IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-レーザー加工装置 図1
  • 特許-レーザー加工装置 図2
  • 特許-レーザー加工装置 図3
  • 特許-レーザー加工装置 図4
  • 特許-レーザー加工装置 図5
  • 特許-レーザー加工装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230927BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
B23K26/00 M
H01L21/78 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019041921
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142289
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝日 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 潤一
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 貴士
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-211279(JP,A)
【文献】特開2003-275881(JP,A)
【文献】国際公開第2009/066370(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザービームを照射するレーザービーム発振器を含むレーザービーム照射ユニットと、
該レーザービームの出力を測定する出力測定ユニットと、
制御部と、を備え、
該制御部は、
該レーザービーム発振器の周波数を変更して該出力測定ユニットにレーザービームを照射する周波数変更部と、
該周波数毎にレーザービームの出力を記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶された周波数毎のレーザービーム出力が許容値の範囲内かどうかに基づいて該レーザービーム発振器の合否を判定する合否判定部と、を備え、
該合否判定部の判定結果を表示面に表示する表示ユニットを更に備え、
該表示ユニットは、該判定結果を、該レーザービームの周波数と、該出力測定ユニットの測定結果である出力測定結果と、該レーザービーム発振器が合格であるか不合格であるかを判定するための基準となる値である出力規定値と、合否判定結果とを1対1で対応付けるとともに、不合格を示す合否判定結果を、合格を示す合否判定結果を含めて該表示面の他の領域の色と異なる色で表示することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
被加工物にレーザービームを照射するレーザービーム発振器を含むレーザービーム照射ユニットと、
該レーザービームの出力を測定する出力測定ユニットと、
制御部と、を備え、
該制御部は、
該レーザービーム発振器の周波数を変更して該出力測定ユニットにレーザービームを照射する周波数変更部と、
該周波数毎にレーザービームの出力を記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶された周波数毎のレーザービーム出力が許容値の範囲内かどうかに基づいて該レーザービーム発振器の合否を判定する合否判定部と、を備え、
該合否判定部の判定結果を表示面に表示する表示ユニットを更に備え、
該表示ユニットは、該判定結果を、該レーザービームの周波数と、レーザー加工装置が工場から出荷される際に、該出力測定ユニットで測定した該レーザービームの出力である出荷時出力測定結果と、該レーザービーム発振器が該レーザービームを所定時間出射し、該出力測定ユニットで測定した時の該レーザービームの出力の変動値と、該出荷時出力測定結果の該レーザービームの出力を100パーセントとした時の割合である変動規定値とを1対1で対応付けるとともに、不合格を示す合否判定結果を、合格を示す合否判定結果を含めて該表示面の他の領域の色と異なる色で表示することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項3】
該出力測定ユニットは、該レーザービームの光軸と直交する方向に進退可能に構成され、該レーザービーム発振器の出射口から出射された直後の該レーザービームの出力を測定することを特徴とする、請求項1又は請求項に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等の板状物を切断してチップを製造する方法として、レーザービームの集光位置を板状物の表面に位置付けて被加工物をアブレーション加工し切断する方法や、レーザービームの集光位置を板状物の内部に位置付けて分割起点となる改質層を形成する方法などが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
上述した加工方法を実現するために使用されるレーザー加工装置には、レーザービーム発振器が搭載されている。レーザービーム発振器にはレーザービームを伝播するために多くの光学部品が使用されているため、輸送の際に衝撃が加わる等すると光学部品がずれて所望の出力が出なくなる場合がある。こうして発振器から所望の出力が得られなくなると、板状物を適切に加工出来なくなるおそれがあるため、レーザー加工装置の輸送後やレーザービーム発振器の交換後にはレーザービーム発振器から所望の出力が得られるかどうかを検査する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-305420号公報
