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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】薬液揮散器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20230927BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230927BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019068972
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163024
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開1 展示日:平成31年1月9日~平成31年1月11日 展示会名:小林製薬グループ 第56回2019年春 新製品商談会 展示場所:東京交通会館 12階「ダイヤモンドホール」(東京都千代田区有楽町2-10-1) 公開2 展示日:平成31年1月17日~平成31年1月18日 展示会名:小林製薬グループ 第56回2019年春 新製品商談会 展示場所:マイドームおおさか 2階展示場(大阪府大阪市中央区本町橋2-5) 公開3 展示日:平成31年1月24日 展示会名:小林製薬グループ 第56回2019年春 新製品商談会 展示場所:福岡ファッションビル 8階Aホール(福岡市博多区博多駅前2丁目10-19)
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 勧
(72)【発明者】
【氏名】宮長 幸
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-031160(JP,A)
【文献】特開2017-176766(JP,A)
【文献】特開2014-189293(JP,A)
【文献】特開2012-045246(JP,A)
【文献】特開2011-004867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
B65D 83/00,83/08-83/76
B65D 85/00-85/28,85/575
A45D 33/00-40/30
A01M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成される天面部を有し、内部に薬液を収容するための容器と、
前記薬液を前記容器内から吸い上げるべく、前記容器外へその一部が露出するように前記開口を介して前記容器内に挿入される少なくとも1本の棒状の揮散体と
を備え、
前記容器は、前記天面部上に、前記開口の近傍において前記開口を囲むように前記開口の周方向に沿って延びるリブをさらに有し、
前記リブは、前記開口の周方向に沿って1か所又は複数の箇所で断絶する、
薬液揮散器。
【請求項2】
開口が形成される天面部を有し、内部に薬液を収容するための容器と、
前記薬液を前記容器内から吸い上げるべく、前記容器外へその一部が露出するように前記開口を介して前記容器内に挿入される少なくとも1本の棒状の揮散体と
を備え、
前記容器は、前記天面部上に、前記開口の近傍において前記開口を囲むように前記開口の周方向に沿って延びるリブをさらに有し、
前記天面部は、前記開口を外側から囲み、前記開口を画定する第1面部を含み、
前記第1面部の上面は、前記リブよりも高い位置まで延び、
前記揮散体は、前記開口との間に隙間が形成されるように前記容器内に挿入される、
薬液揮散器。
【請求項3】
前記リブは、1又は複数のスリットを有し、前記1又は複数のスリットにより、前記開口の周方向に沿って前記1か所又は前記複数の箇所で断絶しており、
前記少なくとも1本の棒状の揮散体は、前記スリットの数よりも多い本数の前記棒状の揮散体を含む、
請求項1に記載の薬液揮散器。
【請求項4】
前記第1面部の上面は、径方向外方に向かって上方へ傾斜している、
請求項2に記載の薬液揮散器。
【請求項5】
前記天面部は、前記第1面部を外側から囲む第2面部をさらに含み、
前記第2面部の上面は、水平方向に対して10°以下の角度を為す、
請求項2又は4に記載の薬液揮散器。
【請求項6】
前記揮散体の横断面の輪郭線は、凹凸を有する、
請求項1から5のいずれかに記載の薬液揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬液が収容された容器内に、棒状の揮散体を容器内から突出するような態様で挿入して使用する薬液揮散器が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。このタイプの薬液揮散器では、容器内の薬液が揮散体に吸い上げられて外部空間に揮散することにより、薬液の有する芳香効果等の効果が外部空間に付与される。揮散体は、多くの場合、インテリア性を向上させるべく、容器内で適当な角度で傾斜するようにセットされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-115364号公報
