(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】プレート、めっき装置、及びプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 17/10 20060101AFI20230927BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D7/12
(21)【出願番号】P 2020083568
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】社本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
(72)【発明者】
【氏名】張 紹華
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-167685(JP,A)
【文献】米国特許第06106687(US,A)
【文献】特開2019-108605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0000786(US,A1)
【文献】国際公開第2004/009879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00
C25D 7/12
C25D17/00
C25D21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽において基板とアノードとの間に配置され、複数の孔を有する円形のプレートの製造方法であって、
前記プレートに前記複数の孔を形成するエリアの半径であるエリア半径と、前記複数の孔の孔径と、前記エリア半径内の前記エリアにおける目標気孔率を決定し、
前記エリア半径、前記孔径、及び前記目標気孔率に基づいて、前記エリアを一定の幅を有する環状の複数の分割エリアに分割し、
前記プレートの前記複数の分割エリアのそれぞれに位置する基準円上に前記複数の孔を
、隣接する3つの前記基準円上にそれぞれ配置された3つの前記孔の中心が前記プレートの任意の半径上に並ばないように、形成する、ことを含む、プレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたプレートの製造方法において、
前記複数の分割エリアは、それぞれ同一の幅を有し、
前記プレートの製造方法は、さらに、
前記エリア半径、前記孔径、及び前記目標気孔率に基づいて、前記複数の分割エリアのそれぞれに形成される前記孔の数を算出する、ことを含む、プレートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたプレートの製造方法において、
前記孔の数に基づいて算出される前記分割エリアの一つにおける前記複数の孔の合計面積と、前記目標気孔率に基づいて算出される前記分割エリアの一つの前記複数の孔の合計面積との誤差を算出し、
前記誤差が所定値以上であるとき、前記分割エリアの一つにおける前記算出された前記孔の数を増加させ且つ前記孔径を縮小する、プレートの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載されたプレートの製造方法において、
前記複数の分割エリアの前記基準円は、前記複数の分割エリアの前記幅の中央に位置する、プレートの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載されたプレートの製造方法において、
前記複数の孔は、前記複数の分割エリアのそれぞれの前記基準円上に周方向に沿って等間隔に配置される、プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート、めっき装置、及びプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハやプリント基板等の基板の表面に配線やバンプ(突起状電極)等を形成したりすることが行われている。この配線及びバンプ等を形成する方法として、電解めっき法が知られている。
【0003】
電解めっき法に用いるめっき装置では、ウェハ等の円形基板とアノードとの間に多数の孔を有する電場調整用のプレートを配置することが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-225129号公報
