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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230926BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230926BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L21/78 C
G01N29/06
H01L21/66 J
H01S3/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019226474
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021097098
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-006860(JP,A)
【文献】特開2018-036213(JP,A)
【文献】特開2018-010123(JP,A)
【文献】特開平10-260163(JP,A)
【文献】特開平10-078415(JP,A)
【文献】特開2001-318081(JP,A)
【文献】特開平09-281084(JP,A)
【文献】特開平04-081654(JP,A)
【文献】特開2018-010894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/66
H01S 3/00
G01N 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を保持するX軸座標、及びY軸座標で規定される保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構と、を少なくとも備える検出装置であって、
該検出機構は、広帯域波長のパルスレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振した1パルス毎のパルスレーザー光線を波長毎に時間差を持たせる波長別遅延手段と、波長毎に時間差を持ったパルスレーザー光線をリング状に生成すると共にパルスレーザー光線を波長毎に小リング光から大リング光に分光するリング生成手段と、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線を分岐するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって第一の方向に分岐されたパルスレーザー光線をX軸座標に走査する走査スキャナーと、該パルスレーザー光線をY軸座標に割り出しする割出スキャナーと、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線を該保持手段に保持された被測定物のX軸座標、及びY軸座標で特定された上面に照射するfθレンズと、該ビームスプリッターによって分岐される第二の方向に配設された検出用レーザー光線を照射するレーザー光線照射器と、該レーザー光線照射器と該ビームスプリッターとの間に配設されるハーフミラーと、該ハーフミラーとで該ビームスプリッターを挟むように配設され該ハーフミラーを通過した検出用レーザー光線を該ハーフミラーに戻すリターンミラーと、該ハーフミラーで反射した光を受光するホトデテクターと、該ホトデテクターが受光した光の強度と該パルスレーザー光線が照射された被測定部の上面のX軸座標及びY軸座標とから画像を生成する画像生成手段と、から少なくとも構成され、
該保持手段に保持された被測定物の上面に該小リング光から該大リング光に時間差をもって分光されたパルスレーザー光線が照射されることによって生成される超音波の干渉波が、被測定物の内部の所定のZ軸座標で集束して振動を発生させ、該振動の上面に該検出用レーザー光線が照射されて反射した該振動の変調を捉えた第一の戻り光と、該リターンミラーで戻された検出用レーザー光線によって生成された第二の戻り光との干渉光が該ハーフミラーによって該ホトデテクターに導かれ、該画像生成手段によって該超音波の干渉波が集束する点近傍の状態を示す画像が生成され表示される検出装置。
【請求項2】
該リング生成手段によって波長毎に小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線の時間差を該波長別遅延手段によって調整して、被測定物の内部で超音波が集束する点のZ軸座標を調整する請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
被測定物の内部において超音波が集束する点から被測定物の上面の大リング光に至る距離をH1とし、該超音波が集束する点から該大リング光に隣接するリング光に至る距離をH2とし、被加工物の内部を伝播する超音波の速度をVとした場合、
(H1-H2)/V=t
