IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社堀場エステックの特許一覧

特許7356830ガスクロマトグラフ用の中間処理装置、及び、ガスクロマトグラフ
<>
  • 特許-ガスクロマトグラフ用の中間処理装置、及び、ガスクロマトグラフ 図1
  • 特許-ガスクロマトグラフ用の中間処理装置、及び、ガスクロマトグラフ 図2
  • 特許-ガスクロマトグラフ用の中間処理装置、及び、ガスクロマトグラフ 図3
  • 特許-ガスクロマトグラフ用の中間処理装置、及び、ガスクロマトグラフ 図4
  • 特許-ガスクロマトグラフ用の中間処理装置、及び、ガスクロマトグラフ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフ用の中間処理装置、及び、ガスクロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/84 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01N30/84 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019130549
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021015066
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智啓
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-149273(JP,A)
【文献】特開昭62-190465(JP,A)
【文献】特開平11-237371(JP,A)
【文献】特開平06-174707(JP,A)
【文献】特開2010-216850(JP,A)
【文献】特開2016-156919(JP,A)
【文献】特開昭60-143767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0248708(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/84
G01N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスに含まれる測定対象成分が流れるガス配管と、
前記ガス配管に接続され、前記測定対象成分を酸化する酸化触媒を担持した触媒担体を充填した充填部材と、
前記充填部材のガスの通過口と前記ガス配管とを接続する継手と、
を備え、
前記酸化触媒は、前記触媒担体が有する多孔質構造の少なくとも内部及び外部のいずれかに担持され、
前記継手は、
前記通過口に設けられたフランジ形状を有する第1押圧部と、
前記ガス配管のうち前記通過口との接続部分に設けられたフランジ形状を有する第2押圧部と、
板状の部材であって、前記第1押圧部のフランジ形状部分と前記第2押圧部のフランジ形状部分との間に配置され、前記第1押圧部のフランジ形状部分と前記第2押圧部のフランジ形状部分により押圧されることで、前記第1押圧部と前記第2押圧部の間をシーリングするシーリング部材と、を有し、
前記シーリング部材は、ニッケル又は銀で構成される、
ガスクロマトグラフ用の中間処理装置。
【請求項2】
前記酸化触媒により酸化された成分を還元して所定の誘導体を発生させる還元触媒をさらに備える、請求項1に記載のガスクロマトグラフ用の中間処理装置。
【請求項3】
前記酸化触媒は、400°C以上かつ600°C以下の温度に加熱される、請求項1又は2に記載のガスクロマトグラフ用の中間処理装置。
【請求項4】
前記シーリング部材を押圧する前記第1押圧部の第1面、及び、前記シーリング部材を押圧する前記第2押圧部の第2面は、鏡面加工されている、請求項1~3のいずれかに記載のガスクロマトグラフ用の中間処理装置。
【請求項5】
前記継手は、前記通過口側に設けられた第1締結部材と、前記ガス配管側に設けられ前記第1締結部材に螺合可能な第2締結部材と、を有し、
前記第1締結部材に前記第2締結部材が螺合することにより生じる締め付け力により、前記第1押圧部及び前記第2押圧部が前記シーリング部材を押圧する、請求項1~4のいずれかに記載のガスクロマトグラフ用の中間処理装置。
【請求項6】
試料ガスを測定対象成分毎に分離するカラムと、
前記カラムから導出された各測定対象成分を所定の誘導体に変換する中間処理装置と、
