(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230927BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01L21/30 541B
H01L21/30 541Q
H01J37/147 C
(21)【出願番号】P 2022572966
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045412
(87)【国際公開番号】W WO2022145194
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-05
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】317008610
【氏名又は名称】ニューフレアテクノロジー アメリカ,インク.
【氏名又は名称原語表記】NuFlare Technology America,Inc.
【住所又は居所原語表記】1294 Hammerwood Avenue,Sunnyvale,CA 94089,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(72)【発明者】
【氏名】仙石 康雄
(72)【発明者】
【氏名】五島 嘉国
(72)【発明者】
【氏名】ケイ ジョン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ライ チィーシング
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-044051(JP,A)
【文献】特開2007-271919(JP,A)
【文献】特開2010-034378(JP,A)
【文献】特開2013-051230(JP,A)
【文献】特開2011-022581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
21/30
H01J 37/147
37/305
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを偏向する電極と、
前記電極に偏向電位を印加するアンプと、
前記アンプを診断する診断回路と、
前記アンプの出力と前記電極との間に配置され、前記アンプの出力を前記電極と前記診断回路との間で切り替えるスイッチ回路と、
前記アンプによる偏向電位の印加によって偏向された荷電粒子ビームを試料に照射する電子光学系と、
前記電極と前記電子光学系とが内部に配置されるカラムと、
前記アンプの出力側と前記スイッチ回路とを繋ぐ第1の同軸ケーブルと、
前記電極と前記スイッチ回路とを繋ぐ第2の同軸ケーブルと、
前記アンプの出力側と前記診断回路とを繋ぐ第3の同軸ケーブルと、
前記スイッチ回路と並列に、前記第1の同軸ケーブルの内部導体と前記第2の同軸ケーブルの内部導体とを接続する抵抗と、
を備え、
前記第1の同軸ケーブルの内部導体は前記スイッチ回路を介して前記第2の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、前記第1の同軸ケーブルの外部導体は前記スイッチ回路を介して前記第2の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、
前記第1の同軸ケーブルの内部導体は前記スイッチ回路を介して前記第3の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、前記第1の同軸ケーブルの外部導体は前記スイッチ回路を介して前記第3の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、
前記スイッチ回路は、前記アンプの出力を前記電極側に切り替える場合に、前記第3の同軸ケーブルの内部導体と外部導体との両方を前記第1の同軸ケーブルから切り離すことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
第1と第2の成形アパーチャ基板をさらに備え、
前記電極は、前記第1と第2の成形アパーチャ基板を用いて前記荷電粒子ビームを成形するように前記荷電粒子ビームを偏向することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記電極は、前記荷電粒子ビームを前記試料上の所望の位置に向けて偏向することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記スイッチ回路は、前記第1の同軸ケーブルの前記内部導体との接続を、前記第2の同軸ケーブルの前記内部導体と前記第3の同軸ケーブルの前記内部導体との間で切り替えると共に、連動して、前記第1の同軸ケーブルの前記外部導体との接続を、前記第2の同軸ケーブルの前記外部導体と前記第3の同軸ケーブルの前記外部導体との間で切り替えることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
前記電極を第1の電極とし、
前記第1の電極と組み合わせて偏向器を構成する第2の電極と、
前記第2の電極に偏向電位を印加する第2のアンプと、
前記第2のアンプの出力と前記第2の電極との間に配置され、前記第2のアンプの出力を前記第2の電極と前記診断回路との間で切り替える第2のスイッチ回路と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項6】
前記診断回路を第1の診断回路とし、
前記第1と第2の電極と組み合わせて前記偏向器を構成する第3と第4の電極と、
前記第3と第4の電極に偏向電位を印加する第3と第4のアンプと、
前記第3と第4のアンプを診断する第2の診断回路と、
前記第3のアンプの出力と前記第3の電極との間に配置され、前記第3のアンプの出力を前記第3の電極と前記第2の診断回路との間で切り替える第3のスイッチ回路と、