【文献】国際公開第2004/009879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板に形成されるシード層の薄膜化に伴い、基板の中央部分の抵抗が高くなり、電極に近い基板のエッジ部分の膜厚が厚くなり、基板中央部の膜厚が薄くなる、いわゆるターミナルエフェクトが生じ得る。このプレートを電気絶縁性材料で形成することにより、ターミナルエフェクトの影響を低減することができる。しかしながら、プレートに形成された孔の分布密度(又は気孔率)がプレート上の領域毎に均一でない場合、孔の配置位置に起因するめっき膜厚分布に悪影響をもたらすおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものである。その目的の一つは、プレートに形成される孔の分布の局所的な異方性を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態によれば、めっき槽において基板とアノードとの間に配置されるプレートが提供される。このプレートは、同心であり且つ径が異なる3以上の基準円上に、円形の複数の孔をそれぞれ有し、隣接する3つの前記基準円上にそれぞれ配置された3つの前記孔の中心がプレートの任意の半径上に並ばない。
【0008】
本発明の他の一形態によれば、めっき装置が提供される。このめっき装置は、上記プレートと、前記プレートを収容するめっき槽と、を備える。
【0009】
本発明の他の一形態によれば、めっき槽において基板とアノードとの間に配置され、円形の複数の孔を有するプレートの製造方法が提供される。プレートの製造方法は、前記プレートに前記複数の孔を形成するエリアの半径であるエリア半径と、前記複数の孔の孔径と、前記エリア半径内の前記エリアにおける目標気孔率を決定し、前記エリア半径、前記孔径、及び前記目標気孔率に基づいて、前記エリアを一定の幅を有する環状の複数の分割エリアに分割し、前記プレートの前記複数の分割エリアのそれぞれに位置する基準円上に前記複数の孔を、隣接する3つの前記基準円上にそれぞれ配置された3つの前記孔の中心が任意の半径上に並ばないように、形成する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るプレートを備えためっき装置の一例を示す概略図である。
【
図3】プレートの製造プロセスを示すフローチャートである。
【
図4】プレートのエリア半径によって画定される孔を形成する領域を示す概略図である。
【
図5】複数の孔の周方向ピッチと半径方向ピッチの関係を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るプレートを備えためっき装置の一例を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態に係るめっき装置100は、いわゆるフェースダウン式又はカップ式のめっき装置100である。
【0012】
めっき装置100は、めっき槽101と、基板保持具103と、めっき液貯留槽104と、を備える。基板保持具103は、ウェハ等の基板102を、その被めっき面を下向きにして保持するように構成される。めっき装置100は、基板保持具103を周方向に回転させるモータ111を有する。めっき槽101には、基板102と対向するようにアノード110が配置される。
【0013】
めっき装置100は、さらに、めっき液受槽108を有する。めっき液貯留槽104内のめっき液は、ポンプ105により、フィルタ106及びめっき液供給管107を通じてめっき槽101の底部からめっき槽101内に供給される。めっき槽101から溢れためっき液はめっき液受槽108に受け取られ、めっき液貯留槽104に戻る。
【0014】
めっき装置100は、さらに基板102とアノード110とに接続された電源109を有する。モータ111が基板保持具103を回転させながら、電源109が基板102とアノード110との間に所定の電圧を印加することにより、アノード110と基板102との間にめっき電流が流れ、基板102の被めっき面にめっき膜が形成される。
【0015】
基板102とアノード110の間には、プレート10が配置される。
図2は、プレート10の正面図である。
図2に示すように、プレート10は、円形の複数の孔12を有する。孔12は、プレート10の表面と裏面との間を貫通し、めっき液及びめっき液中のイオンを通過させる経路を構成する。
【0016】
本実施形態に係るプレート10では、複数の孔12は、同心であり且つ径が異なる3以上の仮想的な基準円上に配置される。言い換えれば、複数の孔12は、プレート10の径方向に分散するように配置される。さらに、プレート10では、隣接する3つの基準円上にそれぞれ配置された3つの孔12の中心がプレート10の任意の半径上に並ばないように、孔12が配置される。言い換えれば、複数の孔12のうち、プレート10の径方向に離間した3つ孔12はプレート10の任意の半径上に連続して配置されない。これにより、プレート10の任意の半径上に孔12が密集して配置されることが抑制されるので、孔12の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0017】
