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特許7356329電子ビーム照射装置、描画装置及び検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】電子ビーム照射装置、描画装置及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/06 20060101AFI20230927BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20230927BHJP
   G21K 5/04 20060101ALI20230927BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230927BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230927BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01J37/06 A
H01J37/06 Z
H01J37/305 B
G21K5/04 M
G21K5/04 F
H01L21/30 541B
H01L21/30 541W
H01L21/66 J
G03F7/20 504
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019212486
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021086658
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀之
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-036807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0355264(US,A1)
【文献】特開2018-098395(JP,A)
【文献】特開2007-250425(JP,A)
【文献】特開2004-165034(JP,A)
【文献】特開2016-152251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G21K 5/04
H01L 21/027
H01L 21/66
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードとアノードを含む電子銃と、
前記電子銃のカソードの出力変化を経時的に計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記カソードの出力変化から前記カソードの出力変化特性を求める出力変化特性演算部と、
前記カソードの出力変化特性の近似式を求める近似式演算部と、
前記近似式において前記カソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間から前記カソードの寿命時期を予測する予測演算部とを、有し、
前記予測演算部は、前記近似式から求められた前記カソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間以上か否かを判定し、
前記カソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が前記第1設定時間以上の場合において、第2設定時間後に前記近似式演算部において、再度、近似式を求め、
前記予測演算部は、再度求められた近似式からカソードの寿命を予測することを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項2】
前記予測演算部は、前記近似式又は前記再度求められた近似式において前記カソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間以上か否かを判定し、
前記カソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が前記第1設定時間より短い場合において、前記予測演算部は、第3設定時間後を警告時期と設定し、第4設定時間後を前記カソードの交換時期と設定する請求項に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子ビーム照射装置を備えた描画装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子ビーム照射装置を備えた検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム照射装置、描画装置及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム照射装置では、ビーム源となる電子銃が用いられる。電子線照射装置には、例えば、電子ビーム描画装置、欠陥検出等の検査装置や電子顕微鏡といった種々も装置が存在する。例えば、電子ビーム描画について言えば、本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでもパターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(マスクともいう)が必要となる。電子ビーム描画装置は、かかる高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0004】
