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特許7356096組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、微小気泡を含む対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、飲食品、および飲食品の製造方法
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  • 特許-組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、微小気泡を含む対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、飲食品、および飲食品の製造方法 図1
  • 特許-組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、微小気泡を含む対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、飲食品、および飲食品の製造方法 図2
  • 特許-組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、微小気泡を含む対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、飲食品、および飲食品の製造方法 図3
  • 特許-組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、微小気泡を含む対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、飲食品、および飲食品の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、微小気泡を含む対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、飲食品、および飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230927BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20230927BHJP
【FI】
A23L27/00 E
A23L27/20 D
A23L27/00 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018226900
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020089280
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506111240
【氏名又は名称】学校法人 愛知医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】畑山 直之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宗和
(72)【発明者】
【氏名】平井 宗一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 茂樹
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161253(JP,A)
【文献】特表2018-521627(JP,A)
【文献】特表2004-532623(JP,A)
【文献】特表2010-517507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,C12C,C12G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
CAPLUS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小気泡及び媒体を含み、
前記微小気泡は、気体として、亜酸化窒素(NO)を含み、
前記微小気泡は、前記媒体中に分散して存在し、
前記微小気泡が、ウルトラファインバブルである、飲食品用組成物。
【請求項2】
前記微小気泡の密度は、5×10~1×1010個/mLである、請求項1記載の飲食品用組成物。
【請求項3】
前記媒体は、液体および固体の少なくとも一方である、請求項1または2記載の飲食品用組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の飲食品用組成物を含む、甘味付与組成物。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の飲食品用組成物を含む、風味改善組成物。
【請求項6】
対象物に微小気泡を導入する導入工程を含み、
前記微小気泡は、請求項1から3のいずれか一項に記載の飲食品用組成物における微小気泡を含む、対象物の製造方法。
【請求項7】
前記対象物は、液体および固体の少なくとも一方である、請求項6記載の対象物の製造方法。
【請求項8】
対象物に微小気泡を導入する導入工程を含み、
前記導入工程は、請求項6または7記載の微小気泡を含む対象物の製造方法により実施される、甘味付与方法。
【請求項9】
対象物に微小気泡を導入する導入工程を含み、
前記導入工程は、請求項6または7記載の微小気泡を含む対象物の製造方法により実施される、風味改善方法。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載の飲食品用組成物を含む、飲食品。
【請求項11】
請求項6または7記載の微小気泡を含む対象物の製造方法を含み、