【文献】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来から用いられてきたレーザー加工装置は、レーザービームを所定の周波数に設定し、都度その出力を測定する、という作業をオペレータが都度マニュアルで実施する必要があったため、時間がかかるという問題があった。また、オペレータが発振器の合否判断を実施するため、間違いがあっても気付けないという別の課題も存在していた。
【0006】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、レーザービーム発振器の検査に係る所要時間を抑制することができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、被加工物にレーザービームを照射するレーザービーム発振器を含むレーザービーム照射ユニットと、該レーザービームの出力を測定する出力測定ユニットと、制御部と、を備え、該制御部は、該レーザービーム発振器の周波数を変更して該出力測定ユニットにレーザービームを照射する周波数変更部と、該周波数毎にレーザービームの出力を記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された周波数毎のレーザービーム出力が許容値の範囲内かどうかに基づいて該レーザービーム発振器の合否を判定する合否判定部と、を備え、該合否判定部の判定結果を表示面に表示する表示ユニットとを更に備え、該表示ユニットは、該判定結果を、該レーザービームの周波数と、該出力測定ユニットの測定結果である出力測定結果と、該レーザービーム発振器が合格であるか不合格であるかを判定するための基準となる値である出力規定値と、合否判定結果とを1対1で対応付けるとともに、不合格を示す合否判定結果を、合格を示す合否判定結果を含めて該表示面の他の領域の色と異なる色で表示することを特徴とする。
本発明のレーザー加工装置は、被加工物にレーザービームを照射するレーザービーム発振器を含むレーザービーム照射ユニットと、該レーザービームの出力を測定する出力測定ユニットと、制御部と、を備え、該制御部は、該レーザービーム発振器の周波数を変更して該出力測定ユニットにレーザービームを照射する周波数変更部と、該周波数毎にレーザービームの出力を記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された周波数毎のレーザービーム出力が許容値の範囲内かどうかに基づいて該レーザービーム発振器の合否を判定する合否判定部と、を備え、該合否判定部の判定結果を表示面に表示する表示ユニットを更に備え、該表示ユニットは、該判定結果を、該レーザービームの周波数と、レーザー加工装置が工場から出荷される際に、該出力測定ユニットで測定した該レーザービームの出力である出荷時出力測定結果と、該レーザービーム発振器が該レーザービームを所定時間出射し、該出力測定ユニットで測定した時の該レーザービームの出力の変動値と、該出荷時出力測定結果の該レーザービームの出力を100パーセントとした時の割合である変動規定値とを1対1で対応付けるとともに、不合格を示す合否判定結果を、合格を示す合否判定結果を含めて該表示面の他の領域の色と異なる色で表示することを特徴とする
【0008】
前記レーザー加工装置では、該出力測定ユニットは、該レーザービームの光軸と直交する方向に進退可能に構成され、該レーザービーム発振器の出射口から出射された直後の該レーザービームの出力を測定しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、レーザービーム発振器の検査に係る所要時間を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示されたレーザー加工装置の加工対象の被加工物の斜視図である。
図3図3は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム発振器の合否判定結果を表示ユニットの表示面に表示した一例を示す図である。
図5図5は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム発振器の合否判定結果を表示ユニットの表示面に表示した他の例を示す図である。
図6図6は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム発振器の合否判定結果を表示ユニットの表示面に表示した更に他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るレーザー加工装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示されたレーザー加工装置の加工対象の被加工物の斜視図である。図3は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。
【0013】
実施形態1に係るレーザー加工装置は、図2に示す被加工物200に対してパルス状のレーザービーム21(図3に示す)を照射し、被加工物200をレーザー加工する装置である。図1に示されたレーザー加工装置1の加工対象である被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素などの基板201を有する円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。
【0014】
被加工物200は、図2に示すように、基板201の表面202に格子状に設定された分割予定ライン203と、分割予定ライン203によって区画された領域に形成されたデバイス204と、を有している。デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0015】