前記中間処理装置から導出された前記所定の誘導体の濃度に基づいて、前記測定対象成分を分析する分析装置と、
を備え、
前記中間処理装置は、
試料ガスに含まれる測定対象成分が流れるガス配管と、
前記ガス配管に接続され、前記測定対象成分を酸化する酸化触媒を担持した触媒担体を充填した充填部材と、
前記充填部材のガスの通過口と前記ガス配管とを接続する継手と、
を備え、
前記酸化触媒は、前記触媒担体が有する多孔質構造の少なくとも内部及び外部のいずれかに担持され、
前記継手は、
前記通過口に設けられたフランジ形状を有する第1押圧部と、
前記ガス配管のうち前記通過口との接続部分に設けられたフランジ形状を有する第2押圧部と、
板状の部材であって、前記第1押圧部のフランジ形状部分と前記第2押圧部のフランジ形状部分との間に配置され、前記第1押圧部のフランジ形状部分と前記第2押圧部のフランジ形状部分により押圧されることで、前記第1押圧部と前記第2押圧部の間をシーリングするシーリング部材と、を有し、
前記シーリング部材は、ニッケル又は銀で構成される、
ガスクロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストカラム反応ガスクロマトグラフに用いられる中間処理装置、及び、ポストカラム反応ガスクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象ガスの濃度を測定する装置として、「ポストカラム反応ガスクロマトグラフ」と呼ばれる装置が知られている。ポストカラム反応ガスクロマトグラフは、試料ガスに含まれる測定対象成分をメタンなどのガスに変換し、変換されたメタンの濃度に基づいて各測定対象成分の濃度を測定する。
上記のポストカラム反応ガスクロマトグラフは、測定対象成分を分離するカラムと、分離後の各測定対象成分をメタンに変換する中間処理装置と、メタンの濃度を測定する装置(例えば、水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector、FID))と、を備える。中間処理装置は、測定対象成分を酸化する酸化触媒と、酸化触媒で酸化された成分をメタンに還元する還元触媒と、を有している。
【0003】
ポストカラム反応ガスクロマトグラフ(以下、ガスクロマトグラフと呼ぶ)では、試料ガスは、カラムから中間処理装置へと流れ、さらに中間処理装置からメタンの濃度を測定する装置へと流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-156819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポストカラム反応ガスクロマトグラフの上記中間処理装置にて用いられる触媒は、従来、珪藻土、アルミナ担体に担持されていた。アルミナ担体は比較的平坦な表面を有するため、アルミナ担体に担持された触媒は、使用時にガス流によって剥離することがある。また、触媒の表面積が小さいため測定対象成分との反応サイトが少なく、十分な触媒反応を得られない。
一方、珪藻土は耐熱性がなく強度が低いため、触媒反応をするための高温の条件下では、担体(珪藻土)が割れることがあった。
【0006】
従って、本発明の目的は、ポストカラム反応ガスクロマトグラフの中間処理装置において、触媒の酸化能力が低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係るガスクロマトグラフ用の中間処理装置は、ガス配管と、充填部材と、を備える。ガス配管には、試料ガスに含まれる測定対象成分が流れる。充填部材は、ガス配管に接続され、測定対象成分を酸化する酸化触媒を担持した触媒担体を充填する。また、酸化触媒は、触媒担体が有する多孔質構造の少なくとも内部及び外部のいずれかに担持される。
これにより、酸化触媒が触媒担体から剥離することを抑制できる。その結果、触媒の酸化能力が低下することを抑制できる。
【0008】
ガスクロマトグラフ用の中間処理装置は、還元触媒をさらに備えてもよい。還元触媒は、酸化触媒により酸化された成分を還元して所定の誘導体を発生させる。これにより、ガスクロマトグラフにおいて、所定の誘導体の濃度に基づいて、測定対象成分の濃度を測定できる。
【0009】
酸化触媒は、400°C以上かつ600°C以下の温度に加熱されてもよい。これにより、酸化触媒による反応を促進できる。
【0010】