前記導入工程における対象物は、飲食品である、飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、微小気泡を含む対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、飲食品、および飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に対して甘味を付与する場合、天然甘味料、人工甘味料等の甘味料が添加される。しかしながら、甘味料は、エネルギー源となるため、糖尿病等を引き起こす問題がある。
【0003】
また、食品の不快な風味を低減するため、食品に対して、風味改善剤が添加される。しかしながら、既存の風味改善剤では、十分に風味を改善できない食品が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、甘味が付与できる、または風味の改善ができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の組成物は、微小気泡を含み、
前記微小気泡は、気体として、亜酸化窒素(NO)および空気の少なくとも一方を含む。
【0006】
本発明の甘味付与組成物は、微小気泡を含む。
【0007】
本発明の風味改善組成物は、微小気泡を含む。
【0008】
本発明の微小気泡を含む対象物の製造方法(以下、「対象物の製造方法」ともいう)は、対象物に微小気泡を導入する導入工程を含み、
前記微小気泡は、前記本発明の組成物における微小気泡を含む。
【0009】
本発明の甘味付与方法は、対象物に微小気泡を導入する導入工程を含む。
【0010】
本発明の風味改善方法は、対象物に微小気泡を導入する導入工程を含む。
【0011】
本発明の飲食品は、前記本発明の組成物を含む。
【0012】
本発明の飲食品の製造方法は、前記本発明の微小気泡を含む対象物の製造方法を含み、
前記導入工程における対象物は、飲食品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組成物によれば、甘味が付与できる、または風味を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例1における微小気泡の製造装置を示す模式図である。
図2図2は、実施例1における組成物の風味の評価試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、実施例2における組成物の甘さの評価試験の結果を示すグラフである。
図4図4は、実施例3における各気体を含む微小気泡の密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<組成物>
本発明の組成物は、前述のように、微小気泡を含み、前記微小気泡は、気体として、亜酸化窒素(NO)および空気の少なくとも一方を含む。本発明の組成物は、前記微小気泡が、気体として、亜酸化窒素(NO)および空気の少なくとも一方を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の組成物によれば、例えば、メカニズムは不明であるが、対象物に対して甘味を付与することや、風味、特に口当りを改善できる。さらに、NOおよび空気は、人が摂取した際にエネルギー源として使用されない。このため、本発明の組成物によれば、例えば、飲食品のカロリーを増加させずに、対象物に甘味を付与でき、風味改善に関する添加剤等を用いずに対象物の風味を改善できる。このため、本発明の組成物は、例えば、健康食品等の飲食品に好適に使用でき、「飲食品用組成物」ということもできる。さらに、本発明の組成物は、前記気体を微小気泡の状態で含む。このため、本発明の組成物は、前記気体の溶解度を超えて、前記気体を保持できる。
【0016】
本発明において、「微小気泡」は、気体以外により囲まれた、気体からなる閉じた微小な空間を意味し、例えば、微細気泡ということもできる。前記微小気泡は、例えば、ファインバブルがあげられる。前記ファインバブルは、通常、気泡径が100μm未満の微小気泡を意味する。前記気泡径は、気泡の球相当径を意味する。前記気泡径は、後述の測定方法により得られる微小気泡の平均径(算術平均径)でもよい。前記ファインバブルは、マイクロバブルでもよいし、ウルトラファインバブルでもよい。前記マイクロバブルは、通常、気泡径が1μm以上、100μm未満の微小気泡を意味する。前記ウルトラファインバブルは、通常、気泡径が1μm未満の微小気泡を意味する。
【0017】
前記微小気泡は、媒体中に分散して存在する。前記微小気泡は、前記媒体の全体または一部に分散して存在する。後者の場合、前記微小気泡は、前記媒体の一部に局在するということもできる。前記媒体は、例えば、液体または固体があげられる。前記液体は、例えば、水を含む水性溶媒、油性溶媒、またはこれらの混合溶媒等があげられる。また、前記液体は、ゾルを含む。前記固体は、例えば、前記液体を凝固させたものがあげられる。また、前記固体は、ゲルを含む。前記液体および前記固体は、例えば、後述の本発明の対象物の製造方法における対象物の説明を援用できる。
【0018】
前記微小気泡は、気体として、亜酸化窒素(NO、笑気)および空気の少なくとも一方を含む。本発明において、前記「空気」は、例えば、前記微小気泡を製造する際に使用した空気(大気)を意味する。前記微小気泡は、NOおよび空気の一方を含んでもよいし、両方を含んでもよい。前記微小気泡は、例えば、より強い甘味を付与できることから、NOが好ましい。前記微小気泡は、1種類または複数種類の気体を含む。後者の場合、本発明の組成物において、各微小気泡は、1種類または複数種類の気体を含む。前記微小気泡が気体としてNOを含む場合、前記微小気泡は、例えば、気体として、空気のみを含む場合を除く。また、前記微小気泡は、前記気体として、NOおよび空気の少なくとも一方の他、さらに、その他の気体を含んでもよい。
【0019】
