(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】研磨ヘッドおよび研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/047 20060101AFI20230926BHJP
B24B 21/00 20060101ALI20230926BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B24B41/047
B24B21/00 A
H01L21/304 621B
H01L21/304 621E
(21)【出願番号】P 2020018043
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107752(JP,A)
【文献】特開2019-077003(JP,A)
【文献】特開2011-161625(JP,A)
【文献】特開昭63-300855(JP,A)
【文献】特開2003-071690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-51/00
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨するための研磨ヘッドであって、
研磨具を基板に対して押し付けるための環状の弾性部材と、
前記弾性部材を介して前記研磨具を前記基板に対して押し付ける押圧面を有する押圧具本体とを備え、
前記押圧面は、前記弾性部材の第1部位が嵌合する第1嵌合溝を有し、
前記第1部位は、前記押圧面から突出しており、
前記弾性部材は弾性変形した状態で前記押圧具本体に掛けられており、
前記研磨ヘッドは、前記第1部位により前記研磨具を基板に押し付けるように構成されている、研磨ヘッド。
【請求項2】
前記弾性部材は、取り外し可能に前記押圧具本体に掛けられている、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項3】
前記弾性部材は、円形の断面を有している、請求項1または2に記載の研磨ヘッド。
【請求項4】
前記弾性部材は、フッ素樹脂を含むコーティング層で覆われている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項5】
前記押圧具本体は、前記押圧面から斜めに延びるテーパー面をさらに有している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項6】
前記押圧具本体の側面は、前記弾性部材の第2部位が嵌合する第2嵌合溝を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項7】
前記押圧具本体は、突起部を前記押圧具本体の側面に有しており、
前記突起部は、前記弾性部材を支持している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項8】
前記第1嵌合溝は、互いに離れた位置にある複数の第1嵌合溝であり、
前記第1部位は、前記複数の第1嵌合溝にそれぞれ嵌合する複数の第1部位である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項9】
前記第1嵌合溝は、前記基板と同一の曲率を有する円弧形状を有している、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項10】
基板を保持する基板保持部と、
研磨具を前記基板に対して押し付けて該基板を研磨する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の研磨ヘッドとを備えている、研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板に研磨具を押し付けるための研磨ヘッドに関する。また、本発明はそのような研磨ヘッドで基板を研磨するための研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー回路、ロジック回路、イメージセンサ(例えばCMOSセンサー)などのデバイスは、より高集積化されつつある。これらのデバイスをウェーハなどの基板に形成する工程においては、微粒子や塵埃、不要な膜などの異物が基板に付着することがある。基板に付着した異物は、デバイスの成形不良や破損といった不具合を引き起こしてしまう。したがって、デバイスの信頼性を向上させるために、基板上の異物を除去することが必要とされる。
【0003】
ウェーハなどの基板上の異物を除去するために、研磨具を用いて基板を研磨する研磨装置がある。このような研磨装置として、研磨具を基板に摺接させることで基板を研磨する研磨装置がある。研磨装置は、研磨ヘッドにより研磨具を基板に押し付けることで基板を研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-161625号公報
【文献】特開2019-107752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研磨装置の一例として、基板を回転させながら、かつ研磨テープなどの研磨具を一方向に送りながら研磨ヘッドにより研磨具を基板に押し付けることで基板を研磨する研磨装置がある。このような研磨装置の研磨ヘッドは研磨具を基板に押し付ける押圧具を備えている。しかしながら、押圧具の加工精度限界により、研磨具と接触する押圧具の接触面に凹凸が発生し、滑らかな接触面が得られないことがある。接触面が滑らかでない場合、研磨具の基板に対する押圧力のばらつきや、研磨具が基板に接触しない領域が発生し、所望の研磨性能が得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、均一な力で研磨具を基板に押し付けることができる研磨ヘッドを提供する。また、本発明は、そのような研磨ヘッドを備えた研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、基板を研磨するための研磨ヘッドであって、研磨具を基板に対して押し付けるための環状の弾性部材と、前記弾性部材を介して前記研磨具を前記基板に対して押し付ける押圧面を有する押圧具本体とを備え、前記押圧面は、前記弾性部材の第1部位が嵌合する第1嵌合溝を有し、前記第1部位は、前記押圧面から突出しており、前記弾性部材は弾性変形した状態で前記押圧具本体に掛けられており、前記研磨ヘッドは、前記第1部位により前記研磨具を基板に押し付けるように構成されている、研磨ヘッドが提供される。
【0008】
一態様では、前記弾性部材は、取り外し可能に前記押圧具本体に掛けられている。
一態様では、前記弾性部材は、円形の断面を有している。
一態様では、前記弾性部材は、フッ素樹脂を含むコーティング層で覆われている。
一態様では、前記押圧具本体は、前記押圧面から斜めに延びるテーパー面をさらに有している。
一態様では、前記押圧具本体の側面は、前記弾性部材の第2部位が嵌合する第2嵌合溝を有する。
一態様では、前記押圧具本体は、突起部を前記押圧具本体の側面に有しており、前記突起部は、前記弾性部材を支持している。
一態様では、前記第1嵌合溝は、互いに離れた位置にある複数の第1嵌合溝であり、前記第1部位は、前記複数の第1嵌合溝にそれぞれ嵌合する複数の第1部位である。
一態様では、前記第1嵌合溝は、前記基板と同一の曲率を有する円弧形状を有している。
【0009】
一態様では、基板を保持する基板保持部と、研磨具を前記基板に対して押し付けて該基板を研磨する上記研磨ヘッドとを備えている、研磨装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、研磨ヘッドは、研磨具を基板に押し付けるための環状の弾性部材を備えている。弾性部材には張力が加えられており、弾性部材は、嵌合溝に嵌りながら弾性変形した状態で押圧具本体に掛けられている。その結果、弾性部材の研磨具との接触面は引き延ばされて滑らかになる。したがって、研磨ヘッドは、研磨具を均一な力で基板に押し付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】研磨具の一例である研磨テープを基板の一例であるウェーハの表面に押し付けてウェーハを研磨するための研磨ヘッドを示す斜視図である。
【
図2】
図1の研磨ヘッドを