また、原画パターンや描画された回路などのパターンを検査する場合においても回路線幅が微細になっており、微細なパターンを検査するために電子ビームによる検査が行なわれている。
【0005】
電子ビームを照射する電子銃は、カソードの形状変化などによって劣化する。カソードの出力特性が閾値に達した時点で寿命又は時間的猶予を設けた寿命と判定することができる。しかし、近年、カソードの性能が向上しており、このような判定では、実際の寿命よりも早く寿命と判定してしまうことがあり、このような予測方法では、予測された寿命と実際の寿命との乖離が大きくなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-125473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、カソードの寿命予測が高精度に行える電子ビーム照射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電子ビーム照射装置は、カソードとアノードを含む電子銃と、電子銃のカソードの出力変化を経時的に計測する計測部と、計測部で計測されたカソードの出力変化からカソードの出力変化特性を求める出力変化特性演算部と、カソードの出力変化特性の近似式を求める近似式演算部と、近似式においてカソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間からカソードの寿命時期を予測する予測演算部とを、有し、予測演算部は、近似式から求められたカソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間以上か否かを判定し、カソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間以上の場合において、第2設定時間後に近似式演算部において、再度、近似式を求め、予測演算部は、再度求められた近似式からカソードの寿命を予測することを特徴とする。
【0010】
また、予測演算部は、近似式又は再度求められた近似式においてカソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間以上か否かを判定し、カソードの出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間より短い場合において、予測演算部は、第3設定時間後を警告時期と設定し、第4設定時間後をカソードの交換時期と設定することが好ましい。
【0011】
また、上記の電子ビーム照射装置を備えた描画装置が好ましい。
【0012】
また、上記の電子ビーム照射装置を備えた検査装置が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、カソードの寿命予測が高精度に行える。よって、より長時間所望の特性で利用可能な電子ビーム照射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1における電子ビーム照射装置の構成を示す概念図である。
図2】実施形態1における電子ビーム照射装置のカソード寿命時期予測方法の工程を示すフローチャートである。
図3】使用時間とカソードの出力変化特性の関係を示すグラフである。
図4】実施形態1における使用時間とカソードの出力変化特性の関係を示すグラフである。
図5】実施形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
図6】実施形態3における検査装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態1
図1は、実施形態1における電子ビーム照射装置の構成を示す概念図である。図1において、電子ビーム照射装置100は、制御部110と電子ビーム照射機構150を備えている。電子ビーム照射装置100は、被照射対象Xに電子ビームを照射する。以下の電子ビーム照射装置100は、シングルビームを被照射対象Xに照射する構成であるが、カソード寿命予測は、マルチビームを照射する電子ビーム照射装置においても同様である。
【0016】
制御部110は、制御計算機121、バス122、記憶装置131、モニタ132、プリンタ133、メモリ134、出力変化特性演算部135、近似式演算部136と予測演算部137を有している。記憶装置131、モニタ132、プリンタ133、メモリ134、出力変化特性演算部135、近似式演算部136と予測演算部137は、制御計算機121と接続したバス122を介して互いに接続している。
【0017】