実施形態1において、被加工物200は、環状フレーム210が貼着されかつ被加工物200の外径よりも大径なテープ211が表面202の裏側の裏面205に貼着されて、環状フレーム210の開口内に支持される。実施形態1において、被加工物200は、分割予定ライン203に沿って個々のデバイス204に分割される。
【0016】
レーザー加工装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で保持するチャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、移動ユニット40と、撮像ユニット90と、制御部である制御ユニット100とを備える。
【0017】
チャックテーブル10は、被加工物200を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10は、保持面11上に載置された被加工物200を吸引保持する。実施形態1では、保持面11は、水平方向と平行な平面である。チャックテーブル10の周囲には、被加工物200を開口内に支持する環状フレーム210を挟持するクランプ部12が複数配置されている。また、チャックテーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13及びチャックテーブル10は、移動ユニット40のX軸移動ユニット50によりX軸方向に移動される。
【0018】
移動ユニット40は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを相対的に移動させるものである。移動ユニット40は、チャックテーブル10を保持面11と平行な方向であるX軸方向に移動させる加工送り手段であるX軸移動ユニット50と、チャックテーブル10を保持面11と平行でかつX軸方向と直交する方向であるY軸方向に移動させる割り出し送り手段であるY軸移動ユニット60と、レーザービーム照射ユニット20を保持面11に対して直交するZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット70とを備える。
【0019】
実施形態1では、X軸移動ユニット50及びY軸移動ユニット60は、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。X軸移動ユニット50及びY軸移動ユニット60は、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転ユニット13を支持した移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持しているとともに、Y軸方向に移動自在に支持している。
【0020】
Z軸移動ユニット70は、装置本体2から立設した柱3に設置され、レーザービーム照射ユニット20をZ軸方向に移動自在に支持している。X軸移動ユニット50、Y軸移動ユニット60及びZ軸移動ユニット70は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ51,61,71、ボールねじ51,61,71を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ52,62,72及び移動プレート14又はレーザービーム照射ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール53,63,73を備える。
【0021】
また、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、チャックテーブル10のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、レーザービーム照射ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0022】
撮像ユニット90は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像するものである。撮像ユニット90は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラや赤外線カメラにより構成される。実施形態1では、撮像ユニット90は、レーザービーム照射ユニット20に固定されている。撮像ユニット90は、被加工物200を撮像して、被加工物200とレーザービーム照射ユニットとの位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0023】
レーザービーム照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対してパルス状のレーザービーム21(図3に示す)を照射するユニットである。レーザービーム照射ユニット20は、図3に示すように、チャックテーブル10に保持された被加工物200に照射するレーザービーム21を出射口22-1から出射するレーザービーム発振器22と、レーザービーム発振器22が発振したレーザービーム21をチャックテーブル10の保持面11に保持した被加工物200に向けて反射するミラー23と、ミラー23により反射されたレーザービーム21を被加工物200に集光させる集光レンズ24と、レーザービーム21の集光点の位置をZ軸方向に変位させる図示しない集光点位置調整手段とを含む。レーザービーム照射ユニット20が照射するレーザービーム21は、被加工物200に対して透過性を有する波長でも良く、被加工物200に対して吸収性を有する波長でも良い。
