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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】エクソソームの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20230928BHJP
【FI】
C12N5/07 ZNA
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019008474
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020115769
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー小林 菜穂子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徹彦
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 生彦
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156786(JP,A)
【文献】特開2018-064550(JP,A)
【文献】中村 俊一,エクソソーム産生機構、脂質,膜,2017年09月01日,Vol. 42, No. 5,p. 170-174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工軽量化エクソソーム(induced Light-weight Exosome;iLE)を生産する方法であって、
所定の培養細胞を含む細胞培養物を用意する工程;
前記細胞培養物中に、人為的に製造した所定の合成ペプチドを少なくとも一回供給し、該細胞培養物を所定期間培養する工程;および
前記培養後、前記培養細胞が産生したエクソソームを前記培養物中から回収する工程;
を包含し、
ここで、前記合成ペプチドは、以下の(1)および(2)に示すアミノ酸配列:
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列であるエクソソーム誘導性ペプチド配列;および
(2)細胞膜透過性ペプチド(cell penetrating peptide:CPP)として機能するアミノ酸配列(CPP配列);
をともに備え、かつ、総アミノ酸残基数が100以下である、生産方法。
【請求項2】
前記CPP配列は、ポリアルギニン、または、配列番号2~19のいずれかに示すアミノ酸配列である、請求項1に記載の生産方法。
【請求項3】
前記CPP配列は、前記エクソソーム誘導性ペプチド配列のN末端側あるいはC末端側に、直接的に隣接して、あるいはリンカーとして機能するアミノ酸残基10個以下を介して配置される、請求項1または2に記載の生産方法。
【請求項4】
前記合成ペプチドは、配列番号20に示すアミノ酸配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の生産方法。
【請求項5】
前記回収工程において、前記培養細胞が産生したエクソソームを、前記培養物中から超遠心分離法によってエクソソーム画分として単離して回収する、請求項1~4のいずれか一項に記載の生産方法。
【請求項6】
前記回収工程の後、前記エクソソーム画分の全タンパク質量を解析する工程をさらに包含し、該解析工程において、前記全タンパク質量から算出されるエクソソーム一粒子当たりの平均タンパク質量が所定量未満であるエクソソーム画分に含まれるエクソソームを、人工軽量化エクソソーム(iLE)であると判別する、請求項に記載の生産方法。
【請求項7】
前記エクソソームの一粒子当たりの平均タンパク質量が、8×10-8μg未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクソソームの生産方法に関する。詳しくは、ここで開示される合成ペプチドをエクソソーム産生細胞(培養細胞)に供給することによって、含有されるタンパク質量が低減された人工軽量化エクソソームを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エクソソーム(exosome)は、直径がおよそ20nm~200nm程度の膜小胞であり、生体中の種々の細胞あるいは培養細胞から分泌されることが知られている。その内部(即ち、内腔部分)およびエクソソームを構成する膜構造部分に種々のタンパク質を含有し、該タンパク質の種類によって、エクソソームの機能が多様化することが知られている。