【文献】特開2016-124603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、以上のような薬液揮散器では、薬液の残量が少なくなると、残量を確認し難く、薬液の使い終わりが分かりにくいことがある。このような場合に、残量を確認するために容器を持ち上げると、容器内で揮散体が移動し、セットした揮散体の角度が崩れる。また、複数本の揮散体が使用されている場合には、それらの向きが偏る。そして、残量の確認後、揮散体を容器内で再度美しくセットするために触ると、揮散体に付着している薬液によって手が汚れてしまう。
【0005】
本発明は、棒状の揮散体により容器内の薬液を吸い上げて揮散させる薬液揮散器において、薬液の使い終わりを分かり易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る薬液揮散器は、開口が形成される天面部を有し、内部に薬液を収容するための容器と、前記薬液を前記容器内から吸い上げるべく、前記容器外へその一部が露出するように前記開口を介して前記容器内に挿入される少なくとも1本の棒状の揮散体とを備える。前記容器は、前記天面部上に、前記開口の近傍において前記開口を囲むように前記開口の周方向に沿って延びるリブをさらに有する。
【0007】
本発明の第2観点に係る薬液揮散器は、第1観点に係る薬液揮散器であって、前記リブは、前記開口の周方向に沿って1か所又は複数の箇所で断絶する。
【0008】
本発明の第3観点に係る薬液揮散器は、第2観点に係る薬液揮散器であって、前記リブは、1又は複数のスリットを有し、前記1又は複数のスリットにより、前記開口の周方向に沿って前記1か所又は前記複数の箇所で断絶する。前記少なくとも1本の棒状の揮散体は、前記スリットの数よりも多い本数の前記棒状の揮散体を含む。
【0009】
本発明の第4観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第3観点のいずれかに係る薬液揮散器であって、前記天面部は、前記開口を外側から囲み、前記開口を画定する第1面部を含む。前記第1面部の上面は、径方向外方に向かって上方へ傾斜している。
【0010】
本発明の第5観点に係る薬液揮散器は、第4観点に係る薬液揮散器であって、前記第1面部の上面は、前記リブよりも高い位置まで延びる。
【0011】
本発明の第6観点に係る薬液揮散器は、第4観点又は第5観点に係る薬液揮散器であって、前記天面部は、前記第1面部を外側から囲む第2面部をさらに含む。前記第2面部の上面は、水平方向に対して10°以下の角度を為す。
【0012】
本発明の第7観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第6観点のいずれかに係る薬液揮散器であって、前記揮散体の横断面の輪郭線は、凹凸を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、棒状の揮散体により容器内の薬液を吸い上げて揮散させる薬液揮散器において、薬液の使い終わりを分かり易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る薬液揮散器の斜視図。
図2】本発明の一実施形態に係る揮散体の横断面図。
図3】本発明の一実施形態に係る容器の斜視図。
図4】本発明の一実施形態に係る容器の縦断面図。
図5】本発明の一実施形態に係るカバー部材の平面図。
図6】本発明の一実施形態に係るカバー部材の底面図。
図7A】変形例に係る天面部のリブ周辺の平面図。
図7B】別の変形例に係る天面部のリブ周辺の平面図。
図7C】さらに別の変形例に係る天面部のリブ周辺の平面図。
図8A】変形例に係るカバー部材の部分的な縦断面図。
図8B】別の変形例に係るカバー部材の部分的な縦断面図。
図8C】さらに別の変形例に係るカバー部材の部分的な縦断面図。
図8D】さらに別の変形例に係るカバー部材の部分的な縦断面図。
図8E】さらに別の変形例に係るカバー部材の部分的な縦断面図。
図9A】変形例に係るカバー部材と容器本体との接続部分の部分的な縦断面図。
図9B】別の変形例に係るカバー部材と容器本体との接続部分の部分的な縦断面図。
図9C】さらに別の変形例に係るカバー部材と容器本体との接続部分の部分的な縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る薬液揮散器1について説明する。
【0016】
<1.薬液揮散器の全体構成>
図1に、本発明の一実施形態に係る薬液揮散器1の斜視図を示す。同図に示すように、薬液揮散器1は、薬液が収容される容器2と、容器2内に挿入される少なくとも1本の棒状の揮散体3とを備える。容器2は、上部に開口S1を有し、この開口S1を介して容器2内に揮散体3が挿入される。なお、本明細書でいう「上」「下」は、特に断らない限り、図1に示す使用状態を基準に定義される。
【0017】