【0024】
レーザービーム発振器22は、光を発する半導体レーザー(LD:Laser Diode)と、共振ミラー間に配置され半導体レーザーが発した光が照射されるレーザー媒質と、レーザー媒質と一方の共振ミラーとの間に配置されかつ制御ユニット100によりスイッチ動作が制御されるQスイッチとを備える。レーザービーム発振器22は、制御ユニット100によりQスイッチのスイッチ動作が制御されることで、出射するレーザービーム21の周波数を変更することができる。このように、実施形態1では、レーザービーム発振器22は、所謂Qスイッチを用いて出射するレーザービーム21の周波数を変更するので、周波数が高くなるのにしたがってレーザービーム21の出力が低下する。なお、実施形態1では、レーザービーム発振器22は、所謂Qスイッチを用いて出射するレーザービーム21の周波数を変更するが、本発明では、レーザービーム21の周波数を変更する方式は、Qスイッチに限定されずに、例えば、例えば、特許第5148717号公報等に記載されたパルスピッカーを用いても良い。
【0025】
また、レーザー加工装置1は、図3に示すように、出力測定ユニット30を備える。出力測定ユニット30は、レーザービーム発振器22から発振されたレーザービーム21の出力を測定する受光面31を備えるものである。実施形態1では、出力測定ユニット30は、レーザービーム21の光軸と平行な方向において、レーザービーム発振器22とミラー23との間に設置され、シリンダ32のロッド33に取り付けられている。出力測定ユニット30は、シリンダ32のロッド33が伸縮することで、レーザービーム21の光軸と交差する方向(実施形態1では、直交する方向)に進退可能に構成されている。
【0026】
出力測定ユニット30は、シリンダ32のロッド33が伸縮することで、受光面31がレーザービーム発振器22の出射口22-1と対向してレーザービーム21の出力を測定する図3中の実線で示す測定位置と、受光面31がレーザービーム発振器22とミラー23との間から退避する図3中の二点鎖線で示す退避位置とに亘って進退可能である。出力測定ユニット30は、図3に示す受光面31に入射したレーザービーム21の強さに応じた信号を制御ユニット100に出力する。実施形態1において、受光面31の平面形状は、矩形に形成されているが、本発明では、受光面31の平面形状は、矩形に限定されない。
【0027】
出力測定ユニット30は、受光面31にレーザービーム21が照射されることによって、レーザービーム21の出力に応じた信号を制御ユニット100に出力し、レーザービーム発振器22の出射口22-1から出射された直後のレーザービーム21の出力を測定するようになっている。レーザービーム照射ユニット20は、被加工物200を加工する際には、出力測定ユニット30の受光面31を退避位置に位置付けて、レーザービーム発振器22の出射口22-1から出射されたレーザービーム21を被加工物200に照射する。また、レーザービーム照射ユニット20は、オペレータなどから設定されたレーザービーム発振器22の合否を判定する際に出力測定ユニット30の受光面31を測定位置に位置付けて、レーザービーム21の出力を出力測定ユニット30の受光面31で測定する。
【0028】
制御ユニット100は、レーザー加工装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作をレーザー加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザー加工装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介してレーザー加工装置1の上述した構成要素に出力して、制御ユニット100の機能を実現する。
【0029】
また、レーザー加工装置1は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示部である表示ユニット120と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットと、報知ユニット101とを備える。表示ユニット120、入力ユニット及び報知ユニット101は、制御ユニット100に接続している。入力ユニットは、表示ユニット120に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。表示ユニット120は、表示面121に表示される情報や画像が入力ユニット等からの操作により切り換えられる。報知ユニット101は、制御ユニット100により制御され、音と光とのうち少なくとも一方を発してレーザー加工装置1のオペレータに報知する。
【0030】
また、制御ユニット100は、図1に示すように、周波数変更部110と、記憶部111と、合否判定部112とを備える。周波数変更部110は、レーザービーム発振器22が出射するレーザービーム21の周波数を変更するものである。周波数変更部110は、被加工物200を加工する際、レーザービーム発振器22の合否を判定する際との双方において、レーザービーム21の周波数を変更する。即ち、周波数変更部110は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22が出射するレーザービーム21の周波数を変更して、出力測定ユニット30の受光面31にレーザービーム21を照射する。実施形態1において、周波数変更部110は、レーザービーム発振器22のQスイッチのスイッチ動作を制御して、レーザービーム発振器22が出射するレーザービーム21の周波数を変更する。
【0031】