前記微小気泡の密度は、前記媒体の体積に対する微小気泡の数を意味する。前記「密度」は、個数濃度ということもできる。前記微小気泡の密度の下限値は、例えば、5×10個/mL、1×10個/mL、5×10個/mL、1×10個/mL、5×10個/mL、1×10個/mL、5×10個/mL、1×10個/mLであり、好ましくは、1×10個/mL、5×10個/mL、1×10個/mL、5×10個/mL、1×10個/mL、5×10個/mLである。前記微小気泡の密度の上限値は、例えば、1.5×10個/mL、2×10個/mL、3×10個/mL、5×10個/mL、7×10個/mL、9×10個/mL、1×1010個/mLである。前記微小気泡の密度の範囲は、例えば、5×10個/mL~1×1010個/mL、1×10個/mL~9×10個/mL、5×10個/mL~9×10個/mL、1×10個/mL~7×10個/mL、5×10個/mL~7×10個/mL、1×10個/mL~5×10個/mL、5×10個/mL~5×10個/mL、1×10個/mL~3×10個/mL、5×10個/mL~2×10個/mL、5×10個/mL~1.5×10個/mLである。
【0020】
前記微小気泡の密度、気泡径および平均径(以下、「特性」ともいう)は、前記微小気泡が分散されている媒体に応じて、適宜測定できる。前記微小気泡が液体の媒体に分散されている場合、前記微小気泡の特性は、本発明の組成物における気泡について粒子軌跡解析法で解析することにより算出できる。前記粒子軌跡解析法は、例えば、後述の実施例1に準じ、NanoSight(登録商標)NS300(Malvern Instrument社製)を用いて実施できる。前記微小気泡の特性は、粒子軌跡解析法以外の他の解析方法により算出してもよい。この場合、他の解析方法で得られた微小気泡の特性は、前記粒子軌跡解析法で得られる算出値に変換した際に前述の例示を満たす。前記微小気泡が固体の媒体に分散されている場合、前記微小気泡の特性は、前記媒体の固化前の液体における微小気泡の特性および固体の媒体を溶解することで得られる液体における微小気泡の特性に基づき、算出できる。具体的には、前記微小気泡が固体の媒体に分散されている場合、前記微小気泡の特性は、前記媒体の固化前の液体における微小気泡の特性と前記固体の媒体を溶解することで得られる液体における微小気泡の特性との間の特性を有すると評価できる。
【0021】
前記気体がNOを含む場合、前記気体に占めるNOの割合は、例えば、1~100%、10~100%、30~100%、50~100%、70~100%、90~100%である。
【0022】
本発明の組成物は、NOおよび空気の少なくとも一方を用いて、ファインバブル等の微小気泡の製造方法により製造できる。このため、本発明の製造方法は、NOおよび空気の少なくとも一方と、媒体とを用いて、微小気泡を製造する気泡製造工程を含む。具体例として、本発明の組成物が液体の場合、前記液体の組成物は、例えば、NOおよび空気の少なくとも一方ならびに液体と、旋回流方式、エゼクター式、ベンチュリ式、スタティックミキサー方式、微細孔方式、加圧溶解式または超音波キャビテーション式の微小気泡の製造装置とを用いて、製造できる。前記液体の組成物は、例えば、対象の液体と、微小気泡を含む液体を混合することにより製造してもよい。本発明の組成物が固体の場合、前記固体の組成物は、例えば、前記液体の組成物を、公知の方法で凝固することにより製造できる。前記固体がゲルの場合、ゲルの組成物は、例えば、前記液体の組成物を、ゲル化剤と混合することにより製造できる。前記気泡製造工程の開始時において、NOおよび空気は、気体、液体、または固体である。本発明の組成物は、例えば、後述の本発明の対象物の製造方法により製造できる。前記媒体に導入する気体は、複数種類の気体でもよい。この場合、各気体を別個に、前記気泡製造工程に供してもよいし、前記媒体に導入する気体の全部または一部を同時に前記気泡製造工程に供してもよい。具体例として、前記気体がNOおよび空気の場合、NOおよび空気は、同時に導入されてもよいし、別個に導入されてもよい。
【0023】
本発明の組成物は、前述のように、例えば、対象物に対して甘味を付与することができ、また、対象物の風味、特に口当りを改善できる。このため、本発明の組成物は、例えば、飲食品に好適に使用できる。
【0024】
<甘味付与組成物>
本発明の甘味付与組成物は、前述のように、微小気泡を含む。本発明の甘味付与組成物は、微小気泡を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の甘味付与組成物によれば、飲食品等の対象物に対し、甘味を付与できる。また、前記微小気泡の気体は、人が摂取した際にエネルギー源として使用されない。このため、本発明の甘味付与組成物によれば、例えば、飲食品のカロリーを増加させずに、甘味を付与できる。このため、本発明の甘味付与組成物は、飲食品に好適に使用でき、「飲食品用甘味付与組成物」ということもできる。本発明の甘味付与組成物によれば、例えば、後述の本発明の甘味付与方法を簡便に実施できる。本発明の甘味付与組成物は、例えば、前記本発明の組成物の説明を援用できる。
【0025】
本発明において、「甘味の付与」は、本発明の甘味付与組成物を未添加の状態と比較して、甘味を増強することを意味し、具体的には、甘味のないものに対して、甘味を与えること、および甘味のあるものの甘味を増強することを意味し、いずれを意味してもよい。
【0026】
本発明の甘味付与組成物において、前記微小気泡は、気体として、任意の種類の気体を含んでもよく、具体例として、NOおよび空気があげられる。前記気体は、例えば、前記本発明の組成物における気体(気体成分)の説明を援用できる。前記微小気泡は、より強い甘みを付与できることから、NOまたは空気を含むことがより好ましく、さらに強い甘みを付与できることから、NOを含むことがさらに好ましい。前記微小気泡が気体としてNOを含む場合、前記微小気泡は、例えば、気体として、空気のみを含む場合を除く。また、前記微小気泡は、前記気体として、NOおよび空気の少なくとも一方の他、さらに、その他の気体を含んでもよい。
【0027】