また、プレート10では、複数の孔12が、基準円上に周方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。これにより、基準円の周方向に沿って孔12を分散して配置することができる。なお、ここでの用語「等間隔」は、数学的に完全な等間隔に限らず、機械加工等の誤差に起因した多少のずれも含み得る。
【0018】
さらに、プレート10では、任意の基準円の径と、これに隣接する基準円との径との差が一定であることが好ましい。言い換えれば、孔12は径方向において等間隔に配置されることが好ましい。これにより、基準円の径方向に沿って孔12を分散して配置することができる。なお、ここでの用語「等間隔」は、数学的に完全な等間隔に限らず、機械加工等の誤差に起因した多少のずれも含み得る。
【0019】
次に、プレート10の製造方法について説明する。
図3は、プレート10の製造プロセスを示すフローチャートである。まず、プレート10の材料となる孔12が空いていないプレート10を準備する(ステップS201)。孔12が空いていないプレート10は、電気絶縁性材料、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)等からなる。次に、プレート10の目標気孔率Pを設定する(ステップS202)。ここで、気孔率とは、「複数の孔12の全ての面積/孔12を形成する領域の面積(エリア面積)」で表すことができる。また、目標気孔率Pとは、プレート10の製造プロセスで使用する目標とする気孔率である。目標気孔率Pは、予め試験又はシミュレーションで適切な数値を得ることができる。具体的には、目標気孔率Pは、基板102とプレート10との距離に応じて適切な目標気孔率Pが存在することが判っているので、
図1に示しためっき装置100における基板102とプレート10との距離に基づき、試験又はシミュレーションで適切な目標気孔率Pを得ることができる。
【0020】
次に、プレート10に形成する孔12の孔径D
pore及びエリア半径Rを設定する(ステップS203)。孔径D
poreは、機械加工が可能なサイズであれば、経験則等に基づき任意に設定することができる。エリア半径Rは、プレート上の孔12が形成される円形の領域の半径であり、例えば
図1に示しためっき槽101、基板102、又はアノード110の大きさに基づいて任意に設定することができる。なお、本実施形態において、単に「径方向」又は「周方向」というときは、「エリア半径Rの径方向」又は「エリア半径Rの周方向」を意味する。
【0021】
目標気孔率P、孔径Dpore、及びエリア半径Rが設定された後、分割エリア数Divを算出する(ステップS204)。ここで、分割エリアとは、一定の幅を有する環状のエリアであり、同心であり且つ径が異なる3以上の基準円のそれぞれが配置されるエリアである。したがって、この分割エリア数Divを決定することにより、孔12をエリア半径R方向にどの程度分散させて配置させるかが決定される。
【0022】
図4は、プレート10のエリア半径Rによって画定される孔12を形成する領域を示す概略図である。図示の例では、分割エリア数Divは6であり、エリア半径Rの中心側から外側に向かって順に分割エリアN
1から分割エリアN
6が示されている。基準円Cref
kとは、複数の孔12が配置される位置を示し、各分割エリアN
kの幅の中央点を繋いで形成される円である。なお、本実施形態において「k」は、分割エリアの番号(本実施形態では1から6)を示す代数である。分割エリアN
1は、エリア半径Rの中心を含み、他の分割エリアN
2から分割エリアN
6と異なり、円形である。基準円半径Rref
kは、各基準円Cref
kのエリア半径Rの中心を基準とした半径である。
【0023】
図4に示すように、エリア半径Rは、最も大きい分割エリアN
k(図示の例では分割エリアN
6)の外側の径に相当する。また、分割されたエリア半径Rの差分APは、各分割エリアN
kと隣接する分割エリアN
k+1(又は分割エリアN
k-1)との半径方向の差分である。言い換えれば、分割されたエリア半径Rの差分APは、各分割エリアN
kの幅ということもできる。
【0024】
プレート10の孔12は、孔径Dporeを有する。孔12の各々の孔面積Sporeは、(孔径Dpore/2)^2*πで表すことができる。各分割エリアNkの基準円Cref
k上の孔12は、任意の径から初期角度θint_kの位置に配置され、その孔12から角度間隔θpitch_k毎に離間して配置される。初期角度θint_k及び角度間隔θpitch_kについては詳細を後述する。
【0025】
図5は、複数の孔12の周方向ピッチと半径方向ピッチの関係を説明する概略図である。
図5に示すように、複数の孔12の周方向ピッチCPとは、各分割エリアの基準円Cref
k上に配置される複数の孔12の周方向の離間距離に相当する。また、複数の孔12の半径方向ピッチRPとは、各分割エリアN
kの基準円Cref
