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特許7356928緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/154 20060101AFI20230928BHJP
   A23L 3/3463 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A23B7/154
A23L3/3463
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020023706
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126086
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑莉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 千夏
(72)【発明者】
【氏名】河原田 啓希
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-095526(JP,A)
【文献】特開2004-067546(JP,A)
【文献】特開2004-033083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0003053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/00- 9/34
A23L 3/00- 3/3598
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アスコルビン酸ナトリウム、(B)グルタチオン、並びに(C)イソマルツロースおよび/またはグルコースを含有する緑色野菜用品質保持剤であって、
緑色野菜に対して、(A)アスコルビン酸ナトリウム0.5~5.0質量%、(B)グルタチオン0.05~0.5質量%、並びに(C)イソマルツロースおよび/またはグルコース0.3~5.0質量%の範囲で含有する溶液として用いられ、
前記溶液のpHが、6.5~8.5の範囲であり、
緑色野菜の退色または変色を防止するものであることを特徴とする緑色野菜用品質保持剤。
【請求項2】
(A)アスコルビン酸ナトリウムと(C)イソマルツロースおよび/またはグルコースとの質量比が、10:1~1:5の範囲である請求項1に記載の緑色野菜用品質保持剤。
【請求項3】
グルタチオンがグルタチオン含有酵母素材である請求項1または2に記載の緑色野菜用品質保持剤。
【請求項4】
緑色野菜の退色または変色を防止する緑色野菜の品質保持方法であって、
加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に対し、請求項1~3のいずれかに記載の緑色野菜用品質保持剤を作用させることを特徴とする緑色野菜の品質保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色野菜用品質保持剤およびこれを用いる緑色野菜の品質保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の保存中における品質の劣化を防ぐべく、様々な検討がなされてきた。
【0003】
例えば、未成熟果実ピューレの色を安定させる技術として、シクロデキストリンを添加する技術(例えば、特許文献1参照)、漬け茄子の本来の天然色を維持する技術として、ミョウバンと、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム、またはナトリウム塩等の酸化防止剤兼pH緩衝剤と、キトサン含有製剤と、シクロデキストリンとを用いる技術(例えば、特許文献2参照)、キムチの貯蔵期間中の劣化を防止する技術として、茶抽出物と、ビタミンC、ビタミンE、フェルラ酸、ルチン、β-カロテン、ゼアキサンチン、リコピン、ケルセチン、ケンフェロール、ナリンギン、ヘスペリジン、クロロゲン酸、アリイン、クルクミン、ショーガオール、カプサイシン、グルタチオンからなる群から選択される少なくとも1種とを用いる技術(例えば、特許文献3参照)、食品の香味、色、香気の劣化を抑制するための技術として、固形分換算で60%以上のクロロゲン酸類を含むスイカズラ属植物抽出物からなる食品用劣化防止剤を用いる技術(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。
【0004】
上記提案のような技術により、食品の保存中における品質の劣化の防止にある程度の効果が得られている。
【0005】
しかしながら、近年では、廃棄される食品の増加が深刻な状況となっており、また、スーパーやコンビニエンスストアなどでは人手不足による製品の入れ替えに要するコストの増加も懸念されている。そのため、製品の賞味期限の延長が喫緊の課題となっており、従来よりも優れた食品用品質保持剤が求められるようになっている。
【0006】
また、スーパーやコンビニエンスストアなどでは、製品は明るい照明下で陳列されており、総菜など加熱調理した緑色野菜では、その退色や変色が生じやすく、近年求められるレベルでの品質の保持が非常に困難であるという問題もある。
【0007】
したがって、惣菜など加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができる緑色野菜用の品質保持剤および品質保持方法の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-60793号公報
【文献】特開2002-199841号公報
【文献】特開2005-124485号公報
【文献】特開2007-124988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、惣菜など加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができる緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に(A)アスコルビン酸塩、(B)グルタチオン、並びに(C)イソマルツロースおよび/またはグルコースを作用させることにより、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができることを知見した。
【0011】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)アスコルビン酸塩、(B)グルタチオン、並びに(C)イソマルツロースおよび/またはグルコースを含有することを特徴とする緑色野菜用品質保持剤である。
<2> (A)アスコルビン酸塩と(C)イソマルツロースおよび/またはグルコースとの質量比が、10:1~1:5の範囲である前記<1>に記載の品質保持剤である。
<3> 緑色野菜に対して、(A)アスコルビン酸塩0.1~15質量%、(B)グルタチオン0.01~1.0質量%、並びに(C)イソマルツロースおよび/またはグルコース0.1~10質量%の範囲で含有する溶液として用いられる前記<1>または<2>に記載の品質保持剤である。