近年、エクソソームを医療分野に応用する研究(例えば、エクソソームをキャリアとする薬物送達技術に関する研究等)が進められている。その一例として、細胞(例えば、組織から単離された細胞)からエクソソームを生成する方法に関する技術が挙げられる。具体的には、例えば、特許文献1には、プロスタグランジンEレセプター4(EP4)アンタゴニストに単離された幹細胞を接触させて人工エクソソームを生成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-64550号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Sphingosine 1-phosphate and cancer(Nigel J. Pyne and Susan Pyne, Nature Reviews, 10, 489-503 (2010))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エクソソームを医療分野に応用しようとする場合、エクソソームの用途によっては、該エクソソームに含有されるタンパク質量を変化させる技術が求められる場合がある。例えば、エクソソームを薬物送達キャリアとして利用することを検討する場合、キャリアとなるエクソソームには、目的とする薬物等の導入物質以外の物質は存在しないかまたはその存在量ができるだけ少ないことが望ましい。このため、キャリアとなるエクソソームにネイティブに存在するタンパク質の量を予め低減させておく技術が求められる。しかしながら、従来の技術では、キャリアとなるエクソソームの生産時において当該生産されるエクソソームに存在するネイティブなタンパク質量を容易に且つ確実に低減させることは甚だ困難であった。
そこで本発明は、エクソソームを薬物送達キャリアとして利用する場合の上記課題を解決するべく創出されたものであり、所定の培養細胞からエクソソームを生産する方法であって、当該エクソソーム中に存在するネイティブな(即ち、本来存在し得る雑多な)タンパク質の含有量が予め低減された人工軽量化エクソソーム(induced Light-weight Exosome;iLE)の提供を可能とするエクソソーム生産方法を提供することを目的とする。また、かかる生産方法によって生産される人工軽量化エクソソーム(iLE)を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、各生物種、特に哺乳類において発現される7回膜貫通型タンパク質の一種であるスフィンゴシン1リン酸レセプター1(sphingosine 1-phosphate receptor 1:S1PR1)のトランスメンブレン(TM)領域に着目した。そして、驚くべきことに、S1PR1のN末端から2番目のTM領域を構成するアミノ酸配列と、従来知られた細胞膜透過性ペプチド(cell penetrating peptide:CPP)として機能するアミノ酸配列(以下、「CPP配列」ともいう。)とを組み合わせた合成ペプチドを用いて所定の培養細胞を処理することによって、当該培養細胞におけるエクソソームの産生量が増加するとともに、該産生されたエクソソーム中のネイティブなタンパク質の含有量が低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、ここで開示されるエクソソームを生産する方法は、人工軽量化エクソソーム(induced Light-weight Exosome;iLE)を生産する方法であって、
所定の培養細胞を含む細胞培養物を用意する工程;
上記細胞培養物中に、人為的に製造した所定の合成ペプチドを少なくとも一回供給し、該細胞培養物を所定時間培養する工程;および
上記培養後、上記培養細胞が産生したエクソソームを上記培養物中から回収する工程;
を包含する。
ここで、上記合成ペプチドは、以下の(1)および(2)に示すアミノ酸配列:
(1)スフィンゴシン1リン酸レセプター1(sphingosine 1-phosphate receptor 1:S1PR1)のN末端から2番目のトランスメンブレン(TM)領域を構成するアミノ酸配列、または、該アミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加された改変アミノ酸配列のいずれかからなるエクソソーム誘導性ペプチド配列;および
(2)細胞膜透過性ペプチド(cell penetrating peptide:CPP)として機能するアミノ酸配列(CPP配列);
をともに備え、かつ、総アミノ酸残基数が100以下である。
かかる生産方法によると、対象とする培養細胞におけるエクソソームの産生量を増加させることができる。さらに、一粒子当たりの平均タンパク質量が所定量未満である人工軽量化エクソソーム(iLE)を好適に生産することができる。
【0008】
ここで開示される生産方法の好適な一態様では、上記エクソソーム誘導性ペプチド配列が、配列番号1に示すアミノ酸配列であることを特徴とする。
また、ここで開示される生産方法の好適な他の一態様では、上記CPP配列が、ポリアルギニン(特に限定しないが、典型的には、5個以上20個以下のアルギニン残基から構成される)、または、配列番号2~19のいずれかに示すアミノ酸配列、または、該アミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたCPPとして機能する改変アミノ酸配列であることを特徴とする。
【0009】
ここで開示される生産方法の好適な他の一態様では、上記CPP配列(または、CPPとして機能する改変アミノ酸配列)が、上記エクソソーム誘導性ペプチド配列のN末端あるいはC末端側に、直接的に隣接して、あるいは、リンカーとして機能する10個以下(好ましくは5個以下、例えば1個か2個)のアミノ酸残基を介して配置される。
【0010】
特に好ましい一態様では、ここで開示される生産方法では、上記合成ペプチドは、配列番号20に示すアミノ酸配列を有することを特徴とする。
【0011】