によって演算される時間tを、該波長別遅延手段によって遅延させることで、超音波が集束する点のZ軸座標を調整する請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
該リング生成手段は、一対のアキシコンレンズ及び回折格子を備えたアキシコンレンズ体、又は回折光学素子である請求項1乃至3のいずれかに記載された検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構を備えた検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、MEMS、CCD、CMOS等の汚れを嫌うデバイスが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割する場合、該ウエーハの表面を保護テープで保持し、赤外線カメラによってウエーハの裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出し、裏面側からダイシング加工、又はレーザー加工を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-75955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ウエーハの裏面に金属膜が被覆されているウエーハにおいては、赤外線が透過せず、赤外線カメラによってウエーハの裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、赤外線カメラによって被測定物の裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出することができない場合であっても、被測定物の裏面から表面の分割予定ラインを検出することができる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被測定物を保持するX軸座標、及びY軸座標で規定される保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構と、を少なくとも備える検出装置であって、該検出機構は、広帯域波長のパルスレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振した1パルス毎のパルスレーザー光線を波長毎に時間差を持たせる波長別遅延手段と、波長毎に時間差を持ったパルスレーザー光線をリング状に生成すると共にパルスレーザー光線を波長毎に小リング光から大リング光に分光するリング生成手段と、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線を分岐するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって第一の方向に分岐されたパルスレーザー光線をX軸座標に走査する走査スキャナーと、該パルスレーザー光線をY軸座標に割り出しする割出スキャナーと、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線を該保持手段に保持された被測定物のX軸座標、及びY軸座標で特定された上面に照射するfθレンズと、該ビームスプリッターによって分岐される第二の方向に配設された検出用レーザー光線を照射するレーザー光線照射器と、該レーザー光線照射器と該ビームスプリッターとの間に配設されるハーフミラーと、該ハーフミラーとで該ビームスプリッターを挟むように配設され該ハーフミラーを通過した検出用レーザー光線を該ハーフミラーに戻すリターンミラーと、該ハーフミラーで反射した光を受光するホトデテクターと、該ホトデテクターが受光した光の強度と該パルスレーザー光線が照射された被測定部の上面のX軸座標及びY軸座標とから画像を生成する画像生成手段と、から少なくとも構成され、該保持手段に保持された被測定物の上面に該小リング光から該大リング光に時間差をもって分光されたパルスレーザー光線が照射されることによって生成される超音波の干渉波が、被測定物の内部の所定のZ軸座標で集束して振動を発生させ、該振動の上面に該検出用レーザー光線が照射されて反射した該振動の変調を捉えた第一の戻り光と、該リターンミラーで戻された検出用レーザー光線によって生成された第二の戻り光との干渉光が該ハーフミラーによって該ホトデテクターに導かれ、該画像生成手段によって該超音波の干渉波が集束する点近傍の状態を示す画像が生成され表示される検出装置が提供される。
【0008】
該リング生成手段によって波長毎に小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線の時間差を該波長別遅延手段によって調整して、被測定物の内部で超音波が集束する点のZ軸座標を調整することができる。また、被測定物の内部において超音波が集束する点から被測定物の上面の大リング光に至る距離をH1とし、該超音波が集束する点から該大リング光に隣接するリング光に至る距離をH2とし、被加工物の内部を伝播する超音波の速度をVとした場合、
(H1-H2)/V=t
