インデックス送り手段であり、門型コラム14の前面に配設されている。Y軸方向移動手段12は、Y軸方向に、Z軸方向移動手段16および切削手段6を往復移動させる。
【0029】
Y軸方向移動手段12は、Y軸方向に延びる一対のガイドレール121、ガイドレール121に載置されたY軸テーブル123、ガイドレール121と平行に延びるボールネジ120、および、ボールネジ120を回転させるモータ122を含んでいる。
【0030】
一対のガイドレール121は、Y軸方向に平行に、門型コラム14の前面に配置されている。Y軸テーブル123は、一対のガイドレール121上に、これらのガイドレール121に沿ってスライド可能に設置されている。Y軸テーブル123上には、Z軸方向移動手段16および切削手段6が取り付けられている。
【0031】
ボールネジ120は、Y軸テーブル123の背面側に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ122は、ボールネジ120の一端部に連結されており、ボールネジ120を回転駆動する。ボールネジ120が回転駆動されることで、Y軸テーブル123、Z軸方向移動手段16および切削手段6が、ガイドレール121に沿って、インデックス送り方向であるY軸方向に移動する。
【0032】
Z軸方向移動手段16は、切り込み送り手段であり、切削手段6をZ軸方向(上下方向)に往復移動させる。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交するとともに、チャックテーブル30の保持面300に対して直交する方向である。
【0033】
Z軸方向移動手段16は、Z軸方向に延びる一対のガイドレール161、ガイドレール161に載置された支持部材163、ガイドレール161と平行に延びるボールネジ160、および、ボールネジ160を回転させるモータ162を含んでいる。
【0034】
一対のガイドレール161は、Z軸方向に平行に、Y軸テーブル123に配置されている。支持部材163は、一対のガイドレール161上に、これらのガイドレール161に沿ってスライド可能に設置されている。支持部材163の下端部には、切削手段6が取り付けられている。
【0035】
ボールネジ160は、支持部材163の背面側に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ162は、ボールネジ160の一端部に連結されており、ボールネジ160を回転駆動する。ボールネジ160が回転駆動されることで、支持部材163および切削手段6が、ガイドレール161に沿って、切込み送り方向であるZ軸方向に移動する。
【0036】
切削手段6は、チャックテーブル30に保持されたウェーハWを切削する。切削手段6は、支持部材163の下端に設けられたハウジング61を備えている。さらに、切削手段6は、
図3に示すように、Y軸方向に延びるスピンドル60、スピンドル60に装着される切削ブレード63、スピンドル60を駆動するモータ(図示せず)、および、切削ブレード63を囲むブレードカバー64を備えている。
【0037】
切削ブレード63は、環状の刃先(切り刃)63aを外周に有する、円環状のブレードである。切削ブレード63の中心には、スピンドル60の先端が挿入および固定されている。刃先63aは、たとえば、ダイヤモンド砥粒等を適宜のバインダーにより固定することで形成されている。
【0038】
スピンドル60は、ハウジング61によって回転可能に支持されている。モータがスピンドル60を高速で回転駆動することにより、切削ブレード63も高速回転する。切削装置1では、高速回転する切削ブレード63により、ウェーハWに対する切削加工が実施される。
【0039】
ブレードカバー64は、ブレードカバー基部64aを介して、ハウジング61に支持されている。ブレードカバー64の+X方向側の側面には、第1ノズル支持ブロック614が設けられている。第1ノズル支持ブロック614には、切削ブレード63に向かって切削水を噴射するシャワーノズル651、および、切削ブレード63とウェーハWとの接触部位(加工点)に向かって斜め上方から切削水を噴射する切削水ノズル652が配設されている。
【0040】