電子ビーム照射機構150は、電子銃電源部151、計測部152、制御部153と電子ビームカラム161(電子鏡筒)及び照射室162を含む。電子ビームカラム161内には、電子銃163、電磁レンズ164、ブランキング偏向器165、制限アパーチャアレイ基板166、電磁レンズ167、主偏向器168、副偏向器169が配置されている。電子銃電源部151、計測部152と制御部153は、制御計算機121と接続したバス122を介して互いに接続している。
【0018】
照射室162内には、例えば、xy平面上を移動可能なステージ171と、ステージ171に検出器172が配置される。ステージ171上には、電子ビーム200が照射される被照射対象Xが配置される。被照射対象Xは、例えば、被照射面を上側(電子銃163側)に向けてステージ171に配置される。また、ステージ171上には、照射室162の外部に配置されたレーザ測長システムから照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラーが配置することで、ステージ位置を測定するように電子ビーム照射装置100が構成されていることが好ましい。制御計算機121と接続したバス122を介して互いに接続している。検出器172は、計測部152と接続している。
【0019】
電子ビーム200を照射する電子銃163は、典型的なものであり、カソード181、アノード182及びウェルネト183を含む。カソード181とアノード182の間にウェルネト183が配置されている。アノード182は接地され、電位がグランド電位に設定されている。カソード181とアノード182の間には、加速電圧が印加され、ウェルネト183には、バイアス電圧が印加される。そして、カソード181に負の加速電圧が印加され、ウェルネト183に負のバイアス電圧が印可された状態で、カソード181を加熱すると、カソード181から電子(電子群)が放出される。放出された電子(電子群)は、加速電圧によって加速されて電子ビーム200となって、アノード182へ向かって進む。そして、アノード182に設けられた開口部を電子ビーム200が通過して、電子ビーム200が電子銃163から放出される。電子銃163には、電子ビーム200のエミッション電流等を測定する図示しない電流計が含まれる。電子銃163は、電子銃電源部151及び計測部152と接続している。計測部152は電流計などと接続し、電流計からの信号を処理して、得られた情報(計測された情報)は電子銃163の制御に使用することが好ましい。
【0020】
電子銃163(放出源)から放出された電子ビーム(1次電子ビーム)200は、電磁レンズ164によって屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを形成しながら、電磁レンズ167に進む。そして、電磁レンズ167は、電子ビーム200を被照射対象Xにフォーカスする。電磁レンズ167により被検査対象X面上に焦点が合わされた電子ビーム200は、主偏向器168及び副偏向器169によって偏向され、被照射対象X上の所望の位置に照射される。ここで、ステージ171が連続移動しながら電子ビーム200を被照射対象Xに照射する場合、電子ビーム200の照射位置がステージ171の移動に追従するように主偏向器168による偏向によるトラッキング動作が行われる。
【0021】
なお、ブランキング偏向器165によって、電子ビーム200が偏向された場合には、一点長鎖線のように制限アパーチャアレイ基板166の中心の穴から位置が外れ、制限アパーチャアレイ基板166によって遮蔽される。一方、ブランキング偏向器165によって偏向されなかった電子ビーム200は、図1に示す実線のように制限アパーチャアレイ基板166の中心の穴を通過する。かかるブランキング偏向器165のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャアレイ基板166は、ブランキング偏向器165によってビームOFFの状態になるように偏向された電子ビーム200を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャアレイ基板166を通過した電子ビーム200が被照射対象Xを照射する。
【0022】
電子ビーム200の被照射対象Xへの照射量は、ステージ171に設けられた検出器172で検出された信号を計測部152で処理することによって求められる。検出器172には、例えば、ファラデーカップが用いられ、計測部152で電流密度を計測することができる。検出器172は、被照射対象Xと重ならない位置に配置されている。例えば、電子ビーム照射装置100が描画装置であれば、所望の電流密度となるようにエミッション電流を制御して高い描画精度を維持することが好ましい。また、電子ビーム照射装置100が検査装置であれば、所望の電流密度となるようにエミッション電流を制御することで、検査に適して強度の電子ビームが被照射対象Xに照射されて、信頼性の高い画像を出力できるようにすることが好ましい。
【0023】
