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  • 特許-ウエーハの加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230926BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20230926BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L21/78 M
B24B7/04 A
B24B27/06 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019167984
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021048150
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100543(JP,A)
【文献】特開2017-050536(JP,A)
【文献】特開2019-110198(JP,A)
【文献】特開2019-096811(JP,A)
【文献】特開2004-079597(JP,A)
【文献】特開2004-256595(JP,A)
【文献】特開2004-319829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 7/04
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を配設し研削装置のチャックテーブルでウエーハを保持してウエーハの裏面を研削する研削工程と、
該研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハの裏面に、粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設して加熱すると共に押圧して熱圧着シートをウエーハの裏面に圧着する熱圧着工程と、
ウエーハの表面に切削ブレードを位置づけて分割予定ラインを切削して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
から少なくとも構成され
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シートのうち、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートまたはポリスチレンシートのいずれかであるウエーハの加工方法。
【請求項2】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を配設し研削装置のチャックテーブルでウエーハを保持してウエーハの裏面を研削する研削工程と、
該研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハの裏面に、粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設して加熱すると共に押圧して熱圧着シートをウエーハの裏面に圧着する熱圧着工程と、
ウエーハの表面に切削ブレードを位置づけて分割予定ラインを切削して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
から少なくとも構成され
該熱圧着シートは、ポリエステル系シートのうち、ポリエチレンテレフタレートシートまたはポリエチレンナフタレートシートのいずれかであるウエーハの加工方法。
【請求項3】
該分割工程の前に該保護部材をウエーハの表面から剥離する請求項1または2記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該熱圧着工程における該熱圧着シートの加熱温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンシートの場合には120℃~140℃であり、該熱圧着シートが該ポリプロピレンシートの場合には160℃~180℃であり、該熱圧着シートが該ポリスチレンシートの場合には220℃~240℃である請求項記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該熱圧着工程における該熱圧着シートの加熱温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンテレフタレートシートの場合には250℃~270℃であり、該熱圧着シートが該ポリエチレンナフタレートシートの場合には160℃~180℃である請求項記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所望の厚みに形成された後、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハの裏面には、ウエーハがダイシング装置に搬送される前に紫外線硬化型の粘着層を有するダイシングテープが貼着され、ダイシングテープの周縁は、ウエーハを収容する開口部を有するフレームに貼着される。これによってウエーハは、ダイシングテープを介してフレームに支持される(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