ここで使用される薬液は、特にその種類は限定されないが、典型的には芳香剤、消臭剤又は防虫剤、或いはこれらの混合物であり、使用目的に応じて、香料、消臭成分、防虫成分、着色料等の添加剤が含有される。薬液に含まれる溶媒は、使用される添加剤の種類に応じて適宜選択され、親水性溶媒又は親油性溶媒、或いはこれらの混合物とすることができる。薬液が香料を含む場合には、その香り強度を高めるために、溶媒として少なくとも親油性溶媒を含むことが好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水又はエタノール、或いはこれらの混合物を使用することができる。親油性溶媒としては、例えば、グリコールエーテル又はイソパラフィン系溶媒、或いはこれらの混合物を使用することができる。また、薬液には、香料、消臭成分、防虫成分、着色料等の機能性成分を可溶化させるために、溶解剤が含まれていてもよい。
【0018】
棒状の揮散体3は、容器2内からその一部が突出するような態様で容器2内に差し込まれる。すなわち、揮散体3は、容器2の高さに対し十分な長さを有しており、下端部3aが容器2内に配置され、上端部3bが容器2外に露出するような態様で容器2内に挿入される。このとき、薬液揮散器1のインテリア性を向上させるべく、揮散体3は、上下方向に対し傾斜した状態で容器2内にセットされる。また、図1に示すように、同時に複数本の揮散体3が使用される場合には、これらの揮散体3が様々な方向を向き、放射状に延びるように容器2内にセットされる。
【0019】
揮散体3は、後述されるように、薬液を毛細管現象により重力に逆らって吸い上げることが可能な構造を有している。その結果、容器2内の薬液は、揮散体3を伝って下端部3aから上端部3bまで上昇することができ、揮散体3の外表面から外部空間へと揮散(自然蒸散)する。これにより、薬液は、薬液揮散器1の置かれた周囲の空間へ拡散される。
【0020】
揮散体3の形状及び材質は、薬液を吸い上げて外部に揮散させることができる限り、特に限定されない。揮散体3は、典型的には、内部に微細孔を有する細長い略円柱形状を有しており、ラタン等の天然素材から構成することもできるし、ポリエチレン、ポリアセタール等の合成樹脂から構成することもできる。本実施形態に係る揮散体3は、図2に示す横断面形状を有する。この例では、揮散体3は、ポリエチレンテレフタレートとポリウレタンから構成され、内部に多数の不定形の微細孔31を有する。また、この揮散体3の外表面には、多数の溝32が形成されている。これらの溝32は、揮散体3の軸方向に沿って下端部3aから上端部3bまで筋状に延びている。すなわち、揮散体3の横断面は、周方向に沿って滑らかな輪郭線ではなく、凹凸を有する輪郭線を有する。また、これらの溝32は、揮散体3の周方向に沿って概ね等間隔に配置されている。薬液は、毛細管現象により、微細孔31だけでなく、溝32に沿っても吸い上げられる。そのため、本実施形態の揮散体3の外表面には、薬液が多量に付着し易くなっている。
【0021】
<2.容器の詳細>
図3に、容器2の斜視図を示し、図4に、容器2の縦断面図を示す。これらの図に示すように、本実施形態に係る容器2は、容器本体4と、容器本体4に取り付けられるカバー部材5とを含む。
【0022】
<2-1.容器本体>
容器本体4は、底面部10を有する。本実施形態では、底面部10は、その周縁部12がその中央部11よりも窪んだ形状を有している。従って、容器2内の薬液は、残量が少なくなると、底面部10の周縁部12の窪みに溜まることになる。一方で、棒状の揮散体3の下端部3aは、多くの場合、底面部10の周縁部12に配置される。従って、揮散体3と薬液とが接触し易い構成となっているため、薬液を最後まで使い切ることができる。
【0023】
容器本体4は、底面部10からその外周縁に沿って起立する筒状の胴部21と、胴部21の上端に連続する肩部22と、さらに肩部22の上端に連続する首部23とを有する。これに限定されないが、本実施形態では、平面視において、底面部10、胴部21、肩部22及び首部23の外形は、全て略円形であり、中心が一致する。首部23は、容器2の上部の開口S1に連通する口部を構成する筒状の部位である。以下、首部23を口部と呼び、同じく参照符号23を付すことがある。
【0024】
口部23は、胴部21よりも縮径されている。これにより、薬液揮散器1の転倒時には肩部22が壁となり、薬液が開口S1を介してこぼれにくくなる。特に本実施形態では、口部23が胴部21と同軸に配置されるため、薬液揮散器1がどの方向に転倒したとしても肩部22が壁となり、薬液のこぼれを抑制することができる。また、開口S1の横断面の面積が胴部21の横断面の面積よりも狭いため、容器2内に収容される薬液の量に対し、開口S1を介して容器2内から自然蒸散する薬液の量を抑制することができる。
【0025】
本実施形態では、肩部22は、段差を有し、下段部221と、下段部221の上方に位置する上段部222とを有する。平面視において、下段部221は、上段部222を外側から囲むように配置される。また、口部23の上端部231は、フランジ状に形成されている。以下、上端部231をフランジ部と呼び、同じく参照符号231を付すことがある。