ガスクロマトグラフ用の中間処理装置は、継手をさらに備えてもよい。継手は、充填部材のガスの通過口とガス配管とを接続する。この継手は、第1押圧部と、第2押圧部と、シーリング部材と、を有する。第1押圧部は、通過口に設けられる。第2押圧部は、ガス配管のうち通過口との接続部分に設けられる。シーリング部材は、板状の部材であって、第1押圧部と第2押圧部により押圧されることで、第1押圧部と第2押圧部の間をシーリングする。したがって、金属触媒が加熱されても、継手を構成する第1押圧部と第2押圧部とを分離することが可能となる。これにより、触媒の交換が容易となる。
【0011】
シーリング部材を押圧する第1押圧部の第1面、及び、シーリング部材を押圧する第2押圧部の第2面は、鏡面加工されていてもよい。これにより、充填部材の通過口と中間処理装置のガス配管とを良好にシーリングできる。
【0012】
継手は、第1締結部材と、第2締結部材と、を有してもよい。第1締結部材は、通過口側に設けられる。第2締結部材は、ガス配管側に設けられ、第1締結部材に螺合可能である。このとき、第1締結部材に第2締結部材が螺合することにより生じる締め付け力により、第1押圧部及び第2押圧部がシーリング部材を押圧する。これにより、第1押圧部及び第2押圧部によりシーリング部材を押圧する構造を簡単にできる。
【0013】
本発明の他の見地に係るガスクロマトグラフは、カラムと、中間処理装置と、分析装置と、を備える。カラムは、試料ガスを測定対象成分毎に分離する。中間処理装置は、カラムから導出された各測定対象成分を所定の誘導体に変換する。分析装置は、中間処理装置から導出された所定の誘導体の濃度に基づいて、測定対象成分を分析する。
上記の中間処理装置は、ガス配管と、充填部材と、を有する。ガス配管には、試料ガスに含まれる測定対象成分が流れる。充填部材は、ガス配管に接続され、測定対象成分を酸化する酸化触媒を担持した触媒担体を充填する。このとき、酸化触媒は、触媒担体が有する多孔質構造の少なくとも内部及び外部のいずれかに担持される。
これにより、酸化触媒が触媒担体から剥離することを抑制できる。その結果、触媒の酸化能力が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
上記の中間処理装置では、酸化触媒の酸化能力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の全体構成を示す図。
図2】中間処理装置の構成を示す図。
図3】分析装置の構成を示す図。
図4】継手の具体的構成を示す図。
図5】ガス配管と出入口との接続時における継手の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
(1)ガスクロマトグラフ
以下、図1を用いて、第1実施形態に係るガスクロマトグラフ100を説明する。図1は、第1実施形態に係るガスクロマトグラフの全体構成を示す図である。
ガスクロマトグラフ100は、試料ガスに含まれる各測定対象成分を分離し、この測定対象成分を所定の誘導体に変換し、さらにこの誘導体の濃度を検出することで、試料ガスに含まれる測定対象成分の濃度を測定する装置である。
【0017】
VOC(揮発性有機化合物)の排出規制に関して、ガスクロマトグラフ100を用いた分析が行われる。ここで、ガスクロマトグラフ100における測定対象成分に関する電気信号を濃度値に変換するためには、濃度が既知の標準ガス、または、標準液が必要となる。ガスクロマトグラフ100により、このような標準ガス、または、標準液の濃度値付けを行える。揮発性有機化合物は、例えば、ヘキサン(C14)、ピネン(C1016)などの炭化水素、メタノール(CHOH)などのアルコールである。その他の揮発性有機化合物は、トルエン、ベンゼン、フロン類、ジクロロメタン等である。
【0018】
第1実施形態に係るガスクロマトグラフ100では、後述する中間処理装置3がこれらの測定対象成分を標準物質(例えば、メタン(CH))に変換する。また、後述する分析装置5が、変換後の標準物質の濃度を測定し、その測定結果から上記測定対象成分の濃度を測定する。これにより、ガスクロマトグラフ100は、多種類の測定対象成分の濃度を、標準物質の検量線のみを用いて測定できる。つまり、ガスクロマトグラフ100は、多種類の測定対象成分に対して同時にトレーサビリティを確保できる。
【0019】
図1に示すように、ガスクロマトグラフ100は、カラム1と、中間処理装置3と、分析装置5と、を備える。