前記第4のアンプの出力と前記第4の電極との間に配置され、前記第4のアンプの出力を前記第4の電極と前記第2の診断回路との間で切り替える第3のスイッチ回路と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項5記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項7】
荷電粒子ビームを偏向する電極と、前記電極に偏向電位を印加するアンプと、前記アンプを診断する診断回路と、前記アンプの出力と前記電極との間に配置され、前記アンプの出力を前記電極と前記診断回路との間で切り替えるスイッチ回路と、前記アンプによる偏向電位の印加によって偏向された荷電粒子ビームを試料に照射する電子光学系と、前記電極と前記電子光学系とが内部に配置されるカラムと、前記アンプの出力側と前記スイッチ回路とを繋ぐ第1の同軸ケーブルと、前記電極と前記スイッチ回路とを繋ぐ第2の同軸ケーブルと、前記アンプの出力側と前記診断回路とを繋ぐ第3の同軸ケーブルと、前記スイッチ回路と並列に、前記第1の同軸ケーブルの内部導体と前記第2の同軸ケーブルの内部導体とを接続する抵抗と、を備え、前記第1の同軸ケーブルの内部導体は前記スイッチ回路を介して前記第2の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、前記第1の同軸ケーブルの外部導体は前記スイッチ回路を介して前記第2の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、前記第1の同軸ケーブルの内部導体は前記スイッチ回路を介して前記第3の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、前記第1の同軸ケーブルの外部導体は前記スイッチ回路を介して前記第3の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、前記スイッチ回路は、前記アンプの出力を前記電極側に切り替える場合に、前記第3の同軸ケーブルの内部導体と外部導体との両方を前記第1の同軸ケーブルから切り離す荷電粒子ビーム描画装置を用いて、前記アンプによる偏向電位の印加によって偏向される荷電粒子ビームで試料を照射し、
前記スイッチ回路を用いて前記アンプの出力を前記診断回路側に切り替え、
前記診断回路を用いて、前記アンプの出力を診断し、結果を出力することを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項8】
前記アンプによる偏向電位の印加によって、前記荷電粒子ビームを成形するように前記荷電粒子ビームを偏向することを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム描画方法
【請求項9】
前記アンプによる偏向電位の印加によって、前記荷電粒子ビームを前記試料上の所望の位置に向けて偏向することを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項10】
前記アンプによる偏向電位の印加によって、前記荷電粒子ビームをブランキング偏向することを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月30日にアメリカ合衆国に出願されたUS63/132,054(出願番号)を基礎出願とする優先権を主張する出願である。US63/132,054に記載されたすべての内容は、参照されることにより本出願にインコーポレートされる。
【0002】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。例えば、試料を描画する電子ビームを偏向するアンプを用いた描画装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスの回路線幅はさらに微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ回路パターンを形成するための露光用マスク(レチクルともいう。)を形成する方法として、優れた解像性を有する電子ビーム(EB:Electron beam)描画技術が用いられる。
【0004】
図6は、可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。可変成形型電子線描画装置は、以下のように動作する。第1の成形アパーチャ基板410には、電子線330を成形するための矩形の開口411が形成されている。また、第2の成形アパーチャ基板420には、第1の成形アパーチャ基板410の開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から放出され、第1の成形アパーチャ基板410の開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向され、第2の成形アパーチャ基板420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的または断続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、第1の成形アパーチャ基板410の開口411と第2の成形アパーチャ基板420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的または断続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される。第1の成形アパーチャ基板410の開口411と第2の成形アパーチャ基板420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式(VSB方式)という。
【0005】
上述したように、描画装置では、電子ビーム等の荷電粒子ビームを偏向させて描画するが、かかるビーム偏向にはDACアンプユニット(単に、DACアンプともいう)が用いられている。このようなDACアンプユニットを用いたビーム偏向の役割としては、例えば、ビームショットの形状やサイズの制御、ショット位置の制御、及びビームのブランキングが挙げられる。