記憶部111は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22が出射したレーザービーム21の周波数毎に出力測定ユニット30の受光面31で測定したレーザービーム21の出力を記憶する。記憶部111は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22が出射したレーザービーム21の周波数と、出力測定ユニット30の受光面31で測定したレーザービーム21の出力とを1対1で対応付けて記憶する。
【0032】
記憶部111は、レーザービーム21の出力規定値を記憶している。出力規定値は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22が合格であるか不合格であるかを判定するための基準となる値であり、実施形態1では、レーザービーム21の出力の下限値であるが、本発明では、下限値に限定されない。実施形態1では、記憶部111は、レーザービーム発振器22が出射するレーザービーム21の周波数毎に出力規定値を記憶し、レーザービーム発振器22が出射するレーザービーム21の周波数と出力規定値とを1対1で対応付けて記憶している。
【0033】
また、記憶部111は、出荷時出力測定結果と、変動規定値と、変動値とを記憶する。出荷時出力測定結果は、レーザー加工装置1が工場から出荷される際に、出力測定ユニット30で測定したレーザービーム21の出力である。実施形態1では、記憶部111は、レーザービーム発振器22が出射したレーザービーム21の周波数毎に出荷時出力測定結果を記憶し、レーザービーム発振器22が出射したレーザービーム21の周波数と出荷時出力測定結果とを1対1で対応付けて記憶している。
【0034】
変動規定値は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22が合格であるか不合格であるかを判定するための基準となる値であり、実施形態1では、出荷時出力測定結果のレーザービーム21の出力を100パーセントとした時の割合(実施形態1では、パーセント)で規定される。実施形態1では、記憶部111は、レーザービーム発振器22が出射するレーザービーム21の周波数毎に変動規定値を記憶し、レーザービーム発振器22が出射するレーザービーム21の周波数と変動規定値とを1対1で対応付けて記憶している。
【0035】
変動値は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22がレーザービーム21を所定時間出射し、出力測定ユニット30の受光面31で測定した時のレーザービーム21の出力の変動値(実施形態1では、最大出力と最小出力との差)である。実施形態1では、記憶部111は、変動値をレーザービーム21の周波数毎に記憶する。記憶部111は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22が出射したレーザービーム21の周波数と、変動値とを1対1で対応付けて記憶する。
【0036】
合否判定部112は、記憶部111に記憶された周波数毎のレーザービーム21の出力が許容値の範囲内かどうかに基づいてレーザービーム発振器22の合否を判定するものである。合否判定部112は、記憶部111に記憶された周波数毎のレーザービーム21の出力が許容値の範囲内であるとレーザービーム発振器22が合格であると判定し、記憶部111に記憶された周波数毎のレーザービーム21の出力が許容値の範囲外であるとレーザービーム発振器22が不合格であると判定する。
【0037】
具体的には、合否判定部112は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、出力測定ユニット30の受光面31で測定したレーザービーム21の出力が記憶部111に記憶された周波数毎の出力規定値以上であると、レーザービーム21の出力が許容値の範囲内であると判定し、出力規定値未満であると、レーザービーム21の出力が許容値の範囲外であると判定する。また、合否判定部112は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、レーザービーム発振器22がレーザービーム21を所定時間出射した時の変動値が記憶部111に記憶された出荷時出力測定結果に対する変動規定値で規定される範囲内であると、レーザービーム21の出力が許容値の範囲内であると判定し、出荷時出力測定結果に対する変動規定値で規定される範囲外であると、レーザービーム21の出力が許容値の範囲外であると判定する。
【0038】
記憶部111の機能は、記憶装置により実現される。周波数変更部110及び合否判定部112の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで実現される。
【0039】
前述した構成のレーザー加工装置1は、チャックテーブル10の保持面11に被加工物200を吸引保持し、撮像ユニット90でチャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像して、アライメントを遂行する。レーザー加工装置1は、移動ユニット40でチャックテーブル10とレーザービーム照射ユニット20とを相対的に移動させて、レーザービーム21を分割予定ライン203に沿って照射して、被加工物200を加工する。レーザー加工装置1は、全ての分割予定ライン203にレーザービーム21を照射すると加工を終了する。
【0040】