そして、フレームに支持されたウエーハは、ダイシング装置のチャックテーブルに保持され、回転する切削ブレードによって個々のデバイスチップに分割される。
【0005】
その後、ダイシングテープに紫外線が照射され、粘着層の硬化によって粘着力が低下したダイシングテープからデバイスチップがピックアップされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-330011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、デバイスチップの大きさが1mm角以下(たとえば0.03mm角、厚み0.02mm)と小さいと、ウエーハをダイシングする際にデバイスチップがダイシングテープの粘着層上で動いてしまい、デバイスチップの外周に欠けが生じて品質が低下するという問題がある。
【0008】
また、ダイシングテープに紫外線を僅かに照射して粘着層を硬化させるとダイシングテープの粘着層上でのデバイスチップの動きを抑制できるものの、粘着力の低下によってダイシングテープの粘着層からデバイスチップが剥離して飛散するという問題がある。
【0009】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、ウエーハをダイシングする際にデバイスチップが飛散するのを防止することができ、かつデバイスチップの品質の低下を防止することができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために以下のウエーハの加工方法を提供する。すなわち、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護部材を配設し研削装置のチャックテーブルでウエーハを保持してウエーハの裏面を研削する研削工程と、該研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハの裏面に、粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設して加熱すると共に押圧して熱圧着シートをウエーハの裏面に圧着する熱圧着工程と、ウエーハの表面に切削ブレードを位置づけて分割予定ラインを切削して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、から少なくとも構成され、該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シートのうち、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートまたはポリスチレンシートのいずれかであるウエーハの加工方法を本発明は提供する。
また、本発明は上記課題を解決するために以下のウエーハの加工方法を提供する。すなわち、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護部材を配設し研削装置のチャックテーブルでウエーハを保持してウエーハの裏面を研削する研削工程と、該研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハの裏面に、粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設して加熱すると共に押圧して該熱圧着シートをウエーハの裏面に圧着する熱圧着工程と、ウエーハの表面に切削ブレードを位置づけて分割予定ラインを切削して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、から少なくとも構成され、該熱圧着シートは、ポリエステル系シートのうち、ポリエチレンテレフタレートシートまたはポリエチレンナフタレートシートのいずれかであるウエーハの加工方法を本発明は提供する。
【0011】
好ましくは、該分割工程の前に該保護部材をウエーハの表面から剥離する。該熱圧着工程における該熱圧着シートの加熱温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンシートの場合には120℃~140℃であり、該熱圧着シートが該ポリプロピレンシートの場合には160℃~180℃であり、該熱圧着シートが該ポリスチレンシートの場合には220℃~240℃であるのが好ましい。該熱圧着工程における該熱圧着シートの加熱温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンテレフタレートシートの場合には250℃~270℃であり、該熱圧着シートが該ポリエチレンナフタレートシートの場合には160℃~180℃であるのが好都合である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハの表面に保護部材を配設し研削装置のチャックテーブルでウエーハを保持してウエーハの裏面を研削する研削工程と、該研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハの裏面に、粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設して加熱すると共に押圧して熱圧着シートをウエーハの