【0006】
これらのビーム偏向を高精度に行うためには、各DACアンプの出力が高精度に出力されているかどうかを検証する必要がある。このため、描画装置に搭載する前に、各DACアンプの出力性能は検証される。しかし、描画装置に搭載する前のDACアンプ単体での試験環境において性能試験に合格しても、描画装置に搭載した際に外乱や接続不良等の影響で予定されていた性能を発揮し得ない場合もある。このため、DACアンプの検証は、描画装置に搭載した状態で行うことが望ましい。例えば、対となる2つの電極に正負を反転させた逆相電圧を印加する場合に、それぞれの電極に電圧を出力する2つのDACアンプの出力を、それぞれコンデンサを介した後に加算し、この加算値を用いてこの2つのDACアンプの少なくとも一方の異常を検出する異常検出装置を描画装置に搭載する手法が開示されている(例えば、JP2010-074055A参照)。
【0007】
上述した異常検出装置のような診断装置を描画装置に搭載することでDACアンプの出力性能が精度よく検出されるように思われる。しかしながら、診断装置を描画装置の回路に接続することは、診断装置自体が外乱源としてDACアンプやDACアンプの出力信号に作用し悪影響を与える可能性がある。例えば、DACアンプの出力を診断するために接続されるケーブルは外乱のアンテナとして作用し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、描画装置に診断機構を搭載しながら、外乱の影響を排除或いは低減可能な描画装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
荷電粒子ビームを偏向する電極と、
電極に偏向電位を印加するアンプと、
アンプを診断する診断回路と
アンプの出力と電極との間に配置され、アンプの出力を電極と診断回路との間で切り替えるスイッチ回路と、
アンプによる偏向電位の印加によって偏向された荷電粒子ビームを試料に照射する電子光学系と、
電極と電子光学系とが内部に配置されるカラムと、
アンプの出力側とスイッチ回路とを繋ぐ第1の同軸ケーブルと、
電極とスイッチ回路とを繋ぐ第2の同軸ケーブルと、
アンプの出力側と診断回路とを繋ぐ第3の同軸ケーブルと、
スイッチ回路と並列に、第1の同軸ケーブルの内部導体と第2の同軸ケーブルの内部導体とを接続する抵抗と、
を備え、
第1の同軸ケーブルの内部導体はスイッチ回路を介して第2の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、第1の同軸ケーブルの外部導体はスイッチ回路を介して第2の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、
第1の同軸ケーブルの内部導体はスイッチ回路を介して第3の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、第1の同軸ケーブルの外部導体はスイッチ回路を介して第3の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、
スイッチ回路は、アンプの出力を電極側に切り替える場合に、第3の同軸ケーブルの内部導体と外部導体との両方を第1の同軸ケーブルから切り離すことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
荷電粒子ビームを偏向する電極と、電極に偏向電位を印加するアンプと、アンプを診断する診断回路と、アンプの出力と電極との間に配置され、アンプの出力を電極と診断回路との間で切り替えるスイッチ回路と、アンプによる偏向電位の印加によって偏向された荷電粒子ビームを試料に照射する電子光学系と、電極と電子光学系とが内部に配置されるカラムと、アンプの出力側とスイッチ回路とを繋ぐ第1の同軸ケーブルと、電極とスイッチ回路とを繋ぐ第2の同軸ケーブルと、アンプの出力側と診断回路とを繋ぐ第3の同軸ケーブルと、スイッチ回路と並列に、第1の同軸ケーブルの内部導体と第2の同軸ケーブルの内部導体とを接続する抵抗と、を備え、第1の同軸ケーブルの内部導体はスイッチ回路を介して第2の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、第1の同軸ケーブルの外部導体はスイッチ回路を介して第2の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、第1の同軸ケーブルの内部導体はスイッチ回路を介して第3の同軸ケーブルの内部導体の一端側に接続され、第1の同軸ケーブルの外部導体はスイッチ回路を介して第3の同軸ケーブルの外部導体の一端側に接続され、スイッチ回路は、アンプの出力を電極側に切り替える場合に、第3の同軸ケーブルの内部導体と外部導体との両方を第1の同軸ケーブルから切り離す荷電粒子ビーム描画装置を用いて、アンプによる偏向電位の印加によって偏向される荷電粒子ビームで試料を照射し、
スイッチ回路を用いてアンプの出力を診断回路側に切り替え、
診断回路を用いて、アンプの出力を診断し、結果を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、描画装置に診断機構を搭載しながら、外乱の影響を排除或いは低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【
図2】実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
【
図3】実施の形態1におけるスイッチ回路内の構成の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における診断回路の構成の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における2つのDACアンプ出力と、2つのDACアンプ出力の加算値の一例を示す図である。
【
図6】可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【
