(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20230927BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20230927BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20230927BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20230927BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B24B27/06 J
B24B49/12
B23Q17/24 B
B23Q17/22 D
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2019199349
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小池 彩子
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071334(JP,A)
【文献】特開平10-055987(JP,A)
【文献】特開2017-154223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0082995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-51/00
H01L21/301
B23Q17/00-23/00
B28D1/00-7/04
G01B11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルに装着された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、
該スピンドルに装着される該切削ブレードを管理する管理ユニットと、を備え、
該管理ユニットは、
発光部と、
該発光部に対面し該発光部で発せられた光を受光する受光部と、
該発光部及び該受光部の間に該切削ブレードが位置する状態で該発光部から発せられ該受光部で受光される光の受光量を測定する測定部と、
切削ブレードの複数の回転角で計測された該受光量から切削ブレードの外径の形状を示す実測波形を形成する実測波形形成部と、
該切削ブレードが任意の偏心量で該スピンドルに装着された場合に該測定部で測定される切削ブレードの外径の形状を示す比較波形を形成する比較波形形成部と、
該比較波形形成部において使用する該偏心量を段階的に変化させて複数の比較波形を形成し、該実測波形と一致する領域が一番多い該比較波形を理想波形と認識する理想波形認識部と、
該実測波形と該理想波形とを重ね差分が発生した領域の面積を算出する差分算出部と、
該差分がしきい値を超えた場合、切削ブレードの形状が異常であるという判定をする判定部と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルに装着された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、
該スピンドルに装着される該切削ブレードを管理する管理ユニットと、を備え、
該管理ユニットは、
光を発する発光部と、
該発光部に対面し該発光部で発せられた該光を受光する受光部と、
該発光部及び該受光部の間に該切削ブレードが位置する状態で該発光部から発せられ該受光部で受光される該光の受光量を測定する測定部と、
複数の切削ブレードの回転角で計測された該受光量から切削ブレードの外径の形状を示す実測波形を形成する実測波形形成部と、
該切削ブレードが一定の偏心量で該スピンドルに装着された場合の切削ブレードの外径の形状を示す理想波形を形成する理想波形形成部と、
該実測波形と該理想波形とを重ね差分が発生した領域の面積を算出する差分算出部と、
該差分がしきい値を超えた場合、切削ブレードの形状が異常であるという判定をする判定部と、
を備え、
該理想波形形成部は、
該実測波形の最大値と最小値との中間値を算出し、該中間値と、該最大値及び該最小値と、の差分を
振幅とする理想波形を形成する
ことを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードが装着される加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削ブレードを用いて切削して被加工物を個々のデバイスに分割する加工装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示された加工装置は、切削ブレードの回転中心と切り刃の外縁の中心とを一致させるために、定期的に、切り刃をドレッシングボードに切り込ませる所謂ドレッシングを実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から用いられてきた加工装置は、切削ブレードが偏摩耗するなどの変形をしている場合、切り刃をドレッシングしても、変形を解消させることが出来ず、切削ブレードによる加工品質が悪くなってしまう可能性がある。しかしながら、従来から用いられてきた加工装置は、切削ブレードのこのような変形による外径の形状の異常を検出することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削ブレードの外径の形状の異常を検出できる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルに装着された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該スピンドルに装着される該切削ブレードを管理する管理ユニットと、を備え、該管理ユニットは、発光部と、該発光部に対面し該発光部で発せられた光を受光する受光部と、該発光部及び該受光部の間に該切削ブレードが位置する状態で該発光部から発せられ該受光部で受光される光の受光量を測定する測定部と、切削ブレードの複数の回転角で計測された該受光量から切削ブレードの外径の形状を示す実測波形を形成する実測波形形成部と、該切削ブレードが任意の偏心量で該スピンドルに装着された場合に該測定部で測定される切削ブレードの外径の形状を示す比較波形を形成する比較波形形成部と