<4> アスコルビン酸塩がナトリウム塩である前記<1>~<3>のいずれかに記載の品質保持剤である。
<5> グルタチオンがグルタチオン含有酵母素材である前記<1>~<4>のいずれかに記載の品質保持剤である。
<6> 加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に対し、前記<1>~<5>のいずれかに記載の緑色野菜用品質保持剤を作用させることを特徴とする緑色野菜の品質保持方法である。
<7> 加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に前記緑色野菜用品質保持剤を溶液の形態で作用させ、前記溶液をpH6.0~9.0の範囲に調整する前記<6>に記載の品質保持方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、惣菜など加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができる緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(緑色野菜用品質保持剤)
本発明の緑色野菜用品質保持剤(以下、「品質保持剤」と称することがある。)は、(A)アスコルビン酸塩と、(B)グルタチオンと、(C)イソマルツロースおよび/またはグルコースとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0014】
<(A)アスコルビン酸塩>
前記(A)アスコルビン酸塩(以下、「(A)成分」と称することがある。)としては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩などが挙げられる。前記(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記(A)成分の中でも、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、アスコルビン酸ナトリウムが好ましい。
前記(A)成分は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記(A)成分の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0015】
<(B)グルタチオン>
前記(B)グルタチオン(以下、「(B)成分」と称することがある。)としては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができる。前記グルタチオンは、還元型であってもよいし、酸化型であってもよい。また、前記グルタチオンは、グルタチオンそのものを使用してもよいし、グルタチオン含有酵母素材などのグルタチオンを含有する素材を用いてもよい。前記(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記(B)成分の中でも、入手の容易性、食品への適用の観点から、グルタチオン含有酵母素材が好ましい。
前記グルタチオン含有酵母素材としては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、パン酵母、トルラ酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、味噌醤油酵母から得られる素材が挙げられる。前記酵母素材の態様としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、酵母菌体(生菌体、乾燥菌体)、酵母粉砕物(乾燥酵母粉末等)、酵母エキス(自己消化物、酵素処理物等)などが挙げられる。前記酵母素材の形態としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、粉末、顆粒などの固体や、液体などが挙げられる。前記グルタチオン含有酵母素材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記グルタチオン含有酵母素材におけるグルタチオンの含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、グルタチオン含有酵母素材100g中、1.0g以上が好ましい。前記好ましい含有量であると、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品の食味や風味に対する影響が生じにくい点で、有利である。
【0017】
前記(B)成分は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記(B)成分の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0018】
<(C)イソマルツロースおよび/またはグルコース>
前記(C)イソマルツロースおよび/またはグルコース(以下、「(C)成分」と称することがある。)としては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができる。前記(C)成分は、イソマルツロースを単独で使用してもよいし、グルコースを単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。
前記(C)成分は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記(C)成分の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0019】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えばそれ自体、静菌作用を有する成分(乳酸、酢酸、クエン酸等の有機酸およびその塩、グリシン、アラニン等のアミノ酸類、フェルラ酸、グリセリン脂肪酸エステル、エタノール、リゾチーム、カラシ抽出物、ホコッシ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、チャ抽出物、カンゾウ油性抽出物、ユッカ抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物等)、pH調整剤(乳酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸またはその塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等の縮合リン酸塩等)、食塩等の塩類、糖類(単糖類、二糖類、マルトトリオース、オリゴ糖類、デキストリン、糖アルコール等)、蛋白質加水分解物、ペプチド、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム塩等)、増粘多糖類(アラビアガム、キサンタンガム、ウェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、カードラン、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸エステル等)、酸化防止剤(アスコルビン酸、トコフェロール類、ローズマリー抽出物、カテキン、茶抽出物)などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記品質保持剤は、緑色野菜またはこれを含有する食品の品質保持(色調保持、日持向上)の点で、静菌作用を有する成分およびpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記その他の成分は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記その他の成分の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0020】