図7】実施の形態1における成形偏向器とスイッチ回路ボックスとDACアンプとの配置構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
また、以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビームは、シングルビームに限るものではなく、マルチビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム描画装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒(電子ビームカラム)102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202(電磁レンズ)、ブランキング偏向器212、第1の成形アパーチャ基板203、投影レンズ204(電磁レンズ)、偏向器205、第2の成形アパーチャ基板206、対物レンズ207(電磁レンズ)、及び偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、レジストが塗布された、描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0015】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ111、偏向制御回路120、DAC(デジタル・アナログコンバータ)アンプ130,132,134,136,138,139、スイッチ回路ボックス170,172,174,176,178,179、診断回路180,184,188、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。制御計算機110、メモリ111、偏向制御回路120、スイッチ回路ボックス170,172,174,176,178,179、診断回路180,184,188、及び記憶装置140は、図示しないバスを介して接続されている。偏向制御回路120には、DACアンプ130,132,134,136,138,139が接続される。制御計算機110に入出力される情報および演算中の情報はメモリ111にその都度格納される。偏向制御回路120、スイッチ回路ボックス170,172,174,176,178,179内の各回路、及び診断回路180,184,188は、制御計算機110によって制御される。
【0016】
ブランキング偏向器212は、少なくとも2極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ130,132を介して、偏向制御回路120によって制御される。
図1の例では、ブランキング偏向器212は、2極の電極群により構成され、一方の電極にスイッチ回路ボックス170を介してDACアンプ130の出力側が接続され、他方の電極にスイッチ回路ボックス172を介してDACアンプ132の出力側が接続される場合を示している。但し、これに限るものではない。2極の電極群により構成される場合に、一方の電極にスイッチ回路ボックス170を介してDACアンプ130の出力側が接続され、他方の電極にグランド(GND)電位が接続(接地)されても構わない。また、DACアンプの代わりにパルスジェネレータから電圧が、ブランキング偏向器212の一方の電極に印加されるように構成される場合であっても良い。
【0017】
偏向器205は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ134,136,・・・を介して、偏向制御回路120によって制御される。
図1の例では、偏向器205として、少なくとも4極の電極群のうち、対向する2極の電極群が示されている。そして、この2極の電極群の一方にスイッチ回路ボックス174を介してDACアンプ134の出力側が接続され、この2極の電極群の他方にスイッチ回路ボックス176を介してDACアンプ136の出力側が接続される場合を示している。
【0018】
偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ138,139,・・・を介して、偏向制御回路120によって制御される。
図1の例では、偏向器209として、少なくとも4極の電極群のうち、対向する2極の電極群が示されている。そして、この2極の電極群の一方にスイッチ回路ボックス178を介してDACアンプ138の出力側が接続され、この2極の電極群の他方にスイッチ回路ボックス179を介してDACアンプ139の出力側が接続される場合を示している。
【0019】
偏向制御回路120から各DACアンプに対して、それぞれの対応する制御用のデジタル信号が出力される。そして、各DACアンプでは、それぞれのデジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧用の電位として対応する電極に出力する。言い換えれば、各DACアンプは、担当する電極に偏向電位を印加する。
【0020】
また、ブランキング偏向器212を構成する2極の電極群の一方に電圧を印加するDACアンプ130の出力は、スイッチ回路ボックス170を介して診断回路180に接続される。また、ブランキング偏向器212を構成する2極の電極群の他方に電圧を印加するDACアンプ132の出力は、スイッチ回路ボックス172を介して診断回路180に接続される。診断回路180は、DACアンプ130,132の出力を診断する。
【0021】
また、偏向器205を構成する少なくとも4極の電極群のうちの対向する2極の電極群の一方に電圧を印加するDACアンプ134の出力は、スイッチ回路ボックス174を介して診断回路184に接続される。また、偏向器205を構成する少なくとも4極の電極群のうちの対向する2極の電極群の他方に電圧を印加するDACアンプ136の出力は、スイッチ回路ボックス176を介して診断回路184に接続される。診断回路184は、DACアンプ134,136の出力を診断する。
【0022】