裏面に圧着する熱圧着工程と、ウエーハの表面に切削ブレードを位置づけて分割予定ラインを切削して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、から少なくとも構成され、該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シートのうち、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートまたはポリスチレンシートのいずれかであることから、ウエーハをダイシングする際に、熱圧着シートからデバイスチップが飛散するのを防止することができ、かつデバイスチップの外周に欠けが生じないように熱圧着シート上でのデバイスチップの動きを抑制することができ、デバイスチップの品質の低下を防止することができる。
また、本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハの表面に保護部材を配設し研削装置のチャックテーブルでウエーハを保持してウエーハの裏面を研削する研削工程と、該研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハの裏面に、粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設して加熱すると共に押圧して該熱圧着シートをウエーハの裏面に圧着する熱圧着工程と、ウエーハの表面に切削ブレードを位置づけて分割予定ラインを切削して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、から少なくとも構成され、該熱圧着シートは、ポリエステル系シートのうち、ポリエチレンテレフタレートシートまたはポリエチレンナフタレートシートのいずれかであることから、ウエーハをダイシングする際に、熱圧着シートからデバイスチップが飛散するのを防止することができ、かつデバイスチップの外周に欠けが生じないように熱圧着シート上でのデバイスチップの動きを抑制することができ、デバイスチップの品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ウエーハの斜視図。
図2】(a)研削工程を実施している状態を示す斜視図、(b)研削工程を実施した状態を示す斜視図。
図3】(a)ウエーハの裏面に熱圧着シートを配設している状態を示す斜視図、(b)熱圧着シートを加熱している状態を示す斜視図、(c)熱圧着シートを切断している状態を示す斜視図。
図4】分割工程を実施している状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のウエーハの加工方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1には、本発明のウエーハの加工方法によって加工が施される円板状のウエーハ2が示されている。図示の実施形態のウエーハ2はシリコン(Si)から形成されている。ウエーハ2の表面2aは格子状の分割予定ライン4によって複数の矩形領域に区画されており、複数の矩形領域のそれぞれにはIC、LSI等のデバイス6が形成されている。なお、ウエーハ2の裏面2bはシリコン酸化膜(SiO)によって覆われている。
【0016】
図示の実施形態のウエーハの加工方法では、まず、ウエーハ2の表面2aに保護部材8を配設し、研削装置のチャックテーブルでウエーハ2を保持してウエーハ2の裏面2bを研削する研削工程を実施する。デバイス6を保護するための保護部材8は、図1に示すとおり、ウエーハ2の直径と同一の直径を有する円形の粘着テープでよい。
【0017】
研削工程におけるウエーハ2の裏面2bの研削は、たとえば図2に一部を示す研削装置10を用いて実施することができる。研削装置10は、ウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル12と、チャックテーブル12に吸引保持されたウエーハ2を研削する研削手段14とを備える。
【0018】
上面においてウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル12は、上下方向に延びる軸線を中心として回転自在に構成されている。研削手段14は、上下方向を軸心として回転自在に構成されたスピンドル16と、スピンドル16の下端に固定された円板状のホイールマウント18とを含む。ホイールマウント18の下面にはボルト20によって環状の研削ホイール22が固定されている。研削ホイール22の下面の外周縁部には、周方向に間隔をおいて環状に配置された複数の研削砥石24が固定されている。
【0019】
研削工程では、デバイス6を保護するための保護部材8をウエーハ2の表面2aに配設した後、図2に示すとおり、ウエーハ2の裏面2bを上に向けて、チャックテーブル12の上面でウエーハ2を吸引保持する。次いで、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば300rpm)でチャックテーブル12を回転させる。また、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば6000rpm)でスピンドル16を回転させる。
【0020】