図1の矢印Aで示す方向から見た図である。
【
図5】押圧具本体から弾性部材を取り外した状態を示す図である。
【
図6】可動軸および押圧具が上昇したときの図である。
【
図7】研磨ヘッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【
図8】
図7の研磨ヘッドを
図7の矢印Cで示す方向から見た図である。
【
図11】
図7の押圧具本体から弾性部材を取り外した状態を示す図である。
【
図12】研磨ヘッドのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図13】研磨ヘッドを備えた研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図15】研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。
【
図17】研磨ヘッドの他の実施形態を示す模式図である。
【
図19】本実施形態の押圧具を正面(研磨テープ側)から見た模式図である。
【
図25】チルト機構によって上方に傾けられた研磨ヘッドを示す図である。
【
図26】チルト機構によって下方に傾けられた研磨ヘッドを示す図である。
【
図27】ウェーハのトップエッジ部を研磨しているときの様子を示す模式図である。
【
図28】押圧具の他の実施形態を示す模式図である。
【
図29】研磨ヘッドがウェーハWのベベル部を研磨している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨具の一例である研磨テープを基板の一例であるウェーハの表面に押し付けてウェーハを研磨するための研磨ヘッドを示す斜視図であり、
図2は、
図1の研磨ヘッドを
図1の矢印Aで示す方向から見た図であり、
図3は研磨ヘッドの上面図であり、
図4は、
図3のB-B線断面図である。
図4に示すように、本実施形態の研磨ヘッド10は、ウェーハWおよび研磨テープ3の下方に配置されている。
図1および
図2では、ウェーハWおよび研磨テープ3の図示は省略されている。
【0013】
図4に示すように、研磨ヘッド10は、研磨テープ3をウェーハWに対して押し付けるための押圧具12と、押圧具12に連結された可動軸15と、可動軸15を内部に収容するハウジング18と、可動軸15の端部とハウジング18との間に圧力室20を形成する隔壁膜(ダイヤフラム)25とを備えている。押圧具12は、研磨テープ3をウェーハWに対して押し付けるための環状の弾性部材40と、弾性部材40を支持する押圧具本体43とを備えている。
【0014】
図1乃至
図4に示すように、押圧具本体43は、弾性部材40を介して研磨テープ3をウェーハWに対して押し付ける押圧面44を有している。この押圧面44は、弾性部材40が嵌合する嵌合溝45を有している。弾性部材40は、嵌合溝45に嵌りながら弾性変形した状態で押圧具本体43に掛けられている。弾性部材40は、嵌合溝45に嵌合している部位41を有する。弾性部材40の太さは、嵌合溝45の深さよりも大きく、したがって弾性部材40の部位41は、押圧面44から突出している。
【0015】
可動軸15は、その軸方向にハウジング18内で移動可能となっており、可動軸15は、押圧具12を上昇させることができる。押圧面44は研磨テープ3の裏面に対向している。可動軸15が押圧具12を上昇させると、弾性部材40の部位41は、研磨テープ3の裏面に接触する。ウェーハWの研磨中、弾性部材40は研磨テープ3の研磨面をウェーハWの下面に押し付ける。研磨テープ3の裏面は、弾性部材40によって支持される。研磨テープ3の裏面は、砥粒を有する研磨面とは反対側の面である。ウェーハWの研磨中、研磨テープ3は所定の速度で送られる。
図3に示すように、弾性部材40の部位41および嵌合溝45は、研磨テープ3の進行方向に対して斜めに傾いている。弾性部材40の部位41および嵌合溝45の研磨テープ3の進行方向に対する角度は、
図3に示す実施形態に限定されない。
【0016】
弾性部材40は、柔軟な材料から形成されている。弾性部材40を構成する材料の例としては、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどのゴムが挙げられる。弾性部材40の断面は、円形の形状を有している。弾性部材40は、Oリングであってもよい。弾性部材40の直径は、1.0mm~10mmであることが好ましい。
【0017】
弾性部材40は、取り外し可能に押圧具本体43に掛けられている。
図5は、押圧具本体43から弾性部材40を取り外した状態を示す図である。嵌合溝45は、押圧面44を横断して真っ直ぐ延びており、嵌合溝45の断面は円弧形状を有している。弾性部材40を嵌合溝45にはめ込みながら、かつ弾性部材40を引き延ばしながら押圧具本体43に掛けることにより、弾性部材40は、押圧具本体43に固定される。
【0018】
弾性部材40が弾性変形した状態で押圧具本体43に掛けられているとき、弾性部材40には張力が加えられている。嵌合溝45の断面の曲率半径は、弾性部材40が弾性変形していないときの弾性部材40の断面の半径よりも小さい。したがって、弾性部材40の部位41は、嵌合溝45の表面に密着して嵌合溝45内に固定される。その結果、弾性部材40は、安定して押圧具本体43に固定される。
【0019】
一実施形態では、弾性部材40の断面形状は、四角形、六角形などの多角形や、断面の一部に円弧形状を有する形状であってもよい。嵌合溝45の断面形状は、円弧形状に限定されない。一実施形態では、嵌合溝45の断面は、コの字形状を有していてもよい。
【0020】
弾性部材40が押圧具本体43に掛けられているとき、弾性部材40は引き延ばされているので、弾性部材40の研磨テープ3との接触面は引き延ばされて滑らかになる。その結果、研磨ヘッド10は、研磨テープ3を均一な力でウェーハWに押し付けることができる。また、弾性部材40は、嵌合溝45の表面に密着して嵌合溝45内に固定されるので、ウェーハWの研磨中に、弾性部材40の押圧具本体43に対する相対的な位置がずれることはない。
【0021】
弾性部材40は、ねじなどの固定具で押圧具本体43に固定されていなく、単に押圧具本体43に掛けられている。したがって、研磨によって弾性部材40が劣化した場合には、弾性部材40のみを簡単に取り換えることができる。結果として、劣化した部品の交換作業が容易になり、部品交換の低コスト化を図ることができる。
【0022】
研磨によって弾性部材40の部位41が劣化した場合でも、嵌合溝45に嵌める弾性部材40の部位を同じ弾性部材40内で入れ替えることによって1つの弾性部材40を複数回使い回すことができる。したがって、弾性部材40を長寿命化させることができ、部品交換の低コスト化をさらに図ることができる。
【0023】
図1乃至
図3に示すように、弾性部材40の全体は、押圧具本体43を囲んでいる。弾性部材40は、押圧面44および押圧具本体43の複数の側面のみを通って押圧具本体43に掛けられており、弾性部材40は押圧具本体43の裏側には存在しない。したがって、作業者は、押圧具本体43を研磨ヘッド10から取り外すことなく、弾性部材40のみを容易に取り外すことができる。一実施形態では、弾性部材40は、押圧面44とは反対側(裏側)を通って掛けられていてもよいが、弾性部材40が押圧具本体43の裏側を通らずに掛けられる構成は、弾性部材40の交換をより容易にすることができる。
【0024】
本実施形態の押圧具本体43は、弾性部材40が嵌合する嵌合溝51を押圧具本体43の側面に有している。具体的には、押圧具本体43は、嵌合溝51を側面47に有している。嵌合溝51は、側面47を横断して真っ直ぐ延びており、嵌合溝51の断面は円弧形状を有している。特に説明しない嵌合溝51の詳細は、上述した嵌合溝45と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の弾性部材40は、さらに嵌合溝51に嵌りながら弾性変形した状態で押圧具本体43に掛けられている。弾性部材40は、嵌合溝51に嵌合する部位52を有している。弾性部材40の部位52は、嵌合溝51の表面に密着して嵌合溝51内に固定される。その結果、弾性部材40はさらに安定して押圧具本体43に固定される。
【0025】