k上に配置される複数の孔12のエリア半径R方向における離間距離に相当する。ここで、複数の孔12をプレート10に均等に分散して配置するためには、各分割エリアN
kの基準円Cref
k上に配置される複数の孔12の周方向ピッチCPと、半径方向ピッチRPとが同一又は近似であることが好ましい。
【0026】
そこで、複数の孔12の周方向ピッチCPと半径方向ピッチRPとを同一と規定することで、分割エリア数Divは、目標気孔率P、孔径Dpore、及びエリア半径Rから算出することができる。具体的には、分割エリア数Divは、以下の式で表すことができる。
分割エリア数Div=ROUND(SQRT((4*エリア半径R^2*目標気孔率P)/孔径Dpore^2*π)
これにより、周方向ピッチCPと半径方向ピッチRPとが近似する分割エリア数Divを算出することができる。なお、本実施形態では、Round関数を用いて四捨五入することで分割エリア数Divを整数にしている。これに限らず、計算結果を整数化する任意の関数を使用してもよい。
【0027】
続いて、分割されたエリア半径Rの差分AP、各分割エリア面積Sk、各分割エリアの孔数Prk、及び各分割エリアの基準円半径Rrefkを算出する(ステップS205)。本実施形態においては、各分割エリアNkの幅は同一であり、その幅が差分APと等しくなる。そうすると、差分APは、(エリア半径R/分割エリア数Div)で表すことができ、エリア半径Rと分割エリア数Divから算出することができる。
【0028】
各分割エリア面積Skは、差分APが決定すれば算出することができる。具体的には、分割エリア面積Skは、(差分AP*(k-0.5))^2*π-(差分AP*(k-1.5))^2*πで表すことができ、差分APから算出することができる。
【0029】
各分割エリアの孔数Prkは、各分割エリア面積Skと、目標気孔率Pと、孔径Dporeとから算出することができる。具体的には、各分割エリアの孔数Prkは、以下の式で表すことができる。
各分割エリアの孔数Prk=ROUND((各分割エリア面積Sk*目標気孔率P)/孔面積Spore)
なお、本実施形態では、Round関数を用いて四捨五入することで各分割エリアの孔数Prkを整数にしている。これに限らず、計算結果を整数化する任意の関数を使用してもよい。
【0030】
基準円半径Rrefkは、分割されたエリア半径Rの差分APから算出することができる。具体的には、基準円半径Rrefkは、(差分AP*(k-0.5))で表すことができる。
【0031】
上述したように、ステップS205の処理により、各分割エリアNkに形成する孔12の孔数Prkが算出される。しかし、分割エリアNkの孔数Prkは計算の途中で整数化されたものである。また、各分割エリアNkの孔数Prkを算出するために使用する各分割エリア面積Skは、整数化された分割エリア数Divから導き出されるものである。こ
のため、各分割エリアの孔数Prkから算出される全孔面積Sact(=各分割エリアNkの孔数Prk*孔面積Spore)と、目標気孔率Pから算出される理論上の全孔面積Stheoとに差が生じ得る。そこで、分割エリアNkの一つにおける孔数Prkに基づいて算出される全孔面積Sact(孔12の合計面積)と、同一の分割エリアNkにおける目標気孔率Pに基づいて算出される理論上の全孔面積Stheo(理論上の孔12の合計面積)の誤差を算出する。具体的には、本実施形態では、理論上の全孔面積Stheoと、整数化された孔数Prkから算出される全孔面積Sactとの比率を分割エリアNk毎に算出する(ステップS206)。具体的には当該比率は、(全孔面積Sact/理論上の全孔面積Stheo*100)で表される。
【0032】
続いて、算出した全孔面積Sactと全孔面積Stheoとの誤差が所定値以上か否かに基づき、所定値以上である場合は、当該分割エリアNkの孔12の孔数Prkを増加させ、孔径Dporeを縮小する。具体的には、本実施形態では、全孔面積Stheoと全孔面積Sactとの誤差が2%以上である場合には(ステップS207,Yes)、当該分割エリアNkの孔数Prkを2.25倍にし且つ孔径Dporeを2/3に減少させる(ステップS208)。孔数Prkを2.25倍にしたときにその値が小数になる場合には、任意の関数を用いて整数化してもよい。これにより、当該分割エリアNkにおいて孔12が小さくなり且つ数が増加することで、全孔面積Sactを全孔面積Stheoにより近づけることができる。なお、このときの孔数Prkの増加及び孔径Dporeの減少は任意の倍率で行うことができるが、計算前後において、孔数Prk及び孔径Dporeから算出される気孔率が変化しない倍率を採用することが好ましい。
【0033】
ステップS207において、全孔面積Stheoと全孔面積Sactとの誤差が2%未満である場合には(ステップS207,No)、ステップS209の処理に進む。
【0034】