、該比較波形形成部において使用する該偏心量を段階的に変化させて複数の比較波形を形成し、該実測波形と一致する領域が一番多い該比較波形を理想波形と認識する理想波形認識部と、該実測波形と該理想波形とを重ね差分が発生した領域の面積を算出する差分算出部と、該差分がしきい値を超えた場合、切削ブレードの形状が異常であるという判定をする判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルに装着された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該スピンドルに装着される該切削ブレードを管理する管理ユニットと、を備え、該管理ユニットは、光を発する発光部と、該発光部に対面し該発光部で発せられた該光を受光する受光部と、該発光部及び該受光部の間に該切削ブレードが位置する状態で該発光部から発せられ該受光部で受光される該光の受光量を測定する測定部と、複数の切削ブレードの回転角で計測された該受光量から切削ブレードの外径の形状を示す実測波形を形成する実測波形形成部と、該切削ブレードが一定の偏心量で該スピンドルに装着された場合の切削ブレードの外径の形状を示す理想波形を形成する理想波形形成部と、該実測波形と該理想波形とを重ね差分が発生した領域の面積を算出する差分算出部と、該差分がしきい値を超えた場合、切削ブレードの形状が異常であるという判定をする判定する判定部と、を備え、該理想波形形成部は、該実測波形の最大値と最小値との中間値を算出し、該中間値と、該最大値及び該最小値と、の差分を振幅とする理想波形を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、切削ブレードの外径の形状の異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の加工装置の切削ユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の加工装置の切削ユニット及び管理ユニットの構成例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の加工装置の管理ユニットの処理の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図1の加工装置で使用される切削ブレードの外径の形状を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図1の加工装置の動作のフローの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る加工装置の切削ユニット及び管理ユニットの構成例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の加工装置の管理ユニットの処理の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1の加工装置1の切削ユニット20の構成例を示す斜視図である。
図3は、
図1の加工装置1の切削ユニット20及び管理ユニット30の構成例を示す断面図である。
図4は、
図1の加工装置1の管理ユニット30の処理の一例を示すグラフである。
図5は、
図1の加工装置1で使用される切削ブレード21の外径の形状を示す平面図である。
【0012】
加工装置1は、被加工物100を切削する装置である。実施形態1において、加工装置1が切削する被加工物100は、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどのウェーハである。被加工物100は、平坦な表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域にデバイス103が形成されている。被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されている。また、本発明では、被加工物100は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0013】
加工装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と、切削ユニット20と、管理ユニット30と、を備える。チャックテーブル10は、被加工物100の裏面104側を、粘着テープ105を介して保持面11で吸引保持する。切削ユニット20は、チャックテーブル10で吸引保持された被加工物100を、軸心周りに回転する切削ブレード21で切削する。加工装置1は、X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、チャックテーブル10上の被加工物100と切削ブレード21とを分割予定ライン102に沿って相対的に移動させて、分割予定ライン102に沿って切削加工する。加工装置1は、
図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0014】
加工装置1は、さらに、サブチャックテーブル15を備える。サブチャックテーブル15は、チャックテーブル10に隣接する位置に設けられ、ドレッシングボード150を保持面16で吸引保持する。ドレッシングボード150は、切削ブレード21により切削されることで、切削ブレード21を積極的に摩耗させて加工品質を向上させるドレッシングに使用される。
【0015】
切削ユニット20は、
図2及び
図3に示すように、切削ブレード21と、スピンドル22と、スピンドルハウジング23と、ブレードマウント24と、ブレードカバー25と、給水ノズル26-1,26-2,26-3と、給水源接続部27と、溝状部材28と、昇降部29と、を備える。
【0016】
切削ブレード21は、ブレードマウント24を介してスピンドル22の先端に固定されて、回転軸となるスピンドル22により回転されることで、被加工物100を切削する。切削ブレード21は、実施形態1では所謂ハブブレードであり、
図2及び
図3に示すように、環状の切り刃21-1と、円盤状の基台21-2と、とを有する。切り刃21-1は、基台21-2の外周縁に設けられ、基台21-2の外周から突出している。切り刃21-1は、例えば、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。基台21-2は、中央にブレードマウント24に固定されるための挿入穴61(