本実施形態の押圧具本体43は、突起部54,55を押圧具本体43の側面に有している。具体的には、突起部54は、側面48に固定されており、突起部55は、側面48とは反対側の側面である側面49に固定されている。本実施形態では、弾性部材40は、弾性変形した状態で突起部54,55に掛けられており、弾性部材40は、突起部54,55にさらに支持されている。その結果、弾性部材40は、さらに安定して押圧具本体43に固定される。一実施形態では、突起部54は、側面48と一体に形成されていてもよく、突起部55は、側面49と一体に形成されていてもよい。
【0026】
一実施形態では、押圧具本体43の側面47は、嵌合溝51を有していなくてもよい。側面47が嵌合溝51を有していなくても、弾性部材40は、突起部54,55に掛けられることにより、安定して押圧具本体43に固定される。さらに一実施形態では、弾性部材40を支持可能な突起部が側面47に固定されていてもよい。この場合、側面47は、嵌合溝51を有していなくてもよい。
【0027】
一実施形態では、押圧具本体43は、突起部54,55のうちのいずれか1つのみを備えていてもよい。さらに一実施形態では、押圧具本体43は、弾性部材40が嵌合する嵌合溝を側面49および/または側面48に有していてもよい。この場合、押圧具本体43が突起部54および/または突起部55を備えていなくてもよい。圧具本体43が突起部54および/または突起部55を備えていなくても、弾性部材40を側面49および/または側面48に形成された嵌合溝に嵌め込むことにより、弾性部材40を安定して押圧具本体43に固定することができる。
【0028】
図4に示すように、可動軸15は、その軸方向にハウジング18内で移動可能となっている。本実施形態では、可動軸15はボールスプライン軸から構成されている。ハウジング18内にはボールスプラインナット30が配置されており、可動軸15はボールスプラインナット30により鉛直方向に移動可能に支持されている。一実施形態では、可動軸15は、ハウジング18の内面に移動可能に支持されてもよい。
【0029】
ハウジング18は、可動軸15が収容される空間が内部に形成されたハウジング本体18Aと、上記空間を塞ぐ蓋18Bとを備えている。蓋18Bはねじ31によりハウジング本体18Aに着脱可能に固定されている。隔壁膜25は、可動軸15の端部(下端)に接触しており、隔壁膜25の縁は、ハウジング本体18Aと蓋18Bとの間に挟まれている。隔壁膜25は可動軸15に接触しているのみであり、可動軸15に固定されていない。
【0030】
圧力室20は、隔壁膜25とハウジング18の内面とによって形成されている。より具体的には、圧力室20は、隔壁膜25と蓋18Bの内面とによって形成されている。ハウジング18の蓋18Bには、圧力室20に連通する圧縮気体流路33が形成されている。この圧縮気体流路33は、圧力レギュレータ36および切り替え弁35を経由して圧縮気体供給源38に接続されている。切り替え弁35は、圧縮気体流路33を圧縮気体供給源38または大気に選択的に連通させる弁である。切り替え弁35としては三方弁を用いることができる。圧縮気体供給源38は、ポンプ、または工場に予め設置されているユーティリティ設備としての圧縮気体供給ラインとすることができる。
【0031】
隔壁膜25は、柔軟な材料から形成されている。隔壁膜25を構成する材料の例としては、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが挙げられる。耐屈曲疲労性の高いクロロプレンゴムが好ましく用いられる。
【0032】
ウェーハWを研磨するときは、切り替え弁35を操作して圧縮気体流路33を圧縮気体供給源38に連通させる。圧縮空気などの圧縮気体は、圧縮気体供給源38から圧縮気体流路33を通って圧力室20に供給される。圧力室20内の圧縮気体の圧力は、圧力レギュレータ36によって制御される。圧力室20内の圧縮気体の圧力は、隔壁膜25を介して可動軸15の端部(下端)に作用し、可動軸15および押圧具12を上昇させる。
図6は、可動軸15および押圧具12が上昇したときの図である。押圧具12の弾性部材40は、研磨テープ3をウェーハWの下面に押し付けることができる。
【0033】
図6に示すように、弾性部材40が研磨テープ3をウェーハWの下面に押し付けているとき、研磨テープ3は押圧具本体43に接近する方向に撓む。そこで、研磨テープ3が押圧具本体43に接触することを防止するために、本実施形態の押圧具本体43は、押圧面44から斜めに延びる複数のテーパー面56a,56bをさらに有している。より具体的には、テーパー面56aは、押圧面44から斜め下方に延び、側面47に接続されている。他方のテーパー面56bは、押圧面44から斜め下方に延び、側面47とは反対側の側面50に接続されている。これらのテーパー面56a,56bは、弾性部材40が研磨テープ3をウェーハWの下面に押し付けているときに、研磨テープ3が押圧具本体43に接触することを防止することができる。
【0034】
ウェーハWの研磨を終了させるときは、切り替え弁35を操作して圧縮気体流路33を大気に連通させる。圧力室20は大気開放され、その結果、可動軸15の自重および研磨テープ3の張力により可動軸15および押圧具12が
図4に示す退避位置まで下降する。
【0035】
圧力室20内には、可動軸15のハウジング18に対する相対的な移動距離を測定する距離センサ65の少なくとも一部が配置されている。距離センサ65の全体が圧力室20内に配置されてもよい。本実施形態の距離センサ65は、非接触型の光学式距離センサである。距離センサ65の先端は、可動軸15の端部を向いて配置されている。
【0036】
図6に示すように、押圧具12は、ユニバーサルジョイント67を介して可動軸15の上端に連結されている。ユニバーサルジョイント67は、可動軸15と押圧具12との間に配置されており、かつ押圧具12の内部に収容されている。このような配置は、研磨テープ3がウェーハWに接触しているときにウェーハWから押圧具12に加わる反力に起因するモーメントを小さくすることができる。結果として、研磨ヘッド10の姿勢を安定させることができる。
【0037】
ユニバーサルジョイント67は、押圧具12が可動軸15に対して全方向に傾くことを許容する。したがって、押圧具12が研磨テープ3をウェーハWの表面に対して押し付けると、押圧具12は自動的にウェーハWの表面と平行になる。押圧具12を傾動可能に支持するユニバーサルジョイント67は、研磨テープ3がウェーハWの表面に均一に押し付けられることを可能とする。
【0038】
図4に示すように、押圧具12にはスカート71が固定されている。このスカート71は押圧具12から下方に延び、ハウジング18の上部を囲んでいる。本実施形態ではスカート71は円筒状であるが、ハウジング18の上部を囲むことができるのであれば、他の形状であってもよい。スカート71は、ウェーハWの研磨に使用される純水などの液体がユニバーサルジョイント67やハウジング18内に侵入することを防ぐことができる。
【0039】
上述した構成を持つ研磨ヘッド10は、その全体がコンパクトであるので、ウェーハWの下方に配置することが可能である。さらに、複数の研磨ヘッド10をウェーハWの下方に配置することも可能である。
【0040】
図7は、研磨ヘッド10の他の実施形態を示す斜視図であり、
図8は、
図7の研磨ヘッド10を
図7の矢印Cで示す方向から見た図であり、
図9は、
図7の研磨ヘッド10の上面図であり、
図10は、
図9のD-D線断面図であり、
図11は、
図7の押圧具本体43から弾性部材40を取り外した状態を示す図である。
図10は、弾性部材40が研磨テープ3をウェーハWの下面に押し付けているときの状態を示している。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0041】
本実施形態の押圧具本体43は、複数の嵌合溝45を押圧面44に有している。具体的には、押圧具本体43は、2つの嵌合溝45を押圧面44に有している。2つの嵌合溝45は、互いに離れた位置にあり、押圧具本体43を上から見たときに、研磨テープ3の進行方向に対して斜めに傾いている。本実施形態では、2つの嵌合溝45は、側面47と側面50の間にある押圧面44の中心線L1(