本発明の甘味付与組成物において、前記微小気泡は、媒体中に分散して存在する。前記媒体は、例えば、液体または固体があげられる。前記液体および前記固体は、例えば、前記本発明の組成物の説明および後述の本発明の対象物の製造方法における対象物の説明を援用できる。
【0028】
本発明の甘味付与組成物において、前記微小気泡の特性、NOの割合、製造方法等は、例えば、前記本発明の組成物の説明を援用できる。
【0029】
本発明の甘味付与組成物は、他の成分を含んでもよい。前記他の成分は、キシリトール、アスパルテーム等のノンカロリー甘味料;香料、着色料、保存料、増粘剤、酸化防止剤、発色剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、酸味料、調味料、栄養強化剤等の添加剤があげられる。
【0030】
<風味改善組成物>
本発明の風味改善組成物は、前述のように、微小気泡を含む。本発明の風味改善組成物は、微小気泡を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の風味改善組成物によれば、飲食品等の対象物の風味を改善できる。また、本発明の風味改善組成物は、前記微小気泡により風味を改善するため、添加剤等を用いずに、対象物の風味を改善できる。このため、本発明の風味改善組成物は、飲食品に好適に使用でき、「飲食品用風味改善組成物」ということもできる。本発明の風味改善組成物によれば、例えば、後述の本発明の風味改善方法を簡便に実施できる。本発明の風味改善組成物は、例えば、前記本発明の組成物および甘味付与組成物の説明を援用できる。
【0031】
本発明において、「風味の改善」は、本発明の風味改善組成物を未添加の状態と比較して、風味をよくすることを意味し、具体的には、風味が悪いものの風味をよくしてもよいし、風味のよいものの風味を向上してもよい。前記風味は、例えば、口当りを意味する。
【0032】
本発明の風味改善組成物において、前記微小気泡は、気体として、任意の種類の気体を含んでもよく、具体例として、NOおよび空気があげられる。前記気体は、例えば、前記本発明の組成物における気体(気体成分)の説明を援用できる。前記微小気泡は、例えば、より口当たりを改善できることから、NOまたは空気を含むことがより好ましい。前記微小気泡が気体としてNOを含む場合、前記微小気泡は、例えば、気体として、空気のみを含む場合を除く。前また、前記微小0気泡は、前記気体として、NOおよび空気の少なくとも一方の他、さらに、その他の気体を含んでもよい。
【0033】
本発明の風味改善組成物において、前記微小気泡は、媒体中に分散して存在する。前記媒体は、例えば、液体または固体があげられる。前記液体および前記固体は、例えば、前記本発明の組成物の説明および後述の本発明の対象物の製造方法における対象物の説明を援用できる。
【0034】
本発明の風味改善組成物において、前記微小気泡の特性、NOの割合、製造方法等は、例えば、前記本発明の組成物の説明を援用できる。
【0035】
本発明の風味改善組成物は、他の成分を含んでもよい。前記他の成分は、甘味料;香料、着色料、保存料、増粘剤、酸化防止剤、発色剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、酸味料、調味料、栄養強化剤等の添加剤があげられる。
【0036】
<微小気泡を含む対象物の製造方法>
本発明の微小気泡を含む対象物の製造方法は、前述のように、対象物に微小気泡を導入する導入工程を含み、前記微小気泡は、気体として、亜酸化窒素(NO)および空気の少なくとも一方を含む。本発明の対象物の製造方法は、前記対象物に微小気泡を導入する導入工程を含み、前記微小気泡は、気体として、NOおよび空気の少なくとも一方を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の対象物の製造方法によれば、例えば、メカニズムは不明であるが、対象物に対して甘味を付与することができ、また、対象物の風味、特に口当りを改善できる。前述のように、NOおよび空気は、人が摂取した際にエネルギー源として使用されない。このため、本発明の対象物の製造方法によれば、例えば、対象物のカロリーを増加させずに、甘味を付与でき、また、添加剤等を用いずに対象物の風味を改善できる。このため、本発明の対象物の製造方法は、例えば、飲食品の製造に好適に使用でき、「飲食品の製造方法」ということもできる。また、本発明の対象物の製造方法によれば、本発明の組成物を製造できる。このため、本発明の対象物の製造方法は、本発明の組成物の製造方法ということもできる。本発明の対象物の製造方法は、例えば、前記本発明の組成物、甘味付与組成物および風味改善組成物の説明を援用できる。
【0037】
前記導入工程では、対象物に微小気泡を導入する。前記導入工程において、前記対象物の物性は、液体でもよいし、固体でもよい。前記液体は、例えば、ゾルを含み、前記固体は、ゲルを含む。前記対象物は、例えば、水等の水性溶媒、飲食品等があげられる。前記飲食品は、例えば、人が飲む飲み物および食べる食べ物であればよい。具体例として、前記飲食品は、例えば、生乳、無脂肪乳、ヨーグルト、プリン等の乳製品;豆乳;カスタードクリーム、ムース等の菓子類;スープ、野菜飲料、ダイエットドリンク、紅茶、コーヒー、清涼飲料水等の飲料;ゼリー、アイスクリーム等の冷菓子;健康食品;ドレッシング、マヨネーズ等の調味料;ビール、ウイスキー、ブランデー、日本酒等の酒類;等があげられる。
【0038】
前記導入工程において、前記対象物への微小気泡の導入方法は、例えば、前記対象物と、NOおよび空気の少なくとも一方とを用いて、前記微小気泡を導入してもよいし、前記対象物と、前記微小気泡を含む媒体とを接触させる、または混合することにより、前記微小気泡を導入してもよい。前者の場合、前記導入工程は、例えば、前記本発明の組成物における気泡製造工程と同様にして実施できる。後者の場合、前記導入工程は、例えば、前記対象物と、前記本発明の組成物とを接触させる、または混合することにより実施できる。前記導入工程は、さらに強い甘味を付与できることから、NOを用いて、前記微小気泡を導入することが好ましい。