図5参照)を有し、環状に形成されている。基台21-2は、例えば、アルミニウム合金などの金属から構成されている。なお、切削ブレード21は、本発明ではハブブレードに限定されず、挿入穴61を有する切り刃21-1のみで構成された所謂ハブレスブレードであってもよい。
【0017】
スピンドル22は、
図3に示すように、スピンドルハウジング23内にY軸方向に沿った軸心回りに回転自在に収容されている。スピンドル22の先端は、スピンドルハウジング23の一端部から外部に突出している。スピンドル22の基端部には、スピンドル22を回転させるための不図示のモータが連結されている。スピンドル22は、切削ブレード21の回転軸となる。ブレードマウント24は、円板状のフランジ部で切削ブレード21を挟持して、円筒状のボス部が挿入穴61に挿入されてスピンドル22の先端に装着されることで、切削ブレード21を軸心周りに回転可能にスピンドル22の先端に装着する。
【0018】
ブレードカバー25は、スピンドルハウジング23の先端側に装着されており、切削ブレード21の上方、前方及び後方を覆う。ブレードカバー25は、内部に複数の水路が形成されており、
図2に示すように、複数の水路の下側の一端には給水ノズル26-1,26-2,26-3が設けられ、複数の水路の上側の他端には給水源接続部27が設けられている。給水ノズル26-1は、給水源接続部27から供給される切削水を切削ブレード21の切り刃21-1の側方に供給する。給水ノズル26-2は、給水源接続部27から供給される切削水を切削ブレード21の切り刃21-1の前方に供給する。給水ノズル26-3は、給水源接続部27から供給される切削水を切削ブレード21の切り刃21-1より前方の被加工物100に供給する。切削水は、例えば、純水である。
【0019】
溝状部材28は、
図3に示すように、切削ブレード21の切り刃21-1の厚みよりも広い幅の溝28-1が形成されている。溝状部材28は、ブレードカバー25に設けられ、溝28-1により切り刃21-1の上端部を挟み込んでいる。昇降部29は、溝状部材28を昇降移動させる。
【0020】
管理ユニット30は、
図1及び
図3に示すように、発光部31と、受光部32と、制御ユニット50と、を備える。制御ユニット50は、測定部33と、実測波形形成部34と、比較波形形成部35と、理想波形認識部36と、差分算出部37と、判定部38と、比較波形記憶部39と、を備える。
【0021】
発光部31は、
図3に示すように、溝28-1の一方の側壁に設けられ、溝28-1の他方の側壁に向けて光を発する。発光部31は、光源31-1が光ファイバー等により光学的に接続されており、光源31-1からの光を発する。受光部32は、溝28-1の他方の側壁に発光部31と対面する位置に設けられ、発光部31で発せられた光を受光する。受光部32は、受光素子32-1が光ファイバー等により光学的に接続されており、受光素子32-1で受光部32に到達した光を検出する。
【0022】
測定部33は、
図3に示すように、受光素子32-1と電気的に接続されており、発光部31及び受光部32の間に切削ブレード21が位置する状態で、発光部31から発せられ受光部32で受光される光の受光量を測定する。測定部33は、後述する制御ユニット50と電気的に接続されており、測定した受光量の情報を制御ユニット50に送信する。
【0023】
実測波形形成部34は、
図4に示すように、切削ブレード21の複数の回転角で計測された受光量から切削ブレード21の外径の形状を示す実測波形71を形成する。ここで、切削ブレード21の外径の形状とは、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状のことをいう。
【0024】
比較波形形成部35は、
図5に示すように、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁66-1,66-2,66-3の平面形状が、他部分に比べて大きく摩耗している部分がある形状異常でなく略円形であり、なおかつ、任意の偏心量67-1,67-2,67-3でスピンドル22に装着された場合に、
図4に示すように、測定部33で測定される切削ブレード21の切り刃21-1の外縁66-1,66-2,66-3の平面形状を示す比較波形72-1,72-2,72-3を形成する。理想波形認識部36は、比較波形形成部35において使用する偏心量67-1,67-2,67-3を段階的に変化させて複数の比較波形72-1,72-2,72-3を形成し、
図4に示すように、実測波形71と一致する領域が一番多い比較波形72-2を理想波形74と認識する。
【0025】
ここで、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状が形状異常であるとは、切削ブレード21の外縁の平面形状が円形から外れていることをいい、より詳細には、切削ブレード21の外縁の平面形状と、その平面形状に最も近い円とを重ね、差分が発生した領域の面積が所定値を超えることをいう。切削ブレード21の外縁の平面形状が形状異常でない場合、切削ブレード21の外縁の平面形状が正常であるという。ここで、所定値は、加工品質が問題ない任意の切削ブレード21の外縁の平面形状と、その平面形状に最も近い円とを重ね、差分が発生した領域の面積に基づいて、適宜決定される。
【0026】
また、偏心量とは、切削ブレード21が装着されるスピンドル22の回転軸と切削ブレード21の中心とのずれ量であり、切削ブレード21の挿入穴61の径が挿入穴61が装着されるスピンドル21のボス部の径よりも若干大きく形成されているため、装着したときに両者の間に若干の隙間が生じ、これが原因となってスピンドル22の回転時に生じる場合がある。
【0027】
測定部33が測定する受光量は、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62が切削ブレード21の回転中心から径方向に突き出している回転角では減少し、径方向に凹んでいる回転角では増大する。このため、実測波形71は、スピンドル22に装着中の切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状を示すものとなる。測定部33が測定する受光量は、