【0026】
容器本体4の材質は特に限定されず、本実施形態では、ガラス製であるが、その他、例えば、合成樹脂製とすることができる。インテリア性を向上させる観点からは、容器2は、透明(半透明を含む)に形成されていることが好ましい。
【0027】
<2-2.カバー部材>
図3及び図4に示すように、カバー部材5は、口部23を上方から覆うように容器本体4に取り付けられる。カバー部材5は、天面部50を有し、天面部50に容器2の開口S1が形成される。図5は、カバー部材5の平面図であり、図6は、カバー部材5の底面図である。なお、図4は、図5のC1-C1断面図、及び図6のC2-C2断面図に相当する。カバー部材5の材質は特に限定されず、本実施形態では、合成樹脂製、特にポリプロピレン製であるが、その他、例えば、木製とすることができる。
【0028】
天面部50は、開口S1を外側から囲み、開口S1を画定する第1面部51と、第1面部51を外側から囲む第2面部52とを含む。第1面部51の上面は、径方向外方に向かって上方へ傾斜する斜面を構成する。第1面部51の上面は、縦断面視において直線状である。第2面部52の上面は、実質的に水平方向に延びる。なお、本実施形態の説明において「径方向」及び「周方向」とは、特に断らない限り、開口S1の中心を通り、上下方向に延びる軸を基準に定義される。本実施形態では、開口S1は、略円形であり、第1面部51及び第2面部52の外形も、平面視において略円形である。また、平面視において、開口S1、第1面部51及び第2面部52の外形の中心は、全て口部23の中心軸に重なる。
【0029】
また、カバー部材5は、第1面部51の下面から下方に延びる筒状の壁部53を有する。壁部53は、第1面部51のうち、開口S1を画定する内周縁部501から下方に、周方向に沿って延びている。本実施形態では、壁部53の外形も、平面視において略円形であり、開口S1と中心が一致する。壁部53の外径は、容器本体4の口部23の内径よりもやや小さい。よって、壁部53は、容器本体4の口部23の内面に接触しつつ又は当該内面からやや間隔を空けて、口部23内に挿入される。壁部53の内側の空間は、開口S1に連通しており、同空間には揮散体3が挿入される。
【0030】
第1面部51の内周縁部501は、口部23の上端部231よりも径方向内方に位置する。壁部53は、内周縁部501から口部23の内面に沿って下方に延びる第1部分531と、第1部分531の下端部からさらに下方に延びる第2部分532とを含む。図4に示すように、第1部分531は、容器本体4の内面(口部23の内面)に接触している又は殆ど接触しているが、第2部分532は、容器本体4の内面から一定程度離間している。本実施形態では、第1部分531及び第2部分532は、ともに上下方向に略一直線状に延びる。しかしながら、容器本体4の内面が肩部22の位置で壁部53から下方に向かうにつれて径方向外方へ離れてゆくため、第2部分532と容器本体4の内面との隙間S2が、第1部分531と容器本体4の内面との隙間より大きくなる。また、本実施形態では、第2部分532の外面が、下方に向かうにつれて径方向内方に向かうため、隙間S2は、第1部分531と容器本体4の内面との隙間よりさらに大きくなる。隙間S2は、下方に向かうにつれて徐々に大きくなる。
【0031】
また、カバー部材5は、天面部50の下面から下方に延びる複数の爪部54を有する。これらの爪部54は、天面部50の下面において壁部53から径方向外方に間隔を空けつつ、周方向に沿って所定の間隔で配置されている。これに限られないが、爪部54は、周方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。各爪部54は、天面部50の下面から下方に延びる薄板状の突出片541と、突出片541の下端部に連続し、突出片541よりも径方向内方に膨出する引っ掛け部542とを有する。カバー部材5を容器本体4に取り付けるときには、壁部53と爪部54との間に、容器本体4の口部23が挿入される。このとき、引っ掛け部542は、突出片541の弾性変形により、口部23のフランジ部231を乗り越える。その後、引っ掛け部542とフランジ部231とが引っ掛かり合うことにより、強い外力が加えられない限り、カバー部材5と容器本体4との連結状態が維持され、両部材5及び4が意図せず外れることがない。一方で、意図的に上下方向の力を加えることにより、カバー部材5を容器本体4から取り外すことができる。カバー部材5と容器本体4とは、着脱自在である。
【0032】
また、カバー部材5は、天面部50の周縁部から下方に延びる筒状の外周壁部55を有する。外周壁部55の下端部は、カバー部材5を容器本体4に取り付けたときに、容器本体4の肩部22の下段部221の上面に接触する。本実施形態では、天面部50とカバー部材5の胴部21とは、平面視において外形が概ね一致し、容器2は、全体として円柱形状となる。
【0033】