また、偏向器209を構成する少なくとも4極の電極群のうちの対向する2極の電極群の一方に電圧を印加するDACアンプ138の出力は、スイッチ回路ボックス178を介して診断回路188に接続される。また、偏向器209を構成する少なくとも4極の電極群のうちの対向する2極の電極群の他方に電圧を印加するDACアンプ139の出力は、スイッチ回路ボックス179を介して診断回路188に接続される。診断回路188は、DACアンプ138,139の出力を診断する。
【0023】
なお、上述した例では、対向する電極群へ偏向電圧を供給する2つのDACアンプに対して1つの診断回路を配置する場合を示しているが、これに限るものではない。DACアンプ毎に個別の診断回路を配置する場合であっても構わない。
【0024】
描画装置100の外部から描画対象のチップパターンのデータ(チップデータ:描画データ)が入力され、記憶装置140に格納される。チップデータには、描画する図形パターンの図形種を示す図形コード、配置座標、及び寸法等が定義される。その他、照射量情報が同データ内に定義されてもよい。或いは照射量情報が別データとして入力されてもよい。
【0025】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、1段の偏向器209を用いているが、例えば、主偏向器と副偏向器の主副2段の多段偏向器を用いて位置偏向を行なう場合であってもよい。或いは、3段以上の多段偏向器を用いて位置偏向を行なう場合であってもよい。また、描画装置100には、マウスやキーボード等の入力装置、モニタ装置、及び外部インターフェース回路等が接続されていても構わない。
【0026】
図2は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図2において、試料101の描画領域10は、偏向器209の偏向可能な範囲内の幅で、例えばy方向に向かって短冊状に複数のストライプ領域20に仮想分割される。また、各ストライプ領域20は、メッシュ状に複数のサブフィールド(SF)30(小領域)に仮想分割される。そして、各SF30の各ショット位置にショット図形32,34,36が描画される。
【0027】
描画装置100では、ストライプ領域20毎に描画処理を進めていく。XYステージ105が例えば-x方向に向かって連続移動しながら、1番目のストライプ領域20についてx方向に向かって描画を進めていく。多重描画を行わずに、各ストライプ領域20を1回ずつ描画する場合には、例えば、以下のように動作する。1番目のストライプ領域20の描画終了後、XYステージ105を-y方向に1ストライプ領域20分だけ移動させると共に、XYステージ105をx方向に1ストライプ領域20分だけ移動させて戻し同様に、或いは逆方向(-x方向)に向かって2番目のストライプ領域20の描画を進めていく。以降、同様に、3番目以降のストライプ領域20の描画を進めていく。各ストライプ領域20を描画するにあたり、偏向器209が、XYステージ105の移動に追従するように電子ビーム200を偏向しながら、さらに偏向器209が、各SF30内に照射されるビームの各ショット位置に電子ビーム200を偏向する。
【0028】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、ブランキング偏向器212内を通過する際に、ビームONの状態では、ブランキング偏向器212によって、第1の成形アパーチャ基板203の矩形の穴全体を照明するように制御される。また、ビームOFFの状態では、ブランキング偏向器212によって、ビーム全体が第1の成形アパーチャ基板203で遮へいされるように偏向される。ビームOFFの状態からビームONとなり、この後ビームOFFになるまでに第1の成形アパーチャ基板203を通過した電子ビーム200が1回の電子ビームのショットとなる。このように、DACアンプからブランキング偏向器212を構成する電極に電位を印加することによって、電子ビーム200をブランキング偏向する。ブランキング偏向器212は、通過する電子ビーム200の向きを制御して、ビームONの状態とビームOFFの状態とを交互に生成する。例えば、ビームONの状態ではブランキング偏向器212に電圧を印加せず、ビームOFFの際にブランキング偏向器212に電圧を印加すればよい。かかる各ショットの照射時間tで試料101に照射される電子ビーム200のショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0029】
以上のようにビームONに制御された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1の成形アパーチャ基板203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1の成形アパーチャ基板203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ基板206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2の成形アパーチャ基板206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、所望のビーム形状と寸法となるよう変化させる(可変成形を行なう)ことができる。言い換えれば、偏向器205を構成する電極は、第1の成形アパーチャ基板203と第2の成形アパーチャ基板206とを用いて、第2の成形アパーチャ基板206を通過した第2のアパーチャ像が所望のビーム形状と寸法となるよう電子ビーム200を偏向する。かかる可変成形はショット毎に行なわれ、例えばショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。そして、第2の成形アパーチャ基板206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。言い換えれば、偏向器209を構成する電極は、電子ビーム200を試料101上の所望の位置に向けて偏向する。例えば、照明レンズ202、第1の成形アパーチャ基板203、投影レンズ204、第2の成形アパーチャ基板206、及び対物レンズ207は、実施の形態1における電子光学系の一例である。言い換えれば、電子光学系は、各DACアンプによる偏向電圧の印加によって偏向される電子ビーム200で試料101を照射する。かかる動作を繰り返し、各ショットのショット図形を繋ぎ合わせることで、所望の図形パターンを描画する。