<態様>
前記品質保持剤は、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分と、必要に応じて前記その他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分を別々の包材に入れ、使用時に併用する態様であってもよい。
前記品質保持剤の形態としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、粉末、顆粒等の固体、水などの溶媒に溶解させた液体などが挙げられる。
【0021】
<使用>
-使用量-
前記品質保持剤の使用量としては、前記(A)成分、前記(B)成分および前記(C)成分の有効量を含有していれば特に制限はなく、その他の成分の含有量を考慮して適宜選択することができ、例えば、緑色野菜に対して、前記品質保持剤を0.1~10質量%の量で含有する溶液の形態で用いることができる。
【0022】
--(A)アスコルビン酸塩--
前記(A)成分の使用量、即ち緑色野菜を処理する際の処理溶液中の(A)成分の濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常0.1~15質量%の範囲であり、0.5~5質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0023】
--(B)グルタチオン--
前記(B)成分の使用量、即ち緑色野菜を処理する際の処理溶液中の(B)成分の濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常0.01~1.0質量%の範囲であり、0.05~0.5質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0024】
--(C)イソマルツロースおよび/またはグルコース--
前記(C)成分の使用量、即ち緑色野菜を処理する際の処理溶液中の(C)成分の濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常0.1~10質量%の範囲であり、0.3~5質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0025】
前記(A)成分と、前記(C)成分との質量比(以下、「配合比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常10:1~1:5の範囲であり、7:1~1:2の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0026】
-使用時期-
前記品質保持剤を緑色野菜またはこれを含有する食品に作用させる時期としては、特に制限はなく、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階から適宜選択することができ、加熱調理前、加熱調理中および加熱調理後の少なくともいずれかの時期に作用させることができる。
前記作用させる回数としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、1回であってもよいし、複数回であってもよい。また、前記作用させる時間も適宜選択することができる。
【0027】
-使用方法-
前記品質保持剤の使用方法としては、特に制限はなく、緑色野菜またはこれを含有する食品の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜またはこれを含有する食品に前記品質保持剤を添加する方法、前記品質保持剤を含有する溶液に緑色野菜またはこれを含有する食品を浸漬する方法、前記品質保持剤を含有する溶液を緑色野菜またはこれを含有する食品に噴霧、塗布または滴下する方法などが挙げられる。
なお、本発明において、加熱調理とは、緑色野菜またはこれを含有する食品に熱を加える調理法全般をいい、例えば、炒める、茹でる、焼く、蒸すまたはこれらの組合せなどが挙げられる。前記加熱調理に用いる手段としては、特に制限はなく、公知の手段を適宜選択することができる。
【0028】
前記品質保持剤は、単独で使用してもよいし、例えば、日持向上剤などのその他の製剤などと共に使用してもよい。
【0029】
<緑色野菜またはこれを含有する食品>
本発明における緑色野菜としては、緑色を有し、加熱調理される野菜であれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ピーマン、シシトウ、ズッキーニ、キュウリ、ゴーヤ、オクラ、インゲン、エダマメ、ソラマメ、グリーンピース、キヌサヤ等の果菜類、ニラ、ほうれん草、チンゲンサイ、フキ、シュンギク、小松菜、菜の花、ノザワナ、ブロッコリー、アスパラガス、わらび、ミツバ、モロヘイヤ、しそ、バジル等の葉茎菜類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記緑色野菜を含有する食品(以下、「惣菜」と称することもある)としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0030】
(緑色野菜の品質保持方法)
本発明の緑色野菜の品質保持方法(以下、「品質保持方法」と称することがある)は、本発明の緑色野菜用品質保持剤を加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に作用させる。
【0031】
緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に前記品質保持剤を作用させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(緑色野菜用品質保持剤)の<使用>の項目の記載と同様にして行うことができるが、前記品質保持剤は、溶液の形態で緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に作用させることが好ましい。
前記溶液のpHとしては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常pH6.0~9.0の範囲であり、pH6.5~8.5の範囲に調整することが好ましい。前記pHを好ましい範囲に調整すると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