ここで開示されるiLE生産方法は、上述したいずれかの合成ペプチドの供給を包含することにより、新たなエクソソーム生産方法を構築することができる。
また、ここで開示される生産方法の好適な他の一態様では、上記回収工程において、上記培養細胞が産生したエクソソームを、上記培養物中から超遠心分離法によってエクソソーム画分として単離して回収することを特徴とする。かかる態様によると、好適にエクソソームを回収することができる。
好ましい他の一態様では、上記回収工程の後、上記エクソソーム画分の全タンパク質量を解析する工程をさらに包含する。ここで、該解析工程において、上記全タンパク質量から算出されるエクソソームの一粒子当たりの平均タンパク質量が所定量未満であるエクソソーム画分に含まれるエクソソームを、人工軽量化エクソソーム(iLE)であると判別する。
そして、より好ましくは、上記エクソソームの一粒子当たりの平均タンパク質量が、8×10-8μg未満である。
かかる生産方法によると、生産されたエクソソームが人工軽量化エクソソーム(iLE)であることを容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例のサンプルペプチドで処理した培養細胞(HeLa細胞)から回収したエクソソームの電子顕微鏡観察像である。
図2】試験例において回収したエクソソーム画分1mLあたりに含まれるエクソソームの粒子数(エクソソーム量)を示すグラフである。
図3】試験例において回収したエクソソーム画分に含まれるエクソソーム一粒子当たりの平均タンパク質量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項(例えば合成ペプチドの一次構造や鎖長)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばペプチドの化学合成法、細胞培養技法に関するような一般的事項)は、細胞工学、生理学、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学、タンパク質工学、分子生物学、遺伝学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明では、アミノ酸を1文字表記(但し配列表では3文字表記)で表す。
本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【0014】
本明細書において、「エクソソーム」とは、種々の真核細胞から細胞外に分泌される脂質二重膜でできた小胞を意味する。典型的には、直径がおよそ20nm~200nmの小胞であるが、対象とする培養細胞が産生するエクソソームであればよく、エクソソームのサイズや形態自体に特に制限はない。
また、「人工軽量化エクソソーム(induced Light-weight Exosome: iLE)」とは、ここで開示される合成ペプチドを対象培養細胞に供給することによって、人工的に産生が誘導されたエクソソームであって、当該合成ペプチドを供給しない状態で当該対象培養細胞が通常産生するエクソソームと比較してネイティブな(即ち、当該対象培養細胞が通常産生するエクソソーム内に本来的に存在し得る雑多な)タンパク質の含有量が減少しており、相対的に軽量化されたエクソソーム(iLE)をいう。
また、本明細書において「培養細胞」とは、インビトロ(生体外)で培養される細胞一般をいい、特定の商業的に確立されたセルライン(細胞株)に限定されない。ヒト若しくはヒト以外の生物種(特には哺乳動物)の生体から取り出された細胞、組織、器官等をインビトロで培養した場合の当該培養物(例えばプライマリーカルチャー)中に含まれる細胞は、「培養細胞」に包含される。商業的に確立された種々の培養腫瘍細胞等のセルラインを構成する細胞は、ここでいう「培養細胞」の典型例である。
なお、「腫瘍細胞」とは、「がん細胞」と同義であり、種々の腫瘍を形成する細胞であって、典型的には周辺の正常組織とは無関係に異常に増殖を行うに至った細胞(所謂がん化した細胞)をいう。各種の細胞腫(神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫等)、リンパ腫、メラノーマ等を構成する細胞由来の「培養腫瘍細胞」は、ここでいう「培養細胞」の好適例である。
【0015】
また、本明細書において「合成ペプチド」とは、そのペプチド鎖がそれのみ独立して自然界に安定的に存在するものではなく、人為的な化学合成あるいは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって製造され、所定の組成物中で安定して存在し得るペプチド断片をいう。ここで「ペプチド」とは、複数のペプチド結合を有するアミノ酸ポリマーを指す用語であり、ペプチド鎖に含まれるアミノ酸残基の数によって限定されないが、典型的には全アミノ酸残基数が概ね100以下(好ましくは90以下、より好ましくは80以下、特に好ましくは70以下)のような比較的分子量の小さいものをいう。
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
なお、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、常に左側がN末端側であり右側がC末端側である。