ステップS202からステップS208の処理により、分割エリア数Div、即ち径方向の孔12の配置数及び半径方向ピッチRPと、各分割エリアの基準円Crefkにおける孔12の周方向の配置数が決定される。次に、各基準円Crefkにおける孔12の配置角度を決定することができる。具体的には、各分割エリアNkに配置される孔12の角度間隔θpitch_kと、初期角度θint_kとを算出する(ステップS209)。まず、孔12の角度間隔θpitch_kは、(360°/各分割エリアの孔数Prk)で表される。
【0035】
次に初期角度θint_kの算出方法について説明する。本実施形態において、初期角度θint_kとは、基準円Crefkの任意の半径に対する基準となる孔12の角度である。プレート10に形成される複数の孔12は、この基準となる孔12から角度間隔θpitch_kで基準円上に配置される。本実施形態では、隣接する3つの基準円Crefk上にそれぞれ配置された3つの孔12の中心が任意の半径上に並ばないように、初期角度θint_kを算出する。具体的には、例えば分割エリアNkの基準円Crefkから分割エリアNk+2の基準円Crefk+2にそれぞれ配置される孔12が同一の半径上に並ばないように、分割エリアNkから分割エリアNk+2にそれぞれ配置される孔12の初期角度θint_kを算出する。
【0036】
本実施形態では、一例として、分割エリアN
1の初期角度θ
1を角度間隔θ
pitch_1とし、分割エリアN
2の初期角度θ
2を、(角度間隔θ
pitch_1+初期角度θ
1/2)とする。続いて、分割エリアN
3の初期角度θ
3を、(角度間隔θ
pitch_1+(初期角度θ
1+初期角度θ
2)/2)とする。即ち、任意の分割エリアN
kの初期角度θ
iを次の式で算出することができる。
【数1】
【0037】
また、他の例として、分割エリアN
1の初期角度θ
1を角度間隔θ
pitch_1とし、分割エリアN
2の初期角度θ
2を、角度間隔θ
pitch_2とする。分割エリアN
3の初期角度θ
3を、(角度間隔θ
pitch_3+(初期角度θ
1+初期角度θ
2)/2)とする。また、分割エリアN
4の初期角度θ
4を、角度間隔θ
pitch_4とする。次に、分割エリアN
5の初期角度θ
5を、(角度間隔θ
pitch_5+(初期角度θ
1+初期角度θ
2+初期角度θ
3+初期角度θ
4)/2)とする。即ち、任意の分割エリアN
kの初期角度θ
iは、i=2nのとき、次の式で算出することができる。
【数2】
【0038】
また、i=2n+1のとき、任意の分割エリアN
kの初期角度θ
iは、次の式で算出することができる。
【数3】
【0039】
以上で挙げた二つの計算例によって算出される初期角度θint_k及び角度間隔θpitch_kで孔12がそれぞれの分割エリアNkの基準円Crefk上に配置されれば、隣接する3つの基準円Crefk上にそれぞれ配置された3つの孔12の中心がプレート10の任意の半径上に並ぶことがない。なお、上記の数式1から数式3は例であって、隣接する3つの基準円Crefk上にそれぞれ配置された3つの孔12の中心が任意の半径上に並ばない任意の初期角度θint_kを採用することができる。
【0040】
各分割エリアNkの初期角度θint_k及び角度間隔θpitch_kが計算された後、ステップS202からステップS209で算出したパラメータに従って、プレート10の中心側の分割エリアNk、即ち分割エリアN1から順に孔12を形成する(ステップS210)。
【0041】
以上で説明したように、本実施形態に係るプレート10によれば、隣接する3つの基準円Crefk上にそれぞれ配置された3つの孔12の中心がプレート10の任意の半径上に並ばないので、任意の半径上に孔12が密集して配置されることが抑制されるので、孔12の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0042】
また、プレート10には、複数の孔12が基準円Crefk上に周方向に沿って等間隔に配置されるので、基準円Crefk上に孔12が密集して配置されることが抑制され、孔12の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0043】
さらに、プレート10は、孔12が配置される任意の基準円Crefkの径と隣接する基準円Crefk+1の径との差が一定である。言い換えれば、孔12が径方向において
等間隔に配置されるので、径方向において孔12が密集して配置されることが抑制され、孔12の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【0045】
以下に本明細書が開示する形態のいくつかを記載する。