電子ビーム200を照射し続けると、次第にカソード181の先端が変形するなどして、所望の強度の電子ビーム200を出力することが困難になり、カソード181は寿命となる。カソード181を交換すると電子ビーム200の出力を安定させるためのコンデンシングなどが必要になるため、計画的にカソード181を交換することが望まれる。そこで、カソードの出力変化特性から、警告時期と、交換時期と、寿命時期という3つの予測時期を求める。警告時期は、カソード181の寿命時期から求められた使用者等に警告すべき時期であり、寿命時期又は交換時期までの時間が設定時間以内になったときに、電子ビーム照射装置100の使用者等に発せられる情報である。交換時期は、カソード181の寿命時期から求められた時期であって、カソード181の寿命時期の少し前の時期であり、例えば寿命時期までの時間が所定時間(設定時間)以下になったときに、電子ビーム照射装置100の使用者等に発せられる情報である。交換時期又は交換時期前に電子ビーム照射装置100の運転は停止されて、カソード181は交換される。電子ビーム照射装置100の使用計画等を考慮して、カソード181の交換を交換時期の前に行なってもよい。カソード181は電子ビーム照射装置100に複数切替可能に搭載されている場合、使用するカソード181を変更することで、カソード181の交換が可能である。
【0024】
計画的なカソード181の交換のためには、カソード181の寿命時期を予測して、カソード181の個体差に応じて、より長くカソード181を使用することが望まれる。カソード181の出力変化特性の経時的変化から寿命時期を予測することができる。
【0025】
そこで、実施形態では、寿命時期の少し手前までカソード181を使用できるようにカソード181の出力変化特性の近似式からカソード181の寿命時期を予測する。例えば適切な電子ビーム200の照射ができない状態になることをカソード181の寿命時期とする。
【0026】
図2に実施形態1における電子ビーム照射装置100のカソード寿命時期予測方法の工程を示すフローチャートを示す。そして、図3及び図4に、使用時間とカソード181の出力変化特性の関係を示すグラフを示す。図3は、比較形態の寿命時期予測のグラフである。以下、フローチャートとグラフを参照してカソード181の寿命時期予測を行なう電子ビーム照射装置100について説明する。
【0027】
電子ビーム照射装置100のカソード寿命時期予測方法は、電子銃163のカソード181の出力変化を計測する計測工程(S01)、カソード181の出力変化特性を求める演算工程(S02)、近似式を求める近似式演算工程(S03)およびカソード181の寿命時期を予測する予測工程(S04)を有する。
【0028】
計測部152において、電子銃163のカソード181の出力変化を経時的に計測する。計測部152において、電子銃163のカソード181の出力変化を経時的に計測する計測工程(S01)が行なわれる。図3に使用時間とカソード181の出力変化特性の関係を示すグラフを示す。図3には、破線の特性を持つカソード181と、実線の特性を持つカソード181との、2つのカソード181の出力変化特性を示している。
【0029】
この参考例では、図3に示すようにカソード181の出力変化特性の値に基づいて、例えば警告レベル値に達し使用しているカソードについて使用者等に警告をすべきと判定して警告し、この警告後に所定時間(T1)経過した時期を、カソード181の交換すべき時期と定めるものとする。図3の破線のカソードでは、出力変化特性が警告レベル値に達してから所定時間T1経過後に交換することで、寿命時期(カソードの出力変化特性がゼロ)の少し手前まで使用されてから交換されるため、破線のカソード181は、寿命時期の少し手前まで有効に使用される。一方、図3の実線のカソードについて同様に、出力変化特性が警告レベル値に達してから所定時間T1経過後に交換してしまうと、カソード181の出力変化特性がまだ高い(出力変化の小さい)状態でカソード181を交換してしまうことになる。破線のカソード181の交換時期のカソード181の出力変化特性を基準に実線のカソード181の交換時期を考慮すると、更に時間T2の期間実線のカソード181を使用出来ると見積もられる。
【0030】
反対に、実線のカソード181について出力変化特性が警告時期から交換時期になるまでの時間(T1+T2経過後)を基準にカソード181の交換時期を定めると、破線のカソード181では、寿命時期を超えて運転することになってしまう。
予測をせずに交換時期になったときに、カソード181を交換すると、例えば、描画中にカソード181を交換することになり、途中まで描画していた試料が無駄になってしまうなど、経済的にも時間的にも損失が大きくなる。従って、カソード181の個体差を考慮して、カソード181の少し手前まで使用出来るカソード181の寿命予測が求められる。
【0031】
電子ビーム照射装置100の動作中に、出力変化特性演算部135において、カソード181の出力変化特性を求める演算工程(S02)を行なって、計測部152で計測されたカソード181の出力変化からカソード181の出力変化特性を求める。カソード181の出力変化特性は、設定時間毎に求められる。求められたカソード181の出力変化特性の時間(使用時間)の情報は、記憶装置131に記憶される。実施形態において、時間とはカソード181の累計使用時間である。