本明細書において所定のアミノ酸配列に対して「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する機能(例えばエクソソーム誘導性や細胞膜透過性能)を損なうことなく、1個から数個(典型的には9個以下、好ましくは5個以下)のアミノ酸残基、例えば、1個、2個または3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個、2個又は3個のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列:例えばリジン残基とアルギニン残基との相互置換)、あるいは、所定のアミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が付加(挿入)したもしくは欠失した配列等は、本明細書でいうところの改変アミノ酸配列に包含される典型例である。したがって、ここで開示される人工軽量化エクソソーム生産方法で用いられる、エクソソーム誘導性を有するペプチドには、各配列番号のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列で構成される合成ペプチドに加え、各配列番号のアミノ酸配列において1個、2個または3個のアミノ酸残基が置換(例えば、上記の同類置換)、欠失または付加された改変アミノ酸配列であって、同様にエクソソーム誘導性を示すアミノ酸配列からなる合成ペプチドを包含する。
【0016】
ここで開示される生産方法は、インビトロにおいて、対象とする培養細胞を含む細胞培養物中に人為的に製造された合成ペプチドを供給することを特徴とする。即ち、対象とする培養細胞を含む細胞培養物を用意する工程(以下、「用意工程」という。)、当該細胞培養物中に、人為的に製造された所定のエクソソーム誘導性ペプチド配列とCPP配列とを含む合成ペプチド(以下、かかる合成ペプチドを「iLE誘導合成ペプチド」という。)を少なくとも一回供給し、該細胞培養物を所定時間培養する工程(以下、「培養工程」という。)、および、培養後、培養細胞が産生したエクソソームを回収する工程(以下、「回収工程」という。)を包含する。
【0017】
用意工程で用意する細胞培養物には、対象とする培養細胞および該培養細胞の培地を構成する材料が含まれる。
培養細胞としては、通常入手可能な(典型的には市販されている)セルライン、例えば、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物由来の培養腫瘍細胞株が挙げられる。例えば、子宮がん、卵巣がん、および乳がん等の培養腫瘍細胞を使用することができ、ヒト子宮頸がん細胞由来のHeLa細胞を好適に使用し得る。
培養細胞の培地を構成する材料は、使用する培養細胞の種類に応じて従来から推奨される培地構成に準じればよく、本発明の実施にあたって特に制限はない。例えば、α-MEM、DMEM、MEM等の市販される培地に、胎児ウシ血清(fetal bovine serum:FBS)等の血清ならびに必要に応じて抗生物質等の成分を添加して調製された培地を使用することができる。ここで、高純度の人工軽量化エクソソーム(iLE)を回収するという観点から、血清由来動物のネイティブなエクソソームが混入していない血清含有培地を使用することが好ましい。
【0018】
次に培養工程では、使用する細胞培養物中に、iLE誘導合成ペプチドを少なくとも一回供給し、該細胞培養物を所定期間培養する。
培養細胞に対してiLE誘導合成ペプチドを供給する方法としては、有効な適当量のiLE誘導合成ペプチドを、培養工程のいずれかの段階(例えば、培養開始と同時、培養開始後初期の段階、または所定の期間培養(増殖)や継代を行った後)で培地に添加するとよい。
添加量および添加の回数は、培養細胞の種類、形態(例えば通常のセルラインを使用しているか或いは採取した組織その他のプライマリーカルチャーを使用しているか)、細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類、等の条件によって異なり得るため特に限定されない。有効量として、培地中のiLE誘導合成ペプチド濃度が、概ね0.5μM以上40μM以下の範囲内、好ましくは1μM以上20μM以下(例えば2.5μM以上10μM以下)の範囲内となるように、1回、2回またはそれ以上の複数回添加することが好ましい。
培養期間は、特に限定しないが、夾雑物の少ない十分量の人工軽量化エクソソーム(iLE)を効率的に回収するという観点から、COリッチ(例えば5%程度のCO濃度)雰囲気中、37℃前後の温度条件で2~5日程度の培養期間であることが好ましい。
【0019】
iLE誘導合成ペプチドは、培養細胞におけるエクソソームの産生を増加させること(さらには、iLEの誘導性)が本発明者によって見出された天然には存在しない短鎖の合成ペプチドであり、上述する2種のアミノ酸配列、即ち、
(1)S1PR1のN末端から2番目のTM領域を構成するアミノ酸配列(以下、「S1PR1-TM2配列」ともいう。)、または、該アミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加された改変アミノ酸配列のいずれかからなるエクソソーム誘導性ペプチド配列、および、
(2)細胞膜透過性ペプチド(CPP)として機能するアミノ酸配列(CPP配列)、