次いで、研削装置10の昇降手段(図示していない。)でスピンドル16を下降させ、ウエーハ2の裏面2bに研削砥石24を接触させる。そして、所定の研削送り速度(たとえば1.0μm/s)でスピンドル16を下降させる。これによって、ウエーハ2の裏面2bを研削しシリコン酸化膜を除去して、ウエーハ2の裏面2bの濡れ性を向上させることができる。なお、図2(b)には、研削工程を実施したことによって、ウエーハ2の径方向中心から放射状に複数の弧状研削痕26がウエーハ2の裏面2bに発生した状態が示されている。
【0021】
研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハ2の裏面2bに熱圧着シートを配設して加熱すると共に押圧して熱圧着シートをウエーハ2の裏面2bに圧着する熱圧着工程を実施する。
【0022】
熱圧着工程は、たとえば図3に示すチャックテーブル28と、加熱ローラ30とを用いて実施することができる。チャックテーブル28は上下方向に延びる軸線を中心として回転自在に構成されている。チャックテーブル28は、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円板状の吸着チャック32と、吸着チャック32の外周を囲む円筒部材34とを備える。図3を参照することによって理解されるとおり、吸着チャック32の直径はウエーハ2の直径よりも大きい。
【0023】
円筒状の加熱ローラ30は、回転軸30aを中心として回転自在に、かつ、チャックテーブル28の上面に沿って移動自在に構成されている。加熱ローラ30には電気ヒータおよび温度センサ(いずれも図示していない。)が内蔵されており、適宜の制御装置によって加熱ローラ30の外周面の温度が調整される。加熱ローラ30の外周面にはフッ素樹脂がコーティングされている。
【0024】
熱圧着工程では、まず、図3(a)に示すとおり、ウエーハ2の裏面2bを上に向けて研削工程直後のウエーハ2をチャックテーブル28の吸着チャック32の上面に載せる。また、図示の実施形態では環状フレーム36も吸着チャック32の上面に載せる。環状フレーム36の内径はウエーハ2の直径よりも大きく、環状フレーム36の外径は吸着チャック32の直径よりも小さい。
【0025】
次いで、ウエーハ2の裏面2bに円形の熱圧着シート38を配設する。熱圧着シート38の直径は、吸着チャック32の直径よりも大きく、かつ円筒部材34の外径よりも小さい。したがって、ウエーハ2と、環状フレーム36と、吸着チャック32の上面の露出部分とが熱圧着シート38によって覆われる。また、熱圧着シート38の厚みは20~100μm程度でよい。
【0026】
熱圧着シート38は、適宜の温度に加熱されると粘着力を発揮すると共に軟化するシートである。熱圧着シート38としては、ポリオレフィン系シートまたはポリエステル系シートを用いることができる。熱圧着シート38として用いることができるポリオレフィン系シートは、たとえば、ポリエチレン(PE)シート、ポリプロピレン(PP)シート、ポリスチレン(PS)シートを挙げることができる。また、熱圧着シート38として用いることができるポリエステル系シートは、たとえば、ポリエチレンテレフタレートシート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)シートを挙げることができる。なお、熱圧着シート38には粘着層(糊層)は形成されていない。
【0027】
ウエーハ2の裏面2bに熱圧着シート38を配設した後、吸着チャック32に接続された吸引手段を作動させて吸着チャック32に吸引力を生成する。そうすると、熱圧着シート38の直径が吸着チャック32の直径よりも大きく、熱圧着シート38によって吸着チャック32が覆われているため、ウエーハ2と環状フレーム36と熱圧着シート38とがチャックテーブル28に吸引保持されると共に、熱圧着シート38がウエーハ2および環状フレーム36に密着する。
【0028】
次いで、加熱ローラ30のヒータを作動させ、熱圧着シート38が粘着力を発揮すると共に軟化する温度に加熱ローラ30の外周面の温度を調整する。次いで、図3(b)に示すとおり、加熱ローラ30で熱圧着シート38を下方に押圧しながら加熱ローラ30を転がすことにより、熱圧着シート38を加熱して軟化させると共に熱圧着シート38に粘着力を発揮させる。これによって軟化した熱圧着シート38がウエーハ2の裏面2bに一層密着すると共に、熱圧着シート38の粘着力によって熱圧着シート38がウエーハ2の裏面2bおよび環状フレーム36に圧着する。なお、加熱ローラ30の外周面にはフッ素樹脂がコーティングされているから、熱圧着シート38が粘着力を発揮しても熱圧着シート38が加熱ローラ30に貼り付くことはない。
【0029】
熱圧着工程では、研削工程直後のウエーハ2の裏面2bの濡れ性が向上した状態で、ウエーハ2の裏面2bに熱圧着シート38を圧着するので、ウエーハ2の裏面2bと熱圧着シート38との間の接合力は、ウエーハ2の裏面2bの濡れ性が向上していない状態でウエーハ2の裏面2bに熱圧着シート38を圧着した場合の接合力よりも強い。なお、研削工程の直後とは、研削工程を実施してから、ウエーハ2の裏面2bの濡れ性が、研削工程を実施する前と同程度の濡れ性に戻るまでの時間(たとえば1時間程度)よりも充分短い時間(たとえば5~10分程度)であり、すなわち、研削工程を実施してから、研削工程を実施する前と同程度のシリコン酸化膜がウエーハ2の裏面2bに再度形成されるまでの時間よりも充分短い時間である。