によって演算される時間tを、該波長別遅延手段によって遅延させることで、超音波が集束する点のZ軸座標を調整するようにしてもよい。さらに、該リング生成手段は、一対のアキシコンレンズ及び回折格子を備えたアキシコンレンズ体、又は回折光学素子とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検出装置は、被測定物を保持するX軸座標、及びY軸座標で規定される保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構と、を少なくとも備える検出装置であって、該検出機構は、広帯域波長のパルスレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振した1パルス毎のパルスレーザー光線を波長毎に時間差を持たせる波長別遅延手段と、波長毎に時間差を持ったパルスレーザー光線をリング状に生成すると共にパルスレーザー光線を波長毎に小リング光から大リング光に分光するリング生成手段と、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線を分岐するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって第一の方向に分岐されたパルスレーザー光線をX軸座標に走査する走査スキャナーと、該パルスレーザー光線をY軸座標に割り出しする割出スキャナーと、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線を該保持手段に保持された被測定物のX軸座標、及びY軸座標で特定された上面に照射するfθレンズと、該ビームスプリッターによって分岐される第二の方向に配設された検出用レーザー光線を照射するレーザー光線照射器と、該レーザー光線照射器と該ビームスプリッターとの間に配設されるハーフミラーと、該ハーフミラーとで該ビームスプリッターを挟むように配設され該ハーフミラーを通過した検出用レーザー光線を該ハーフミラーに戻すリターンミラーと、該ハーフミラーで反射した光を受光するホトデテクターと、該ホトデテクターが受光した光の強度と該パルスレーザー光線が照射された被測定部の上面のX軸座標及びY軸座標とから画像を生成する画像生成手段と、から少なくとも構成され、該保持手段に保持された被測定物の上面に該小リング光から該大リング光に時間差をもって分光されたパルスレーザー光線が照射されることによって生成される超音波の干渉波が、被測定物の内部の所定のZ軸座標で集束して振動を発生させ、該振動の上面に該検出用レーザー光線が照射されて反射した該振動の変調を捉えた第一の戻り光と、該リターンミラーで戻された検出用レーザー光線によって生成された第二の戻り光との干渉光が該ハーフミラーによって該ホトデテクターに導かれ、該画像生成手段によって該超音波の干渉波が集束する点近傍の状態を示す画像が生成され表示されるようになっていることから、被測定物の裏面側に金属膜が被覆されている等により、赤外線が透過せず、赤外線カメラによって裏面から表面の状態が検出できない場合であっても、裏面側から表面側に形成された、例えば分割予定ラインを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の検出装置を備えたレーザー加工装置の全体斜視図である。
図2図1に示す検出装置の検出機構の構成を示すブロック図である。
図3】ウエーハ(被測定物)に照射される複数のリング光に基づき超音波を発生させてウエーハの状態を検出する態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成される検出装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の検出装置が配設された装置の一例として示されるレーザー加工装置1の全体斜視図である。
【0013】
図1に示すレーザー加工装置1は、被加工物を保持する保持手段20と、保持手段20を移動させる移動手段30と、保持手段20に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段40と、表示手段50と、保持手段20と共に本実施形態の検出装置を構成する検出機構60と、を備えている。
【0014】
保持手段20は、図中に矢印Xで示すX軸方向において移動自在に基台2に載置される矩形状のX軸方向可動板21と、図中に矢印Yで示すY軸方向において移動自在にX軸方向可動板21に載置される矩形状のY軸方向可動板22と、Y軸方向可動板22の上面に固定された円筒状の支柱23と、支柱23の上端に固定された矩形状のカバー板26とを含む。カバー板26には、カバー板26上に形成された長穴を通って上方に延びる円形状のチャックテーブル25が配設されている。チャックテーブル25は、図示しない回転駆動手段により回転可能に構成されている。チャックテーブル25の上面を構成するX軸座標、及び該X軸座標に直交するY軸座標により規定される保持面25aは、多孔質材料から形成されて通気性を有し、支柱23の内部を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。チャックテーブル25には、保護テープTを介して被加工物を支持する環状のフレームFを固定するためのクランプ27も配設される。なお、本実施形態における被加工物は、例えば、図1に示すように、シリコン基板上にデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されたウエーハ10であり、表面10aを保護すべく反転されて、裏面10b側を上方に向け、表面10a側を保護テープTに貼着して環状のフレームFによって保持されている。裏面10bには、金属膜が形成されており、赤外線を照射して表面10a側を検出することはできない。