をともに備えることで特徴付けられるペプチドである。
S1PR1は、典型的には382程度のアミノ酸残基で構成されるGタンパク質共役型受容体であり、S1Pと結合してがん細胞の増殖性や運動性の制御に関与するタンパク質である(上記非特許文献1))。
しかしながら、S1PR1-TM2配列がエクソソーム誘導性を有することは見出されていなかった。かかるS1PR1-TM2配列を合成し、該配列にCPPを付加することによって人為的に製造された合成ペプチドが得られ、該合成ペプチドを使用することにより、培養細胞においてエクソソームの産生が増加すること(即ち、エクソソーム誘導性)、また、該産生されたエクソソームが、含有するネイティブなタンパク質の含有量が低減している人工軽量化エクソソーム(iLE)主体であることは、本願出願当時、全く想定されていないことであった。
【0020】
S1PR1をコードする遺伝子(cDNAである場合を包含する。)は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ネコ、アカゲザル等の哺乳類、あるいは、ニワトリ等の鳥類で見つかっている。そして、S1PR1の遺伝子情報ならびにアミノ酸配列情報は、種々の公的な国際機関の知識ベース(データベース)にアクセスすることにより取得することができる。例えば、Universal Protein Resource (UniProt)において、種々の生物種由来のS1PR1の全アミノ酸配列情報ならびにTM領域のアミノ酸配列情報を得ることができる。
配列番号1に、S1PR1-TM2配列を示す。かかる配列は、具体的にはヒト、マウス、ラット、ウシ、ネコ、アカゲザル由来の配列である。これら動物種のS1PR1-TM2配列はすべて共通している。
【0021】
CPP配列として、従来公知の種々のCPPを採用することができる。例えば、3個以上、好ましくは5個以上であって20個以下、好ましくは9個以下のアルギニン残基からなる、いわゆるポリアルギニン(Rn)は、ここで用いられるCPP配列として好適である。その他、公知である種々のCPPを採用することができる。
【0022】
特に限定するものではないが、配列番号2~19にCPPの好適例を示す。具体的には、以下のとおりである。
配列番号2のアミノ酸配列は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子)由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLS(核小体局在シグナル:Nucleolar localization signal)に対応する。
配列番号3のアミノ酸配列は、核小体タンパク質の1種(ApLLP)由来の合計18アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号4のアミノ酸配列は、HSV-1(単純ヘルペスウイルス タイプ1)のタンパク質(γ(1)34.5)由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号5のアミノ酸配列は、HIC(human I-mfa domain-containing protein)のp40タンパク質由来の合計19アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号6のアミノ酸配列は、MDV(Marek病ウイルス)のMEQタンパク質由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号7のアミノ酸配列は、アポトーシスを抑制するタンパク質であるSurvivin- deltaEx3由来の合計17アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号8のアミノ酸配列は、血管増殖因子であるAngiogenin由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号9のアミノ酸配列は、核リンタンパク質であってp53腫瘍抑制タンパク質と複合体を形成するMDM2由来の合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号10のアミノ酸配列は、ベータノダウイルスのタンパク質であるGGNNVα由来の合計9アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号11のアミノ酸配列は、NF-κB誘導性キナーゼ(NIK)由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号12のアミノ酸配列は、Nuclear VCP-like protein由来の合計15アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号13のアミノ酸配列は、核小体タンパク質であるp120由来の合計18アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号14のアミノ酸配列は、HVS(ヘルペスウイルスsaimiri)のORF57タンパク質由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号15のアミノ酸配列は、細胞内情報伝達に関与するプロテインキナーゼの1種であるヒト内皮細胞に存在するLIMキナーゼ2(LIM