図5に示すように、切削ブレード21の中心がスピンドル22の中心に対して偏心せず、その切り刃21-1の外縁65の平面形状が形状異常でなく略円形である場合、回転角に依らず一定となる。また、測定部33が測定する受光量は、
図5に示すように、切削ブレード21の中心がスピンドル22の中心に対して偏心し、その切り刃21-1の外縁66-1,66-2,66-3の平面形状が形状異常でなく略円形である場合、
図4に示すように、その偏心量67-1,67-2,67-3に応じた振幅73-1,73-2,73-3の正弦波となる。
【0028】
比較波形72-1,72-2,72-3の実測波形71と一致する領域は、実測波形71の受光量との差分が所定の値未満である回転角のことをいう。ここで、所定の値は、加工品質が問題ない任意の切削ブレード21の実測波形71とその理想波形74との差分に基づいて、適宜決定される。
【0029】
差分算出部37は、実測波形71と理想波形74とを重ね差分が発生した
図4に示す領域75の面積を算出する。この領域75の面積は、切削ブレード21の外縁62の平面形状が円形から外れている度合いを定量化したものである。判定部38は、差分が所定のしきい値を超えた場合、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が形状異常であるという判定をする。ここで、所定のしきい値は、加工品質が問題ない任意の切削ブレード21の実測波形71とその理想波形74とを重ね差分が発生した領域75の面積に基づいて、適宜決定される。
【0030】
比較波形記憶部39は、切削ブレード21と溝状部材28との位置関係ごとに、任意の偏心量67-1,67-2,67-3と、比較波形72-1,72-2,72-3とを対照付けて記憶する。
【0031】
制御ユニット50は、加工装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物100の加工に関する各動作、及び、切削ブレード21の形状判定に関する各動作を加工装置1に実施させるものである。制御ユニット50は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット50は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0032】
実測波形形成部34、比較波形形成部35、理想波形認識部36、差分算出部37及び判定部38の機能は、制御ユニット50の演算処理装置が、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実施することで実現される。比較波形記憶部39は、制御ユニット50の記憶装置により実現される。
【0033】
加工装置1は、さらに、表示ユニット51と、表示灯52と、を備える。表示ユニット51は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される。表示ユニット51は、制御ユニット50により制御されることで、表示する画像を切り替える。表示ユニット51は、判定部38の判定結果を表示して、加工装置1のオペレータに報知する。表示灯52は、制御ユニット50により制御されることで、点灯する。表示灯52は、点灯することにより、判定部38の判定結果を加工装置1のオペレータに報知する。
【0034】
実施形態1に係る加工装置1による動作について説明する。実施形態1に係る加工装置1は、切削ブレード21の交換後、切削ブレード21のドレッシング実施後、もしくは、切削ブレード21での切削加工の前または途中に、スピンドル22の先端に装着された切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状の判定動作(以下、切削ブレード21の形状の判定動作と、適宜省略する。)を実行する。
【0035】
図6は、
図1の加工装置1の動作のフローの一例を示すフローチャートである。加工装置1は、
図6に示すように、まず、切削ブレード21の切り刃21-1を、サブチャックテーブル15の保持面16で保持したドレッシングボード150に切り込ませるドレッシングを実施する(ステップST11)。加工装置1は、ドレッシングが完了すると(ステップST12でYes)、切削ブレード21の形状の判定動作を実施する(ステップST13)。
【0036】
切削ブレード21の形状の判定動作では、まず、制御ユニット50は、切削ブレード21が発光部31及び受光部32の間に位置するように、昇降部29で溝状部材28の鉛直方向の位置を調整する。次に、制御ユニット50は、切削ブレード21を軸心周りに回転させた状態で、発光部31により光を発生させ、受光部32により発光部31で発せられた光を受光し、測定部33により受光部32が受光した光の受光量を測定する。
【0037】
そして、実測波形形成部34は、測定部33が測定した受光量の時間変化を解析して、
図4に示すように、切削ブレード21の回転角に対する受光量の変化を表す実測波形71を形成する。
【0038】
実測波形71を形成した後、理想波形認識部36は、比較波形形成部35において使用する偏心量67-1,67-2,67-3を段階的に変化させる。次に、比較波形形成部35は、理想波形認識部36によって決められたこれらの偏心量67-1,67-2,67-3に基づいて、比較波形記憶部39を参照して、比較波形72-1,72-2,72-3を形成する。そして、理想波形認識部36は、比較波形形成部35が形成した複数の比較波形72-1,72-2,72-3から、
図4に示すように、実測波形71と一致する領域が一番多い比較波形72-2を理想波形74と認識する。
【0039】
理想波形74を認識した後、差分算出部37は、実測波形71と理想波形74とを重ね差分が発生した領域75の面積を算出する。そして、判定部38は、差分算出部37が算出した領域75の面積に基づいて、領域75の面積が所定のしきい値を超えた場合、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が形状異常であるという判定をし、領域75の面積が所定のしきい値以下の場合、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が正常であるという判定をする。
【0040】