また、レーザー加工装置1は、電源が投入されてからアイドリングを終了後、工場出荷時、又はレーザービーム発振器22の交換後に、レーザービーム発振器22の合否が判定される。図4は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム発振器の合否判定結果を表示ユニットの表示面に表示した一例を示す図である。図5は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム発振器の合否判定結果を表示ユニットの表示面に表示した他の例を示す図である。図6は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム発振器の合否判定結果を表示ユニットの表示面に表示した更に他の例を示す図である。
【0041】
レーザー加工装置1の制御ユニット100は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、出力測定ユニット30の受光面31を測定位置に位置付けて、周波数変更部110でレーザービーム21の周波数を調整して、出力規定値が予め定められた周波数のレーザービーム21をレーザービーム発振器22から出射し、出力測定ユニット30の受光面31で出力を測定する。制御ユニット100は、出力規定値が予め定められた周波数にレーザービーム21の周波数に順に調整し、各周波数のレーザービーム21をレーザービーム発振器22から出射し、出力測定ユニット30の受光面31で出力を測定する。
【0042】
制御ユニット100は、記憶部111が、周波数と対応付けて出力測定ユニット30で測定したレーザービーム21の出力を記憶し、合否判定部112が、周波数毎に出力測定ユニット30で測定したレーザービーム21の出力が出力規定値以上であるか否かを判定する。制御ユニット100は、周波数毎に出力測定ユニット30で測定したレーザービーム21の出力が出力規定値以上であると合格と判定し、出力測定ユニット30で測定したレーザービーム21の出力が出力規定値未満であると不合格と判定し、判定結果301,302を図4及び図5に示すように、表示ユニット120の表示面121に表示する。
【0043】
なお、図4及び図5に示す判定結果301,302は、レーザービーム21の周波数と、出力測定ユニット30の測定結果である出力測定結果と、出力規定値と、合否判定結果とを1対1で対応付けている。図5に示す判定結果302は、不合格を示す合否判定結果を、図5中の平行斜線で示すように、合格を示す合否判定結果を含めて表示面の他の領域の色と異なる色で表示する。
【0044】
また、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、出力測定ユニット30の受光面31を測定位置に位置付けて、周波数変更部110でレーザービーム21の周波数を調整して、変動規定値が予め定められた周波数のレーザービーム21をレーザービーム発振器22から所定時間出射し、出力測定ユニット30の受光面31で出力を測定する。制御ユニット100は、変動規定値が予め定められた周波数にレーザービーム21の周波数に順に調整し、レーザービーム発振器22から各周波数のレーザービーム21を所定時間出射し、出力測定ユニット30の受光面31で出力を測定する。なお、実施形態1では、所定時間は、5分であるが、本発明では、5分に限定されない。
【0045】
制御ユニット100は、出力測定ユニット30の測定結果から周波数毎にレーザービーム21の出力の変動値を算出して周波数と対応付けて記憶部111に記憶し、合否判定部112が、周波数毎に変動値が出荷時出力測定結果に対する変動規定値で規定される範囲内であるか否かを判定する。制御ユニット100は、周波数毎に記憶部111に記憶した変動値が出荷時出力測定結果に対する変動規定値で規定される範囲内であると合格と判定し、出荷時出力測定結果に対する変動規定値で規定される範囲外であると不合格と判定し、判定結果303を図6に示すように、表示ユニット120の表示面121に表示する。
【0046】
なお、図6に示す判定結果303は、レーザービーム21の周波数と、出荷時出力測定結果と、変動値と、変動規定値とを1対1で対応付けている。図6に示す判定結果303は、不合格を示す合否判定結果を、図6中の平行斜線で示すように、合格を示す合否判定結果を含めて表示面の他の領域の色と異なる色で表示する。
【0047】
制御ユニット100は、判定結果301,302,303において不合格である周波数が一つでもあると、報知ユニット101を動作させて、オペレータに警告を報知する。不合格と判定されたレーザービーム照射ユニット20は、例えば、レーザービーム発振器22の調整等が施されるか、又は交換される。
【0048】
以上説明したように、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、レーザービーム発振器22の合否を判定する際に、出力規定値及び変動規定値が予め定められた周波数にレーザービーム21の周波数に順に調整し、各周波数のレーザービーム21をレーザービーム発振器22から出射し、出力測定ユニット30の受光面31で出力を測定する。このために、レーザー加工装置1は、出力測定ユニット30の測定結果から自動でレーザービーム発振器22の合否を判定することができる。その結果、レーザー加工装置1は、工場出荷時やレーザービーム発振器22の交換後の検査工程を簡略化でき、ヒューマンエラーを防止できるとともに、レーザービーム発振器22の検査に係る所要時間を抑制することができるという効果を奏する。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 レーザー加工装置
20 レーザービーム照射ユニット
21 レーザービーム
22 レーザービーム発振器
22-1 出射口
30 出力測定ユニット
100 制御ユニット(制御部)
110 周波数変更部
111 記憶部
112 合否判定部
200 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6