【0030】
熱圧着工程における熱圧着シート38(ポリオレフィン系シート)の加熱温度は、熱圧着シート38がポリエチレンシートの場合には120℃~140℃であり、熱圧着シート38がポリプロピレンシートの場合には160℃~180℃であり、熱圧着シート38がポリスチレンシートの場合には220℃~240℃であるのが好ましい。
【0031】
熱圧着工程における熱圧着シート38(ポリエステル系シート)の加熱温度は、熱圧着シート38がポリエチレンテレフタレートシートの場合には250℃~270℃であり、熱圧着シート38がポリエチレンナフタレートシートの場合には160℃~180℃であるのが好適である。
【0032】
熱圧着工程において熱圧着シート38をウエーハ2の裏面2bおよび環状フレーム36に熱圧着した後、熱圧着シート38を環状フレーム36に沿って切断する。熱圧着シート38を切断する際は、たとえば図3(c)に示すとおり、ウエーハ2と環状フレーム36と熱圧着シート38とをチャックテーブル28で吸引保持した状態で、環状フレーム36の径方向中間部の上方に円形のカッター40を位置づける。
【0033】
次いで、高速回転させたカッター40の刃先を熱圧着シート38の上面から下面に至るまで切り込ませると共に、カッター40に対してチャックテーブル28を回転させる。これによって、熱圧着シート38を環状フレーム36に沿って切断することができる。図3(c)には、環状フレーム36に沿って熱圧着シート38を切断した部分が符号42で示されている。なお、後述の分割工程を実施する前に保護部材8をウエーハ2の表面2aから除去する。
【0034】
熱圧着工程を実施した後、ウエーハ2の表面2aに切削ブレードを位置づけて分割予定ライン4を切削して個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する。分割工程は、たとえば図4に一部を示すダイシング装置44を用いて実施することができる。
【0035】
ダイシング装置44は、ウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル(図示していない。)と、チャックテーブルに吸引保持されたウエーハ2を切削する切削手段46とを備える。チャックテーブルは、回転自在に構成されていると共に、図4に矢印Xで示すX軸方向に移動自在に構成されている。切削手段46は、X軸方向に直交するY軸方向(図4に矢印Yで示す方向)を軸心として回転自在に構成されたスピンドル48と、スピンドル48の先端に固定された環状の切削ブレード50とを含む。なお、X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0036】
分割工程では、まず、ウエーハ2の表面2aを上に向けて、チャックテーブルの上面でウエーハ2を吸引保持する。次いで、ダイシング装置44の撮像手段(図示していない。)で上方からウエーハ2を撮像し、撮像手段で撮像したウエーハ2の画像に基づいて、ウエーハ2の分割予定ライン4をX軸方向に整合させると共に、X軸方向に整合させた分割予定ライン4を切削ブレード50の下方に位置づける。次いで、図4に示すとおり、X軸方向に整合させた分割予定ライン4に、矢印Aで示す方向に高速回転させた切削ブレード50の刃先をウエーハ2の表面2aから裏面2bに至るまで切り込ませると共に、切削手段46に対してチャックテーブルを相対的にX軸方向に加工送りすることによって、分割予定ライン4に沿ってウエーハ2を切削する。なお、図4には、分割予定ライン4に沿ってウエーハ2を切削した部分が符号52で示されている。
【0037】
そして、分割予定ライン4のY軸方向の間隔の分だけ、チャックテーブルに対して切削ブレード50を相対的にY軸方向に割り出し送りしながらウエーハ2の切削を繰り返し、X軸方向に整合させた分割予定ライン4のすべてに沿ってウエーハ2を切削する。また、チャックテーブルを90度回転させた上で、割り出し送りしながらウエーハ2の切削を繰り返し、格子状の分割予定ライン4のすべてに沿ってウエーハ2を切削する。これによって、ウエーハ2を個々のデバイス6ごとのデバイスチップに分割することができる。
【0038】
以上のとおりであり、図示の実施形態のウエーハの加工方法においては、研削工程の直後、研削され濡れ性が向上したウエーハ2の裏面2bに熱圧着シート38を熱圧着しており、ウエーハ2の裏面2bの濡れ性が向上していない状態でウエーハ2の裏面2bに熱圧着シート38を圧着した場合よりも、ウエーハ2の裏面2bと熱圧着シート38とが強く接合し、また、熱圧着シート38には粘着層が存在しないため、ウエーハ2をダイシングする際に、熱圧着シート38からデバイスチップが飛散するのを防止することができ、かつデバイスチップの外周に欠けが生じないように熱圧着シート38上でのデバイスチップの動きを抑制することができ、デバイスチップの品質の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
2:ウエーハ
2a:ウエーハの表面
2b:ウエーハの裏面
4:分割予定ライン
6:デバイス
8:保護部材
10:研削装置
12:チャックテーブル
38:熱圧着シート
50:切削ブレード
図1
図2
図3
図4