図9参照)に関して対称に配置されている。一実施形態では、2つの嵌合溝45は、研磨テープ3の進行方向に対して斜めに傾いていれば、中心線L1に対して対称に配置されていなくてもよい。押圧具本体43は、押圧具本体43の側面48に固定された突起部54と、側面49に固定された複数の突起部55を備えている。押圧具本体43を上から見たときに、突起部54は中心線L1上に配置されている。2つの突起部55は、互いに離れた位置にあり、同じ高さに配置されている。押圧具本体43を上から見たときに、2つの突起部55は、中心線L1に関して対称に配置されている。弾性部材40は、2つの嵌合溝45に嵌りながら弾性変形した状態で突起部54,55に掛けられている。突起部54,55を上述の配置とすることにより、弾性部材40を安定して押圧具本体43に固定することができる。一実施形態では、弾性部材40を安定して押圧具本体43に固定できる配置であれば、突起部54は、中心線L1上に配置されていなくてもよく、2つの突起部55は、中心線L1に関して対称に配置されていなくてもよい。
【0042】
弾性部材40は、2つの嵌合溝45にそれぞれ嵌合する2つの部位41を有している。これら2つの部位41は、押圧面44から突出している。弾性部材40の2つの部位41は、研磨テープ3と弾性部材40の接触面積を増加させることができ、ウェーハWの研磨レートを増加させることができる。上述した本実施形態の構成によれば、2つの部位41を1つの弾性部材40で構成することができる。その結果、低コストの構成でウェーハWの研磨レートを増加させることができる。
【0043】
一実施形態では、突起部55の数は、2つでなくてもよい。例えば、押圧具本体43は、横に長い1つの突起部55を備えていてもよく、3つ以上の突起部55を備えていてもよい。さらに一実施形態では、複数の突起部55は、安定して弾性部材40を押圧具本体43に固定できる配置であれば、同じ高さに配置されていなくてもよい。
【0044】
図12は、研磨ヘッド10のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の弾性部材40は、フッ素樹脂を含むコーティング層58で覆われている。弾性部材40を覆うコーティング層58は、ウェーハWの研磨中の弾性部材40と、研磨テープ3の裏面との摺動抵抗を低下させることができる。その結果、ウェーハWの研磨中、滑らかに研磨テープ3を送ることができ、研磨テープ3を送るのに必要な力を低下させることができる。本実施形態の研磨ヘッド10は、
図7乃至
図11を参照して説明した実施形態にも適用することができる。
【0045】
図13は、研磨ヘッド10を備えた研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図13に示す研磨装置100は、基板の一例であるウェーハWを保持し、その軸心を中心として回転させる基板保持部110と、研磨具としての研磨テープ3をこの基板保持部110に保持されたウェーハWの第1の面1に接触させてウェーハWの第1の面1を研磨する上記研磨ヘッド10と、研磨テープ3を研磨ヘッド10に供給する研磨テープ供給機構141を備えている。
【0046】
基板保持部110は、ウェーハWの周縁部に接触可能な複数のローラー111と、複数のローラー111をそれぞれの軸心を中心に回転させるローラー回転機構(図示せず)とを備えている。研磨ヘッド10は、基板保持部110に保持されているウェーハWの下側に配置されている。
図13では、基板保持部110の一部の図示は省略されている。本実施形態の基板保持部110は、4つのローラー111を備えている(うち2つは図示せず)。
【0047】
本実施形態では、ウェーハWの第1の面1は、デバイスが形成されていない、またはデバイスが形成される予定がないウェーハWの裏面、すなわち非デバイス面である。第1の面1とは反対側のウェーハWの第2の面2は、デバイスが形成されている、またはデバイスが形成される予定である面、すなわちデバイス面である。本実施形態では、ウェーハWは、その第1の面1が下向きの状態で、基板保持部110に水平に保持される。
【0048】
ローラー回転機構は、4つのローラー111を同じ方向に同じ速度で回転させるように構成されている。ウェーハWの第1の面1の研磨中、ウェーハWの周縁部は、ローラー111によって把持される。ウェーハWは水平に保持され、ローラー111の回転によってウェーハWはその軸心を中心に回転される。ウェーハWの第1の面1の研磨中、4つのローラー111はそれぞれの軸心を中心に回転するが、ローラー111自体の位置は静止している。
【0049】
図13に示すように、基板保持部110に保持されたウェーハWの下方には、ウェーハWの第1の面1にリンス液(例えば純水、またはアルカリ性の薬液)を供給するリンス液供給ノズル127が配置されている。このリンス液供給ノズル127は、図示しないリンス液供給源に接続されている。リンス液供給ノズル127は、ウェーハWの第1の面1の中心O1を向いて配置されている。リンス液は、リンス液供給ノズル127からウェーハWの第1の面1に供給され、遠心力によりリンス液はウェーハWの第1の面1上を広がる。リンス液は、ウェーハWの第1の面1上を半径方向外側に流れ、これにより研磨屑をウェーハWの第1の面1から除去することができる。
【0050】
基板保持部110に保持されたウェーハWの上方には、ウェーハWの第2の面2に保護液(例えば純水)を供給する保護液供給ノズル128が配置されている。保護液供給ノズル128は、図示しない保護液供給源に接続されている。保護液供給ノズル128はウェーハWの第2の面2の中心を向いて配置されている。保護液は、保護液供給ノズル128からウェーハWの第2の面2の中心に供給され、遠心力により保護液はウェーハWの第2の面2上を広がる。保護液は、ウェーハWの研磨で生じた研磨屑や異物を含むリンス液がウェーハWの第2の面2に回り込んでウェーハWの第2の面に付着することを防止する。その結果、ウェーハWの第2の面2を清浄に保つことができる。
【0051】
研磨ヘッド10は、支持部材131に支持されており、支持部材131は可動プレート120に固定されている。したがって、研磨ヘッド10の全体は可動プレート120と一体に移動可能となっている。支持部材131は図示しない通孔を有しており、研磨テープ3はこの通孔を通って延びている。
【0052】
研磨テープ供給機構141は、研磨テープ3を供給するテープ巻き出しリール143と、研磨テープ3を回収するテープ巻き取りリール144とを備えている。テープ巻き出しリール143およびテープ巻き取りリール144は、それぞれテンションモータ143a,144aに連結されている。これらテンションモータ143a,144aは、リールベース142に固定されており、所定のトルクをテープ巻き出しリール143およびテープ巻き取りリール144に与えることにより、研磨テープ3に所定のテンションをかけることができる。リールベース142は、可動プレート120に固定されており、研磨テープ供給機構141の全体は可動プレート120と一体に移動可能となっている。
【0053】
テープ巻き出しリール143とテープ巻き取りリール144との間には、研磨テープ3をその長手方向に送るテープ送り装置146が設けられている。このテープ送り装置146は、研磨テープ3を送るテープ送りローラー148と、研磨テープ3をテープ送りローラー148に対して押し付けるニップローラー149と、テープ送りローラー148を回転させるテープ送りモータ147とを備えている。研磨テープ3はニップローラー149とテープ送りローラー148との間に挟まれている。テープ送りモータ147がテープ送りローラー148を
図13の矢印で示す方向に回転させると、研磨テープ3はテープ巻き出しリール143から研磨ヘッド10の押圧具12を経由してテープ巻き取りリール144に送られる。研磨テープ3を送る速度は、テープ送りモータ147の回転速度を変化させることによって変更できる。一実施形態では、研磨テープ3を送る方向は、
図13の矢印で示す方向の逆方向としてもよい(テープ巻き出しリール143とテープ巻き取りリール144の配置を入れ替えてもよい)。この場合も、テープ送り装置146はテープ巻き取りリール144側に設置される。研磨テープ3は、研磨テープ3の研磨面3aがウェーハWの第1の面1を向くように押圧具12に供給される。
【0054】
研磨装置100は、研磨テープ3を支持する複数のガイドローラー153a,153b,153c,153dをさらに備えている。研磨テープ3は、これらガイドローラー153a,153b,153c,153dにより研磨ヘッド10を囲むように案内される。研磨ヘッド10は、押圧具12によって研磨テープ3をその裏側からウェーハWの第1の面1に押し付けることでウェーハWの第1の面1を研磨する。研磨ヘッド10の上部に配置されたガイドローラー153b,153cは、ウェーハWの第1の面1と平行な方向に研磨テープ3が進行するように研磨テープ3をガイドする。