第1形態によれば、めっき槽において基板とアノードとの間に配置されるプレートが提供される。プレートは、同心であり且つ径が異なる3以上の基準円上に、円形の複数の孔をそれぞれ有し、隣接する3つの前記基準円上にそれぞれ配置された3つの前記孔の中心が前記プレートの任意の半径上に並ばない。
【0046】
第1形態によれば、隣接する3つの基準円上にそれぞれ配置された3つの孔の中心が任意の半径上に並ばないので、任意の半径上に孔が密集して配置されることが抑制されるので、孔の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0047】
第2形態は、第1形態のプレートにおいて、前記複数の孔は、前記基準円上に周方向に沿って等間隔に配置される、ことを要旨とする。
【0048】
第2形態によれば、複数の孔が基準円上に周方向に沿って等間隔に配置されるので、基準円上に孔が密集して配置されることが抑制され、孔の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0049】
第3形態は、第1形態又は第2形態のプレートにおいて、任意の前記基準円の径と隣接する前記基準円の径との差が一定である、ことを要旨とする。
【0050】
第3形態によれば、孔が径方向において等間隔に配置されるので、径方向において孔が密集して配置されることが抑制され、孔の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0051】
第4形態によれば、めっき装置が提供される。めっき装置は、第1形態から第3形態のいずれかのプレートと、前記プレートを収容するめっき槽と、を備える。
【0052】
第5形態によれば、めっき槽において基板とアノードとの間に配置され、円形の複数の孔を有するプレートの製造方法が提供される。プレートの製造方法は、前記プレートに前記複数の孔を形成するエリアの半径であるエリア半径と、前記複数の孔の孔径と、前記エリア半径内の前記エリアにおける目標気孔率を決定し、前記エリア半径、前記孔径、及び前記目標気孔率に基づいて、前記エリアを一定の幅を有する環状の複数の分割エリアに分割し、前記プレートの前記複数の分割エリアのそれぞれに位置する基準円上に前記複数の孔を、隣接する3つの前記基準円上にそれぞれ配置された3つの前記孔の中心が前記プレートの任意の半径上に並ばないように、形成する、ことを含む。
【0053】
第5形態によれば、隣接する3つの基準円上にそれぞれ配置された3つの孔の中心が任意の半径上に並ばないので、任意の半径上に孔が密集して配置されることが抑制されるので、孔の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0054】
第6形態は、第5形態のプレートの製造方法において、前記複数の分割エリアは、それぞれ同一の幅を有し、前記プレートの製造方法は、さらに、前記エリア半径、前記孔径、及び前記目標気孔率に基づいて、前記複数の分割エリアのそれぞれに形成される前記孔の数を算出する、ことを含む、ことを要旨とする。
【0055】
第7形態は、第6形態のプレートの製造方法において、前記孔の数に基づいて算出される前記分割エリアの一つにおける前記複数の孔の合計面積と、前記目標気孔率に基づいて算出される前記分割エリアの一つの前記複数の孔の合計面積との誤差を算出し、前記誤差が所定値以上であるとき、前記分割エリアの一つにおける前記算出された前記孔の数を増加させ且つ前記孔径を縮小する、ことを要旨とする。
【0056】
第7形態によれば、各分割エリアの孔数から算出される全孔面積を、目標気孔率から算出される理論上の全孔面積により近づけることができる。
【0057】
第8形態は、第6形態又は第7形態のプレートの製造方法において、前記複数の分割エリアの前記基準円は、前記複数の分割エリアの前記幅の中央に位置する、ことを要旨とする。
【0058】
第8形態によれば、孔が径方向において等間隔に配置されるので、径方向において孔が密集して配置されることが抑制され、孔の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【0059】
第9形態は、第5形態から第8形態のいずれかのプレートの製造方法において、前記複数の孔は、前記複数の分割エリアのそれぞれの前記基準円上に周方向に沿って等間隔に配置される、ことを要旨とする。
【0060】
第9形態によれば、複数の孔が基準円上に周方向に沿って等間隔に配置されるので、基準円上に孔が密集して配置されることが抑制され、孔の分布の局所的な異方性を抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
CP…周方向ピッチ
Prk…孔数
θint_k…初期角度
Rrefk…基準円半径
Crefk…基準円
AP…差分
Nk…分割エリア
Dpore…孔径
P…目標気孔率
RP…半径方向ピッチ
R…エリア半径
Div…分割エリア数
10…プレート
100…めっき装置
101…めっき槽
102…基板