【0030】
ここで、上述したように、ビーム偏向を高精度に行うためには、各DACアンプの出力が高精度に出力されているかどうかを検証する必要がある。このため、実施の形態1では、各DACアンプの診断(或いは検証)を行うための診断装置(回路)を描画装置100に搭載する。しかしながら、診断装置を描画装置100の回路に接続することは、電子ビーム200の偏向制御を行う場合に、診断装置自体が外乱源としてDACアンプやDACアンプの出力信号に作用し悪影響を与える可能性がある。例えば、DACアンプの出力を診断するために接続されるケーブルは外乱のアンテナとして作用し得る。そこで、実施の形態1では、診断時には、各DACアンプの出力を診断回路に接続するものの、描画時には、各DACアンプの出力と診断回路との接続を遮断する。以下、具体的に説明する。
【0031】
図3は、実施の形態1におけるスイッチ回路内の構成の一例を示す図である。各スイッチ回路ボックス170,172,174,176,178,179内には、それぞれ、スイッチ回路と抵抗とが配置される。
図3の例では、スイッチ回路ボックス170,172,174,176,178,179のうち、成形用の偏向器205の対向する2つの電極群と接続されるスイッチ回路ボックス174,176について示している。他のスイッチ回路ボックス内の構成も同様である。スイッチ回路ボックス174内のスイッチ回路74は、DACアンプ134の出力と成形用の偏向器205の対向する2つの電極群の一方の電極との間に配置され、DACアンプ134の出力を偏向器205の対向する2つの電極群の一方の電極と診断回路184との間で切り替える。同様に、スイッチ回路ボックス176内のスイッチ回路76は、DACアンプ136の出力と成形用の偏向器205の対向する2つの電極群の他方の電極との間に配置され、DACアンプ136の出力を偏向器205の対向する2つの電極群の他方の電極と診断回路184との間で切り替える。各スイッチ回路ボックス170,172,174,176,178,179内のスイッチ回路による配線の切り換えは、制御計算機110により制御される図示しないリレー等により動作させればよい。
【0032】
以下、スイッチ回路ボックス174内について説明する。DACアンプ134の出力側とスイッチ回路74とは、同軸ケーブル54(第1の同軸ケーブルの一例)によって繋がれる。偏向器205の対向する2つの電極群の一方の電極とスイッチ回路74とは、同軸ケーブル44(第2の同軸ケーブルの一例)によって繋がれる。診断回路184とスイッチ回路74とは、同軸ケーブル64(第3の同軸ケーブルの一例)によって繋がれる。同軸ケーブル54の内部導体3はスイッチ回路74を介して同軸ケーブル44の内部導体1の一端側に接続される。同軸ケーブル54の外部導体4はスイッチ回路74を介して同軸ケーブル44の外部導体2の一端側に接続される。同様に、同軸ケーブル54の内部導体3はスイッチ回路74を介して同軸ケーブル64の内部導体5の一端側に接続される。同軸ケーブル54の外部導体4はスイッチ回路74を介して同軸ケーブル64の外部導体6の一端側に接続される。スイッチ回路74内には、内部導体間の切り換え用の端子と、外部導体間の切り換え用の端子がそれぞれ配置される。スイッチ回路74は、同軸ケーブル54の内部導体3との接続を、同軸ケーブル44の内部導体1と同軸ケーブル64の内部導体5との間で切り替えると共に、連動して、同軸ケーブル54の外部導体4との接続を、同軸ケーブル44の外部導体2と同軸ケーブル64の外部導体6との間で切り替える。同軸ケーブル44の内部導体1の他端側は偏向器205の対向する2つの電極群の一方の電極に接続される。同軸ケーブル44の外部導体2は電子鏡筒102(カラム)と同電位に接地される。電子鏡筒102自体はグランド(GND)電位に接続(接地)される。よって、同軸ケーブル54と同軸ケーブル44とがスイッチ回路74によって導通された場合に、DACアンプ134と偏向器205の対向する2つの電極群の一方の電極とを繋ぐケーブルの外部導体は、電子鏡筒102側のグランド(GND)電位に制御される。同軸ケーブル64の外部導体6は診断回路184内のGND電位と同電位に接続される。よって、同軸ケーブル54と同軸ケーブル64とがスイッチ回路74によって導通された場合に、DACアンプ134と診断回路184とを繋ぐケーブルの外部導体は、診断回路184側のGND電位に制御される。
【0033】
スイッチ回路74は、DACアンプ134の出力を偏向器205の対向する2つの電極群の一方の電極側に切り替える場合に、同軸ケーブル64の内部導体5と外部導体6との両方を同軸ケーブル54から切り離す。これにより、DACアンプ134の出力と診断回路184とを、電気的に完全に切り離すことができる。よって、診断回路184及び診断回路184用のケーブルに起因する外乱が、DACアンプ134-偏向器205の対向する2つの電極群の一方の電極間へ侵入することによる、DACアンプやDACアンプの出力信号への悪影響を排除できる。
【0034】
また、スイッチ回路ボックス174内には、スイッチ回路74と並列に、同軸ケーブル54の内部導体3と同軸ケーブル44の内部導体1とを接続する抵抗84が配置される。偏向器205を構成する電極に偏向電位が印加された後に、DACアンプ134の出力を診断回路184側に切り替える場合に、電極に繋がる配線が開放端になると電気的に浮いた状態になってしまう。偏向器205は電子ビーム200に曝されており、電子ビーム200の電荷によって帯電する。このため、再度、スイッチ回路74によりDACアンプ134の出力を電極側に切り替えた際に、意図しない電流が流れる可能性がある。このように抵抗84を配置し、同軸ケーブル54の内部導体3と同軸ケーブル44の内部導体1との接続を保持することで、電極の帯電を抑制できる。抵抗84の抵抗値として、例えば100KΩ~500KΩの範囲を用いると好適である。