【0015】
移動手段30は、基台2上に配設され、保持手段20をX軸方向に加工送りするX軸方向送り手段31と、Y軸可動板22をY軸方向に割り出し送りするY軸方向送り手段32と、を備えている。X軸方向送り手段31は、パルスモータ33の回転運動を、ボールねじ34を介して直線運動に変換してX軸方向可動板21に伝達し、基台2上の案内レール2a、2aに沿ってX軸方向可動板21をX軸方向において進退させる。Y軸方向送り手段32は、パルスモータ35の回転運動を、ボールねじ36を介して直線運動に変換してY軸方向可動板22に伝達し、X軸方向可動板21上の案内レール21a、21aに沿ってY軸方向可動板22をY軸方向において進退させる。なお、図示は省略するが、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及びチャックテーブル25には、位置検出手段が配設されており、チャックテーブル25のX軸座標、Y軸座標、周方向の回転位置が正確に検出されて、その位置情報は、図示しない制御手段に送られる。そして、その位置情報に基づいて該制御手段から指示される指示信号により、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及び図示しないチャックテーブル25の回転駆動手段が駆動されて、基台2上の所望の位置にチャックテーブル25を位置付けることができる。
【0016】
図1に示すように、移動手段30の側方には、枠体4が立設される。枠体4は、基台2上に配設される垂直壁部4a、及び垂直壁部4aの上端部から水平方向に延びる水平壁部4bと、を備えている。枠体4の水平壁部4bの内部には、レーザー光線照射手段40を含む光学系(図示は省略する)が収容されており、該光学系の一部を構成する集光器42が水平壁部4bの先端部下面に配設されている。
【0017】
レーザー加工装置1の枠体4の水平壁部4bの内部には、上記したレーザー光線照射手段40に加え、保持手段20に保持されたウエーハ10の内部を検出する検出機構60が配設されており、上記した保持手段20とにより、本実施形態の検出装置を構成する。
【0018】
図2に、検出機構60の光学系を示すブロック図を示す。検出機構60は、広帯域波長(例えば400nm~800nm)のパルスレーザー光線PL0を発振する発振器61と、発振器61が発振した1パルス毎のパルスレーザー光線PL0を波長毎に時間差を持たせてパルスレーザー光線PL1として出力する波長別遅延手段62と、パルスレーザー光線PL1を、リング光に生成すると共に波長毎に小リング光から大リング光に分光してパルスレーザー光線PL2を生成して出力するリング生成手段64と、通過する光を適宜の方向に分岐する機能を有するビームスプリッター65と、ビームスプリッター65によって第一の方向D1に分岐されたパルスレーザー光線PL2を保持手段20のチャックテーブル25上におけるY軸座標方向で割り出しする、例えばガルバノスキャナーで構成される割出スキャナー67と、パルスレーザー光線PL2をチャックテーブル25上のX軸座標に走査する、例えばレゾナントスキャナーで構成される走査スキャナー68と、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線PL2をチャックテーブル25に保持されたウエーハ10の上面である裏面10bの該X軸座標及び該Y軸座標で特定された位置に集光して照射するfθレンズ691を含む検出用集光器69と、を備えている。
【0019】
発振器61から発振されるパルスレーザー光線PL0は光ファイバー620を介して波長別遅延手段62に導かれる。波長別遅延手段62は、例えば、波長分散を生じさせる光ファイバーを利用することで実現可能である。より具体的に言えば、波長別遅延手段62の内部に含まれる光ファイバー(図示は省略)の中に、波長毎に反射位置が異なるように回折格子を形成して、例えば、長い波長の光の反射距離を短く、短い波長の光の反射距離が長くなるように設定したもので実現される。これにより、図2に示す波長別遅延手段62の出力側に設定される光ファイバー621を介して、1パルス毎に、波長が長い順に所定の時間差をもたせ、例えば、赤色光PL1a、黄色光PL1b、緑色光PL1c、及び青色光PL1dが所定の時間差をもって出力されるパルスレーザー光線PL1が生成される。