【0039】
前記対象物に導入する気体は、例えば、NOおよび空気の一方でもよいし、両方でもよい。前記対象物に導入する気体は、前記本発明の組成物における気体(気体成分)の説明を援用できる。前記対象物に導入する気体は、複数種類の気体でもよい。前記対象物に対して、複数種類の気体を含む微小気泡を導入する場合、1種類以上の気体を別個に導入してもよいし、複数種類の気体を同時に導入してもよい。具体例として、前記気体がNOおよび空気の場合、NOおよび空気は、同時に導入されてもよいし、別個に導入されてもよい。前記気体がNOである場合、前記対象物に導入する気体は、例えば、空気のみを除く。また、前記微小気泡は、前記気体として、NOおよび空気の少なくとも一方の他、さらに、その他の気体を含んでもよい。
【0040】
前記導入工程において、前記対象物に導入される前記微小気泡の特性、NOの割合、製造方法等は、例えば、前記本発明の組成物の説明を援用できる。
【0041】
<甘味付与方法>
本発明の甘味付与方法は、前述のように、対象物に微小気泡を導入する導入工程を含む。本発明の甘味付与方法は、前記対象物に微小気泡を導入する導入工程を含むことが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の甘味付与方法によれば、飲食品等の対象物に対し、甘味を付与できる。また、前記微小気泡の気体は、人が摂取した際にエネルギー源として使用されない。このため、本発明の甘味付与方法によれば、例えば、飲食品のカロリーを増加させずに、甘味を付与できる。本発明の甘味付与方法は、例えば、前記本発明の組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、および対象物の製造方法の説明を援用できる。
【0042】
前記導入工程では、前記対象物に微小気泡を導入する。前記対象物は、例えば、前記本発明の組成物における媒体の説明および前記本発明の対象物の製造方法における対象物の説明を援用できる。前記導入工程は、例えば、前記本発明の組成物における気泡製造工程の説明および前記本発明の対象物の製造方法における導入工程の説明を援用できる。
【0043】
本発明の甘味付与方法において、前記微小気泡は、気体として、任意の種類の気体を含んでもよく、具体例として、NOおよび空気があげられる。前記気体は、例えば、前記本発明の組成物における気体(気体成分)の説明を援用できる。前記微小気泡は、より強い甘みを付与できることから、NOまたは空気を含むことがより好ましく、さらに強い甘みを付与できることから、NOを含むことがさらに好ましい。前記微小気泡は、1種類または複数種類の気体を含む。後者の場合、各微小気泡は、1種類または複数種類の気体を含む。前記微小気泡が気体としてNOを含む場合、前記微小気泡は、例えば、気体として、空気のみを含む場合を除く。また、前記微小気泡は、例えば、前記気体として、NOおよび空気の少なくとも一方の他、さらに、その他の気体を含んでもよい。
【0044】
本発明の甘味付与方法において、前記対象物に導入される微小気泡の特性、NOの割合、製造方法等は、例えば、前記本発明の組成物および対象物の製造方法の説明を援用できる。
【0045】
<風味改善方法>
本発明の風味改善方法は、前述のように、対象物に微小気泡を導入する導入工程を含む。本発明の風味改善方法は、前記対象物に微小気泡を導入する導入工程を含むことが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の風味改善方法によれば、飲食品等の対象物の風味を改善できる。また、本発明の風味改善方法は、前記微小気泡により風味を改善するため、風味改善に関する添加剤等を用いずに対象物の風味を改善できる。本発明の風味改善方法は、例えば、前記本発明の組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、対象物の製造方法、および甘味付与方法の説明を援用できる。
【0046】
前記導入工程では、前記対象物に微小気泡を導入する。前記対象物は、例えば、前記本発明の組成物における媒体の説明および前記本発明の対象物の製造方法における対象物の説明を援用できる。前記導入工程は、例えば、前記本発明の組成物における気泡製造工程の説明および前記本発明の対象物の製造方法における導入工程の説明を援用できる。
【0047】
本発明の風味改善方法において、前記微小気泡は、気体として、任意の種類の気体を含んでもよく、具体例として、NOおよび空気があげられる。前記気体は、例えば、前記本発明の組成物における気体(気体成分)の説明を援用できる。前記微小気泡は、より口当たりを改善できることから、NOまたは空気を含むことがより好ましい。前記微小気泡は、1種類または複数種類の気体を含む。後者の場合、各微小気泡は、1種類または複数種類の気体を含む。前記微小気泡が気体としてNOを含む場合、前記微小気泡は、例えば、気体として、空気のみを含む場合を除く。また、前記微小気泡は、前記気体として、NOおよび空気の少なくとも一方の他、さらに、その他の気体を含んでもよい。
【0048】
本発明の風味改善方法において、前記対象物に導入される微小気泡の特性、NOの割合、製造方法等は、例えば、前記本発明の組成物および対象物の製造方法の説明を援用できる。
【0049】
<飲食品>
本発明の飲食品は、前述のように、前記本発明の組成物を含む。本発明の飲食品は、前記本発明の組成物を含むことが特徴であり、その他の構成および特徴は特に制限されない。本発明の飲食品は、前記本発明の組成物を含む。このため、本発明の飲食品によれば、例えば、同様の甘味を糖類により付与する飲食品と比較して、カロリーを低減できる。また、本発明の飲食品は、例えば、風味改善に関する添加剤等が不要である。本発明の飲食品は、前記本発明の組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、対象物の製造方法、甘味付与方法、および風味改善方法の説明を援用できる。