なお、本発明において、pHは、20℃におけるpHをいう。
【0032】
前記緑色野菜またはこれを含有する食品は、上記した本発明の(緑色野菜用品質保持剤)の<緑色野菜またはこれを含有する食品>の項目に記載したものと同様である。
なお、前記緑色野菜またはこれを含有する食品は、前記品質保持剤を作用させる以外は、通常の加工処理やレシピなどに従い、調理することができる。
【0033】
本発明の品質保持剤および品質保持方法によれば、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で緑色野菜またはこれを含有する食品に品質保持剤を単に作用させるだけで、加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができるので、製品価値の低下を防ぐことができ、また、製品の保存期間の延長も可能となる。
【実施例
【0034】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(試験例1)
下記の表1に記載の成分を下記の表1に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHは、炭酸ナトリウムで調整した。なお、使用した各成分の詳細は、以下のとおりである。
(A)成分 : アスコルビン酸塩(アスコルビン酸ナトリウム)
(B)成分 : グルタチオン(グルタチオン、またはグルタチオン含有酵母素材(興人ライフサイエンス株式会社製の「ハイチオンエキスYH-15」(以下、「酵母素材1」と称することがある。)または「ハイチオンエキス-D18」(以下、「酵母素材2」と称することがある。)))
(C)成分 : イソマルツロースまたはグルコース
【0036】
<評価>
緑色野菜の一例としてインゲンを用い、以下のようにして加熱調理したインゲンの品質保持効果を試験した。
沸騰した食塩水(1質量%)に冷凍インゲンを投入し、再沸騰後1分間茹でた。室温まで冷却した後、試験例1-1~1-8のいずれかの品質保持剤含有水溶液に茹でたインゲンを入れ、30分間浸漬させた。浸漬後、取り出したインゲンを液切りし、シャーレに入れ、温度10℃、光強度1,000ルクスの条件で保管した。光照射開始から2日目のインゲンの緑色の色調変化を目視にて観察し、1点~5点の5段階で評価した(数値が小さいほど、緑色保持効果が高いことを示す。)。なお、品質保持剤を用いない以外は同様にしてインゲンを処理した場合(以下、「無添加」と称することがある。)の評価を5点とした。結果を下記の表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示したように、(A)成分、(B)成分および(C)成分を用いることで、加熱調理した緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。
【0039】
(試験例2)
下記の表2に記載の成分を下記の表2に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHは、炭酸ナトリウムで調整した。なお、使用した各成分の詳細は、以下のとおりである。
(A)成分 : アスコルビン酸塩(アスコルビン酸ナトリウム)
(B)成分 : グルタチオン(グルタチオン含有酵母素材の酵母素材2)
(C)成分 : イソマルツロースまたはグルコース
【0040】
<評価>
試験例2-1~2-4のいずれかの品質保持剤含有水溶液を用いた以外は試験例1と同様にして、インゲンに対する緑色保持効果を評価した。結果を下記の表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示したように、(A)成分と(C)成分の配合比を変えた場合でも、(A)成分、(B)成分および(C)成分を用いることで、加熱調理した緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。
【0043】
(試験例3)
下記の表3に記載の成分を下記の表3に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHは、炭酸ナトリウムで調整した。なお、使用した各成分の詳細は、以下のとおりである。
(A)成分 : アスコルビン酸塩(アスコルビン酸ナトリウム)
(B)成分 : グルタチオン(グルタチオン含有酵母素材の酵母素材2)
(C)成分 : イソマルツロース
【0044】
<評価>
緑色野菜の一例として、アスパラガスを用い、以下のようにして品質保持効果を試験した。
沸騰した食塩水(1質量%)に生のアスパラガスを投入し、再沸騰後1分間茹でた。室温まで冷却した後、試験例3-1~3-6のいずれかの品質保持剤含有水溶液に茹でたアスパラガスを入れ、30分間浸漬させた。浸漬後、取り出したアスパラガスを液切りし、シャーレに入れ、温度10℃、光強度500ルクスの条件で保管した。光照射開始から3日後のアスパラガスの色を目視にて観察し、試験例1と同様にして評価した。なお、品質保持剤を用いない以外は同様にしてアスパラガスを処理した場合(以下、「無添加」と称することがある。)の評価を5点とした。結果を下記の表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示したように、(A)成分、(B)成分および(C)成分を好ましい配合量で用いることで、加熱調理した緑色野菜(アスパラガス)の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。
【0047】
(試験例4)
下記の表4に記載の成分を下記の表4に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHを6.5、7.0、8.0、8.5に炭酸ナトリウムで調整した。なお、使用した各成分の詳細は、以下のとおりである。
(A)成分 : アスコルビン酸塩(アスコルビン酸ナトリウム)
(B)成分 : グルタチオン(グルタチオン含有酵母素材の酵母素材2)
(C)成分 : イソマルツロース
【0048】
<評価>
緑色野菜の一例として、ブロッコリーを用い、以下のようにして品質保持効果を試験した。
沸騰した食塩水(1質量%)に冷凍ブロッコリーを投入し、再沸騰後1分間茹でた。室温まで冷却した後、試験例4-1~4-4のいずれかの品質保持剤含有水溶液に茹でたブロッコリーを入れ、30分間浸漬させた。浸漬後、取り出したブロッコリーを液切りし、シャーレに入れ、温度10℃、光強度1,000ルクスの条件で保管した。光照射開始から2日後のブロッコリーの色を目視にて観察し、試験例1と同様にして評価した。なお、品質保持剤を用いない以外は同様にしてブロッコリーを処理した場合(以下、「無添加」と称することがある。)の評価を5点とした。結果を下記の表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4に示したように、品質保持剤含有水溶液のpHを変えた場合でも、加熱調理した緑色野菜(ブロッコリー)の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。