Kinase 2)の第491番目のアミノ酸残基から第503番目のアミノ酸残基までの合計13アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号16のアミノ酸配列は、IBV(トリ伝染性気管支炎ウイルス:avian infectious bronchitis virus)のNタンパク質(nucleocapsid protein)に含まれる合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号17のアミノ酸配列は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:Human Immunodeficiency Virus)のTATに含まれるタンパク質導入ドメイン由来の合計9アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号18のアミノ酸配列は、上記TATを改変したタンパク質導入ドメイン(PTD4)の合計11アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号19のアミノ酸配列は、ショウジョウバエ(Drosophila)の変異体であるAntennapediaのANT由来の合計18アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
これらのうち、特にNoLSやTATに関連するアミノ酸配列(又はその改変アミノ酸配列)が好ましい。例えば、配列番号15や配列番号16に示すようなNoLS関連のCPP配列、或いは配列番号17~19のTATやANT関連のCPP配列を好適に用いることができる。
【0023】
iLE誘導合成ペプチドのペプチド鎖(アミノ酸配列)は、上述したように、
(1)エクソソーム誘導性ペプチド配列、および、
(2)CPP配列、を備えておればよく、エクソソーム誘導性ペプチド配列とCPP配列のいずれが相対的にN末端側(C末端側)に配置されていてもよい。
エクソソーム誘導性ペプチド配列と、CPP配列とが、実質的に隣接して配置されていることが好ましく、具体的には、例えば、CPP配列は、エクソソーム誘導性ペプチド配列のN末端側あるいはC末端側に、直接的に配列していることが好ましい。あるいは、2つの配列をつなぐリンカーとして機能するアミノ酸残基は、10個以下(より好ましくは5個以下、例えば1個か2個のアミノ酸残基)が好ましい。
【0024】
iLE誘導合成ペプチドは、エクソソーム誘導性を失わない限りにおいて、エクソソーム誘導性ペプチド配列とCPP配列を構成するアミノ酸配列以外の配列(アミノ酸残基)部分を含み得る。
合成ペプチドは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下が適当であり、80以下が好ましく、70以下(例えば30前後から50前後程度のペプチド鎖)が好ましい。このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、容易に合成することができる。特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はヘリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。
【0025】
合成したペプチド全体のアミノ酸配列に対するエクソソーム誘導性ペプチド配列、およびCPP配列の占める割合は、エクソソーム誘導性を失わない限り特に限定されないが、当該割合は概ね80個数%以上が望ましく、90個数%以上が好ましい。なお、全てのアミノ酸残基がL型アミノ酸であるものが好ましいが、エクソソーム誘導性を失わない限りにおいて、アミノ酸残基の一部又は全部がD型アミノ酸および非天然型の人工合成アミノ酸に置換されているものであってもよい。
【0026】
合成ペプチドは、少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されているものが好ましい。アミノ酸残基(典型的にはペプチド鎖のC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基のアミド化により、合成ペプチドの構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)を向上させることができる。例えば、エクソソーム誘導性ペプチドのC末端をCPP配列部分が構成するとき、該配列部分のC末端アミノ酸残基をアミド化することが好ましい。一方、合成ペプチドのC末端をエクソソーム誘導性ペプチド配列部分が構成するとき、該配列部分のC末端アミノ酸残基をアミド化することが好ましい。好ましい他の一態様では、配列番号20のアミノ酸配列を有する合成ペプチドのC末端アミノ酸残基をアミド化して、該合成ペプチドの安定性を向上することができる。
【0027】
合成ペプチドは、一般的な化学合成法に準じて容易に合成することができる。例えば、従来公知の固相合成法又は液相合成法のいずれを採用してもよい。アミノ基の保護基としてBoc(t-butyloxycarbonyl)あるいはFmoc(9-fluorenylmethoxycarbonyl)を適用した固相合成法が好適である。