【0032】
近似式演算部136において、近似式を求める近似式演算工程(S03)を行なって、カソード181の出力変化特性の近似式を求める。近似式は、n次多項式近似(nは1以上の整数)、指数近似と累乗近似からなる群から選ばれる1種である。近似式の演算に含める期間は、例えば20日分など、直近と過去の両方のデータから適切な近似式が求められる範囲とする。求められた近似式は、記憶装置131に保存される。近似式は、カソード181の出力変化特性の時間に対する関数である。
【0033】
予測演算部137において、カソード181の寿命時期を予測する予測工程(S04)を行なって、近似式においてカソード181の出力変化特性がゼロになるまでの時間からカソード181の寿命時期を予測する。近似式演算工程(S03)で求められた近似式からカソード181の出力変化特性がゼロ(寿命)になる寿命時期を求める。この求めた寿命時期は、記憶装置131に記憶される。カソード181の累計使用時間が寿命時期になったときがカソード181の寿命である。
【0034】
寿命時期の予測後に、近似式演算部136及び予測演算部137において、現時点から寿命時期までの時間からカソード181の警告時期と交換時期を設定する警告時期及び交換時期設定工程(S05)を行なうことが好ましい。
【0035】
予測演算部137において、警告時期及び交換時期設定工程(S05)を行なって、近似式から求められたカソード181の出力変化特性がゼロになる寿命時期までの時間の長さが第1設定時間以上か否かを判定する。そして、カソード181の出力変化特性がゼロになる寿命時期までの時間の長さが第1設定時間以上の場合において、第2設定時間後に、近似式演算部136において、再度、近似式を求める。そして、近似式演算部136において、再度、予測工程(S04)を行なって、再度求められた近似式からカソード181の寿命時期を予測する。第1設定時間及び第2設定時間は、近似式を求める際に利用したデータのうち最も新しいデータの時間を始点とする時間である。つまり、近似式を求める際に利用したデータのうち最も新しいデータの時間をt0とし、第1設定時間をt1とし、第2設定時間をt2とするとき、第1設定時間になるのは、t0+t1の時であり、第2設定時間になるのはt1+t2の時である。
【0036】
予測演算部137において、警告時期及び交換時期設定工程(S05)を行なって、近似式又は再度求められた近似式から求められたカソード181の出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間より長いか否かを判定する。カソード181の出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間より短い場合において予測演算部137において、警告時期及び交換時期設定工程(S05)を行なって、第3設定時間後を警告時期に設定し、第4設定時間後をカソード181の交換時期と設定する。第3設定時間及び第4設定時間は、近似式を求める際に利用したデータのうち最も新しいデータの時間を始点とする時間である。つまり、近似式を求める際に利用したデータのうち最も新しいデータの時間をt0とし、第3設定時間をt3とし、第4設定時間をt4とするとき、第1設定時間になるのは、t0+t3の時であり、第4設定時間になるのはt1+t4の時である。第3設定時間及び第4設定時間までの時間、つまり、警告及び交換時期までの時間は、モニタ132に表示される等して、使用者等に知らされる。
【0037】
第3設定時間及び第4設定時間は、寿命時期までの時間や出力変化特性を基準にこれらの時間を定めることができる。具体的な例を1つ挙げると、第4設定時間は、近似式のカソード181の出力変化特性が閾値になる時間とし、第3設定時間は、第4設定時間よりも任意に定めた時間の分だけ前の時間とすることができる。このように第3設定時間及び第4設定時間を設定することで、カソード181の出力変化特性が低すぎる状況での運転を避け、また、カソード181交換までに十分な猶予を使用者等に与えることができる。
【0038】
図4に使用時間とカソード181の出力変化特性の関係を示すグラフを示す。図4には、2つのカソード181の出力変化特性が示されている。図4には、実施形態のカソード181の出力変化特性の近似式も含まれる。図4を例に上記の第3設定時間と第4設定時間の定め方について説明する。カソード181の出力変化特性は、実線で表されている。図4には、2つの近似曲線(一点長鎖線の近似曲線Aと、破線の近似曲線B)が含まれる。近似曲線Aは、カソード181の出力変換特性が高いときに求められた近似式の曲線であり、近似曲線Aの近似式を求めた際の時間(時間A)のカソード181の出力変化特性に白抜き丸を付している。時間Aにおいて求めた近似式の近似曲線Aは、時間Bでカソード181の出力変化特性が0になる。時間Aから時間Bまでの時間は、第1設定時間以上であるため、寿命時期及び警告時期の設定は行なわない。そして、時間Aから第2設定時間後に近似式を求める処理を複数回行なった後の時間Cにおいて近似式を求める。時間Cにおいて求めた近似式の近似曲線は、時間Dにおいて、カソード181の出力変化特性が0になる。時間Cから時間Dまでの時間は、第1設定時間よりも短いため、時間Dをカソード181の寿命時期と設定する。そして、時間Cにおいて求めた近似式の近似曲線Bのカソード181の出力変化特性が閾値になる時間Eを第4設定時間(交換時期)とし、第4設定時間よりも時間X前の時間を第3設定時間(警告時期)と設定する。