ブレードカバー64の-X方向側の側面には、第2ノズル支持ブロック615が設けられている。第2ノズル支持ブロック615は、-Y方向側から見て略L字形状の、一対のブレード冷却ノズル653を支持している。ブレード冷却ノズル653は、切削ブレード63を冷却および洗浄するための洗浄水を切削ブレード63に供給する。このブレード冷却ノズル653、ならびに、上述したシャワーノズル651および切削水ノズル652には、図示しない水供給源が連結されている。
【0041】
ハウジング61の+X方向側の側面には、撮像手段68が設けられている。撮像手段68は、たとえば、チャックテーブル30の保持面300に保持されたウェーハWと切削手段6との位置合わせに用いられる。
【0042】
ブレードカバー64における-Y方向側の側面には、カメラ支持部材67が取り付けられている。そして、カメラ支持部材67の先端には、カメラ66が取り付けられている。このカメラ66は、切削ブレード63における-Y方向側に配置されている。
一方、切削ブレード63における+Y方向側には、図示しない支持部材を介して、光源65が配置されている。
【0043】
カメラ66および光源65は、切削手段6の一部であり、切削ブレード63とともに、Y軸方向移動手段12およびZ軸方向移動手段16によって、Y軸方向およびZ軸方向に移動する。
【0044】
図2に示す制御部7は、各種の処理を実行し、切削装置1の各構成要素を統括制御する。
たとえば、制御部7には、各種検出器(図示せず)からの検出結果が入力される。さらに、制御部7は、X軸方向送り手段11、Y軸方向移動手段12、および切削手段移動機構13を制御して、ウェーハWに対する切削手段6の切削ブレード63の位置を定める。また、制御部7は、切削手段6を制御して、ウェーハWに対する切削加工を実施する。
【0045】
さらに、制御部7は、切削ブレード63の高さを記憶する高さ記憶部71、切削ブレード63の初期高さを算出する高さ算出部73、および、高さ算出部73による算出に用いられる補正値を算出する補正値算出部75を備えている。
【0046】
切削ブレード63の初期高さは、切削ブレード63の刃先63aがチャックテーブル30の保持面300に接触するときの、切削ブレード63の高さである。
なお、切削ブレード63の高さは、たとえば、切削装置1の基準位置(たとえば、X軸テーブル113の上面、あるいは、基台10の上面)から切削ブレード63の刃先63aまでの高さである。
【0047】
なお、切削装置1では、光源65、カメラ66、高さ記憶部71、高さ算出部73および補正値算出部75が、切削ブレード63の初期高さを認識する部材である高さ認識手段を構成している。
【0048】
以下に、切削装置1における切削ブレード63の初期高さの認識動作について説明する。
【0049】
切削ブレード63の初期高さを認識する際、制御部7は、X軸方向送り手段11およびY軸方向移動手段12を制御して、
図4(a)に示すように、切削ブレード63の下方にチャックテーブル30の保持面300が位置するように、切削手段6(切削ブレード63)の位置を調整する。
【0050】
その後、制御部7は、光源65を点灯して切削ブレード63に光を照射するとともに、カメラ66によって、保持面300における切削ブレード63の下方に位置する部分を撮像する。
【0051】
なお、
図4(a)に示すように、光源65は、切削ブレード63の一方の面(+Y側の面)を、該一方の面側の上方から照らし、切削ブレード63の下方に位置する保持面300に、切削ブレード63の影63sを映し出させる。
【0052】
また、カメラ66は、初期高さの認識動作中においては、切削ブレード63の刃先63a、および、切削ブレード63の下方に位置する保持面300を、その撮像エリアに入れて、撮像を実施する。
【0053】
なお、
図4(a)に示すように、本実施形態では、保持面300に対する光源65の角度、すなわち、保持面300に対する光源65の光路L1の角度(第1角度)が、60度となるように、切削ブレード63の+Y側に光源65が配置されている。なお、光路L1は、光源65から切削ブレード63の先端付近に照射される光の経路である。