【0035】
スイッチ回路ボックス176内の構成は、スイッチ回路ボックス174内の構成と同様である。例えば、DACアンプ136の出力側とスイッチ回路76とは、同軸ケーブル56(第1の同軸ケーブルの他の一例)によって繋がれる。偏向器205の対向する2つの電極群の他方の電極とスイッチ回路76とは、同軸ケーブル46(第2の同軸ケーブルの他の一例)によって繋がれる。診断回路184とスイッチ回路76とは、同軸ケーブル66(第3の同軸ケーブルの他の一例)によって繋がれる。また、スイッチ回路ボックス176内には、スイッチ回路76と並列に、同軸ケーブル56の内部導体と同軸ケーブル46の内部導体とを接続する抵抗86が配置される。
【0036】
実施の形態1では、描画工程と、切り替え工程と、診断工程とを実施する。
描画工程として、上述したように、電極と、DACアンプと、診断回路と、スイッチ回路とが搭載された描画装置100を用いて、DACアンプによる偏向電位の印加によって偏向される電子ビーム200で試料101を照射する。
切り替え工程として、例えばスイッチ回路74を用いてDACアンプ134の出力を診断回路184側に切り替える。
診断工程として、例えば診断回路184を用いて、DACアンプ134の出力を診断し、結果を出力する。
【0037】
DACアンプ134の出力の診断は、描画開始前に実施すると好適である。これにより、DACアンプの動作に一定の保証を得た状態で描画を行うことができる。或いは、ストライプ領域20間での電子ビーム200の照射が行われていない時期に実施すると好適である。
【0038】
図4は、実施の形態1における診断回路の構成の一例を示す図である。偏向器205及び偏向器209では、ビーム偏向には対となる電極群に正負を反転させ逆相電圧を印加する方式を採用する。
図4の例では、偏向器205の対となる電極群に電位を印加するDACアンプ134,136を診断する場合を示している。この場合、一方のDACアンプ134は、他方のDACアンプ136と同期させてそれぞれの出力先となる電極に電位を印加する。これらDACアンプ134,136の少なくとも1つに不具合が生じると、正負を反転させた逆相電圧にはならなくなってしまう。この結果、ビーム偏向量が所望する量とは異なってしまうために描画異常が生じてしまうことになる。
【0039】
図4において、診断回路184は、2つのDACアンプ134,136の少なくとも1つが異常である場合に、この異常を検出する。診断回路184は、コンデンサ520,522、測定用アンプ530、比較回路540、及び判定回路550を備えている。スイッチ回路74により、DACアンプ134,136の出力が診断回路184側に切り替えられている。DACアンプ134の出力は、コンデンサ520(第1のコンデンサ)の一端に接続される。DACアンプ136の出力は、コンデンサ522(第2のコンデンサ)の一端に接続される。2つのコンデンサ520,522の他端間は接続され、この中点で測定用アンプ530の入力端に接続される。測定用アンプ530の出力端は比較回路540の入力端に接続され、比較回路540の出力端に判定回路550の入力端が接続される。
【0040】
DACアンプ134には、ある正の電圧出力を指示する指令が入力される。そして、DACアンプ134は、正のアナログ信号を出力する。DACアンプ136には、ある負の電圧出力を指示する指令が入力される。そして、DACアンプ136は、負のアナログ信号を出力する。DACアンプ134の出力がコンデンサ520に入力して、コンデンサ520から応答信号が測定用アンプ530側に検出される。同様に、DACアンプ136の出力がコンデンサ522に入力して、コンデンサ522から応答信号が測定用アンプ530側に検出される。測定用アンプ530は、コンデンサ520の応答信号とコンデンサ522の応答信号とを入力し、コンデンサ520の応答信号とコンデンサ522の応答信号との加算値を比較回路540に増幅して出力する。
【0041】
図5は、実施の形態1における2つのDACアンプ出力と、2つのDACアンプ出力の加算値の一例を示す図である。ここで、2つのDACアンプ134,136の双方が故障していなければ、増幅されたコンデンサ520の応答信号とコンデンサ522の応答信号との加算値は、正負を単に逆転させただけの逆相信号同士の加算値であるので、理想的には正反対の波形のアナログ値となる。よって、2つの出力値を加算することで、理想的には加算値が0となる。一方、DACアンプ134とDACアンプ136の少なくとも一方が異常である場合には、加算値が0にならない。そこで、比較回路540は測定用アンプ530で増幅された加算値を所定の閾値(基準電圧)と比較する。そして、例えば、比較の結果、加算値が所定の閾値を越えている場合はHレベル信号、超えていない場合はLレベル信号を判定回路550に出力する。そして、判定回路550は、比較回路540の出力値を処理して正常/異常を判定する。具体的には判定回路550は、セトリング時間を除いた判定期間に比較回路540の出力値がHレベル信号になった場合にDACアンプ134とDACアンプ136の少なくとも一方が異常であると判定して、この結果である正常/異常を出力する。結果の情報は、例えばデジタル信号として出力されると、その後に結果の情報を用いやすくなるためより好適である。このように構成することで、DACアンプ134とDACアンプ136の少なくとも一方が異常である場合を異常時に即座に検出することができる。また、アナログ値には