天面部50の第1面部51上には、開口S1の近傍において開口S1を囲むように、周方向に沿って延びるリブ56が配置される。本実施形態では、リブ56は、開口S1の概ね全周を囲むように配置される。リブ56には、複数のスリット561が形成されており、これらのスリット561により、リブ56は周方向に沿って複数の箇所で断絶している。スリット561は、周方向に沿って所定の間隔を空けて配置されており、これに限られないが、周方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。
【0034】
以上のリブ56及びスリット561は、以下のような役割を担う。すなわち、揮散体3により吸い上げられる薬液、特にその外表面に沿って吸い上げられる薬液は、その一部が天面部50の主として第1面部51上に漏れ出し、これに付着する。本実施形態では、第1面部51上に集められた薬液は、第1面部51が径方向内方に向かって下方に傾斜しているため、重力により第1面部51上を開口S1に向かって移動する。その後、薬液は、壁部53を伝って落下し、容器本体4内に戻される。よって、周辺環境が薬液により汚されることが防止される。一方で、以上のリブ56は、第1面部51上において開口S1の近傍に集められた薬液の全量が、容器本体4内に戻らないように作用する。言い換えると、リブ56は、薬液の一部を第1面部51上に貯留させる役割を果たす。
【0035】
すなわち、リブ56の存在により、天面部50上には、図5に点線で示すような、リブ56に沿って径方向外方の位置に、薬液の液溜まりが形成される。この液溜まりは、容器本体4内に薬液が残存している限り、通常形成されることになる。よって、使用者は、この液溜まりの存在を目視で確認することにより、薬液が残存していることを理解することができる。反対に、液溜まりの消失を目視で確認することにより、薬液の使い終わりを理解することができる。視認し易い液溜まりを形成する観点からは、リブ56の高さは、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、リブ56の長さは、5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることがより好ましく、9mm以上であることがさらに好ましい。ここでいうリブ56の長さとは、スリット561により断絶された部分のリブ56に沿った長さ(径方向内端に沿って計測される長さ)である。また、ここでいうリブ56の高さは、第1面部51の上面のリブ56の根本の位置からリブ56の上端までの鉛直上下方向の高さである。
【0036】
一方で、周囲の温度や湿度等の環境条件により揮散体3から薬液が多分に漏れ出すと、薬液が第1面部51から第2面部52に達し、第2面部52の外周縁から落下して、容器2の側面及びその周辺環境を汚す虞がある。この問題を防止する観点からは、第1面部51の上面は、リブ56よりも高い位置まで延びていることが好ましい。また、薬液がリブ56を乗り越えて容器本体4内に戻り易いようにする観点からは、リブ56の高さは、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
また、スリット561も、同様の問題を防止するのに役立つ。すなわち、薬液は、スリット561を通り、開口S1を介して容器本体4内に戻ることができる。よって、リブ56の周辺に薬液の残留のサインとなる液溜まりを形成しつつも、スリット561は、天面部50上に過剰に薬液が溜まることを防止することができる。薬液が容器本体4内に戻り易いようにする観点からは、スリット561の幅は、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、スリット561の個数は、1個以上であることが好ましく、2個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましい。一方、視認し易い液溜まりを形成する観点からは、スリット561の幅は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、スリット561の個数は、8個以下であることが好ましく、6個以下であることがより好ましく、4個以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいうスリット561の幅とは、両側のリブ56間の直線距離である。
【0038】
また、スリット561は、揮散体3がスリット561に引っ掛かることで、揮散体3の位置を固定するのにも役立つ。これにより、特に同時に複数本の揮散体3が使用される場合に、これらの揮散体3が容器2内で偏らず、様々な方向に放射状に延びる状態を容易に維持することができる。また、揮散体3がスリット561に引っ掛かる場合には、揮散体3とリブ56との接触箇所が増えるため、薬液は揮散体3に沿ってスムーズに容器本体4内に戻ることができる。なお、揮散体3の外表面が上記のとおり凹凸形状を有する場合には、揮散体3がスリット561に引っ掛り易い点で好ましい。
【0039】