合成ペプチドは、市販のペプチド合成機を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列、修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
あるいは、遺伝子工学的手法等を採用することによって、合成ペプチドを合成してもよい。かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0028】
回収工程では、培養後、培養細胞が産生したエクソソームを回収する工程が含まれている。具体的には、培養細胞が生産したエクソソームを、該培養細胞の培養物中から、後述するいずれかの方法によって、エクソソーム画分として単離して回収することができる。
培養液中からエクソソームを回収する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、従来からよく行われている超遠心分離法(例えば、Thery C., Curr. Protoc. Cell Biol. (2006) Chapter 3:Unit 3.22.参照)により、エクソソームを単離、回収することができる。
あるいはまた、免疫沈降法、FACS法、限外濾過法、ゲル濾過法、フィルター法、HPLC法、ポリマーやビーズ等に吸着させる方法等によって、培養液中からエクソソームを単離、回収することができる。市販のエクソソーム単離用試薬(キット)を採用して、エクソソームを単離、回収してもよい。例えば、コスモ・バイオ社等から販売されているエクソソーム単離キットを購入し、使用することで所望するエクソソームを単離、回収することができる。
【0029】
好適には、超遠心分離法を採用することができる。この方法によると、特定の成分が流出する(回収困難となる)ことを防止してエクソソーム全体の回収がより確実に行われる。特に限定しないが、例えば、予め300×g~10,000×g程度の遠心力で数段階(例えば4℃条件下で、300×gを5分~20分、2,000×gを5分~20分、10,000×gを20分~40分)ほど前処理の遠心分離をすることによって夾雑物を排除し、次いで、100,000×g~200,000×g程度の遠心力で60分~90分程度の超遠心分離を1回、2回、または、3回行う(例えば4℃条件下で、110,000×gを60~90分、2回)ことによって、夾雑物が少なく高純度のエクソソームを得ることができる。
【0030】
上述した方法(例えば超遠心分離法)によりエクソソームが回収されたことは、透過型電子顕微鏡を用いた観察(典型的にはネガティブ染色)、あるいは、ウエスタンブロッティング、ELISA、FACS等の手法(典型的には免疫学的手法)によりエクソソームのマーカータンパク質(例えばCD9、CD63、CD81等)を検出する方法、等によって確認することができる。また、エクソソーム由来のRNAを測定してもよい。
好ましくは、エクソソーム画分のエクソソーム量を、該エクソソーム画分中のエクソソームの粒子数N(個/mL)を、市販のナノ粒子解析装置を用いて計測することができる。具体的には、例えば、NanoSight LM10(Malvern Panalytical社)等を好適に用いることができる。
【0031】
ここで開示される生産方法は、好ましくは、回収工程の後、エクソソーム画分の全タンパク質量を解析する工程(以下、「解析工程」という。)をさらに包含する。
解析工程は、具体的には、例えば、エクソソーム画分中に含まれる全タンパク質量P(μg/mL)を測定することを含む。タンパク質量の測定方法としては、従来公知の方法(例えば、BCAアッセイ等)を特に制限なく使用することができる。これにより、以下の式(1)に基づいてエクソソーム一粒子当たりの平均タンパク質量EP(μg)を算出することができる。
EP=P/N (1)
ここで、エクソソーム一粒子当たりの平均タンパク質量が、8x10-8μg未満であるエクソソーム画分に含まれるエクソソームを、人工軽量化エクソソーム(iLE)であると判別することができる。
【0032】
ここで開示されるエクソソーム生産方法により、培養細胞におけるエクソソームの産生を増加させることができる。さらに、該エクソソームは、一粒子当たりの平均タンパク質量が所定量未満の人工軽量化エクソソーム(iLE)である。人工軽量化エクソソーム(iLE)は、例えば、好適なキャリア材料(例えば、薬物キャリア材料)になり得る。したがって、ここで開示されるエクソソーム生産方法は、例えば、薬物送達技術に関する研究において好ましく採用され得る。
【0033】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0034】
[試験例1:サンプルペプチド合成]
表1に示すサンプルペプチドを市販のペプチド合成機を用いて製造した。具体的には、ヒトS1PR1のN末端から2番目のTM領域のアミノ酸配列(配列番号1)のC末端側に、CPP配列として配列番号15のアミノ酸配列(LIMキナーゼ2のNoLS)を含む合成ペプチドをサンプルペプチド(配列番号20)として製造した。
【0035】
【表1】
【0036】