【0039】
警告時期までの時間が短すぎると電子ビーム照射装置100の適切な運用が困難になることが有るため、第3設定時間は、装置の運用状況によって、調整可能であって、例えば1週間程度とすることが好ましい。警告時期から交換時期までの時間は、装置の運用状況によって調整可能であって、例えば24時間とすることができる。交換時期になると、適切な電子ビーム200の照射がしにくい状態であるため、交換時期前にカソード181を交換することが好ましい。
【0040】
近似式から求められたカソード181の出力変化特性がゼロになるまでの時間が第1設定時間以上である場合、カソード181の寿命時期までの時間は長いため、第2設定時間後に再度、近似式を取得して再評価する。カソード181の寿命時期までの時間が長いと予測のブレが大きいため、警告時期及び交換時期の設定は行なわない。カソード181の寿命までの時間がある程度短い場合においては、精度の高い寿命時期の予測が可能となる。そして、精度の高い予測に基づいて、警告時期及び交換時期を設定することで、実際のカソード181の個体差に応じて、警告時期及び交換時期の設定を適切にすることができる。例えば、カソード181の出力変化特性が低下してから、カソード181の出力変化特性があまり低下しない場合において、より長くカソード181を使用することができる。また、カソード181の出力変化特性が概ね比例的に低下する場合においても、寿命予測に基づいて、カソード181が寿命になる前にカソード181の交換時期を設定することができる。このようにして、カソード181の寿命時期の少し手前まで有効に利用でき、かつ、予め警告及び交換時期が使用者等に通知されるため、電子ビーム照射装置100の効率的な運用を行える。
【0041】
実施形態2
実施形態2は、描画装置101に関する。描画装置101は、電子ビーム照射装置100の構成に加えて、制御部110に描画データ処理部138を含む。描画データ処理部138において、記憶装置131に記憶された描画データを基に描画用の制御情報を演算し、制御部153に制御情報を送り、被照射対象Xに電子ビーム200で描画を行ない、マスク等を作製することができる。描画装置101は、優れた寿命予測に基づくカソード181の交換時期と警告が使用者等に知らされるため、計画的で、経済的な描画装置101の運用が可能になる。
【0042】
実施形態3
実施形態3は、検査装置102に関する。検査装置102は、電子ビーム照射装置100の構成に加えて、制御部110に画像処理部139及び判定部140と、電子ビーム照射機構150にセンサ170を含む。被照射対象Xに照射された電子ビーム(1次電子ビーム)200から2次電子ビーム201が発生し、センサ170で二次電子ビーム201を受け、画像処理部139で被照射対象Xを検査した検査画像を得る。得られた検査画像は、判定部140で欠陥等が評価される。検査装置102は、優れた寿命予測に基づくカソード181の交換時期と警告が使用者等に知らされるため、計画的で、経済的な検査装置102の運用が可能になる。
【0043】
以上の説明において、各「~部」は、ハードウェア、ソフトウェア及びハードウェア並びにソフトウェアの組み合わせを含む。
【0044】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。上記の実施形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0045】
実施形態では、検査装置の構成、その製造方法や、検査方法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる検査装置及び検査方法の構成を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての検査装置及び検査方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0046】
100 電子ビーム照射装置
110 制御部
121 制御計算機
122 バス
131 記憶装置
132 モニタ
133 プリンタ
134 メモリ
135 出力変化特性演算部
136 近似式演算部
137 予測演算部
138 描画データ処理部
139 画像処理部
140 判定部
150 電子ビーム照射機構
151 電子銃電源部
152 計測部
153 制御部
161 電子ビームカラム
162 照射室
163 電子銃
164 電磁レンズ
165 ブランキング偏向器
166 制限アパーチャアレイ基板
167 電磁レンズ
168 主偏向器
169 副偏向器
170 センサ
171 ステージ
172 検出器
181 カソード
182 アノード
183 ウェルネト
200 電子ビーム、1次電子ビーム
201 2次電子ビーム


図1
図2
図3
図4
図5
図6