【0055】
テープ送り装置146およびガイドローラー153a,153b,153c,153dは、図示しない保持部材に固定されており、この保持部材は可動プレート120に固定されている。
【0056】
研磨テープ3をウェーハWの第1の面1の中心O1から最外部まで接触させるために、本実施形態の研磨装置100は、研磨ヘッド10を基板保持部110に対して相対的に平行移動させる研磨ヘッド移動機構191を備えている。研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の中心O1と第1の面1の最外部との間で移動させるように構成されている。
【0057】
可動プレート120の下面には複数の直動ガイド195が固定されており、可動プレート120は複数の直動ガイド195に支持されている。複数の直動ガイド195は設置面197に配置されている。可動プレート120は研磨ヘッド移動機構191によって移動され、直動ガイド195は、可動プレート120の動きをウェーハWの半径方向への直線運動に制限する。
【0058】
研磨ヘッド移動機構191は、ボールねじ機構193と、ボールねじ機構193を駆動するモータ194とを備えている。モータ194としてサーボモータを使用することができる。可動プレート120は、ボールねじ機構193のねじ軸193bに連結されている。研磨ヘッド移動機構191を作動させると、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、テープ送り装置146、およびガイドローラー153a,153b,153c,153dは、基板保持部110に対して相対的にウェーハWの半径方向に移動する。
【0059】
ウェーハWの研磨中、研磨ヘッド移動機構191は研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の中心O1と第1の面1の最外部との間で移動させる。研磨装置100は、研磨装置100の各構成要素の動作を制御する動作制御部180をさらに備えている。研磨ヘッド移動機構191は、動作制御部180に電気的に接続されており、研磨ヘッド移動機構191の動作は、動作制御部180によって制御される。研磨ヘッド移動機構191が動作すると、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、テープ送り装置146、およびガイドローラー153a,153b,153c,153dは、一体に移動する。
【0060】
ウェーハWの研磨中、ウェーハWはローラー111によって回転される。全てのローラー111は各軸心を中心に回転するが、これらローラー111の位置は固定されている。したがって、研磨ヘッド10が研磨ヘッド移動機構191によってウェーハWの中心側から外側に移動しても、ローラー111は研磨ヘッド10に接触しない。結果として、研磨テープ3は、最外部を含むウェーハWの第1の面1の全体を研磨することが可能となる。
【0061】
図14は、研磨ヘッド10の配置を示す平面図である。
図14に示すように、嵌合溝45に嵌合している弾性部材40の部位41は、ウェーハWの半径よりも短い。弾性部材40の部位41および嵌合溝45は、研磨テープ3の進行方向(矢印Eで示す)に対して斜めに延びている。本実施形態では、研磨テープ3の進行方向Eは、研磨テープ3の長手方向に一致する。嵌合溝45に嵌合している弾性部材40の部位41は、研磨テープ3の進行方向E(研磨テープ3の長手方向)に対して斜めに傾いているので、研磨テープ3の進行方向の下流側(本実施形態の場合、ウェーハWの外周側)でも未使用の研磨テープ3をウェーハWに接触させることができる。結果として、研磨によって劣化した研磨テープ3が使用されることに起因する研磨レートの低下を防ぐことができる。一実施形態では、嵌合溝45に嵌合している弾性部材40の部位41は、ウェーハWの半径よりも長くてもよい。さらに、一実施形態では、嵌合溝45に嵌合している弾性部材40の部位41は、研磨テープ3の進行方向Eに対して垂直であってもよい。
【0062】
次に、本実施形態の研磨装置100の動作について説明する。以下に説明する研磨装置100の動作は、
図13に示す動作制御部180によって制御される。動作制御部180は、基板保持部110、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、テープ送り装置146、および研磨ヘッド移動機構191に電気的に接続されている。基板保持部110、リンス液供給ノズル127、保護液供給ノズル128、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、テープ送り装置146、および研磨ヘッド移動機構191の動作は動作制御部180によって制御される。
【0063】
動作制御部180は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部180は、記憶装置180aと、演算装置180bを備えている。演算装置180bは、記憶装置180aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置180aは、演算装置180bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0064】
研磨されるウェーハWは、第1の面1が下向きの状態で、基板保持部110のローラー111により保持され、さらにウェーハWの軸心を中心に回転される。具体的には、基板保持部110は、ウェーハWの第1の面1が下向きの状態で複数のローラー111をウェーハWの周縁部に接触させながら、複数のローラー111をそれぞれの軸心を中心に回転させることで、ウェーハWを回転させる。次に、リンス液供給ノズル127からウェーハWの第1の面1にリンス液が供給され、保護液供給ノズル128からウェーハWの第2の面2に保護液が供給される。リンス液は、ウェーハWの第1の面1上を半径方向外側に流れ、保護液は、遠心力によりウェーハWの第2の面2の全体に広がる。
【0065】
研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の中心O1の下方に移動させる。動作制御部180は、研磨テープ供給機構141およびテープ送り装置146を駆動し、所定のテンションを掛けながら研磨テープ3をその長手方向に所定の速度で進行させる。次に、研磨ヘッド10は研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWの第1の面1に接触させ、リンス液の存在下でウェーハWの第1の面1の研磨を開始する。さらに、研磨ヘッド10が研磨テープ3でウェーハWの第1の面1を押し付けながら、研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、ガイドローラー153a,153b,153c,153d、およびテープ送り装置146をウェーハWの半径方向外側に移動させる。ウェーハWの研磨中、リンス液供給ノズル127および保護液供給ノズル128は、リンス液および保護液を常にウェーハWに供給し続ける。
【0066】
研磨ヘッド10がウェーハWの第1の面1の最外部に到達したとき、動作制御部180はウェーハWの研磨を終了させる。具体的には、研磨ヘッド10は、押圧具12を下降させ、研磨テープ3をウェーハWの第1の面1から離す。その後、動作制御部180は、基板保持部110、リンス液供給ノズル127、保護液供給ノズル128、研磨テープ供給機構141、およびテープ送り装置146の動作を停止させ、ウェーハWの研磨を終了する。一実施形態では、研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の最外部と中心O1との間で往復させてもよい。
【0067】
図15は、研磨装置100の他の実施形態を示す模式図であり、
図16は、
図15の研磨装置100の上面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図13および