【0050】
本発明の飲食品において、前記飲食品は、例えば、前記本発明の対象物の製造方法における飲食品の説明を援用できる。
【0051】
<飲食品の製造方法>
本発明の飲食品の製造方法は、前述のように、前記本発明の微小気泡を含む対象物の製造方法を含み、前記導入工程における対象物は、飲食品である。本発明の飲食品の製造方法は、前記本発明の微小気泡を含む対象物の製造方法を含み、前記導入工程における対象物は、飲食品であることが特徴であり、その他の工程および特徴は特に制限されない。本発明の飲食品の製造方法によれば、前記本発明の飲食品を簡便に製造できる。本発明の飲食品の製造方法によれば、同様の甘味を糖類により付与する飲食品の製造方法と比較して、例えば、カロリーを低減できる。また、本発明の飲食品の製造方法によれば、前記微小気により風味を改善するため、風味改善に関する添加剤等が不要である。本発明の飲食品の製造方法は、前記本発明の組成物、甘味付与組成物、風味改善組成物、対象物の製造方法、甘味付与方法、風味改善方法、および飲食品の説明を援用できる。
【実施例
【0052】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。
【0053】
[実施例1]
本発明の組成物または風味改善組成物により、対象物の風味を改善できることを確認した。
【0054】
(1)組成物の製造
本発明の組成物は、図1に示すベンチュリ式の微小気泡の製造装置100を用いて製造した。図1に示すように、製造装置100は、モータ1を基準として、チューブ2a、ベンチュリ管3a、接続管4a、4b、チューブ2b、ベンチュリ管3b、および接続管4cが、この順序で互いに連通するように接続された循環系の流路を有する。ベンチュリ管3aの側面の突出部に形成された開口は封止されている。また、ベンチュリ管3bの側面の突出部に形成された開口は、三方活栓5と連通して接続している。まず、三方活栓5を開放し、三方活栓5から蒸留水を製造装置100内の流路に導入した。この際に、前記流路内に気体が含まれないように充填した。また、充填した蒸留水の液量を併せて測定した。つぎに、空気(住友精化株式会社製)を、導入した蒸留水100mLに対して1mLとなるように前記流路に導入し、三方活栓5を閉鎖した。そして、モータ1にて、約25℃下で前記流路内の蒸留水および空気を5~10分間循環させることにより、微小気泡を形成することで、組成物を製造した。なお、モータ1で前記蒸留水を循環させる際の流速は、3.6L/分とした。
【0055】
(2)組成物の特性
前記実施例1(1)により得られた組成物について、NanoSight(登録商標)NS300(Malvern Instrument社製)を用い、デフォルトのパラメータで、前記組成物の物性を測定した。なお、前記測定は、25℃で行なった。この結果、前記組成物における微小気泡の平均径は、96.3nmであり、微小気泡の密度は、1.40×10個/mLであった。
【0056】
(3)風味評価試験
15人のパネラー(年齢:22~45歳、男性8名、女性7名)により、前記組成物について、蒸留水と比較して、味または舌触りの変化の有無に関する評価試験を行なった。なお、前記評価試験は、前記組成物の製造後、1時間以内に実施した。この結果、15人の内14人のパネラーが、味または舌触りに変化があると評価した。また、味または舌触りに変化があったと判断したパネラーからは、蒸留水と比較して、前記組成物は、「水のきつい感じがなくなった。」、「飲みやすい。」、「軟水に近くなった。」、「まろやかになった。」との評価を得た。
【0057】
つぎに、同じパネラーにより、前記組成物について、蒸留水と比較した際の飲みやすさおよびまろやかさに関する評価試験を行なった。飲みやすさおよびまろやかさは、以下の基準により評価した。この結果を図2に示す。
(飲みやすさの評価基準)
1 非常に飲みやすい
2 まあまあ飲みやすい
3 どちらでもない
4 あまり飲みやすくない
5 飲みにくい
(まろやかさの評価基準)
1 非常にまろやか
2 まあまあまろやか
3 どちらでもない
4 あまりまろやかでない
5 まろやかでない
【0058】
図2は、前記組成物の風味の評価試験の結果を示すグラフであり、(A)は、飲みやすさの評価試験の結果であり、(B)は、まろやかさの評価試験の結果を示すグラフである。図2(A)に示すように、83%のパネラーが、蒸留水と比較して、前記組成物が飲みやすくなったと判断した。また、図2(B)に示すように、82%のパネラーが、蒸留水と比較して、前記組成物がまろやかになったと判断した。これらの結果から、本発明の組成物または風味改善組成物により、対象物の風味を改善できることがわかった。
【0059】
[実施例2]
本発明の組成物または甘味付与組成物により、対象物に甘味を付与できることを確認した。
【0060】
(1)組成物の製造
前記実施例1(1)で製造した組成物の一部を分取した(実施例2-1)。前記空気に代えて、医療用NO(住友精化株式会社製、NO濃度:99.999(v/v)%)を用いた以外は、同様にして、組成物を製造した(実施例2-2)。
【0061】
(2)組成物の特性
前記実施例1(1)の組成物に代えて、前記NOを含む組成物(実施例2-2)を用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、測定した。この結果、前記組成物における微小気泡の平均径は、129.9nmであり、微小気泡の密度は、8.39×10個/mLであった。
【0062】
(3)甘味評価試験
15人のパネラー(年齢:22~45歳、男性8名、女性7名)により、前記実施例2-1~2-2および蒸留水(比較例)について、甘味に関する評価試験を行なった。なお、前記評価試験は、前記組成物の製造後、1時間以内に実施した。甘味は、以下の基準により評価した。そして、得られた評価点の平均値を算出した。この結果を図3に示す。