また、保持面300に対するカメラ66の角度、すなわち、保持面300に対するカメラ66の光路L2の角度(第2角度)が、45度となるように、切削ブレード63の-Y側にカメラ66が配置されている。なお、光路L2は、切削ブレード63の先端付近を通過してカメラ66の撮像素子に入射される光の経路である。
【0054】
次に、制御部7は、Z軸方向移動手段16を制御して、切削手段6(切削ブレード63)を、保持面300に接近する方向に移動(下降)する。
図4(b)に示すように、切削ブレード63の下降の開始時には、カメラ66によって得られる画像Gには、切削ブレード63の刃先63aと、保持面300に映し出された切削ブレード63の影63sとが、互いに離れた状態で含まれる。
【0055】
その後、
図5(a)に示すように、切削ブレード63の刃先63aがチャックテーブル30の保持面300に近づくと、やがて、
図5(b)に示すように、カメラ66によって得られる画像Gにおいて、切削ブレード63の刃先63aと、保持面300に映し出された切削ブレード63の影63sとが、互いに接触する。
【0056】
このとき、制御部7は、Z軸方向移動手段16による切削ブレード63の下降を停止する。また、制御部7の高さ記憶部71は、切削ブレード63の刃先63aとその影63sとが互いに接触したときの切削ブレード63の高さを記憶する。
【0057】
さらに、制御部7の高さ算出部73は、高さ記憶部71によって記憶された切削ブレード63の高さから補正値を差し引くことによって、切削ブレード63の初期高さ、すなわち、切削ブレード63の刃先63aが保持面300に接触するときの切削ブレード63の高さを算出する。
【0058】
また、
図5(a)に示すように、この補正値Vは、画像Gにおいて切削ブレード63の刃先63aとその影63sとが互いに接触したときの、切削ブレード63の刃先63aと保持面300との間の現実の距離である。この補正値Vは、制御部7の補正値算出部75によって算出される。
【0059】
補正値算出部75は、光源65の保持面300に対する角度である第1角度と、カメラ66の保持面300に対する角度である第2の角度とに基づいて、補正値を算出する。
図4(a)および
図5(a)に示した例では、第1角度は60度であり、第2角度は45度である。
【0060】
以下に、この場合の補正値の算出方法について説明する。
図6に、画像Gにおいて切削ブレード63の刃先63aとその影63sとが互いに接触したときの、切削ブレード63およびチャックテーブル30におけるYZ平面に沿う切断面を示す。
この
図6に示すように、光源65の光路L1およびカメラ66の光路L2は、切削ブレード63の下方の保持面300上で交差する。このため、光路L1、光路L2、直線Pおよび直線Qにより、第1の三角形R1および第2の三角形R2が形成される。
【0061】
なお、直線Pは、切削ブレード63の刃先63aの先端の断面に応じた直線であり、切削ブレード63の厚み方向(Y軸方向)に沿う。
直線Qは、光路L1と光路L2との保持面300上の交点Mから延びて、直線Pと直交する直線である。
【0062】
直線Pの長さは、切削ブレード63の厚みTに対応する。また、直線Qの長さは、補正値Vに対応する。また、直線Pにおける第1の三角形R1をなす部分の長さをT1とし、直線Pにおける第2の三角形R2をなす部分の長さをT2とする(T=T1+T2)。
【0063】
この場合、第1の三角形R1に関して以下の(1)式が成立し、第2の三角形R2に関して以下の(2)式が成立する。
√3×T1=V …(1)
T2=V …(2)
したがって、以下の(3)および(4)式が得られる。
T=T1+T2=V(1+1/√3) …(3)
V=T/(1+1/√3) …(4)
たとえば、切削ブレード63の厚みTが200μmである場合には、補正値算出部75は、補正値Vを、以下のように算出する。
200μm/(1+1/√3)~126.795μm
【0064】
また、光源65の保持面300に対する角度である第1角度と、カメラ66の保持面300に対する角度である第2の角度とが、ともに45度である場合もある。この場合、
図7に示すように、光路L1、光路L2、直線Pおよび直線Qにより、第3の三角形R3および第4の三角形R4が形成される。この場合、第3の三角形R3および第4の三角形R4は、互いに等しい形状である(向きは異なる)。