カラム1は、ポンプ等の圧送装置11から圧送される試料ガスを測定対象成分毎に分離して、第1ガス配管L1に導出する。カラム1は、例えばオーブン等の恒温槽13に入れられて高温に維持されている。カラム1は、例えば、キャピラリーの内壁に固定相を塗布したキャピラリーカラムである。カラム1に使用される固定相は、測定対象成分の種類等に応じて、適宜公知のものを使用することができる。
【0020】
中間処理装置3は、試料ガスの上流側と下流側とを考えた場合に、カラム1の下流側、かつ、分析装置5の上流側に配置される。具体的には、中間処理装置3は、第1ガス配管L1を介してカラム1に接続され、第2ガス配管L2を介して分析装置5に接続されている。中間処理装置3は、第1ガス配管L1に導出された各測定対象成分を所定の誘導体に変換する。具体的には、中間処理装置3は、上記測定対象成分を酸化させて所定の中間体を発生し、その中間体を還元して所定の誘導体を発生させる。中間体は、例えば二酸化炭素(CO)である。中間処理装置3は、上記所定の誘導体を含んだガスを、第2ガス配管L2に導出する。誘導体は、例えばメタン(CH)である。
【0021】
分析装置5は、第2ガス配管L2を介して中間処理装置3に接続されている。分析装置5は、第2ガス配管L2に導出されたガスに含まれる所定の誘導体の濃度に基づいて、測定対象成分の濃度を測定する。
【0022】
(2)中間処理装置
次に、図2を用いて、第1実施形態に係るガスクロマトグラフ100に備わる中間処理装置3の具体的構成について説明する。図2は、中間処理装置の構成を示す図である。中間処理装置3は、カラム1から導出された測定対象成分を所定の誘導体に変換する装置である。中間処理装置3は、酸化触媒31と、還元触媒33と、を主に有する。
【0023】
酸化触媒31は、酸化反応を促進する触媒である。酸化触媒31は、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などの価数の大きな金属により構成された金属触媒である。酸化触媒31は、炭化水素、アルコールである測定対象成分を酸化させて、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)などを中間体として発生させる反応を促進する。なお、酸化触媒31は、触媒担体に担持されている。酸化触媒31を担持した触媒担体は、細径の筒状部材である充填部材31aに充填される。
【0024】
充填部材31aの一端には第1通過口31bが設けられ、他端には第2通過口31cが設けられる。第1通過口31bは、充填部材31aの内部へのガスの入口である。第2通過口31cは、充填部材31aの内部からのガスの出口である。第1通過口31bは、継手35によって、第1ガス配管L1に接続される。一方、第2通過口31cは、第4ガス配管L4に接続される。
【0025】
第1ガス配管L1は、第3ガス配管L3を介して、第1流量調整装置37aに接続されている。第1流量調整装置37aは、酸化ガス供給部G1に接続されており、酸化ガス供給部G1から供給される酸化ガスを、その流量を調整して第1ガス配管L1に導入する。第1流量調整装置37aは、例えば、マスフローコントローラ(MFC)などの流量調整装置である。酸化ガス供給部G1は、例えば、空気などの酸素を含むガスを充填したボンベである。
【0026】
充填部材31aは、第1加熱装置41により加熱可能となっている。第1加熱装置41は、充填部材31aを加熱することにより、酸化触媒31を、酸化反応を促進させるとともに酸化反応により生じた水分の結露を防止する温度まで加熱する。酸化触媒31の加熱温度は、例えば、100°C以上かつ1000°Cである。好ましくは、酸化触媒31の加熱温度は、例えば、400°C以上かつ600°C以下である。より好ましくは、酸化触媒31の加熱温度は、例えば、600°Cである。
【0027】
還元触媒33は、還元反応を促進する触媒である。還元触媒33は、例えば、ニッケル、ルテニウム又はロジウムなどにより構成された金属触媒である。還元触媒33は、上記中間体を還元して、例えばメタン(CH)を誘導体として発生させる反応を促進する。なお、還元触媒33は、触媒担体に担持されている。還元触媒33を担持した触媒担体は、細径の筒状部材である充填部材33aに充填される。
【0028】