(甘味の評価基準)
5 非常に甘い
4 まあまあ甘い
3 どちらでもない
2 あまり甘くない
1 甘くない
【0063】
図3は、前記組成物の甘さの評価試験の結果を示すグラフであり、横軸は、甘さの平均値を示し、縦軸は、サンプルの種類を示す。図3に示すように、蒸留水と比較して、いずれの実施例においても、有意に甘味が向上しており、特に微小気泡が気体としてNOを含む場合(実施例2-2)に、顕著に甘味が向上した。これらの結果から、本発明の組成物または甘味付与組成物により、対象物に甘味を付与できることがわかった。
【0064】
[実施例3]
気体の種類によらず、同程度の密度の微小気泡を含む組成物が製造できることを確認した。
【0065】
(1)組成物の製造
一酸化炭素および医療用酸素に加えて、二酸化炭素(住友精化株式会社製)および窒素(住友精化株式会社製)を用い、前記蒸留水に代えて生理食塩水を用いた以外は、前記実施例1(1)と同様にして、気体として、酸素、一酸化炭素、酸素および一酸化炭素の混合気体、二酸化炭素または窒素を含む微小気泡を含む組成物を製造した。なお、気体以外の製造条件は全て同じとした。
【0066】
(2)組成物の特性
前記実施例1(1)の組成物に代えて、前記実施例3(1)の組成物を用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、測定した。なお、各組成物について、3回、同様の測定を実施した。この結果、前記組成物における各気体を含む微小気泡の平均径は、下記のとおりであった。各気体の微小気泡の密度を図4に示す。
組成物(O2) 平均径:104.5nm
組成物(CO) 平均径:117.0nm
組成物(CO/O2) 平均径:112.3nm
組成物(CO2) 平均径:117.5nm
組成物(N2) 平均径:132.7nm
【0067】
図4は、各気体を含む微小気泡の密度を示すグラフである。図4において、横軸は、微小気泡が含む気体の種類を示し、縦軸は、微小気泡の密度を示す。図4に示すように、同条件で製造した場合、微小気泡に導入する気体の種類によらず、微小気泡の密度は、約1×10個/mLであった。これらの結果から、気体の種類によらず、同程度の密度の微小気泡を含む組成物が製造できることがわかった。
【0068】
また、実施例1~3の結果から、同条件で製造した場合、微小気泡に導入する気体の種類によらず、微小気泡の密度は、約1×10個/mLであった。これらの結果から、気体の種類によらず、同程度の密度の微小気泡を含む組成物が製造できることがわかった。
【0069】
[参考例1]
実施例2の組成物において、微小気泡を形成していない気体が実質的に存在しないことを確認した。
【0070】
図1に示すベンチュリ式の微小気泡の製造装置100を用いて、参考例1で使用する組成物を製造した。まず、図1の装置100内に40mLの超純水(Milli-Q水)を導入後、装置100を揺らすことにより、装置100内の気泡を装置100外に除外した。つぎに、5mLの前記医療用NOをシリンジに採取後、三方活栓5に接続した。そして、モータ1の駆動開始後、三方活栓5を開放し、装置100内にNOを導入した。この状態で、5分間、モータ1を駆動させ、組成物を製造した。モータ1の駆動停止後、得られた組成物をビーカに回収した。回収時の組成物の温度は、27℃であった。前記組成物を30分間静置し、大きな気泡を脱気させた。
【0071】
脱気後の組成物について、さらに、所定時間(0または1時間)静置し、静置後の組成物に含まれるNOの量を下記GC(ガスクロマトグラフ)の測定条件で測定した(n=3、サンプル1~3)。なお、所定時間経過後の各組成物について、レーザポインタを用いて、微小気泡が含有されていることを確認した。この結果を下記表1に示す。
【0072】
(GC条件(NO))
装置: GC-2014 TCD(島津製作所社製)
充填剤の種類:Porapak(登録商標)Q(ジーエルサイエンス株式会社製)
カラムの種類:島津GC用ステンレスカラム(内径3mm、長さ2m、島津製作所社製)
温度
気化器:150℃
カラム:40℃
検出器:100℃
キャリア
He(ヘリウムガス)
流量:30mL/分
【0073】
【表1】
【0074】
前記表1に示すように、前記組成物中のNOは、静置後、急速に脱気し、1時間で、検出限界未満の量となった。これらの結果から、実施例2の組成物は、製造後約1時間静置し、使用していることから、微小気泡以外の気体が実質的に存在しないこと、すなわち、溶存気体が実質的に存在しないことがわかった。また、溶存気体が存在しないことから、各実施例で証明されている甘味付与効果および風味改善効果は、本発明の組成物に含まれる微小気泡の作用によることが確認された。
【0075】
[参考例2]
実施例3の組成物において、微小気泡を形成していない気体が実質的に存在しないことを確認した。
【0076】
図1に示すベンチュリ式の微小気泡の製造装置100を用いて、参考例2で使用する組成物を製造した。まず、図1の装置100内に40mLの超純水(Milli-Q水)を導入後、装置100を揺らすことにより、装置100内の気泡を装置100外に除外した。つぎに、5mLの一酸化炭素をシリンジに採取後、三方活栓5に接続した。そして、モータ1の駆動開始後、三方活栓5を開放し、装置100内に一酸化炭素を導入した。この状態で、5、10、または30分間、モータ1を駆動させ、組成物を製造した。モータ1の駆動停止後、得られた組成物をビーカに回収した。回収時の組成物の温度は、27℃(5分間循環)、29~30℃(10分間循環)、38~39℃(30分間循環)であった。前記組成物を30分間静置し、大きな気泡を脱気させた。
【0077】