図5に示すように通常ノイズが乗っているので、判定する際に所定の閾値を用いることで誤判定を低減することができる。例えば判定回路550は、一瞬Hレベル信号になっても直ぐ異常と判定するのではなく、判定期間中、所定の閾値より高い時間の長さや、時間の割合だけHレベル信号になった場合に異常を出力するようにしてもよい。ノイズが小さい或いは無視できるような場合には、閾値を0或いは略0にしてもよい。さらに、測定用アンプ530で増幅させることで、基準となる閾値(基準電圧)との差を明確化することができ比較回路540での比較の精度を向上させることができる。特にアンプ異常の程度が小さい場合でも増幅されることにより検出することができる。判定回路550での判定結果は、制御計算機110に出力される。そして、例えば図示しないモニタ或いは警報ランプ等に表示され、ユーザは、異常を確認できる。
【0042】
診断手法は、上述した手法に限るものではない。その他の手法を用いることもできる。例えば、各DACアンプの出力をオシロスコープ等でそれぞれモニタしても良い。
【0043】
図7は、実施の形態1における成形偏向器とスイッチ回路ボックスとDACアンプとの配置構成の一例を示す図である。
図7において、偏向器205は、少なくとも4極の電極群により構成される。
図7の例では、8極の電極群により構成される場合を示している。電極毎に、当該電極と電極スイッチ回路ボックスとDACアンプとの組が構成される。各電極は電極スイッチ回路ボックスを介してDACアンプの出力側が接続される。偏向器205を構成する8つのDACアンプに対して、対向する電極の組毎に1つの診断回路が配置される。対向する2つの電極には、正負の符号を反転させた同じ電位が印加される。
図7の例では、電極(1)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(1)に対向する電極(5)用の電極スイッチ回路ボックスとが第1の診断回路に接続される。電極(2)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(2)に対向する電極(6)用の電極スイッチ回路ボックスとが第2の診断回路に接続される。電極(3)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(3)に対向する電極(7)用の電極スイッチ回路ボックスとが第3の診断回路に接続される。電極(4)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(4)に対向する電極(8)用の電極スイッチ回路ボックスとが第4の診断回路に接続される。各スイッチ回路ボックス内の構成は
図3で説明した内容と同様である。各診断回路内の構成は
図4で説明した内容と同様である。
【0044】
同様に、偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成される。
図7の例では、8極の電極群により構成される場合を示している。電極毎に、当該電極と電極スイッチ回路ボックスとDACアンプとの組が構成される。各電極は電極スイッチ回路ボックスを介してDACアンプの出力側が接続される。偏向器209を構成する8つのDACアンプに対して、対向する電極の組毎に1つの診断回路が配置される。対向する2つの電極には、正負の符号を反転させた同じ電位が印加される。
図7の例では、電極(1)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(1)に対向する電極(5)用の電極スイッチ回路ボックスとが第1の診断回路に接続される。電極(2)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(2)に対向する電極(6)用の電極スイッチ回路ボックスとが第2の診断回路に接続される。電極(3)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(3)に対向する電極(7)用の電極スイッチ回路ボックスとが第3の診断回路に接続される。電極(4)用の電極スイッチ回路ボックスと、電極(4)に対向する電極(8)用の電極スイッチ回路ボックスとが第4の診断回路に接続される。各スイッチ回路ボックス内の構成は
図3で説明した内容と同様である。各診断回路内の構成は
図4で説明した内容と同様である。
【0045】
以上のように、実施の形態1によれば、描画装置100に診断回路180,184,188を搭載しながら、外乱の影響を排除或いは低減できる。
【0046】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0047】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0048】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。例えば、試料を描画する電子ビームを偏向するアンプを用いた描画装置に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 内部導体
2 外部導体
3 内部導体
4 外部導体
5 内部導体
6 外部導体
10 描画領域
20 ストライプ領域
30 SF
32,34,36 ショット図形
44 同軸ケーブル
46 同軸ケーブル
54 同軸ケーブル
56 同軸ケーブル
64 同軸ケーブル
66 同軸ケーブル
74 スイッチ回路
76 スイッチ回路
84 抵抗
86 抵抗
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御計算機
111 メモリ
120 偏向制御回路
130,132,134,136,138,139 DACアンプ
170,172,174,176,178,179 スイッチ回路ボックス
180,184,188 診断回路
140 記憶装置
150 描画機構
160 制御系回路
201 電子銃
202 照明レンズ
203 第1の成形アパーチャ基板
204 投影レンズ
205 偏向器
206 第2の成形アパーチャ基板
207 対物レンズ
209 偏向器
212 ブランキング偏向器
330 電子線
340 試料
410 第1の成形アパーチャ基板
411 開口
420 第2の成形アパーチャ基板
421 可変成形開
430 荷電粒子ソース
520,522 コンデンサ
530 測定用アンプ
540 比較回路
550 判定回路