充填部材33aの一端には第3通過口33bが設けられ、他端には第4通過口33cが設けられる。第3通過口33bは、充填部材33aの内部へのガスの入口である。第4通過口33cは、充填部材33aの内部からのガスの出口である。第3通過口33bは、継手35によって、第5ガス配管L5に接続される。一方、第4通過口33cは、継手35によって、第6ガス配管L6に接続される。
【0029】
第5ガス配管L5は、ガス流路切換部39を介して、第4ガス配管L4に接続されている。また、第4ガス配管L4は、第7ガス配管L7を介して、第2流量調整装置37bに接続されている。第2流量調整装置37bは、還元ガス供給部G2に接続されており、還元ガス供給部G2から供給される還元ガスを、その流量を調整して第4ガス配管L4に導入する。第2流量調整装置37bは、例えば、マスフローコントローラ(MFC)などの流量調整装置である。還元ガス供給部G2は、例えば、水素ガスを充填したボンベである。
【0030】
充填部材33aは、第2加熱装置43により加熱可能となっている。第2加熱装置43は、充填部材33aを加熱することにより、還元触媒33を、還元反応を促進させるとともに還元反応により生じた水分の結露を防止する温度まで加熱する。還元触媒33の加熱温度は、例えば、100°C以上かつ1000°C以下である。好ましくは、還元触媒33の加熱温度は、例えば、400°C以上かつ600°C以下である。より好ましくは、還元触媒33の加熱温度は、例えば、600°Cである。
【0031】
本実施形態の中間処理装置3は、制御部45をさらに有する。制御部45は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、各種インタフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ)等を備えたコンピュータシステムであって、中間処理装置3(第1流量調整装置37a、第2流量調整装置37b、第1加熱装置41、第2加熱装置43)を制御する。その他、制御部45は、上記構成を有するSoCにより実現されてもよい。
また、制御部45の上記機能は、記憶装置に記憶されたプログラムにより実現される。その他、制御部45の機能の一部又は全部がハードウェアとして実現されていてもよい。
【0032】
本実施形態の中間処理装置3は、ガス流路切換部39をさらに有する。ガス流路切換部39は、中間体が還元触媒33を通過するガス流路と、還元触媒33を通過しないガス流路と、を切り替える。
ガス流路切換部39は、第4ガス配管L4を第5ガス配管L5に接続し、第6ガス配管L6を第2ガス配管L2に接続することで、中間体が還元触媒33を通過するガス流路を形成する。一方、ガス流路切換部39は、第4ガス配管L4を第2ガス配管L2に接続することで、中間体が還元触媒33を通過しないガス流路を形成する。
【0033】
すなわち、ガス流路切換部39は、中間体を還元触媒33にて還元して発生した誘導体を分析装置5に導入するか、中間体を直接分析装置5に導入するかを切り替える。これにより、中間体を導入した際にFID装置51から出力される信号を、測定対象成分の濃度を測定するためのバックグラウンド信号(測定対象成分が存在しないときの信号)として用いることができる。
【0034】
(3)分析装置
次に、図3を用いて、第1実施形態に係るガスクロマトグラフ100に備わる分析装置5の具体的な構成を説明する。図3は、分析装置の構成を示す図である。
分析装置5は、中間処理装置3にて発生した誘導体の濃度に基づいて、試料ガスに含まれる測定対象成分の濃度を測定する装置である。分析装置5は、FID装置51と、演算装置53と、を有する。
【0035】
FID装置51は、第2ガス配管L2を介して中間処理装置3に接続されている。FID装置51は、中間処理装置3から第2ガス配管L2に導出されたガスに含まれる誘導体を検出する。FID装置51は、例えば、水素炎イオン化検出器(FID)である。
より具体的には、FID装置51は、第2ガス配管L2に導出されたガスを燃焼炎である水素炎中に流し、水素炎でイオン化されたイオン化電流を測定することにより、当該ガスに含まれる誘導体(メタン(CH))を検出する。
【0036】
演算装置53は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、各種インタフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ)等を備えたコンピュータシステムである。その他、演算装置53は、上記構成を有するSoCにより実現されてもよい。以下に示す演算装置53の機能は、記憶装置に記憶されたプログラムにより実現される。その他、演算装置53の機能の一部又は全部がハードウェアとして実現されていてもよい。