制御ユニット50は、切削ブレード21の形状の判定動作における判定結果が、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が正常である場合(ステップST14でYes)、その旨の判定結果を表示ユニット51や表示灯52により加工装置1のオペレータに報知して(ステップST15)、一連の動作のフローを終了する。
【0041】
制御ユニット50は、切削ブレード21の形状の判定動作における判定結果が、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が形状異常である場合(ステップST14でNo)、その旨の判定結果を表示ユニット51や表示灯52により加工装置1のオペレータに報知して(ステップST16)、一連の動作のフローをステップST17に進める。
【0042】
制御ユニット50は、ドレッシングと切削ブレード21の形状の判定動作とを実行した回数が所定回数に到達していない場合(ステップST17でNo)、一連の動作のフローをステップST11に戻し、所定回数に到達するまで、ドレッシングと切削ブレード21の形状の判定動作とを繰り返し実行させる。
【0043】
制御ユニット50は、ドレッシングと切削ブレード21の形状の判定動作とを実行した回数が所定回数に到達している場合(ステップST17)、所定回数のドレッシングにより切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状の形状異常が解消しない旨を表示ユニット51や表示灯52により加工装置1のオペレータに報知して(ステップST18)、切削ブレード21の交換等を促し、一連の動作のフローを終了する。
【0044】
以上のような構成を有する実施形態1に係る加工装置1は、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が円形から外れている度合いを定量化することで、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が正常であるか異常形状であるかを判定するため、切削ブレードの偏心の異常を検出する特許文献1の技術では検出不可能な、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁62の平面形状が異常形状であることを検出できるという作用効果を奏する。
【0045】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工装置1-2を図面に基づいて説明する。
図7は、実施形態2に係る加工装置1-2の切削ユニット20及び管理ユニット30-2の構成例を示す断面図である。
図8は、
図7の加工装置1-2の管理ユニット30-2の処理の一例を示すグラフである。
図7及び
図8は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施形態2に係る加工装置1-2は、実施形態1において、
図7に示すように、管理ユニット30を管理ユニット30-2に変更したものである。管理ユニット30-2は、
図7に示すように、管理ユニット30において、制御ユニット50内の比較波形形成部35、理想波形認識部36及び比較波形記憶部39を理想波形形成部36-2に変更したものである。理想波形形成部36-2は、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状が形状異常でなく円形であり、なおかつ、一定の偏心量でスピンドル22に装着された場合の切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状を示す理想波形86を形成する。理想波形形成部36-2の機能は、制御ユニット50の演算処理装置が、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実施することで実現される。
【0047】
実施形態2に係る加工装置1-2による動作について説明する。実施形態2に係る加工装置1-2による動作は、切削ブレード21の形状の判定動作を除き、実施形態1に係る加工装置1による動作と同様である。実施形態2に係る加工装置1-2による切削ブレード21の形状の判定動作は、実測波形形成部34が実測波形81を形成するところまでは、実施形態1に係る切削ブレード21の形状の判定動作と同様である。
【0048】
実施形態2に係る切削ブレード21の形状の判定動作では、
図8に示すように、理想波形形成部36-2は、実測波形81の最大値82と最小値83との中間値84を算出し、中間値84と、最大値82及び最小値83と、の差分85を切削ブレード21の偏心量に応じた振幅として正弦波を形成し、この正弦波を理想波形86とする。
【0049】
理想波形86を決定した後、差分算出部37は、実施形態1と同様に、実測波形81と理想波形86とを重ね差分が発生した領域87の面積を算出する。そして、判定部38が、実施形態1と同様に、差分が発生した領域87の面積の合計が所定のしきい値を超えた場合、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状が異常であるという判定をし、領域87の面積の合計が所定のしきい値以下の場合、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状が正常であるという判定をする。
【0050】
以上のような構成を有する実施形態2に係る加工装置1-2は、実施形態1に係る加工装置1と同様に、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状が円形から外れている度合いを定量化することで、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状が正常であるか異常であるかを判定するため、切削ブレード21の切り刃21-1の外縁の平面形状が異常形状であることを検出できるという作用効果を奏する。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1,1-2 加工装置
10 チャックテーブル
20 切削ユニット
21 切削ブレード
30,30-2 管理ユニット
31 発光部
32 受光部
33 測定部
34 実測波形形成部
35 比較波形形成部
36 理想波形認識部
36-2 理想波形形成部
37 差分算出部
38 判定部
100 被加工物