同時に使用される揮散体3の数は、スリット561の数よりも多いことが好ましい。この場合、スリット561に引っ掛かっていない揮散体3を、少なくとも1本確保することができる。すなわち、揮散体3により吸い上げられた薬液は、通常、天面部50上において、第一に、揮散体3とカバー部材5との接触する位置の近傍に集まる。このとき、全ての揮散体3がスリット561に引っ掛かっていると、薬液の多くがスリット561を介して容器本体4内に戻るため、十分な大きさの液溜まりが形成されないことも生じ得る。しかしながら、スリット561に引っ掛かっていない揮散体3が存在する場合には、十分な大きさの液溜まりをより確実に形成することができる。
【0040】
ところで、上述した壁部53と容器本体4の内面との間の広い隙間S2は、天面部50から開口S1を介して容器本体4内に戻ろうとする薬液が、再び容器2の外部に漏れ出すのを防止することができる。すなわち、仮に壁部53がない、或いは壁部53の第2部分532が省略される場合には、開口S1を介して容器本体4内に戻ろうとする薬液は、図4に矢印A1で示されるようなルートを辿って外部に漏れ出す虞がある。このとき、薬液は、毛細管現象により、第1部分531と容器本体4の内面との間の狭い隙間を伝って上昇し得、その後、容器本体4の口部23及び肩部22に沿って容易に外部に漏れ出し得る。特に、口部23の上端部231と天面部50との隙間が狭い場合や、口部23の外面と爪部54との隙間が狭い場合には、この問題が助長され得る。しかしながら、本実施形態では、以上の隙間S2の存在により、薬液が、ここで述べたような狭い隙間に達するのを防止することができ、容器2の側面及びその周辺環境を汚す虞が低減される。
【0041】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0042】
<3-1>
上記実施形態では、容器2が容器本体4とカバー部材5とから構成されたが、本発明は、容器がカバー部材を有さず、容器本体のみを有する場合にも適用可能である。この場合、上述したカバー部材5の天面部50(リブ56及びスリット561を含む)の構成と同様の構成を、容器本体に適用することにより、同様の効果をもたらすことができる。
【0043】
<3-2>
上記実施形態では、開口S1は略円形とされたが、様々な形状を採用することができる。例えば、図7A図7Cに示すような、三角形や星型等とすることができ、この場合、開口S1を囲むリブ56の形態も同様に変更することができる。この場合、スリット561の位置及び個数も、適宜設定することができる。
【0044】
<3-3>
上記実施形態では、リブ56にスリット561が複数形成されたが、スリット561の数が1つで、リブ56が一か所のみで断絶していてもよい。また、リブ56が周方向に沿って全く断絶しておらず、スリット561が省略されてもよい。
【0045】
<3-4>
上述した天面部50の上面の構成は、例示であり、様々に構成することができる。例えば、斜面を構成する第1面部51を省略することもできるし(図8A参照)、第1面部51の上面が実質的に水平に延びていてもよいし(図8B参照)、第1面部51の斜面が縦断面視において湾曲していてもよい(図8C参照)。第2面部52の上面は、実質的に水平に延びていなくてもよく、特に径方向外方に向かって上方へ傾斜していてもよい(図8D参照)。ただし、インテリア性を確保する観点からは、第2面部52の上面は、実質的に水平に延びていることが好ましい。この観点から、第2面部52は、水平方向に対して10°以下の角度を為すことが好ましい。また、第2面部52を省略することもできる(図8E参照)。
【0046】
<3-5>
上記実施形態において、壁部53は省略することができる(図9A参照)。このような場合においても、カバー部材5の天面部50の内周縁部501が、口部23の上端部231よりも径方向内方に位置する場合には、容器本体4とカバー部材5との隙間を介して薬液が外部に漏れ出すのを抑制することができる。
【0047】
また、壁部53の長さも様々に調整することができ、例えば、第2部分532を省略することができる(図9B参照)。この場合、容器本体4とカバー部材5との隙間を介して薬液が外部に漏れ出すためには、薬液は、第1部分531の外面と口部23の内面との間を重力に逆らって上昇する必要がある。よって、上記実施形態の場合には劣るものの、このような場合にも、薬液が外部に漏れ出すのを抑制することができる。
【0048】
また、容器本体4の口部23が、筒状ではなく、平らな天面部により構成される場合に、口部23に壁部53を挿入してもよい(図9C参照)。このような場合においても、壁部53の下端部が容器本体4の内面から離間している場合には、容器本体4とカバー部材5との隙間を介して薬液が外部に漏れ出すのを抑制することができる。図9Cの例では、壁部53の下端部は、天面部である口部23の下面よりも下方まで延びている。
【符号の説明】
【0049】
1 薬液揮散器
2 容器
3 揮散体
4 容器本体
5 カバー部材
50 天面部
51 第1面部
52 第2面部
56 リブ
561 スリット
S1 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C