図14を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図15では、リンス液供給ノズル127の図示は省略されている。本実施形態の研磨装置100は、研磨ヘッド組立体11A,11Bと、研磨テープ3を研磨ヘッド組立体11A,11Bにそれぞれ供給する研磨テープ供給機構141A,141Bと、研磨テープ3をその長手方向に送るテープ送り装置146A,146Bを備えている。研磨ヘッド組立体11Aは、研磨ヘッド10A,10Bを備えている。同様に、研磨ヘッド組立体11Bは、研磨ヘッド10A,10Bを備えている。研磨ヘッド組立体11Aは、支持部材131Aに支持されており、研磨ヘッド組立体11Bは、支持部材131Bに支持されている。研磨ヘッド組立体11Aに供給される研磨テープ3は、ガイドローラー353a,353b,353c,353dに支持されており、研磨ヘッド組立体11Bに供給される研磨テープ3は、ガイドローラー453a,453b,453c,453dに支持されている。研磨ヘッド10Aは、
図1乃至
図6を参照して説明した研磨ヘッド10に相当し、研磨ヘッド10Bは、
図7乃至
図11を参照して説明した研磨ヘッド10に相当する。研磨テープ供給機構141A,141B、テープ送り装置146A,146B、支持部材131A,131B、ガイドローラー353a,353b,353c,353d、ガイドローラー453a,453b,453c,453dの構成は、
図13を参照して説明した研磨テープ供給機構141、テープ送り装置146、支持部材131、ガイドローラ153a,153b,153c,153dと同じである。本実施形態の研磨装置100は、研磨ヘッド移動機構191を備えていない。したがって、研磨中、研磨ヘッド組立体11A,11Bの位置は固定されている。
図12を参照して説明したコーティング層58は、本実施形態の研磨ヘッド10A,10Bにも適用することができる。
【0068】
複数の研磨ヘッド10A,10Bは、基板保持部110の軸心CP(ウェーハWの第1の面1の中心O1)から異なる距離に配置されている。基板保持部110の軸心CPから複数の部位41の全体の最外端までの距離d1は、ウェーハWの半径d2よりも長い。
【0069】
研磨中、テープ送り装置146Aは、研磨テープ3を
図15,16の矢印Fで示す方向に送り、テープ送り装置146Bは、研磨テープ3を
図15,16の矢印Gで示す方向に送る。すなわち、それぞれの研磨テープ3は、ウェーハWの中心部から外周部に向かって送られる。これにより、ウェーハWの研磨で生じた研磨屑をウェーハWの中心部からウェーハWの外側へ効率よく排出させることができる。複数の研磨ヘッド10A,10Bは、互いに独立して動作可能に構成されている。研磨ヘッド組立体11Aの研磨ヘッド10A,10Bは、研磨テープ3の進行方向F(研磨テープ3の長手方向)に沿って隙間をあけて配列されており、研磨ヘッド組立体11Bの研磨ヘッド10A,10Bは、研磨テープ3の進行方向G(研磨テープ3の長手方向)に沿って隙間をあけて配列されている。本実施形態の複数の部位41のそれぞれは、研磨テープ3の進行方向F,Gに対して斜めに延びている。研磨テープ3の進行方向Fまたは進行方向Gから見たとき、複数の部位41は、研磨テープ3の進行方向F,Gに垂直な方向に沿って連続的に配列されている。さらに、研磨テープ3の進行方向Fまたは進行方向Gから見たとき、複数の部位41は、隙間なく連続的に配列されている。
【0070】
複数の部位41は、一直線上には並んでいないが、これら部位41は、基板保持部110の軸心CPから異なる距離に位置しているので、ウェーハWが回転しているとき、ウェーハWの第1の面1の各領域は、複数の部位41のいずれかを通過する。したがって、複数の弾性部材40は、研磨テープ3をウェーハWの第1の面1の全面に押し付けることができる。
【0071】
図17は、研磨ヘッド10の他の実施形態を示す模式図である。本実施形態の研磨ヘッド10は、基板(例えばウェーハ)の周縁部を研磨する研磨装置にも好適に使用される。本明細書では、基板の周縁部を、基板の最外周に位置するベベル部と、このベベル部の半径方向内側に位置するトップエッジ部およびボトムエッジ部とを含む領域として定義する。
【0072】
図18(a)および
図18(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、
図18(a)はいわゆるストレート型の基板の断面図であり、
図18(b)はいわゆるラウンド型の基板の断面図である。
図18(a)の基板Wfにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成される基板Wfの最外周面(符号Bで示す)である。
図18(b)の基板Wfにおいては、ベベル部は、基板Wfの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部は、ベベル部Bの半径方向内側に位置する環状の平坦部E1であり、基板Wfのデバイス面内に位置する領域である。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Bの半径方向内側に位置する環状の平坦部E2である。トップエッジ部E1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。
【0073】
図17に戻って、研磨ヘッド10は、研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWに対して所定の力で押圧する押圧機構241を備えている。また、研磨ヘッド10は、研磨テープ3を後述するテープ巻き出しリール243(
図17には図示せず)から後述するテープ巻き取りリール244(
図17には図示せず)へ送るテープ送り装置252を備えている。研磨ヘッド10は複数のガイドローラー253,254,255,256,257,258,259を有しており、これらのガイドローラーはウェーハWの接線方向と直交する方向に研磨テープ3が進行するように研磨テープ3をガイドする。
【0074】
研磨ヘッド10に設けられたテープ送り装置252は、テープ送りローラー252aと、テープ把持ローラー252bと、テープ送りローラー252aを回転させるモータMとを備えている。モータMは研磨ヘッド10の側面に設けられ、モータMの回転軸にテープ送りローラー252aが取り付けられている。テープ把持ローラー252bはテープ送りローラー252aに隣接して配置されている。テープ把持ローラー252bは、
図17の矢印NFで示す方向(テープ送りローラー252aに向かう方向)に力を発生するように図示しない機構で支持されており、テープ送りローラー252aを押圧するように構成されている。
【0075】
モータMが
図17に示す矢印方向に回転すると、テープ送りローラー252aが回転して研磨テープ3をテープ巻き出しリール243(
図17には図示せず)から研磨ヘッド10を経由してテープ巻き取りリール244(
図17には図示せず)へ送ることができる。テープ把持ローラー252bはそれ自身の軸まわりに回転することができるように構成され、研磨テープ3が送られるに従って回転する。
【0076】
押圧機構241は、研磨テープ3をウェーハWに対して押し付けるための押圧具12と、この研磨具12をウェーハWの周縁部に向かって移動させるエアシリンダ(駆動機構)251とを備えている。エアシリンダ251はいわゆる片ロッドシリンダである。エアシリンダ251へ供給する空気圧を制御することによって、研磨テープ3をウェーハWに対して押圧する力が調整される。押圧具12は、研磨テープ3の裏面側に配置されている。
【0077】
図19は、本実施形態の押圧具12を正面(研磨テープ側)から見た模式図であり、
図20は、
図19の押圧具12を側面48から見た図であり、
図21は、
図19の押圧具12を側面49から見た図である。特に説明しない本実施形態の押圧具12の詳細は、
図1乃至
図5を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図19に示すように、本実施形態の押圧具12の研磨具本体43は、間を空けて配置された2つの凸部43a,43bと、凸部43a,43bに接続された基部43cを備えている。凸部43aと、凸部43bは並列に配列されている。凸部43a,43bと基部43cは、一体に形成されていてもよい。
【0078】