【0065】
直線Pにおける第3の三角形R3をなす部分の長さをT3とし、直線Pにおける第4の三角形R4をなす部分の長さをT4とする(T=T3+T4、かつ、T3=T4)。
【0066】
この場合、第3の三角形R3および第4の三角形R4に関して以下の(5)式が成立する。
V=T3=T4=T/2…(5)
したがって、たとえば、切削ブレード63の厚みTが200μmである場合には、補正値算出部75は、切削ブレード63の厚みTの半分(100μm)を補正値Vとして算出する。
なお、もっとも厚みの薄い切削ブレードの厚みは、15μmである。このもっとも薄い切削ブレードの補正値Vは、7.5μmとなる。
【0067】
以上のように、本実施形態では、カメラ66によって得られる画像G上で、切削ブレード63と保持面300に映し出される切削ブレード63の影63sとが接触したときの、切削ブレード63の高さを求める。この高さから補正値を差し引くことによって、切削ブレード63の初期高さを求めている。このように、切削ブレード63の初期高さを求める際、本実施形態では、切削ブレード63を保持面300に接触させないため、保持面300が切削ブレード63によって傷つけられることを抑制することができる。
【0068】
また、切削ブレード63と保持面300とを接触させる従来の構成では、接触を検知するために、切削ブレード63および保持面300を、導電材料から構成している。これに関し、本実施形態では、切削ブレード63と保持面300とを接触させる必要がないので、切削ブレード63および保持面300の材料として、導電材料以外の材料を選択することができる。
【0069】
また、本実施形態では、補正値算出部75は、チャックテーブル30の保持面300に対する光源65の角度である第1角度と、保持面300に対するカメラ66の角度である第2角度とに基づいて、補正値を算出している。これにより、補正値算出部75は、補正値を容易に算出することができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1角度および第2角度が45度である場合、補正値算出部75は、切削ブレード63の厚みの半分を補正値として算出する。このように、第1角度および第2角度が45度である場合、補正値をさらに容易に算出することができる。
【0071】
また、刃先(先端)63aがV字に形成されている切削ブレード63の場合には、刃先63aのV字形状に合わせて、
図8(a)のように、カメラ66と光源65とを傾け保持面300を介して対向させるとよい。
つまり、たとえば、
図8(a)に示すように、刃先63aが45度でV字を形成している切削ブレード63の場合は、第1角度および第2角度を45度にするとよい。
【0072】
これにより、切削ブレード63の刃先63aを、良好に検知することができる。すなわち、
図8(b)に示すように、カメラ66によって得られる画像Gに、切削ブレード63のV字の刃先63aと、保持面300に映し出された切削ブレード63(刃先63a)の影63sとを含めることができる。したがって、切削ブレード63がV字形状の刃先63aを有する場合でも、切削ブレード63の初期高さを良好に求めることが可能となる。
【0073】
なお、本実施形態では、光源65、カメラ66、高さ記憶部71、高さ算出部73および補正値算出部75が、切削ブレード63の初期高さを認識する高さ認識手段を構成している。これに関し、高さ算出部73が補正値を予め認識している場合には、高さ認識手段は、補正値算出部75を含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:切削装置、
3:保持部、30:チャックテーブル、300:保持面、
11:X軸方向送り手段、12:Y軸方向移動手段、16:Z軸方向移動手段、
6:切削手段、60:スピンドル、63:切削ブレード、63a:刃先、
T:切削ブレードの厚み、63s:切削ブレードの影、
65:光源、L1:光源の光路、66:カメラ、L2:カメラの光路、G:画像、
7:制御部、71:高さ記憶部、73:高さ算出部、75:補正値算出部、
W:ウェーハ、N:分割予定ライン、D:デバイス