【0020】
波長別遅延手段62によって波長毎に時間差を持たされたパルスレーザー光線PL1は、必要に応じて設定されるコリメーションレンズ63によって平行光とされ、リング生成手段64に導入される。リング生成手段64は、例えば、一対のアキシコンレンズ641、642と、ドーナツ型で半径方向に対称となっている回折格子643とを備えるアキシコンレンズ体で実現される。パルスレーザー光線PL1は、一対のアキシコンレンズ641、642を通過することでリング状の光とされ、さらに回折格子643を通過させることで、波長毎に小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線PL2を生成する。上記した一対のアキシコンレンズ641、642の間隔を調整することで、パルスレーザー光線PL2を構成するリング光の大きさを調整することが可能である。なお、本実施形態においては、パルスレーザー光線PL1を波長毎に小リング光から大リング光に分光する手段として、上記したアキシコンレンズ体を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、回折光学素子(DEO)を用いてもよい。
【0021】
波長毎に小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線PL2は、ビームスプリッター65に導入される。ビームスプリッター65に導入されたパルスレーザー光線PL2は、反射面65aを透過して第一の方向D1に導かれ、必要に応じて配設される反射ミラー66によって光路が変更されて、パルスレーザー光線PL2をY軸座標に割り出しする割出スキャナー67に導かれる。割出スキャナー67は、図示しない制御手段によって反射面67aの角度が制御され、チャックテーブル25上においてパルスレーザー光線PL2が照射される位置を、図面に対して垂直な割出送り方向(Y軸方向)で精密に制御する。さらに、割出スキャナー67において反射されたパルスレーザー光線PL2は、走査スキャナー68に導かれる。走査スキャナー68は、図示しない制御手段によって反射面68aの角度が制御され、チャックテーブル25上においてパルスレーザー光線PL2が照射される位置を、図面に対して左右方向に設定される走査方向(X軸方向)で精密に制御する。割出スキャナー67及び走査スキャナー68で照射方向が制御されたパルスレーザー光線PL2は、fθレンズ691に導かれて集光され、ウエーハ10の上面(裏面10b)の所定のX軸座標、Y軸座標位置に照射される。
【0022】
本実施形態の検出機構60は、さらに、ビームスプリッター65によって分岐される第二の方向D2に配設され、検出用レーザー光線LB0を照射するレーザー光線照射器71と、レーザー光線照射器71とビームスプリッター65との間に配設されるハーフミラー72と、ハーフミラー72とでビームスプリッター65を挟むように反対側に配設されたリターンミラー73と、ビームスプリッター65を介して戻り、ハーフミラー72に導かれて反射した光を受光するするホトデテクター74と、ホトデテクター74が受光した光の強度、及び該パルスレーザー光線PL2が照射されたチャックテーブル25上のX軸座標、Y軸座標の情報とから画像を生成する画像生成手段75(アナライザー)とを備えている。
【0023】
レーザー光線照射器71は、例えば、レーザーダイオード(LD)によって構成される。レーザー光線照射器71から照射された検出用レーザー光線LB0は、ハーフミラー72を透過して、ビームスプリッター65に導入され、ビームスプリッター65の反射面65aにて反射して第一の方向D1に進む分光LB1と、反射面65aを透過する分光LB2とに分岐される。反射面65aにて反射した分光LB1は、上記したパルスレーザー光線PL2の中心を進み、割出スキャナー67及び走査スキャナー68によって走査されて、fθレンズ691を経て、ウエーハ10の裏面10bの所定のX軸座標、Y軸座標に照射される。
【0024】
ウエーハ10の裏面10bに照射される分光LB1は、ウエーハ10の上面(裏面10b)で反射されて第一の戻り光LB1’となり、走査スキャナー68、割出スキャナー67、反射ミラー66を経てビームスプリッター65の反射面65aで反射されて、第二の方向D2に進み、ハーフミラー72に導かれる。この際、第一の戻り光LB1’の光路は、ビームスプリッター65の反射面65aを透過してリターンミラー73にて反射された第二の戻り光LB2’の光路と同一になるように設定されており、第一の戻り光LB1’と、第二の戻り光LB2’とが一体とされて生成された干渉光は、ハーフミラー72によって反射されてホトデテクター74に導かれる。ホトデテクター74が受光した光(第一の戻り光LB1’+第二の戻り光LB2’の干渉光)の強度と、検出用レーザー光線LB1が照射されたウエーハ10の裏面10b上の位置を示すX軸座標、Y軸座標とに基づいて、画像生成手段75によって画像の情報が生成されて、該画像を表示手段50に出力する。
【0025】
検出機構60は、概ね上記したとおりの構成を備えており、検出機構60の機能、作用について、図3も併せて参照しながら以下に説明する。