凸部43aは、押圧面44aを有し、凸部43bは、押圧面44bを有している。すなわち、本実施形態の押圧面44は、間を空けて配置された押圧面44aおよび押圧面44bから構成されている。押圧面44aと押圧面44bは並列に配置されている。押圧面44a,44bは、それぞれ嵌合溝45a,45bを有している。押圧具12の正面から見たときに、嵌合溝45a,45bは、中心線Ctに関して対称に配置されており、中心線Ctに向かって内側に湾曲している。より具体的には、嵌合溝45a,45bは、後述する被研磨対象としてのウェーハW(
図19には図示せず)の曲率と同じ曲率を有する円弧形状を有している。
【0079】
押圧具12は、2つの弾性部材40a,40bを備えている。弾性部材40aは、嵌合溝45aに嵌りながら弾性変形した状態で押圧具本体43に掛けられており、弾性部材40bは、嵌合溝45bに嵌りながら弾性変形した状態で押圧具本体43に掛けられている。弾性部材40aは、嵌合溝45aに嵌合する部位41aを有しており、弾性部材40bは、嵌合溝45bに嵌合する部位41bを有している。これら部位41a,41bは、押圧面44a,44bからそれぞれ突出している。弾性部材40a,40bの部位41a,41bは、中心線Ctに向かって内側に湾曲し、ウェーハWの曲率と同じ曲率を有している。
【0080】
本実施形態の押圧具本体43は、押圧面44a,44bとは反対側の面である裏面46に間を空けて位置する2つの嵌合溝60a,60bを有している。嵌合溝60a,60bは、一方の側面48から他方の側面49まで延びている。弾性部材40aは、嵌合溝60aに嵌っており、弾性部材40bは、嵌合溝60bに嵌っている。その結果、弾性部材40は、安定して押圧具本体43に固定される。一実施形態では、押圧具本体43は、側面48および/または側面49に弾性部材40a,40bを嵌めるための嵌合溝を有していてもよい。
【0081】
凸部43aは、押圧面44aから斜めに延びるテーパー面56aを有し、凸部43bは、押圧面44bから斜めに延びるテーパー面56bを有している。より具体的には、テーパー面56aは押圧面44aから基部43cに向かって斜めに延び、側面47aに接続されている。テーパー面56bは押圧面44bから基部43cに向かって斜めに延び、側面50aに接続されている。これらのテーパー面56a,56bは、弾性部材40a,40bが研磨テープ3をウェーハWに押し付けているときに、研磨テープ3が押圧具本体43に接触することを防止することができる。
図12を参照して説明したコーティング層58は、本実施形態の押圧具12にも適用することができる。
【0082】
図22および
図23は、
図19乃至
図21を参照して説明した押圧具12の他の実施形態を示す模式図である。
図22は押圧具12を側面48から見た図であり、
図23は、研磨具12を側面49から見た図である。
図22および
図23に示すように、
図7乃至
図11を参照して説明した実施形態を、
図19乃至
図21を参照して説明した押圧具12に適用してもよい。特に説明しない本実施形態の押圧具12の詳細は、
図7乃至
図11および
図19乃至
図21を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の押圧具本体43は、側面48に突起部54を有し、側面49に突起部55を有している。押圧具本体43は、嵌合溝60a,60bを有していない。本実施形態では、押圧具本体43は、1つの突起部54と、1つの突起部55を備えているが、一実施形態では、押圧具本体43は、2つ以上の突起部54と、2つ以上の突起部55を備えていてもよい。
【0083】
本実施形態では、嵌合溝45a,45bにそれぞれ嵌合する2つの部位41a,41bを1つの弾性部材40で構成することができる。その結果、交換部品の低コスト化を図ることができる。さらに、本実施形態の弾性部材40は、押圧具本体43の裏面46には支持されていないので、弾性部材40の交換がより容易になる。
【0084】
図24は、
図17および
図19乃至
図23を参照して説明した研磨ヘッド10を備えた研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図24に示す研磨装置200は、基板(例えばウェーハ)の周縁部を研磨する研磨装置に好適に使用される。研磨装置200は、研磨対象物であるウェーハWを保持し、回転させる基板保持部210と、基板保持部210に保持されたウェーハWの周縁部に研磨具を接触させてウェーハWの周縁部を研磨する研磨ヘッド10と、ウェーハWの下面に液体を供給する下側供給ノズル222と、ウェーハWの上面に液体を供給する上側供給ノズル230とを備えている。ウェーハWに供給される液体の一例として、純水が挙げられる。ウェーハWの研磨中、下側供給ノズル222からウェーハの下面に液体が供給され、上側供給ノズル230からウェーハWの上面に液体が供給される。
【0085】
図24では、基板保持部210がウェーハWを保持している状態を示している。研磨ヘッド10は、基板保持部210にウェーハWが保持されているとき、ウェーハWの周縁部を向いている。基板保持部210は、ウェーハWを真空吸着により保持する保持ステージ204と、保持ステージ204の中央部に連結されたシャフト205と、保持ステージ204を回転させ、かつ上下動させる保持ステージ駆動機構207とを備えている。保持ステージ駆動機構207は、保持ステージ204を、その軸心Crを中心に回転させ、軸心Crに沿って上下方向に移動させることが可能に構成されている。
【0086】
保持ステージ204、研磨ヘッド10、下側供給ノズル222、上側供給ノズル230、および保持ステージ204は隔壁260の内部に配置されている。隔壁260の内部は、ウェーハWが研磨される研磨室を構成している。隔壁260は、ベースプレート265上に配置されている。シャフト205は、ベースプレート265を貫通して延びている。
【0087】
保持ステージ駆動機構207は、保持ステージ204を回転させるステージ回転装置としてのモータ214と、保持ステージ204を上下動させるためのエアシリンダ217とを備えている。モータ214は、ベースプレート265の下面に固定されている。保持ステージ204は、シャフト205と、このシャフト205に連結されたプーリー211aと、モータ214の回転軸に取り付けられたプーリー211bと、これらプーリー211a,211bに掛けられたベルト212を介してモータ214によって回転される。モータ214の回転軸はシャフト205と平行に延びている。このような構成により、保持ステージ204の上面に保持されたウェーハWは、モータ214によって回転される。シャフト205は、シャフト205の下端に取り付けられたロータリージョイント216を介してエアシリンダ217に連結されており、エアシリンダ217によってシャフト205および保持ステージ204が上昇および下降できるようになっている。
【0088】
ウェーハWは、図示しない搬送機構により、ウェーハWの中心O1が保持ステージ204の軸心Cr上にあるように保持ステージ204の上面に載置される。ウェーハWは、デバイス面が上向きの状態で保持ステージ204の上面に保持される。このような構成により、基板保持部210は、ウェーハWを保持ステージ204の軸心Cr(すなわちウェーハWの軸心)を中心に回転させ、かつウェーハWを保持ステージ204の軸心Crに沿って上昇下降させることができる。
【0089】
本実施形態では、研磨具の一例として、砥粒を表面に有する研磨テープ3が使用されている。研磨装置200は、研磨テープ3を研磨ヘッド10に供給し、かつ研磨ヘッド10から回収する研磨テープ供給機構242をさらに備えている。研磨テープ供給機構242は、隔壁260の外に配置されている。研磨テープ供給機構242は、研磨テープ3を研磨ヘッド10に供給するテープ巻き出しリール243と、ウェーハWの研磨に使用された研磨テープ3を回収するテープ巻き取りリール244とを備えている。テープ巻き出しリール243およびテープ巻き取りリール244には図示しないテンションモータがそれぞれ連結されている。それぞれのテンションモータは、テープ巻き出しリール243およびテープ巻き取りリール244に所定のトルクを与え、研磨テープ3に所定のテンションを掛けることができるようになっている。
【0090】
研磨テープ3は、研磨テープ3の研磨面がウェーハWの周縁部を向くように研磨ヘッド10に供給される。研磨テープ3は、隔壁260に設けられた開口部260aを通してテープ巻き出しリール243から研磨ヘッド10へ供給され、使用された研磨テープ3は開口部260aを通ってテープ巻き取りリール244に回収される。研磨テープ供給機構242は、研磨テープ3を支持するための複数のガイドローラー245,246,247,248をさらに備えている。研磨テープ3の進行方向は、ガイドローラー245,246,247,248によってガイドされる。