上記サンプルペプチドは、市販のペプチド合成機を用いてマニュアルどおりに固相合成法(Fmoc法)を実施して合成した。なお、ペプチド合成機の使用態様自体は本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。なお、表1に記載したサンプルペプチドは、該当する配列番号のアミノ酸配列を有するペプチドにおいて、C末端アミノ酸のカルボキシル基(-COOH)はアミド化(-CONH)されている。
合成したサンプルペプチドは、DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶かし、サンプルペプチドのストック液(濃度2.5mM)を調製した。
【0037】
[試験例2:エクソソームの生産および回収]
以下に説明するプロセスにより、実施例、比較例1、比較例2に係るエクソソームを生産し、回収した。
<実施例>
具体的には、供試培養細胞として現在市場において入手可能な、ヒト子宮頸がん細胞株(HeLa細胞)を使用した。
HeLa細胞の培養には、10%のFBSを含むα-MEM培地(Gibco社製品)を使用した。なお、FBSとしては、血清由来動物のネイティブなエクソソームを含有しないFBSを使用した。
試験例2の詳細は以下のとおりである。
【0038】
直径100mmの細胞培養用ディッシュに、10%濃度となるFBSを含む培地を適量入れ、HeLa細胞を1ディッシュあたりの細胞数が約2×10個となるように播種した。
次いで、5μMのサンプルペプチドを懸濁させた10%FBS含有α-MEM培地にて、5%CO条件下、37℃で48時間培養した。
その後、培養液を回収して超遠心分離に供し、エクソソームを単離し、回収した。具体的には、4℃条件下、以下のとおり連続的に遠心分離を行った。即ち、回収した培養液を300xgで10分間の遠心分離を行い、遠心上清を回収し、2,000xgで10分間の遠心分離を行った。遠心上清を回収し、10,000xgで30分間の遠心分離を行った(前処理)。遠心上清を回収し、110,000xgで70分間の超遠心分離を2回行った。
そして、上記超遠心分離を行った後、沈殿物をリン酸緩衝液(phosphate buffered saline;PBS)に懸濁した。以上の処理により、HeLa細胞由来のエクソソーム画分を回収した。
【0039】
<比較例1>
HeLa細胞の培養を、5μMの従来公知のスフィンゴシンキナーゼ阻害剤を懸濁させた10%FBS含有α-MEM培地で行ったこと以外は、実施例に係るプロセスと同じプロセスにより、比較例1のエクソソーム画分を回収した。
<比較例2>
HeLa細胞の培養を10%FBS含有α-MEM培地で行ったこと以外は、実施例に係るプロセスと同じプロセスにより、比較例2のエクソソーム画分を回収した。
【0040】
[試験例3:エクソソームの観察]
上記実施例のエクソソームについて、透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)を用いて観察を行った。代表的な結果として、図1に実施例のエクソソームのTEM観察像を示した。
【0041】
[試験例4:エクソソーム量の算出]
上記生産された3種類のエクソソーム画分について、エクソソーム量をそれぞれ算出した。具体的には、NanoSight LM10(Malvern Panalytical社)を用いて、上記エクソソーム画分中のエクソソームの粒子数を計測し、エクソソーム量を算出した。
結果を表2および図2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2および図2から明らかなように、上記サンプルペプチドを用いることによって、エクソソーム量は著しく増加することが確認された。
【0044】
[試験例5:タンパク質量の測定]
上記生産された3種類のエクソソームに含有されるタンパク質量をそれぞれ測定した。具体的には、Pierce(登録商標)BCA Protein Assay Kit(BCAタンパク質アッセイキット:Thermo Fisher Scientific社)を用いて、上記エクソソーム画分中の全タンパク質濃度を算出し、式(1)によりエクソソーム一粒子当たりのタンパク質量を算出した。
結果を表3および図3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3および図3から明らかなように、実施例のエクソソームのタンパク質量は、比較例1および比較例2と比べて顕著に減少していた。上記サンプルペプチドを使用することにより、一粒子当たりのタンパク質量が8.0x10-8μg以下のエクソソーム(即ち、iLE)が産生されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上述したように、ここで開示されるエクソソーム生産方法によると、一粒子当たりのタンパク質量が8.0x10-8μg以下の人工軽量化エクソソーム(即ち、iLE)を生産することができる。このため、本発明によって提供されるエクソソーム生産方法を使用することによって、薬物送達キャリアとしての利用に好適な人工軽量化エクソソーム(iLE)を容易に生産、提供することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0048】
配列番号1~20 合成ペプチド
図1
図2
図3
【配列表】
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