【0026】
図1に示すように、被加工物であるウエーハ10を用意したならば、保持手段20のチャックテーブル25に吸引保持して、クランプ27によって固定する。チャックテーブル25にウエーハ10を固定したならば、移動手段30を作動して、チャックテーブル25を移動し、fθレンズ691を備えた検出用集光器69の直下に、ウエーハ10の所定の検出領域を位置付ける。次いで、発振器61を作動して、パルスレーザー光線PL0を発振し、波長別遅延手段62、リング生成手段64を介して、波長毎に時間差を持たせ、且つ波長毎に小リング光から大リング光に分光された複数のリング光を含むパルスレーザー光線PL2を生成して出力する。パルスレーザー光線PL2は、ビームスプリッター65を透過して、第一の方向D1に分岐され、図示しない制御手段によって制御された割出スキャナー67、走査スキャナー68、fθレンズ691を介してウエーハ10の裏面10bの検出領域における所定のX軸座標、Y軸座標位置に照射される。
【0027】
本実施形態においては、図3に示すように、パルスレーザー光線PL2は、径が大きい順に、赤色光PL1aから生成されたリング光PL2a、黄色光PL1bから生成されたリング光PL2b、緑色光PL1cから生成されたリング光PL2c、及び青色光PL1dから生成されたリング光PL2dから構成され、ウエーハ10の裏面10b上に中心をCとする同心円状に照射される。チャックテーブル25に保持されたウエーハ10の裏面10bに対して最も早く到達するのは、最も径が大きいリング光PL2aであり、以降、径が大きい順に、時間差t1をもってリング光PL2bが到達し、次いで、時間差t2をもってリング光PL2cが到達し、最後に、時間差t3をもってリング光PL2dが到達する。なお、本実施形態においては、説明の都合上、4つの波長域に対応して分光する例に基づいて説明するが、実際は10~20の波長域に対応して分光される。
【0028】
本実施形態のウエーハ10の裏面10bには金属膜が形成されており、上記したリング光PL2a~PL2dによって構成されるパルスレーザー光線PL2はウエーハ10を透過しない。しかし、各リング光PL2a~PL2dが裏面10bに到達することによって、各到達点からウエーハ10内を伝播する超音波が生成される。各リング光PL2a~PL2dがウエーハ10の裏面10bに到達する際の時間差t1~t3を適切に設定することにより、この超音波の干渉波を、ウエーハ10の裏面10bに照射される各リング光PL2a~PL2dの中心Cにおけるウエーハ10の厚み方向の所望のZ軸座標Pzの位置Pに集束させることが可能である。なお、本実施形態においては、ウエーハ10の表面10a近傍の状態を検出すべく、該位置Pを表面10aの近傍になるように設定している。
【0029】
上記した時間差t1~t3を適切に設定する手順は、以下のとおりである。ウエーハ10の裏面10bに照射されたリング光PL2a~PL2dの径は、上記したリング生成手段64に含まれる回折格子643によって設定される値であり、例えば、図3に示すように、a1~a4となるように設定される。そして、リング光PL2a~PL2dの中心Cからウエーハ10の厚さ方向において、オペレータが各リング光PL2a~PL2dによって発生する超音波を集束させたい所望の位置PまでのZ軸座標(深さ)をPzとすると、ウエーハ10の裏面10bにおける各リング光PL2a~PL2dが到達した点から該位置Pまでの距離H1~H4は、以下の式により演算される。
H1=(a1+Pz1/2
H2=(a2+Pz1/2
H3=(a3+Pz1/2
H4=(a4+Pz1/2
【0030】
ここで、上記したように、リング光PL2a~PL2dが時間差t1~t3をもってウエーハ10の裏面10bに到達して、各リング光がウエーハ10の内部を伝播する超音波を生成する場合に、各超音波により構成される干渉波を位置Pに集束させるためには、以下の式を満たす時間差t1~t3を設定すればよい。なお、Vは、ウエーハ10の内部を該超音波が伝播する際の速度(m/s)であり、ウエーハ10の材質によって決まる速度である。
(H1-H2)/V=t1
(H2-H3)/V=t2
(H3-H4)/V=t3
【0031】
上記した時間差t1~t3は、波長別遅延手段62によって調整することができ、上記した波長別遅延手段62においては、波長別遅延手段62を構成する光ファイバー内に波長に対応して配設される回折格子(図示は省略)の位置を、上記した時間差t1~t3が生じるように変更すればよい。
【0032】
上記した条件を満たす時間差t1~t3をもってウエーハ10の裏面10bにリング光PL2a~PL2dが照射され、リング光PL2a~PL2dによって生成されウエーハ10内を伝播した超音波の干渉波は、位置Pにて集束し強い振動を生じさせる。その一部が、位置Pの近傍で反射してウエーハ10内を伝播して、該振動が発生した位置Pの上面、すなわち、ウエーハ10の裏面10bにおけるリング光PL2a~PL2dの中心Cに到達して裏面10bを振動させる。この振動は、上記した超音波が集光された位置P近傍の状態に応じた振動である。