演算装置53は、FID装置51を制御するとともに、FID装置51にて測定されたイオン化電流値から誘導体の濃度を算出し、誘導体の濃度に基づいて試料ガス中の測定対象成分の濃度を測定する。
【0037】
(4)継手
以下、図4及び図5を用いて、充填部材31a、33aの通過口(第1通過口31b、第2通過口31c、第3通過口33b、第4通過口33c)と中間処理装置3のガス配管とを接続する継手35の具体的構成を説明する。図4は、継手の具体的構成を示す図である。図5は、ガス配管と出入口との接続時における継手の状態を示す図である。
以下では、第1通過口31bと第1ガス配管L1との接続に用いられる継手35を例にとって説明する。他の箇所の継手35も同様の構成を有する。継手35は、第1押圧部35aと、第2押圧部35bと、シーリング部材35cと、を主に備える。
【0038】
第1押圧部35aは、第1通過口31bの先端部分に設けられた、金属製のフランジ形状の部材である。第1押圧部35aのシーリング部材35cと当接する第1面35a’は、鏡面加工がなされている。これにより、第1押圧部35aとシーリング部材35cとの間のシーリング性が向上する。
第2押圧部35bは、第1ガス配管L1の先端部分に設けられた、金属製のフランジ形状の部材である。すなわち、第2押圧部35bは、第1ガス配管L1のうち、上記第1通過口31bとの接続部分に設けられる。第2押圧部35bのシーリング部材35cと当接する第2面35b’は、鏡面加工がなされている。これにより、第2押圧部35bとシーリング部材35cとの間のシーリング性が向上する。
【0039】
シーリング部材35cは、板状の金属部材であり、第1ガス配管L1及び第1通過口31bに対応する開口が形成されたリング形状を有する。シーリング部材35cは、第1押圧部35aと第2押圧部35bとの間に配置され、第1押圧部35aと第2押圧部35bの間をシーリングする。
【0040】
継手35は、第1締結部材35dと、第2締結部材35eと、を有する。第1締結部材35dは、第1通過口31bが貫通する開口を有し、先端部にネジ山が形成されたネジ部材である。第2締結部材35eは、第1ガス配管L1が貫通する開口を有し、第1締結部材35dのネジ山に螺合可能なナット部材である。
【0041】
図5に示すように、第1締結部材35dと第2締結部材35eとが螺合したとき、第1締結部材35dの先端は第3面35a’’(第1押圧部35aにおいて、第1面35a’とは反対側に存在する面)に当接する。その一方、第1締結部材35dと第2締結部材35eとが螺合したとき、第2締結部材35eの基端部分は第4面35b’’(第2押圧部35bにおいて、第2面35b’とは反対側に存在する面)に当接する。第2締結部材35eと第1締結部材35dとが螺合することにより生じる締め付け力により、第1押圧部35aが第2押圧部35bの方向に押され、第2押圧部35bが第1押圧部35aの方向に押される。その結果、第1押圧部35a及び第2押圧部35bは、その間に配置されたシーリング部材35cを押圧する。
【0042】
上記構成の継手35を用いて触媒とガス配管とを接続することにより、本実施形態に係る中間処理装置3では、触媒の加熱に伴って加熱された継手35が、触媒のガス出入口及びガス配管から除去できなくなることを防止できる。すなわち、本実施形態に係る中間処理装置3では、触媒をガス配管から容易に除去できるので、使用後の触媒の交換が容易となる。
【0043】
なお、本実施形態の中間処理装置3では、継手35の接ガス部(シーリング部材35c)、充填部材、ガスの通過口、及びガス配管は、銀又はニッケルなど、上記中間体及び誘導体を発生させない材料で形成することが好ましい。なぜなら、これら部材で中間体及び誘導体が発生すると、分析装置5における測定結果に誤差が生じるからである。
【0044】
(5)酸化触媒
以下、中間処理装置3において測定対象成分を酸化する酸化触媒31について、より詳細に説明する。上記のように、本実施形態の酸化触媒31は、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などの価数の大きな金属により構成された金属触媒である。金属触媒である酸化触媒31は、触媒担体に担持されている。