【0091】
研磨装置200は、図示しないチルト機構をさらに備えている。研磨装置200は、チルト機構により研磨ヘッド10の傾斜角度を変化させながらウェーハWの周縁部を研磨することができる。
図25は、チルト機構(図示せず)によって上方に傾けられた研磨ヘッド10を示す図であり、
図26は、チルト機構によって下方に傾けられた研磨ヘッド10を示す図である。
【0092】
図25に示すように、弾性部材40aの部位41aは、研磨ヘッド10を上方に傾けたときにウェーハWの周縁部の上方に位置し、トップエッジ部に対向する。
図26に示すように、弾性部材40bの部位41bは、研磨ヘッド10を下方に傾けたときにウェーハWの周縁部の下方に位置し、ボトムエッジ部に対向する。トップエッジ部を研磨するときは、研磨ヘッド10を上方に傾けた状態で弾性部材40aの部位41aにより研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWの周縁部(すなわち、トップエッジ部)に対して押圧する。ボトムエッジ部を研磨するときは、研磨ヘッド10を下方に傾けた状態で部位41bにより研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWの周縁部(すなわち、ボトムエッジ部)に対して押圧する。これら部位41a,41bの押圧力は、エアシリンダ251により調整することができる。ウェーハWの研磨中、研磨テープ3の裏面は、弾性部材40aまたは弾性部材40bによって支持される。
【0093】
研磨装置200は、研磨装置200の各構成要素の動作を制御する動作制御部280を備えている。研磨ヘッド10、基板保持部210、下側供給ノズル222、上側供給ノズル230、研磨テープ供給機構242、およびチルト機構は、動作制御部280に電気的に接続されている。研磨ヘッド10、基板保持部210、下側供給ノズル222、上側供給ノズル230、研磨テープ供給機構242、およびチルト機構の動作は、動作制御部280によって制御される。研磨中、動作制御部280は、研磨テープ供給機構242およびテープ送り装置252を作動させ、研磨テープ3に所定のテンションを掛けながら研磨テープ3をその長手方向に所定の速度で進行させる。
【0094】
動作制御部280は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部280は、記憶装置280aと、演算装置280bを備えている。演算装置280bは、記憶装置280aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置280aは、演算装置280bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0095】
図27は、ウェーハWのトップエッジ部を研磨しているときの様子を示す模式図である。研磨ヘッド10は、研磨テープ3をウェーハWに押圧しながら、リニアアクチュエータ(図示せず)などから構成される移動機構によって
図27の矢印で示す方向(ウェーハWの径方向外側)に一定の速度で移動する。移動機構の動作は動作制御部280によって制御される。本実施形態では、嵌合溝45aに嵌合する弾性部材40aの部位41aがウェーハWの周縁部に沿って湾曲しているので、研磨テープ3がウェーハWに接触している時間がトップエッジ部全体に亘って均一となる。したがって、トップエッジ部全体を均一に研磨することができる。さらに、弾性部材40aの湾曲した部位41aを採用したことにより、研磨テープ3とウェーハWとの接触長さが長くなり、研磨レートが増加する。
【0096】
嵌合溝45aと嵌合溝45bとは、中心線Ctに関して対称に配置されているので、
図26に示すように弾性部材40bの部位41bがボトムエッジ部に対向するまで研磨ヘッド10を下方に傾けたときは、部位41bはウェーハWのボトムエッジ部に沿って延びる。したがって、トップエッジ部と同様に、弾性部材40bの部位41bによってボトムエッジ部を正確かつ均一に研磨することができる。
【0097】
一実施形態では、
図28に示すように、押圧具12は、凸部43aおよび凸部43bの間に配置された押圧パッド(ベベルパッド)270をさらに有していてもよい。押圧パッド270は、シリコーンゴムなどの弾力性を有する独立発泡材から構成されている。押圧具12がエアシリンダ251によってウェーハWに向かって移動されると、押圧パッド270は、研磨テープ3をその裏側からウェーハWのベベル部に対して押圧し、研磨ヘッド10は、ウェーハWのベベル部を研磨する。研磨テープ3の裏面との摩擦を少なくするために、表面がフッ素樹脂で覆われたシートを押圧パッド270の前面(押圧面)に貼り付けてもよい。押圧パッド270は、ボルトなどにより着脱可能となっている。本実施形態の押圧具12は、
図22および
図23を参照して説明した実施形態にも適用することができる。
【0098】
図29は研磨ヘッド10がウェーハWのベベル部を研磨している様子を示す図である。ウェーハWの周縁部を研磨するときは、
図29に示すように、チルト機構(図示せず)により研磨ヘッド10の傾斜角度を連続的に変化させながら、押圧機構241により研磨テープ3をウェーハWの周縁部(例えば、ベベル部)に押し当てる。
【0099】
さらに一実施形態では、研磨ヘッド10がトップエッジ部およびボトムエッジ部のうちのいずれか1つを研磨する場合、押圧具本体43は、2つの凸部43a,43bのうちいずれか1つのみを備えていてもよく、2つの弾性部材40a,40bのうちのいずれか1つのみを備えていてもよい。さらに一実施形態では、研磨装置200は、保持ステージ204の周方向に配列された複数の研磨ヘッド10を備えていてもよい。
【0100】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0101】
1 第1の面
2 第2の面
3 研磨テープ
10 研磨ヘッド
10A,10B 研磨ヘッド
11A,11B 研磨ヘッド組立体
12 押圧具
15 可動軸
18 ハウジング
18A ハウジング本体
18B 蓋
20 圧力室
25 隔壁膜
30 ボールスプラインナット
31 ねじ
33 圧縮気体流路
35 切り替え弁
36 圧力レギュレータ
38 圧縮気体供給源
40 弾性部材
41 部位
43 押圧具本体
44 押圧面
45 嵌合溝
46 裏面
47,48,49,50 側面
51 嵌合溝
52 部位
54,55 突起部
56a,56b テーパー面
58 コーティング層
60a,60b 嵌合溝
65 距離センサ
67 ユニバーサルジョイント
71 スカート
100 研磨装置
110 基板保持部
111 ローラー
112 ローラー回転機構
120 可動プレート
127 リンス液供給ノズル
128 保護液供給ノズル
131 支持部材
131A,131B 支持部材
141 研磨テープ供給機構
141A,141B 研磨テープ供給機構
142 リールベース
143 テープ巻き出しリール
143a,144a テンションモータ
144 テープ巻き取りリール
146 テープ送り装置
146A,146B テープ送り装置
147 テープ送りモータ
148 テープ送りローラー
149 ニップローラー
153a,153b,153c,153d ガイドローラー
180 動作制御部
191 研磨ヘッド移動機構
193 ボールねじ機構
194 モータ
195 直動ガイド
200 研磨装置
204 保持ステージ
205 シャフト
207 保持ステージ駆動機構
210 基板保持部
214 モータ
217 エアシリンダ
222 下側供給ノズル
230 上側供給ノズル
241 押圧機構
242 研磨テープ供給機構
243 テープ巻き出しリール
244 テープ巻き取りリール
245,246,247,248 ガイドローラー
251 エアシリンダ
252 テープ送り装置
253,254,255,256,257,258,259 ガイドローラー
260 隔壁
265 ベースプレート
270 押圧パッド
280 動作制御部
353a,353b,353c,353d ガイドローラー
453a,453b,453c,453d ガイドローラー