【0033】
ここで、本実施形態では、レーザー光線照射器71から検出用レーザー光線LB0が照射されており、ビームスプリッター65によって分岐された分光LB1が、ウエーハ10の裏面10bにおけるリング光PL2a~PL2dの中心Cに照射される。分光LB1が裏面10bの該中心Cに到達して反射する際には、上記した裏面10bの振動の変調をとらえた第一の戻り光LB1’となる。ウエーハ10の裏面10bで反射して該変調を捉えた第一の戻り光LB1’は、走査スキャナー68、割出スキャナー67、反射ミラー66、及びビームスプリッター65の反射面65aを経て、ハーフミラー72に到達する。また、これと同時に、レーザー光線照射器71から照射されてビームスプリッター65を透過した検出用レーザー光線LB0の分光LB2も、リターンミラー73で反射して第二の戻り光LB2’となり、ビームスプリッター65の反射面65aにて、第一の戻り光LB1’と一体とされてハーフミラー72に到達する。ハーフミラー72によって反射された第一の戻り光LB1’と、ウエーハ10の影響を受けない参照光として機能する第二の戻り光LB2’とにより干渉光が生成され、ホトデテクター74によってその光強度が検出される。検出された光強度は、上記したウエーハ10の裏面10b上の中心CのX軸座標、Y軸座標と共に画像生成手段75に伝達される。
【0034】
上記したように、本実施形態では、走査スキャナー68と、割出スキャナー67を備えており、走査スキャナー68と、割出スキャナー67とを作動して、リング光PL2a~PL2d、及び分光LB1を、X軸座標、Y軸座標によって規定された所定の検出領域全域に順次照射し、その都度、ホトデテクター74によって光強度を検出し、パルスレーザー光線PL2、及び分光LB1が照射された位置の情報、すなわち、リング光PL2a~PL2dの中心CのX軸座標、Y軸座標の位置情報と共に画像生成手段75に伝達される。
【0035】
画像生成手段75は、第一の戻り光LB1’と第二の戻り光LB2’とにより干渉波を生成することにより明確に把握される第一の戻り光LB1’の光強度の変化に基づいて、該検出領域における検出用レーザー光線の分光LB1が照射された位置に対応する表面10a側の画像を生成する。例えば、ウエーハ10内において超音波が集束する位置Pの近傍にデバイス12がある場合は、集束された超音波がデバイス12で反射して、その振動が裏面10bの中心Cに到達するため、ホトデテクター74によって強い干渉波形が検出される。これに対し、位置Pが、分割予定ライン14の近傍に位置付けられている場合は、超音波が殆ど反射せず、ウエーハ10の裏面10bに変調が発生しないため、ホトデテクター74によって干渉波形が殆ど検出されない。
【0036】
上記したように、検出された表面10aのデバイス12、及び分割予定ライン14の位置情報を含む画像情報は、図2に示すように表示手段50に表示され、表示手段50に表示された検出領域の画像情報を、対応するX軸座標、及びY軸座標の情報と共に図示しない制御手段に記憶する。移動手段30を作動して、チャックテーブル25を移動して、検出機構60によって検出される検出領域にウエーハ10の領域を順次位置付けて、上記した手順によりウエーハ10の表面10aのデバイス12、及び分割予定ライン14を検出して記憶する。このようにして、ウエーハ10の表面10a側の状態が検出されたならば、チャックテーブル25をレーザー光線照射手段40の集光器42の直下に位置づけて、当該位置情報を利用して、レーザー加工を実施する。
【0037】
本実施形態によれば、被測定物であるウエーハ10の裏面10b側に金属膜が被覆されている等により、赤外線が透過せず、赤外線カメラによってウエーハ10の裏面10bから表面10aに形成された分割予定ライン14が検出できない場合であっても、ウエーハ10の裏面10b側から表面10aに形成された分割予定ライン14を検出することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、パルスレーザー光線PL0を、4つの波長領域毎に時間差をもたせ、4つのリング光PL2a~PL2dに分光する例を示したが、本発明はこれに限定されず、複数のリング光に分割して照射するものであれば、その数には限定されない。
【符号の説明】
【0039】
1:レーザー加工装置
2:基台
4:枠体
4a:垂直壁部
4b:水平壁部
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:保持手段
25:チャックテーブル
25a:保持面
30:移動手段
40:レーザー光線照射手段
50:表示手段
60:検出機構
61:発振器
62:波長別遅延手段
620、621:光ファイバー
64:リング生成手段
65:ビームスプリッター
65a:反射面
67:割出スキャナー
68:走査スキャナー
69:検出用集光器
691:fθレンズ
71:レーザー光線照射器
72:ハーフミラー
73:リターンミラー
74:ホトデテクター
75:画像生成手段
図1
図2
図3