本実施形態において、触媒担体は、例えば、多孔質構造を有するシリカ(SiO)の粉体である。シリカで構成される本実施形態の触媒担体は、従来の担体と比較して、耐熱性を有する。すなわち、本実施形態の酸化触媒31は、例えば600°C程度に加熱しても割れるなどして破損しにくい。その結果、例えば、多孔質構造に担持された金属触媒が大きなガス流にさらされて触媒担体から剥離することを低減できる。また、従来の触媒担体はロット間のばらつきが大きかったが、触媒担体をシリカにより構成することで、触媒担体のロット間のバラツキを低減できる。その結果、酸化触媒31の酸化能力がロット間でバラツキが生じることを抑制できる。
【0045】
上記のように、酸化触媒31は、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などの価数の大きな金属触媒である。金属触媒である酸化触媒31は、触媒担体の多孔質構造の少なくとも内部及び外部のいずれかに担持されている。金属触媒の触媒担体への担持は、例えば、酸化触媒31を構成する金属を溶かした酸性溶液中に触媒担体を投入して含浸させ、その後、触媒担体を乾燥させることにより実行されている。その他、酸化触媒31を構成する金属の塩の溶液に触媒担体を投入して含浸させ、その後、触媒担体を乾燥(必要に応じて焼成)することにより、酸化触媒31を触媒担体へ担持することもできる。
このように、酸化反応を促進する酸化触媒31が触媒担体の多孔質構造の少なくとも内部及び外部のいずれかに担持されることにより、測定対象成分及び酸化ガスを流通させた場合に酸化触媒31が触媒担体から剥離されることを抑制できる。
【0046】
上記した触媒担体及び金属触媒の特徴を有することにより、本実施形態の酸化触媒31の酸化能力が低下することを抑制できる。
【0047】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)中間処理装置3において、酸化触媒31のための充填部材31aと還元触媒33のための充填部材33aとの間のガス流通経路に、反応剤を充填した筒状部材が設けられていてもよい。この反応剤は、充填部材31aから導出されるガスに含まれる塩素ガス(Cl)及び硫黄酸化物(例えば、二酸化硫黄(SO))と反応し、これらを除去する。
【0048】
例えば、測定対象成分に塩素元素又は硫黄元素が含まれていると、酸化触媒31は、測定対象成分を酸化させたときに、二酸化炭素又は一酸化炭素以外に、塩素ガスや硫黄酸化物を副生成物として発生する。これら副生成物が還元触媒33により還元されると、還元されて塩化水素(HCl)や硫酸(HSO)を発生させる。
従って、上記の反応剤を酸化触媒31のための充填部材31aと還元触媒33のための充填部材33aとの間に配置することで、充填部材31aから導出されるガスに含まれる塩化水素(HCl)や硫酸(HSO)の濃度を小さくできる。その結果、これら酸性物質が多量に分析装置5(FID装置51)に流入することを回避できる。
【0049】
上記の反応剤としては、例えば銀(Ag)を使用できる。銀を反応剤として用いた場合、塩素ガスが銀と反応して塩化銀が生成されることで、充填部材31aから導出されるガスから塩素ガスを除去できる。また、二酸化硫黄が銀と反応して硫化銀(AgS)と酸素が生成されることで、充填部材31aから導出されるガスから二酸化硫黄を除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ポストカラム反応ガスクロマトグラフに用いられる中間処理装置、及び、ポストカラム反応ガスクロマトグラフに広く適用できる。
【符号の説明】
【0051】
100 ガスクロマトグラフ
1 カラム
11 圧送装置
13 恒温槽
3 中間処理装置
31 酸化触媒
33 還元触媒
31a、33a充填部材
31b 第1通過口
31c 第2通過口
33b 第3通過口
33c 第4通過口
35 継手
35a 第1押圧部
35a’ 第1面
35a’’ 第3面
35b 第2押圧部
35b’ 第2面
35b’’ 第4面
35c シーリング部材
35d 第1締結部材
35e 第2締結部材
37a 第1流量調整装置
37b 第2流量調整装置
39 ガス流路切換部
41 第1加熱装置
43 第2加熱装置
45 制御部
L1 第1ガス配管
L2 第2ガス配管
L3 第3ガス配管
L4 第4ガス配管
L5 第5ガス配管
L6 第6ガス配管
L7 第7ガス配管
5 分析装置
51 FID装置
53 演算装置
G1 酸化ガス供給部
G2 還元ガス供給部
図1
図2
図3
図4
図5