脱気後の組成物について、さらに、所定時間(0、1、2または3時間)静置し、静置後の組成物に含まれる一酸化炭素の量を下記GC(ガスクロマトグラフ)の測定条件で測定した。一酸化炭素は、一酸化炭素をメタン化後、得られたメタンを測定することにより測定した。また、一酸化炭素に代えて、硫化水素を用い、5分間モータ1を駆動させ、脱気後の組成物について、所定時間(0、1、2、3または19時間)静置後、下記GCの測定条件で測定することにより、前記組成物に含まれる硫化水素の量を測定した。なお、所定時間経過後の各組成物について、レーザポインタを用いて、微小気泡が含有されていることを確認した。一酸化炭素の測定結果を下記表2に、硫化水素の結果を下記表3に示す。
【0078】
(GC条件(一酸化炭素))
装置: GC-2014 FID(島津製作所社製)
充填剤の種類:MS-13X(Molecular Sieve 13X)(ジーエルサイエンス株式会社製)
カラムの種類:島津GC用ステンレスカラム(内径3mm、長さ3m、島津製作所社製)
温度
気化器:220℃
カラム:50℃
検出器:250℃
キャリア
(窒素ガス)
流量:20mL/分
メタナイザー:400℃
【0079】
(GC条件(硫化水素))
装置: GC-2014 FPD(島津製作所社製)
カラムの種類:5rings Shimalite(登録商標)TPA(Polyphenyl Ether(5 rings) OS-124/Shimalite TPA)
(内径3.2mm、長さ3.1m、信和化工株式会社製)
温度
気化器:200℃
カラム
開始温度:50℃
開始温度での保持時間:3分間
昇温速度:50℃/分
終了温度:100℃
終了温度での保持時間:5分間
検出器:250℃
キャリア
(窒素ガス)
流量:20mL/分
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
前記表2に示すように、前記組成物中の一酸化炭素は、静置後、急速に脱気し、1時間後以降は、ほぼ検出限界未満の量となった。また、前記表3に示すように、前記組成物中の硫化水素は、静置後、急速に脱気し、2時間後以降は、ほぼ検出限界未満の量となった。
【0083】
これらの結果から、実施例3の組成物は、製造後約2時間静置し、使用していることから、微小気泡以外の気体が実質的に存在しないこと、すなわち、溶存気体が実質的に存在しないことがわかった。
【0084】
[参考例3]
実施例1~3の組成物において、使用時に微小気泡が存在していることを確認した。
【0085】
40mLの超純水に代えて、50mLの生理食塩水を用い、5mLのCOに代えて10mLのCOを用いた以外は、参考例2と同様にして、参考例3で使用する組成物を製造した。得られた組成物を30分間静置し、大きな気泡を脱気させた後、さらに、所定時間(0、1、2、3、4、5または6時間)静置し、静置後の組成物に含まれる微小気泡の密度および平均径を前記実施例1(2)と同様にして測定した(参考例3-1)。同様の組成物の製造および測定を、さらに2回実施した(参考例3-2および3-3)。これらの結果を下記表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
前記表4に示すように、静置後1~2時間において、参考例3-1~3-3のいずれの組成物においても、約1×10個/mLの微小気泡を含んでいた。また、静置後1~2時間における微小気泡の平均径は、組成物の製造後における微小気泡の平均径から大きな変化はなかった。前記実施例1~3に示すように、製造される組成物における微小気泡の密度は、微小気泡の気体成分により、大きく変化しない。このため、静置後の組成物に含まれる微小気泡の密度も、同程度と推定される。実施例1および2の組成物は、製造後約1時間静置し、使用していることから、約1×10個/mLの微小気泡を含むことが推定された。また、前記微小気泡を含むことから、各実施例で証明されている甘味付与効果および風味改善効果は、本発明の組成物に含まれる微小気泡の作用によることが確認された。
【0088】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0089】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
微小気泡を含み、
前記微小気泡は、気体として、亜酸化窒素(NO)および空気の少なくとも一方を含む、組成物。
(付記2)
前記微小気泡の密度は、5×10~1×1010個/mLである、付記1記載の組成物。
(付記3)
さらに、媒体を含み、
前記媒体は、液体および固体の少なくとも一方である、付記1または2記載の組成物。
(付記4)
微小気泡を含む、甘味付与組成物。
(付記5)
付記1から3のいずれかに記載の組成物を含む、付記4記載の甘味付与組成物。
(付記6)
微小気泡を含む、風味改善組成物。
(付記7)
付記1から3のいずれかに記載の組成物を含む、付記6記載の風味改善組成物。
(付記8)
対象物に微小気泡を導入する導入工程を含み、
前記微小気泡は、付記1から3のいずれかに記載の組成物における微小気泡を含む、対象物の製造方法。
(付記9)
前記対象物は、液体および固体の少なくとも一方である、付記8記載の対象物の製造方法。
(付記10)
対象物に微小気泡を導入する導入工程を含む、甘味付与方法。
(付記11)
前記導入工程は、付記8または9記載の微小気泡を含む対象物の製造方法により実施される、付記10記載の甘味付与方法。
(付記12)
対象物に微小気泡を導入する導入工程を含む、風味改善方法。
(付記13)
前記導入工程は、付記8または9記載の微小気泡を含む対象物の製造方法により実施される、付記12記載の風味改善方法。
(付記14)
付記1から3のいずれかに記載の組成物を含む、飲食品。
(付記15)
付記8または9記載の微小気泡を含む対象物の製造方法を含み、
前記導入工程における対象物は、飲食品である、飲食品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、対象物に甘味を付与できる、または、風味を改善することができる。このため、本発明は、食品分野等において極めて有用である。

図1
図2
図3
図4